安全運転支援システムの普及段階においては、灯色及び継続秒数などの信号情報を提供できる交通信号機(サービス交通信号機)が全ての交差点に同時に設置されるとは限らない上に、機器の故障やメンテナンス作業等により、特定の交差点で当該システムの動作を停止させる場合がある。この事情に鑑みると、ドライバによる安全運転支援システムへの過信や不信が、当該システムの実効性についての大きな問題となりうる。
すなわち、走行中に、安全運転支援システムが動作する交差点としない交差点が交互に訪れる場合、ドライバは交差点に近づく度にその都度支援を受けられる地点であるか否かを常に意識しなければならず、当該システムの有意性に対する不信感を持ち始め、結果的に運転支援を受けることに期待しなくなってしまうという「不信」の問題が起こりうる。
一方、安全運転支援システムがほとんど全ての交差点において導入されている場合やシステムを導入した交差点が連続している場合、ドライバは走行中必ず運転支援を受けられるという過剰な期待を持ち、油断して安全確認等を怠る可能性がある。仮に、これらの交差点の中にたった1つシステムが動作しない交差点が含まれていた場合、安全運転支援システムに対する「過信」が原因で、ドライバの注意力が低下し、不安全な運転状態になる可能性がある。
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、安全運転支援が実施される交差点と実施されない交差点が混在している場合であっても、ドライバが安全運転支援システムに過信や不信を抱かないように、実効性の高い安全運転支援を行うことができる安全運転支援システムを提供することを目的とする。
(1)本願の実施形態に係る安全運転支援システムは、路上装置と車両に搭載された車載装置とを連携させて、安全運転を支援する安全運転支援システムであって、前記路上装置は、予め定められた対象となる交差点が信号情報を提供可能な交通信号機の設置されたサービス交差点であるか否かを識別するための、サービス交差点情報を前記車載装置に送信する手段を有し、前記車載装置は、前記路上装置から受信した前記サービス交差点情報に基づき、安全運転支援動作を行うか否かを決定する決定手段と、前記決定に基づいて前記安全運転支援動作を行う安全運転支援制御手段とを有することを特徴とする。ここでは、信号情報を提供可能な交通信号機(サービス交通信号機)が設置された交差点をサービス交差点としている。
例えば、道路地図データに含まれる交差点がサービス交差点であるか否かを識別するためのサービス交差点情報を路上装置が車載装置に送信する。車載装置は、車両が走行する予定の経路上の1以上の交差点からなる交差点群を選定し、受信したサービス交差点情報に基づいて交差点群に含まれる各交差点がサービス交差点か否かを判断し、全てサービス交差点であれば、車両の速度制御やドライバへの減速指示などの安全運転支援動作を行うことに決定し、1つでもサービス交差点でない交差点が含まれていれば、当該安全運転支援動作を行わないことに決定する。交差点群の選定方法は、同一のサイクル長で動作する交通信号機が設置された交差点をまとめる方法でも良いし、同一の路線(例えば、国道X号線、県道Y号線など)上の連続する交差点、単に地理的に近い交差点をまとめる方法でも良く、種々の方法が挙げられる。また、上記の経路は、車載装置が探索した目的地までの探索経路であっても良いし、車両が走行している路線であっても良い。
そうすると、交差点群にサービス交差点とそうでない交差点が混在している場合や交差点群にたった1つサービス交差点でない交差点が含まれている場合は、当該交差点群では安全運転支援動作が実行されないので、安全運転支援動作の実行と不実行が頻繁に切り替わったり、たった1つの交差点でのみ安全運転支援動作が実行されなかったりすることを防止できる。従って、ドライバが安全運転支援システムに上述のような過信や不信を抱くことを防止することができ、実効性の高い安全運転支援を行うことができる。
(2)前記サービス交差点情報には、前記交差点の識別情報と前記交差点に流入する道路の識別情報の少なくとも1つが含まれることが好ましい。
例えば、サービス交差点情報は、交差点を識別する番号と当該交差点がサービス交差点であるか否かを示すフラグとを対応づけた情報とすれば良い。あるいは、サービス交差点情報は、交差点に流入する道路を識別する番号と当該交差点がサービス交差点であるか否かを示すフラグとを対応づけた情報としても良い。また、サービス交差点情報は、交差点を識別する番号と当該交差点に流入する道路を識別する番号と当該交差点がサービス交差点であるか否かを示すフラグとを対応づけた情報としても良い。
(3)また、前記サービス交差点情報には、サービス交差点における提供の実施状況についての情報が含まれることが好ましい。
既に述べたように、サービス交差点であっても、機器の故障やメンテナンス作業等の理由から交通信号機が信号情報の提供を停止している場合がある。そうすると、交差点群に含まれる交差点が全てサービス交差点であっても、そのうちのいくつかが信号情報の提供を停止していれば、上述の基準により当該交差点群で安全運転支援動作を行うことに決定し、当該交差点群を走行した場合、安全運転支援動作の実行と不実行が頻繁に切り替わったり、たった1つの交差点でのみ安全運転支援動作が実行されなかったりという事態が起こりうる。そこで、サービス交差点情報に、サービス交差点において交通信号機が実際に信号情報を提供しているか否かの情報が含まれるようにし、例えば、車載装置が、当該サービス交差点情報に基づいて交差点群に含まれる各交差点で信号情報が提供されているか否かを判断し、全ての交差点で信号情報が提供されていれば、安全運転支援動作を行うことに決定し、1つでも信号情報が提供されていない交差点が含まれていれば、安全運転支援動作を行わないことに決定する。これにより、より確実に、安全運転支援動作の実行と不実行が頻繁に切り替わったり、たった1つの交差点でのみ安全運転支援動作が実行されなかったりすることを防止でき、実効性の高い安全運転支援を行うことができる。
(4)また、前記サービス交差点情報には、サービス交差点における前記信号情報の信頼性レベルを示す情報が含まれることが好ましい。ここで、信頼性レベルとは、信号情報の信頼性の高さをいう。
例えば、交通信号機から路上装置を経由して、灯色「青」と継続秒数「10秒」の信号情報が車載装置に提供される場合、当該信号情報は、交通信号機と路上装置の間の通信時間、路上装置の処理時間、及び路上装置と車載装置の間の通信時間だけ経過した後、車載装置に到達する。仮に、上記の通信時間や処理時間の合計時間(これを通信所要時間という)が1秒であれば、青の継続秒数が9秒となった時点で、車載装置は上記の灯色「青」と継続秒数「10秒」の信号情報を受信することになるので、現実の青の継続秒数と受け取った青の継続秒数は通信所要時間の1秒分だけずれていることになる。さらに、通信所要時間は通信経路の通信品質や通信経路上の各種装置の処理能力等に応じて変動する場合がある。そのため、車載装置が受信した信号情報(特に継続秒数)の信頼性は、前記通信所要時間及びその変動に依存することになる。
