以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態であるフラッシュバルブ(流路開閉装置)について図1に示す。図1は、本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。図1に示されるように、フラッシュバルブSVは、大便器SBへの給水管TBの途中に取り付けられている。フラッシュバルブSVは、給水を開始する指示を受けることで、給水管TBを経由する流路を開いて大便器SBに給水を開始する。その後、フラッシュバルブSVは、所定の条件を満たすことで自律的に流路を閉じて給水を停止する。
大便器SBは、封水部SWが設けられている。封水部SWには常時溜水がなされ、封水が形成されている。大便器SBを使用すると、封水部SWに汚物が投入される。大便器SBの使用後にフラッシュバルブSVを操作すると、フラッシュバルブSVから略一定の瞬間流量で洗浄水が供給される。この洗浄水によって、封水部SWの溜水及び汚物が流される。本実施形態の場合、大便器SBはサイフォン方式の便器であるので、サイフォン現象によって洗浄水は汚物と共に下流側へ吸引される。本実施形態のフラッシュバルブSVは、洗浄後に封水部SWにリフィル水を供給するように構成されている。
フラッシュバルブSVは、本体部10と、電磁弁82とを備えている。本体部10内には、給水管TBに繋がる一次側内部流路20と、大便器SBに繋がる二次側内部流路30とが形成されている。本体部10内には弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うものである。電磁弁82は、バイパス流路80に設けられている。電磁弁82を開くことで、弁体部材40の背圧が下がり開弁される。本実施形態では、給水管TBにおいて、フラッシュバルブSVよりも上流側には止水栓Vが、フラッシュバルブSVよりも下流側であって大便器SBよりも上流側にはバキュームブレーカーVBが、それぞれ配置されている。
続いて、本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブSVの内部構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、フラッシュバルブSVの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
図2に示されるように、フラッシュバルブSVは、本体部10を備えている。本体部10は、本体部材101と、上蓋部材102とを有している。上蓋部材102が本体部材101にはめ込まれることで、本体部10は内部に通水経路である内部流路を有するものとして構成される。
本体部10の内部には、一次側内部流路20と、二次側内部流路30と、背圧室14と、副背圧室12とが形成されている。一次側内部流路20は、給水元である一次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも上流側の流路)から流入水Waを受け入れて、二次側内部流路30に向けて流出させるものである。一次側内部流路20の上流端には流入口21が設けられている。流入口21は、流入水Waを受け入れて一次側内部流路20に送り出す開口部である。
二次側内部流路30は、一次側内部流路20から流入する水を給水先である二次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも下流側の流路)に流出水Wbとして流出させるものである。二次側内部流路30の下流端には流出口31が設けられている。流出口31は、二次側内部流路30から二次側流路へ流出水Wbを送り出す開口部である。
一次側内部流路20と二次側内部流路30との間には、弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、下流側の一端が二次側内部流路30に挿入されており、その反対側の他端が背圧室14に臨むように配置されている。弁体部材40は、二次側内部流路30の下流方向に沿って進退自在に配置されている。
弁体部材40は、その上部に設けられたバルブ上部部材42と、フィルター部材43と、固定部材44と、座面パッキン45と、バルブ下部部材46と、内蔵バルブ47と、内蔵バルブパッキン48と、内蔵バルブ保持部材49と、を有する。
バルブ上部部材42は、有底で上部が開放された多段筒状の部材として構成されている。バルブ上部部材42の上部側、すなわち背圧室14に対向する側が最も外径が大きく、バルブ上部部材42の下部側、すなわち流出口31に対向する側が最も外径が小さくなるように構成されている。
バルブ上部部材42は、底側に小径の縦内部流路421が形成され、上部側に大径の縦内部流路422が形成されている。縦内部流路421と縦内部流路422は繋がっており、バルブ上部部材42の軸方向に沿って配置されている。バルブ上部部材42には更に、縦内部流路421に対して側方から繋がるように、横内部流路423が形成されている。横内部流路423と一次側内部流路20とは繋がっており、一次側内部流路20から流入する水が、横内部流路423、縦内部流路421、縦内部流路422を通って、背圧室14に流れるように構成されている。
