以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態であるフラッシュバルブ(流路開閉装置)について図1に示す。図1は、本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。図1に示されるように、フラッシュバルブSV(流路開閉装置)は、大便器SBへの給水管TBの途中に取り付けられている。フラッシュバルブSVは、給水を開始する指示を受けることで、給水管TBを経由する流路を開いて大便器SBに給水を開始する。その後、フラッシュバルブSVは、所定の条件を満たすことで自律的に流路を閉じて給水を停止する。
大便器SBは、封水部SWが設けられている。封水部SWには常時溜水がなされ、封水が形成されている。大便器SBを使用すると、封水部SWに汚物が投入される。大便器SBの使用後にフラッシュバルブSVを操作すると、フラッシュバルブSVから略一定の瞬間流量で洗浄水が供給される。この洗浄水によって、封水部SWの溜水及び汚物が流される。本実施形態の場合、大便器SBはサイフォン方式の便器であるので、サイフォン現象によって洗浄水は汚物と共に下流側へ吸引される。本実施形態のフラッシュバルブSVは、洗浄後に封水部SWにリフィル水を供給するように構成されている。
フラッシュバルブSVは、本体部10と、電磁弁82とを備えている。本体部10内には、給水管TBに繋がる一次側内部流路20と、大便器SBに繋がる二次側内部流路30とが形成されている。本体部10内には弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うものである。電磁弁82は、バイパス流路80に設けられている。電磁弁82を開くことで、弁体部材40の背圧が下がり開弁される。本実施形態では、給水管TBにおいて、フラッシュバルブSVよりも上流側には止水栓Vが、フラッシュバルブSVよりも下流側であって大便器SBよりも上流側にはバキュームブレーカーVBが、それぞれ配置されている。
続いて、本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブSVの内部構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、フラッシュバルブSVの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
図2に示されるように、フラッシュバルブSVは、本体部10を備えている。本体部10の内部には、一次側内部流路20と、二次側内部流路30と、背圧室14と、副背圧室12とが形成されている。一次側内部流路20は、給水元である一次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも上流側の流路)から流入水Waを受け入れて、二次側内部流路30に向けて流出させるものである。一次側内部流路20の上流端には流入口21が設けられている。流入口21は、流入水Waを受け入れて一次側内部流路20に送り出す開口部である。
二次側内部流路30は、一次側内部流路20から流入する水を給水先である二次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも下流側の流路)に流出水Wbとして流出させるものである。二次側内部流路30の下流端には流出口31が設けられている。流出口31は、二次側内部流路30から二次側流路へ流出水Wbを送り出す開口部である。
一次側内部流路20と二次側内部流路30との間には、弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、下流側の一端が二次側内部流路30に挿入されており、その反対側の他端が背圧室14に臨むように配置されている。弁体部材40は、二次側内部流路30の下流方向に沿って進退自在に配置されている。弁体部材40は、その上部に設けられた主弁体42と、その下部に設けられた定流量弁体44とからなり、両者が一体となって構成されている。
主弁体42は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うためのものである。主弁体42は下流側の面において、主弁体面421を有している。弁体部材40が最も下流側に押し込まれると、主弁体面421が一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面に当接し、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の水の流通を遮断するように構成されている。従って、主弁体面421が当接する境界面は、主弁座面201(主弁座)として機能している。
定流量弁体44は、一次側内部流路20から二次側内部流路30へ流れる水の瞬間流量を調整するためのものである。定流量弁体44は、内部に形成された空間である弁内空間445を有している。また、定流量弁体44の底面においては、二次側内部流路30と弁内空間445とを連通する孔444が形成されている。定流量弁体44はまた、その外側面441において、溝状に形成されたスリット442を有している。更に、スリット442の上部には、外部と弁内空間445とを連通する孔443が形成されている。
この定流量弁体44の構造を、図3及び図4を参照しながら詳しく説明する。図3は、定流量弁体44の側面図であって、図4は定流量弁体44の斜視図である。定流量弁体44の外側面441には、均等な間隔で4つのスリット442が形成されている。各スリット442は、断面が矩形の有底な溝であり、外側面441の下端から中程まで形成されている。各スリット442は、スリット442の上端部に位置する水平な面である天面446と、側壁を形成する側壁面447とを有している。側壁面447は、その上部において略鉛直に形成された上部側壁面448と、その下部において傾斜状に形成された下部側壁面449、450とからなっている。このため、スリット442の上部においては、スリット442の幅は高さによらず一定である。一方、スリット442の下部においては、スリット442の幅は下方に行くほど広くなっている。
さらに、定流量弁体44の外側面441には、天面446よりも上部において、2か所に孔443が形成されている。孔443は、鉛直方向の径よりも水平方向の径が長く、定流量弁体44の外部と弁内空間445とを連通するように形成されている。