ところで、車両の速度制御やドライバへの減速指示などの安全運転支援動作では、ドライバに灯色が切り替わる旨を注意喚起する安全運転支援動作に比べて、受信する信号情報に非常に高い信頼性が要求される。この理由は次の通りである。仮に通信所要時間が1秒であっても、時速90キロで走行する車両はその間に25mも走行する。そうすると、実際には9秒後に灯色が青から黄に切り替わり、そのときの車両の位置は停止線手前であるため、車載装置は減速して停止するように制御すべきであるのに、車載装置は誤ってさらに1秒後に切り替わると認識し、そのときの車両の位置をさらに25m進んだ停止線通過後であると判断して、速度を維持するように制御してしまう可能性がある。従って、速度制御や減速指示などの安全運転支援動作では、信号情報に非常に高い信頼性が要求される。一方、灯色が青から黄に切り替わる3秒前にドライバにまもなく灯色が青から黄に切り替わる旨を音声で知らせる場合には、灯色が3秒後に青から黄に切り替わらずに、実際には2秒後に切り替わったとしても、ドライバにとっては「まもなく」には違いない。従って、注意喚起の安全運転支援動作では、信号情報にさほど高い信頼性が要求されない。よって、通信所要時間やその変動が大きい場合には、信号情報は、注意喚起の安全運転支援動作では十分に適用可能であっても、速度制御や減速指示などの安全運転支援動作では適用可能でない場合がある。
そこで、車載装置が速度制御や減速指示などの安全運転支援動作を行う場合には、サービス交差点情報にサービス交差点における信号情報の信頼性レベルの情報が含まれるようにし、例えば、車載装置が、当該サービス交差点情報に基づいて交差点群に含まれる各交差点で信号情報が提供されているか否か、その信号情報の信頼性レベルが高いか否かを判断し、全ての交差点で信号情報が提供され、かつ、その信号情報の信頼性レベルが高ければ、安全運転支援動作を行うことに決定し、1つでもこれを満たさない交差点が含まれていれば、安全運転支援動作を行わないことに決定する。これにより、さらに安全性の高い安全運転支援を行うことができる。
(5)また、前記サービス交差点情報には、サービス交差点における前記信号情報のセキュリティレベルを示す情報が含まれることが好ましい。ここで、セキュリティレベルとは、暗号化や符号化などの処理が行われることによる信号情報の安全性の高さをいう。
例えば、交通信号機から車載装置への信号情報を傍受し、偽の信号情報を作成して、車載装置に提供する偽装路上装置が設置されていた場合に、当該偽装路上装置が灯色が赤である信号情報を傍受し、灯色が青である偽の信号情報を作成して、車載装置に提供すると、車載装置がその偽の信号情報を信用して減速制御を行わないために車両が赤で交差点に進入し、交通事故が引き起こされる場合がある。
そこで、サービス交差点情報にサービス交差点における信号情報のセキュリティレベルの情報が含まれるようにし、例えば、車載装置が、当該サービス交差点情報に基づいて交差点群に含まれる各交差点で信号情報が提供されているか否か、その信号情報のセキュリティレベルが高いか否かを判断し、全ての交差点で信号情報が提供され、かつ、その信号情報のセキュリティレベルが高ければ、安全運転支援動作を行うことに決定し、1つでもこれを満たさない交差点が含まれていれば、安全運転支援動作を行わないことに決定する。これにより、さらに安全性の高い安全運転支援を行うことができる。
(6)また、前記サービス交差点情報には、サービス交差点における地点感応制御の許否についての情報が含まれることが好ましい。
地点感応制御では、車両感知器の感知情報等に基づいて表示している灯色の表示時間を延長、短縮する。例えば、地点感応制御の一種である右折感応制御では、右折専用現示(青矢印)において、右折専用車線に設けられた車両感知器で右折車両のギャップ(車間時間)を非常に短い周期で(例えば、100msec毎に)計測し、ギャップの有無に応じて右折専用現示の表示時間を延長、短縮するので、右折専用現示の継続秒数を事前に予測することは事実上困難である。そのため、サービス交差点であっても、地点感応制御が許可されている交差点であれば、灯色の継続秒数が予め確定しない場合があり、進入するタイミングによっては安全運転支援動作を行えない場合がある。
そこで、サービス交差点情報にサービス交差点において地点感応制御が許可されているか否かの情報が含まれるようにし、例えば、車載装置が、当該サービス交差点情報に基づいて交差点群に含まれる各交差点で信号情報が提供されているか否か、地点感応制御が許可されているか否かを判断し、全ての交差点で信号情報が提供され、かつ、地点感応制御が許可されていなければ、安全運転支援動作を行うことに決定し、1つでもこれを満たさない交差点が含まれていれば、安全運転支援動作を行わないことに決定する。これにより、より確実に、安全運転支援動作の実行と不実行が頻繁に切り替わったり、たった1つの交差点でのみ安全運転支援動作が実行されなかったりすることを防止でき、実効性の高い安全運転支援を行うことができる。
(7)また、前記サービス交差点情報には、サービス交差点における交通規制の情報が含まれることが好ましい。
サービス交差点情報に、サービス交差点における車線規制や速度規制などの交通規制の情報が含まれていれば、これらの交通規制に従って安全運転支援動作を行うことができるので、有用である。
(8)前記安全運転支援動作は、前記車載装置が搭載された車両の速度の制御と、当該車両の搭乗者への報知の、少なくとも1つであることが好ましい。
上述のように、安全運転支援動作としては、車両の速度を制御することや、ドライバを含む搭乗者に減速や速度維持を指示すること、灯色が切り替わる旨を注意喚起することなどが含まれる。
(9)また、本願の実施形態に係る路上装置は、上記の安全運転支援システムに用いられる路上装置である。
(10)上記路上装置は、特に限定されないが、光ビーコンであれば、狭い領域内でのみ車両とデータ通信することができるので、必要な情報を必要な車両との間でのみ送受信することが可能となる。
(11)また、本願の実施形態に係る車載装置は、車両に搭載された車載装置であって、予め定められた対象となる交差点が信号情報を提供可能な交通信号機の設置されたサービス交差点であるか否かを識別するための、サービス交差点情報を取得する手段と、前記サービス交差点情報に基づき、前記車両に対する安全運転支援動作を行うか否かを決定する決定手段と、前記決定に基づいて前記安全運転支援動作を行う安全運転支援制御手段とを有する。
車載装置は、上述のようにサービス交差点情報を路上装置から受信しても良いし、予め車載装置に記憶しておいたサービス交差点情報を読み出しても良く、サービス交差点情報の取得方法は問わない。なお、車載装置は、1つの装置から構成されている場合に限られず、複数の装置から構成されていても良い。
(12)前記サービス交差点情報には、前記サービス交差点における前記信号情報の提供の実施状況についての情報が含まれることが好ましい。
この場合、前記決定手段は、前記車載装置が搭載された車両が走行する予定の経路上の1又は複数の前記交差点から構成される交差点群を選定し、当該交差点群の各交差点における前記信号情報の前記提供の実施状況に基づき、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うか否かを決定するように構成されていることが好ましい。
(13)また、前記決定手段は、前記交差点群の全ての交差点において前記信号情報の提供が実施されている場合に、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うことに決定するように構成されていることが好ましい。
(14)また、前記サービス交差点情報には、前記サービス交差点における前記信号情報の信頼性レベルを示す情報が含まれることが好ましい。
この場合、前記決定手段は、さらに前記交差点群の各交差点における前記信号情報の信頼性レベルに基づき、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うか否かを決定するように構成されていることが好ましい。
