JP5883684B2 - パルス生成回路 - Google Patents

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Description

本発明は、パルス生成回路に関し、より詳細には、逓倍回路を間欠的に動作させる間欠逓倍回路を用いた短パルス生成技術を改良して更なる短パルス発生を可能にしたパルス生成回路に関する。
従来から短パルス生成技術として、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)技術の短パルス信号を用いた通信やレーダの開発が行なわれている。この超広帯域無線は、無線通信方式の一つで、近距離で高速通信が可能な無線技術で、データを1GHz程度の極めて広い周波数帯に拡散して送受信を行うものである。それぞれの周波数帯に送信されるデータは、ノイズ程度の強さしかないため、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがなく、消費電力も少ないという利点があり、位置測定、レーダ、無線通信の3つの機能を合わせ持っており、極めて独特な無線応用技術である。
短パルス信号を所望の周波数帯域の成分のみを持つ信号とするには、パルス信号をフィルタによって周波数帯域制限して特定の周波数成分のみを抜き出す方法、パルス状の制御信号により発振回路を間欠的に動作させる方法、パルス状の制御信号をミキサに入力してキャリア信号を窓掛けすることで短パルス信号を生成する方法などがある。
これらの短パルス生成回路は、要求される性能として低消費電力動作、高いオン/オフ比がある。また、低消費電力動作は、如何なる機器に搭載する際にも重要な性能となる。このため、高いオン/オフ比は、短パルス信号を用いた通信において通信品質を向上させるために重要な性能である。
しかしながら、従来の短パルス生成回路では、高いオン/オフ比を実現するために増幅回路を用いているため、消費電力が増大するという課題を有し、また、回路規模が大きくなるという課題を有している。また、出力信号波形が歪むという課題も有している。
これらの問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載のものは、逓倍回路を間欠的に動作させる間欠逓倍回路を用い、低消費電力で動作し、非常に高いオン/オフ比を実現する短パルス生成回路を提案したものである。
図1は、従来のパルス発生回路を説明するための回路構成図で、上述した特許文献1に記載のものである。図中符号101は発振回路、102は制御信号発生回路、103は間欠逓倍回路、104はフィルタ、105は出力端子、201〜204は信号波形を示している。発振回路101及び間欠逓倍回路103は、能動素子で構成されるアクティブ回路である。発振回路101は、連続信号を出力し、間欠逓倍回路103に入力する。間欠逓倍回路103が、制御信号発生回路102から出力される制御信号によって、間欠的に動作することで短パルス信号を生成する。フィルタ104は、短パルス信号のスプリアス成分を除去する。
図2(a)乃至(d)は、図1に示したブロック構成図における信号及び制御信号のタイミングチャートを示す図である。縦軸は全て電圧、横軸は全て時間である。発振回路101は、連続信号201を出力し、間欠逓倍回路103に入力する。制御信号発生回路102は、制御信号202を出力し、間欠逓倍回路103に入力する。制御信号202は、間欠逓倍回路103を構成する能動素子に作用する。間欠逓倍回路103を構成するFETは、制御信号202の電圧値によって動作点が制御される。FETの動作点を制御することで、制御信号202の電圧値が高い区間(以下、オン区間)における変換利得を高く、電圧値が低い区間(以下、オフ区間)における変換利得を低くできる。そのため、信号203におけるオフ区間での主成分は周波数f0/2の信号となり、間欠逓倍回路103から出力される周波数f0の成分はオン区間とオフ区間で振幅値が大きく異なり、その差がオン/オフ比(単位:dB)となる。
