以下、本発明の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
また、説明対象の実施形態において、既に説明された実施形態と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
符号は、同一又は類似する構成のものについて、「第1端子7A〜第6端子7F」などのように、大文字のアルファベットの付加符号を付すことがある。また、この場合において、単に「端子7」というなど、名称の頭の番号、及び、上記の付加符号を省略することがあるものとする。
<第1の実施形態>
(SAW装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図である。
SAW装置1は、いわゆるウェハレベルパッケージ(WLP)形のSAW装置により構成されている。SAW装置1は、基板3と、基板3に固定されたカバー5と、カバー5から露出する第1端子7A〜第6端子7Fと、基板3のカバー5とは反対側に設けられた裏
面部9とを有している。
SAW装置1は、複数の端子7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、SAW装置1によりフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数の端子7のいずれかを介して出力する。SAW装置1は、例えば、カバー5側の面を不図示の回路基板等の実装面に対向させて当該実装面に載置された状態で樹脂封止されることにより、端子7を実装面上の端子に接続した状態で実装される。
基板3は、圧電基板により構成されている。具体的には、例えば、基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶等の圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。基板3は、第1主面3aと、その背面側の第2主面3bとを有している。基板3の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、Y方向を長手方向とする矩形である。基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さは0.2mm〜0.5mm、1辺の長さは0.5mm〜2mmである。
カバー5は、第1主面3aを覆うように設けられている。カバー5の平面形状は、例えば、基板3の平面形状と同様であり、本実施形態では、Y方向を長手方向とする矩形である。カバー5は、例えば、第1主面3aと概ね同等の広さを有し、第1主面3aの概ね全面を覆っている。
複数の端子7は、カバー5の上面(基板3とは反対側の面)から露出している。複数の端子7の数及び配置位置は、SAW装置1の内部の電子回路の構成に応じて適宜に設定される。本実施形態では、6つの端子7がカバー5の外周に沿って配列されている。
裏面部9は、特に図示しないが、例えば、第2主面3bの概ね全面を覆う裏面電極と、裏面電極を覆う絶縁性の保護層とを有している。裏面電極により、温度変化等により基板3表面にチャージされた電荷が放電される。保護層により、基板3の損傷が抑制される。なお、以下では、裏面部9は、図示や説明が省略されることがある。
図2は、カバー5の一部を破断して示すSAW装置1の斜視図である。
カバー5は、枠状に形成され、第1主面3a上に配置された枠部35と、枠部35の開口を塞ぐ蓋部37とを有している。そして、第1主面3a(厳密には後述する保護層25)、枠部35及び蓋部37により囲まれた空間により、後述するSAW素子11(図3参照)の振動を容易化する第1振動空間10A及び第2振動空間10Bが形成されている。
カバー5は、内側に面して振動空間10を構成する内壁面5a、及び、外側に面する外壁面5bを有している。なお、内壁面5aは、枠部35により構成されている。外壁面5bは、枠部35及び蓋部37により構成されている。
枠部35は、概ね一定の厚さの層に振動空間10となる開口が形成されることにより構成されている。枠部35の厚さ(振動空間10の高さ)は、例えば、数μm〜30μmである。蓋部37は、枠部35上に積層される、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部37の厚さは、例えば、数μm〜30μmである。
