[第1実施形態]
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図15、図17から図19は、本発明に係る第1の実施の形態を示す図である。図1に示すように、本実施の形態のポンプシステムを含む作業車両である、掘削作業機10は、左右一対のクローラベルトを含む走行装置12と、走行装置12の中央部に配置された回転台14と、回転台14の中心部に設けられた旋回モータ16と、走行装置12の上側に、回転台14により、上下方向の旋回軸O(図2)を中心に旋回可能に取り付けた旋回部である上部構造18とを備える。なお、本発明のポンプシステムは、このような掘削作業機10に搭載して使用する構成に限定するものではなく、作動油等の作動流体により駆動するモータ等、種々のアクチュエータを含む装置に使用できる。例えば、2の油圧モータで左右の車輪を独立駆動し掘削作業機を機体後部に搭載する農用トラクタ等の作業車両に本発明に係るポンプシステムを搭載して使用することもできる。また、以下では、ポンプユニットが2つの油圧ポンプを備える場合を説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、1つまたは3つ以上の油圧ポンプを備えるポンプユニットに、本発明を適用することもできる。
図1に示すように、上部構造18は、上側に設けられて、蓋部により開口部を塞ぐ機器収容部20を含む。機器収容部20の内部に、駆動源であるエンジン22、ポンプユニット24、複数の方向制御弁26a,26b、及び複数の切換用パイロット弁28a,28bが設けられている。また、機器収容部20の上部外側に運転席30が設けられている。運転席30の前側及び左右片側または両側に、切換用パイロット弁と連係する操作レバーやペダル等の操作子32が設けられている。
上部構造18は、旋回モータ16により、走行装置12に対し上下方向の旋回軸O(図2)を中心に回動可能としている。また、走行装置12に備えられる左右のクローラベルト240,242は、それぞれに対応する2の走行用モータ34a、34b(図2)により車両の前進側または後進側に回転可能である。すなわち、左右のクローラベルトは、アクチュエータである、左右の走行用モータ34a、34bにより互いに独立して駆動される。また、走行装置12の後側(図1の右側)に排土板であるブレード36が取り付けられており、ブレード36は、ブレードシリンダ38(図2)の伸縮により上下に回動可能に、走行装置12に支持されている。
上部構造18の前部(図1の左部)に掘削部40が取り付けられている。掘削部40の下端部は、揺動支持部42に支持されている。図2に示すように、揺動支持部42は、上部構造18の前部に、上下方向(図2の裏表方向)の軸44を中心に回動可能である。揺動支持部42と上部構造18との間にスイングシリンダ46が設けられている。図1に示すように、揺動支持部42に、掘削部40のブーム48が、水平方向の軸50を中心に揺動可能に支持されている。
掘削部40は、ブーム48と、ブーム48の先端に上下回動可能に支持されたアーム52と、アーム52の先端に上下回動可能に支持されたバケット54とを含む。ブーム48の中間部と揺動支持部42との間にブームシリンダ56が取り付けられ、ブームシリンダ56の伸縮によりブーム48を上下回動可能としている。すなわち、ブームシリンダ56は、ブーム昇降用であって、後述する図16を参照するように、ブームロッド260が連結されたブームピストン262と、ブームピストン262の両側に設けられた伸張用圧力室264及び縮小用圧力室266とを含む。
ブーム48の中間部とアーム52の端部との間に、アームシリンダ58が取り付けられ、アームシリンダ58の伸縮によりアーム52を、ブーム48に対し回動可能としている。また、アーム52の端部とバケット54に連結したリンクとの間にバケットシリンダ60が取り付けられ、バケットシリンダ60の伸縮によりバケット54をアーム52に対し回動可能としている。図2に示すように、スイングシリンダ46の伸縮により、掘削部40(図1)全体を左右にスイング可能としている。ブームシリンダ56、アームシリンダ58、及びバケットシリンダ60のそれぞれは、掘削部40の昇降用シリンダである。
機器収容部20に、エンジン22と、エンジン冷却用のラジエータ64と、エンジン22に結合したポンプユニット24と、ポンプユニット24から作動流体である作動油を供給可能とする複数(本例の場合は8)の方向制御弁を含むバルブユニット66と、油タンク68と、エンジン用の燃料タンク(図示せず)とを配置している。ポンプユニット24は、エンジン22のフライホイール側に結合するギヤケース70と、切換用パイロット弁28a,28b(図1)に作動油を供給するためのパイロットポンプである、ギヤポンプ72とを含む。なお、上部構造18は、上記のような構成に限定するものではなく、例えば、上部構造の左右方向片側に運転席を設けるとともに、左右方向他側に油タンクやエンジン、ポンプユニット等を配置する機器収容部を設け、全体をボンネットにより被覆することもできる。
図3は、上記の掘削作業機10(図1)の油圧回路の全体図である。図3に示すように、エンジン22の出力軸に、ポンプユニット24を構成する第1油圧ポンプ74と、ギヤポンプ72とを連結しており、これら各ポンプ74,72をエンジン22により駆動可能としている。また、エンジン22の動力は、大径歯車76及び小径歯車78により構成する増速機構80により増速して、ポンプユニット24を構成する第2油圧ポンプ82に伝達可能とし、第2油圧ポンプ82もエンジン22により駆動可能としている。
第1油圧ポンプ74に、それぞれに対応するクローズドセンター型のアクチュエータ切換弁である方向制御弁26aを介して、それぞれアクチュエータであるバケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側の走行用モータ34aを並列接続している。また、第2油圧ポンプ82に、それぞれに対応するクローズドセンター型のアクチュエータ切換弁である方向制御弁26bを介して、それぞれアクチュエータであるアームシリンダ58、ブレードシリンダ38、旋回モータ16、及び右側の走行用モータ34bを並列接続している。
各方向制御弁26a,26bの左右端に設けた切換油室には、それぞれ切換用パイロット弁28a,28bの出力ポートが接続されている。また、各切換用パイロット弁28a,28bもクローズドセンター型であり各々の入力ポートは、ギヤポンプ72の吐出口に並列接続されている。ギヤポンプ72の吸入口は、油タンク68に接続されている。各切換用パイロット弁28a,28bは、運転席30(図1)の周辺部にそれぞれに対応して設けられる操作子32により機械的に切換可能としている。各切換用パイロット弁28a,28bの切換により、対応する方向制御弁26a,26bが油圧的に中立位置から作用位置へ切り換えられると、対応するシリンダ60,56,46,58,38の伸長・収縮及び走行用モータ34a,34bや旋回モータ16の回転方向が切り換えられる。また、旋回モータ16に対応する方向制御弁26bの切換により、旋回モータ16の回転方向が切り換えられる。例えば、旋回モータ16に方向制御弁26bを介して第2油圧ポンプ82の吐出口が接続されることで、上部構造18(図1)を所望の方向へ左右旋回させることができる。なお、操作子32は、十字方向にレバーを揺動操作可能とし、それぞれの方向の操作量で、異なる2つのアクチュエータの操作量の指示に対応させることもできる。方向制御弁26a,26bの作用位置にはアクチュエータへの吐出流量を徐々に増やす可変絞り弁が設けられる。したがって各切換用パイロット弁28a,28bの操作量に応じて方向制御弁26a,26bの開度が任意に調整される。
また、左右の走行用モータ34a,34bの可動斜板の、モータ軸に対する傾きである、傾転角度を同時に変えるために、1の増速切換弁84を設け、増速切換弁84を、ギヤポンプ72の吐出口に接続している。増速切換弁84は、各走行用モータ34a,34bの可動斜板の傾転角度を2段階で変化可能とする。例えば、増速切換弁84は、走行用モータ34a,34bの可動斜板に連結された容積変更アクチュエータ86の各々にギヤポンプ72から同時給排されるように切り替えることで、走行用モータ34a,34bの容積が大きくなる。一方、容積変更アクチュエータ86内の油を油タンク68へ排出するように切り換えることで、走行用モータ34a,34bの容積が小さくなる。このため、各走行用モータ34a,34bの速度変更が可能となる。増速切換弁84は、各走行用モータ34a,34bで共通に設けている。増速切換弁84は、運転席30(図1)周辺部に設けた操作子32のうち、2速切換レバーである操作子32により切換可能としている。
