以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。なお、図3中Fは前側センサの撮像範囲(図中の二点鎖線で示す範囲)を、Rは後側センサの撮像範囲(図中の一点差線で示す範囲)をそれぞれ示している。
本実施形態にかかる車両長推定装置1を搭載した車両2は、図1に示すように、フルトラクタ10とフルトレーラ20とからなる。フルトラクタ10は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。車体フレーム11の前部及び後部には、車幅方向に沿って延びる複数の車軸(図示省略)が設けられている。各車軸の車幅方向両端には、走行車輪12が回転自在に支持されている。車体フレーム11の前上部には、略箱状体のキャブ13が、車体フレーム11に取り付けられているキャブ13マウント(図示省略)によって前方へ傾斜可能に支持されている。また、車体フレーム11は、キャブ13の後方で、荷台14を下方から支持する。車体フレーム11の後端下部には、後方へ延びるピントルフック(図示省略)が設けられている。ピントルフックの後端部はフック状に形成されている。
フルトレーラ20は、前後方向に延びる車体フレーム21を有する。車体フレーム21の前部及び後部には、車幅方向に沿って延びる複数の車軸(図示省略)が設けられている。各車軸の車幅方向両端には、走行車輪22が回転自在に支持されている。車体フレーム21は、荷台24を下方から支持する。車体フレーム21の前端部には、前方へ延びるルネットアイ23が設けられている。ルネットアイ23の前端部はリング状に形成されている。
フルトラクタ10のピントルフックのフック状の後端部と、フルトレーラ20のルネットアイ23のリング状の前端部と、が係合することによって、フルトラクタ10とフルトレーラ20とが連結されて、フルトラクタ10がフルトレーラ20を牽引可能な状態となる。
本実施形態にかかる車両長推定装置1は、車両2に搭載され、図2に示すように、前側センサ(前側外部情報取得手段)30と、後側センサ(後側外部情報取得手段)31と、車速センサ32と、計時部33と、処理ユニット40と、を備える。また、車両長推定装置1は、車両2に搭載され、経路案内や巻き込み事故が発生するおそれがあることの報知を行う情報提供装置60及び車両2の運行管理などを行う管理センターとの間で、ネットワークを介して、車両2の状態(車両2の全長など)や走行状態(走行速度など)の送信や管理センターからの指示の受信を行う通信装置70に接続されている。
前側センサ30は、例えば、CCDカメラからなるカメラセンサであり、キャブ13の前端上部に取り外し可能に取り付けられる。また、前側センサ30は、所望の画角と仰角とに設定可能なように、キャブ13に対して回転及び移動可能に取り付けられる。
後側センサ31は、例えば、CCDカメラからなるカメラセンサであり、フルトレーラ20の荷台24の後端上部に取り外し可能に取り付けられる。また、後側センサ31は、所望の画角と仰角とに設定可能なように、荷台24に対して回転及び移動可能に取り付けられる。
前側センサ30及び後側センサ31は、エンジン(図示省略)始動開始後、所定時間(例えば、0.1秒)毎に車両前方及び後方の路面を撮像し、撮像した前側画像及び後側画像を処理ユニット40に送信する。例えば、図3に示すように、車両2が道路のA地点からB地点まで走行したとき、A地点における(車両2の前端がA地点を通過するときの)車両2の前側センサ30は、図4に示すような前側画像を処理ユニット40に送信する。また、B地点における(車両2の後端がB地点を通過するときの)車両2の後側センサ31は図5に示すような後側画像を処理ユニット40に送信する。
車速センサ32は、所定時間(例えば、0.1秒)毎に車両2の車軸の回転数を電気的に検出し、車両2の走行速度を検出して検出した走行速度Vを処理ユニット40に送信する。
計時部33は、日時を計時する集積回路であるリアルタイムクロック(RTC)からなる。計時部33は、処理ユニット40の要求に応じて現在時刻を示す時間情報Tを出力する。
処理ユニット40は、CPU(Central Processing Unit)からなる処理部41と、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)などからなる記憶部(情報記憶手段)42と、を備える。