枠部35及び蓋部37は、例えば、感光性の樹脂により形成されている。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
枠部35及び蓋部37は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材
料により形成されていてもよい。本願では、説明の便宜上、枠部35と蓋部37との境界線を明示しているが、現実の製品においては、枠部35と蓋部37とが同一材料により形成され、一体的に形成されていてもよい。
端子7は、図2では第6端子7Fにおいてよく表れているように、第1主面3aに立てて設けられており、カバー5に形成された孔部5hを介してカバー5の上面に露出している。具体的には、端子7は、内壁面5aと外壁面5bとの間において、枠部35及び蓋部37を第1主面3aの面する方向へ貫通している。
また、端子7は、柱状に形成された柱状部7aと、柱状部7aの側面から突出するフランジ7bとを有している。柱状部7aは、カバー5を貫通し、フランジ7bは、カバー5の上面に積層されている。端子7の、フランジ7bを含む上端面は、回路基板などに接続されるランド7cを構成している。
フランジ7bは、柱状部7aの全周に亘って形成されるとともに、概ね一定の幅で形成されている。従って、ランド7cの形状は、柱状部7aの第1主面3aに平行な断面の形状に対して、一周り大きい相似形となっている。
第1主面3aには、SAW素子11(図3)に接続された第1パッド13A〜第6パッド13F(図2では一部のみ示す)が設けられている。端子7は、パッド13上に設けられることにより、SAW素子11と接続されている。なお、パッド13の平面形状は、端子7がその範囲に収まるものであればどのようなものでもよいが、柱状部7aの第1主面3aに平行な断面の形状に対して、一周り大きい相似形となっていることが好ましい。
図3は、基板3の第1主面3aにおける配線構造を示す模式的な平面図である。なお、図3においては、振動空間10の範囲(内壁面5aの形状)、柱状部7aの断面形状、及び、ランド7c(フランジ7b)の形状を2点鎖線で示している。また、この平面図を参照する説明においては、基板3の輪郭を外壁面5bの輪郭として参照することがある。
第1主面3aには、第1SAW素子11A及び第2SAW素子11Bが設けられている。第1SAW素子11Aは、例えば、SAW共振子であり、第2SAW素子11Bは、例えば、SAWフィルタである。
SAW素子11は、1以上のIDT(InterDigital Transducer)電極15と、IDT電極15の、SAWの伝搬方向(X方向)両側に配置された2つの反射器17とを有している。
IDT電極15は、一対の電極から構成されている。この一対の電極は、弾性表面波の伝搬方向(X方向)に延びるバスバー15aと、バスバー15aから上記伝搬方向に直交する方向(Y方向)に伸びる複数の電極指15bとを有し、電極指15bが互いに噛合うように配置されている。なお、図3は模式図であることから、電極指15bは、実際の数よりも少ない数で示されている。
複数のパッド13及び複数のSAW素子11は、複数の配線27を介して適宜に接続されている。なお、複数の配線27の一部は、絶縁体21を介して互いに立体交差している。
第1振動空間10Aは、第1SAW素子11A上に形成されており、第2振動空間10Bは、第2SAW素子11B上に形成されている。2つの振動空間10は、基板3の長手方向において配列されている。
図2及び図3に示すように、各振動空間10は、概略、6角形状に形成され、6つの角
部はすべて鈍角とされている。別の観点では、各振動空間10は、基板3の短手方向を長手方向とする矩形に形成され、角部が面取りされていると捉えることもできる。なお、第1振動空間10Aは、複数の配線27の立体交差部を収容するように一部が拡張されている。
各振動空間10に対して、複数の端子7は、各振動空間10を矩形と捉えたときにおける、振動空間10の4隅に隣接して配置されている。そして、複数の端子7は、振動空間10の鈍角とされた角部を構成する2つの辺の一方の辺に対応する内壁面の一部(以下、面取り面5cとも称する)と対向している。
各端子7の柱状部7aは、その側面のうち、内壁面5a及び外壁面5b側に位置する面が、内壁面5a及び外壁面5bに平行になるように形成されている。具体的には、各端子7の柱状部7aは、内壁面5aに平行な内側近接面7aaと、外壁面5bに平行な外側近接面7abとを有している。
