JP5880587B2 - 光学装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学シートとその原版、及び光学装置に関する。
さらに詳しくは、ディスプレイ、照明等の光学装置において、可視光領域を含む遠赤外から紫外領域までの広範囲の光取り出し効率を向上させる技術に関する。
例えば有機発光(有機EL)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置、有機発光照明、LED照明等の各種照明装置などの光学装置の発光効率改善には、光取り出し効率の向上が重要である。
特に有機発光ディスプレイでは、光を取り出す側の基材ガラスと空気の界面において、臨界角以上の方向の発光光がガラス基板内に戻って多重反射を繰り返して閉じ込められ、光取り出し効率が約20%程度までに低下してしまうという問題があった。
光取り出し効率の向上のためには、従来から、光を取り出す表面(光取り出し面)に、いわゆるプリズムシートを配置することが行われている(特許文献1)。
プリズムシートを用いれば、基材ガラス全体に対しては臨界角以上の方向の発光光であっても、プリズム表面の斜面に対しては臨界角未満とできるため、光取り出し効率を大幅に改善することができる。
また、界面反射の防止技術としては、反射防止フィルムを光取り出し面に配置することが行われている。反射防止フィルムの製造方法としては、従来、AR(Anti Reflection)といわれるドライ法(真空成膜法)や、LR(Low Reflection)といわれるウェット法(湿式成膜法)がある。また、レンズ等の非平面への反射防止加工としては、従来ドライ法(真空成膜法)が行われてきた。
ドライ法は、蒸着やスパッタリングを用いて、主として金属や金属酸化物などを対象物の表面にコートする方法である。ウェット法は、表面に塗工層を形成することにより反射防止効果を得ようとするものである。
また、表面に光の波長より小さい(サブ波長)ピッチの微細突起構造を有する反射防止フィルムも知られている。これは、屈折率が表面の深さ方向に連続的に変化する屈折率傾斜効果を得、これにより、光取り出し面での界面反射(フレネル反射)を防止する技術である(特許文献2)。従来、このような反射防止フィルム製造用の原版を得るためには、二光束干渉露光法やレーザーリソグラフィー法、電子線リソグラフィー法などによりパターニングを行っていた。
サブ波長ピッチの微細突起構造の他の形成方法としては、樹脂、金属などの粒子からなる単粒子膜をエッチングマスクとして基板上に配置し、基板表面をエッチングする方法がある。この方法によれば、単粒子膜はエッチングマスクとして作用しつつそれ自身もエッチングされて最終的には削り取られる。その結果、各粒子に対応する位置に円錐状微細突起が形成された基板を得ることができる。
このような単粒子膜エッチングマスクの形成方法としては、特許文献3には、基板をコロイド粒子の懸濁液中に浸漬し、その後、基板と静電気的に結合した第1層目の粒子層のみを残し第2層目以上の粒子層を除去する(粒子吸着法)ことで、単粒子膜からなるエッチングマスクを基板上に設ける方法が開示されている。
また、特許文献4には、まず、シート状基材に単粒子膜(粒子層)を形成し、この単粒子膜を基板に転写する方法が開示されている。この際、シート状基材への単粒子膜を形成する方法としては、シート状基材上にバインダー層を形成し、その上に粒子の分散液を塗布し、その後バインダー層を加熱により軟化させることで、第1層目の粒子層のみをバインダー層中に包埋させ、余分な粒子を洗い落とす方法が記載されている。
特開2007−273245号公報 特開2004−205990号公報 特開昭58−120255号公報 特開2005−279807号公報
しかしながら、上記プリズムシートを配置して、プリズム表面の斜面に対する光の入射角が臨界角以下になったとしても、なお界面反射光が発生するという問題があった。すなわち、プリズムを形成する材料(ガラスや透明樹脂)の屈折率が1.4〜1.6付近であるのに対し、外側の空気の屈折率が約1.0である。そのため、プリズム表面の斜面に対する入射角にもよるが、垂直入射に近い条件でも界面反射が生じ、おおよそ5〜15%程度の輝度の低下をもたらしていた。
そこで、本発明者は、プリズム表面の斜面における界面反射を防止するため、プリズム表面に反射防止フィルムを配置することを検討した。
しかし、蒸着法などによる従来の反射防止フィルムでは、界面反射光を半波長ずらして打ち消し合うことで反射光を見かけ上低減するだけであり、このフィルムをプリズム表面に配置しても、透過光量を増やすことにはならず、光取り出し効率の向上効果は得られなかった。
また、プリズム表面にサブ波長ピッチの微細突起構造を有する反射防止フィルムを配置することも検討したが、蒸着法などで形成する従来の反射防止フィルムと異なり、μmオーダーの凹凸構造であるプリズム表面に沿わせて、さらに微細なサブ波長ピッチの微細突起構造を有する反射防止フィルムを貼着することは現実的でなかった。
また、サブ波長ピッチの微細突起構造を有する反射防止フィルム単独では、充分な光取り出し効率の向上効果は得られなかった。特に、単粒子膜をエッチングマスクとして使用する方法では、実用的なレベルの反射防止膜を得ることが困難であった。
すなわち、特許文献3、4の方法による単粒子膜エッチングマスクの形成方法では、単粒子膜を構成する粒子が部分的にクラスター状に凝集して2層以上となったり、反対に、粒子が存在しない欠陥箇所が生じたりしやすく、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜を得ることは難しかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光取り出し効率に優れた光学シート又はその原版として好適な凹凸パターンシート、及び光学装置を提供することを課題とする。
本発明は以下の構成を採用した。
[1]有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子の両面側に各々配置された透明電極と背面電極と、前記透明電極の視認者側における光取り出し面に配置された光学シートとを備える光学装置であって、
前記光学シートは、一方の面が、下記条件を満たす凹凸構造Xと凹凸構造Yが重畳した凹凸構造Zとされ、透明材料により構成された凹凸パターンシートであることを特徴とする光学装置。
凹凸構造X:凹凸の最頻ピッチPが2〜200μmである1次元又は2次元の凹凸構造。
凹凸構造Y:四角錐、三角錐および円錐から選ばれる形状の凸部または凹部が2次元方向に繰り返され、充填方位の多様性をつくる格子欠陥を含むヘキサゴン配列で配置されている構造であり、凹凸の最頻ピッチP が3〜380nmであり、前記最頻ピッチP に対する最頻高さH の比R が0.5〜10である2次元凹凸構造。
[2]前記凹凸構造Xは、前記最頻ピッチPに対する最頻高さHの比Rが0.350〜0.714である[1]に記載の光学装置。
[3]前記凹凸構造Xは、頂上が直線の一次元構造、または頂上が点の2次元構造であって、頂角が90°±20°である[1]または[2]に記載の光学装置
本発明の光学シート、又はその原版は、一方の面が、光の波長よりも充分に大きいピッチの凹凸構造と、サブ波長ピッチの凹凸構造とを重畳させた複合的な凹凸構造とされた凹凸パターンシートであることにより、光取り出し効率に優れる。
また、本発明の光学装置は、光取り出し効率に優れ、発光効率が著しく改善されたものである。
本発明の1実施形態に係る凹凸パターンシートの部分拡大断面図である。 凹凸構造Yの最頻高さHの求め方の説明図である。 単粒子膜エッチングマスクを模式的に示す平面図である。 単粒子膜エッチングマスクの配置方法についての説明図である。 凹凸パターンシートの製造方法についての説明図である。
[凹凸パターンシート]
本発明の凹凸パターンシートは、一方の面が、下記条件を満たす凹凸構造Xと凹凸構造Yが重畳した凹凸構造Zとされている。
凹凸構造X:凹凸の最頻ピッチPが2〜200μmであり、前記最頻ピッチPに対する最頻高さHの比Rが0.350〜0.714である1次元又は2次元の凹凸構造。
凹凸構造Y:凹凸の最頻ピッチPが3〜380nmであり、前記最頻ピッチPに対する最頻高さHの比Rが0.5〜10であり、充填方位の多様性をつくる格子欠陥を含むヘキサゴン配列で配置されている2次元凹凸構造。
図1は、本発明の1実施形態に係る凹凸パターンシート1の一面側に設けられた凹凸構造Zの拡大断面図である。
図1に示すように、凹凸構造Zは、頂上αと底部βがくり返す凹凸構造Xに、頂上αと底部βがくり返す凹凸構造Yが重畳した凹凸構造である。図1において、Lは、凹凸パターンシート1の全体面(シート面)に対して平行な面である。
凹凸構造Xの最頻ピッチPは、図1のピッチP’(L方向における隣接する頂上α間の距離)の最頻値に相当する。また、凹凸構造Xの最頻高さHは、図1の高さH’(Lと垂直な方向における頂上αと底部βの距離)の最頻値に相当する。
同様に、凹凸構造Yの最頻ピッチPは、図1のピッチP’(L方向における隣接する頂上α間の距離)の最頻値に相当する。また、凹凸構造Yの最頻高さHは、図1の高さH’(Lと垂直な方向における頂上αと底部βの距離)の最頻値に相当する。なお、H’の具体的な求め方は後述する。
