JP2014168862A - 複合構造体の施工方法及び複合構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材で母材を強化した複合構造体において、比較的高い強度と靱性が得られる複合構造体の施工方法及び複合構造体を提供する。
【解決手段】躯体(鉄筋コンクリート体)の表面に下地モルタル層を形成し(S1)、そのモルタル層の表面に接着剤を塗布する(S2)。その接着剤塗布面にシート状補強材を貼り付る(S3)。このとき、モルタル層表面の接着剤がシート状補強材の裏面に転写される。さらにシート状補強材の表面に接着剤を塗布する(S4)。次にその接着剤塗布面に被覆モルタル層を形成する(S5)。必要な層数を形成するまで、S2〜S5の工程を繰り返す。施工を終了した段階では、接着剤とモルタル層は共に未硬化であり、その後、必要な硬化時間だけ放置し、接着剤とモルタル層を共に硬化させる(S6)。シート状補強材は、例えばバサルト繊維で製織されたメッシュシートからなる。
【選択図】図6

Description

本発明は、モルタルやコンクリート等の無機材料又は有機材料からなる母材が、無機材料又は有機材料の強化繊維で補強された複合構造体の施工方法及び複合構造体に関する。
建物の基礎や外壁、橋脚、コンクリート製品などのコンクリート構造物は、荷重、地震などの加振源からの振動や骨材等の劣化による体積膨張などに起因して、応力(例えば曲げ応力)が加わる。このため、コンクリート構造物には、比較的高い曲げ強度及び靱性が必要とされる。強度及び靱性を高めるために例えば母材に無機系繊維又は有機系繊維を混入した繊維強化構造体が知られている。
例えば特許文献1には、ガラス繊維がメッシュ状に製織されたメッシュ織物が、モルタル層に混入された建造物用複合構成体(複合構造体)が知られている。メッシュ織物は、耐アルカリ性ガラス繊維を製織したメッシュ生地に浸漬法により樹脂を塗布し、その塗布した樹脂を乾燥固化することにより作製される。
また、特許文献2には、コンクリート構造物表面にコンクリートと一体となった剥落防止層を形成させる補強用シート複合体(複合構造体)が開示されている。補強用シート複合体は、無機系繊維又は有機系繊維でメッシュ状に製織された補強用網状シート(シート状補強材)を、上塗モルタルと下塗モルタルとで挟んだ構造を有する。無機系繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維が挙げられ、有機系繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維が挙げられている。また、補強用網状シートは、無機系繊維又は有機系繊維に含浸させた接着材料を硬化させて得られる繊維強化樹脂材料(Fiber reinforced plastics)からなる。使用される接着材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられている。
特開2010−121248号公報 特開2004−156360号公報
ところで、特許文献1、2に記載されたメッシュ生地に含浸させた樹脂を硬化して作製される繊維強化樹脂シート(FRPシート)を母材に混入して製造された複合構造体では、曲げ応力が加わってひび割れが発生した後、シート中の繊維が母材から引き抜ける現象が発生する場合がある。この場合、複合構造体は、その引き抜けた一部の繊維が破断されることなく破壊に至り、メッシュシートが複合構造体の曲げ耐力(例えば曲げ強度)及び靱性(例えば曲げ靱性係数)の向上に寄与しにくい面があった。もちろん、上記の課題は、モルタルやコンクリートなどの無機材料を母材とする無機系複合構造体に限定されず、有機材料を母材とする有機系複合構造体にも共通に当てはまる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材で母材を強化した複合構造体において、比較的高い強度と靱性が得られる複合構造体の施工方法及び複合構造体を提供することにある。
上記目的を達成するために複合構造体の施工方法は、無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材に、未硬化の硬化性樹脂材料からなる接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤が塗布された前記シート状補強材と、無機系又は有機系の未硬化の硬化性材料を少なくとも一部に含む母材とを、当該接着剤が未硬化のまま複合化させる複合化工程と、前記母材と前記接着剤とを硬化させる硬化工程とを備えている。