カバー5の角部に配置された第1端子7A、第3端子7C、第4端子7D及び第6端子7Fは、外壁面5bの直交する2平面に隣接していることから、2つの外側近接面7abを有している。また、これら4つの端子7は、1つの振動空間10に隣接していることから、1つの内側近接面7aaを有している。そして、これら4つの端子7の柱状部7aは、第1主面3aの平面視において、全体として、概略、内側近接面7aaを斜辺とする直角三角形に形成されている。ただし、鋭角の角部は平面により面取りされており、柱状部7aは、五角形と捉えられることもできる。
残りの第2端子7B及び第5端子7Eは、外壁面5bの1平面に隣接していることから、1つの外側近接面7abを有している。また、これら2つの端子7は、2つの振動空間10に挟まれていることから、2つの内側近接面7aaを有している。そして、これら2つの端子7の柱状部7aは、第1主面3aの平面視において、全体として、概略、外側近接面7abを底辺とする2等辺三角形に形成されている。ただし、底角の角部は平面により面取りされており、柱状部7aは、五角形と捉えられることもできる。
各端子7のランド7cは、上述のように、柱状部7aの断面形状と相似の形状を有している。従って、柱状部7aと同様に、ランド7cは、外周縁部において、内壁面5aに平行な内側近接縁部7caと、外壁面5bに平行な外側近接縁部7cbとを有している。なお、ランド7cの形状は、柱状部7aの形状と相似であるので、カバー5の4隅の端子7、及び、他の2つの端子7の形状の説明は省略する。
図4は図3のIV−IV線における断面図である。ただし、図4は、図3よりも概念的に描かれており、SAW素子11は図3よりも模式的に示されている。
SAW装置1は、第1主面3aに設けられた第1導電層19と、第1導電層19及び第1主面3aに積層された保護層25とを有している。カバー5は、保護層25に積層されている。端子7は、カバー5に対して成膜された下地層39と、下地層39に包まれた中実部41とにより構成されている。
第1導電層19は、第1主面3a上における回路素子や配線等の構成に関して基本となる層である。具体的には、第1導電層19は、SAW素子11、パッド13、及び、複数の配線27の一部を構成している。第1導電層19は、例えば、Al−Cu合金等のAl合金により形成されており、その厚さは、例えば、100〜300nmである。
保護層25は、SAW素子11の酸化防止等に寄与するものである。保護層25は、例
えば、酸化珪素(SiO2など)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化珪素、又は、シリコンにより形成されている。保護層25の厚さは、例えば、第1導電層19の厚さの1/10程度(10〜30nm)である。保護層25は、パッド13の配置位置以外においては、第1主面3a全体に亘って形成されている。
下地層39は、例えば、銅若しくはチタンなどの金属により形成されている。下地層39は、孔部5hの底面、孔部5hの内周面、及び、カバー5の上面の、孔部5hの周囲部分に成膜されている。下地層39の厚さは、概ね均一である。当該厚さは、適宜に設定されてよいが、例えば、下地層39が銅からなる場合は300nm〜1μm、下地層39がチタンからなる場合は10nm〜100nmである。
中実部41は、例えば、銅により形成されている。中実部41は、下地層39の内側において孔部5hに充填されている。また、中実部41は、孔部5hにおいてカバー5の上面よりも高く形成されるとともに、カバー5の上面の、孔部5hの周囲部分において下地層39上に形成されている。
(SAW装置の製造方法)
図5(a)〜図6(c)は、SAW装置1の製造方法を説明する、図4(図3のIV−IV線)に対応する断面図である。製造工程は、図5(a)から図6(c)まで順に進んでいく。
以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって基板3となる母基板を対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図5(a)〜図6(c)では、1つのSAW装置1に対応する部分のみを図示する。また、導電層や絶縁層は、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いる。