各走行用モータ34a,34bは、対応する油圧ポンプ74,82の吐出口に、方向制御弁26a,26bを介して接続している。方向制御弁26a,26bを油圧的に切り換える各切換用パイロット弁28a,28bは、運転席30(図1)の周辺部に設けた操作子32のうち、変速レバーとしての操作子32により、対応する油圧ポンプ74,82の吐出口を走行用モータ34a,34bの2つのポートのいずれに接続するかを切換可能とするとともに、走行用モータ34a,34bへの供給油量を変更可能としている。このため、対応する操作子32の操作によって、前進と後進とにそれぞれ対応する、各走行用モータ34a,34bの正転と逆転とが変更可能となるとともに、速度調節が可能となる。
左右の走行用モータ34a,34bに対応する切換用パイロット弁28a,28b切換用の操作子32によって給油量・給油方向を同じとすることで、作業車両が直進走行する。また、操作子32を独立に操作して給油量・給油方向を異ならせることで、各走行用モータ34a,34bの出力が異なり、掘削作業機10(図1)の旋回が可能となる。
本実施の形態では、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側走行用モータ34aに、第1油圧ポンプ74から作動油を供給可能とし、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38、旋回モータ16、及び右側走行用モータ34bに、第2油圧ポンプ82から作動油を供給可能としている。このように構成する理由は、基本的に同時使用する頻度が高いアクチュエータが同じ油圧ポンプにより駆動されるのを避けるようにして、異なるアクチュエータが同じ油圧ポンプにより駆動された場合の圧力の干渉が生じることを少なくするためである。すなわち、バケットシリンダ60、ブームシリンダ56、スイングシリンダ46、及び左側走行用モータ34aは同時使用される頻度が少ない。また、アームシリンダ58、ブレードシリンダ38、及び右側走行用モータ34bは同時使用される頻度が少ない。一方、旋回モータ16は、アームシリンダ58等の他のアクチュエータと同時に使用される頻度が高く、この場合の圧力干渉を少なくして、このアクチュエータ及び旋回モータ16を高い速度で作動させる必要があるとともに、円滑な動作が損なわれることを防止する必要がある。この目的のため、上記のように増速機構80を用いて、第2油圧ポンプ82の吐出量が、第1油圧ポンプ74の吐出量よりも多くなるようにしている。また、この構成により、旋回モータ16のみを専用に駆動させるための別のポンプを設ける必要がなくなる。
図4は、本実施の形態のポンプシステムを構成するポンプユニット24の油圧回路の基本構成を示す図である。ポンプユニット24は、第1可変容量ポンプである第1油圧ポンプ74と、第1油圧ポンプ74の容量を変化させるための可動斜板90と、第1斜板操作部であり第1サーボピストンユニットである第1サーボ機構92と、第1サーボ機構92に対し動力の伝達可能に接続される第1バランスピストン機構94とを含む。
また、ポンプユニット24は、第2可変容量ポンプである第2油圧ポンプ82と、第2油圧ポンプ82の容量を変化させるための可動斜板90と、第2斜板操作部であり第2サーボピストンユニットである第2サーボ機構96と、第2サーボ機構96に対し動力の伝達可能に接続される第2バランスピストン機構98とを含む。
各サーボ機構92,96は、後述するポンプケース108(図5、6、8参照)の本体の内壁に形成されるシリンダの内側に軸方向の摺動可能に設けられるサーボピストン100と、サーボピストン100の内側に相対的に軸方向の摺動可能に設けられる方向切り換え弁を構成するスプール102とを含む。スプール102とサーボピストン100との間に、スプール102を軸方向の一方向へ付勢する付勢部材であるバネ104を設けている。サーボピストン100に、可動斜板90に連結した操作ピン106を係合させ、サーボピストン100の移動により可動斜板90の傾転角度の変更を可能としている。
スプール102が一方向に移動すると、サーボピストン100片側の受圧室から作動油がポンプケース108(図5)内の油溜め110に排出されるとともに、ギヤポンプ72から圧力PPLで吐出され、圧力Pchに調整された作動油がサーボピストン100他側の受圧室に導入される。このため、サーボピストン100は、他側の受圧室内の圧力により押圧され、スプール102に追従して一方向に移動する。逆に、スプール102が他方向に移動すると、サーボピストン100他側の受圧室から作動油が油溜め110に排出されるとともに、ギヤポンプ72から圧力Pchで調整された作動油がサーボピストン100片側の受圧室に導入される。このため、サーボピストン100は、スプール102に追従して他方向に移動する。
また、各バランスピストン機構94,98は、後述するピストンケース180(図6,8参照)内に軸方向の摺動可能に設けられたピストン本体112を含む。また、各ピストン本体112の軸方向一端側の小径部に対向する部分に、対応する油圧ポンプ74,82の吐出圧である、各方向制御弁26a,26b(図3)の通過前の一次側圧力PP1(=P1),PP2(=P2)を導入している。また、各ピストン本体112の軸方向一端側の大径部に対向する部分に、ギヤポンプ72の吐出側に接続され、電気信号の入力により減圧量を調節可能な可変減圧弁114から、調節された圧力PCON1、PCON2を導入可能としている。
また、各ピストン本体112の軸方向他端側の小径部に対向する部分に、各方向制御弁26a,26b(図3)の通過後の二次側圧力、すなわち負荷側圧力(負荷圧)のうち、最高負荷圧PL1,PL2を導入している。例えば、複数のシャトル弁を含む回路部により、最高負荷圧を各バランスピストン機構94,98に導入可能とする。また、ピストン本体112の軸方向他端側の大径部に対向する部分に、ギヤポンプ72から圧力PPLで吐出され、固定減圧弁116で所望圧に調整された圧力ΔPLSを導入している。固定減圧弁116は、減圧量を予め設定した状態で一定に維持、すなわち固定されている。
そして、各バランスピストン機構94,98により、対応する方向制御弁26a,26bの通過前の一次側圧力PP1,PP2と最高負荷圧PL1,PL2との差圧である、ロードセンシング差圧(LS差圧)が予め設定した所望圧となるように、対応する油圧ポンプ74,82の可動斜板90のポンプ軸に対する傾きである、傾転角度を制御している。すなわち、ロードセンシング差圧の変化に応じて、対応するバランスピストン機構94,98によりサーボ機構92,96を操作し、対応する油圧ポンプ74,82の可動斜板90の傾転角度を変化させている。これについては、以下で詳しく説明する。
図3に戻って、各油圧ポンプ74,82は、初期位置において、可動斜板90(図4)をポンプ軸に対し直交する平面に対しわずかに(例えば2度程度)傾けた状態が維持されるようにしてスタンバイしている。このため、エンジン22駆動時には、対応するすべてのシリンダ等のアクチュエータを作動させず、対応する方向制御弁26a,26b及び走行切換弁88が中立位置で閉鎖状態(クローズ)にある場合でも、わずかに油圧ポンプ74,82から作動油が吐出される。これに伴って、油圧ポンプ74,82吐出側の油路にアンロード弁118をそれぞれ設けて、対応するすべての方向制御弁26a(または26b)及び走行切換弁88が中立位置にある場合に、アンロード弁118を開放して油タンク68に作動油が排出されるようにしている。なお、このアンロード弁118は、方向制御弁26a,26bを作用位置にしたときにその出力油圧を切換信号として閉鎖側に導入して、油タンク68への作動油排出を停止させるべく構成されている。
次に、図5から図14を用いて、ポンプユニット24の具体的構造を説明する。ポンプユニット24は、上記の図4に示した回路構成を有する。以下の説明では、図1から図4に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。
図5は、ポンプユニット24の横断断面図である。図6は、図5のA−A断面図であり、図7は、図6からポートブロックを取り出して、図6の左側から右側に見た図である。図8は、図6のB−B断面図であり、図9は、一部を省略して示す図6のC−C断面図である。図10は、図6の左側から右側に見た図であり、図11は、図6の上側から下側に見た図である。図12は、図6のD−D断面図であり、図13は、図6のE−E断面図である。図14は、回転角度検出用レバーの取付状態を示す、図11から回転角度センサ及びセンサ支持部材を省略した状態を示す図である。
図5に示すように、ポンプユニット24は、2のアキシャルピストン型の可変容量ポンプを有するもので、ポンプケース108と、ポンプケース108に収容するそれぞれ可変容量ポンプである、第1油圧ポンプ74及び第2油圧ポンプ82と、第1ポンプ軸120及び第2ポンプ軸122と、2の可動斜板90とを備える。また、図8に示すように、ポンプユニット24は、第1サーボ機構92及び第2サーボ機構96と、第1バランスピストン機構94及び第2バランスピストン機構98と、ギヤポンプ72(図5)とを備える。
