JP5888871B2 - 可変インダクター - Google Patents
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Description
かかる状態の変化は、即ち、インダクタンス値が可変設定された状態として捉えることができる。
又、この特許文献1に開示された可変インダクターは、コイルの巻線長を長くすると、巻線の有する電気抵抗が大きくなり、これが電力損失を招来するという不都合がある。
本発明は、電力損失が少なく、且つインダクタンス値を連続して変化させることが可能な可変インダクターを提供することを、その目的とする。
磁性体の円環構造の一部に磁気ギャップが形成された少なくとも二つのリングコアを有し、前記各リングコアは、その中心軸を同一にして且つ端面同士を突き合わせた状態で配置されると共に、前記各リングコアの内の一のリングコアは、他の一のリングコアに対して回転可能にリング状ケース内に組み込まれた構成とし、
前記インダクターを構成する巻線は、前記複数のリングコア全体を一つとしてそのコア部分を中心軸に沿って内側と外側とを連続して巻回するように、前記リング状ケースに巻回装備されてなり、
前記リング状ケース内には、前記各リングコアの内の一のリングコアが回転可能状態に又他の一のリングコアが非回転状態に装備されると共に、このリング状ケースには、他の一のリングコアとの当接状態を維持しつつ同軸上で前記一のリングコアに往復回動を付勢する往復回転力付勢機構を装備し、
この往復回転力付勢機構を、
前記リング状ケース内にて環状側面の内壁面に沿ってそれぞれ反対方向に向けて敷設されその先端部が前記一のリングコアに固着された一方と他方の2本の紐状の駆動力伝達部材と、この各駆動力伝達部材の他端部を前記リング状ケース外にあって係止すると共に前記一のリングコアの回転駆動に際してはその駆動方向に沿った一方の駆動力伝達部材に引張力を付加することにより当該一のリングコアに当該駆動方向の回転力を付勢するコア駆動操作手段とを備えた構成とし、
前記コア駆動操作手段を、前記リング状ケースの中心軸にて回転自在に装備され前記一方と他方の2本の紐状の駆動力伝達部材を巻回若しくは巻き放す機能を備えた駆動軸により構成し、
前記2本の紐状の駆動力伝達部材は、前記リング状ケースの中心部側環状側面のケース内の壁面に沿って敷設されると共に、当該リング状ケースの環状側面の中心部側に予め形成された紐ガイド孔を介して敷設され且つ前記駆動軸によって巻回若しくは巻き放される構成としたことを特徴とする。
最初に、本実施形態にかかる可変インダクターの基本的構成における理論的背景を説明し、その後に、本実施形態における可変インダクターの具体的な構成内容について詳細に説明する。
インダクタンスを可変にするにあたって、先ず、トロイダル・コイルのインダクタンスについて考察する。
トロイダル・コイルは、従来より円環構造のトロイダルコアに巻線を施した構造のものとして知られている。この種のトロイダル・コイルのインダクタンスは、インダクタンスをL,トロイダルコアに巻かれた巻線の巻き数をN,トロイダルコアの透磁率をμ,トロイダルコアの断面積をA,トロイダルコアの平均磁路長をρとすると、次の式(1)で表すことができる。
(1)
この式(1)からすると、トロイダル・コイルのインダクタンスの値は、巻線の巻き数N,トロイダルコアの透磁率μ,トロイダルコアの断面積A,トロイダルコアの平均磁路長ρにより決定される。そして、そのインダクタンスの値を変化させるには、これらの各演算素子の何れかを変化させれば良いこととなるが、従来技術における完成品のトロイダル・コイルでは、これらの値は固定値であり、従ってインダクタンスの値を可変にすることはできない。
鎖交磁束数をΦ,インダクタンスをL,巻線に流れる電流をIとすると、Φ=LIであるから、この式からすると、鎖交磁束数Φを変化させれば、インダクタンスを可変させることができることとなる。
本発明の一実施形態に係る可変インダクターを、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1乃至図2において、可変インダクター1は、円環状に形成された磁性体の一部に同一幅の磁気ギャップG1 ,G2 (図2(b)参照)がそれぞれ設けられた2つのリング状磁性体11,12を備えている。この各リング状磁性体(以下「リングコア」という)11,12は、図2に示すようにその端面同士を突き合わして積層された状態に配置されている。又、本実施形態では、この2つのリングコア11,12は同一の形状および大きさのものが使用され、それぞれが同一中心軸上に配置されている。