図5(a)に示すように、まず、基板3の第1主面3a上には、第1導電層19が形成される。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical
Vapor Deposition)法等の薄膜形成法により、第1主面3a上に第1導電層19となる金属層が形成される。次に、金属層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法等によりパターニングが行われる。パターニングにより、SAW素子11、パッド13、及び、複数の配線27の一部が形成される。すなわち、第1導電層19が形成される。
第1導電層19が形成されると、図5(b)に示すように、保護層25が形成される。具体的には、まず、適宜な薄膜形成法により保護層25となる薄膜が形成される。薄膜形成法は、例えば、スパッタリング法若しくはCVD法である。次に、第1導電層19のうちパッド13を構成する部分が露出するように、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去される。これにより、保護層25が形成される。
特に図示しないが、保護層25が形成されると、絶縁体21(図3)、及び、絶縁体21に積層される配線27を構成する第2導電層23(図3)が形成される。具体的には、まず、絶縁体21となる薄膜がCVD法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。そして、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去され、絶縁体21が形成される。次に、第1導電層19と同様に、金属層の形成及びパターニングが行われ、第1導電層19により構成された配線27に絶縁体21を介して立体交差する他の配線27が形成される。すなわち、第2導電層23が形成される。
第2導電層23が形成されると、図5(c)に示すように、枠部35となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂により形成されたフィルムが貼り付けられることにより、又は、保護層25と同様の薄膜形成法により形成される。
枠部35となる薄膜が形成されると、図5(d)に示すように、フォトリソグラフィー法等により、薄膜の一部が除去され、振動空間10を構成する開口、及び、孔部5hの下方部分である孔部35hが形成される。また、薄膜は、ダイシングライン上においても、一定の幅で除去される。このようにして枠部35は形成される。
枠部35が形成されると、図6(a)に示すように、蓋部37が形成される。具体的には、まず、蓋部37となる薄膜が形成される。薄膜は、例えば、感光性樹脂のフィルムが貼り付けられることにより形成される。そして、薄膜が形成されることにより、枠部35の開口が塞がれて、振動空間10が構成される。薄膜は、フォトリソグラフィー法等により、パッド13上の部分及びダイシングライン上の部分が除去される。これにより、蓋部37が形成される。
このとき形成される孔部5h(孔部35h含む)の第1主面3aに平行な断面の形状は、先に説明した、各端子7の柱状部7aの第1主面3aに平行な断面の形状と同一である。
蓋部37が形成されると、図6(b)に示すように、下地層39及びレジスト層53が順に形成される。下地層39は、カバー5の上面及び孔部5hの内部に亘って形成される。下地層39は、例えば、スパッタ法により形成される。
レジスト層53は、孔部5h及びその周囲において、下地層39が露出するように形成される。レジスト層53は、例えば、スピンコート等により感光性樹脂の薄膜が形成され、その薄膜がフォトリソグラフィーによりパターニングされることにより形成される。
このとき形成される、レジスト層53の、下地層39を露出させる孔部53hの第1主面3aに平行な断面の形状は、先に説明した、各端子7のランド7cの形状と同一である。
レジスト層53が形成されると、図6(c)に示すように、電気めっき処理により、下地層39の露出部分に金属を析出させ、中実部41を形成する。
その後、下地層39のレジスト層53に被覆されていた部分及びレジスト層53が除去される。これにより、下地層39及び中実部41からなり、先に説明した断面形状を有する端子7が形成される。なお、端子7のカバー5からの露出面は、ニッケルや金などにより構成されてもよい。