再び図2に戻って説明する。定流量弁体44の外側面441は、二次側内部流路30の内側壁と近接して対抗している。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、水が二次側内部流路30へと流入するが、その流路は二つ存在することとなる。
一つ目の流路(主流路)は、二次側内部流路30の内側壁とスリット442により形成された空間を通過し、二次側内部流路30へと流入する流路である。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する。このとき、弁体部材40が上昇するほど、水はスリット442の下部に対して流入することとなる。スリット442は、下方に行くほど幅が広くなっているため、水の流路断面積は広くなり、流量を増やすように作用する。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向)し、その後下降(流出口31へ向かう方向、前進方向、閉弁方向)すると、水はスリット442の上部に対して流入することとなる。その結果、水の流路断面積は狭くなり、流量を絞るように作用する。
二つ目の流路(副流路)は、孔443から弁内空間445に流入した後、孔444を通過して二次側内部流路30に流入する流路である。この流路は、弁体部材40の上昇及び下降によってその流路断面積がほとんど変化しない。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)した状態においては、常に一定の瞬間流量で水が流れることとなる。
主弁体42には、その上部側において収容凹部46が設けられている。収容凹部46は、背圧室14側から後退するように凹状に形成されている。収容凹部46の背圧室14側には、副弁座465が設けられている。収容凹部46は、孔461と、凹部462と、副孔463(背圧流路)と、が形成されている。
孔461は、一次側内部流路20と凹部462とを繋ぐ連通孔として形成されている。凹部462は、バネ50と、副弁桿48とを収容している。凹部462内には、副弁桿48の先端の大径部481が配置されている。大径部481は、バネ50と当接しており、バネ50を介して弁体部材40を流出口31に向けて付勢している。
副弁桿48は、棒状に延びる小径部483と、小径部483の先端に設けられている大径部481とを有している。小径部483は、副弁座465に設けられた連通路464(背圧流路)を貫通している。連通路464と小径部483との間には、通水可能な隙間が形成される。従って、孔461から凹部462に流入した水は、連通路464を通って背圧室14へと流れる。また、孔461を通った水の一部は、副孔463を通って背圧室14へと流れる。尚、連通路464が閉鎖されている場合は、孔461を通った全ての水が副孔463を通って背圧室14へと流れる。
背圧室14と副背圧室12とは、第一位置調整部材60によって仕切られて分離されている。第一位置調整部材60には凹部601が設けられている。凹部601は、背圧室14に向けてその外壁が突出する凹部として形成されている。凹部601の下端には、連通路602が形成されている。凹部601の背圧室14側には、線形特性を有するバネ70が配置されている。バネ70は、一端が凹部601内に収容され、他端は第二位置調整部材65に当接するように配置されている。
第二位置調整部材65は、バネ70の巻き線の中心を貫通するように配置されている。第二位置調整部材65の一端は、副弁桿48の小径部483の一端と当接したり離隔したりするように配置され、第二位置調整部材65の他端は本体部10に固定されている。背圧室14に入った水は、連通路602を通じてバイパス流路80側へと流れる。
第一位置調整部材60は、副背圧室12と背圧室14との圧力差によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力、及び第一調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって、副背圧室12を広げる(背圧室14を狭める)ように摺動したり、副背圧室12を狭める(背圧室14を広げる)ように摺動したりするように構成されている。
副背圧室12には一次側内部流路20にかかる一次圧と同じ圧力がかかるように構成されている。具体的には、一次側内部流路20と副背圧室12とが副一次流路22によってつながれており、一次圧が副背圧室12に伝達されている。
背圧室14と二次側内部流路30とは、バイパス流路80によって繋がっている。バイパス流路80には電磁弁82が設けられている。電磁弁82が閉じられていれば、背圧室14の内部には一次圧がかかっている。一方、電磁弁82が開けられると、背圧室14の水がバイパス流路80から二次側内部流路30に流出し、背圧室14の内部圧力が低下する。
続いて、フラッシュバルブSVの動作について、図5〜図9を参照しながら説明する。図5〜図9は、図2に示すフラッシュバルブSVの吐水動作を示す図である。図5〜図9それぞれの(A)は給水圧が低圧の状態を示し、図5〜図9それぞれの(B)は給水圧が高圧の状態を示し、図5〜図9それぞれの(C)は弁体部材40のリフト量と副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)と大便器SB側に流れる瞬間流量を示している。図5〜図9それぞれの(C)において、実線は給水圧が低い場合を示し、破線は給水圧が高い場合を示している。
図5の(A)(B)(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、副弁体482と副弁座465は当接しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463のみの流路断面積となる。