図5に示すように、ポンプケース108は、一端(図5の右端)に開口部を有するケース本体124と、ケース本体124の開口部を塞ぐとともに第1油圧ポンプ74及び第2油圧ポンプ82に対する油給排を行うポートを形成したブロックである、ポートブロック126と、ポートブロック126のケース本体124と反対側に結合してフライホイールを包み込むラッパ(ホルン)形状のフライホイールハウジングを備えたギヤケース128とを含む。図6、図7に示すように、ポートブロック126の上面及び下面に、後述するキドニーポートに通じる複数のポートT1,T2,T3,T4を開口させている。また、図5に示すように、ケース本体124及びポートブロック126に第1ポンプ軸120及び第2ポンプ軸122の両端部を軸受により両持ち支持状態で、回転可能に支持している。図10に示すように、ギヤケース128のフライホイールハウジングにおいては、エンジン側端部の外周部周方向複数個所に孔部130を形成しており、各孔部130に挿通したボルト(図示せず)により、エンジン22(図2)のマウンティング・フランジに結合可能としている。なお、ギヤケース128とフライホイールハウジングとは本実施の形態においては一体的に形成したが、両部材を分離自在に結合したものであっても構わない。
また、図5に示すように、ギヤケース128に、エンジン22の出力軸に連結可能とする入力軸132を軸受により回転可能に支持してフライホイールハウジングの径方向略中央に位置させている。第1ポンプ軸120及び入力軸132は、同軸上に配置し、増速機構80を構成する大径歯車76の中心筒軸の内側にそれぞれスプライン係合させている。このため、第1ポンプ軸120及び入力軸132は、大径歯車76を介して、互いに同期した回転を可能に結合される。
また、増速機構80を構成する小径歯車78の中心筒軸の内側に第2ポンプ軸122をスプライン係合させ、大径歯車76及び小径歯車78を噛合させている。このため、第2油圧ポンプ82は、第1油圧ポンプ74に対し増速機構80のギヤ比により増速される。各歯車76,78の中心筒軸の両端部は、ポートブロック126及びギヤケース128に、それぞれ軸受により回転可能に支持されている。このように、2以上のポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、増速機構80等の複数の歯車76,78を、それぞれポンプケース108に対し両持ち支持するともに、各ポンプ軸120,122をそれぞれポンプケース108に対し両持ち支持し、対応するポンプ軸120,122及び歯車76,78同士を連結する構成を採用できる。このため、ポンプ軸120,122及び歯車76,78の強度及び耐久性の向上を図れ、油圧ポンプ74,82のメンテナンス作業が容易になる。
ポンプケース108内側にポンプ側空間である油溜め110を設けるとともに、増速機構80を配置したギヤケース128内側に歯車側空間134を設けて、油溜め110及び歯車側空間134を互いに独立させている。このように、2以上のポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、各ポンプ74,82に連動する歯車76,78を収容する部屋である歯車側空間134と、各ポンプ74,82を収容する部屋であるポンプ側空間とを、互いに油の流通不能に独立させる構成を採用できる。このため、各ポンプ74,82を駆動する動力の損失低減を図れる。油溜め110に油を充填させる一方、歯車側空間134に封入する油の量は少なくしている。例えば、図5で歯車側空間134に封入する油は、各歯車76,78の下端部が浸る程度としている。
また、図6、図9に示すように、ギヤケース128の歯車側空間134に面する支持壁内にはその軸受支持凹部128aを上下に貫く油孔136を形成している。各油孔136において、ギヤケース128の外面に開口する上下端部は、着脱可能なプラグ138により塞いでいる。各油孔136は、各歯車76,78の上下位置歯先周辺部と対向するように形成した横穴136aを介して歯車側空間134に通じさせている。このため、上側のプラグ138を取り外した状態で、各油孔136及び横穴136aを通じて歯車側空間134に対する油の給排が可能となる。
図5に示すように、エンジン22(図2)に連結するための入力軸132に、第1ポンプ軸120の一端面(図5の右端面)側に開口する軸方向孔140と、軸方向孔140に連通する、放射状に形成した径方向孔142とを設けている。径方向孔142の外端部は、軸受支持凹部128aに開口させている。このため、図9に示すように、歯車側空間134内の油は各歯車76,78が回転したときにギヤポンプの作用で横穴136aから油孔136を通じて軸受支持凹部128aに到達し、入力軸132の各孔140,142を通じて、図5に示す、第1ポンプ軸120の一端部外周面と大径歯車76内周面との間のスプライン部に供給することが可能となる。このため、スプライン部の耐久性をより有効に向上できる。なお、第2ポンプ軸122の小径歯車78側の一端面(図5の右端面)も同様に軸受支持凹部128aに開いているため、横穴136aと油孔136とを経て軸受支持凹部128a内に放出される油によって、第2ポンプ軸122の一端部外周面と小径歯車78内周面との間のスプライン部に十分に潤滑を施すことが可能となる。
次に、各油圧ポンプ74,82を説明する。各油圧ポンプ74,82は、ポンプ軸120,122にスプライン係合させることによりポンプ軸120,122と一体的に回転可能としたシリンダブロック154と、シリンダブロック154のシリンダに往復動可能に収容された複数のピストン156と、シリンダブロック154の内周面とポンプ軸120,122の外周面との間に設けたバネとを備える。バネは、ピンを介して、外周面が球面状のワッシャにより、各ピストン156の一端に支持したシューを可動斜板90側に押圧する機能を有する。
また、各油圧ポンプ74,82は、ポートブロック126の片面側(図5の左側)に面方向の位置ずれを防止するように支持した弁板144を備える。弁板144は、上下方向の両側でそれぞれポンプ軸120,122と平行方向に貫通した、それぞれ略円弧形の吸入ポート及び吐出ポートを有する。吸入ポートは、図7に示す車両搭載状態でポートブロック126の下側に形成した吸入油路U1,U2に通じさせ、吐出ポートは、図7に示すポートブロック126に上側に形成した吐出油路U3,U4に通じさせている。各油路U1,U2,U3,U4の一端には、ポートブロック126の片面(図7の表面)に開口するキドニーポートが設けられており、それぞれ弁板144の吸入ポートまたは吐出ポートに通じさせている。ポートブロック126の下面及び上面の幅方向(図7の左右方向)両側に、それぞれ第1油圧ポンプ74(図5)用または第2油圧ポンプ82(図5)用である、入口ポートT1,T2と出口ポートT3,T4とを、それぞれ開口させている。このような構成では、ポンプユニット24(図6)に対し、下側から作動油が吸入され、上側から作動油が排出される。このように、2以上のポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、出口ポートT3,T4を上向きに配置するように、作業車両に取り付けて使用するので、ポンプユニット24に対するバルブ配管の取付作業が容易に行える。
また、各入口ポートT1,T2に油を供給するために、図10に示すように、ポンプユニット24に供給配管146を接続可能としている。供給配管146のポンプユニット24接続側とは反対側の端部は、外部の油タンク68(図2)に接続される。また、供給配管146は、ポンプユニット24接続側で、本体部148と、本体部148の直径よりも小さくなった小径部150とに分岐させている。本体部148は、少なくともポンプユニット24接続側で略直線状に設けられている。小径部150の上端部は、第1油圧ポンプ74側の入口ポートT1に接続され、本体部148の上端部は、第2油圧ポンプ82側の入口ポートT2に接続されている。このように直径が大きい配管を第2油圧ポンプ82側に接続し、直径が小さい配管を第1油圧ポンプ74側に接続しているのは、増速機構80(図5)により、第2油圧ポンプ82の回転が第1油圧ポンプ74よりも増速され、第2油圧ポンプ82で第1油圧ポンプ74よりも単位時間当たりの吐出容量が大きくなり、必要な吸い込み油量に対応するようにするためである。なお、供給配管として、このように分岐型の構成を用いず、各入口ポートT1,T2に、互いに独立した内径寸法の異なる2の供給配管を接続することもできる。
このように、2以上の吐出容量が異なるポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、吐出容量が大きい油圧ポンプ82の供給配管である本体部148は略直線状に設けられ、本体部148から、吐出容量が小さい油圧ポンプ74の供給配管である小径部150を分岐させる構成を採用できる。このため、吐出容量大の油圧ポンプ82での吸い込み流量が、吐出容量小の油圧ポンプ74よりも大きくなるのにもかかわらず、供給配管146内でキャビテーションが発生するのを有効に防止できる。
