JP5875063B2 - 金属管材用プロテクタの製造方法 - Google Patents
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Description
一例を示すと、長さ(L)が1mの半円筒形のプロテクタ基材の外周面に対して自溶合金を溶射し、溶射被膜を再溶融処理したところ、得られたプロテクタの撓み量(d)は0.5mm程度であった。このような撓みは、円筒状の基材(例えばチューブ自体)に形成した溶射被膜に対して再溶融処理を行う場合には生じないものである。
このような場合に、ボイラチューブへの取付け前または取付け時において、撓みのあるプロテクタにプレス加工などを行って機械的に矯正することも考えられるが、撓みの矯正作業は煩雑であり、また、撓みの矯正時に自溶合金の被膜が割れてしまうことがある。
なお、ボイラチューブに対してプロテクタが適正に取り付けられていない場合(例えば、ボイラチューブの外周面(保護対象面)からプロテクタの内周面が離間している場合)には、ボイラチューブによって十分に冷却されないためにプロテクタの温度が過大となり、その消耗速度が著しく増大することがある。
本発明の目的は、耐摩耗性および耐腐食性に優れているとともに、基材に対する被膜の密着性に優れ、撓みが小さくて直線性にも優れた金属管材用プロテクタを製造する方法を提供することにある。
前記プロテクタ基材の内周面を、円柱状または円筒状の基台の外周面に当接させることにより、前記プロテクタ基材を前記基台に装着し、前記プロテクタ基材が装着された前記基台に対して、その軸方向に引張力(X)を付与し、前記基台の半径方向であって、前記プロテクタ基材の装着位置とは反対方向に引張力(Y)を必要に応じて付与しながら、高周波誘導加熱によって前記溶射被膜を再溶融処理することにより、前記プロテクタ基材の外周面に自溶合金層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
そして、基台をこのような撓み状態(逆反り形状)にして再溶融処理することによれば、再溶融処理の際に基台およびプロテクタ基材の直線性を維持するだけでは直線性の良好なプロテクタを得ることができない場合であっても、形成した撓み状態(逆反り形状)によって、得られるプロテクタの直線性を十分に確保することができる。
このような製造方法によれば、再溶融処理の際に基台およびプロテクタ基材の直線性を維持するだけでは直線性の良好なプロテクタを得ることができない場合であっても、プロテクタ基材の装着位置の反対側が凸になるような基台の撓み(逆反り)によって、得られるプロテクタの直線性を十分に確保することができる。
然るに、上記のような製造方法によれば、再溶融処理時において、プロテクタ基材の内周面と基台の外周面とが軸方向に摺動することにより、プロテクタ基材が基台から脱着したり、プロテクタ基材に応力が残留したりすることを回避することができる。
(8)本発明の製造方法により得られる金属管材用プロテクタは、熱交換器の伝熱管を保護するために当該伝熱管に取り付けられるものであることが好ましい。
(9)本発明の製造方法により得られる金属管材用プロテクタは、ボイラチューブを保護するために当該ボイラチューブに取り付けられるもの(ボイラチューブプロテクタ)であることが好ましい。
請求項7〜9に係る金属管材用プロテクタは、耐摩耗性および耐腐食性に優れ、基材に対する被膜(自溶合金層)の密着性に優れ、撓みが小さくて直線性にも優れている。
請求項10に係る製造方法によれば、耐摩耗性および耐腐食性に優れ、基材に対する被膜(自溶合金層)の密着性に優れ、撓みが小さくて直線性にも優れた金属部材用プロテクタを確実に製造することができる。得られたプロテクタは、例えば、燃焼室の内壁を構成するボイラ部品を保護するライニング材(ボイラ部品プロテクタ)などとして好適に使用することができる。
本実施形態の製造方法は、半円筒形のプロテクタ基材の外周面に自溶合金の溶射被膜を形成する工程(溶射工程)と、このプロテクタ基材を基台に装着し、この基台に対して、その軸方向に引張力(X)を付与し、必要に応じて、基台の半径方向であってプロテクタ基材の装着位置とは反対方向に引張力(Y)を付与しながら、プロテクタ基材の外周面に形成された溶射被膜を再溶融処理して自溶合金層を形成する工程(再溶融工程)とを含む。
本実施形態で使用されるプロテクタ基材は半円筒形(円筒を半割りした形状)を有し、その外径は、通常25〜80mmとされ、その肉厚は、通常5〜10mm程度とされる。プロテクタ基材の長さは、通常30cm以上とされ、好ましくは1m以上、更に好ましくは1.5m以上とされる。30cm以上の基材を使用する場合において、本発明の製造方法は特に効果的である。