凹凸構造Xの最頻ピッチPは、具体的には下記方法により測定される値である。
まず、凹凸構造Xが存在する面(凹凸構造Zが存在する面)において、一辺が凹凸構造Xの最頻ピッチPの30〜40倍となる正方形の領域を無作為に抽出し、原子間力顕微鏡イメージを得る。例えば最頻ピッチPが約10μmの場合、300μm×300μm〜400μm×400μmの領域のイメージを得る。なお、イメージは、シート面を垂直に見る方向から取得する。
そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチPx1である。このような処理を無作為に選択された合計25カ所の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチPx1〜Px25を求める。こうして得られた25カ所の領域における最頻ピッチPx1〜Px25の平均値が最頻ピッチPである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、5mm〜1cm離れて選択されることがより好ましい。
最頻ピッチPは、2〜200μmであり、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。最頻ピッチPが2μm以上であることにより、粒子を並べる斜面の長さを充分に確保できる。
また、最頻ピッチPが200μm以下であることにより、凹凸構造Xが肉眼で視認できなくなると共に、凹凸パターンシート全体の厚さを薄くすることが可能となる。
凹凸構造Xの最頻高さHは、具体的には下記方法により測定される値である。
まず、シート面に対して垂直な面で切断して凹凸構造Zの断面を得る。この断面において、5つの頂上αを観察できるような正方形の領域(一辺が凹凸構造Xの最頻ピッチPの5〜10倍となる正方形の領域)を無作為に抽出し、原子間力顕微鏡イメージを得る。そして、このイメージから、図1のようにしてH’のデータを5つ読み取る。すなわち、底部βを通過するLから頂上αまでの距離をH’とする。同様にして、合計5枚の原子間力顕微鏡イメージから、各々5つ、全部で25のH’のデータを得る。
なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、5mm〜1cm離れて選択されることがより好ましい。
そして、2次元フーリエ変換像の赤道方向プロファイルを作成し、その一次ピークの逆数から、最頻高さHのデータを求める。
最頻高さHは、0.7〜142.8μmであることが好ましく、1.75〜71.4μmであることがより好ましく、3.5〜35.7μmであることがさらに好ましい。最頻高さHが0.7μm以上であることにより、粒子を並べる面の凹凸性を確保できる。また、最頻高さHが142.8μm以下であることにより、凹凸パターンシートの凹凸構造Z部分の厚さを薄くすることができる。
最頻ピッチPに対する最頻高さHの比R(以下アスペクト比Rという場合がある。)は、0.350〜0.714であり、0.420〜0.596であることが好ましく、0.5であることが特に好ましい。
アスペクト比Rが0.350〜0.714であることにより、頂角の角度を、全反射防止効果の点で好ましい90°前後に調整しやすい。また、アスペクト比Rが0.714以下であることにより、凹凸構造Yを均一に重畳させた凹凸構造Zとすることができる。
凹凸構造Xは、1次元構造でも2次元構造でもよい。1次元構造とは、洗濯板や波板のように一方向に凹凸が繰り返される構造であり、2次元構造とは、2次元方向に凹凸が繰り返される構造である。2次元構造の凹凸構造Xとしては、四角錐や三角錐や円錐等の凸部又は凹部の繰り返しが挙げられる。2次元構造の配列に特に限定はなく、碁盤目配列でも千鳥格子配列でもヘキサゴン配列(6方最密配列)、あるいはその他のレイアウトであってもよい。
1次元構造の凹凸の断面としては、三角形ないし多角形が選択できる。2次元構造の凸部又(凹部)の底面(開口面)の形状としては、正三角形、正四角形、正六角形などの正多角形やその変形(長方形や二等辺三角形など)が選択でき、また円形や楕円形でもよい。
1次元構造の凹凸の頂上は、線状若しくは帯状である。2次元構造の凹凸の頂上は、点若しくは曲面である。
1次元構造の頂上と底面の間は、頂上と底面を最短距離で結ぶ斜面で構成されるのを基本とするが、多段階の傾斜を有する多面であってもよいし、一部若しくは全部が曲面であってもよい。
2次元構造の頂上と底面の間は、頂上と底面を最短距離で結ぶ斜面又は曲面で構成されるのを基本とするが、シート面全体に対して多段階の傾斜を有する多面であってもよい。
1次元構造の頂上が直線の場合、2次元構造の頂上が点の場合、各々の頂角は90°±20°が好ましく、90°±10°がより好ましい。頂角が大きすぎても小さすぎても、全反射防止の効果が充分に得られない。一方、頂角が小さすぎると、凹凸構造Yを均一に重畳させるのが困難である。
凹凸構造Yの最頻ピッチは、具体的には下記方法により測定される値である。
まず、凹凸構造Yが存在する面(凹凸構造Zが存在する面)において、一辺が凹凸構造Yの最頻ピッチPの30〜40倍となるシート面に平行な正方形の領域を無作為に抽出し、原子間力顕微鏡イメージを得る。例えば最頻ピッチPが約10μmの場合、300μm×300μm〜400μm×400μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチPY1である。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチPY1〜PY25を求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチPY1〜PY25の平均値が最頻ピッチPである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、5mm〜1cm離れて選択されることがより好ましい。
最頻ピッチPは、3〜380nmであり、50〜300nmであることが好ましく、160〜260nmであることがより好ましい。最頻ピッチPが3nm以上であることにより、アスペクト比Rが0.5〜10である範囲で、最頻高さHの値を、充分な大きさとすることができる。これにより、反射防止効果を与える屈折率変化域領域の深さを充分に確保できる。また、最頻ピッチPが380nm以下であることにより、光学シートとした際に、光学的な散乱を抑制でき、良好な反射防止効果が得られる。
凹凸構造Yの最頻高さHは、具体的には下記方法により測定される値である。
まず、シート面に対して垂直な面で切断して凹凸構造Zの断面を得る。この断面において、凹凸構造Xの頂上α、及び凹凸構造Yの5つの頂上αを観察できるような正方形の領域(一辺が凹凸構造Yの最頻ピッチPの5〜10倍となる正方形の領域)を無作為に抽出し、原子間力顕微鏡イメージを得る。そして、このイメージから、図2のようにしてH’のデータを5つ読み取る。
すなわち、凹凸構造Yの凸部が凹凸構造Xの斜面と交差する部分の内、凹凸構造Xの頂上αに最も近い点をβYH、最も遠い点をβYLとする。図2におけるLは、凹凸構造Yの頂上αを通過するシート面と平行な面、LはβYHを通過するシート面と平行な面、Lは、βYLを通過するシート面と平行な面、Lは、L及びLから等距離にある中間位置の線である。線LからLまでの距離をH’とする。同様にして、合計5枚の原子間力顕微鏡イメージから、各々5つ、全部で25のH’のデータを得る。
なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、5mm〜1cm離れて選択されることがより好ましい。
そして、2次元フーリエ変換像の赤道方向プロファイルを作成し、その一次ピークの逆数から、最頻高さHのデータを求める。
最頻ピッチPに対する最頻高さHの比R(以下アスペクト比Rという場合がある。)は、0.5以上であり、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。アスペクト比Rが大きいほど光学シートとした際に、充分な屈折率傾斜効果が得られ、出射界面でのフレネル反射を効果的に抑制できる。
一方、アスペクト比Rが大きすぎると、製造が困難であると共に、耐久性に問題が生じる。凹凸パターンシートがそのまま反射防止体用途で使用される場合には、アスペクト比Rの上限は10であり、構造転写技術に用いる原版として使用される場合の上限値は5.0である。
凹凸構造Yは、2次元方向に凹凸が繰り返される2次元構造である。凹凸構造Yとしては、四角錐や三角錐や円錐等の凸部又は凹部の繰り返しが挙げられるが、円錐状の凸部であることが好ましい。
2次元構造の配列は、碁盤目配列でも千鳥格子配列でもヘキサゴン配列(6方最密配列)、あるいはその他のレイアウトであってもよいが、ヘキサゴン配列(6方最密配列)であることが好ましい。
円錐状の凸部をヘキサゴン配列した構造は、後述するように、単粒子膜エッチングマスクを用いたドライエッチングで形成することができ、規則性の高い凹凸構造とすることか可能である。