また、図6、図7に示すように、吸入油路U1,U2のポートブロック126の弁板144側に開口する弓形開口部であるキドニーポートの中間部に、弁板144の下側に外れる位置まで伸ばした延長部152を設けている。延長部152の下端部は、ケース本体124の一端開口を通じて、油溜め110に通じさせる。このため、各油圧ポンプ74,82等のケース本体124内の要素から油が漏れ出して油溜め110に溜まるとしても延長部152を通じて、弁板144の吸入ポートから直ぐ吸入されるようにしている。このように、2以上のポンプ74,82を同時駆動するポンプユニット24において、複数のポンプ74,82から漏れ出た油が溜まるポンプケース108内に、各油圧ポンプ74,82の吸入ポートを連通させた構成を採用できる。このため、ポンプケース108内の余剰油を配管等を介してリザーバタンクに戻す必要がなくなり、配管を省略または少なくでき、部品点数の削減によるコスト低減を図れる。
また、ケース本体124の外面に、外接式ギヤポンプ72のケース158を固定し、ギヤポンプ72のギヤポンプ軸を、ポンプケース108の内側で第1ポンプ軸120と結合固定している。また、ギヤポンプ軸に、駆動歯車(またはインナーロータ)を固定している。ギヤポンプ72は、駆動歯車に従動歯車を噛合させるか、または、アウターロータをインナーロータに対し偏心させつつ回転させるトロコイドポンプ等とすることができる。なお、図示は省略するが、ギヤポンプ72のケース158の外面からギヤポンプ軸を突出させ、その突出させた部分に、他の装置に連結するための動力伝達部を設けることもできる。例えば、動力伝達部は、ギヤポンプ軸の端部に雄スプライン部または雌スプライン部を形成することにより構成できる。例えば、この動力伝達部に図示しない冷却ファンの回転軸を、スプライン結合することができる。
また、図5、図6、図8に示すように、各可動斜板90は、斜板操作部である対応するサーボ機構92,96により傾転角度を変更可能としている。各可動斜板90は、各ピストン156と反対側面である、断面円弧形の凸状面部160と、上側に向く上面部162とを有する。ケース本体124に固定の部材に凸状面部160と合致する断面円弧形の凹状面部を設けており、凹状面部に沿って凸状面部160を摺動可能としている。図8に示すように、上面部162に上下方向に操作ピン106を結合しており、操作ピン106を、サーボ機構92,96を構成するサーボピストン100に係合させている。
各サーボ機構92,96は、各ポンプ軸120,122に対し直交する方向に対し平行なシリンダ164内に軸方向の摺動可能に設けられた中空状のサーボピストン100と、サーボピストン100の内側に軸方向の摺動可能に設けられた方向切換弁である、スプール102と、スプール102にサーボピストン100に対し軸方向の一方向へ付勢する付勢部材であるバネ104とを備える。各サーボピストン100は、その外表面に、対応する可動斜板90に結合された操作ピン106と係合する係止部である係止溝166と、複数の内部油路とを含む。係止溝166は、シリンダ164の軸方向と直交する方向に設けられている。
図15は、ポンプユニット24において、サーボ機構92(96)を駆動するバランスピストン機構94(98)の作動を説明するための図である。図15に示すように、サーボピストン100に、第1油路168、第2油路170及び第3油路172を設けている。第1油路168は、ギヤポンプ72の吐出口に接続された油路に接続されるもので、所定の調整圧をピストン100外周面側からピストン100内周面側に導入する機能を有する。また、第2油路170は、ピストン100の内周面において、第1油路168のピストン100側開口端に対し、ピストン100の軸方向一側(図15の左側)にずれた位置に一端を開口させ、ピストン100の軸方向他端面(図15の右端面)に他端を開口させている。また、第3油路172は、ピストン100の内周面において、第1油路168のピストン100側開口端に対し、ピストンの軸方向他側(図15の右側)にずれた位置に一端を開口させ、ピストン100の軸方向一端面(図15の左端面)に他端を開口させている。
スプール102は、外周面に設けられ、第1油路168のピストン100内周面側開口端と、第2油路170または第3油路172の一端開口とに同時対向可能とする円環状の溝部174を含む。溝部174は、第1油路168及び第2油路170を連通させる状態と、第1油路168及び第3油路172を連通させる状態とを切り換える機能を有する。また、サーボ機構92,96は、対応するバランスピストン機構94,98を構成するピストン本体112とスプール102との間に設けられ、スプール102をピストン本体112の軸方向の移動に同期させて移動させる中間係止部材であるアーム部材176を備える。
また、スプール102は内側に油路238を設けており、油路238は、図6のケース本体124内の油溜め110に常に連通させている。油路238は、第1油路168及び第2油路170が溝部174を介して連通した状態で、第3油路172と連通し、第1油路168及び第3油路172が溝部174を介して連通した状態で、第2油路170と連通する。
図8に示すように、各サーボ機構92,96は、ケース本体124の上部の内部空間に収容しており、それぞれの内部空間の上部にアーム部材176の上端部を突出させるための開口部178を設けている。また、ケース本体124の上側にピストンケース180を、締結部材であるボルトにより結合固定している。そしてピストンケース180に、各サーボ機構92,96にそれぞれ対向する第1バランスピストン機構94及び第2バランスピストン機構98を収容している。各バランスピストン機構94,98は、対応するサーボ機構92,96のスプール102に対し、同期した移動を可能に接続され、バランスシリンダであるシリンダ182と、シリンダ182内での軸方向摺動可能に設けられたピストン本体112とを含む。各サーボ機構92,96のスプール102と、対応するピストン本体112との間にアーム部材176を設けている。
図6に示すように、アーム部材176は、上下方向の同軸上に設けた上軸184及び下軸186と、両軸184,186の間に結合したフランジ188と、フランジ188の先端部上面に上下方向に立設した支持軸190とを含む。図8に示すように、上軸184は、ピストン本体112の中間部全周に設けた係止溝192に係合させ、下軸186は、スプール102の中間部全周に設けた係止溝194に係合させている。この構成により、サーボ機構92,96のスプール102は、対応するバランスピストン機構94,98のピストン本体112の軸方向の移動に同期した移動を可能としている。
また、各バランスピストン機構94,98は、シリンダ182の軸方向一端側に設けられた第一受圧室196及び第四受圧室198と、シリンダ182の軸方向他端側に設けられた第二受圧室200及び第三受圧室202とを含む。第一受圧室196には、可変容量ポンプである第1、第2各油圧ポンプ74,82の吐出圧であって、アクチュエータ切換弁である方向制御弁26a,26b(図3)の通過前の一次側の作動油圧力PPが導入され、第二受圧室200には、方向制御弁26a,26bを通過後の最高負荷圧PL(以下、単に「負荷圧PL」という。)が導入される。また、第三受圧室202には、設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入される。設定ロードセンシング圧ΔPLSは、方向制御弁26a,26bの作用位置での定常状態で、方向制御弁26a,26bの通過前後に生じる作動流体差圧に相当し、予め設定される設定圧力である。図15に示すように、ギヤポンプ72の吐出圧PPLを調整して得られた圧力Pchを固定減圧弁116により所望値に減圧して、設定ロードセンシング圧ΔPLSが得られるようにしている。
また、図8に示すように、ピストンケース180の上面で、2のバランスピストン機構94,98同士の間の幅方向中間部の上側と対向する位置に、弁ケース204を固定している。図12に示すように、弁ケース204に、各バランスピストン機構94,98(図8)で共通の固定減圧弁116を設けている。固定減圧弁116は、シリンダと、シリンダに対し摺動可能に設けられた弁体206と、弁ケース204に固定のキャップ208と、キャップ208にねじ結合されたネジ軸210と、ネジ軸210により押圧される間座212と、弁体206と間座212との間に設けたバネ214とを備え、バネ214により弁体206を一方向に付勢している。弁ケース204の図示しない油路を通じてギヤポンプ72(図15)からの圧力Pchが弁体206を配置した空間に導入されている。圧力Pchは、バネ214の付勢力に応じて減圧され、油路を通じて各第三受圧室202(図8)に設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入されている。図12に示すように、固定減圧弁116による減圧量は、ネジ軸210のキャップ208内側への進入量を調整してバネ214の付勢力を変更することにより調整可能である。