間欠逓倍回路103から出力された信号203は、フィルタ104に入力される。フィルタ104は、周波数f0帯の信号を通過させ、他の周波数帯成分を抑圧するスプリアス抑圧フィルタであり、例えば、BPF(バンドパスフィルタ)、BEF(バンドエリミネーションフィルタ)である。また、フィルタ104の帯域は、信号203のOn区間のパルス幅の逆数の二倍以上の帯域を確保することが望ましく、これによりフィルタ104から信号204が出力される際の波形なまりを防止できる。フィルタ104は、信号203の、周波数f0帯の信号を通過させ、周波数f0/2帯の信号を抑圧する。これにより、出力端105は、周波数f0帯の周波数成分を有したオン/オフ比の高い短パルス信号204を出力することができる。
特開2008−35467号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載のパルス発生回路は、間欠逓倍回路や能動増幅素子の利用に起因する問題が生じる。つまり、入出力間の遅延や増幅器(トランジスタ)の回復時間の影響での短パルス発生が困難であるという問題や、発生するアプリアスを抑圧するためのフィルタ回路を必要とするため回路規模の簡素化が図れないといった問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、インパルス/ステップ応答の優れた微分器を用いてパルスの立ち上がり精度を良好にしたパルス生成回路を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、短パルス信号を生成するパルス生成回路であって、入力信号を直接的に微分してパルスの立ち上がりを捉える第1の微分器と、前記入力信号の位相の変動量を位相変動量調整信号によって調整してパルス幅を決定する位相シフト回路と、前記位相シフト回路からの信号の振幅を利得調整信号によって調整する減衰器と、該減衰器からの信号を微分して前記パルスの立ち下がりを捉える第2の微分器と、前記第1の微分器からの信号と前記第2の微分器からの信号とを加減算して短パルス信号を出力する加減算器とを備えていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1及び第2の微分器は、可変位相微分器であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1及び第2の微分器は、RC微分器であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第1及び第2の微分器は、LC微分器であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記位相シフト回路は、抵抗素子と容量素子を含む積分器の構成であることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記位相シフト回路は、抵抗素子と容量素子を含むオールパスフィルタの構成であることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記減衰器は、複数の抵抗素子と複数のスイッチを含む抵抗タップの構成であることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記加減算器は、方向性結合器又はハイブリッドリングの構成であることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明において、前記第1及び第2の微分器と前記位相シフト回路と前記減衰器との少なくとも1つは受動素子からなることを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明において、前記パルス生成回路は、インパルス/ステップ応答性のある微分器を用いて短パルス信号を生成することを特徴とする。
本発明によれば、本発明のパルス発生回路を構成する位相シフト回路と減衰器と第1の微分器と第2の微分器と加減算器とのすべてを受動素子で構成することで、消費電流や歪の発生を最小限にすることができるとともに、間欠逓倍器の利用時にはそのアプリアスの除去のために必要だったフィルタ回路を不要にすることができる。これにより、回路構成の簡素化が図れ、ひいては低コスト化が図れるという効果を奏する。