凸部又(凹部)の底面(開口面)の形状としては、正三角形、正四角形、正六角形などの正多角形やその変形(長方形や二等辺三角形など)が選択でき、また円形や楕円形でもよいが、均一な屈折率傾斜効果が得られやすいことら、円形の底面を有する凸部であることが好ましい。凹凸の頂上は、点若しくは曲面である。
頂上と底面の間は、頂上と底面を最短距離で結ぶ円錐面又は角錐面で構成されるのを基本とするが、シート面全体に対して多段階の傾斜を有する複数の円錐面又は角錐面で構成されていてもよい。
本発明の凹凸パターンシートは、表面に凹凸構造Zを有するため、これ自身が反射防止フィルムなどの高性能な光学シートとして好適に使用される他、詳しくは後述するが、構造転写技術に用いる原版(マスター)などとしても好適に使用される。この原版を転写してナノインプリントや射出成型用のモールドを得て、このモールドを使用することにより、高性能な光学シートを低コストで安定に大量生産することができる。
本発明の凹凸パターンシートを構成する材料は、上記用途などに応じて適宜選択できる。
具体的には、シリコン、ガリウム砒素などの半導体、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、真鍮などの金属や合金、石英ガラスを含む各種ガラス、マイカ、サファイア(Al)等の金属酸化物、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等の高分子材料などが挙げられる。また、主材料の表面が、コーティングされたものや、化学的に変質させられたものでもよい。
本発明の凹凸パターンシートが、光取り出し面に配置される光学シートの場合は透明材料で構成する。なお、透明とは、取り出すべき波長の光を実質的に透過できることをいう。透明材料としては、石英ガラスなどのガラス類、透明性を備えた高分子材料が挙げられる。
また、本発明の凹凸パターンシートが、構造転写技術に用いる原版として用いられる場合は、透明、不透明、半透明の何れの材料も使用可能であるが、エッチング対象物としてコントロールしやすく広く使用されているものが、本発明の製造方法を適用しやすいので好ましい。
凹凸パターンシートの厚みには特に制限はないが、そのままパソコンなどのディスプレイ、ショーウィンドゥ、展示額縁、各種レンズ、各種表示窓などの表面に貼着するフィルムとして使用する場合、10〜500μmの厚みとすることが好ましい。一方、そのままパソコンなどのディスプレイ、ショーウィンドゥ、展示額縁、各種レンズ、各種表示窓などの表面を構成する透明材に使用する場合には、適宜好適な厚みに設定できる。
また、構造転写技術の原版として使用する場合には、100〜5000μmの厚みとすることが好ましい。
本発明の凹凸パターンシートを、光取り出し面に配置される光学シートとして使用すると、図1に示すように、凹凸パターンシート1の全体(シート面)に対して平行な面Lに対する入射角θが臨界角より大きい入射光Iであっても、凹凸構造Xによって光取り出し面Sに対する入射角は臨界角以下となるため全反射を防止でき、出射光Iを取り出すことができる。
また、光取り出し面Sでは、凹凸構造Yにより屈折率傾斜効果が得られ、フレネル反射による出射光Iの減少を効果的に抑制できる。
したがって、本発明の凹凸パターンシートを、光取り出し面に配置される光学シートとして使用すると、高い光取り出し効率が得られる。
[凹凸パターンシートの製造方法]
本発明の凹凸パターンシートの製造方法は、一方の面が、前記凹凸構造Xとされている原シートの該凹凸構造Xとされている面に、単粒子膜エッチングマスクを配置し、該マスクを用いてドライエッチング法により、前記凹凸構造Yを形成し、凹凸構造Xと凹凸構造Yが重畳した凹凸構造Zを設けることを特徴とする。
(原シート)
凹凸構造Xを有する原シートは、市販されているものから入手可能であるが、平坦なシートを、予めドライエッチング、ウェットエッチング、バイト切削加工など、プリズム等を製造するための公知の方法で、加工して凹凸構造Xを設けることにより得られる。
凹凸構造Xの最頻ピッチP及び最頻高さHの測定方法は、上述の凹凸構造Z中における凹凸構造Xの最頻ピッチP及び最頻高さHの測定方法と同様である。
原シートの材料としては、本発明の凹凸パターンシートの材料と同じものが使用できるが、エッチング対象物としてコントロールしやすく広く使用されているものが好ましい。エッチング対象物としてコントロールしやすい材料としては、石英ガラス、シリコンなどが挙げられる。
[単粒子膜エッチングマスク]
本発明における単粒子膜エッチングマスクは、図3に示すように、多数の粒子Mが2次元に最密充填した単粒子膜からなるエッチングマスクであることが好ましい。欠陥箇所のない単粒子膜エッチングマスクを用いれば、均一な凹凸構造Yを原シート上に形成することができ、ひいては、入射光に対して均一な屈折率傾斜効果を与える反射防止構造を備えた光学シートを得ることができる。
単粒子膜エッチングマスクの最密充填の度合いは、下記式(1)で定義される粒子の配列のずれD(%)で評価することができる。ずれDは、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、1.0〜3.0%であることがさらに好ましい。
D[%]=|B−A|×100/A・・・(1)
ここで式(1)中、Aは単粒子膜を構成している粒子Mの平均粒径、Bは単粒子膜における粒子間の最頻ピッチである。また、|B−A|はAとBとの差の絶対値を示す。
ここで粒子の平均粒径Aとは、単粒子膜を構成している粒子の平均一次粒径のことであって、粒子動的光散乱法により求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから常法により求めることができる。
一方、粒子間のピッチとは、シート面方向における隣り合う2つの粒子の頂点と頂点の距離であり、最頻ピッチBとはこれらを平均したものである。なお、粒子が球形であれば、隣り合う粒子の頂点と頂点との距離は、隣り合う粒子の中心と中心の距離と等しい。
単粒子膜エッチングマスクにおける粒子間の最頻ピッチBは、具体的には次のようにして求められる。
まず、単粒子膜エッチングマスクにおける無作為に選択された領域で、一辺が粒子間の最頻ピッチBの30〜40倍のシート面と平行な正方形の領域について、原子間力顕微鏡イメージを得る。例えば粒径300nmの粒子を用いた単粒子膜の場合、9μm×9μm〜12μm×12μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。ついで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチBである。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチB〜B25を求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチB〜B25の平均値が式(1)における最頻ピッチBである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
また、この際、FFT像のプロファイルにおける1次ピークの面積から、各イメージについて、その中の粒子間のピッチのばらつきを評価することもできる。
粒子の配列のずれDが10%以下である単粒子膜エッチングマスクは、各粒子が2次元に最密充填し、粒子の間隔が制御されていて、その配列の精度が高い。よって、このような単粒子膜エッチングマスクを使用して、原シート上に高精度な凹凸構造Yを形成することができる。
このような2次元最密充填は、後にも述べる自己組織化を原理とするため、多少の格子欠陥を含む。しかしながら、2次元最密充填におけるこのような格子欠陥は、充填方位の多様性をつくるため、特に反射防止用途の場合には、回折格子のような反射特性を減少させて一様な反射防止効果を与えるのに役立つ。
単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子Mの平均粒径Aは、後述するように、凹凸構造Yの最頻ピッチPにほぼ近似した値となるので、3〜380nmであることが好ましく、190〜380nmであることがより好ましく、160〜260nmであることがさらに好ましい。
また、粒子Mの粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。このように粒径の変動係数、すなわち、粒径のばらつきが小さい粒子を使用すると、後述する単粒子膜エッチングマスクの製造工程おいて、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくくなり、配列のずれDが10%以下である単粒子膜エッチングマスクが得られやすい。
粒子の材質としては、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Siなどの金属、SiO、Al、TiO、MgO、CaOなどの金属酸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子などの他、半導体材料、無機高分子などのうち1種以上を採用できる。