図13に示すように、第四受圧室198は、対応する比例制御型の可変減圧弁114により、ギヤポンプ72(図15)の吐出圧が減圧された後の可変圧力を導入可能としている。すなわち、第四受圧室198は、任意に設定自在な可変圧力を導入される。通常時には、ギヤポンプ72から第四受圧室198に導入される作動油を遮断することができる。各可変減圧弁114は、比例ソレノイド216と、比例ソレノイド216により減圧量を制御される減圧弁本体218とを有し、比例ソレノイド216には、例えばエンジン22(図2)の負荷を表す信号が入力される。エンジン負荷が高い場合には、比例ソレノイド216は、減圧弁本体218に二次側の圧力PCONの減少量を低くし、圧力Pchに近い圧力が第四受圧室198に導入されるように減圧量を規制する。また、比例ソレノイド216は、ピストンケース180の水平方向に向いた側面から突出する状態で固定されている。また、比例ソレノイド216に、指令信号を入力するためのケーブル220が接続されている。
このように、2以上の可変容量ポンプを同時駆動するポンプユニット24において、作業車両に搭載する場合に、可動斜板90のそれぞれに連動させるサーボ機構92,96は、ケース本体124の上部に設けられ、バランスピストン機構94,98を収容する部材であるピストンケース180は、サーボ機構92,96の上側に設けられている。このため、機器収容部20(図1)に通例のごとく備えられたボンネットを開放することでメンテナンス作業を容易に行える。
また、図8に示すように、各可動斜板90の傾転角度を検知するために、各可動斜板90にそれぞれ対応する2のポテンショメータである回転角度センサ222を設けている。このために、ピストンケース180の上側で、各バランスピストン機構94,98の上側に対向する2個所位置に、センサ支持部材224を締結部材であるボルトにより結合固定している。各センサ支持部材224は、ピストンケース180と弁ケース204との上側に、それぞれ固定している。各センサ支持部材224の上側に回転角度センサ222を固定し、センサ軸226を上下方向に向けている。センサ軸226の下端部は、センサ支持部材224の下面から下側に突出させている。
一方、上記で説明したように、各サーボ機構92,96と、対応するバランスピストン機構94,98との間に係合させたアーム部材176は、支持軸190(図6)を有する。支持軸190は、ピストンケース180に上下方向に貫通した孔部を通じてピストンケース180の上側に突出させ、その突出させた部分に回転角度検出用レバーである、第1レバー228の中間部を結合している。また、第1レバー228の先端部にピンにより、回転角度検出用レバーである第2レバー230の一端部を揺動可能に支持している。第2レバー230の他端部は、センサ軸226の下端部に結合固定されている。このため、可動斜板90の傾転角度が変化し、スプール102がサーボピストン100に追従して移動すると、アーム部材176の上軸184及び下軸186が、図6の裏表方向に移動し、これに伴って、支持軸190がピストンケース180の孔部中心に回転し、第1、第2各レバー228,230がそれぞれ揺動するので、回転角度センサ222のセンサ軸226が回転する。したがって、回転角度センサ222により、可動斜板90の傾転角度に対応する回転角度が検出可能となる。ピンにより連結した各レバー228,230と、回転角度センサ222とにより、回転角度検出ユニットを構成している。このように、2以上の可変容量ポンプを同時駆動するポンプユニット24において、ポンプケース108またはポンプケース108に固定の部材に回転可能に支持された2以上の支持軸190を備え、各支持軸190は、対応する回転角度センサ222に連結されるとともに、対応する可動斜板90の動きと連動する回転を検出可能とする構成を採用できる。
また、図12、14に示すように、各第1レバー228の第2レバー230(図6)結合側とは反対側の端部(図12の左端部)に、水平方向に初期位置設定用のネジ軸232の端部を突き当てている。各ネジ軸232はストッパとして機能し、ピストンケース180の上面に固定の部材に立設した板部234に挿通させ、両側からナットを締め付けることで、板部234に対するネジ軸232の突出量を調整可能としている。このため、可動斜板90(図5)の初期位置である初期の傾転角度を任意に設定でき、操作レバーやペダル等の操作子32(図3)が中立位置にあってモータ等のアクチュエータ236(図15参照)の非作動時でも各油圧ポンプ74,82からわずかに作動油が吐出されるようにスタンバイしている。
図11に示す回転角度センサ222の検出値は、コントローラ304(図17)に入力する。コントローラ304は、可動斜板90(図5)の傾転角度が予め設定した閾値以上に大きくなったと判定すると、比例ソレノイド216に、減圧弁本体218による減圧量を小さくするように制御するための指令信号を出力する。これにより、第四受圧室198(図13)に大きな圧力が導入され、可動斜板90の傾転角度が所望の範囲内に維持されるように規制される。
また、コントローラ304には、エンジン22(図2)からエンジン回転数も入力され、エンジン22の負荷が予め設定した閾値以上に高くなったと判定すると、比例ソレノイド216に、減圧弁本体218による減圧量を小さくするように制御するための指令信号を出力する。この場合、可動斜板90の傾転角度を小さくし、エンジン22の負荷が小さくなるように、可動斜板90の傾転角度が規制される。
次に、図15を用いて本実施の形態により得られる効果を説明する。なお、図15は、ポンプ72,74に対するサーボ機構92(または96)、バランスピストン機構94(または98)、及びアクチュエータの接続関係を模式的に表したものである。また、モータのごときアクチュエータ236を1つ示しているが、これは説明の便宜上のためで、実際には、図3に示すようにギヤポンプ72からはサーボ機構92(または96)及びバランスピストン機構94(または98)に対応するバケットシリンダ60等のシリンダ、走行用モータ34a等のモータ等の並列接続された複数のアクチュエータに、作動油が供給されるようにしている。また、以下の説明では、第1油圧ポンプ74の可動斜板90の傾転角度を制御する場合を代表して説明するが、第2油圧ポンプ82の場合も同様である。図15に示すように、可動斜板90の傾転角度は、サーボ機構92とバランスピストン機構94と可変減圧弁114と固定減圧弁116とにより制御されている。
ギヤポンプ72の吐出圧PPLから調整された圧力Pchが、サーボピストン100の第1油路168に導入されている。また、バランスピストン機構94の第一受圧室196には、方向制御弁26aの通過前の一次側の作動油圧力PPが導入されている。また、第二受圧室200には、各方向制御弁26aを通過後の二次側の負荷圧PLが導入されている。また、第三受圧室202には、圧力Pchを固定減圧弁116により減圧して得られた設定ロードセンシング圧ΔPLSが導入されている。また、ピストン本体112の両側に加わる圧力が以下の条件で釣り合うようにしている。
(一次側圧力PP)=(設定ロードセンシング圧ΔPLS)+(負荷圧PL)
エンジン始動時に、可変減圧弁114による圧力PCONがゼロで、かつ、クローズドセンター型の方向制御弁26aが中立位置にある場合にポンプ72,74が駆動されると、図15に示すように第一受圧室196には一次側圧力PP(アンロード圧)が作用し、第三受圧室202には設定ロードセンシング圧ΔPLSが、それぞれ作用する。第二受圧室200に作用する負荷圧PLはゼロであるため、PP>ΔPLS+PLとなり、ピストン本体112が図示位置に移動する。ピストン本体112がこの位置にあるとき前述のアーム部材176(図8)、支持軸190、ネジ軸232(図12)によるストッパによってそれ以上の図15の紙面右方向への移動は阻止され、ピストン本体112と連係するサーボ機構92のスプール102にサーボピストン100が追従し、可動斜板90は油圧ポンプ74から吐出される油量を規定した最小値に維持するように傾転し待機する。
次に、方向制御弁26aを中立位置から外れた作用位置に保持する場合には第二受圧室200への負荷圧力PLが生じるものの、方向制御弁26aの通過前後の差圧に変動がないので、PP=ΔPLS+PLの関係が保たれてピストン本体112がその位置に維持され、油圧ポンプ74から一定の油量が吐出される。これに対して、方向制御弁26aの中立位置から作用位置へ至る切換の過渡的な状態では、それまで堰き止められていた油がアクチュエータ236へ流れ始めた瞬間、一次側圧力PPは低くなり、負荷圧PLの値に近づく方向に方向制御弁26aの通過前後の差圧が変化する。よって、PP<ΔPLS+PLの関係となる。よって、ピストン本体112に加わる図15の紙面右方向への推力と左方向への推力とのバランスが崩れて、ピストン本体112が、「吐出量大方向」である、図15の左方向へ移動する。これに伴って、サーボ機構92のスプール102及びサーボピストン100が図15の左方向へ移動する。そして、可動斜板90の傾転角度が大きくなり、第1油圧ポンプ74の吐出油量が増える。