(15)また、前記決定手段は、前記交差点群の全ての交差点において、前記信号情報の提供が実施されており、かつ、前記信号情報の信頼性レベルが高い場合に、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うことに決定するよう構成されていることが好ましい。
(16)また、前記サービス交差点情報には、前記サービス交差点における前記信号情報のセキュリティレベルを示す情報が含まれることが好ましい。
この場合、前記決定手段は、さらに前記交差点群の各交差点における前記信号情報のセキュリティレベルに基づき、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うか否かを決定するように構成されていることが好ましい。
(17)また、前記決定手段は、前記交差点群の全ての交差点において、前記信号情報の提供が実施されており、かつ、前記信号情報のセキュリティレベルが高い場合に、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うことに決定するよう構成されていることが好ましい。
(18)また、前記サービス交差点情報には、前記サービス交差点における地点感応制御の許否についての情報が含まれることが好ましい。
この場合、前記決定手段は、さらに前記交差点群の各交差点における前記地点感応制御の許否に基づき、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うか否かを決定するように構成されていることが好ましい。
(19)また、前記決定手段は、前記交差点群の全ての交差点において、前記信号情報の提供が実施されており、かつ、地点感応制御が許可されている場合に、当該交差点群において前記安全運転支援動作を行うことに決定するよう構成されていることが好ましい。
(20)また、前記決定に基づき、前記経路上の交差点が安全運転支援動作が行われる交差点か否かを識別するための情報を前記車両の搭乗者に報知する手段をさらに有することが好ましい。
例えば、道路地図データに目的地までの誘導経路を重畳し、さらに当該経路上の交差点のうち安全運転支援動作が行われる交差点に丸印などの図形を重畳した画像データを車載モニターに表示すれば、ドライバはどの交差点で安全運転支援動作が行われるかを一見して認識することができるため、経路上に安全運転支援動作が行われる交差点と行われない交差点が混在していても戸惑うことがなくなる。
(21)また、目的地までの誘導経路を探索する探索手段をさらに有し、前記走行する予定の経路は、前記探索手段が探索した誘導経路であることが好ましい。
(22)また、目的地までの誘導経路を探索する探索手段と、前記信号情報の提供が実施されている1又は複数の前記交差点から構成される第二交差点群を選定する選定手段とをさらに有し、前記走行する予定の経路は、前記第二交差点群の各交差点に流入する道路のコストを、当該交差点以外の交差点に流入する道路のコストに比べ、相対的に小さく設定して探索した誘導経路であることが好ましい。
例えば、同一のサイクル長で動作する交通信号機が設置された交差点をまとめた交差点群のうち、当該交差点群に含まれる全ての交差点で信号情報の提供が実施されているものを選定しておき(交差点群は複数あっても良い。当該交差点群を第二交差点群とする)、当該第二交差点群に含まれる交差点に流入する道路のコストを、当該第二交差点群に含まれない交差点に流入する道路のコストに比べ、相対的に小さく設定する。そして、目的地までの誘導経路を道路のコストの合計値が最小となるように探索する。そうすると、上記の第二交差点群に含まれる交差点をなるべく経由するような誘導経路が探索されるので、当該経路上の交差点について、上記第二交差点群に含まれるものをまとめて、新たな交差点群として選定すれば(これを第一交差点群とする)、第一交差点群に含まれる交差点では全て信号情報が提供されているので、当該第一交差点群を走行している間は安全運転支援動作が行われる。よって、経路全体での安全運転支援動作が行われる確率が高くなるため、さらに安全性の高い安全運転支援を行うことができる。
(23)また、前記サービス交差点情報には、前記交差点の識別情報と前記交差点に流入する道路の識別情報の少なくとも1つが含まれることが好ましい。
(24)また、前記サービス交差点情報には、前記サービス交差点における交通規制の情報が含まれることが好ましい。
(25)また、前記安全運転支援動作は、前記車両の速度の制御と、当該車両の搭乗者への報知の、少なくとも1つであることが好ましい。
(26)また、本願の実施形態に係る車両は、上記の車載装置を搭載した車両である。
以上のように、本願の実施形態に係る安全運転支援システムによれば、安全運転支援が実施される交差点と実施されない交差点が混在している場合であっても、ドライバが安全運転支援システムに過信や不信を抱かないように、実効性の高い安全運転支援を行うことができる。
実施の形態1:
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。まず、用語の定義を行う。
「サービス交通信号機」:灯色及び継続秒数などの信号情報を提供できる交通信号機。
「サービス交差点」:サービス交通信号機が設置されている交差点。
「非サービス交差点」:サービス交差点でない交差点。
図1は、本発明の実施形態に係る路上装置、車載装置及び車両を含む安全運転支援システムの概要を示す模式図である。安全運転支援システムは、路上装置1、車載装置2、サービス交通信号機3A、交通信号機3B、中央装置4、車両10などを含む。中央装置4は、交通情報の提供などを行う装置であり、交通管制センター内に設置されている。なお、中央装置4は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。中央装置4は、複数のサービス交差点IAのそれぞれに設置されたサービス交通信号機3Aと電話回線などの通信回線を介して接続されているとともに、複数の非サービス交差点IBのそれぞれに設置された交通信号機3Bと電話回線などの通信回線を介して接続されている。サービス交通信号機3Aは、道路RAを含むサービス交差点IAに流入する複数の道路のそれぞれに設置された路上装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。交通信号機3Bは、道路RBを含む非サービス交差点IBに流入する複数の道路のそれぞれに設置された路上装置1と電話回線などの通信回線を介して接続されている。
路上装置1は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication : 専用狭域通信)、WiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)などであり、車両10に搭載された車載装置2との間で各種情報を無線通信する。路上装置1は、車載装置2と各種情報の通信を行う通信部1aと、通信部1aを制御する通信制御装置1bとを含んでいる。通信制御装置1bにはROM等の記憶部が備えられており、路上装置1から当該路上装置1が設置されている道路の流入先の交差点までの距離の情報が予め記憶されている。例えば、道路RAに設置された路上装置1の記憶部には、当該路上装置1からサービス交差点IAまでの距離の情報が予め記憶されており、また、道路RBに設置された路上装置1の記憶部には当該路上装置1から非サービス交差点IBまでの距離の情報が予め記憶されている。なお、これらの距離の情報は、予め記憶されている構成に限定されず、中央装置4等から取得して記憶する構成であっても良い。