処理部41は、記憶部42に記憶された特徴抽出プログラムに従って特徴抽出処理を実行し、また、車両長推定プログラムに従って車両長推定処理を実行する。処理部は、特徴抽出処理において特徴抽出部(推定手段)43として機能し、また、車両長推定処理において、判定部(判定手段)44、走行距離算出部(走行距離算出手段)45、推定部(推定手段)46、出力部(出力手段)47として機能する。また、処理部41は、前側センサ30及び後側センサ31から出力される前側画像及び後側画像と車速センサ32から出力される走行速度Vを記憶部42に記憶する記憶制御部48として機能する。
記憶部42は、処理部41によって読み出される種々のプログラム(特徴抽出プログラム及び車両長推定プログラムを含む)や後述する路面標示のパターンを含む種々のデータを予め記憶している。路面標示とは、路面上にペイントされたものを総称し、速度制限や一次停止などを表す道路標示や、白線等のように走行車線の境界を表す区画線を含むものをいう。本実施形態において、路面標示のパターンとは、予め抽出された、これらの道路標示や区画線の特徴を示すデータである。
また、記憶部42には、前側センサ30が撮像した前側画像が記憶される前側画像記憶領域42aと、後側センサ31が撮像した後側画像が記憶される後側画像記憶領域42bと、車速センサ32が検出した走行速度Vが記憶される速度記憶領域42cが予め設定されている。前側画像記憶領域42a、後側画像記憶領域42b及び速度記憶領域42cは、記憶可能なデータ数の上限(上限データ数)が予め設定された領域であり、記憶されているデータ数が上限データに達すると、記憶制御部48は、新規の画像又は検出結果を記憶する際に、既に記憶されている画像又は検出結果のうち最初に記憶された最も古いものを削除し、新規の画像又は検出結果を記憶させる。上限データ数は、処理部41が実行する車両長推定処理が確実に実行可能な数に設定されている。
記憶制御部48は、前側センサ30から出力された前側画像を受信すると、計時部33に現在時刻を示す時間情報Tの出力を要求する。計時部33から時間情報Tを受信すると、受信した前側画像と時間情報Tとを関連付けて、記憶部42の前側画像記憶領域42aに記憶する。同様に、後側センサ31から出力された後側画像を受信すると、受信した後側画像と時間情報Tとを関連付けて、記憶部42の後側画像記憶領域42bに記憶する。例えば、車両2の前端が地点A(図3参照)を通過するときの時刻が12時30分10秒の場合、記憶制御部48は前側センサ30から出力された図4に示すような前側画像に12時30分10秒を示す時間情報T1を関連付けて前側記憶領域に記憶し、また、車両2の後端が地点Bを通過するときの時刻が12時30分12.5秒の場合、記憶制御部48は後側センサ31から出力された図5に示すような後側画像に12時30分12.5秒を示す時間情報T2を関連付けて記憶する。また、記憶制御部48は、車速センサ32から走行速度Vを受信すると、計時部33に現在時刻を示す時間情報Tの出力を要求する。計時部33から時間情報Tを受信すると、走行速度Vと時間情報Tとを関連付けて、記憶部42の速度記憶領域42cに記憶する。例えば、上記のように車両2の前端が地点A(図3参照)を通過するときの時刻が12時30分10秒で、このときの走行速度V1が時速30kmの場合、記憶制御部48は走行速度V1に12時30分10秒を示す時間情報T3を関連付けて前側記憶領域に記憶し、また、車両2の後端が地点Bを通過するときの時刻が12時30分12.5秒で、このときの走行速度V2が時速30kmのとき、記憶制御部48は走行速度V2に12時30分12.5秒を示す時間情報T4を関連付けて記憶する。
また、記憶制御部48は、特徴抽出部43が後述する前側画像から抽出した特徴及び距離Dfを、特徴を抽出した前側画像に関連付けて前側画像記憶領域42aに記憶する。