従来のパルス発生回路を説明するための回路構成図である。 (a)乃至(d)は、図1に示したブロック構成図における信号及び制御信号のタイミングチャートを示す図である。 本発明に係るパルス生成回路の実施例1を説明するための回路構成図である。 (a)乃至(f)は、図3に示した本発明に係るパルス生成回路の各部のノード電圧を示す図である。 図3に示した第1及び第2の微分器の具体的な回路構成図である。 (a),(b)は、図5に示した微分器のステップ応答を示す図である。 (a),(b)は、図3に示した位相シフト回路の具体的な回路構成図である。 図7(a),(b)に示した位相シフト回路における一次遅れ要素の利得−位相周波数特性を示す図である。 (a),(b)は、図3に示した位相シフト回路の他の例を示す具体的な回路構成図である。 (a),(b)は、図9(a),(b)に示した位相シフト回路における利得−位相周波数特性を示す図である。 図3に示した減衰器の具体的な回路構成図である。 (a),(b)は、加減算器としてのハイブリッドリングの構成図である。 (a),(b)は、加減算器としてのハイブリッドリングの構成図である。 (a),(b)は、加減算器としての更に他のハイブリッドリングの構成図である。 本発明に係るパルス生成回路の実施例2を説明するための回路構成図である。 (a)乃至(i)は、図15に示した本発明に係るパルス生成回路の各部のノード電圧を示す図である。 図15に示した可変位相微分器の具体的な回路構成図である。
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図3は、本発明に係るパルス生成回路の実施例1を説明するための回路構成図である。図中符号1は位相シフト回路、2は減衰器(Attenuator;アッテネータ)、3aは第1の微分器,3bは第2の微分器、4は加減算器を示している。
本発明のパルス生成回路は、制御信号によって間欠的に動作することで短パルス信号を生成するパルス生成回路である。第1の微分器3aは、入力信号101を直接的に微分してパルスの立ち上がりを捉えるものである。また、位相シフト回路1は、入力信号101の位相の変動量を位相変動量調整信号107によって調整してパルス幅を決定するものである。
また、減衰器2は、位相シフト回路1からの信号102の振幅を利得調整信号108によって調整するものである。また、第2の微分器3bは、減衰器2からの信号103を微分してパルスの立ち下がりを捉えるものである。また、加減算器4は、第1の微分器3aからの信号104と第2の微分器3bからの信号105とを加減算して短パルス信号106を出力するものである。
図4(a)乃至(f)は、図3に示した本発明に係るパルス生成回路の各部のノード電圧を示す図で、図4(a)は入力信号を示す図、図4(b)は位相シフト回路からの信号を示す図、図4(c)は減衰器からの信号を示す図、図4(d)は第1の微分器からの信号を示す図、図4(e)は第2の微分器からの信号を示す図、図4(f)は減算器から出力される短パルス信号を示す図である。
図4(a)に示した入力信号101の振幅はAである。図4(b)に示した位相シフト回路1からの信号102は、位相シフト回路1の位相変動によりより短いパルスを生成することができ、入力信号101が位相シフト回路1を通過することでt1だけ遅延したことを示している。この信号102が減衰器2の入力信号になる。
また、図4(d)に示した第1の微分器3aの信号104は、時刻t1において振幅がA×ATT(減衰率)となっている。また、図4(c)に示した減衰器2からの信号103は、第2の微分器3bの入力がA×ATTとなるように調整される。図4(c)に示した減衰器2の減衰率(ATT)は1以下である。
また、図4(e)に示した第2の微分器3bの出力信号105は、加減算器4に入力される。第1の微分器3aと第2の微分器3bとは同一の構造を有しているので、減衰器2と第2の微分器3bとの順番を入れ替えても動作に影響を与えない。また、図4(d),(e)に示した第1の微分器13aからの信号104及びは第2の微分器13bからの信号105の傾きは、後述する図5に示すように、容量素子C1と抵抗素子R1からなる微分器の時定数τが等しい時に、τ=R1C1によって決まる。
また、図4(f)に示した第1の微分器3aの出力104と第2の微分器3bの出力105との加減算を終えた出力信号106は、第1の微分器3aの信号104と比べると、加減算を終えた出力信号106のパリス幅の方が狭く、かつ立ち下がりのエッジが鋭くなっている。つまり、また、図4(f)に示した減算器4から出力される短パルスの出力信号106は、第2の微分器13bからの信号105が立ち上がるタイミングの第1の微分器13aからの信号104の振幅と第2の微分器13bからの信号105のピーク振幅とが同じになるように減衰器2を調整することで立ち下りエッジもシャープな短パルスが得られる。