上記方法によれば、接着剤塗布工程でシート状補強材に塗布された接着剤(硬化性樹脂)が未硬化のまま、複合化工程において、当該シート状補強材と母材とが複合化される。このとき、シート状補強材を一部含浸した状態で被覆する接着剤と母材との界面は、シート状補強材の網目又は織目の起伏に起因する起伏面となり、母材が粒子を含む場合はさらに母材中の粒子に起因する凹凸面ともなる。そして、硬化工程において界面の起伏面(さらには凹凸面)が残る状態で接着剤及び母材が硬化する。得られた複合構造体では、シート状補強材の繊維と母材は、接着剤と母材との界面の起伏面(さらには凹凸面)による一種のアンカー効果により、接着剤(硬化性樹脂)を介して比較的強く結合する。例えば含浸樹脂が予め硬化されている繊維強化樹脂材料(FRP)のシート状補強材を、未硬化の母材に混入させた複合化後に母材を硬化させる施工方法に比べ、シート状補強材と母材との付着力が一層高くなる。よって、複合構造体に応力(例えば曲げ応力)が加わった際、ひび割れ発生後も、母材からのシート状補強材の引き抜けが発生しにくい。したがって、複合構造体によって、より高い強度及び靱性が得られる。
また、上記複合構造体の施工方法では、前記母材の一部を構成する未硬化の母材層を形成する第1母材層形成工程と、前記未硬化の母材層の一面に前記接着剤を塗布する第1塗布工程と、前記シート状補強材を前記母材層の接着剤塗布面に貼り付ける補強材貼付工程と、前記シート状補強材の前記母材層側と反対側となる面に前記接着剤を塗布する第2塗布工程と、前記シート状補強材の接着剤塗布面に未硬化の他の母材層を形成する第2母材層形成工程と、を含み、前記接着剤塗布工程は、前記第1塗布工程と前記第2塗布工程とを含み、前記複合化工程は、前記第1母材層形成工程と前記補強材貼付工程と前記第2塗布工程とを含むことが好ましい。
上記方法によれば、第1母材層形成工程で形成された母材層の一面に接着剤が塗布された接着剤塗布面に、シート状補強材を貼り付けることで、シート状補強材の一面に母材層に塗布された接着剤が転写される。さらにシート状補強材の母材層側と反対側となる面に接着剤を塗布することで、シート状補強材の両面に接着剤を塗布できる。よって、シート状補強材の少なくとも片面に接着剤を塗布した後に、シート状補強材の貼り付けを行う作業性の悪い手順をとらなくて済む。
また、複合構造体であって、無機系又は有機系の硬化性材料を少なくとも一部に含む母材と、前記母材中に含まれる無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、前記シート状補強材を被覆する状態で当該シート状補強材と前記母材との間に介在する硬化性樹脂と、前記母材と前記硬化性樹脂とが共に流動性を有する未硬化の状態で接触した痕跡となる凹凸状の界面とを有している。
上記構成によれば、シート状補強材に被覆された硬化性樹脂と母材とが硬化前の流動性を有する未硬化の状態で接触した痕跡となる凹凸状の界面による一種のアンカー効果により、硬化性樹脂を介したシート状補強材と母材との間の比較的強い付着力が確保される。よって、複合構造体のひび発生後に、母材からのシート状補強材の引き抜けが発生しにくく、より高い曲げ強度及び曲げ靱性が得られる。
さらに上記複合構造体では、前記母材中に複数層の前記シート状補強材を含むことが好ましい。なお、シート状補強材は複数層(枚)重ねてもよいし、層間に母材の層が介在する構造でもよい。
上記構成によれば、複合構造体は母材中に複数層のシート状補強材を含むので、複合構造体の曲げ強度を高めることができる。
また、上記複合構造体では、網目の大きさの異なる二種以上の前記シート状補強材を含み、前記複数層のシート状補強材のうち一番網目の小さいシート状補強材が、前記複数層のうち一番表面側の層に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、複合構造体の一番表面側の層に配置された一番網目の小さなシート状補強材の存在によって、外気(一例として空気)中の成分(例えば炭酸ガス)のその層よりも奥側(反表面側)の母材中と接触しにくくなり、外気中の成分との反応による母材の劣化(例えば中性化)を遅らせることができる。この結果、複合構造体の耐久性が向上する。