[単粒子膜エッチングマスクの配置方法]
このような単粒子膜エッチングマスクは、エッチング対象物である原シートの少なくとも片面上に配置されるものであって、いわゆるLB法(ラングミュア−ブロジェット法)の考え方を利用した方法により原シート上に配置できる。
具体的には、溶剤中に粒子が分散した分散液を水槽内の液面に滴下する滴下工程と、溶剤を揮発させることにより粒子からなる単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、単粒子膜を原シート上に移し取る移行工程とを有する方法により原シートの凹凸構造Xとされた面に配置できる。
この方法は、単層化の精度、操作の簡便性、大面積化への対応、再現性などを兼ね備え、例えばNature, Vol.361, 7 January, 26(1993)などに記載されている液体薄膜法や特許文献3などに記載されているいわゆる粒子吸着法に比べて非常に優れ、工業生産レベルにも対応できる。また、本発明に用いる原シートのように、凹凸を有する表面にも対応できる。
単粒子膜エッチングマスクを製造する好ましい方法について、一例を挙げて以下に具体的に説明する。
(滴下工程および単粒子膜形成工程)
まず、水よりも比重が小さい有機溶剤中に、粒子Mを加えて分散液を調製する。有機溶剤は疎水性のものが好ましい。また、高い揮発性を有するものが好ましい。具体的には、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、又はこれらの混合物が挙げられる。粒子Mは、表面が疎水化されたものが好ましい。
一方、水槽(トラフ)を用意し、これに、その液面上で粒子を展開させるための液体(以下、下層水という場合もある。)として水を入れる。
そして、分散液を下層水の液面に滴下する(滴下工程)。すると、分散媒である溶剤が揮発するとともに、粒子が下層水の液面上に単層で展開し、2次元的に最密充填した単粒子膜を形成することができる(単粒子膜形成工程)。
このように、粒子として疎水性のものを選択した場合には、溶剤としても疎水性のものを選択する必要がある。一方、その場合、下層水は親水性である必要があり、通常、上述したように水を使用する。このように組み合わせることによって、後述するように、粒子の自己組織化が進行し、2次元的に最密充填した単粒子膜が形成される。ただし、粒子および溶剤として親水性のものを選択してもよく、その場合には、下層水として、疎水性の液体を選択する。
下層水に滴下する分散液の粒子濃度は1〜10質量%とすることが好ましい。また、滴下速度を0.001〜0.01ml/秒とすることが好ましい。分散液中の粒子の濃度や滴下量がこのような範囲であると、粒子が部分的にクラスター状に凝集して2層以上となる、粒子が存在しない欠陥箇所が生じる、粒子間のピッチが広がるなどの傾向が抑制され、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすい。
表面が疎水性の粒子としては、先に例示した粒子のうち、ポリスチレンなどの有機高分子からなり表面が元々疎水性を示すものを使用してもよいが、表面が親水性の粒子を疎水化剤で疎水性にして使用してもよい。疎水化剤としては、例えば界面活性剤、金属アルコキシシランなどが使用できる。
界面活性剤を疎水化剤として使用する方法は、幅広い材料の疎水化に有効であり、粒子が金属、金属酸化物などからなる場合に好適である。
界面活性剤としては、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好適に使用できる。また、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども使用できる。
このような界面活性剤を用いた疎水化処理は、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの1種以上からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を続ければよい。このようにあらかじめ粒子を分散させておき、それから界面活性剤を加えると、表面をより均一に疎水化することができる。このような疎水化処理後の分散液は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。
疎水化対象の粒子が水分散体の状態である場合には、この水分散体に界面活性剤を加えて水相で粒子表面の疎水化処理を行った後、有機溶剤を加えて疎水化処理済みの粒子を油相抽出する方法も有効である。こうして得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。なお、この分散液の粒子分散性を高めるためには、有機溶剤の種類と界面活性剤の種類とを適切に選択し、組み合わせることが好ましい。粒子分散性の高い分散液を使用することによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすくなる。例えば、有機溶剤としてクロロホルムを選択する場合には、界面活性剤として臭素化デシルトリメチルアンモニウムを使用することが好ましい。その他にも、エタノールとドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせ、メタノールと4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの組み合わせ、メチルエチルケトンとオクダデカン酸との組み合わせなどを好ましく例示できる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1/3〜1/15倍の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
金属アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子や、AlO、SiO、TiOなどの酸化物粒子を疎水化する際に有効であるが、これら粒子に限らず、基本的には表面に水酸基を有する粒子に対して適用することができる。
金属アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤として金属アルコキシシランを用いる場合には、金属アルコキシシラン中のアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。よって、金属アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で実施することが好ましい。このように水中で疎水化を行う場合には、例えば界面活性剤などの分散剤を併用して、疎水化前の粒子の分散状態を安定化するのが好ましいが、分散剤の種類によっては金属アルコキシシランの疎水化効果が低減することもあるため、分散剤と金属アルコキシシランとの組み合わせは適切に選択する。
金属アルコキシシランにより疎水化する具体的方法としては、まず、水中に粒子を分散させておき、これと金属アルコキシシラン含有水溶液(金属アルコキシシランの加水分解物を含む水溶液)とを混合し、室温から40℃の範囲で適宜攪拌しながら所定時間、好ましくは6〜12時間反応させる。このような条件で反応させることによって、反応が適度に進行し、十分に疎水化された粒子の分散液を得ることができる。反応が過度に進行すると、シラノール基同士が反応して粒子同士が結合してしまい、分散液の粒子分散性が低下し、得られる単粒子膜は、粒子が部分的にクラスター状に凝集した2層以上のものになりやすい。一方、反応が不十分であると、粒子表面の疎水化も不十分となり、得られる単粒子膜は粒子間のピッチが広がったものになりやすい。
また、アミン系以外の金属アルコキシシランは、酸性またはアルカリ性の条件下で加水分解するため、反応時には分散液のpHを酸性またはアルカリ性に調整する必要がある。pHの調整法には制限はないが、0.1〜2.0質量%濃度の酢酸水溶液を添加する方法によれば、加水分解促進の他に、シラノール基安定化の効果も得られるため好ましい。
疎水化対象の粒子と金属アルコキシシランの比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、金属アルコキシシランの質量が1/10〜1/100倍の範囲が好ましい。
所定時間反応後、この分散液に対して、前述の揮発性有機溶剤のうちの1種以上を加え、水中で疎水化された粒子を油相抽出する。この際、添加する有機溶剤の体積は、有機溶剤添加前の分散液に対して0.3〜3倍の範囲が好ましい。こうして得られた分散液(有機溶剤中に粒子が分散した分散液)は、そのまま、滴下工程において下層水の液面に滴下するための分散液として使用できる。なお、こうした疎水化処理においては、処理中の分散液の粒子分散性を高めるために、撹拌、超音波照射など実施することが好ましい。分散液の粒子分散性を高めることによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制でき、各粒子が高精度で2次元に最密充填した単粒子膜がより得られやすくなる。