続いて、図6の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t1で電磁弁82が開かれると、まず圧力の低いバイパス流路80と背圧室14内が連通される。すると、背圧室14内の水がバイパス流路80側へ流出する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。第二位置調整部材65は本体部10に固定されているため移動しない。バネ70は、移動しない第二位置調整部材65と第一位置調整部材60との間に配置されているため、第一位置調整部材60が押し下げられるとバネ70は縮んで反力を発生させる。第一位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、第一位置調整部材60が副背圧室12と背圧室14との差圧によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力、及び第一調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって定められる。
従って、図6の(A)に示されるように給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられず、図4の(B)に示されるように給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60は大きく押し下げられる。
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、主流路(スリット442を通過する流路)を流れる流量と副流路(孔443を通過する流路)を流れる流量とを合わせた流量であって、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する個所における、スリット442の幅(流路断面積の大きさ)によって調整される。すなわち、弁体部材40の位置に応じて主流路を流れる流量のみが調整され、副流路を流れる流量は弁体部材40の位置によらず略一定である。
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整し、位置制御部材として機能するものであるから、図6の(A)のように比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、図6の(B)のように比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。また、副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。
図6の(A)のように給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、図6の(B)のように給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
図7の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t2で電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に水が溜まる。副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。従って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
図8の(A)(B)(C)に示されるように、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。弁体部材40が閉弁方向に押し下げられると、副弁体482と副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。副弁体482が形成されている副弁桿48の小径部483は、固定されている第二位置調整部材65に当接しているので、副弁体482の位置は給水圧の高低によらずに略一定なものとなる。従って、弁体部材40は、給水圧の高低によらずに所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられる。副弁体482と副弁座465が当接した後は、背圧室14内への流入は副孔463からのみになる。弁体部材40は、所定の下降基準まで強制的に移動するときよりも遅い速度で更に押し下げられる。その弁体部材40の動きに伴い、バネ50を介して副弁桿48も一体的に押し下げられる。
弁体部材40が所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられた状態においては、スリット442の天面446の高さは、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも下に位置している。このため、一次側内部流路20からスリット442に水が流入する流路(主流路)は略遮断された状態となっている。一方、スリット442の天面446よりも上部に形成された孔443は、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも上に位置している。このため時刻t2以降においては、一次側内部流路20から二次側内部流路30に供給される水は、主流路を通過せず、前記副流路のみを通過することとなる。
図9の(A)(B)(C)に示されるように、主弁体42が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、主流路及び副流路はいずれも閉じられた状態となるため、大便器SBに対する水の供給が停止される。従って、図8の(C)から図9の(C)に至るまでに大便器SBに供給される水が、大便器SBの封水部SWに供給されるリフィル水として用いられる。
このように、リフィル水供給段階開始前に、瞬間流量を減少させることによって、リフィル水供給段階において水を供給しても大便器SBの封水部SWに溜まらずに便器洗浄が行われることを抑制することができる。とくにサイフォン式大便器の場合、リフィル水供給段階における瞬間流量が大きすぎると、サイフォン減少が発生してしまい、便器洗浄が行われる可能性が高くなる。
このリフィル水は副流路からのみ供給されるため、弁体部材40の位置が変化しているにも関わらず、図9に示したように時刻t2以降の瞬間流量は経時的に変動しない。一次側内部流路20を流れる水の瞬間流量が変動しないため、一次側内部流路20(給水圧)も変動しない。
給水圧が低い場合と高い場合とを比較すると、時刻t2の直後における瞬間流量は、給水圧が低い場合は、給水圧が高い場合よりも小さくなっている。これは、瞬間流量が下記式の関係となることに起因する。
Q=Cv√Δp
Q:瞬間流量、Cv:流路抵抗の逆数、Δp:入口と出口の差圧