また、上記複合構造体では、引張弾性率の異なる繊維材料で製織された二種以上の前記シート状補強材を含み、引張弾性率の一番高い繊維材料で製織されたシート状補強材が、前記複数層のうち一番奥側の層に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、引張弾性率の一番高い繊維材料で製織されたシート状補強材が、前記複数層のうち一番奥側の層に配置されているため、衝撃にも曲げにも強い複合構造体を提供できる。
本発明によれば、無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材で母材を強化した場合に、比較的高い強度と靱性を得ることができる。
第1実施形態におけるコンクリート構造物の構成及び施工工程を示す模式分解斜視図。 コンクリート構造物の模式断面図。 メッシュシートを示す部分平面図。 モルタル層に挟まれた強化繊維層を示す模式断面図。 モルタル層と強化繊維層との境界付近を示す模式拡大断面図。 複合構造層の施工方法を示すフローチャート。 第2実施形態におけるコンクリート構造物の構成及び施工工程を示す模式分解斜視図。 複合構造層の施工方法を示すフローチャート。 コンクリート構造物の模式断面図。 四点曲げ試験における供試体の構造を示す模式斜視図。 四点曲げ試験方法を説明する模式側面図。 CM−NとCM−Bの供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 CM−B2の供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 CM−B3とCM−B3−Wの供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 CM−B3C1−Wの供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 供試体の曲げ靱性係数を示すグラフ。 第3実施形態におけるコンクリート構造物の構成及び施工工程を示す模式分解斜視図。 コンクリート構造物の模式断面図。 変形例におけるコンクリート構造物の模式断面図。
(第1実施形態)
以下、図1〜図6を用いて第1実施形態を説明する。
図2に示すように、コンクリート構造物10は、例えば鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、又はコンクリートからなる所定形状の躯体11と、躯体11の表面に繊維強化された補強層として施工された複合構造層12とを有している。この複合構造層12は、モルタル又はコンクリートからなる母材13と、母材13中に繊維強化の目的で混入され、無機系繊維(無機材料繊維)と有機系繊維(有機材料繊維)のうち少なくとも一方の繊維で製織されたシート状補強材14を含む強化繊維層15とを有する。躯体11は、例えば建物、橋脚、橋桁の他、管、側溝、ブロックなどのコンクリート製品のベース部などで構成される。なお、母材13を構成するモルタルは、セメントと細骨材(砂等の粒子)とを含み、母材13がコンクリートである場合は、セメントと粗骨材(砂利等の粒子)と細骨材を含む。いずれの場合も、セメントが母材を構成する硬化性材料に相当する。また、母材13にセメントペーストを使用してもよい。
なお、本実施形態では、躯体11が不動産の場合は、その表面に施工される複合構造層12が複合構造体の一例となる。また、コンクリート構造物10がコンクリート製品などの動産である場合、躯体11と複合構造層12とを含むコンクリート構造物10の全体が、複合構造体の一例となる。このように複合構造体は、単体であることに限定されず、構造体の表面に補強目的で施工されるその一部(補強層)であってもよい。また、複合構造体の施工方法は、コンクリート構造物10が動産・不動産に関わらず、その施工方法として採用できる。
シート状補強材14は、複合構造層12の厚さ方向に例えば複数層含まれている。図2では、複合構造層12を、シート状補強材14を3層含む例で示している。もちろん、シート状補強材14の層数は、2層、4層、5層〜8層でもよい。この層数は、シート状補強材14の目付(1平方メートル当たり重量(g/m))、複合構造層12に必要とされる曲げ強度、曲げ靱性係数などの値から決められる。但し、施工時の作業性を考慮すれば層数は少ない方が好ましく、複合構造層12に必要な曲げ強度等からシート一枚当たりの目付を調整し、2層〜6層の範囲内の層数を選択することが好ましい。もちろん、シート状補強材14は、少なくとも1層含まれればよく、例えば1層のみとしてもよい。