また、形成する単粒子膜の精度をより高めるためには、液面に滴下する前の分散液をメンブランフィルターなどで精密ろ過して、分散液中に存在する凝集粒子(複数の1次粒子からなる2次粒子)を除去することが好ましい。このようにあらかじめ精密ろ過を行っておくと部分的に2層以上となった箇所や、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくく、精度の高い単粒子膜が得られやすい。仮に、形成された単粒子膜に、数〜数十μm程度の大きさの欠陥箇所が存在したとすると、詳しくは後述する移行工程において、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面方向に圧縮する可動バリアとを備えたLBトラフ装置を使用したとしても、このような欠陥箇所は表面圧の差として検知されず、高精度な単粒子膜エッチングマスクを得ることは難しくなる。
さらに、このような単粒子膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましい。下層水から水面に向けて超音波を照射しながら分散液の溶剤を揮発させると、粒子の最密充填が促進され、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜が得られる。この際、超音波の出力は1〜1200Wが好ましく、50〜600Wがより好ましい。また、超音波の周波数には特に制限はないが、例えば28kHz〜5MHzが好ましく、より好ましくは700kHz〜2MHzである。一般的に振動数が高すぎると、水分子のエネルギー吸収が始まり、水面から水蒸気または水滴が立ち上る現象が起きるため、本発明のLB法にとって好ましくない。また、一般的に振動数が低すぎると、下層水中のキャビテーション半径が大きくなり、水中に泡が発生して水面に向かって浮上してくる。このような泡が単粒子膜の下に集積すると、水面の平坦性が失われるため本発明の実施に不都合となる。また、超音波照射によって水面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が高すぎたり、超音波振動子と発信機のチューニング条件によって水面の波高が高くなりすぎたりすると、単粒子膜が水面波で破壊されるため気をつける必要がある。
以上のことに留意して超音波の周波数を適切に設定すると、形成されつつある単粒子膜を破壊することなく、効果的に粒子の最密充填を促進することができる。効果的な超音波照射を行うためには、粒子の粒径から計算される固有振動数を目安にするのが良い。しかし、粒径が例えば100nm以下など小さな粒子になると固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果のとおりの超音波振動を与えるのは困難になる。このような場合は、粒子2量体、3量体、・・・20量体程度までの質量に対応する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることが出来る。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の充填率向上効果は発現する。超音波の照射時間は、粒子の再配列が完了するのに十分であればよく、粒径、超音波の周波数、水温などによって所要時間が変化する。しかし通常の作成条件では10秒間〜60分間で行うのが好ましく、より好ましくは3分間〜30分間である。
超音波照射によって得られる利点は粒子の最密充填化(ランダム配列を6方最密化する)の他に、ナノ粒子分散液調製時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または結晶転移などもある程度修復する効果がある。
以上説明した単粒子膜の形成は、粒子の自己組織化によるものである。その原理は、粒子が集結すると、その粒子間に存在する分散媒に起因して表面張力が作用し、その結果、粒子同士はランダムに存在するのではなく、2次元的最密充填構造を自動的に形成するというものである。このような表面張力による最密充填は、別の表現をすると横方向の毛細管力による配列化ともいえる。
特に、例えばコロイダルシリカのように、球形であって粒径の均一性も高い粒子が、水面上に浮いた状態で3つ集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用し、図3に示すように、3つの粒子Mは図中Tで示す正三角形を基本とする配置で安定化する。仮に、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、すなわち、粒子Mが液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、単粒子膜は形成されない。よって、粒子と下層水は、一方が疎水性である場合には他方を親水性にして、粒子群が液面下に潜ってしまわないようにすることが重要である。
下層水としては、以上の説明のように水を使用することが好ましく、水を使用すると、比較的大きな表面自由エネルギーが作用して、一旦生成した粒子の最密充填配置が液面上に安定的に持続しやすくなる。
(移行工程)
単粒子膜形成工程により液面上に形成された単粒子膜を、ついで、単層状態のままエッチング対象物である原シート上に移し取る(移行工程)。
粒子のサイズと比較すると、凹凸構造Xは非常に大きな凹凸構造であるが、単粒子膜は見事に形状に追従しながら原シートの凹凸構造Xの表面を単層で被覆することが出来る。すなわち、表面が平面でなくても2次元的な最密充填状態を維持しつつ凹凸形状に追従し、その面形状を変形させ、完全に被覆することが可能である。
これは、凹凸形状に追従する際、単粒子膜内では粒子結晶面での滑り現象が起き、その形状を2次元から3次元へ自在に変形させることによるものと考えられる。
単粒子膜を原シート上に移し取る具体的な方法には特に制限はなく、例えば、疎水性の原シートを単粒子膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて単粒子膜に接触させ、ともに疎水性である単粒子膜と原シートとの親和力により、単粒子膜を原シートに移行させ、移し取る方法;単粒子膜を形成する前にあらかじめ水槽の下層水内に原シートを略水平方向に配置しておき、単粒子膜を液面上に形成した後に液面を徐々に降下させることにより、原シート上に単粒子膜を移し取る方法などがある。
上記各方法によっても、特別な装置を使用せずに単粒子膜を原シート上に移し取ることができるが、より大面積の単粒子膜であっても、その2次的な最密充填状態を維持したまま原シート上に移し取りやすい点で、以降工程においては、いわゆるLBトラフ法を採用することが好ましい(Journal of Materials and Chemistry, Vol.11, 3333 (2001)、Journal of Materials and Chemistry, Vol.12, 3268 (2002)など参照。)
図4は、LBトラフ法の概略を模式的に示すものである。なお、図4では、説明の便宜上粒子Mを極端に拡大している。
この方法では、水槽内の下層水12に原シート11をあらかじめ略鉛直方向に浸漬しておき、その状態で上述の滴下工程と単粒子膜形成工程とを行い、単粒子膜Fを形成する(図(a))。そして、単粒子膜形成工程後に、原シート11を略鉛直方向を保ったまま上方に引き上げることによって、単粒子膜Fを原シート11上に移し取ることができる(図(b))。
なお、この図では、原シート11の両面に単粒子膜Fを移し取る状態を示しているが、反射防止製の光学シートのように片面のみに凹凸構造Zが形成されたものを製造する場合には、単粒子膜Fは原シートの凹凸構造Xとされた片面のみに移し取ればよい。しかし、両面に移し取っても何ら差し支えない。
ここで単粒子膜Fは、単粒子膜形成工程により液面上ですでに単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(下層水の温度)や原シート11の引き上げ速度などが多少変動しても、移行工程において単粒子膜Fが崩壊して多層化するなどのおそれはない。なお、下層水の温度は、通常、季節や天気により変動する環境温度に依存し、ほぼ10〜30℃程度である。
また、この際、水槽として、単粒子膜Fの表面圧を計測する図示略のウィルヘルミープレート等を原理とする表面圧力センサーと、単粒子膜Fを液面に沿う方向に圧縮する図示略の可動バリアとを具備するLBトラフ装置を使用すると、より大面積の単粒子膜Fをより安定に原シート11上に移し取ることができる。このような装置によれば、単粒子膜Fの表面圧を計測しながら、単粒子膜Fを好ましい拡散圧(密度)に圧縮でき、また、原シート11の方に向けて一定の速度で移動させることができる。そのため、単粒子膜Fの液面から原シート11上への移行が円滑に進行し、小面積の単粒子膜Fしか原シート上に移行できないなどのトラブルが生じにくい。好ましい拡散圧は、5〜80mNm−1であり、より好ましくは10〜40mNm−1である。このような拡散圧であると、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜Fが得られやすい。また、原シート11を引き上げる速度は、0.5〜20mm/分が好ましい。下層水の温度は、先述したように、通常10〜30℃である。なお、LBトラフ装置は、市販品として入手することができる。