入力信号101に繰り返し信号を用いる場合には、立ち上がり又は立ち下がりの一方をマスクする回路を前置する必要がある。マスク回路は、通常、信号パスに直列に挿入されたスイッチとそれをオン/オフする制御信号とからなる。
図5は、図3に示した第1及び第2の微分器の具体的な回路構成図である。図中符号Vi(t)は入力電圧、i(t)は入力電流、Vc(t)はコンデンサ端子電圧、V(t)は抵抗端子電圧、q(t)はコンデンサの電荷を示している。
図5においては、RとCとによる1次の微分器を示したが、LとCとによる2次の微分器でも、更に高次の微分器も用いることができる。つまり、第1及び第2の微分器3a,3bは、RC微分器であってもLC微分器であってもかまわない。この種の微分器を用いることの最大の利点は、エッジの強調機能である。これによって、スイッチング素子などを用いた一般的な短パルス発生器に比べて精度の良好な立ち上がりエッジを発生させることが可能になる。
図5に示した微分器の時間応答は、V(t)=Vi(t)−Vc(t)となり、q(t)=0であるので、V(t)=0(t<0)、Eexp(−t/R)(t≧0)で示される。
図6(a),(b)は、図5に示した微分器のステップ応答を示す図で、図6(a)は微分器のステップ入力信号、図6(b)はそのステップ入力信号に対応する応答信号を示している。この図6(a),(b)によると、ステップ応答は、入力の微係数に比例して立ち上がり、時定数Rを持ったエクスポネンシャル関数にしたがって減衰して0に漸近することがわかる。
図7(a),(b)は、図3に示した位相シフト回路の具体的な回路構成図で、図7(a)は位相変動量調整信号がない状態の回路構成図で、図7(b)は位相変動量調整信号がある場合の回路構成図を示している。この例では位相変動量調整信号107によって、R又はCに直列なSc,S2Rをオン/オフさせることで位相変動量を可変としている。また、ScとC2Bの代わりに可変容量制御回路(バラクタ)などの回路を用いてもよい。
また、位相シフト回路1は、抵抗素子と容量素子を含む積分器(一次遅れ要素)の構成である。この場合の伝達関数は、
H(s)=V2/V1=1/(1+SC
で表される。
図8(a),(b)は、図7(a),(b)に示した位相シフト回路における一次遅れ要素の利得−位相周波数特性を示す図である。図8(a)は利得−周波数特性を示し、図8(b)は位相−周波数特性を示している。上述した位相シフト回路は、極の周波数が1/2πRにおいて位相が45°遅れるという特徴を有する。
図9(a),(b)は、図3に示した位相シフト回路の他の例を示す具体的な回路構成図で、図9(a)は位相変動量調整信号がない状態の回路構成図で、図9(b)は位相変動量調整信号がある場合の回路構成図を示している。この位相シフト回路は、抵抗素子と容量素子を含むオールパスフィルタの構成である。
この例では位相変動量調整信号107によって、Cに直列なScのオン/オフを切り替えることで位相変動量を可変としている。この回路でも、図7(b)のようにRを切り替えたり、Cを可変容量制御回路(バラクタ)に変更するなどしても同様の効果を奏する。
図10(a),(b)は、図9(a),(b)に示した位相シフト回路における利得−位相周波数特性を示す図である。図10(a)は利得−周波数特性を示し、図10(b)は位相−周波数特性を示している。
オールパスフィルタとは、図10(a),(b)に示すように、利得−周波数特性がフラットで位相のみの変化するものの総称である。図9(a),(b)に示した位相シフト回路にとどまらず多数の回路が存在する。
この位相シフト回路も一次遅れ要素の回路と同様にR,Cを変化させることで任意の位相シフト量を得ることができる。
位相シフト量θは、θ=−2tan−1(ω/2πα)で表される。
ω=0の時に、θ=0
ω=2παの時に、θ=−90°
ω=∞の時に、θ=−180°
となる。
また、伝達関数は、
H(s)=(S−α)/(S+α) α=1/R
θ=−2tan−1(ω/2πα
で表される。
図11は、図3に示した減衰器の具体的な回路構成図である。この減衰器2は、複数の抵抗素子Ra,Rb,Rcと複数のスイッチSa,Sb,Scを含む抵抗タップの構成である。
この減衰器2の減衰量を遅延パルスの立ち上がりタイミングでの加減算器の入力の振幅が同じとなるように調整することで立ち下がりの鋭いパルスが得られる。このことは図4(f)に示されている。