シート状補強材14は、メッシュシートと織物シートと編物シートのうちから選択される少なくとも1つからなる。複数層の場合、シート状補強材14が全ての層で同じシート種である構成、全ての層で異なるシート種である構成、一部の二以上の層で同じシート種で他の一部の層で異なるシート種である構成でもよい。本例ではシート状補強材14として、メッシュシート16(図1、図3を参照)を採用している。
図2に示す複合構造層12は、コンクリート構造物10の表面側(図2では下面側)を補強する。これによりコンクリート構造物10に曲げ応力が加わっても、表面のひび割れの発生を抑制する。また、複合構造層12は、コンクリートの劣化(母材13の中性化による鉄骨や鉄筋の酸化あるいはアルカリ骨材反応等)による内部の体積膨張等に起因する内部応力に対しても表面のひび割れの発生を抑制する。
図1は、図2に示すコンクリート構造物10の施工方法を分かり易く示した分解斜視図である。複合構造層12は、コンクリート構造物10を構成する躯体11の表面に施工される。複合構造層12では、複数枚のシート状補強材14を重ねて配置してもよいが、本実施形態では、シート状補強材14と母材13(一例としてモルタル)との結合力をより高めるため、図1に示すように、シート状補強材14の一枚毎にその厚み方向両側をモルタル層17,19で挟んでいる。
図1、図2に示すように、複合構造層12は、躯体11の表面に一体に固定するべく打設される下地モルタル層17と、下地モルタル層17の表面に硬化性樹脂材料からなる接着剤18の塗布層を介して貼り付けられるシート状補強材14と、シート状補強材14の表面に接着剤18の塗布層を介して打設される被覆モルタル層19とを有する。そして、図1及び図2に示すように、強化繊維層15(図2を参照)が複数層の場合は、さらに被覆モルタル層19の表面に接着剤18の塗布層を介してシート状補強材14が貼り付けられ、さらにシート状補強材14の表面に接着剤18の塗布層を介して被覆モルタル層19が打設される。そして、接着剤18の塗布層を介したシート状補強材14の貼り付けと、このシート状補強材14の表面への接着剤18の塗布層を介した被覆モルタル層19の形成とを、強化繊維層15が必要な層数形成されるまで繰り返す。なお、最表面層の被覆モルタル層19は、必要なかぶり厚で形成される。
図3に示すように、シート状補強材14がメッシュシート16であるため、塗布した接着剤18が含浸し易いうえ、接着剤18の塗布後も、メッシュの網目(隙間)にモルタルやコンクリート等からなる母材13が含浸し易くなる。
図3に示すように、シート状補強材14は、無機系繊維と有機系繊維のうち少なくとも一方の繊維14aで製織されている。また、複数層(枚)のメッシュシート16は、本例では全て同じメッシュサイズ(網目サイズ)となっている。もちろんメッシュサイズを異ならせてもよい。ここで、メッシュサイズは、2mm〜10cmの範囲内の値が好ましい。2mmより小さいと、塗布した接着剤で網目が詰まり母材のモルタルが網目に含浸しにくくなる虞がある。このため、メッシュサイズは2mm以上が好ましい。一方、メッシュサイズが10cmを超えると、母材に対する繊維の割合が少なくなって繊維強化の効果が小さくなる。このため、メッシュサイズは10cm以下が好ましい。
ここで、シート状補強材14を構成する繊維14aとしては、バサルト繊維(Basalt fiber)、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうち一つが選択されている。これらの繊維はいずれも引張弾性率(ヤング率)と伸び率(伸度)とが共に高い。本例では、一例としてバサルト繊維を採用する。
バサルト繊維は、一例として径13μmのものを使用している。もちろん、繊維の径は6〜30μmの範囲内であればよい。5μm以下であると繊維が切れやすく、30μmを超えると柔軟性に劣る。また、本例では、繊維14aとして撚りのないロービング糸(不撚糸)を使用するので、樹脂やモルタルが含浸し易く硬化後の強度が出やすい。もちろんバサルト繊維は撚糸でもよい。本例では、バサルト繊維のロービング糸で製織された5mmピッチのメッシュシート16を使用している。メッシュシート16は、例えば幅およそ1メートルの長尺のものを適当な長さに切断して使用する。
ここで、バサルト繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の特性を比較する。引張弾性率(ヤング率)Eは、バサルト繊維E=90GPa、炭素繊維(TR50S)E=240GPa、ガラス繊維(Eガラス)E=74GPa、アラミド繊維(ケブラー(登録商標)49)E=80〜118GPaである。また、伸び率は、バサルト繊維が2.4%、炭素繊維が1.5%、ガラス繊維が1.8〜2.0%、アラミド繊維が1.7%である。