その後、第1油圧ポンプ74の吐出油量が上昇し、時間経過とともに前記の可変絞り弁の通過前後で差圧の変動が解消し、PP=ΔPLS+PLの関係が成立した時点で、ピストン本体112の図15の紙面右方向への推力が左方向への推力とバランスしてピストン本体112の左方向への移動は停止する。この場合、サーボ機構92を介して可動斜板90の傾転角度がその位置に維持され、第1油圧ポンプ74の吐出油量が一定に維持され、所望のアクチュエータ作動油量が得られる。切換用パイロット弁28a,28bを中立位置にすればアンロード弁118が開放作動しピストン本体112が図15の位置に戻る。
このように、本実施の形態によれば、ロードセンシングにより、アクチュエータの作業負荷圧に応じて油圧ポンプ74,82の吐出油量を制御できるので、負荷に必要な油圧動力に対する流量を油圧ポンプ74,82から吐出させつつ、油圧ポンプ74,82から吐出される余剰流量の削減を図れる。このため、消費エネルギの低減を図れる。また、上記の特許文献3に記載された構成の場合と異なり、ポンプ吐出容量の制御を、バランスピストン機構94,98を構成する受圧室196,198,200,202の圧力変化のみにより行え、ロードセンシング弁に対応するレギュレータバルブのパイロット室側に設けたスプリングの伸張量にポンプの制御圧が影響されるという不都合が生じることがない。このため、アクチュエータの制御をより安定して行える。
さらに、斜板操作部である、サーボ機構を設けた従来品のポンプユニットの多くの部品の共通化を図れる。例えば、本実施の形態では、サーボ機構を備えるが、ロードセンシング機能を持たないポンプユニットの、多くの部品を使用して、本実施の形態のポンプユニット24を構成できる。このため、従来品にロードセンシング機能を持たせる構成をオプションとして装着してポンプユニット24を構成することができ、その場合に、油圧ポンプ74,82側の部品に大幅な変更を加えることがなく、コスト低減を図りやすい。この結果、ポンプユニット24によれば、サーボ機構を備えるが、ロードセンシング機能を持たないポンプユニットの、多くの部品を共通化できる構造で、消費エネルギの低減を安定して図れるとともに、油圧ポンプ74,82の吐出量をより安定して制御できる。
また、バランスピストン機構94,98は、さらにピストン本体112の軸方向一端側で前記第一受圧室196に隣接して設けられた第四受圧室198を含み、第四受圧室198には、可変減圧弁114によって任意に設定自在な可変圧力を導入する。これにより第四受圧室198からの推力は第一受圧室196からの推力に加担されピストン本体112の図15の紙面右方向への移動を強め、前記第二、第三受圧室200,202からの図15の紙面左方向への推力の抵抗となる。このため、例えば、本実施の形態のように、切換用パイロット弁28a,28bが作用位置に操作され油圧ポンプ74,82が所望の油量を吐出しているときに、ポンプユニット24を駆動するエンジン22の負荷が所定値に達したり可動斜板90が所定の傾転角度に達した場合など、ポンプ吐出油量をそれ以上に増やす必要がない、或いは、油量を現状から低減させる必要が生じたときには、それぞれ外部信号に応じて可変減圧弁114の二次側可変圧力であり、ギヤポンプ72からの吐出後で可変減圧弁114通過後の比例弁二次側圧力PCON(0≦Pcon≦Pch)を制御する。このため、油圧ポンプ74,82の最大吐出量設定や、エンジン22負荷制御に有効に利用できる。したがって、ポンプユニット24を使用する装置の高性能化を有効に図れる。
また、可動斜板90の操作部として上記のようなサーボ機構92,96を設けているので、バランスピストン機構94,98がこのサーボピストン100を駆動する。このため可動斜板90の操作力を低減できるとともに、可動斜板90の傾転角度をより安定して制御できる。なお、可動斜板90の操作部である、サーボピストンユニットは、上記のようなサーボ機構92,96に限定するものではなく、油圧を用いて駆動されるサーボピストンユニットであれば、種々の構造を採用できる。例えば、サーボピストンユニットとして、各ポンプ軸120,122と平行なシリンダを設け、シリンダに軸方向の摺動可能にサーボピストンをポンプケースに設け、このサーボピストンと可動斜板90とを操作ピンを介して連結し、サーボピストンを軸方向に変位させることにより可動斜板90の傾転角度を変更可能とする構成を採用することもできる。
なお、本実施の形態では、ポンプユニット24は、エンジン22側より順に、ギヤケース128、ポートブロック126、ケース本体124が配置されるように、互いにボルト等により結合されている。ただし、その配置順は、自由に変更することができる。また、ギヤケース128は、エンジンマウンティングフランジと呼ばれるエンジン22結合用フランジを分離可能に結合させることもできる。この場合、エンジン22の種類に応じて、エンジン結合用フランジのみを交換することで、部品を大きく変更することなく、種々のエンジン22に取り付けることが可能となる。
また、図示は省略するが、本実施の形態において、サーボ機構92,96を構成するシリンダ164を有するポンプケース108のカバー108a(図8)に、内外を貫通させる孔を形成し、この貫通孔は油圧ポンプ74,82の正常稼動時には油密的に封鎖しておき、バランスピストン機構94,98の故障時に、緊急的に貫通孔にボルトを進退自在に装着するようにしてもよい。ボルトの先端部を、サーボビストン100の軸方向端面に刻設したネジ孔に螺着させるとカバー108a方向に引き出すことができる。したがって可動斜板90の傾転角度が大きくなるように、サーボピストン100を手動で移動可能とすることもできる。このように、2以上の可変容量ポンプを同時駆動するポンプユニット24において、可動斜板90の動きと連動するサーボピストン100のそれぞれを、バランスピストン機構94,98で操作可能とする構成において、サーボピストン100を手動でポンプ作用方向に移動可能とし、その状態を維持するボルト等の操作手段を設ける構成を採用することもできる。この構成を採用することで、バランスピストン機構94,98を含む装置が故障した場合でも、走行用モータ34a,34b等のアクチュエータを作動させることができ、掘削作業機10等の作業車両を、修理工場まで自走可能になる等、フェイルセーフを実現できる。なお、図15に示す例では、切換用パイロット弁28a(28b)の作動圧設定用のリリーフ弁243を設けているが、このリリーフ弁243は場合により省略することもできる。
本実施形態のポンプシステムの基本構成は、上記で説明したとおりであるが、本実施形態の場合、さらに、可動斜板90のハンチングを抑制できる構成で斜板制御の応答性を向上するために、後述する特別な構成を採用している。まず、この特別な構成を考え付いた理由を、比較例を示す図16を用いて説明する。
図16は、ポンプシステムの比較例において、可動斜板のハンチング抑制のためのオリフィスを設ける場合の不都合を説明するための図である。図16の比較例の基本構成自体は、上記の図1〜15の本実施形態の基本構成と同様であり、以下の図面では図1〜15に示した要素と同一の要素または対応する要素には同一の符号を付して説明する。図16の比較例では、可変容量ポンプである第1油圧ポンプ74の吐出口をクローズドセンター型のアクチュエータ切換弁である方向制御弁26aを介して、アクチュエータであるブームシリンダ56の伸張用圧力室264と縮小用圧力室266とのいずれか1つに接続可能としている。方向制御弁26aの切換により第1油圧ポンプ74の吐出口と伸張用圧力室264とが接続される場合には、縮小用圧力室266が方向制御弁26aを介して油タンク68(図2)に接続される。逆に方向制御弁26aの切換により第1油圧ポンプ74の吐出口と縮小用圧力室266とが接続される場合には、伸張用圧力室264が方向制御弁26aを介して油タンク68に接続される。伸張用圧力室264に第1油圧ポンプ74が接続されるとブームシリンダ56が伸長する。逆に、縮小用圧力室266に第1油圧ポンプ74が接続されるとブームシリンダ56が収縮する。
また、ポンプユニット24は、可動斜板90(図15等参照)の操作部であるサーボピストンユニットである第1サーボ機構92と、第1バランスピストン機構94とを備える。第1サーボ機構92は、可動斜板90に連結されたサーボピストン100と、サーボピストン100の内側に配置されたスプール102(図15等参照)とを含む。第1バランスピストン機構94は、バランスシリンダであるシリンダ182と、シリンダ182内で軸方向摺動可能に設けられるピストン本体112とを含む。ピストン本体112は、スプール102に対しアーム部材176を介して連結されている。シリンダ182は、軸方向一端側に設けられた第一受圧室196及び第四受圧室198と、軸方向他端側に設けられた第二受圧室200及び第三受圧室202とを有する。