この場合の伝達関数は、
H(s)=V2/V1=1(Sa;閉時)=(Rc+Rb)/(Ra+Rb+Rc)(Sb;閉時)
で表される。
減衰器の利得調整信号Ca,Cb,CcとスイッチSa,Sb,Scの状態間の真理値表とそれに対応した伝達関数を以下の表1に示す。
Figure 0005883684
図12(a),(b)は、加減算器としてのラットレースハイブリッドリングの構成図で、加減算器のポートAが入力の時の各ポートの状態を示す図で、図12(a)はポートCとAとが絶縁されている図で、図12(b)にはポートBとDにはポートA入力の−3dBされた信号が出力されている図である。
図13(a),(b)は、加減算器としてのラットレースハイブリッドリングの構成図で、加減算器のポートCが入力の時の各ポートの状態を示す図で、図13(a)はポートCとAとが絶縁されている図で、図13(b)はポートBとDにはポートA入力の−3dBされた信号が出力されている図である。
上述した図12(a),(b)及び図13(a),(b)のいずれにおいても、絶縁を取るためには0(又は360°)位相の信号と180°位相の信号とを距離の関数として実現することで達成し、−3dB信号はλ/4×n(n=1、3、5・・・奇数)を同じく距離の関数として実現していることがわかる。
ラットレースハイブリッドリングは、高周波回路においては一般的に知られた回路である。ポートA−B,B−C,C−D間はλ/4だけ離れて配置され、ポートA−D間は3λ/4離れて配置されている。この配置によって各ポート間の入出力関係は、以下の通りである。まず、ポートCに信号を入力した場合、ポートBには、ポートCから時計回りに5λ/4だけリングを進んだ波と、ポートCから反時計回りにλ/4進んだ波が到達する。これらの2波は同相になるので、足し合わされたものがポートBに出力される。ポートDもBも同様に、時計回りと反時計回りの波が足し合わされて出力される。ポートAには、ポートCから時計回りにλ進んだ波と、ポートCから反時計回りにλ/2進んだ波が到達する。これらの2波は逆相になるので打ち消され、ポートAはポートCからIsolateされた形になる。したがって、ポートAは全く関係なくなり、ポートCから見るとポートBとDの2つのポートが対称に配置された回路のようになる。つまり、ポートCからの入力は、ポートBとDに等分配されて出力される。この時、ポートBとDからの出力は同相になる。次に、ポートAに信号を入力した場合、同様にして、ポートCは全く関係なくなり、ポートAから見るとポートBとDの2つのポートが配置された回路のようになる。つまり、ポートAからの入力は、ポートBとDに分配されて出力される。この時、ポートBとDからの出力の位相は逆相(180°位相が異なる)になる。
図14(a),(b)は、加減算器としての更に他のラットレースハイブリッドリングの構成図で、図14(a)は出力ポートBの振る舞いを示す図で、図14(b)は出力ポートDの振る舞いを示す図である。
ポートAを入力1、ポートCを入力2、ポートBを加算ポート、ポートDを減算ポートとして実現したものを加減算器として示している。ポートA,Cから同距離のポートBを位相の基準とすると、ポートCからの信号はポートBとDとで同位相となり、ポートAからの信号はポートBとDとで逆位相となっていることから、ポートBは加算、ポートDは減算であることがわかる。つまり、図14(a)において、ポートAから第1の微分器3aからの信号104が入力され、ポートCから第2の微分器3bからの信号105が入力されると、ポートBから加算器4の加算出力106が出力される。また、図14(b)において、ポートAから第1の微分器3aからの信号104が入力され、ポートCから第2の微分器3bからの信号105が入力されると、ポートDから減算器4の減算出力106が出力される。
また、第1の微分器3aと第2の微分器3bと位相シフト回路1と減衰器2との少なくとも1つは受動素子からなっている。
図15は、本発明に係るパルス生成回路の実施例2を説明するための回路構成図である。図中符号11は位相シフト回路、12はATT(Attenuator;減衰器/アッテネータ)、13aは第1の可変位相微分器,13bは第2の可変位相微分器、14は加減算器を示している。つまり、図3に示した第1の微分器3aと第2の微分器3bは、第1の可変位相微分器13aと第2の可変位相微分器13bで構成されている。