特徴抽出部43は、特徴抽出処理において、前側画像記憶領域42aに記憶されている前側画像及び後側画像記憶領域42bに記憶されている後側画像内の路面標示をこれらの画像の特徴として抽出する。具体的には、特徴抽出部43は、前側画像記憶領域42a及び後側画像記憶領域42bに新たな前側画像及び後側画像が記憶される毎に、特定抽出プログラム上で規定された所定の画像変換アルゴリズムに従って、新たに記憶された前側画像及び後側画像を、画像内の路面に対して直交する方向から視た画像に変換する。例えば、図4に示すような前側画像を図6に示すような画像に変換する。特徴抽出部43は、変換後の各前側画像及び後側画像内において明度等が急激に変化するエッジ部分を特定し、特定したエッジ部分の周囲の画像と記憶部42に記憶されている路面標示のパターンとのパターンマッチングを行い、マッチングの結果に基づいて画像内の路面標示を特定し、特定した路面標示を画像の特徴として抽出する。すなわち、特定したエッジ部分の周囲の画像のパターンと走行車線の制限速度が時速30kmであることを示す路面標示のパターンとが一致する場合は、この路面標示を画像の特徴として抽出する。なお、画像内に路面標示のパターンと一致する箇所がない場合は、特徴抽出部43は画像の特徴を抽出しない。
また、特徴抽出部43は、特定抽出プログラム上で規定されたセンサ路面標示間推定処理を実行し、前側画像から車両2前端から特徴として抽出した路面標示の前後方向の略中央までの距離Dfを推定する。また、後側画像から車両2後端から路面標示の前後方向の略中央までの距離Drを推定する。具体的には、特徴抽出部43は、距離Dfの推定に際し、図7に示すように、特徴として抽出した路面標示が前側画像を前後方向に3分割した場合の領域A〜Cのいずれの領域に属しているかを判定し、距離Dfを、領域Aに属している場合は5m、領域Bに属している場合は2.5m、領域Cに属している場合は1mと推定する。したがって、図7に示すような場合、距離Dfを2.5mと推定する。同様に、特徴抽出部43は、距離Drの推定に際し、図8に示すように、特徴として抽出した路面標示が後側画像を前後方向に3分割した場合の領域D〜Fのいずれの領域に属しているかを判定し、距離Dfを、領域Dに属している場合は1m、領域Eに属している場合は2.5m、領域Fに属している場合は5mと推定する。したがって、図8に示すような場合、距離Drを2.5と推定する。なお、特徴抽出部43は、車両2前端から特徴として抽出した路面標示の前端までの距離を距離Dfとして、また、車両2後端から路面標示の前端までの距離を距離Drとして推定してもよい。また、特徴抽出部43は、車両2前端から特徴として抽出した路面標示の後端までの距離を距離Dfとして、また、車両2後端から路面標示の後端までの距離を距離Drとして推定してもよい。
判定部44は、車両長推定処理において、後側画像記憶領域42bに新たに記憶された後側画像の特徴を特徴抽出部43が抽出した後、この後側画像と前側画像記憶領域42aに記憶されている前側画像とを比較し、これら前側画像及び後側画像が1つの外部対から取得した共通の特徴を含む前側特定情報及び後側特定情報であるか否かを判定する。具体的には、画像記憶領域42aに記憶されている前側画像に関連付けられて記憶されている特徴を参照し、後側画像記憶領域42bに新たに記憶された後側画像の特徴と比較し、共通する場合は、これら前側画像及び後側画像を前側特定画像及び後側特定画像として特定する。後側画像と比較される前側画像は、前側画像に関連付けられている時間情報Tが古い順に選択される。
走行距離算出部45は、前側特定画像を前側センサ30が撮像した時刻と後側特定画像を後側センサ31が撮像した時刻との間隔である検知間隔Tiを算出する。具体的には、まず、前側画像記憶領域42a及び後側画像記憶領域42bに記憶されている時間情報Tを参照し、前側特定画像に関連付けられている時間情報T1及び後側特定画像に関連付けられている時間情報T2を特定する。次に特定した時間情報T1,T2に基づいて、時間情報T1が示す時刻から時間情報T2が示す時刻までの間隔である検知間隔Tiを算出する。すなわち、検知間隔算出部45は、検知間隔Tiを次式(1)によって求める。
Ti(秒)=T2−T1・・・(1)
従って、上記のように、時間情報T1が時刻12時30分10秒を示し、時間情報T2が時刻12時30分12.5秒を示すとき、検知間隔Tiは2.5秒となる。
走行距離算出部45は、記憶部42の速度記憶領域42cに記憶されている走行速度V及び走行速度Vに関連付けられている時間情報Tを参照し、時間情報T1及びT2が示す時刻と同一の時刻を示す時間情報T3及びT4に関連付けられている走行速度V1及び走行速度V2を特定し、次式(2)によって、検知間隔Tiにおける車両2の走行速度Vaを算出する。
Va(km/h)=(V1+V2)/2・・・(2)