このリング状ケース20の内径側の空間領域20Kには、前述した各リングコア11,12の内のーのリングコア11を他のーのリングコア12との当接状態を維持しつつその当接円周面上を往復移動させるための往復回転力付勢機構30が、後述するように前記リング状ケース20と一体的に装備されている。
ここで、この紐状の駆動力伝達部材32は、前記巻線2の線相互間の隙間領域および内筒20Aに予め形成された紐挿通ガイド部(紐ガイド孔)21,22を経て敷設され、これによって、上述したように、駆動軸31の往復回転力が前記リングコア11に伝達されるようになっている。
上述した各構成要素について、更に詳細に説明する。
各リングコア11,12は、前述したようにリング状ケース20内に二段重ねの状態で収納されている。この場合、下方に収納されたリングコア12は、リング状ケース20内には接着剤等で固着された状態で収納されている。一方、上方に収納されたリングコア11は、リング状ケース20内に、中心軸線Pを回転中心として往復回転自在に収納装備されている。
これによって、上記リングコア11は、後述する紐駆動孔との関係で、図4(a)の状態から左右方向にそれぞれ少なくとも100度の往復回動範囲が確保された状態となっている。
この各紐挿通ガイド部21,22は、本実施形態では図3(b)に示すX−Y座標上にあって、Y軸に対して左右10度に位置で且つ図1(a)に示す高さ位置に設けられている。
又、図3(a)の右側の内部に敷設された駆動用紐部材32Bは、他方の紐挿通ガイド部22を介して駆動軸31側から送り込まれると共に、駆動軸31上では点線矢印aの反対方向の右巻きに巻回されるようになっている。
符号31Dは、駆動軸31の先端部に装着された回動用つまみを示す。オペレータは、後述するように、この回動用つまみ31Dを回すことにより、可変リアクターのインダクタンスの値を適度に且つ自在に設定し得るようになっている。
この駆動軸31は、上側に設置された一方の円盤状支持板41の中央部に予め設けられた貫通孔41aを介して上方に突出した状態で回転自在に配設され、その下端部が下側に設置された他方の円盤状支持板42の内側中央部分で回転自在に保持されている。
これにより、駆動軸31は軸方向の移動(ガタ)がなくなり、その円滑な回転動作が保証された構造となっている。
ここで、図4(b)では、お互いの磁気ギャップG2 に対して、磁気ギャップG1 を左方向(左回り)に90度ずらせた状態を示している。
各リングコア11,12は、同一軸上にリングコア11,12の端面11a,12a同士を突き合わせているため、リングコア11,12を相対回転させて、一方のリングコア11の磁気ギャップG1 と他方のリングコア2の磁気ギャップG2 とが一致する位置からずれた際に、一方のリングコア11の磁気ギャップG1 は、他方の磁性体リングコア12の磁気ギャップG2 がない端面12aに対面することとなる。
つまり、リングコア11,12の素材の飽和起磁力(巻線の飽和限界電流値)の範囲内での可変インダクターを形成することができる。
次に、上述したように構成され機能する可変インダクターのインダクタンス値について、その変化の度合いを実験的に確認したので、以下、これを実際に得られたインダクタンス値の変化の一例として説明する。
そして、リング状ケース20内に収納された上段のリングコア11を回転させ、図1(b)に示すように夫々の磁気ギャップG1 ,G2 の位置をθ°ズラした場合のインピーダンス変化をインピーダンスメータによって計測した結果を図5に示す。
Z=jX=jωL、とおいて、L =X/ωとおけば、θの変化に対するインダクタンス値であるL〔mH〕が求められる。
尚、この時、使用したリングコア11,12としてフェライトコアを用い、そのリングコア11,12のサイズは、外径60〔mm〕、内径40〔mm〕、厚さ18〔mm〕で、磁気ギャップG1 ,G2 の幅は共に4〔mm〕とした。
以上のように、本実施形態にかかる可変リアクタによれば、突き合わせて配置した磁性体のリングコア11,12を相対回転させると、リングコア11,12の磁気ギャップG1 ,G2 の位置関係が円周方向にずれることにより、前記磁気ギャップG1 ,G2 における漏洩磁束が夫々相手方のリングコア12又は11の磁気ギャップG2 又はG1 或いは磁気ギャップのない端面によって再び相手側リングコア12又は11内に結合するため、磁気ギャップG1 ,G2 の効果が低下し、結果として電流による磁性体リングコアの磁気飽和とインダクタンス値とを可変にすることができるという効果を有する。