炭素繊維は、引張弾性率がバサルト繊維よりも高く、伸び率はバサルト繊維よりも低い。アラミド繊維は引張弾性率がバサルト繊維と同程度であるが、伸び率がバサルト繊維よりも低い。ガラス繊維は引張弾性率がバサルト繊維よりも低く、伸び率がバサルト繊維よりも少し低い。この中でバサルト繊維が一番伸び率が高いので、バサルト繊維のシート状補強材14を使用することで、曲げ強度及び曲げ靱性(曲げ靱性係数)が共に高い複合構造層12が得られる。
なお、本実施形態で使用するシート状補強材14は、繊維14aで製織したメッシュ生地に樹脂を含浸させて硬化して作製したバサルト繊維強化樹脂(Basaltfiber reinforced plastics)(BFRP)からなるメッシュシート16である。シート状補強材14がFRPであると、アルカリ耐久性が一層よくなるうえ、メッシュの網目が崩れにくく好ましい。もちろん、メッシュシート16は樹脂未含浸のメッシュ生地のままでもよい。この場合、メッシュの網目が崩れ易くなるものの、シート製造時に樹脂含浸・硬化工程が不要になるうえ、施工時に塗布する接着剤18がメッシュシート16の繊維14aや網目に含浸し易く好ましい。
シート状補強材14の厚み方向両側にはモルタル層17,19を配置するのがよい。これは、メッシュシート16の網目にモルタルが入り易く、メッシュシート16とモルタルとの付着力が確保され易くなるからである。強化繊維層15の間隔が広すぎると、シート状補強材14が別々に効き出すので、強度確保の点から間隔は狭い方がよい。強化繊維層15間の間隔、つまり被覆モルタル層19の厚さは、例えば0.1〜20mmの範囲内の値であればよい。特に0.5〜10mmの範囲内の値が好ましく、その中でも1〜5mmの範囲内の値が最も好ましい。
被覆モルタル層19の厚さが0.1mm未満であると、モルタルの厚みにむらができてメッシュシート16の網目にモルタルが入らない箇所ができる場合がある。また、20mmを超える厚さでは、強化繊維層15が別々に効き出す場合があり、複数層の割に強度向上効果が得られにくい。また、0.5mm以上の厚さでは、モルタルの厚みのむらを少なくできメッシュシート16の面全体に均一にモルタルを網目に入れることができる。10mm以下の厚さでは、複数の強化繊維層15が一層協働して効き易く強度向上に繋がる。さらに1mm以上の厚さがあれば、モルタルがメッシュシート16の網目に十分入り込むことができ、強化繊維層15とモルタル層17,19との結合を一層高められる。5mm以下の厚さであると、強化繊維層15がさらに一層協働して効き易く一層の強度向上に繋がる。なお、最表面の被覆モルタル層19のかぶり厚さは、1cm以上にしている。
ここで、複合構造層12に含まれる繊維14aと母材13との結合力(付着力)が十分確保されていないと、複合構造層12の表面にひび割れが発生した後、曲げ応力がかかる部分(例えば表面側)で繊維14aが母材から引き抜ける現象(引き抜け)が発生する。この場合、引き抜けた繊維が破断されることなく複合構造層12が破壊に至るので、引き抜け繊維数の割合に応じて複合構造層12の曲げ強度及び曲げ靱性が低下する。このため、高曲げ強度のコンクリート構造物10を得るには、繊維14aと母材13との付着力を高める必要がある。
本実施形態で施工時にシート状補強材14の両面に硬化性樹脂からなる接着剤18を塗布し、塗布した接着剤18が未硬化のまま母材中に混入する手順をとるのは、繊維14aと母材13との付着力を高めるためである。本例では、接着剤18用の硬化性樹脂として、常温硬化性樹脂を使用している。常温硬化性樹脂は、一液性でも二液性でもよい。本例では、硬化性樹脂の一例としてエポキシ樹脂を採用する。もちろん、エポキシ樹脂以外に例えばアクリル樹脂も使用できる。なお、母材が紫外線透過性を有する場合は紫外線硬化樹脂でもよい。また、母材が加熱しても硬化しかつ比較的熱伝導性の良い材料である場合は、接着剤18として熱硬化性樹脂を使用してもよい。
図4に示すように、強化繊維層15は、シート状補強材14と、その両面に塗布された接着剤18の層とで構成される。接着剤18はシート状補強材14の網目に一部入り込んだ状態でシート状補強材14の表面を被覆している。また、接着剤18の層の外側はモルタル層17(19)で覆われ、モルタル層17(19)の一部は、接着剤18の外側からメッシュシート16の網目内に入り込んでいる。