サービス交通信号機3Aに接続されている路上装置1は、サービス交通信号機3Aから速度規制や車線規制などの交通規制情報を含む交通情報、後述するサービス交差点情報、灯色及び継続秒数などの信号情報を受信し、これらの情報と距離情報を車載装置2に送信する。一方、交通信号機3Bに接続されている路上装置1は、交通信号機3Bから交通情報、後述するサービス交差点情報を受信し、これらの情報と距離情報を車載装置2に送信する。なお、路上装置1は、交通情報、サービス交差点情報等を中央装置4から直接受信する構成であっても良く、また、これらの情報が記憶部に予め記憶されている構成であっても良い。
サービス交通信号機3Aは、交通信号制御機3aaと複数の信号灯器3bなどを含んでいる。交通信号制御機3aaは、信号灯器3bの各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。また、交通信号制御機3aaは、信号情報の提供の実施状況についての情報を中央装置4に送信する。具体的には、信号情報の提供を実施しているか否か、停止している場合にはその原因(交通信号機のメンテナンス、交通信号機の異常、路上装置のメンテナンス、路上装置の異常、中央装置からの停止指示など)の情報を送信する。また、交通信号制御機3aaは、中央装置4から交通情報、後述するサービス交差点情報を受信し、これらの情報と信号情報を当該交通信号制御機3aaに接続されている路上装置1に送信する。
交通信号機3Bは、通常の交通信号機であり、交通信号制御機3abと複数の信号灯器3bなどを含んでいる。交通信号制御機3abが、交通信号制御機3aaと異なる点は、信号情報を路上装置1に送信しない点、信号情報の提供の実施状況についての情報を中央装置4に送信しない点である。
中央装置4は、各交差点がサービス交差点か否かの識別等を示すサービス交差点テーブル、交差点毎の地点感応制御の許否等を示す地点感応交差点テーブルと、交差点に流入するリンク毎の交通規制の種別を示す交通規制種別テーブルとを当該装置の記憶部に記憶している。ここで、リンクとは、上り方向と下り方向で区別した交差点間の道路のことをいう。
図2はサービス交差点テーブルの例を示す説明図である。サービス交差点テーブルは、交差点を識別するための交差点ID、当該交差点が含まれるグループを識別するためのグループID、当該交差点がサービス交差点であるか非サービス交差点であるかを区別するためのサービス・非サービスフラグの各欄から構成されている。例えば、交差点IDが000001である交差点は、グループIDが00001のグループに含まれており、非サービス交差点であることを示しており、交差点IDが000002である交差点は、グループIDが00002であるグループに含まれており、サービス交差点であることを示している。
上記のグループは、例えば、同一のサイクル長で動作するサービス交通信号機3A又は交通信号機3Bが設置されたサービス交差点IA又は非サービス交差点IBをひとまとめにして、グループ化することで設定される。ただし、この方法に限定されず、幹線道路上の連続するサービス交差点IA又は非サービス交差点IBをひとまとめにしてグループ化しても良いし、単に地理的に近いサービス交差点IA又は非サービス交差点IBをひとまとめにしてグループ化しても良い。なお、グループに含まれる交差点は1つのみであっても良い。
図3は地点感応交差点テーブルの例を示す説明図である。地点感応交差点テーブルは、交差点を識別するための交差点ID、当該交差点において地点感応制御が現時点で許可されているか否かを区別するための地点感応許可・不許可フラグ、当該交差点における地点感応制御の許可開始時刻及び許可終了時刻の各欄から構成されている。例えば、交差点IDが000001である交差点では、地点感応制御が現時点で許可されておらず、地点感応制御の許可開始時刻が16:00であり、許可終了時刻が18:00であることを示している。また、例えば、交差点IDが000002である交差点では、地点感応制御が現時点で許可されており、地点感応制御の許可開始時刻が06:00であり、許可終了時刻が20:00であることを示している。
図4は交通規制種別テーブルの例を示す説明図である。交通規制種別テーブルは、交差点を識別するための交差点ID、交差点に流入するリンクを識別するためのリンクID、交通規制の種別(速度規制、車線規制、右折禁止、規制なしなど)を示す規制種別の各欄から構成されている。例えば、交差点IDが000001である交差点に流入する、リンクIDが0000001であるリンクでは、速度規制が実施されていることを示している。また、例えば、交差点IDが000001である交差点に流入する、リンクIDが0000002であるリンクでは、交通規制が実施されていないことを示している。なお、交差点IDが000001、000002である交差点と、リンクIDが0000001から0000014までのリンクの対応関係は、図5に示すようになっている。
中央装置4は、所定のタイミング(例えば、5分毎)で、複数のサービス交通信号機3Aから信号情報の提供の実施状況についての情報を取得し、複数のサービス交差点IA毎に信号情報の提供が実施されているか否かを判断する。次に、中央装置4は、この判断結果と記憶部に記憶しているサービス交差点テーブル、地点感応交差点テーブル及び交通規制種別テーブルに基づいて、次に説明するサービス交差点情報を作成する。
図6はサービス交差点情報の例を示す説明図である。サービス交差点情報は、交差点を識別するための交差点ID、当該交差点が含まれるグループを識別するためのグループID、当該交差点に流入するリンクを識別するためのリンクID、当該交差点がサービス交差点であるか非サービス交差点であるかを区別するためのサービス・非サービスフラグ、当該交差点において地点感応制御が現時点で許可されているか否かを区別するための地点感応許可・不許可フラグ、当該交差点における地点感応制御の許可開始時刻及び許可終了時刻、交通規制の種別を示す規制種別、当該交差点において信号情報の提供が実施されているか否かを区別するための情報提供実施・不実施フラグ、当該交差点において信号情報の提供が停止されている場合の原因(交通信号機のメンテナンス、交通信号機の異常、路上装置のメンテナンス、路上装置の異常、中央装置からの停止指示など)を示す停止事由の各欄から構成されている。
例えば、交差点IDが000001である交差点に流入する、リンクIDが0000001であるリンクについては、その先の交差点はグループIDが00001であるグループに含まれており、非サービス交差点であり、地点感応制御が現時点で許可されておらず、地点感応制御の許可開始時刻が16:00で許可終了時刻が18:00であり、速度規制が実施されていることを示している。
また、例えば、交差点IDが000002である交差点に流入する、リンクIDが0000010であるリンクについては、その先の交差点はグループIDが00002であるグループに含まれており、サービス交差点であり、地点感応制御が現時点で許可されており、地点感応制御の許可開始時刻が06:00で許可終了時刻が20:00であり、交通規制が実施されておらず、信号情報の提供が実施されていることを示している。