フィルター部材43は、一次側内部流路20と横内部流路423との間に介在するように、バルブ上部部材42の側方に設けられている。フィルター部材43は、バルブ上部部材42の上端部と、固定部材44とに挟まれて保持されている。
バルブ上部部材42の縦内部流路421には、内蔵バルブ47が配置されている。内蔵バルブ47は、一端側が縦内部流路421の内部に沿って動くように配置され、他端側がバルブ上部部材42の上端側から背圧室14内に突出し、ばね台103に向かって動くように配置されている。
内蔵バルブ47の一端側に当接するように内蔵バルブばね50が配置されている。内蔵バルブばね50は、縦内部流路421内に配置されており、内蔵バルブ47の一端側と縦内部流路421の底部との間において伸縮するように構成されている。
内蔵バルブ47は、縦内部流路421内に配置される一端側が大径となり、残余の部分が小径且つ棒状となるように形成されている。この内蔵バルブ47の小径棒状部分を囲むように、内蔵バルブ保持部材49が設けられている。内蔵バルブ保持部材49の下端且つ中央部分、すなわち縦内部流路421に臨む部分には内蔵バルブパッキン48が設けられている。
内蔵バルブ47が最も上方まで移動すると、内蔵バルブ47の一端側である大径部分が内蔵バルブパッキン48に当接する。内蔵バルブばね50が伸び、内蔵バルブ47の一端側である大径部分を内蔵バルブパッキン48に当接させると、縦内部流路421から縦内部流路422への水の流入が抑止される。
内蔵バルブ47の小径部は、内蔵バルブパッキン48及び内蔵バルブ保持部材49に設けられた連通路(背圧流路)を貫通している。内蔵バルブパッキン48及び内蔵バルブ保持部材49に設けられた連通路と小径部との間には、通水可能な隙間が形成される。従って、縦内部流路421に流入した水は、この連通路を通って背圧室14へと流れる。また、水の一部は、内蔵バルブ保持部材49に形成された副孔491を通って背圧室14へと流れる。
バルブ上部部材42の下部側、すなわち小径の縦内部流路421が形成されている部分の外周に、バルブ下部部材46が嵌め込まれて固定されている。バルブ下部部材46は定流量弁体として機能する部分である。
この定流量弁体としてのバルブ下部部材46の構造を、図3及び図4を参照しながら詳しく説明する。図3は、バルブ下部部材46の側面図であって、図4はバルブ下部部材46の斜視図である。
バルブ下部部材46の外側面461には、均等な間隔で4つのスリット462が形成されている。各スリット462は、断面が矩形の有底な溝であり、外側面461の下端から中程まで形成されている。各スリット462は、スリット462の上端部に位置する水平な面である天面466と、側壁を形成する側壁面467とを有している。側壁面467は、その上部において略鉛直に形成された上部側壁面468と、その下部において傾斜状に形成された下部側壁面469、470とからなっている。このため、スリット462の上部においては、スリット462の幅は高さによらず一定である。一方、スリット462の下部においては、スリット462の幅は下方に行くほど広くなっている。
バルブ下部部材46の外側面461は、二次側内部流路30の内側壁と近接して対向している。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、水が二次側内部流路30へと流入するが、その流路は二つ存在することとなる。
一つ目の流路(主流路)は、二次側内部流路30の内側壁とスリット462により形成された空間を通過し、二次側内部流路30へと流入する流路である。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、一次側内部流路20からスリット462に水が流入する。このとき、弁体部材40が上昇するほど、水はスリット462の下部に対して流入することとなる。スリット462は、下方に行くほど幅が広くなっているため、水の流路断面積は広くなり、流量を増やすように作用する。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向)し、その後下降(流出口31へ向かう方向、前進方向、閉弁方向)すると、水はスリット462の上部に対して流入することとなる。その結果、水の流路断面積は狭くなり、流量を絞るように作用する。
二つ目の流路(副流路)は、孔463から弁内空間に流入した後、孔464を通過して二次側内部流路30に流入する流路である。この流路は、弁体部材40の上昇及び下降によってその流路断面積がほとんど変化しない。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)した状態においては、常に一定の瞬間流量で水が流れることとなる。
再び図2に戻って説明する。固定部材44とバルブ下部部材46とに挟まれて、座面パッキン45が保持されている。この座面パッキン45は、主弁体面を構成する部材である。弁体部材40が最も下流側に押し込まれると、座面パッキン45は、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面に当接し、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の水の流通を遮断するように構成されている。従って、主弁体面を構成する座面パッキン45が当接する境界面は、主弁座面201(主弁座)として機能している。一方、弁体部材40のバルブ下部部材46を除いた残余の部分は、主弁体として機能している。