従って、上記のように、時間情報T1が時刻12時30分10秒を示し、同時刻を示す時間情報T3に関連付けられた走行速度V1が時速30kmで、時間情報T2が時刻12時30分12.5秒を示し、同時刻を示す時間情報T4に関連付けられた走行速度V2が時速30kmのとき、走行速度Vaは時速30kmとなる。なお、車速センサ32の検出タイミングと前側センサ30及び後側センサ31が路面を撮像するタイミングが異なる場合、例えば車速センサ32の検出タイミングが1秒毎で前側センサ30及び後側センサ31が路面を撮像するタイミングが0.1秒毎である場合は、速度算出部46は、上記時間情報T1及び時間情報T2に最も近似する時刻を示す時間情報Tに関連付けられている走行速度Vを用いて走行速度Vaを算出する。
また、走行距離算出部45は、算出した検知間隔Tiと速度算出部46が算出した走行速度Vaを用いて、次式(3)によって、検知間隔Tiにおける車両2の走行距離Dを算出する。
D=Va×Ti・・・(3)
従って、上記のように走行速度Vaが時速30kmで、検知間隔が2.5秒の場合、走行距離Dは約20.8mとなる。なお、走行距離算出部45は、時間情報T3,T4が示す時刻間の加速度を算出し、加速度と時間情報T3,T4が示す時刻間の時間と速度V1とに基づいて走行距離を算出してもよい。
推定部46は、走行距離算出部45が算出した走行距離Dと前側画像記憶領域42aに記憶されている特定前側画像から推定した距離Dr及び特定後側画像から推定した距離Dfとに基づき、車両2の前後方向の全長の推定値Lを算出する。すなわち、推定部46は、次式(4)によって、全長の推定値Lを算出する。
L=D−(Df+Dr)・・・(4)
従って、本実施形態において距離Dfが2.5mで且つ距離Drが2.5mの場合、全長の推定値Lは15.8mとなる。
出力部47は、推定部46が算出した全長の推定値Lを情報提供装置60及び通信装置70に出力する。また、通信装置70がネットワークを介して管理センターから受信した各種情報を情報提供装置60へ出力する。
情報提供装置60は、CPUからなる処理部61と、ROMとRAMなどからなる記憶部62と、表示部63と、スピーカ64と、を備える。表示部63は、タッチパネル機能を有する液晶表示装置からなる。記憶部62には、車両情報記憶領域62aとプログラム記憶領域62bとが設定されている。プログラム記憶領域62bには、処理部61によって実行される経路情報提供処理を規定する経路情報提供プログラム(地図情報を含む)や巻き込み警報処理を規定する警報プログラムや車両長表示プログラムや情報表示プログラムなどが記憶されている。車両情報記憶領域62aには、車両2の横幅や全長が記憶されている。プログラム記憶領域62bに記憶されている地図情報は処理部61が実行する経路情報提供処理において選択される道路情報を含み、各道路情報には走行可能な車両2の横幅及び全長の情報が関連付けられている。
車両長推定装置1の出力部47から、車両2の全長の推定値Lを受信すると、処理部61は、記憶部62の車両情報記憶領域62aに推定値Lを車両2の全長として記憶する。なお、既に車両情報記憶領域62aに車両2の全長が記憶されている場合は、推定値Lを上書きする。
処理部61は、経路情報提供プログラムに従って、経路情報提供処理を実行する。処理部61は、経路情報提供処理において、表示部63にソフトウェアキーボードを表示し、ソフトウェアキーボードを介して、運転者からの操作を受け付けることで目的地を取得する。目的地を取得すると、処理部61は、プログラム記憶領域62bの地図情報を参照し、車両情報記憶領域62aに記憶されている車両2の横幅及び全長(推定値L)に基づいて、車両2が走行できる道路を選定して目的地までの経路情報を作成し、作成した経路情報を表示部63を介して運転者に提供する経路情報提供処理を実行する。
また、処理部61は、車両2の右左折時に警報プログラムに従って、巻き込み警報処理を実行する。図示しない車両2のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサから情報提供装置60が操舵角検出信号を受信すると、処理部61は、受信した操舵角検出信号及び車両情報記憶領域62aに記憶されている車両2の横幅及び全長(推定値L)に基づいて、巻き込み事故が発生する可能性が高いか否かを判定し、発生する可能性が高い場合は、スピーカ64から警報音を発生し、運転者に巻き込み事故が発生するおそれがあることを報知する。