第一受圧室196は、第1油圧ポンプ74からの吐出後で方向制御弁26aの通過前の一次側の作動油圧力(一次側圧力)PPを導入される。第二受圧室200は、方向制御弁26aを通過後の二次側の作動油圧力である負荷圧PLを導入される。第三受圧室202は、方向制御弁26aの作用位置での定常状態で、方向制御弁26aの通過前後に生じる作動油差圧に相当し、予め設定される設定圧力である設定ロードセンシング圧ΔPLSを、固定容量ポンプであるギヤポンプ72(図15等参照)から固定減圧弁116を介して導入される。第四受圧室198は、ギヤポンプ72から比例制御弁である可変減圧弁114を介して任意に設定自在な可変圧力であり、可変減圧弁114の二次側圧力である比例弁二次側圧力PCONを導入される。
また、ポンプシステムは、方向制御弁26aの二次側と第二受圧室200とを接続する接続流路268と、接続流路268から分岐して流体貯留部である油溜め110に接続される分岐流路270と、逆止弁272とを含む。接続流路268の一部は、ポンプユニット24に設けられている。接続流路268の中間部(例えば接続流路268において、ポンプユニット24の内部に設けられる部分)にオリフィス274が設けられている。例えばオリフィス274は、ポンプケース108を構成するピストンケース180(図8等)に装着されている。逆止弁272は、分岐流路270に設けられ、油溜め110側から第二受圧室200側への作動油の流入を許容するが、図示しないバネの付勢力により第二受圧室200側から油溜め110側への作動油の排出を阻止する機能を有する。このような比較例では方向制御弁26aの二次側と第二受圧室200との間にオリフィス274が設けられる。このため、第二受圧室200内の作動油の圧力の変動を抑制して可動斜板90の振れであるハンチングを抑制できる。なお、図16の構成で、ブームシリンダ56は他のアクチュエータ(例えばアームシリンダ58またはバケットシリンダ60(図3参照))と置き換えることができ、方向制御弁26aは別の制御弁26b(図3参照)と置き換えることもできる。また、第1油圧ポンプ74は第2油圧ポンプ82(図3参照)と置き換えることもでき、第1バランスピストン機構94は第2バランスピストン機構98(図8参照)と置き換えることもできる。また、第1サーボ機構92は第2サーボ機構96(図8参照)と置き換えることもできる。以下の説明でも同様である。
これに対して、このような比較例の構成で、アクチュエータ、例えばブームシリンダ56を伸長または収縮させているときに、エンジン負荷が大きくなる等の理由により第1油圧ポンプ74の吐出量を小さくするために、可動斜板90の傾転角度を初期位置である初期の傾転角度(以下、「中立位置」という。)に向かう方向に戻す、すなわちサーボピストン100が図16の斜板スタンバイ側である図16の右側に向かう方向に戻す制御を行う場合がある。ただし、この場合、負荷圧PLを導入される第二受圧室200内の作動油がオリフィス274の存在により大部分が閉じ込められる可能性があり、可動斜板90の角度を迅速に中立位置に戻すことができない可能性がある。このように比較例では、可動斜板90のハンチングを抑制できる構成で斜板制御の応答性を向上する面から改良の余地がある。
これに対して、本実施形態は、図17に示す構成を採用した。図17は、本実施形態のポンプシステムを、油圧回路を用いて示す図である。なお、以下の説明では、上記の図16の比較例と同一の要素または対応する要素には同一の符号を付して説明する。図17に示すように、本実施形態のポンプシステムでは、上記の比較例での改良点を改良するために、上記の比較例で設けられていた逆止弁272の代わりに、パイロット作動式逆止弁であるパイロット逆止弁276がポンプユニット24に設けられている。パイロット逆止弁276は、上記の比較例と同様に、接続流路268から分岐して油溜め110に接続される分岐流路270に設けられている。パイロット逆止弁276の基本的な機能は、比較例の逆止弁272で説明したとおりである。より詳しくは、図18に示すように、パイロット逆止弁276は、ポンプユニット24に設けられた分岐流路270の中間部に交差する方向に設けられた通路278内の軸方向片側(図18の右側)に固定された筒状の弁座部材280と弁座部材280の内側に摺動自在に配置された弁体282と、弁体282を弁座部材280に設けられた弁座に押し付けるバネ284とを含む。弁座部材280を構成する筒部の複数個所に内外を貫通させる孔が形成されている。このため、通常時に弁体282は弁座に押し付けられるが、弁座部材280の外周面と通路278の外周面との間を通じて分岐流路270の流れが遮断されることはない。また、通路278の他側(図18の左側)に油溜め110と通じる排出路288が形成されている。また、通路278の他側に柱状の変位部材290が軸方向の摺動可能に配置され、変位部材290の先端に設けられた軸部292の先端が弁体282と対向している。また、通路278の他端部(図18の左端部)にパイロット流路296の一端が接続されている。
また、図17に示すように、ポンプユニット24に、第四受圧室198に導入される圧力である、可変減圧弁114の二次側圧力PCONが予め設定された所定圧以上のときに上記のパイロット逆止弁276を強制的に開弁する開放手段294が設けられている。開放手段294は、可変減圧弁114の二次側と上記のパイロット流路296とを接続する開放用流路298を含む。開放用流路298の一端は可変減圧弁114の二次側に接続され、開放用流路298の他端はパイロット流路296に接続されている。このようなパイロット逆止弁276は、バネ284(図18)により設定される所定圧以上のパイロット圧が開放用流路298に導入されることによりバネ力に抗して開弁される機能を有する。また、第1油圧ポンプ74と、バランスピストン機構94と、オリフィス274と、パイロット逆止弁276とは、ポンプケース108の内部に設けられてポンプユニット24を形成している。なお、バランスピストン機構94と、オリフィス274と、パイロット逆止弁276とを、ポンプユニット24以外に設けることもでき、また、第1油圧ポンプ74及び第2油圧ポンプ82(図3)を含むポンプユニットに、バランスピストン機構94と、オリフィス274と、パイロット逆止弁276との少なくともいずれか1つ以上をポンプケースの内部に設けてポンプユニットを形成することもできる。
このようなポンプシステムによれば、ブームシリンダ56を伸張または収縮させるべく第1油圧ポンプ74からブームシリンダ56に大きな吐出圧が吐出されている場合に、エンジン負荷が予め設定した所定の閾値以上となる等の理由で、斜板角を中立位置に戻すべく可変減圧弁114の二次側圧力PCONを大きくした場合に、パイロット圧が予め設定した所定圧以上となることでパイロット逆止弁276を強制的に開弁することができる。このため、オリフィス274の存在にかかわらず第二受圧室200内の作動油をパイロット逆止弁276を介して迅速に油溜め110に排出し、第二受圧室200内の油の閉じこもりを防止し、第二受圧室200内の圧力を低下させることができる。このため、可変減圧弁114の二次側圧力PCONによる可動斜板90の傾斜角を中立位置方向に戻すための制御時に、サーボピストン100を図17の右側に迅速に移動させて可動斜板90の傾斜角を中立位置に戻すことができる。したがって、可動斜板90のハンチングを抑制できる構成で斜板制御の応答性を向上できる。
また、本実施形態のポンプシステムは、図19で説明するように掘削作業機10のブーム48の上げ下げでバケット54を用いて杭打ち作業を容易に行えるようにしている。図19は、本実施形態により得られる効果を説明するための掘削作業機の作業の様子を示す図である。図19に示すように、本実施形態のポンプシステムを搭載した掘削作業機10では、地面に杭300を打ち込む杭打ち作業を容易に行うこともできる。すなわち、図17に戻って、昇降用シリンダであるブームシリンダ56に対応する操作子32(図3)である操作子レバー(例えばジョイスティック等)302では上部にオンとオフとの間の切換が可能であり、オンにより杭打ち作業を行う杭打ちモードを指示する指示具であり、オン動作により可動斜板90の傾転角を最大角度に固定することを指示可能な指示具であるモードスイッチMが設けられている。すなわちモードスイッチMは、ユーザから、ブーム48を含む掘削部40(図1)の上げ下げを連続して繰り返す指示入力として、杭打ちモードを指示するオン動作があったときに、斜板角最大固定指示信号をポンプシステムに設けられた制御部であるコントローラ304に出力する。コントローラ304は、例えばCPU等を含む制御回路、メモリ等の記憶部等を有するマイクロコンピュータを含む。