背圧室14と副背圧室12とは、位置調整部材60(開度規制部材)によって仕切られて分離されている。位置調整部材60には凹部601が設けられている。凹部601は、背圧室14に向けてその外壁が突出する凹部として形成されている。凹部601の背圧室14側には、線形特性を有する定流量ばね70が配置されている。定流量ばね70は、一端が凹部601内に収容され、他端はばね台103に当接するように配置されている。
ばね台103は、調整棒103aと、ばね受部103bと、移動位置規制部103cとを有している。調整棒103aは、定流量ばね79の巻線の中心を貫通するように配置され、上蓋部材102の中心に設けられた孔を貫通して外部に一端が露出している。調整棒103aの他端には、ばね受部103bが設けられている。
ばね受部103bは、円板状をなしており、定流量ばね70を支持するように配置されている。このばね受部103bに、内蔵バルブ47の上端部が当接したり離隔したりするように構成されている。
調整棒103aを回転させると、本体部10に対してばね台103の全体が上下に移動する。位置調整部材60は、副背圧室12と背圧室14との圧力差によって押される力と定流量ばね70がそれに対抗しようとする力、及び位置調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって、副背圧室12を広げる(背圧室14を狭める)ように摺動したり、副背圧室12を狭める(背圧室14を広げる)ように摺動したりするように構成されている。
従って、調整棒103aを回転させることで、定流量ばね70の対抗力を調整することができ、副背圧室12と背圧室14との圧力差に対して位置調整部材60がどの位置において均衡を保ち、その位置決めがなされるかを調整することができる。
移動位置規制部103cは、調整棒103aよりは大径で、ばね受部103bよりは小径となるように形成されている。副背圧室12を広げる方向に位置調整部材60が移動した場合であっても、過度に定流量ばね70が押し縮められないように、位置調整部材60が移動位置規制部103cに当たって止まるように構成されている。移動位置規制部103cは、主弁(バルブ)の最大開度を一次側水圧が最大想定水圧となった場合の開度よりも狭められないように規制するように調整される。
従って、図5に示すように、副背圧室12側の圧力が高まると、位置調整部材60が副背圧室12を広げるように押し下げられ、位置調整部材60が移動位置規制部103cに当たって止まる。
再び図2に戻って説明する。副背圧室12側の圧力が、定流量ばね70が位置調整部材60を上蓋部材102に向けて付勢する付勢力よりも大きくならない場合、位置調整部材60は、上蓋部材102の予圧縮突起102aに当接する。予圧縮突起102aは、上蓋部材102の内側に設けられている突起であって、副背圧室12内に突出するように設けられている。
ばね台103が設置場所の水圧に応じた所定の位置に調整され、定流量ばね70、位置調整部材60、上蓋部材102が組み付けられると、定流量ばね70は自然長よりも圧縮された状態で取り付けられる。
すなわち、予圧縮突起102aは、定流量ばね70が必要以上に伸びることを抑制するための移動位置規制部として機能している。この移動位置規制部としての予圧縮突起102aは、一次側水圧が最小想定水圧となった場合に開度規制部材である位置調整部材60が定流量ばね70を押し込むように、定流量ばね70をその自然長よりも予め圧縮している。
副背圧室12には一次側内部流路20にかかる一次圧と同じ圧力がかかるように構成されている。具体的には、一次側内部流路20と副背圧室12とが副一次流路22によってつながれており、一次圧が副背圧室12に伝達されている。副一次流路22には、オリフィス221が設けられている。
背圧室14と二次側内部流路30とは、バイパス流路80によって繋がっている。バイパス流路80には電磁弁82が設けられている。電磁弁82が閉じられていれば、背圧室14の内部には一次圧がかかっている。一方、電磁弁82が開けられると、背圧室14の水がバイパス流路80から二次側内部流路30に流出し、背圧室14の内部圧力が低下する。
続いて、フラッシュバルブSVの動作について、図2及び図5を参照しながら説明する。上述したように、図2は低水圧の状態の場合の初期状態を示し、図5は高水圧の状態の場合の初期状態を示す。電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、座面パッキン45が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、内蔵バルブ47と内蔵バルブパッキン48とは当接しているので、副孔491及び連通路(内蔵バルブ47と内蔵バルブ保持部材49との間の隙間)の合算面積(小穴面積)は、副孔491のみの流路断面積となる。