また、処理部61は、車両長表示プログラムに従って、車両長表示処理を実行する。処理部61は、表示部63に運転者から車両長の表示の指示を受け付ける指示ボタン(図示省略)を表示し、指示ボタンが運転者によって押下されると、車両情報記憶領域62aに記憶されている車両2の全長(推定値L)を表示する車両長表示欄81を有する車両長表示画面80(図9参照)を表示部63に表示する。
また、処理部61は、情報表示プログラムに従って、通信装置70から受信した管理センターからの各種情報を表示部63に表示する。
通信装置70は、CPUからなる処理部と、ROMとRAMなどからなる記憶部とを備える。記憶部には、CPUによって実行される情報送受信プログラムが記憶されている。処理部は、情報送受信プログラムに従って、ネットワークを介して接続されている管理センターとの間で情報の送受信を行う情報送受信処理を実行する。処理部は、車両長推定装置1の出力部47から、車両2の全長の推定値Lを受信すると、推定値Lを管理センターに送信する。
次に、処理ユニット40が実行する車両全長推定処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。本処理は、停車していた車両2が走行を開始した後、例えば走行開始から30秒経過後に、後側画像記憶領域42bに新たに記憶された後側画像の特徴を特徴抽出部43が抽出する毎に実行される。
本処理が開始されると、判定部44は、前側画像に関連付けられている時間情報Tに基づいて、前側画像記憶領域42aに記憶されている最も前に記憶された前側画像を、新たに記憶された後側画像との比較対象として選択し、ステップS2に移行する(ステップS1)。
ステップS2において、判定部44は、特定した前側画像と新たに記憶された後側画像を比較し、前側画像及び後側画像が1つの外部対から取得した共通の特徴を含む前側特定情報及び後側特定情報であるか否かを判定する。前側特定情報及び後側特定情報である場合(ステップS2:YES)は、ステップS5に移行する。一方、前側特定情報及び後側特定情報でない場合(ステップS2:NO)は、ステップS3に移行する。
ステップS3において、判定部44は、前側画像記憶領域42aに記憶されている全ての前側画像を比較対象としてステップS2の比較を行ったか否かを判定する。全ての前側画像を比較対象として比較を行った場合(ステップS3:YES)は、本処理を終了する。一方、比較を行っていない場合(ステップS3:NO)は、前側画像に関連付けられている時間情報Tに基づいて、前回比較の対象となった前側画像の次に記憶された前側画像を比較対象の前側画像として選択し(ステップS4)、ステップS2に移行する。
ステップS5において、走行距離算出部45は、前側特定画像に関連付けられている時間情報T1及び後側特定画像に関連付けられている時間情報T2に基づいて、上記式(1)に従って、時間情報T1が示す時刻から時間情報T2が示す時刻までの間隔である検知間隔Tiを算出し、ステップS6に移行する。
ステップS6において、走行距離算出部45は、検知間隔Tiにおける車両2の走行速度Vaを上記式(2)に従って算出し、ステップS7に移行する。
ステップS7において、走行距離算出部45は、検知間隔Tiと走行速度Vaに基づいて、上記式(3)に従って、検知間隔Tiにおける車両2の走行距離Dを算出し、ステップS8に移行する。
ステップS8において、推定部46は、走行距離算出部45が算出した走行距離Dと距離Df及び距離Drとに基づいて、上記式(4)に従って、車両2の前後方向の全長の推定値Lを算出し、ステップS9に移行する。
ステップS9において、出力部47は、推定部46が算出した全長の推定値Lを情報提供装置60及び通信装置70に出力し、本処理を終了する。
このように、第1の実施形態では、車両長推定装置1は、前側センサ30及び後側センサ31が車両2の走行中に取得した前側画像及び後側画像と車速センサ32が検出する走行速度に基づいて車両2の前後方向の全長を推定して推定値Lを出力し、情報提供装置60の表示部63は、出力された推定値Lを表示するので、車両2の全長が変化した場合であっても、運転者等は、自ら全長を測定することなく、推定された全長を把握することができる。
また、情報提供装置60は、車両長推定装置1から出力された推定値Lに基づいて、経路情報提供処理を行うので、運転者は、推定された全長に応じた適切な経路情報の提供を受けることができる。
