JP5869930B2 - コンクリート構造物の補強構造及びコンクリート構造物 - Google Patents
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(a)前記被取付構造体から垂直方向に前記コンクリート構造物に沿って所定の距離とされる前記コンクリート構造物の補強領域に、前記コンクリート構造物に沿って配置された少なくとも一つの補強具を有している補強手段を設置し、
(b)前記補強手段の前記補強具は、
細長形状の連続繊維体とされる補強部材であって、その一端が前記コンクリート構造物の補強領域の前記被取付構造体とは反対側の端部に一体的に固定された補強部材と、
前記補強部材の前記一端とは反対側の他端が接続された接続部材と、
一端に設けた連結部が前記接続部材に接続され、他端に設けた固定部が前記被取付構造体に固定される固定部材であって、前記連結部と前記固定部の間に塑性変形部を有した塑性変形可能な前記固定部材と、
を有し、
(c)前記固定部材の前記塑性変形部は、前記コンクリート構造物に曲げ荷重が負荷された時、前記補強部材より先に降伏し、前記塑性変形部の伸びにより前記コンクリート構造物の靭性を向上させる、ことを特徴とするコンクリート構造物の補強構造が提供される。
図1(a)、(b)に、本発明に従ってコンクリート構造物基部13を補強手段30にて補強した補強構造100と、この補強構造100により補強されたコンクリート構造物12の一例を示す。本実施例にて、コンクリート構造物12は、被取付構造体としての基礎構造体(フーチング部)11に対して垂直方向に延在して構築されたコンクリート構造物である橋脚とされる。橋脚12は、本実施例では、長手方向が上下方向とされ、長手方向に直交する横断面が矩形断面を有した構造とされる。
0.1D2≦Lp≦0.5D2
とされる。従って、本発明によれば、補強領域12Aは、橋脚12の長手方向(即ち、本実施例にて上下方向)に沿って、長さ(L1)が、L1≧Lp、とされる。当然、L1≦L0(橋脚の全長)である。
図4に、本発明に係る補強構造100をコンクリート構造物12に実施する施工フローを示す。図4、及び、図1、図2-1、図2-2を参照して、本発明に係る補強構造100によるコンクリート構造物12の補強方法の一実施例について説明する。
先ず、図4(a)、図1に示すように、本実施例では橋脚とされるコンクリート構造物12の少なくとも、定着具20が取り付けられる領域(幅w21、長さh21)に対して、コンクリート構造物表面12aが適度な粗度を持つ面となるように下地処理をする。つまり、構造物12の躯体表層をディスクサンダーでダイヤモンドカップを用いて除去、研磨し、付着した研磨分をエアブローなどで除去する。勿論、ディスクサンダーの代わりに、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどを使用することも可能である。
図4(b)、及び、図1、図2-1に示すように、所定の長さにカットされた一枚の、或いは、所定枚数を重ね合わせた補強部材41としてのアラミドベルトの上端部41aを、定着鋼板21の片面に、例えばエポキシ樹脂接着剤とされる接着剤を塗布して巻回し、定着鋼板21を躯体アンカー22に取り付ける。その後、ナット22aを締め付け、コンクリート構造物表面12aに密着させる。これにより、アラミドベルト41の上端41aがコンクリート構造物12の表面12aに一体的に取り付けられる。
次いで、図4(c)に示すように、補強部材41と定着鋼板21の接着剤樹脂、及び、アンカー部材52のアンカー穴15内の接着剤樹脂が完全に硬化するまで養生する。
つまり、図5(変更実施例1)に示すように、必要に応じて、図14を参照して説明した特許文献3に記載するように、連続繊維ロープ10を構造物12である橋脚の外周囲に上端より下方端へと、また、下方端から上方端へと、人力で螺旋状に巻き付け、連続繊維ロープ10の自由両端部を結び付ける。この時、連続繊維ロープ10は、補強構造100の領域においては定着鋼板20部分を除いて、補強構造100とコンクリート構造物12との隙間を利用して、補強構造100の内側にてコンクリート構造物12に直接巻き付ける。連続繊維ロープ10の螺旋状巻き付けのピッチは、12.5〜100mmの間隔とすることができ、本実施例では、25mmとした。必要に応じて、連続繊維ロープ10を巻付けた橋脚12を現場打ちコンクリートにより被覆することもできる。
図6(a)、(b)に、実施例1で説明した本発明の補強構造100により補強されたコンクリート構造物12の他の例を示す。
本発明においては種々の形態の繊維シート1を使用することができる。本実施例にて好適に使用し得る繊維シート1の一実施例について説明するが、本発明で使用する繊維シート1の形態は、以下に説明するものに限定されるものではない。