図7は、本実施形態の効果を、第4端子7Dを例にとって説明する模式的な平面図である。なお、図7は、柱状部7aの説明にも、ランド7cの説明にも利用できる数学的な図であることから、柱状部7aの符号に加えて、ランド7cの符号を括弧内に付している。また、図7において、端子7は、三角形(五角形)の角部が曲面により面取りされている。
端子7の柱状部7aに収まる最大の仮想円C1を考える。本実施形態の端子7は、このような仮想円C1と同一の断面形状の柱状部を有する端子を基準にして考えると、内壁面5aとの最短距離Lを短くすることなく、柱状部7aの断面積を大きくすることができて
いる。換言すれば、柱状部7aの断面積を十分に確保しつつも、カバー5を大型化することなく、柱状部7aと内壁面5aとの間の肉厚を確保できる。そして、肉厚の確保により、応力集中に起因するクラックの発生が抑制される。
このような効果は、内側近接面7aaと内壁面5aとの幾何学的関係が、仮想円C1の円周と内壁面5a(直線)との幾何学的関係よりも、平行に近いことにより奏されると捉えることができる。
ここでいう、より平行に近いとは、内壁面5aの位置の変化に対する、内壁面5aと、内側近接面7aa(又は仮想円C1の円周)との、内壁面5aの法線上の距離の変化がより小さいことをいうものとする。
例えば、仮想円C1に関しては、内壁面5a上の位置P1における内壁面5aと仮想円C1との距離y1と、位置P1から内壁面5aに沿って距離r(仮想円C1の半径)離間した位置P2における内壁面5aと仮想円C1との距離y2とでは、距離rの差が生じている。
一方、本実施形態の端子7の内側近接面7aaに関しては、位置P1における内壁面5aと内側近接面7aaとの距離y1と、位置P2における内壁面5aと内側近接面7aaとの距離y3とは同一である。
すなわち、内壁面5aにおける位置P1から位置P2への変化に対する、内壁面5aと内側近接面7aaとの距離の変化(0)は、内壁面5aにおける位置P1から位置P2への変化に対する、内壁面5aと仮想円C1の円周との距離の変化(r)よりも小さい。
そして、このような距離の変化が小さいことにより、端子7の内壁面5a側への突出量が端子の断面積に対して相対的に抑制され、ひいては、上述のような、カバーの小型化、端子の断面積の確保、及び、カバーの端子付近における強度向上の効果が奏される。
なお、上記の説明から理解されるように、本願においては、平行の語は、直線又は平面について説明する語に限定されないものとする。すなわち、本願においては、曲線又は曲面についても、平行の語を用いて説明することがあるものとする。
また、位置P1と位置P2との間隔を極めて小さくすると、内壁面5aと仮想円C1との関係も平行に近いということになってしまうから(内壁面5aと仮想円C1の接線との関係を判定することになってしまうから)、平行の程度を比較する判定においては、位置P1と位置P2との距離を十分な大きさ(例えば仮想円の半径程度)とすることが好ましい。
内側近接面7aaと内壁面5aとの関係について説明したが、外側近接面7abと外壁面5bとの関係についても、仮想円C1を基準として同様のことがいえる。また、平面視における肉厚だけでなく、3次元的な肉厚に関して考えれば、内側近接縁部7caと内壁面5aとの関係、及び、外側近接縁部7cbと外壁面5bとの関係についても、ランド7cに収まる最大の仮想円を基準として同様のことがいえる。
次に、端子7の柱状部7aの第1主面3aに平行な断面の面積と同等の面積を有する仮想円C2を考える。本実施形態の端子7は、このような仮想円C2と同一の断面形状の柱状部を有する端子を基準にして考えると、断面積を減じることなく、内壁面5aとの最短距離を長くすることが可能である。換言すれば、柱状部7aの断面積を十分に確保しつつも、カバー5を大型化することなく、柱状部7aと内壁面5aとの間の肉厚を確保できる
。そして、肉厚の確保により、応力集中に起因するクラックの発生が抑制される。
このような効果は、内側近接面7aaと内壁面5aとの幾何学的関係が、仮想円C2の円周と内壁面5a(直線)との幾何学的関係よりも、平行に近いことにより奏されると捉えることができる。