また、情報提供装置60は、車両長推定装置1から出力された推定値Lに基づいて、警報処理を実行するので、運転者は、推定された全長に応じた適切な、巻き込み事故が発生するおそれがあることの報知を受けることができる。このため、運転者に巻き込み事故を未然に防ぐよう注意を喚起できるので、巻き込み事故発生のリスクを低減させることができる。
また、通信装置70は、車両長推定装置1の出力部47から、車両2の全長の推定値Lを受信すると、推定値Lを管理センターに送信するので、推定された全長を管理センターにおいて把握することができ、推定された全長に応じた適切な指示を管理センターから車両2へ送信することができる。例えば、車両2の横幅及び全長(推定値L)に基づいて、車両2が走行している道路の近傍で、車両2が走行できる道路や駐車可能な駐車スペースの情報を提供することができる。車両2の出力部47は通信装置70が受信したこれらの情報を情報提供装置60に出力し、情報提供装置60は出力されたこれらの情報を表示する。
また、フルトラクタ10が、フルトラクタ10の後部の両端に備えられた後方センサ(図示省略)を有する巻き込み警報システムを搭載している場合、この警報システムは、推定値Lに基づいて、フルトレーラ20を含む車両2において巻き込み事故が発生する可能性が高いか否かを判定し、発生する可能性が高い場合は、運転者に巻き込み事故が発生するおそれがあることを報知することができる。このため、この警報システムを情報提供装置60と併用することで、巻き込み事故発生のリスクを更に低減させることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、走行距離算出部45が、前側特定画像に関連付けられている時間情報T1及び後側特定画像に関連付けられている時間情報T2が示す時刻と同時刻又は最も近い時刻を示す時間情報T3及び時間情報T4が示す時刻間に検出された全走行速度Vに基づいて、走行速度Vaを算出する点が第1の実施形態とは異なる。以下の第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分については、その説明を省略する。
第2の実施形態における走行距離算出部45は、速度記憶領域42cに記憶されている時間情報T3,T4が示す時刻間に検出された全走行速度Vに基づく平均値を走行速度Vaとして算出する。したがって、時間情報T3が時刻12時30分10秒を示し、時間情報T3が時刻12時30分12.5秒を示し、車速センサ32が、例えば0.1秒毎に車両2の車軸の回転数を電気的に検出し、車両2の走行速度を検出して検出した走行速度Vを処理ユニット40に送信する場合、時間情報T3及び時間情報T4が示す時刻間の2.5秒間に0.1秒毎に検出された25の走行速度Vに基づく平均値を走行速度Vaとして算出する。なお、走行距離算出部45は、時間情報T3,T4が示す時刻間の加速度を算出し、加速度と時間情報T3,T4が示す時刻間の時間と上記速度V1とに基づいて走行距離を算出してもよい。
このように、第2の実施形態では、走行距離算出部45が前側特定画像に関連付けられている時間情報T1及び後側特定画像に関連付けられている時間情報T2が示す時刻と同時刻又は最も近い時刻を示す時間情報T3及び時間情報T4が示す時刻間に検出された走行速度Vに基づいて走行速度Vaを算出し、検知間隔Tiと走行速度Vaに基づき走行距離Dを算出し、推定部46は、走行距離算出部45が算出した走行距離Dと距離Df及び距離Drに基づいて、車両2の前後方向の全長を推定するので、車両の全長の推定の精度を比較的高めることができる。
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、前側画像記憶領域42aが、前側センサ30が前側画像を取得したときの走行速度Vを前側画像に関連付けて記憶し、後側画像記憶領域42bが、後側センサ30が前側画像を取得したときの走行速度Vを後側画像に関連付けて記憶し、走行距離算出部45が前側特定画像と後側特定画像とにそれぞれに関連付けられている走行速度Vを、検知間隔Tiの間に車速センサ32が検出した走行速度Vとして抽出する点が第1及び第2の実施形態とは異なる。以下の第3の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分については、その説明を省略する。