プロテクタ基材を構成材料としては、ステンレス、炭素鋼、CrMo鋼などの低合金鋼、鋳鉄などの金属材料を挙げることができる。
溶射処理方法としては、従来公知の方法を採用することができる。なお、必要に応じて、被処理面にショットブラストなどの表面洗浄処理を施してもよい。
図1において、30は、基台20の両端部を摺動自在に支持する支持体、40は、引張ワイヤ40Wを介して基台20を軸方向に引張する引張手段、50は、軸方向に離間する三箇所(20a,20b,20c)において、引張ワイヤ50Wを介して基台20を下側に引張する引張手段、60は、溶射被膜11Aの加熱手段である半円筒形の高周波コイルである。
そして、基台20にプロテクタ基材10を装着した状態で再溶融処理が行われることにより、円柱状の基台20の有する高い撓み剛性によってプロテクタ基材10が撓みにくくなり、この結果、得られるプロテクタの直線性が確保されやすくなる。
再溶融処理の際に生じる基台20の撓みとしては、上側(プロテクタ基材10の装着側)が凸になるような撓み、基台20の自重などにより下側(プロテクタ基材10の装着位置の反対側)が凸になるような撓みがある。
本実施形態の製造方法は、再溶融工程において、第1実施形態で使用したものと同様の装置を使用し、図2に示すように下側(プロテクタ基材10の装着位置の反対側)が凸になるような基台20の撓み状態(逆反り形状)が維持されるように、引張力(Y)を調整しながら、高周波コイル60を水平方向に移動させることにより、溶着被膜11Aを誘導加熱して自溶合金層11Bを形成する点に特徴がある。
そこで、このような場合(プロテクタ基材10の材質)において、基台20(プロテクタ基材10)を図2に示したような撓み状態(逆反り形状)とし、この状態を維持しながら、溶射被膜11Aを再溶融処理したところ、直線性の優れたプロテクタを得ることができた。本実施形態の製造方法は、このような知見に基づくものである。
ここに、逆反り形状における撓み量としては、例えば、プロテクタ基材10の長さの−0.01〜−1.0%とされる。
本実施形態の製造方法は、再溶融工程において図3に示すような装置を使用することにより、プロテクタ基材10の内周面と、基台20の外周面との軸方向の摺動を許容した状態で、プロテクタ基材10を基台20に装着し、この基台20の直線性が維持されるように、引張力(X)および引張力(Y)を付与しながら、高周波コイル60を軸方向(水平方向)に移動させることにより、溶着被膜11Aを誘導加熱して自溶合金層11Bを形成する点に特徴がある。
なお、ガイド部材70の固定方法としては溶接に限定されず、例えばネジ止めによって固定することもできる。
プロテクタ基材10は、その両側部101,102が、基台20の外周面と、ガイド部材70の内周面との間に緩く挟持され、軸方向には移動(スライド)可能であるが、半径方向(上下方向)には移動できない(プロテクタ基材10の内周面が、基台20の外周面から離間できない)状態で基台20に装着されている。この場合においても、プロテクタ基材10は基台20と一体的に挙動し、再溶融処理の際に、同一の形状(直線または撓み形状)を維持することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、プロテクタ基材10の装着操作、プロテクタの脱着操作が容易で、生産性に優れている。
本実施形態の製造方法は、再溶融工程において図4に示すような装置を使用し、長尺のプロテクタ基材10Lが装着された基台20Lの中央部分を支持体33により摺動自在に支持するとともに、引張力(X)および引張力(Y)を付与しながら、高周波コイル60を軸方向(水平方向)に移動させることにより、プロテクタ基材10Lの外周面上の溶着被膜11Aを誘導加熱して自溶合金層11Bを形成する点に特徴がある。
ここに、本実施形態で使用するのに好適な長尺のプロテクタ基材10Lの長さとしては、通常1m以上とされ、好ましくは1〜10mとされる。
また、本実施形態で使用する装置を構成する基台20Lの長さとしては、プロテクタ基材10Lの長さより0.5m以上長いことが好ましい。
なお、図4には、基台20Lの両端部以外の部分を支持する支持体33は1つであったが、そのような支持体を2つ以上設けることも可能である。この場合において、支持体の配置間隔としては1.0〜2.0mであることが好ましい。