また、例えば、交差点IDが000050である交差点に流入する、リンクIDが0000253であるリンクについては、その先の交差点はグループIDが00018であるグループに含まれており、サービス交差点であり、地点感応制御が現時点で許可されており、地点感応制御の許可開始時刻が8:00で許可終了時刻が18:00であり、車線規制が実施されており、信号情報の提供が実施されておらず、交通信号制御機のメンテナンスのために情報提供が停止されていることを示している。
中央装置4は、作成したサービス交差点情報を、速度規制や車線規制などの交通規制情報を含む交通情報とともに、複数のサービス交通信号機3A及び交通信号機3Bに送信する。
車両10には、車載装置2が搭載されており、車載装置2は、路上装置1との間で各種情報を無線通信する。車載装置2を搭載した車両10は、路上装置1の通信領域を通過する際に、路上装置1との間で無線通信を行い、サービス交通信号機3Aに接続されている路上装置1からは、交通情報、サービス交差点情報、信号情報及び距離情報を取得し、交通信号機3Bに接続されている路上装置1からは、交通情報、サービス交差点情報及び距離情報を取得する。車載装置2は、サービス交差点情報及び距離情報を取得すると、後述する安全運転支援制御処理を実行する。
図7は車両10に搭載されている車載装置2及びその他装置の構成を示すブロック図である。GPS処理部201は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報に基づいて、車両10の位置(緯度、経度及び高度)を計測する。方位センサ202は、光ファイバジャイロなどで構成されており、方位及び角速度を計測する。車速取得部203は、車速センサ101が車輪の角速度を検出することにより計測した車両10の速度のデータを取得する。通信部204は、路上装置1から交通情報、サービス交差点情報などの各種情報を受信する。
記憶部205は、道路地図データを記憶している。道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データ、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクコスト(例えば、リンクを通過するのに要する時間、リンクの距離などの値が設定されている)、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDとを対応づけたリンクデータなどから構成されている。また、記憶部205は、通信部204が受信した各種情報、後述する経路交差点テーブルを記憶する。
燃料制御部206は、処理部210が後述する安全運転支援制御処理において指示した内容に基づいて燃料制御装置102に指示を出す。燃料制御装置102は、燃料制御部206の指示及びアクセルペダルの踏み込み量に基づいて燃料を供給する。
制動部207は、処理部210が後述する安全運転支援制御処理において指示した内容に基づいて減速装置103に指示を出す。減速装置103は、制動部207の指示及びブレーキペダルの踏み込み量に基づいてブレーキを作動する。
表示部208は、処理部210が後述する安全運転支援制御処理において作成した画像データをモニター104に表示する。
音声出力部209は、処理部210が後述する安全運転支援制御処理において作成した音声データをスピーカー105から出力する。
処理部210は、1又は複数のマイクロコンピュータにより構成されており、GPS処理部201が計測した位置、方位センサ202が計測した方位及び角速度、車速取得部203が取得した速度の各データに基づいてマップマッチング処理を行い、記憶部205に記憶している道路地図データのリンク上における車両10の位置を求める。
また、処理部210は、以下に説明する安全運転支援制御処理を実行する。まず、処理部210は、路上装置1からサービス交差点情報を取得すると、目的地までの誘導経路を探索し、ドライバに誘導経路を報知する。なお、目的地はドライバなどにより予め設定されている。具体的には、処理部210は、目的地までの誘導経路をリンクコストの合計値が最小となるように探索する。探索方法としては、ダイクストラ法などを用いれば良い。さらに、探索した誘導経路を道路地図に重畳した画像データを作成し、モニター104に表示する。
次に、処理部210は、探索した誘導経路上に存在する交差点をグループ化し、後述する経路交差点テーブルを作成する。具体的には、道路地図データを参照して上記の誘導経路上に存在する各交差点の交差点IDを抽出し、サービス交差点情報を参照して対応する各交差点のグループIDを抽出する。そして、グループIDが同じ交差点をまとめて1つのグループ(以下、補正グループと呼ぶ)とし、補正グループIDを付与して、これらの交差点の交差点ID、グループID、補正グループID及びサービス交差点情報の情報提供実施・不実施フラグに基づいて後述する経路交差点テーブルを作成する。なお、サービス交差点情報に誘導経路上の交差点が存在しない場合は、その交差点を独立した1つのグループとして、補正グループIDを付与する。
図8は、交差点のグループ化を説明するための図である。図において、三角印は車両10を、星印は目的地を、丸印は交差点を、破線はグループを、太い実線は誘導経路上のリンクを、細い実線は誘導経路上にないリンクを示している。また、括弧中の数字は交差点IDを、四角で囲まれた数字はグループIDを示している。誘導経路上に存在する交差点の交差点IDは車両10から目的地へ向かう順に000101、000102、000103、000104、000105、000106、000107、000123、000124であるため、処理部210は、グループID00051のグループに含まれる交差点ID000101の交差点をグループ化して補正グループID001を付与し、グループID00052のグループに含まれる交差点ID000102、000103、000104の交差点をグループ化して補正グループID002を付与し、グループID00053のグループに含まれる交差点ID000105、000106、000107、000123の交差点をグループ化して補正グループID003を付与し、グループID00060のグループに含まれる交差点ID000124の交差点をグループ化して補正グループID004を付与する。
なお、この場合、補正グループID001やID004に属する交差点は1つしかないため、当該補正グループに属する交差点(交差点ID000101やID000124)を、当該交差点と隣接する補正グループ(補正グループID002やID003)に属するようにしても良い。このように、少数の交差点しか属さない補正グループを他の補正グループと統合することで、頻繁に安全運転支援動作を切り替えないように制御することもできる。また、逆に、多数の交差点が属する補正グループを、到着予測時刻や地理的な距離に応じて複数の補正グループに分割するようにしても良い。
図9は経路交差点テーブルの例を示す説明図である。経路交差点テーブルは、誘導経路上に存在する交差点の交差点ID、グループID、補正グループID、当該交差点において信号情報の提供が実施されているか否かを区別するための情報提供実施・不実施フラグ、当該交差点において後述する速度制御処理の実行を許可するか否かを区別するための制御許可・不許可フラグの各欄から構成されている。経路交差点テーブルには、誘導経路上に存在する交差点が車両10から目的地へ向かう順に上から下へ格納され、制御許可・不許可フラグには初期状態では何も格納されない。