(固定工程)
移行工程により、原シート上に単粒子膜エッチングマスクを配置することができるが、移行工程の後には、配置された単粒子膜エッチングマスクを原シート上に固定するための固定工程を行ってもよい。単粒子膜を原シート上に固定することによって、後述のエッチング工程中に粒子が原シート上を移動してしまう可能性が抑えられ、より安定かつ高精度にエッチングすることができる。特に、各粒子の直径が徐々に小さくなるエッチング工程の最終段階になると、このような可能性が大きくなる。
固定工程の方法としては、バインダーを使用する方法や焼結法がある。
バインダーを使用する方法では、単粒子膜エッチングマスクが形成された原シートの該単粒子膜側にバインダー溶液を供給して単粒子膜エッチングマスクと原シートとの間にこれを浸透させる。
バインダーの使用量は、単粒子膜エッチングマスクの質量の0.001〜0.02倍が好ましい。このような範囲であれば、バインダーが多すぎて粒子間にバインダーが詰まってしまい、単粒子膜エッチングマスクの精度に悪影響を与えるという問題を生じることなく、十分に粒子を固定することができる。バインダー溶液を多く供給してしまった場合には、バインダー溶液が浸透した後に、スピンコーターを使用したり、原シートを傾けたりして、バインダー溶液の余剰分を除去すればよい。
バインダーとしては、先に疎水化剤として例示した金属アルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどを使用でき、バインダー溶液が浸透した後には、バインダーの種類に応じて、適宜加熱処理を行えばよい。金属アルコキシシランをバインダーとして使用する場合には、40〜80℃で3〜60分間の条件で加熱処理することが好ましい。
焼結法を採用する場合には、単粒子膜エッチングマスクが形成された原シートを加熱して、単粒子膜エッチングマスクを構成している各粒子を原シートに融着させればよい。加熱温度は粒子の材質と原シートの材質に応じて決定すればよいが、粒径が1μmφ以下の粒子はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。加熱温度が高すぎると、粒子の融着面積が大きくなり、その結果、単粒子膜エッチングマスクとしての形状が変化するなど、精度に影響を与える可能性がある。
また、加熱を空気中で行うと、原シートや各粒子が酸化する可能性があるため、焼結法を採用する場合には、このような酸化の可能性を考慮して、条件を設定することが必要となる。例えば、原シートとしてシリコン原シートを用い、これを1100℃で焼結すると、この原シートの表面には約200nmの厚さで熱酸化層が形成される。Nガスやアルゴンガス中で加熱すると、酸化を避けやすい。
(ドライエッチング工程)
このように単粒子膜エッチングマスクが片面に設けられた原シートを気相エッチングして表面加工することにより、原シートの凹凸構造Xを有する片面に凹凸構造Yを重畳的に形成できる。
具体的には、気相エッチングを開始すると、まず図5(a)に示すように、単粒子膜Fを構成している各粒子Mの隙間をエッチングガスが通り抜けて原シート11の表面に到達し、その部分に溝が形成され、各粒子Mに対応する位置にそれぞれ円柱11aが現れる。
引き続き気相エッチングを続けると、図5(b)に示すように、粒子Mも徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、原シート11の溝もさらに深くなり、各円柱11aは次第に円錐台11bとなっていく。
そして、図5(c)に示すように、最終的には各粒子Mはエッチングにより消失し、それとともに原シート11の片面に多数の円錐状の微細突起11cが形成され、頂上αと底部βがくり返す凹凸構造Yが形成される。
気相エッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、COなどが挙げられるが、本発明の趣旨を実行するためであればこれらに限定されることは無い。単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子や原シートの材質などに応じて、これらのうちの1種以上を使用できる。
気相エッチングは、原シートの水平方向よりも垂直方向のエッチング速度が大きくなる異方性エッチングで行う。使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数等の仕様には特に制限ない。
異方性エッチングをするためには、単粒子膜エッチングマスクと原シートのエッチング速度が異なる必要があり、エッチング選択比(原シートのエッチング速度/単粒子膜エッチングのエッチング速度)が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上となるようにエッチングの各条件(単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子の材質、原シートの材質、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間など)を設定することが好適である。
例えば、単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子として金粒子を選択し、原シートとしてガラス製の原シートを選択してこれらを組み合わせた場合、エッチングガスにCF、CHFなどのガラスと反応性のあるものを用いると、金粒子のエッチング速度が相対的に遅くなり、ガラス製の原シートのほうが選択的にエッチングされる。
単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子としてコロイダルシリカ粒子を選択し、原シートとしてPET製の原シートを選択してこれらを組み合わせた場合、エッチングガスにArなどの不活性ガスを用いることで、比較的柔らかいPET製の原シートを選択的に物理エッチングすることができる。
また、電場のバイアスを数十から数百Wに設定すると、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子は、加速されて高速でほぼ垂直に原シートに入射する。よって、原シートに対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
原シートの材質とエッチングガスの種類の組み合わせによるが、気相エッチングでは、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングも並行して起こる。ラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングを行う。ラジカルは電荷を持たないためバイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることはできず、エッチングガスのチャンバー内濃度(流量)で操作することができる。荷電粒子による異方性エッチングを行うためにはある程度のガス圧を維持しなければならないので、反応性ガスを用いる限りラジカルの影響はゼロに出来ない。しかし、基材を冷却することでラジカルの反応速度を遅くする手法は広く用いられており、その機構を備えた装置も多いので、利用することが好ましい。
また、得られた凹凸パターンシートを反射防止性の光学シートとして使用したり、光学シートを構造転写技術により製造するためのモールドの原版として使用したりする場合には、形成される微細突起11cの形状は円錐状であることが好ましい。
ところが、実際のエッチング工程においては、図5に示したように突起の形状が円柱状から円錐状に変化していく過程で、円錐の側面(側壁)がエッチングされてしまい、その結果、微細突起11cは、側壁の傾斜が大きく、かつ、隣り合う円錐間の溝の縦断面形状がV字ではなくU字となってしまう傾向がある。このような形状になると、十分な屈折率傾斜効果を発揮できず、入射光のフレネル反射の抑制が不十分となる可能性がある。
よって、本エッチング工程においては、いわゆるボッシュ法を採用するなどして、エッチングによって形成した側壁を保護しながらアスペクト比を向上させ、突起の形状を理想的な円錐状に近づけることが好ましい。
すなわち、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、Cをはじめとするフロン系のエッチングガスは、プラズマ状態で分解された後、分解物同士が結合することで高分子化し、テフロン(登録商標)のような物質からなる堆積膜をエッチング対象物の表面に形成することが知られている。このような堆積膜はエッチング耐性があるため、エッチング保護膜として作用する。また、原シートがシリコン製の原シートであって、かつ、使用するエッチングガスがシリコンに対してエッチング選択比が高いものである場合には、Oをエッチングガスの一部として導入することで、エッチングによって形成された側壁をSiOの保護膜に変性することができる。また、エッチングガスとしてCHとHの混合ガス用いることで、炭化水素系のエッチング保護膜が得られる条件も設定できる。