また、第1油圧ポンプ74の吐出口と第1バランスピストン機構94の第一受圧室196とを接続する作動油流路306の中間位置に切換弁である方向制御弁308が設けられている。方向制御弁308は、第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との間に接続され、第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との間の接続及び閉鎖を切り換え可能としている。モードスイッチMがオンされると、コントローラ304は、方向制御弁308により、第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との間の接続が閉鎖されるように方向制御弁308の切り換えを制御する。方向制御弁308がこのように閉鎖されるように制御されるとき、第一受圧室196は方向制御弁308を介して油溜まり110に接続される。モードスイッチMのオンにより出力される斜板角最大固定指示信号は、可動斜板90の傾斜角を最大角度に固定することを表す。コントローラ304は、斜板固定指示信号が入力されたときに、方向制御弁308が第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との間の接続を閉鎖するように方向制御弁308を制御する。このため、モードスイッチMがオンされたときに、コントローラ304は、可動斜板90の傾斜角である傾転角を最大角度に維持するように方向制御弁308を制御する。
ユーザは、モードスイッチMをオンした状態で、ブームシリンダ56に対応する操作子レバー302を握ったまま前後等の所定方向に繰り返し往復揺動させることで、ブーム48(図19)の昇降動作を繰り返し行う。このため、図19に示すように、バケット54の下端を杭300の上端に押し付けた状態でブーム48の上げ下げが交互に行われバケット54を用いて杭打ち作業を行うことができる。
このような構成を有する本実施形態によれば、杭打ちモードがモードスイッチMにより指示されたときに、第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との接続が遮断され、かつ、第一受圧室196が油溜まりに接続されるので、第1油圧ポンプ74の一次側圧力PPの第一受圧室196への導入が遮断され、第三受圧室202等の作動油圧力によりサーボピストン100は常に斜板最大傾斜角側、すなわち、図17の左側に移動した状態が維持される。このため、可動斜板90は強制的に最大吐出側へ傾転角が変化し、その状態が維持される。このため、第1油圧ポンプ74を固定容量ポンプとして使用可能となる。したがって、第1油圧ポンプ74から最大流量の作動油がブームシリンダ56に対応する方向制御弁26aへ放出し続けられ、操作子レバー302の往復揺動動作に応じて方向制御弁26aのポート切換動作のみにより、俊敏な杭打ち動作が可能となる。
これに対して、本実施形態と異なり、第1油圧ポンプ74の吐出口と第1バランスピストン機構94の第一受圧室196とを接続する作動油流路306に方向制御弁308等の切換弁が設けられない構成では、操作子レバー302を用いて杭打ち動作を行う場合でも、同時に第1バランスピストン機構94を用いて、ブームシリンダ56等のアクチュエータの作業負荷圧に応じて第1油圧ポンプ74の吐出流量を制御するロードセンシング制御が行われる。このため、操作子レバー302の動作により方向制御弁26aへ出力される例えば2Hz等の周波数を有するポート切換のための制御信号に斜板動作が連動せず、第1油圧ポンプ74の適切な吐出流量を確保できず、掘削部40を用いた杭打ち動作が鈍くなる可能性がある。例えば、ブーム48の揚力のみでしか杭300を打てず、車体の固有振動数を有効に利用できない可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、このような不都合をなくせる。
なお、本実施形態で、第1油圧ポンプ74の吐出口と第一受圧室196との間に設けられた方向制御弁308、及びブーム48の上げ下げを指示するモードスイッチMを省略することもできる。また、上記では、ブームシリンダ56を昇降用シリンダとして、ブーム昇降用の操作子レバー302の操作でブーム48を昇降させ、杭打ち動作をする場合を説明した。ただし、アームシリンダ58を昇降用シリンダとして、アーム昇降用の操作子レバーでアーム52を昇降させ、バケット54の下端で杭打ち動作をさせることもできる。この場合も、ブーム48を昇降させる場合と同様に、対応する操作子レバーにモードスイッチを設けて、モードスイッチからコントローラ304へ、可動斜板90の傾斜角を最大角度に固定することを指示する斜板角最大固定指示信号が入力されたときにコントローラ304は、対応する第一受圧室196に接続される方向制御弁を閉鎖するように制御する。また、バケットシリンダ60を昇降用シリンダとして、バケット昇降用の操作子レバーでバケット54を昇降させ、バケット54の下端で杭打ち動作をさせることもできる。この場合も、ブーム48を昇降させる場合と同様に、対応する操作子レバーにモードスイッチを設けて、モードスイッチからコントローラ304へ斜板角最大固定指示信号が入力されたときにコントローラ304は、対応する第一受圧室196に接続される方向制御弁を閉鎖するように制御する。なお、杭打ちモードを指示する指示具は、上記のモードスイッチMに限定するものではなく、例えば杭打ちモードを指示する押しボタンを有するモード指示装置等の種々の構成を採用することもできる。
また、上記では杭打ちモードを指示するモードスイッチMを設けた場合を説明したが、いずれかのシリンダ56(または58または60)を用いて杭打ちまたは杭打ち以外で、掘削部40(図1)の上げ下げを連続して繰り返す指示入力をオン動作として入力可能なモードスイッチを設けてもよい。例えば、バケット54にこびりついた泥を落とすためにバケット54を微動させる場合もあり、その場合にバケット昇降動作を行うことを指示するモードスイッチを設けて、そのモードスイッチがオンされたときに、モードスイッチはコントローラ304へ斜板角最大固定指示信号を入力するように構成することもできる。
[第2実施形態]
図20は、本発明に係る第2実施形態のポンプシステムの主要部を示す図である。本実施形態では、上記の第1実施形態において、逆止弁をパイロット逆止弁276(図17)とせず、その代わりに、比例ソレノイド式逆止弁であるソレノイド逆止弁310が分岐流路に設けられている。逆止弁310の基本構成は、上記のパイロット逆止弁276(図18)と同様である。ソレノイド逆止弁310は、弁体282にソレノイド312のプランジャであるソレノイドピン314の先端を対向させ、ソレノイドのコイル(図示せず)への通電によりソレノイドピン314が変位することで弁体282を押圧し、ソレノイド逆止弁310が開放される。また、ポンプユニット24に、可変減圧弁114の二次側圧力であり、第二受圧室200(図17参照)に導入される比例二次側圧力PCONを検出する圧力検出部である圧力センサ316が設けられている。圧力センサ316の検出信号は信号線を介してコントローラ304へ入力されている。コントローラ304は、圧力センサ316の検出圧が予め設定された所定圧以上のときにソレノイド312への通電により、すなわちソレノイド312へ制御電流を入力することにより、ソレノイド逆止弁310を開弁するようにソレノイド逆止弁310を制御する。
このような本実施形態の場合も、可変減圧弁114の二次側圧力PCONによる可動斜板90(図17参照)の傾転角を中立位置方向に戻すための制御時に、サーボピストン100を上記の図17の右側に迅速に移動させて可動斜板90の傾転角を中立位置に戻すことができる。このため、可動斜板90のハンチングを抑制できる構成で斜板制御の応答性を向上できる。その他の構成及び作用は、上記の第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
なお、本発明に係る第3実施形態として、上記の第1実施形態または第2実施形態における、ポンプシステムを、比例弁二次側圧力(PCON)が予め設定された所定圧以上のときにパイロット逆止弁276(図17)またはソレノイド逆止弁310(図20)を強制的に開弁する開放手段を備えない構成とすることもできる。その代わりに、本実施形態では、コントローラ304がエンジン負荷の増大等、予め設定した所定条件の成立時に、アクチュエータ切換弁である方向制御弁26a(または26b)の開口面積を減少させ、方向制御弁26a(または26b)の二次側圧力を低下させるように制御するとともに、ソレノイド逆止弁310等の、分岐流路270(図17)に設けられた逆止弁を強制的に開弁するように制御する構成を備えるようにする。この場合も、上記の各実施形態と同様に、可動斜板90のハンチングを抑制できる構成で斜板制御の応答性を向上できる。その他の構成及び作用は、上記の第1実施形態または第2実施形態と同様である。