例えば、車両10が最初に通過する誘導経路上の交差点は、交差点IDが000101、グループIDが00051、補正グループIDが001であり、信号情報の提供が実施されていることを示している。また、例えば、車両10が5番目に通過する誘導経路上の交差点は、交差点IDが000105、グループIDが00053、補正グループIDが003であり、信号情報の提供が実施されていないことを示している。また、例えば、車両10が最後に通過する誘導経路上の交差点は、交差点IDが000124、グループIDが00060、補正グループIDが004であることを示している。
グループ化及び経路交差点テーブルの作成が終わると、処理部210は、それぞれの補正グループについて、当該補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されているかを判定する。判定の結果、補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されていれば、これらの交差点で速度制御処理を行うことに決定し、経路交差点テーブルを更新する。一方、補正グループに含まれる交差点のうち少なくとも1つで信号情報が提供されていなければ、当該補正グループに含まれる交差点では速度制御処理を行わないことに決定し、経路交差点テーブルを更新する。
具体的には、処理部210は、経路交差点テーブルを参照して、それぞれの補正グループIDについて、当該補正グループIDに対応する全ての交差点の情報提供実施・不実施フラグを抽出し、信号情報が提供されているか否かを判定する。判定の結果、全ての交差点で信号情報が提供されていれば、これらの交差点の制御許可・不許可フラグに「許可」を設定する。一方、少なくとも1つの交差点で信号情報が提供されていなければ、これらの交差点の制御許可・不許可フラグに「不許可」を設定する。
これを図9の経路交差点テーブルの例を用いて説明する。処理部210は、まず図9の経路交差点テーブルの1番上段の交差点の補正グループID001を抽出する。補正グループID001に対応する交差点は交差点ID000101の交差点だけなので、当該交差点の情報提供実施・不実施フラグを抽出する。「実施」となっているので、補正グループID001に対応する全ての交差点で信号情報が提供されていると判定し、交差点IDが000101の交差点の制御許可・不許可フラグに「許可」を設定する。
処理部210は、次に上から2番目の交差点の補正グループID002を抽出する。補正グループID002に対応する交差点は交差点IDが000102、000103、000104の交差点なので、これらの交差点の情報提供実施・不実施フラグを抽出する。全て「実施」となっているので、補正グループID002に対応する全ての交差点で信号情報が提供されていると判定し、これらの交差点の制御許可・不許可フラグに「許可」を設定する。
処理部210は、さらに上から5番目の交差点の補正グループID003を抽出する。補正グループID003に対応する交差点は交差点IDが000105、000106、000107、000123の交差点なので、これらの交差点の情報提供実施・不実施フラグを抽出する。それぞれ「不実施」、「実施」、「不実施」、「実施」となっているので、補正グループID003に対応する全ての交差点で信号情報が提供されているのではないと判断し、これらの交差点の制御許可・不許可フラグに「不許可」を設定する。
処理部210は、最後に一番下段の交差点の補正グループID004を抽出する。補正グループ004に対応する交差点は交差点ID000124の交差点だけなので、当該交差点の情報提供実施・不実施フラグを抽出する。何も設定されていないので、補正グループID004に対応する全ての交差点で信号情報が提供されているのではないと判断し、交差点IDが000124の交差点の制御許可・不許可フラグに「不許可」を設定する。図10は、上述のように制御許可・不許可フラグを設定した後の経路交差点テーブルの例を示す説明図である。
処理部210は、制御許可・不許可フラグを設定すると、同フラグが「許可」となっている誘導経路上の交差点と「不許可」となっている誘導経路上の交差点を区別できるように上述の画像データを修正し、モニター104に表示する。
図11は、画像データの例を示す説明図である。図において、三角印は車両10の位置を、星印は目的地の位置を、細い実線はリンクを、太い実線は誘導経路を、丸印は制御許可・不許可フラグが「許可」となっている誘導経路上の交差点を表している。
また、図12は、別の態様の画像データの例を示す説明図である。図12では、三角印、星印、細い実線は図11と同じであるが、太い実線は速度制御処理が行われる区間を、太い点線は同処理が行われない区間を表している。なお、速度制御処理が行われる区間は、制御許可・不許可フラグが「許可」となっている誘導経路上の交差点に流入するリンクにより構成されている。
ドライバを含む車両10の搭乗者は、モニター104に表示された上記画像を見ることにより、どの交差点であるいはどの区間で速度制御処理が実行されるかを一見して認識することができるため、これらの処理が行われる交差点と行われない交差点が混在していても戸惑うことがなくなる。
さらに処理部210は、誘導経路上の交差点における速度制御処理の実行の有無についての音声データを作成し、スピーカー105から出力する。例えば、交差点IDが000104、000105の交差点の名称がそれぞれ「○○○交差点」、「△△△交差点」であるとすると、音声データは「この先、○○○交差点までは速度制御が行われますが、△△△交差点からは速度制御が行われませんので、ご注意下さい。」などである。なお、音声の提供は、最初に行うだけでなく、速度制御処理の実行と不実行が切り替わるとき、すなわち、図10の例であれば交差点ID000104を通過して交差点ID000105の交差点の流入リンクに進入した時点に行うのが望ましい。
誘導経路上の交差点毎に速度制御処理が実行されるか否かを音声で提供することにすると、ドライバは煩わしさを感じる場合があるが、このように最初の時点と速度制御処理の実行と不実行が切り替わる時点で音声で提供することにすると、速度制御処理が実行される交差点あるいは実行されない交差点がある程度連続することから、音声で知らせる回数は誘導経路上の交差点数に比べて非常に少なくなり、ドライバは煩わしさを感じずに済み有用である。
処理部210は、画像データの表示及び音声データの提供後は、経路交差点テーブルの各交差点の制御許可・不許可フラグに従って、各交差点において速度制御処理を実行する。具体的には、処理部210は、同フラグが「許可」となっている交差点の流入リンクに進入した場合は、記憶部205に記憶されている交通情報、信号情報および距離情報、車速取得部203で取得した車両10の速度データに基づいて、当該交差点を通過するまで速度制御処理を行う。すなわち、当該交差点(信号情報を提供しているので、サービス交差点IA)を青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持するように燃料制御部206に指示する。通過できないと判断した場合には、サービス交差点IA手前の停止線PAで安全に停止できるように制動部207に指示する。一方、「不許可」が設定されていれば、当該交差点を通過するまでは速度制御処理を行わない。