本実施例2のパルス生成回路は、実施例1と同様に、制御信号によって間欠的に動作することで短パルス信号を生成するパルス生成回路である。第1の可変位相微分器13aは入力信号201を直接的に微分してパルスの立ち上がりを捉えるもので、第1の時定数調整信号209によって位相が可変されるものである。位相シフト回路11は、入力信号201の位相の変動量を位相変動量調整信号207によって調整してパルス幅を決定するものである。
また、減衰器12は、位相シフト回路11からの信号202の振幅を利得調整信号208によって調整するものである。第2の可変位相微分器13bは、減衰器12からの信号203を微分してパルスの立ち下がりを捉えるもので、第2の時定数調整信号210によって位相が可変されるものである。減算器14は、第1の可変位相微分器13aからの信号204と第2の可変位相微分器13bからの信号205とを減算して短パルス信号を出力するものである。
このように、実施例2におけるパルス生成回路は、2つの可変位相微分器13a,13bを用い、パルスエッジ間の包絡線の形を任意に設定できる。この2つの可変位相微分器13a,13bの時定数は、第1の時定数調整信号209と第2の時定数調整信号210とによってその時定数が変えられる。
図16(a)乃至(i)は、図15に示した本発明に係るパルス生成回路の各部のノード電圧を示す図で、図16(a)は入力信号を示す図、図16(b)は位相シフト回路からの信号を示す図、図16(c)は減衰器からの信号を示す図、図16(d)は第1の可変位相微分器からの信号を示す図、図16(e)は第2の可変位相微分器からの信号を示す図、図16(f)は減算器から出力される短パルス信号を示す図、図16(g)乃至図16(i)は減衰器の減衰量を調整して、t=t1以降の出力のエネルギーを最小化する作業を説明するための図である。
図16(a)に示した入力信号201の振幅はAである。図16(b)に示した位相シフト回路11からの信号202は、位相シフト回路11の位相変動によりより短いパルスを生成することができ、入力信号201が位相シフト回路11を通過することでt1だけ遅延したことを示している。この信号202が減衰器12の入力信号になる。
また、図16(d)に示した第1の可変位相微分器13aの信号204の時定数は、第2の可変位相微分器13bからの信号205の時定数より大きく選ぶことがパルス波形を矩形に近づける観点から好ましい。実施例1と同様に、t=t1での第1の可変位相微分器13aの出力振幅はA×ATT(減衰率)となっている。
また、図16(c)に示した減衰器12からの信号203は、第2の可変位相微分器13bの入力がA×ATTとなるように調整される。
また、図16(e)に示した第2の可変位相微分器13bの出力信号205の時定数は、第1の可変位相微分器13aの時定数よりも小さく選ばれる。また、実施例2においても、実施例1と同様に、減衰器12と第2の可変位相微分器13bとの順番を入れ替えても動作に影響を与えない。
また、図16(f)に示した第1の可変位相微分器13aの信号204と第2の可変位相微分器13bの信号205との加減算を終えた出力信号206は、第1の可変位相微分器13aの時定数が、第2の可変位相微分器13bの時定数よりも大きいため、t>t1の領域で+の低周波信号が存在している。他方、パルスの形は矩形に近づいており、目的通りの動作をしていることがわかる。
図16(g)に示した信号204’は、減衰器12の減衰量を調整して、ATT’<ATTとし、第2の可変位相微分器13bへの入力を大きくする。つまり、A×ATT<A×ATT’とする。
図16(h)に示した信号205’は、第2の可変位相微分器13bの出力で、減衰器12の減衰量を調整して、ATT’<ATTとし、第2の可変位相微分器13bの時定数を第1の可変位相微分器13aの時定数よりも小さくするという条件で調整されていることが重要である。この場合、実施例1と同様に、減衰器12と第2の可変位相微分器13bとの順番を入れ替えても動作に影響を与えない。
図16(i)に示した信号206’は、ATT’<ATTとし、第2の可変位相微分器13bの時定数を第1の可変位相微分器13aの時定数よりも小さくするという条件があるので、t=t1において、出力は負の値をとる。しかし、第2の可変位相微分器13bの時定数は小さいので、加減算器の出力は正の値に一番振れた後、基準電圧に漸近する。この時、t>t1での負の領域と正の領域とが等しくなるようにATT’の値を調整する。なお、第2の可変位相微分器13bの時定数も併せて調整すると負の領域のピーク値がt=t1での値を小さくできる可能性がある。