一方、時刻t2以降、主弁体42が主弁座面201に当接するまで(リフィル水の供給が停止するまで)に要する時間を比較すると、給水圧が低い場合の方が、給水圧が高い場合よりも長くなっている。これは、給水圧が低い場合は弁体部材40を押し下げる力が弱く、主弁体42が主弁座面201に当接するまで長時間を要するためである。
時刻t2以降、大便器に供給されるリフィル水の総量は、図9の(C)の瞬間流量のグラフの、時刻t2以降の時間軸と各線との間に挟まれた図形の面積で表される。図9の(C)で明らかなように、給水圧が低い場合と高い場合とを比較すると、かかる図形の面積はほぼ同じとなっている。従って、給水圧が低い場合も高い場合も、所定の許容範囲内で所定量(大便器SBのタイプによって異なる)のリフィル水を供給することができる。
上述したように、本実施形態の副弁桿48の副弁体482、副弁座465は、本願発明のリフィル水量調整手段として機能している。本実施形態では、このリフィル水量調整手段によって、大便器SBの封水を形成するためのリフィル水を大便器SBに供給するリフィル水供給段階(図8,9それぞれの(C)の時刻t2以降)において、一次側内部流路20からの給水圧に応じて弁体部材40の前進動作(主弁体42を主弁座面201に近づける動作)を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を大便器SBに供給することが可能なものとなっている。一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整することで、主弁体の主弁座に対する近接度合いや、定流量弁体の定流量弁座に対する近接度合いを調整することができ、供給されるリフィル水の量が給水圧の高低に依存して変動することを抑制することができる。
更に、本実施形態の定流量弁体44のスリット442、孔443、弁内空間445、孔444は、本願発明のリフィル水流量保持手段として機能している。本実施形態では、リフィル水流量保持手段によって、リフィル水供給段階において一次側内部流路20から供給されるリフィル水の瞬間流量が経時的に変動しない。このため、一次側内部流路20の圧力(給水圧)が経時的に変動せず、一定に保たれる。その結果、上記のリフィル水流量調整手段により、大便器SBに供給されるリフィル水の量を、給水圧に依存せず一定とすることができる。
続いて、本発明の第二実施形態であるフラッシュバルブSVaについて、図10を参照しながら説明する。フラッシュバルブSVaは、フラッシュバルブSVの定流量弁体44を定流量弁体44aに置換したものである。フラッシュバルブSVaはさらに、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面のうち、主弁座面201の内側において、一次側内部流路20から二次側内部流路30に連通する貫通孔210を有している。
定流量弁体44aの構造を、図11及び図12を参照しながら詳しく説明する。図11は、定流量弁体44aの側面図であって、図12は定流量弁体44aの斜視図である。定流量弁体44aの外側面441aには、均等な間隔で4つのスリット442aが形成されている。各スリット442aは、断面が矩形の有底な溝であり、外側面441aの下端から上端近傍まで形成されている。各スリット442aは側壁面447aを有している。側壁面447aは、傾斜状に形成された上部側壁面448a、上部側壁面448aの下方であって略鉛直に形成された中部側壁面449a、中部側壁面449aの下方であって傾斜状に形成された下部側壁面450a、451aとからなっている。このため、スリット442aの幅は下方に行くほど広くなっている。
図3及び図4に示した定流量弁体44と比較すると、定流量弁体44aにおいては孔443が形成されていない点が異なっている。また、スリット442aの上部においても、スリット442aの幅は下方に行くほど広くなっている。
再び図10に戻って説明する。定流量弁体44aの外側面441aは、二次側内部流路30の内側壁と近接して対抗している。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、水が二次側内部流路30へと流入するが、その流路は二つ存在することとなる。
一つ目の流路(主流路)は、二次側内部流路30の内側壁とスリット442aにより形成された空間を通過し、二次側内部流路30へと流入する流路である。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、一次側内部流路20からスリット442aに水が流入する。このとき、弁体部材40が上昇するほど、水はスリット442aの下部に対して流入することとなる。スリット442aは、下方に行くほど幅が広くなっているため、水の流路断面積は広くなり、流量を増やすように作用する。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向)し、その後下降(流出口31へ向かう方向、前進方向、閉弁方向)すると、水はスリット442aの上部に対して流入することとなる。その結果、水の流路断面積は狭くなり、流量を絞るように作用する。
二つ目の流路(副流路)は、一次側内部流路20から貫通孔210を通過して、二次側内部流路30に流入する流路である。この流路は、弁体部材40の上昇及び下降によって、流れの律速となる部分における流路断面積がほとんど変化しない。従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)した状態においては、常に一定の瞬間流量で水が流れることとなる。
フラッシュバルブSVaにおけるその他の構成は、フラッシュバルブSVと同じであるので、その説明を省略する。
続いて、フラッシュバルブSVaの動作について、図13を参照しながら説明する。図13は、図10に示すフラッシュバルブSVaの吐水動作を示す図である。図13の(A)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、副弁体482と副弁座465は当接しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463のみの流路断面積となる。