本実施形態の製造方法は、金属部材用プロテクタであるボイラ部品プロテクタを製造する方法であって、板状のプロテクタ基材の一面に自溶合金を溶射処理して溶射被膜を形成する工程(溶射工程)と、図5に示したような装置を使用し、プロテクタ基材15の他面を、角柱状の基台25の周面(上面)に当接させることにより、プロテクタ基材15を基台25に装着し、この基台25に対して、その軸方向に引張手段40による引張力(X)を付与し、必要に応じて、基台25の軸方向に離間する三箇所(25a,25b,25c)において下方向(軸方向に直交する方向であって、プロテクタ基材15の装着位置とは反対方向)に引張手段50による引張力(Y)を付与することによって基台25およびプロテクタ基材15の直線性(水平度)を維持しながら、高周波コイル65を軸方向(水平方向)に移動させて溶射被膜11Aを再溶融処理することにより、プロテクタ基材15の一面に自溶合金層11Bを形成する工程(再溶融工程)とを含む。
図1において、35は、基台25の両端部を摺動自在に支持する支持体、65は、溶射被膜11Aを再溶融させるための加熱手段としての半角筒状の高周波コイル、75は、プロテクタ基材15を基台25に装着させるためのガイド部材である。図5に示す装置においては、12個〔図5(A)に図示されている6個と、これらと同じ軸方向位置で紙面の反対側に位置する図5(A)には図示されていない6個)〕のガイド部材75が、基台20の外周面に溶接により固定されることによって配置されている。図5(B)において、Wは溶接部である。なお、ガイド部材75の固定方法としては溶接に限定されず、例えばネジ止めによって固定することもできる。
本実施形態の製造方法により得られたプロテクタは、例えば、燃焼室の内壁を構成するボイラ部品を保護するライニング材などとして好適に使用することができる。
また、本発明の製造方法によって得られるプロテクタは、ボイラチューブプロテクタやボイラ部品プロテクタに限定されるものではなく、例えば、ボイラ以外の熱交換器、化学プラント、船舶などを構成する各種配管および金属部材を保護するためのプロテクタとして好適に使用することができる。
11A 溶射被膜
11B 自溶合金層
20 基台
30 支持体
33 支持体
40 引張手段
40W 引張ワイヤ
50 引張手段
50W 引張ワイヤ
60 高周波コイル
70 ガイド部材
10L プロテクタ基材
20L 基台
15 プロテクタ基材
25 基台
35 支持体
65 高周波コイル
75 ガイド部材
Claims (9)
- 半円筒形のプロテクタ基材の外周面に自溶合金を溶射処理して溶射被膜を形成する工程と、
前記プロテクタ基材の内周面を、円柱状または円筒状の基台の外周面に当接させることにより、前記プロテクタ基材を前記基台に装着し、前記プロテクタ基材が装着された前記基台に対して、その軸方向に引張力(X)を付与し、前記基台の半径方向であって、前記プロテクタ基材の装着位置とは反対方向に引張力(Y)を必要に応じて付与しながら、高周波誘導加熱によって前記溶射被膜を再溶融処理することにより、前記プロテクタ基材の外周面に自溶合金層を形成する工程と
を含むことを特徴とする金属管材用プロテクタの製造方法。 - 前記軸方向に離間する前記基台の複数の箇所において、前記基台の半径方向であって、前記プロテクタ基材の装着位置とは反対方向に引張力(Y)を付与することを特徴とする請求項1に記載の金属管材用プロテクタの製造方法。
- 前記プロテクタ基材が装着された前記基台の直線性が維持されるように、前記引張力(X)および前記引張力(Y)を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属管材用プロテクタの製造方法。
- 前記プロテクタ基材の装着位置の反対側が凸になるような基台の撓み状態が維持されるように、前記引張力(Y)を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属管材用プロテクタの製造方法。
- 前記プロテクタ基材の内周面と前記基台の外周面との前記軸方向の摺動を許容した状態で、前記プロテクタ基材を前記基台に装着することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の金属管材用プロテクタの製造方法。
- 前記プロテクタ基材が装着された前記基台の両端部以外の部分を支持体により支持しながら、前記溶射被膜を再溶融処理することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の金属管材用プロテクタの製造方法。
- 長さが30cm以上で、撓み量が±1mm以内である金属管材用プロテクタを製造する請求項1乃至請求項6の何れかに記載の製造方法。
- 熱交換器の伝熱管を保護するために当該伝熱管に取り付けられる金属管材用プロテクタを製造する請求項7に記載の製造方法。
- ボイラチューブを保護するために当該ボイラチューブに取り付けられる金属管材用プロテクタを製造する請求項7に記載の製造方法。
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