もし仮に、交差点で信号情報が提供されている場合に、車載装置2が速度制御処理を実行することにすると、図10からわかるように、交差点ID00104、000105、000106、000107、000123、000124の交差点を通過する際には、速度制御処理の実行と不実行が頻繁に切り替わる(図10の例では5回切り替わる)ことになるので、ドライバは戸惑いや煩わしさを感じ、安全運転支援システムに対して上述のような不信を抱く可能性がある。しかしながら、本発明の実施形態によれば、車載装置2はグループ化した複数の交差点の全てにおいて信号情報が提供されている場合にのみ、これらの交差点で速度制御処理を実行するので、速度制御処理の実行と不実行が頻繁に切り替わるのを防止することができる(図10の例では、交差点ID000104とID000105の間で1回切り替わるのみ)。したがって、ドライバが安全運転支援システムに不信を抱くことを防止し、安全運転支援の実効性を高めることができる。
また、例えば、制御許可・不許可フラグの設定後の経路交差点テーブルが図13に記載のようになったとする。この場合も、交差点で信号情報が提供されている場合に、車載装置2が速度制御処理を実行することにすると、交差点ID000107以外の交差点ではいずれも速度制御処理が実行されるので、ドライバは交差点ID000101から000106の交差点を走行している間に交差点では必ず速度制御処理が実行されるものと過信してしまい、交差点ID000107の交差点において安全確認等を十分にしないで運転してしまう可能性がある。しかしながら、本発明の実施形態によれば、交差点ID000107の交差点を含む補正グループID003に含まれる全ての交差点において速度制御処理が実行されないので、速度制御処理が行われない交差点がたった1つだけ存在するというような事態がなくなる。したがって、ドライバが安全運転支援システムに過信を抱くことを防止することができる。
なお、信号情報の提供を実施しているサービス交差点IAであっても、地点感応制御を実施している場合には、上述のように当該交差点に進入するタイミングによっては速度制御処理が行われない可能性があるため、補正グループに地点感応制御が許可されているサービス交差点IAが含まれている場合には、当該補正グループに含まれる交差点においては速度制御処理を行わないことに決定する構成としても良い。そうすると、より一層速度制御処理の実行と不実行が頻繁に切り替わることを防止することができる。
また、車載装置2は安全運転支援制御処理として速度制御処理を行う構成に限定されず、ドライバに報知する構成であっても良い。例えば、車載装置2は、交通情報、信号情報、距離情報、車両10の速度データに基づいて、サービス交差点IAを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、ドライバに音声で現在の速度を保持するように報知し、通過できないと判断した場合には、サービス交差点IA手前の停止線PAで安全に停止できるように減速すべき旨を報知しても良い。あるいは、車載装置2は、信号情報に基づいて、サービス交差点IAの灯色が青であり、かつ、継続秒数が所定秒数(例えば、3秒)以下であれば、ドライバに音声でまもなく灯色が青から黄に切り替わる旨を報知しても良い。
また、路上装置1はすべての車載装置2にサービス交差点情報を送信する構成に限定されず、車載装置2から安全運転支援制御処理を実行可能であることを示す情報を受信した場合にのみ、車載装置2にサービス交差点情報を送信する構成であっても良い。
また、車載装置2は路上装置1からサービス交差点情報を取得する構成に限定されず、車載装置2に接続した携帯電話を通じて取得する構成や、ラジオ放送などのメディアを通じて取得する構成であっても良い。また、予め記憶部205にサービス交差点情報を記憶しておき、記憶部205から取得する構成であっても良く、あるいは、サービス交差点情報を記録したCD−ROMなどの記憶メディアから取得する構成であっても良い。
また、車載装置2は誘導経路上に存在する交差点についてグループ化を行う構成に限定されず、車両10が走行している路線(例えば、国道X号線、県道Y号線など)上に存在する交差点についてグループ化を行う構成であっても良い。これにより、ドライバが目的地を設定していなくても、車両10が走行している路線を誘導経路とみなしてグループ化を行うので、当該路線を走行している限り、速度制御処理の実行と不実行が頻繁に切り替わることを防止することができる。なお、車両10が走行している路線が変われば、その都度グループ化を行えば良い。
また、車載装置2はサービス交差点情報に含まれるグループIDに基づいて交差点のグループ化を行う構成に限定されず、車載装置2が記憶部205に記憶しておいた各交差点のグループIDに基づいて交差点のグループ化を行う構成であっても良い。
また、車載装置2はサービス交差点情報に含まれるグループIDに基づいて交差点のグループ化を行う構成に限定されず、車載装置2が各交差点におけるサービス交通信号機3A又は交通信号機3Bのサイクル長の情報を取得し、同一のサイクル長の交差点をまとめてグループ化する構成であっても良い。また、車載装置2が地理的に近い交差点をグループ化する構成、幹線道路の一定の区間上に存在する交差点をグループ化する構成であっても良い。
また、上述の実施の形態においては、車載装置2はグループ化した交差点に信号情報の提供を実施していない交差点が少なくとも1つ含まれれば、これらの交差点では速度制御処理を行わないことに決定する構成であったが、これに限定されるものではなく、グループ化した交差点に信号情報の提供を実施していない交差点が2つ以上含まれれば、速度制御処理を行わないことに決定する構成であっても良い。また、グループ化した交差点のうち、最後に通過する交差点のみが信号情報の提供を実施していない場合は、当該交差点に至るまでの間のみ速度制御処理を行うことに決定する構成であっても良い。同様に、グループ化した交差点のうち、最初に通過する交差点のみが信号情報の提供を実施していない場合は、当該交差点を通過後に速度制御処理を行うことに決定する構成であっても良い。また、グループ化した交差点に非サービス交差点が少なくとも1つ含まれれば、これらの交差点では速度制御処理を行わないことに決定する構成であっても良い。
また、上述の実施の形態においては、車載装置2は目的地までの誘導経路を探索する構成であったが、これに限定されるものではない。同一のグループIDに含まれるサービス交差点IAが全て信号情報の提供を実施している場合には、これらのサービス交差点IAに流入するリンクのリンクコストを小さく設定して、目的地までの誘導経路を探索する構成であっても良い。この構成により、これらのサービス交差点IAを経由するような誘導経路が探索されるので、ドライバがこの誘導経路に沿って運転すれば、速度制御処理が実行される確率が高まり、走行の安全性が高まる。
実施の形態2:
本実施の形態が上述の実施の形態1と異なる点は、サービス交差点情報に信号情報の信頼性レベルを示す情報が含まれている点、車載装置2が当該信頼性レベルを示す情報に応じた安全運転支援制御処理を行う点である。ここで、信頼性レベルとは、信号情報の信頼性の高さをいう。
信号情報が、サービス交通信号機3Aから路上装置1を経由して車両10に搭載された車載装置2に送信される場合、当該信号情報は、サービス交通信号機3Aと路上装置1の間の通信時間、路上装置1の処理時間、及び路上装置1と車載装置2の間の通信時間だけ経過した後、車載装置2に到達する。例えば、上記の信号情報が灯色「青」と継続秒数「10秒」であったとき、仮に、上記の通信時間や処理時間の合計時間(通信所要時間)が1秒であれば、青の継続秒数が9秒となった時点で車載装置2は上記の信号情報を受信することになるので、現実の青の継続秒数と受け取った青の継続秒数は通信所要時間の1秒分ずれていることになる。また、通信所要時間は通信経路の通信品質や通信経路上の図示しないルータ装置などの処理能力等に応じて変動する場合がある。