続いて、図13の(B)に示されるように、電磁弁82が開かれると、まず圧力の低いバイパス流路80と背圧室14内が連通される。すると、背圧室14内の水がバイパス流路80側へ流出する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。第二位置調整部材65は本体部10に固定されているため移動しない。バネ70は、移動しない第二位置調整部材65と第一位置調整部材60との間に配置されているため、第一位置調整部材60が押し下げられるとバネ70は縮んで反力を発生させる。第一位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、第一位置調整部材60が副背圧室12と背圧室14との差圧によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力、及び第一位置調整部材60と弁体部材40に掛かる摺動抵抗とのバランスによって定められる。
従って、給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられず、給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60は大きく押し下げられる。
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、主流路(スリット442aを通過する流路)を流れる流量と副流路(貫通孔210を通過する流路)を流れる流量とを合わせた流量であって、一次側内部流路20からスリット442aに水が流入する個所における、スリット442aの幅(流路断面積の大きさ)によって調整される。すなわち、弁体部材40の位置に応じて主流路を流れる流量のみが調整され、副流路を流れる流量は弁体部材40の位置によらず略一定である。
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整するものであるから、給水圧が低く比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、給水圧が高く比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。また、副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。
給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
図13の(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に水が溜まる。副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。従って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
図13の(D)に示されるように、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。弁体部材40が閉弁方向に押し下げられると、副弁体482と副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。副弁体482が形成されている副弁桿48の小径部483は、固定されている第二位置調整部材65に当接しているので、副弁体482の位置は給水圧の高低によらずに略一定なものとなる。従って、弁体部材40は、給水圧の高低によらずに所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられる。副弁体482と副弁座465が当接した後は、背圧室14内への流入は副孔463からのみになる。弁体部材40は、所定の下降基準まで強制的に移動するときよりも遅い速度で更に押し下げられる。その弁体部材40の動きに伴い、バネ50を介して副弁桿48も一体的に押し下げられる。
弁体部材40が所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられた状態においては、スリット442aのうち最も高い部分は、一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面よりも下に位置している。このため、一次側内部流路20からスリット442aに水が流入する流路(主流路)は略遮断された状態となっている。一方、一次側内部流路20から貫通孔210に流入する流路(副流路)は、主弁体面421が主弁座面201から離れている状態においては遮断されない。このため、弁体部材40が基準位置まで移動した以降においては、一次側内部流路20から二次側内部流路30に供給される水は、主流路を通過せず、前記副流路のみを通過することとなる。
その後、主弁体42が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、主流路及び副流路はいずれも閉じられた状態となるため、大便器SBに対する水の供給が停止される。従って、弁体部材40が基準位置まで移動してから、主弁体42が主弁座面201に当接するまでの間に大便器SBに供給される水が、大便器SBの封水部SWに供給されるリフィル水として用いられる。
このように、リフィル水供給段階開始前に、瞬間流量を減少させることによって、リフィル水供給段階において水を供給しても大便器SBの封水部SWに溜まらずに便器洗浄が行われることを抑制することができる。とくにサイフォン式大便器の場合、リフィル水供給段階における瞬間流量が大きすぎると、サイフォン減少が発生してしまい、便器洗浄が行われる可能性が高くなる。
このリフィル水は副流路からのみ供給されるため、弁体部材40の位置が変化しているにも関わらず、弁体部材40が基準位置まで移動した以降における瞬間流量は変動しない。一次側内部流路20を流れる水の瞬間流量が変動しないため、一次側内部流路20(給水圧)も変動しない。
以上のように、本実施形態の定流量弁体44aのスリット442a、及び貫通孔210は、本願発明のリフィル水流量保持手段として機能している。本実施形態では、リフィル水流量保持手段によって、リフィル水供給段階において一次側内部流路20から供給されるリフィル水の瞬間流量が経時的に変動しない。このため、一次側内部流路20の圧力(給水圧)が経時的に変動せず、一定に保たれる。その結果、本実施形態においても、大便器SBに供給されるリフィル水の量を、給水圧に依存せず一定とすることができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。