続いて、電磁弁82が開かれると、まず圧力の低いバイパス流路80と、それに比較して相対的に圧力の高い背圧室14内とが連通される。すると、背圧室14内の水がバイパス流路80側へ流出する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、位置調整部材60が押し下げられる。
ばね台103は本体部10に固定されているため移動しない。定流量ばね70は、移動しないばね台103と移動する位置調整部材60との間に配置されているため、位置調整部材60が押し下げられると、定流量ばね70は縮んで反力を発生させる。位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、位置調整部材60が副背圧室12と背圧室14との差圧によって押される力と定流量ばね70がそれに対抗しようとする力、及び位置調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって定められる。
従って、給水圧が低い場合は、位置調整部材60はあまり押し下げられず、旧水圧が高い場合は、図5に示されるように、位置調整部材60は大きく押し下げられる。この位置調整部材60の過剰な移動を抑止するため、位置調整部材60は移動位置規制部103cに当接して定流量ばね70が完全に押し縮められることなく止まるように構成されている。
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体である座面パッキン45が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。
この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、主流路(スリット462を通過する流路)を流れる流量と副流路(孔463を通過する流路)を流れる流量とを合わせた流量であって、一次側内部流路20からスリット462に水が流入する場所における、スリット462の幅(流路断面積の大きさ)によって調整される。すなわち、弁体部材40の位置に応じて主流路を流れる流量のみが調整され、副流路を流れる流量は弁体部材40の位置によらず略一定である。
位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整し、開度規制部材として機能するものであるから、図2のように比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、図5のように比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。また、内蔵バルブ47と内蔵バルブパッキン48とは離隔しているので、副孔491及び連通路(内蔵バルブ47と内蔵バルブ保持部材49との間の隙間)の合算面積(小穴面積)は、背圧室14に流れ込む水の流路断面積となる。
図2のように給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、図5のように給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
その後、電磁弁82が閉じられると、副孔491及び連通路(内蔵バルブ47と内蔵バルブ保持部材49との間の隙間)を通って、背圧室14内に水が溜まる。内蔵バルブ47と内蔵バルブパッキン48とは離隔しているので、水が副孔491及び連通路から流れ、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。弁体部材40が閉弁方向に押し下げられると、内蔵バルブ47と内蔵バルブパッキン48とが当接し、連通路が閉塞される。内蔵バルブ47と内蔵バルブパッキン48とが当接した後は、背圧室14内への流入は副孔491からのみになる。弁体部材40は、所定の下降基準まで強制的に移動するときよりも遅い速度で更に押し下げられる。
弁体部材40が所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられた状態においては、スリット462の天面466の高さは、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも下に位置している。このため、一次側内部流路20からスリット462に水が流入する流路(主流路)は略遮断された状態となっている。
一方、スリット462の天面466よりも上部に形成された孔463は、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも上に位置している。このため、一次側内部流路20から二次側内部流路30に供給される水は、主流路を通過せず、副流路のみを通過することとなる。
座面パッキン45が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、主流路及び副流路はいずれも閉じられた状態となるため、大便器SBに対する水の供給が停止される。従って、基準位置まで弁体部材40が下降した後に大便器SBに供給される水が、大便器SBの封水部SWに供給されるリフィル水として用いられる。