入力信号201に繰り返し信号を用いる場合には、実施例1と同様に、立ち上がり、もしくは立ち下がりの一方をマスクする回路を前置する必要がある。マスク回路は、通常信号パスに直列に挿入されたスイッチとそれをオン/オフする制御信号とからなる。
図17は、図15に示した可変位相微分器の具体的な回路構成図である。この第1及び第2の可変位相微分器の時定数を位相変化量制御信号CntlAにしたがって、直列容量の値を切り替えることで位相変化量を変化させている。例えば、S1Aがオンし、微分器の容量がC+C1Aになった時に、微分器の減衰は容量がC1のみの時よりなだらかになる。ここでは「位相」を基準に時刻から一定時間経過した点にあける振幅及び振幅の集合体とする。これにより、時定数の大きい系は、位相が遅れることが理解できる。
可変位相微分器の動作真理値及び直列容量の値を以下の表2に示す。
Figure 0005883684
なお、実施例2においても、実施例1と同様に位相シフト回路、減衰器、加減算器を用いることができることは言うまでもない。したがって、実施例2においても、上述した実施例1と同様な効果を奏することも明らかである。
1,11 位相シフト回路
2,12 減衰器(Attenuator;アッテネータ)
3a 第1の微分器
3b 第2の微分器
4,14 加減算器
13a 第1の可変位相微分器
13b 第2の可変位相微分器
101 発振回路
102 制御信号発生回路
103 間欠逓倍回路
104 フィルタ
105 出力端子
201〜204 信号波形

Claims (10)

  1. パルス信号を生成するパルス生成回路であって
    入力信号を直接的に微分してパルスの立ち上がりを捉える第1の微分器と、
    前記入力信号の位相の変動量を位相変動量調整信号によって調整してパルス幅を決定する位相シフト回路と、
    前記位相シフト回路からの信号の振幅を利得調整信号によって調整する減衰器と、
    該減衰器からの信号を微分して前記パルスの立ち下がりを捉える第2の微分器と、
    前記第1の微分器からの信号と前記第2の微分器からの信号とを加減算して短パルス信号を出力する加減算器と
    を備えていることを特徴とするパルス生成回路。
  2. 前記第1及び第2の微分器は、可変位相微分器であることを特徴とする請求項1に記載のパルス生成回路。
  3. 前記第1及び第2の微分器は、RC微分器であることを特徴とする請求項1に記載のパルス生成回路。
  4. 前記第1及び第2の微分器は、LC微分器であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルス生成回路。
  5. 前記位相シフト回路は、抵抗素子と容量素子を含む積分器の構成であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパルス生成回路。
  6. 前記位相シフト回路は、抵抗素子と容量素子を含むオールパスフィルタの構成であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパルス生成回路。
  7. 前記減衰器は、複数の抵抗素子と複数のスイッチを含む抵抗タップの構成であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のパルス生成回路。
  8. 前記加減算器は、方向性結合器又はハイブリッドリングの構成であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のパルス生成回路。
  9. 前記第1及び第2の微分器と前記位相シフト回路と前記減衰器との少なくとも1つは受動素子からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のパルス生成回路。
  10. 前記パルス生成回路は、インパルス/ステップ応答性のある微分器を用いて短パルス信号を生成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のパルス生成回路。
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