また、図5に示すように、本例のメッシュシート16は、メッシュ生地の繊維14aに硬化性樹脂(一例としてエポキシ樹脂)を含浸・硬化させることで製造された繊維強化樹脂材料(Fiber reinforced plastics)(FRP)からなる。このため、繊維14aに含浸する状態でその表面を被覆している硬化樹脂層14bのさらにその外層を、施工時に事前塗布された接着剤18が被覆している。
また、図4に示すように、モルタル層17,19と接着剤18との間には、シート状補強材14の網目の凹凸のピッチとほぼ同周期で起伏する起伏面状の界面18aが形成されている。さらにこの界面付近では、モルタル層17,19中の砂等の細骨材13a及びセメント粒子などの母材粒子の一部が、施工中に液状であった接着剤18の層(硬化性樹脂層)内に一部入り込んでいる。このため、界面18aは、母材粒子の一部が接着剤18の層中に入り込んでできた微細な凹凸を有する凹凸面となっている。この起伏面と凹凸面による一種のアンカー効果により、シート状補強材14(メッシュシート16)とモルタル層17,19との付着力が確保されている。
次に、上記のように構成された複合構造層12の施工方法、及びこの方法で施工されたコンクリート構造物10(又は複合構造層12)の作用を説明する。まず、図6のフローチャートに従って施工方法の手順を説明する。
まずコンクリート構造物10を構成する躯体11を施工する。躯体11は例えば鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート及びコンクリートのうちの一つとして施工される。躯体11が完成すると、次に躯体11の表面に複合構造層12を施工する。以下、その手順を図6に従って説明する。
まずステップS1では、下地モルタル層17を形成(打設)する。この下地モルタル層17は、躯体11と複合構造層12との接着層を兼ね、次層の強化繊維層15(シート状補強材14)を厚み方向にモルタル層で挟むための下地層となる。コンクリート構造物10の強度を増すためには、シート状補強材14が躯体11の表面からあまり離れないことが好ましい。このため、下地モルタル層17の厚みは、硬化後の厚さで例えば0.1〜20mmの範囲内の値とする。もちろん、必要な強度を確保できれば、下地モルタル層17の厚みはこの範囲外でもよい。なお、本実施形態では、このステップS1の工程が、第1母材層形成工程の一例に相当する。
ステップS2では、下地モルタル層17の表面の所定エリア(シート状補強材貼付けエリア)に接着剤18を塗布する。ここで、所定エリアは一例として全面としているが、躯体11の形状や補強面の部位に応じて、かぶり厚分の周縁部を除く内側エリアとしてもよい。なお、本実施形態では、ステップS2の工程が、第1塗布工程の一例に相当する。
次のステップS3では、シート状補強材14を下地モルタル層17の接着剤塗布面に貼り付ける。この貼り付けは接着剤18の未硬化状態で行う。シート状補強材14は、例えば図1に示すように、メッシュシート16を必要な所定長さに切断して、下地モルタル層17の表面に一方向(図1の例では水平方向)に沿って貼り付ける。この貼り付けの結果、下地モルタル層17に塗布された接着剤18がシート状補強材14の裏面(下地モルタル層17と対向する面)に転写される。すなわち、この例では、シート状補強材14の片面(裏面)への接着剤の塗布が転写により行われる。ここで、躯体11が例えば柱状又は筒状の場合は、シート状補強材14を躯体11の外周層を形成する下地モルタル層17の接着剤塗布面(外周面)に巻き付ける。なお、本実施形態では、このステップS3の工程が、補強材貼付工程の一例に相当する。
ステップS4では、貼付け後のシート状補強材14の表面に接着剤18を塗布する。こうしてシート状補強材14の両面に接着剤18が塗布される。ここで、ステップS2,S4における接着剤18の塗布方法としては、例えばローラを用いて接着剤を塗布するローラ塗布法、刷毛で塗布する方法、スプレー装置を用いてシート状補強材に接着剤を吹き付ける吹付法、特定の転写媒体を用いて接着剤を転写する転写法などを使用できる。また、例えばエポキシ系のプライマーを接着剤18として用いることもできる。なお、本実施形態では、ステップS4の工程が、第2塗布工程の一例に相当する。また、シート状補強材14への接着剤18の転写を目的として前層のモルタル層の表面に接着剤18を塗布するステップS2の工程と、その接着剤塗布面に貼り付けられたシート状補強材14の表面に接着剤18を塗布するステップS4の工程とにより、接着剤塗布工程の一例が構成される。