このように、リフィル水供給段階開始前に、瞬間流量を減少させることによって、水を供給しても大便器SBの封水部SWに溜まらずに便器洗浄が行われることを抑制できる。とくにサイフォン式大便器の場合、リフィル水供給段階における瞬間流量が大きすぎると、サイフォン減少が発生してしまい、便器洗浄が行われてしまう可能性が高くなる。
本実施形態では、リフィル水は副流路からのみ供給されるため、弁体部材40の位置が変化しているにも関わらず、瞬間流量は経時的に変動しない。一次側内部流路20を流れる水の瞬間流量が変動しないため、一次側内部流路20(給水圧)も変動しない。
上述したように本実施形態に係るフラッシュバルブSVは、給水を開始する指示を受けることで大便器SBに給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置である。フラッシュバルブSVは、給水元に繋がる一次側流路から給水先である大便器SBへ繋がる二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つように相互間に形成される流路断面積を調整する弁体である座面パッキン45及び弁座である主弁座面201を有するバルブ(弁体部材40の一部と本体部10の一部とによって構成される)と、一次側水圧が最大想定水圧から最小想定水圧の間で変動するものとしてバルブの最大開度を規制する開度規制部材である位置調整部材60と、位置調整部材60に作用する一次側水圧と対向するように位置調整部材60を付勢する定流量ばね70と、を備える。更に、一次側水圧と定流量ばね70の付勢力とが均衡するように位置調整部材60の位置が調整されるものであって、少なくとも定流量ばね70の縮みを規制する方向で位置調整部材60の位置調整を規制する移動位置規制部103cが設けられている。
本実施形態では、一次側水圧と定流量ばね70の付勢力が均衡するように位置調整部材60の位置が調整されるので、バルブの最大開度を一次側水圧の高低にあわせて調整することができる。本発明者らは、この調整の際のバルブの挙動不安定性が、定流量ばね70の縮み方に起因するものと考えた。具体的には、一次側水圧が高まった場合に定流量ばね70のストロークが大きいと、そのストロークの範囲内で位置調整部材60が振動し、バルブの小刻みな開度変動であるハンチングが起こってしまう。
また、静水圧と動水圧との差が大きい場合に定流量ばね70のストロークが大きいと、バルブが開く初期のタイミングで位置調整部材60が過度に押し込まれ、バルブが十分に開かない恐れや、止水時に位置調整部材60が急激に押し込まれることでバルブが急激に閉じられてしまい、リフィル水の供給が十分に行われなくなる恐れがある。
そこで本実施形態では、定流量ばね70の縮みを規制する方向で位置調整部材60の位置調整を規制する移動位置規制部103cを設けることで、定流量ばね70のストロークを規制し、定流量ばね70の過剰な縮みを抑制することができる。このように定流量ばね70のストロークを制御することで、位置調整部材60の挙動を安定化させることが可能となり、ハンチングの発生やバルブの不十分な開き、更にはリフィル水の不足といった事象の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、移動位置規制部103cは、バルブの最大開度を一次側水圧が最大想定水圧となった場合の開度よりも狭められないように規制するように設けられている。
このように、移動位置規制部103cによってバルブの最大開度を一次側水圧が最大想定水圧となった場合の開度よりも狭められないように規制することで、バルブの最大開度を確保した範囲で定流量ばね70の過剰な縮みを抑制することができる。
また、本実施形態では、予圧縮突起102aが定流量ばね70の伸び側を規制する移動位置規制部として機能し、一次側水圧が最小想定水圧となった場合に位置調整部材60が定流量ばね70を押し込むように、定流量ばね70をその自然長よりも予め圧縮している。
このように、定流量ばね70を自然長よりも予め圧縮しているので、装置全体をコンパクトなものとすることができる。更に、その圧縮量は、一次側水圧が最小想定水圧となった場合(例えば、図2に示す状態)に位置調整部材60が定流量ばね70を押し込むように設定されているので、定流量性の確保に必要な範囲での定流量ばね70の動きを確保しつつ、装置全体のコンパクト化に寄与することができる。
また、本実施形態では、移動位置規制部103cは、定流量ばね70を支えるばね台103として構成され、ばね台103と位置調整部材60とが当接することで、位置調整部材60の位置調整が規制される。
このように、位置調整部材60の位置調整に対する規制を、位置調整部材60とばね台103との当接という簡便な手法で実現するので、フラッシュバルブSVを簡便な構成とすることができる。また、位置調整部材60の動く速度はばね台103と当接するまで影響を受けないので、定流量調整機能に影響を与えることなく、位置調整部材60の位置調整を規制することができる。
また、本実施形態では、ばね台103の初期位置が定流量ばね70の伸縮方向に沿って調整可能なように構成されている。
このように、ばね台103の初期位置を調整可能なように構成しているので、フラッシュバルブSVを組み上げた後においても、最大想定水圧及び最小想定水圧に合わせて移動位置規制部としてのばね台103の初期位置を調整することができる。