なお、平行の考え方や平行に近いことによる作用の説明は、仮想円C1を基準とした場合と同様であり、説明は省略する。また、内側近接面7aaと内壁面5aとの関係について説明したが、外側近接面7abと外壁面5bとの関係についても、仮想円C2を基準として同様のことがいえる。内側近接縁部7caと内壁面5aとの関係、及び、外側近接縁部7cbと外壁面5bとの関係についても、ランド7cの面積と同等の面積を有する仮想円を基準として同様のことがいえる。
上記の説明では、仮想円との比較において相対的に平行に近いことにより本実施形態の効果が奏されることを述べたが、当然に、幾何学的関係が平行そのものであれば、カバーの小型化、端子の断面積の確保、及び、カバーの端子付近における強度向上の効果は好適に図られる。すなわち、好適には、内側近接面7aaと内壁面5aとの幾何学的関係、外側近接面7abと外壁面5bとの幾何学的関係、内側近接縁部7caと内壁面5aとの幾何学的関係、及び、外側近接縁部7cbと外壁面5bとの幾何学的関係は、内壁面5a若しくは外壁面5bとの距離が変化しない関係である。
第1主面3aの平面視において、端子7の内側近接面7aa及び内壁面5aは、互いに平行な直線状に形成されている。従って、形状がシンプルであり、設計が容易である。なお、同様のことは、外側近接面7abと外壁面5bとの関係、内側近接縁部7caと内壁面5aとの関係、及び、外側近接縁部7cbと外壁面5bとの関係についてもいえる。
第1主面3aの平面視において、振動空間10は、内壁面5aに面取り面5cが形成されることにより角部が面取りされており、端子7は、面取り面5cに近接し、上記の幾何学的関係を有している。従って、振動空間10を大きく確保しつつ、内壁面5aと端子7との間の肉厚を大きくする効果が増進される。
なお、上述した幾何学的関係が平行に近いことによる効果は、別の観点では、第1主面3aの平面視において、端子7の内側近接面7aa(外側近接面7ab、内側近接縁部7ca、外側近接縁部7cb)が柱状部7a(ランド7c)の面積と同等の面積を有する仮想円よりも曲率が小さいことにより奏されると捉えることもできる。
以上の実施形態において、SAW装置1は本発明の弾性波装置の一例であり、SAW素子11は本発明の弾性波素子の一例であり、内側近接面7aa、外側近接面7ab、内側近接縁部7ca及び外側近接縁部7cbは本発明の近接面の一例である。
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係るSAW装置の図7に相当する模式的な平面図である。なお、図8も、図7と同様に、柱状部107aの説明だけでなく、ランド107cの説明にも利用できるものであることから、括弧内にランド107cの符号を付している。
第2の実施形態の端子107においても、第1の実施形態と同様に、内側近接面107aaと内壁面5aとの幾何学的関係、外側近接面107abと外壁面5bとの幾何学的関係、内側近接縁部107caと内壁面5aとの幾何学的関係、及び、外側近接縁部107cbと外壁面5bとの幾何学的関係は、仮想円C1又はC2の円周と直線との幾何学的関係よりも、平行に近い。そして、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
ただし、内側近接面107aa、外側近接面107ab、内側近接縁部107ca及び外側近接縁部107cbは、第1主面3aの平面視において直線状に形成されておらず、仮想円C1又はC2よりも曲率が小さい弧状に形成されている。
第2の実施形態の端子107は、第1の実施形態に比較すると、円形に近い。この場合、第1の実施形態において例示した端子の形成方法(カバー5を覆う下地層39に電圧を印加して金属を析出させ、孔部内に金属を充填し、端子を形成する方法)において、孔部内への金属の充填が好適に行われるというメリットがある。
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態に係るSAW装置の枠部235の上面の位置における、第1主面3aに平行な断面を示す図である。
第3の実施形態の端子207においても、第1の実施形態と同様に、内側近接面207aaと内壁面205aとは平行になっている。すなわち、内側近接面207aaと内壁面205aとの距離は一定である。
ただし、第3の実施形態では、内側近接面207aaは凹状に形成されている。具体的には、以下のとおりである。