図9に、本実施例に係る補強構造100をコンクリート構造物12に実施する施工フローを示す。図9、図6を参照して、本実施例に係る補強構造100によるコンクリート構造物12の補強方法の一例について説明する。
先ず、図9(a)、図6に示すように、本実施例では橋脚とされるコンクリート構造物12の少なくとも、定着具20の取付け領域(幅w21、長さh21)及び第2の補強領域12Bにおいて被補強面(即ち、被接着面)12aを適度な粗度を持つ面となるように下地処理をする。つまり、コンクリート構造物12の躯体表層をディスクサンダーでダイヤモンドカップを用いて除去、研磨し、付着した研磨分をエアブローなどで除去する。勿論、ディスクサンダーの代わりに、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどを使用することも可能である。
下地処理した被接着面12aに、例えばウレタン樹脂プライマーを塗布し、指触乾燥まで養生する(図9(b))。プライマーとしては、ウレタン系樹脂に限ることなくエポキシ系樹脂、MMA系樹脂など被補強構造物12の材質に合わせて適宜選定される。
下地処理した被接着面12aに、例えばウレタン樹脂パテ剤を所要の厚さ(T)にて塗布し、左官ゴテなどで平坦に仕上げ、乾燥(硬化)する(図9(c))。塗布厚さ(T)は、被接着面12aの表面の凹凸、繊維シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般にT=0.2〜10mm程度とされる。パテ剤としては、ウレタン樹脂系に限ることなく、被補強構造物100の材質に合わせて適宜選定される。
図9(d)に示すように、樹脂パテ剤が硬化すると、この硬化したパテ剤層の上に含浸接着剤をコテ、ヘラ等で均一に塗布する(下塗り)。また、不陸修正の不十分な箇所が残っている場合には、その部分に多めに塗布する。
図3(c)、図6、図2-1に示すように、所定の長さにカットされた補強部材41としてのアラミドベルトの上端部41aを、定着鋼板21の片面に、例えばエポキシ樹脂接着剤とされる接着剤を塗布して巻回し、定着鋼板21を躯体アンカー22に取り付ける。その後、ナット22aを締め付け、コンクリート構造物表面12aに密着させる。これにより、アラミドベルト41の上端41aがコンクリート構造物12の表面12aに一体的に取り付けられる。勿論、図2-2(a)、(b)に示す態様にてアラミドベルト41の上端41aを定着鋼板21を利用してコンクリート構造物b12の表面12aに一体に取付けることもできる。
次いで、図9(f)に示すように、補強部材41と定着鋼板21の接着剤樹脂、及び、アンカー部材52のアンカー穴15内の接着剤樹脂が完全に硬化するまで養生する。
つまり、図9(g)及び図10(変更実施例2)に示すように、必要に応じて、図14を参照して説明した特許文献3に記載するように、連続繊維ロープ10を構造物12である橋脚の外周囲に上端より下方端へと、また、下方端から上方端へと、人力で螺旋状に巻き付け、連続繊維ロープ10の自由両端部を結び付ける。
本実験例では、図1、図2-2に示す実施例1の補強構造100であって、更に、橋脚供試体外周に繊維シート1を貼付し、更に、連続繊維ロープ10を巻付けた構成(図10に示す変更実施例2)に対して実験を行った。実験に供した橋脚供試体、及び、その他の材料、部材等は次の通りであった。
図1に示すように、実験に使用した橋脚供試体12は、被取付構造体としての基礎構造体(フーチング部)11に一体に垂直に構築した。橋脚供試体12は、一辺の長さ(即ち、幅D1=D2)が600mmの矩形状の横断面を有し、フーチング部11からの高さ(L0)が1800mmであった。補強領域12Aの長さ(L1)は、825mmであった。
定着具20の定着鋼板21は、厚さ(t21)が12mmの矩形状の鋼板(SS400)とされ、幅(w21)が500mmとされ、長さ(h21)が200mmとされた。アンカー22としては、アンカーボルト(M16ハイテンボルト、長さ210mm))を使用した。また、アンカー設置のためのドリル穴径は20mm、深さ160mmとした。
接続部材40、固定部材50としては、図3(a)、(b)、(c)に示す接続部材40及び固定部材50を使用した。本実施例では、接続部材40及び固定部材50は、全体を鋼材(SS400)にて作製した、所謂、接続金具・固定金属を使用した。鋼材の物性は、下記の通りであった。
引張弾性率:206GPa
引張強度:450MPa
伸び:21%
補強部材41は、図3(c)に示すように、幅(W41)が44mm、設計厚さ(T41)は0.2mm、長さL41が2400mmとされた、アラミド繊維を使用した2軸織物のアラミドベルトを使用した。このアラミドベルト41を、図2-2(a)、(b)に示すように、2つ折りにして、その上端41aを定着鋼板21を利用して橋脚供試体に固定し、下端41bは接続金具40に取付けた。このアラミドベルトの諸物性は、下記の通りであった。