よって、このようにエッチングガスの種類を適宜選択するなどして、エッチング保護膜を形成しながらエッチング工程を行うことが、より理想的な形状の円錐状微細突起を形成できる点で好ましい。
こうして得られた凹凸パターンシートにおける凹凸構造Yの最頻ピッチPは、使用した単粒子膜エッチングマスクの最頻ピッチBとほぼ同じ値となる。最頻ピッチPは、円錐状の微細突起11cの円形底面の直径dの最頻値に相当する。
さらに、この凹凸パターンシートについて、下記式(2)で定義される配列のずれD’(%)を求めると、その値は、単粒子膜エッチングマスクの粒子の配列のずれDに近似した値となり、容易に10%以下とすることができる。
D’[%]=|P−A|×100/A・・・(2)
ただし、前記式(1)と同様に、式(2)中のAは使用した単粒子膜エッチングマスクを構成する粒子の平均粒径である。
[構造転写用モールドとその製造方法]
本発明の凹凸パターンシートをナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法、電鋳法等の構造転写技術に用いる原版として構造転写用モールドを作成する場合には、例えば、凹凸パターンシートに電鋳法で金属層を形成した後、この金属層を剥離することにより、凹凸パターンシートの凹凸構造Zを金属層に転写したネガ構造のモールド(金型)を作成する(転写工程)。
このモールドを用いて、ナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法、電鋳法などによって構造転写を行えば、効率的に本発明の凹凸パターンシートのコピーを量産することが可能となる。
モールド作成工程において、凹凸パターンシートに金属層を形成する方法としては、めっき法が好ましく、具体的には、まず、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・りん合金などから選ばれる1種以上の金属により無電解めっきまたは蒸着を行い、ついで、これらの金属から選ばれる1種以上の金属により電解めっきを行って、金属層の厚さを増加させる方法が好ましい。
無電解めっきまたは蒸着により形成する金属層の厚みは、10nm以上が好ましく、より好ましくは100nm以上である。ただし、導電層には、一般的には50nmの厚さが必要とされる。膜厚をこのようにすると、次に行われる電解めっきの工程で、被めっき面内電流密度の偏りを抑制でき、均一な厚さのモールドが得られやすくなる。
次に行う電解めっきでは、金属層の厚さを最終的に10〜5000μmまで厚くし、その後、金属層を原版から剥がし取ることが好ましい。電解めっきにおける電流密度には特に制限はないが、ブリッジの発生を抑制して均一な金属層を形成でき、かつ、このような金属層を比較的短時間で形成できることから、0.03〜10A/mが好ましい。
また、モールドとしての耐摩耗性、剥離・貼合時のリワーク性などの観点からは、金属層の材質はニッケルが好ましく、最初に行う無電解めっきまたは蒸着、その後に行う電解めっきの両方について、ニッケルを採用することが好ましい。
こうして製造されたナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法、電鋳法などに用いるモールドを具備する構造転写装置によれば、高精度に凹凸パターンシートの形状が再現され、光取り出し効率の高い光学シートが得られる。
これらナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法、電鋳法の4法において、ナノインプリント法が微細構造の転写に最も適している。熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法は、生産性が高いことが特徴である。電鋳法は、モールドを量産するのに好適である。以上の各方法の特徴を組み合わせて、本発明の凹凸パターンシートの複製を大量生産することができる。
[光学装置]
本発明の光学装置は、透明材料で構成された本発明の光学シートを、光取り出し面に備える。光学装置としては、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種画像表示装置、有機EL照明、LED照明等の各種照明装置などが挙げられる。
本発明の凹凸パターンシートは、これらの装置の光取り出し面に施工される必要がある。施工は最表面が一般的だが、例えば液晶表示装置のように内部に複数の光学部材があり、かつそれぞれの部材の表面における光取り出し効率を向上させたい場合には、内部の層に本発明の光取り出し構造を施工しても良い。施工方法は、光取り出し面の基板全体を直接本発明の凹凸パターンシートで構成する方法、または本発明の凹凸パターンシートを基板に貼合する方法が可能である。なお、後者の貼合方法を用いる場合は、貼り付ける凹凸パターンシートと貼り付けられる基板の屈折率をできるだけ近くするように材料選択することが好ましい。屈折率の差が大きいと、そこに光学的な界面が発生するため、光の取り出し効率が低下するためである。
有機ELディスプレイ、又は有機EL照明の場合、有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子の両面側に各々配置された透明電極と背面電極と、前記透明電極の視認者側に配置された本発明の透明な凹凸パターンシートとを備える。
また、装置の構成や目的に応じて、透明電極と本発明の凹凸パターンシートとの間に、円偏光板を配置することができる。
本発明の光学装置は、本発明の凹凸パターンシートを、光取り出し面に備えることにより、光取り出し効率が高く、発光効率に優れている。
[実施例1]
平均粒径が298.2nmで、粒径の変動係数が6.7%である球形コロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を用意した。なお、平均粒径および粒径の変動係数は、Malvern Instruments Ltd 社製 Zetasizer Nano-ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから求めた。
ついで、この分散液を孔径1.2μmφのメンブランフィルターでろ過し、メンブランフィルターを通過した分散液に濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物水溶液を加え、約40℃で5時間反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.02倍となるように分散液と加水分解水溶液とを混合した。
ついで、反応終了後の分散液に、この分散液の体積の3倍の体積のメチルエチルケトンを加えて十分に攪拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた疎水化コロイダルシリカ分散液を、単粒子膜の表面圧を計測する表面圧力センサーと、単粒子膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中の液面(下層水として水を使用、水温25℃)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽の下層水には、あらかじめ原シートとしてオリンパス(株)製逆ピラミッドアレイ(結晶軸(100)シリコンウェハ上の構造、ピラミッドのピッチ20μm、ピラミッドの高さ14μm、ピラミッドの配列は碁盤目状、基板厚さ0.525mm、チップサイズ15×15mm)を略鉛直方向に浸漬しておいた。
その後、超音波(出力100W、周波数1500kHz)を下層水中から水面に向けて10分間照射して粒子が2次元的に最密充填するのを促しつつ、メチルエチルケトンを揮発させて単粒子膜を形成させた。
ついで、この単粒子膜を可動バリアにより拡散圧が25mNm−1になるまで圧縮し、ピラミッドアレイを略鉛直方向を保ったまま3mm/分の速度で引き上げ、ピラミッドアレイ上に単粒子膜を移し取った。この際、単粒子膜マスクはピラミッドの斜面の形状に追従して柔軟に変形し、隙間無くピラミッドアレイ表面をコーティングすることができた。
ついで、単粒子膜が形成されたピラミッドアレイ上にバインダーとして1質量%モノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。その後、これを100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きのピラミッドアレイを得た。
一方、この単粒子膜エッチングマスクについて、10μm×10μmの領域を無作為に25カ所選択して、各々原子間力顕微鏡イメージを得て、各領域における最頻ピッチB〜B25を求め、これらの平均値を算出し、式(1)における最頻ピッチBとした。なお、この際、隣り合う各領域同士が1mm〜3mm程度離れるように各領域を設定した。
算出された最頻ピッチBは、309.1nmであった。
そこで、粒子の平均粒径A=298.2nmと、最頻ピッチB=309.1nmとをD式(1)に代入したところ、この例の単粒子膜エッチングマスクにおける粒子の配列のずれDは3.66%であった。