但し、接着剤塗布工程は、上記の手順に限定されず、例えばモルタル層へ接着剤の塗布を止めて、シート状補強材14のモルタル層への貼り付け前に事前にシート状補強材14の両面に接着剤を塗布し、この両面に接着剤が塗布されたシート状補強材をモルタル層の表面に貼り付ける手順でもよい。この場合、シート状補強材の両面に接着剤を塗布する方法としては、前述のローラ塗布法、刷毛で塗布する方法、吹付法、転写法の他、シート状補強材14を接着剤貯留槽中の接着剤液に浸漬する浸漬塗布法(ディッピング法)を採用できる。
次のステップS5では、シート状補強材14の接着剤塗布面にモルタルを塗り付けて、被覆モルタル層19を形成(打設)する。被覆モルタル層19の厚みは、硬化後で例えば0.1〜20mmの範囲内の値とする。もちろん、必要な強度を確保できれば、被覆モルタル層19の厚みはこの範囲外でもよい。本実施形態では、このステップS5の工程が、第2母材層形成工程の一例に相当する。
なお、ステップS3〜S5の工程に替え、貼り付け前のシート状補強材14を複数のスペーサで支持して前層のモルタル層の表面から少し離間して宙に浮く状態とし、この状態でシート状補強材14の表面にモルタルを塗り付けることで、モルタルが網目を通り易くしてもよい。この場合、網目にモルタルが入り込み易くなった分、モルタルと繊維14aとの付着力が高まる。
図1及び図2に示す例では、強化繊維層15が3層なので、S1〜S5の工程を1回(1層形成分)行った段階では、複合構造層12の施工は終了しない。複合構造層12の施工終了でなければ(S6で否定判定)、ステップS2に戻り、ステップS2〜S5の各工程を複合構造層12の施工終了まで繰り返す。強化繊維層15が3層である本実施形態では、ステップS2〜S5の各工程を3回繰り返し、最表面側の被覆モルタル層19の打設まで行う。こうして、バサルト繊維を含む強化繊維層15を所定の複数層含む複合構造層12が施工される。もちろん、強化繊維層15の層数は1層、2層あるいは4層以上であってもよい。そして、複合構造層12の施工を終えると(S6で肯定判定)、ステップS7に進む。なお、本実施形態では、両面に塗布された接着剤18が未硬化のままシート状補強材14を未硬化の母材13(モルタル層17,19)中に混入させた複合化状態にするステップS1,S3,S5の工程が、複合化工程の一例に相当する。
ステップS7では、接着剤18とモルタル層17,19とを硬化させる。すなわち、それぞれの硬化に必要な時間のうち長い方の時間(養生時間)だけ放置し、接着剤18とモルタル層17,19とを共に硬化させる。このとき、接着剤18とモルタル層17,19との界面18aには、メッシュシート16の網目の凹凸とほぼ同周期で起伏する起伏面と、モルタル中の砂等の細骨材13aが接着剤18中に入り込んでできた微細な凹凸を有する凹凸面とが形成される。なお、本実施形態では、このステップS7の工程が、母材と接着剤とを硬化させる硬化工程の一例に相当する。
なお、上記の例では、シート状補強材14を一枚ずつ両側からモルタル層で挟んだが、例えば複数枚のシート状補強材14を間にモルタル層を挟まず重ねて配置して、1つの強化繊維層15を構成してもよい。この場合、前層(1枚躯体側のシート状補強材を含む)の表面に接着剤を塗布し、その接着剤塗布面にシート状補強材14を貼り付けて転写によりその裏面に接着剤を塗布する手順を含んでもよいし、シート状補強材14の両面に接着剤18を塗布した後、前層の表面にこのシート状補強材14を貼り付ける手順でもよい。
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)接着剤塗布工程(S2,S4)でシート状補強材14に塗布された接着剤18が未硬化のまま、複合化工程(S1,S3,S5)においてそのシート状補強材14を未硬化のモルタル層17,19(母材の一例)に混入された複合化状態にする。そして、硬化工程(S7)で、シート状補強材14を被覆する接着剤18とモルタル層17,19とが共に硬化することで、シート状補強材14とモルタル層17,19との間に比較的高い付着力が確保される。したがって、コンクリート構造物10に曲げ応力が加わったときに複合構造層12の表面にひび割れ発生後、シート状補強材14のモルタル層17,19からの引き抜けが発生しにくくなる。よって、高強度及び高靱性のコンクリート構造物10を得ることができる。