振動空間210は、長円形(若しくは楕円形)に形成されている。振動空間210は、矩形の四隅が曲面状の面取り面205cにより面取りされていると捉えることもできる。面取り面205cは、外側を凸とする曲面である。
端子207は、面取り面205cに近接して配置されている。内側近接面207aaは、面取り面205cとの距離が一定になるように、振動空間10側を凹として湾曲して形成されている。
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、カバーの小型化、端子の断面積の確保、及び、カバーの端子付近における強度向上を図ることができる。また、当該効果は、第1の実施形態と同様に、内側近接面207aaと内壁面205aとの幾何学的関係が、柱状部207aに収まる最大の仮想円(図示省略)などの円周と直線との幾何学的関係よりも、平行に近いことにより奏されると捉えることができる。
なお、内壁面205aは湾曲しているが、このような場合であっても、第1の実施形態と同様に、相対的に平行に近いか否かの判定ができる。すなわち、内壁面205aの位置P1から位置P2への変化(位置P1と位置P2との内壁面205aに沿う距離は例えば仮想円の半径)に対する、内壁面205aと、内側近接面207aaとの、内壁面205aの法線Ln1及びLn2上の距離y1及びy3の変化が、図7に示した仮想円に関する距離y1及びy2の変化より小さいか否かにより、仮想円及び直線に比較して平行に近いか否か判定できる。
なお、ランド207cの内側近接縁部207caと内壁面205aとの幾何学的関係も、内側近接面207aaと内壁面205aとの幾何学的関係と同様である。
<第4の実施形態>
図10は、第4の実施形態に係るSAW装置の枠部335の上面の位置における、第1主面3aに平行な断面を示す図である。
第4の実施形態の端子307においても、第1の実施形態と同様に、内側近接面307aaと内壁面305aとは平行になっている。すなわち、内側近接面307aaと内壁面305aとの距離は一定である。
ただし、第4の実施形態では、柱状部307aは断面形状が円形に形成されている。換言すれば、柱状部307aは、振動空間310側へ膨らんでいる。そして、内壁面305aが端子307とは反対側へ膨らむことにより、内側近接面307aaと内壁面305aとは平行になっている。
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、カバーの小型化、端子の断面積の確保、及び、カバーの端子付近における強度向上を図ることができる。また、当該効果は、第1の実施形態と同様に、内側近接面307aaと内壁面305aとの幾何学的関係が、柱状部307aに収まる最大の仮想円(図示省略)などの円周と直線との幾何学的関係よりも、平行に近いことにより奏されると捉えることができる。
なお、ランド307cの内側近接縁部307caと内壁面305aとの幾何学的関係も、内側近接面307aaと内壁面305aとの幾何学的関係と同様である。
<第5の実施形態>
図11は、第5の実施形態に係るSAW装置401の図4に相当する断面図である。
SAW装置401は、端子407が、カバーの内部にフランジ407dを有している点のみが第1の実施形態のSAW装置1と相違する。なお、端子407において、柱状部7a及びフランジ7bの形状は、第1の実施形態と同様である。
フランジ407dは、枠部35と蓋部37との間に配置されている。また、フランジ407dの平面形状は、フランジ7bと同一形状である。すなわち、特に図示しないが、フランジ407dにおいて、内側近接縁部と内壁面5aとの幾何学的関係、及び、外側近接縁部と外壁面5bとの幾何学的関係は、フランジ407dに収まる最大の仮想円などの円周と直線との幾何学的関係よりも平行に近い。
図12(a)〜図12(c)は、第5の実施形態のSAW装置401の製造方法を説明する断面図である。
枠部35の形成までは、第5の実施形態は、第1の実施形態と同様である。すなわち、第5の実施形態においても、第1の実施形態の図5(a)〜図5(d)までの工程が行われる。
次に、図12(a)に示すように、第1下地層39A及び第1レジスト層53Aが順に形成される。第1下地層39Aは、枠部35の上面及び孔部35hの内部に亘って形成される。第1レジスト層53Aは、孔部35h及びその周囲において、第1下地層39Aが露出するように形成される。