弾性係数:112kN/mm2
引張耐力:30kN
破断伸度:2.4%
繊維シート1としては、図7を参照して説明した構成の繊維シート(ストランドシート)(新日鉄マテリアルズ株式会社製:商品名(FSS-HT600(高強度型))を使用した。目付量は、600g/m2である。
弾性係数:245kN/mm2
引張強度:3400N/mm2
破断伸度:1.5%
設計厚:0.333mm
上記構造とされる橋脚供試体12の頂部に、図1に示すように、荷重受部材200を取り付け、水平方向に荷重Pを掛け、荷重と変形(水平変位)量とを測定した。荷重と水平変位との関係は、図12に示す通りである。
(1)上記橋脚供試体に対してなんらの補強を施さなかった例(無補強)と、
(2)補強手段30及び繊維シート1は設けられていないが、変更実施例2と同様に、橋脚供試体外周に連続繊維ロープ10として上述のアラミド繊維から成るアラミドロープ(連続繊維ロープ)10を巻付けもの(比較例1)、
に対する荷重と水平変位との関係をも示す。
図11(a)、(b)に、本発明の補強構造100により補強されたコンクリート構造物12の他の例を示す。上記実施例1、2では、コンクリート構造物12は、被取付構造体である基礎構造体(フーチング部)11に対して垂直方向に延在して構築された橋脚である場合について説明した。
10 連続繊維ロープ
11 基礎構造体(被取付構造体)
12 橋脚、梁(コンクリート構造物)
12A 第1の補強領域
12B 第2の補強領域
13 構造体基部(取付部)
15 アンカー穴
20 定着具
21 定着鋼板
30 補強手段
31(31a〜31e) 補強具
40 接続金具(接続部材)
40A 連続繊維定着部
40B 固定金具取付部
41 補強部材
50 固定金具(固定部材)
50A 連結部
50B 固定部
50C 塑性変形部
51 上方部材
52 下方部材
53 塑性変形部材
100 補強構造
Claims (7)
- 被取付構造体に対して垂直に構築されたコンクリート構造物の前記被取付構造体に対する取付部領域を補強するコンクリート構造物の補強構造において、
(a)前記被取付構造体から垂直方向に前記コンクリート構造物に沿って所定の距離とされる前記コンクリート構造物の補強領域に、前記コンクリート構造物に沿って配置された少なくとも一つの補強具を有している補強手段を設置し、
(b)前記補強手段の前記補強具は、
細長形状の連続繊維体とされる補強部材であって、その一端が前記コンクリート構造物の補強領域の前記被取付構造体とは反対側の端部に一体的に固定された補強部材と、
前記補強部材の前記一端とは反対側の他端が接続された接続部材と、
一端に設けた連結部が前記接続部材に接続され、他端に設けた固定部が前記被取付構造体に固定される固定部材であって、前記連結部と前記固定部の間に塑性変形部を有した塑性変形可能な前記固定部材と、
を有し、
(c)前記固定部材の前記塑性変形部は、前記コンクリート構造物に曲げ荷重が負荷された時、前記補強部材より先に降伏し、前記塑性変形部の伸びにより前記コンクリート構造物の靭性を向上させる、ことを特徴とするコンクリート構造物の補強構造。 - 前記補強部材は、前記コンクリート構造物と前記接続部材との間に所定の引張力を導入して緊張して取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補強構造。
- 前記塑性変形部は、引張弾性率が50〜250GPa、引張強度が50〜2500MPa、伸びが3〜45%とされることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補強構造。
- 前記塑性変形部は、鋼製又はアルミ合金製とされることを特徴とする請求項3に記載のコンクリート構造物の補強構造。
- 前記連続繊維体とされる補強部材の補強繊維は、引張弾性率が50〜800GPa、引張強度が2.5〜6.0GPa、伸びが0.5〜5%とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のコンクリート構造物の補強構造。
- 前記連続繊維体とされる補強部材の補強繊維は、アラミド繊維、PBO繊維、超高強力ポリエチレン繊維、パラ型アラミド繊維、又は炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載のコンクリート構造物の補強構造。
- 被取付構造体に対して垂直に構築されたコンクリート構造物であって、請求項1〜6のいずれかの項に記載の補強構造を有することを特徴とするコンクリート構造物。
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