従って、通信所要時間及びその変動が小さい場合には、現実の灯色の継続秒数と受け取った灯色の継続秒数のずれが小さいので、信号情報は信頼性が高いといえるが、通信所要時間やその変動が大きい場合には、信号情報は信頼性が低いといえる。
中央装置4は、それぞれのサービス交差点IAに流入するリンク毎に、当該リンクにおいて提供される信号情報の信頼性の高さを表す信頼性レベルの情報を記憶部に記憶している。信頼性レベルは「高」「標準」「低」の3段階で表現されている。なお、信頼性レベルはこの表現に限定されるわけではなく、例えば、通信所要時間及び変動の大きさで、通信所要時間「小」、変動「大」などのように表現しても良い。
中央装置4は、上記信頼性レベルの情報を実施の形態1で述べたサービス交差点情報にさらに追加し、サービス交通信号機3A及び交通信号機3Bに送信する。図14は、サービス交差点情報の例を示す説明図である。例えば、交差点IDが000002である交差点に流入する、リンクIDが0000007であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報の信頼性レベルは「高」となっており、交差点IDが000002である交差点に流入する、リンクIDが0000009であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報の信頼性レベルは「標準」となっており、交差点IDが000050である交差点に流入する、リンクIDが0000253であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報の信頼性レベルは「低」となっている。
車載装置2は、路上装置1からサービス交差点情報を受信すると、このサービス交差点情報に含まれている信頼性レベルの情報を参照して安全運転支援制御処理を行う。すなわち、処理部210は、実施の形態1と同様に交差点のグループ化を行った後、それぞれの補正グループについて、当該補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されており、かつ、信頼性レベルが「高」となっているかを判定する。判定の結果、補正グループに含まれる全ての交差点で当該条件を満たしていれば、これらの交差点で速度制御処理を行うことに決定し、補正グループに含まれる交差点のうち少なくとも1つで当該条件を満たしていなければ、当該補正グループに含まれる交差点では速度制御処理を行わないことに決定する。
このように、補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されているだけでなく、さらに信頼性レベルが「高」になっている場合にのみ速度制御処理を行うのは、速度制御処理では信号情報に非常に高い信頼性が要求されるからである。例えば、信号情報が灯色「青」と継続秒数「10秒」であったときに、通信所要時間が1秒であれば、青の継続秒数が9秒となった時点で車載装置2は当該信号情報を受信する。仮に車両10が時速90キロで走行していれば、その1秒の間に当該車両10は25mも走行する。そうすると、実際には9秒後に灯色が青から黄に切り替わり、そのときの車両10の位置は停止線手前であるため、車載装置2は減速して停止するように制御すべきであるのに、車載装置2はさらに1秒後に切り替わると誤って認識し、そのときの車両10の位置をさらに25m進んだ停止線通過後であると判断したために、車載装置2は速度を維持するように誤って制御してしまう可能性がある。以上のように、通信所要時間やその変動は速度制御処理に大きな影響を及ぼすので、速度制御処理は信号情報の信頼性が非常に高いときにのみ実行するのが望ましい。よって、本発明の実施形態により、ドライバはさらに安全性の高い走行をすることができる。
実施の形態3:
本実施の形態が上述の実施の形態1と異なる点は、サービス交差点情報に信号情報のセキュリティレベルを示す情報が含まれている点、車載装置2が当該セキュリティレベルを示す情報に応じた安全運転支援制御処理を行う点である。ここで、セキュリティレベルとは、暗号化や符号化などの処理が行われることによる信号情報の安全性の高さをいう。
中央装置4は、それぞれのサービス交差点IAに流入するリンク毎に、当該リンクにおいて提供される信号情報のセキュリティレベルの情報を記憶部に記憶している。セキュリティレベルは「高」「標準」「低」の3段階で表現されている。なお、セキュリティレベルはこの表現に限定されるわけではなく、信号情報の暗号化が公開鍵方式や秘密鍵方式などで行われる場合には、これらの鍵の長さを長くすればするほど暗号を解読することが困難になり、安全性が高くなることから、鍵の長さで、「大」「標準」「小」などのように表現しても良いし、「100バイト」などのように、鍵の長さそのもので表現しても良い。
中央装置4は、上記セキュリティレベルの情報を実施の形態1で述べたサービス交差点情報にさらに追加し、サービス交通信号機3A及び交通信号機3Bに送信する。図15は、サービス交差点情報の例を示す説明図である。例えば、交差点IDが000002である交差点に流入する、リンクIDが0000007であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報のセキュリティレベルは「高」となっており、交差点IDが000002である交差点に流入する、リンクIDが0000009であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報のセキュリティレベルは「標準」となっており、交差点IDが000050である交差点に流入する、リンクIDが0000253であるリンクでは、当該リンクにおいて提供される信号情報のセキュリティレベルは「低」となっている。
車載装置2は、路上装置1からサービス交差点情報を受信すると、このサービス交差点情報に含まれているセキュリティレベルの情報を参照して安全運転支援制御処理を行う。すなわち、処理部210は、実施の形態1と同様に交差点のグループ化を行った後、それぞれの補正グループについて、当該補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されており、かつ、セキュリティレベルが「高」となっているかを判定する。判定の結果、補正グループに含まれる全ての交差点で当該条件を満たしていれば、これらの交差点で速度制御処理を行うことに決定し、補正グループに含まれる交差点のうち少なくとも1つで当該条件を満たしていなければ、当該補正グループに含まれる交差点では速度制御処理を行わないことに決定する。
このように、補正グループに含まれる全ての交差点で信号情報が提供されているだけでなく、さらにセキュリティレベルが「高」になっている場合にのみ速度制御処理を行うのは、速度制御処理では信号情報に非常に高い安全性が要求されるからである。例えば、サービス交通信号機3Aから車載装置2への信号情報を傍受し、偽の信号情報を作成して、車載装置2に提供する偽装路上装置(図示なし)が設置されていた場合、当該偽装路上装置が灯色が赤である信号情報を傍受し、灯色が青である偽の信号情報を作成して、車載装置2に提供すると、車載装置2がその偽の信号情報を信用して減速制御を行わずに赤で交差点に進入し、交通事故が引き起こされるおそれがあるからである。従って、速度制御処理は信号情報の安全性が非常に高いときにのみ実行するのが望ましい。よって、本発明の実施形態により、ドライバはさらに安全性の高い走行をすることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。