第1レジスト層53Aが形成されると、図12(b)に示すように、電気めっき処理により、第1下地層39Aの露出部分に金属を析出させ、端子407の下方部分の第1中実部41Aを形成する。そして、第1レジスト層53A、及び、第1下地層39Aのうち第1レジスト層53Aに覆われた部分は除去される。
その後は、図12(c)に示すように、第1の実施形態の図6(a)以降の工程と同様の工程が行われる。すなわち、蓋部37の形成、第2下地層39B及び第2レジスト層5
3Bの形成、めっき処理による金属の析出、第2レジスト層53B等の除去が行われる。ただし、金属の析出では、端子407の上方側の第2中実部41Bが形成される。
なお、本実施形態では、フランジ407dが第1下地層39A及び第1中実部41Aにより形成される場合を示したが、図12(a)の工程の後、第1レジスト層53A、及び、第1下地層39Aのうち第1レジスト層53Aが積層された部分を除去し、次いで、図6(a)以降の工程を行うことにより、第1下地層39Aのみによりフランジ407dを形成することもできる。
フランジ407dは、端子7がカバー5から引き抜かれることを抑制することに寄与しうる。その結果、柱状部7aの断面積を小さくすることが可能であり、ひいては、平行に近い幾何学的関係により奏される効果を増進させることができる。
<第6の実施形態>
図13は、第6の実施形態に係るSAW装置の枠部の上面の位置における第1主面3aに平行な断面図の一部拡大図である。
第6の実施形態の端子507において、柱状部7aの形状は、第1の実施形態の端子7の柱状部7aの形状と同様である。ただし、第6の実施形態の端子507において、ランド307cの形状は、第4の実施形態のランド307cの形状と同様である。すなわち、第6の実施形態の端子507は、柱状部7aのみが、内壁面5a及び外壁面5bに対して平行な部分を有している。
第6の実施形態においては、ランドの形状として円形を例示したが、ランドの形状は、矩形等の適宜な形状とされてよい。このように、柱状部のみにおいて、平行な幾何学的関係による効果を得るようにすることにより、ランドの形状については、SAW装置が実装される回路基板側のランドの形状などを考慮して設計することができる。
<第7の実施形態>
図14は、第7の実施形態に係るSAW装置の枠部の上面の位置における第1主面3aに平行な断面図の一部拡大図である。
第7の実施形態の端子607は、第6の実施形態とは逆に、ランド7cのみが、内壁面5a及び外壁面5bに対して平行な部分を有している。端子607の柱状部307aの断面形状は、第4の実施形態の柱状部307aの断面形状と同様の円形である。
このような端子607においては、ランド7cにおいて、平行な幾何学的関係によるカバー5の強度向上等の効果を得つつ、柱状部307aにおいては、金属の充填を行いやすいという効果が得られる。
<第8の実施形態>
図15は、第8の実施形態に係るSAW装置501の図4に相当する断面図である。
SAW装置501は、端子507を縦方向(紙面の上下方向)に切断したときの断面形状が第1の実施形態のSAW装置1と相違する。
すなわち、SAW装置501では端子507は、第1主面3a側が第1主面3aとは反対側よりも径が大きくなっているテーパ部を有している。端子507がこのような形状を有していることにより、端子507がカバー5から引き抜かれることを抑制することができる。なお、端子507の第1主面3aに平行な断面の形状は、第1の実施形態のSAW
装置1と同じである。
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよい。
弾性波装置において、保護層(25)は省略されてもよいし、逆に、他の適宜な層などが形成されてもよい。例えば、パッド13と端子7との間に介在する接続強化層、枠部と蓋部との間に形成される回路構成層が設けられてもよい。
また蓋部上に蓋部を補強するための金属層を設けてもよい。蓋部上に金属層を設けることによって外部から大きな圧力が印加された場合であっても蓋部が変形するのを抑制して振動空間が大きく歪むのを防止することができる。このような金属層は例えばCuからなり、端子を形成するのと同じプロセスでめっきにより作製することができる。
端子は、主面に平行な断面の面積及び形状が、主面側からカバーの上面側へ亘って一定でなくてもよい。例えば、端子は、主面側が拡径する、若しくは、主面側が縮径するテーパ状に形成されていてもよい。