ついで、単粒子膜エッチングマスク付きピラミッドアレイに対して、SF:CH=25:75〜75:25の混合ガスにより気相エッチングを行った。エッチング条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W、ガス流量30〜50sccmとした。
得られた凹凸パターンシートは、図1に模式的に示すような縦断面形状を備え、原子間力顕微鏡イメージから実測した凹凸構造Yの最頻高さHは948.2nmで、単粒子膜エッチングマスクについて実施した方法と同じ方法で求めた最頻ピッチPは309.1nmで、これらから算出されるアスペクト比は3.07であった。
そして、この凹凸パターンシートに対して、式(2)による配列のずれD’を求めたところ、3.66%であった。
得られた凹凸パターンシートをナノインプリント用モールドの原版とし、離型剤にて離型処理を行ったうえ、凹凸構造Zが形成された表面に対してNi無電解めっきを行い、厚さ50nmのNi層を形成した。次いで電極治具を取り付けて8A/mの電流密度において電解Niめっき(スルファミン酸ニッケル浴使用)を行い、最終的なNi層の厚さが約250μmになるように調節した。めっき後、凹凸パターンシートからNi層をゆるやかに剥離し、Niからなるナノインプリント用モールドを得た。
作成したナノインプリント用モールドを構造面が露出するようにして30mm×30mmのステンレス板(両面鏡面研磨)中央に貼り付け、ピックアップ用フィルム(テトロンフィルム、厚さ50μm、帝人製)に塗布した紫外線硬化樹脂(PAK-01CL、東洋合成製)に対して2.4MPaの圧力で押圧しつつ2.0Jの露光を行った。しかるのち緩やかに樹脂をモールドから、次いでピックアップ用フィルムから剥離し、厚さ約1.0mmのナノインプリント品を取り出した。このナノインプリント品の構造面と反対側の面は、平坦である。
作成したナノインプリント品の構造面と反対側からキセノン光源による白色光を入射して、構造面から出てくる光を計測した。白色光は拡散光であり、入射光は様々な角度でナノインプリント品の中を透過し、構造面を通過して外部に出てくる。計測には株式会社ジェネシア製、散乱・光源測定器GENESIA/GONIOにて行い、表1に示すようなADU(Analog to Digital Unit)値を得た。なお、ADUとはCCDのピクセルに溜まった電子の量をデジタル量に変換する際に、電子何個分を1カウントにとるかという係数で、ADU = Ns/Ncで定義される。ただし、CCDで検出された光電子数をNs、AD変換された後のカウント数をNcとする。得られたADU値は、構造面から出てくる光の光量に比例するので、ADU値が高いほど、光取り出し効率が高いことを意味する。
[実施例2]
水面上の単粒子膜作成工程における超音波照射を行わないことを除いて実施例1と全く同じ操作を行い、コロイダルシリカからなる単粒子膜エッチングマスク付きのピラミッドアレイ基板を得た。実施例1と同様にして最頻ピッチBを求めたところ、331.7nmであった。粒子の平均粒径A=298.2nmと、最頻ピッチB=331.7nmを式(1)に代入したところ、この例の単粒子膜エッチングマスクにおける粒子の配列のずれDは11.23%であった。
次いで、実施例1と全く同様のドライエッチングの結果得られた凹凸パターンシートは、図1に模式的に示すような縦断面形状を備え、原子間力顕微鏡イメージから実測した凹凸構造Yの最頻高さHは976.4nmで、単粒子膜エッチングマスクについて実施した方法と同じ方法で求めた最頻ピッチPは331.7nmで、これらから算出されるアスペクト比は2.94であった。
そして、この凹凸パターンシートに対して、式(2)による配列のずれD’を求めたところ、11.23%であった。
次いで、凹凸パターンシートをナノインプリント用モールドの原版とし、実施例1と全く同様にしてNiからなるナノインプリント用モールドを作成し、これを用いて紫外線硬化樹脂(PAK-01CL、東洋合成製)からなる約1.0mmのナノインプリント品を得た。このナノインプリント品に対して、キセノン光源と散乱・光源測定器GENESIA/GONIOによる光学測定を実施例1と全く同様に行い、表1に示すようなADU値を得た。
[比較例1]
紫外線硬化樹脂(PAK-01CL、東洋合成製)を石英ウエハ間に挟んだ状態で硬化させて、厚さ約1.0mmの平面板を作成した。この平面板の表裏はともに平坦であり、1mm間隔で10点測定した二乗平均平方根粗さRq(JIS B0601:2001)の平均値が10.5nmであった。次に、実施例1と同様にしてキセノン光源による白色光をこの平面板に入射して構造面から出てくる光を計測し、表1に示すようなADU値を得た。
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、1mm間隔で10点測定した二乗平均平方根粗さRq(JIS B0601:2001)の平均値が3.2nmであって、表面構造を予め持たない平坦なシリコンウェハ(結晶軸(100))平面上にコロイダルシリカ粒子をコーティングした。コーティング面の原子間力顕微鏡イメージを得て、実施例1と同様にして最頻ピッチBを求めたところ、304.4nmであった。粒子の平均粒径A=298.2nmと、最頻ピッチB=304.4nmを式(1)に代入したところ、この例の単粒子膜エッチングマスクにおける粒子の配列のずれDは2.08%であった。
次いで、実施例1と全く同様のドライエッチングの結果得られた凹凸パターンシートは、凹凸構造Yのみを備え、原子間力顕微鏡イメージから実測した凹凸構造Yの最頻高さHは619.9nmで、単粒子膜エッチングマスクについて実施した方法と同じ方法で求めた最頻ピッチPは304.4nmで、これらから算出されるアスペクト比は2.04であった。
そして、この凹凸パターンシートに対して、式(2)による配列のずれD’を求めたところ、2.08%であった。
次いで、凹凸パターンシートをナノインプリント用モールドの原版とし、実施例1と全く同様にしてNiからなるナノインプリント用モールドを作成し、これを用いて紫外線硬化樹脂(PAK-01CL、東洋合成製)からなる約1.0mmのナノインプリント品を得た。このナノインプリント品に対して、キセノン光源と散乱・光源測定器GENESIA/GONIOによる光学測定を実施例1と全く同様に行い、表1に示すようなADU値を得た。
[比較例3]
オリンパス(株)製逆ピラミッドアレイ(結晶軸(100)シリコンウェハ上の構造、ピラミッドのピッチ20μm、ピラミッドの高さ14μm、ピラミッドの配列は碁盤目状、基板厚さ0.525mm、チップサイズ15×15mm)表面に離型処理を施した後、紫外線硬化樹脂(PAK-01CL、東洋合成製)を2.4MPaの圧力で押圧しつつ2.0Jの露光を行った。しかるのち緩やかに樹脂とモールドを剥離して、厚さ約1.0mmのナノインプリント品を取り出した。このナノインプリント品の構造面と反対側の面は、平坦である。次に、実施例1と同様にしてキセノン光源による白色光をこの平面板に入射して構造面から出てくる光を計測し、表1に示すようなADU値を得た。
Figure 0005880587
表1に示すように、実施例1、2では、凹凸構造を全く持たない比較例1に対して、40%以上光取り出し効率が向上した。特に、単粒子膜形成工程において超音波を照射した実施例1では、48%という高い光取り出し効率向上効果が得られた。
これに対して、凹凸構造Yのみの比較例2の光取り出し効率向上効果は9%に過ぎず、凹凸構造Xのみの比較例3の光取り出し効率向上効果は35%にとどまった。
1…凹凸パターンシート、I…入射光、I…出射光、
…凹凸パターンシート1の全体面(シート面)に対して平行な面、
’…凹凸構造Xのピッチ、H’…凹凸構造Xの高さ、
’…凹凸構造Yのピッチ、H’…凹凸構造Yの高さ

Claims (3)

  1. 有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子の両面側に各々配置された透明電極と背面電極と、前記透明電極の視認者側における光取り出し面に配置された光学シートとを備える光学装置であって、
    前記光学シートは、一方の面が、下記条件を満たす凹凸構造Xと凹凸構造Yが重畳した凹凸構造Zとされ、透明材料により構成された凹凸パターンシートであることを特徴とする光学装置。
    凹凸構造X:凹凸の最頻ピッチPが2〜200μmである1次元又は2次元の凹凸構造。
    凹凸構造Y:四角錐、三角錐および円錐から選ばれる形状の凸部または凹部が2次元方向に繰り返され、充填方位の多様性をつくる格子欠陥を含むヘキサゴン配列で配置されている構造であり、凹凸の最頻ピッチP が3〜380nmであり、前記最頻ピッチP に対する最頻高さH の比R が0.5〜10である2次元凹凸構造。
  2. 前記凹凸構造Xは、前記最頻ピッチPに対する最頻高さHの比Rが0.350〜0.714である請求項1に記載の光学装置。
  3. 前記凹凸構造Xは、頂上が直線の一次元構造、または頂上が点の2次元構造であって、頂角が90°±20°である請求項1または2に記載の光学装置。
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