次に、他の実施形態を図6に基づいて説明する。
ここで、前述した実施形態の場合と同一の構成部材については同一の符号を用いるものとする。
その他の構成は、前述した図1乃至図4の実施形態の場合と同一となっている。
同時に、紐部材32Bも、その両端部が環状駆動リング71およびリングコア11に係止されているので、その全体が緩んだ状態で同方向に回転移動する。
そして、上記他の実施形態にあっても、インダクタンス値Lの変化は、前述した実施形態における図5の場合と同等の実験値を得ることができた。
その他の構成およびその作用効果は、前述した図1乃至図4の実施形態と同一となっている。
2 巻線
11,12 磁性体リングコア(リングコア)
11a,12a リングコアの当接端面
15,15a,16,16a 紐部材係止部(コア側紐係止部)
15b,16b 外部リング側紐係止部(係止部)
20 リング状ケース
20A 内筒
20B 外筒
20K 内径側空間領域
21,21a,22,22a 紐挿通ガイド部(紐ガイド孔)
30,62 往復回動力付勢機構
31 駆動軸(コア駆動操作手段)
71 環状駆動リング(コア駆動操作手段)
G1 ,G2 磁気ギャップ
Claims (3)
- インダクタンス値を変化させることが可能な可変インダクターであって、
磁性体の円環構造の一部に磁気ギャップが形成された少なくとも二つのリングコアを有し、前記各リングコアは、その中心軸を同一にして且つ端面同士を突き合わせた状態で配置されると共に、前記各リングコアの内の一のリングコアは、他の一のリングコアに対して回転可能にリング状ケース内に組み込まれた構成とし、
前記インダクターを構成する巻線は、前記複数のリングコア全体を一つとしてそのコア部分を中心軸に沿って内側と外側とを連続して巻回するように、前記リング状ケースに巻回装備されてなり、
前記リング状ケース内には、前記各リングコアの内の一のリングコアが回転可能状態に又他の一のリングコアが非回転状態に装備されると共に、このリング状ケースには、他の一のリングコアとの当接状態を維持しつつ同軸上で前記一のリングコアに往復回動を付勢する往復回転力付勢機構を装備し、
この往復回転力付勢機構を、
前記リング状ケース内にて環状側面の内壁面に沿ってそれぞれ反対方向に向けて敷設されその先端部が前記一のリングコアに固着された一方と他方の2本の紐状の駆動力伝達部材と、この各駆動力伝達部材の他端部を前記リング状ケース外にあって係止すると共に前記一のリングコアの回転駆動に際してはその駆動方向に沿った一方の駆動力伝達部材に引張力を付加することにより当該一のリングコアに当該駆動方向の回転力を付勢するコア駆動操作手段とを備えた構成とし、
前記コア駆動操作手段を、前記リング状ケースの中心軸にて回転自在に装備され前記一方と他方の2本の紐状の駆動力伝達部材を巻回若しくは巻き放す機能を備えた駆動軸により構成し、
前記2本の紐状の駆動力伝達部材は、前記リング状ケースの中心部側環状側面のケース内の壁面に沿って敷設されると共に、当該リング状ケースの環状側面の中心部側に予め形成された紐ガイド孔を介して敷設され且つ前記駆動軸によって巻回若しくは巻き放される構成としたことを特徴とする可変インダクター。 - 請求項1に記載の可変インダクターにおいて、
前記コア駆動操作手段を、前記リング状ケースと中心軸を一つにして当該リング状ケースの外周囲に回転自在に装備された環状駆動リングにより構成すると共に、
前記2本の紐状の駆動力伝達部材は、前記リング状ケースの環状側面の外周側のケース内の壁面に沿って敷設されると共に、当該リング状ケースの外周側に予め形成された紐ガイド孔を介して敷設され且つ前記環状駆動リングによる一方と他方の各回転動作に付勢されて前記一のリングコアに一方と他方の各回転動作を付勢する構成としたことを特徴とする可変インダクター。 - 請求項1又は2に記載の可変インダクターにおいて、
前記各リングコアは、同一形状で且つ内径および外径が同一のリングコアであって、その中心軸が相互に一致した状態で前記リング状ケースに組み込まれて成ることを特徴とした可変インダクター。
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