第3の実施形態における記憶制御部48は、前側センサ30から出力された前側画像を受信すると、計時部33に現在時刻を示す時間情報Tの出力を要求する。計時部33から時間情報Tを受信すると、この時間情報Tと、前側画像を受信したときに車速センサ32から受信した走行速度Vと、前側画像とを関連付けて記憶する。同様に、後側センサ31から出力された後側画像を受信すると、時間情報Tと、後側画像を受信したときに車速センサ32から受信した走行速度Vと、後側画像とを関連付けて、記憶部42の後側画像記憶領域42bに記憶する。例えば、車両2の前端が地点A(図3参照)を通過するときの時刻が12時30分10秒で、この時の車速が時速30Kmの場合、記憶制御部48は前側センサ30から出力された図4に示すような前側画像に12時30分10秒を示す時間情報T1と、時速30kmを走行速度V2として関連付けて記憶する。また、車両2の後端が地点Bを通過するときの時刻が12時30分12.5秒で、このときの車速が時速30kmの場合、記憶制御部48は後側センサ31から出力された図5に示すような後側画像に12時30分12.5秒を示す時間情報T2と、時速30kmを走行速度V2として関連付けて記憶する。
第3の実施形態における走行距離算出部45は、記憶部42の前側画像記憶領域42a及び後側画像記憶領域42bに記憶されている前側特定画像に関連付けられている走行速度V1及び後側特定画像に記憶されている走行速度V2を特定し、上記式(2)によって、検知間隔Tiにおける車両2の走行速度Vaを算出する。
このように、第3の実施形態では、前側特定画像及び後側特定画像を特定することにより、前側画像記憶領域42a及び後側画像記憶領域42bにおいて、前側特定画像及び後側特定画像に関連付けられている時間情報Tと走行時速Vとを特定することができ、上記式(2)によって、検知間隔Tiにおける車両2の走行速度Vaを算出することができるので、比較的簡易な処理で車両2の全長を推定することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、上記実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
例えば、第1〜第3の実施形態では、フルトラクタ10とフルトレーラ20とからなる車両2に車両長推定装置1を搭載した態様を説明したが、セミトラクタとセミトレーラとからなる車両に車両長推定装置1を搭載してもよい。
また、第1〜第3の実施形態においては、車両長推定処理を、停車していた車両2の走行開始から30秒経過後に実行される態様を説明したが、情報提供装置60の表示部63に運転者から車両長推定処理の実行の指示を受け付ける車両長推定指示ボタンを表示させて、運転者からこの車両長推定指示ボタンが押下されたときに車両長推定処理を実行してもよい。
また、第1〜第3の実施形態では、特徴抽出処理において、特徴抽出部43は前側画像及び後側画像を画像内の路面に対して直交する方向から視た画像に変換する態様を説明したが、この特徴抽出処理における画像の変換を省略してもよい。この場合、前側画像における路面標示のゆがみを考慮して生成された前側画像用の路面標示のパターンと後側画像における路面標示のゆがみを考慮して生成された後側画像用の路面標示のパターンを予め記憶しておき、前側画像については前側画像用の路面表示パターンを用いて特徴を抽出し、また、後側画像については後側画像用の路面表示パターンを用いて特徴を抽出する。
また、前側センサ30を車両前方の車線を選別するために車両前方の路面を撮像するための前側センサ30として兼用してもよい。また、後側センサ31を、車両駐車時の後方確認用に車両後方の周囲を撮像する後側センサ31として兼用してもよい。
また、前側センサ30及び後側センサ31として、レーザセンサを用いてもよい。この場合、レーザセンサの発光部が路面標示や道路に立設された道路標識や信号機などの外部対象に光を照射し、外部対象からの反射光をレーザセンサの受光部が受光して、反射光の受光量を前側外部情報及び後側外部情報として、逐次取得する。処理部41は、この受光量に基づいて、1つの外部対象から取得した共通の特徴を含む前側特定情報及び後側特定情報であるか否かを判定する。
また、第1〜第3の実施形態では、RTCからなる計時部33を設けたが、これに代えて、ソフトウェアタイマープログラムを記憶部に記憶させ、このプログラムに従って、処理部41に現在時刻を計時させてもよい。
すなわち、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。