(2)シート状補強材14の繊維14aとして引張弾性率の比較的高い無機系及び有機系の繊維のうち比較的伸び率(伸度)の高いバサルト繊維を用いたので、相対的に曲げ靱性の高いコンクリート構造物10を提供できる。例えば地震などで比較的振幅の大きな振動を受けても、ひび割れが発生し難いうえ、ひび割れ発生後、破壊に至るまでに比較的大きなたわみを許容できる高靱性のコンクリート構造物10を提供できる。
(3)シート状補強材14を予め含浸させた樹脂を硬化させて製造したFRPとした場合、メッシュ生地に比べ網目の崩れを心配せず取り扱いできるので、ハンドリング性がよく、施工時の作業性がよくなる。
(4)シート状補強材14を繊維14aのみからなるメッシュ生地とした場合、FRPタイプのものと比べ、施工時に塗布した接着剤18が繊維14a及び網目に一層含浸し易いうえ、塗布した接着剤18(樹脂)で仮に網目が埋まっても、モルタルがその網目を埋めた流動性のある接着剤18を押し退けて網目に入り込むことが可能になる。この結果、シート状補強材14とモルタル層17,19との一層高い付着力を確保できる。よって、FRPタイプのシート状補強材14を使用した場合に比べ、一層高い曲げ強度及び曲げ靱性を得ることが可能になる。
(5)シート状補強材14をメッシュシート16としたため、接着剤18が網目に含浸し易いうえ、その後に塗り付けるモルタルも網目に含浸し易い。よって、メッシュシート16の繊維14aに含浸した接着剤18とモルタルとが共に網目に入り込んだ状態で硬化するので、メッシュシート16の繊維14aとモルタルとの良好な付着力が確保される。したがって、曲げ強度及び曲げ靱性の比較的高いコンクリート構造物10(つまり複合構造層12)が得られる。
(6)複合構造層12の厚み方向に複数層のシート状補強材14を混入したので、コンクリート構造物10に必要な曲げ強度を確保できる。
(7)シート状補強材14を一枚ずつモルタル層17,19で挟む構造なので、シート状補強材14を複数枚重ねて配置しその両側からモルタル層で挟む構成に比べ、シート状補強材14と母材13との付着力を高め、曲げ靱性の高いコンクリート構造物を得ることができる。
(8)前層のモルタル層の表面に塗布した接着剤18を、その接着剤塗布面にシート状補強材14を貼り付けてその片面(裏面)に転写する手順(S2,S3)をとるうえ、他方の面(表面)への接着剤18の塗布(S4)は貼り付け後に行う。よって、予め両面に接着剤18を塗布したシート状補強材14を、モルタル層17,19の表面に貼り付ける手順をとる場合に比べ、複合構造層12の施工時の作業性がよくなる。
(第2実施形態)
次に図7〜図9を用いて第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、複数の強化繊維層15のうち少なくとも一部の層でシート状補強材の繊維の材質が異なっている例である。以下、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。
図7及び図9に示すように、コンクリート構造物10の構成は基本的に第1実施形態と同様であり、母材13を構成するモルタル層17,19の間に強化繊維層15が挟まれている。複数の強化繊維層15を構成するシート状補強材14,20の材質は、一部の層で異なっている。
図7及び図9に示す複合構造層12は、使用される複数種の繊維のうち最も引張弾性率の高い繊維で製織されたシート状補強材20を含む第1補強層21と、シート状補強材20の繊維よりも引張弾性率の低い繊維14aで製織されたシート状補強材14を含む第2補強層22とを有している。第1補強層21は躯体11に一番近い側の位置に1層形成され、強化繊維層15と、この強化繊維層15を挟むモルタル層17,19とにより構成される。一方、第2補強層22は、第1補強層21よりも表面側の位置に2層形成され、それぞれ強化繊維層15と、この強化繊維層15を挟むモルタル層19,19とにより構成される。もちろん、第1補強層21の層数と、第2補強層22の層数は、上記の例に限定されず適宜変更してよい。
第2補強層22中のシート状補強材14は、バサルト繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうちから選択される少なくとも1つの繊維でそれぞれ製織されたメッシュシート16からなる。本例では、シート状補強材14の全てを、バサルト繊維(引張弾性率E=90GPa)で製織されたメッシュシート16としている。また、第1補強層21中のシート状補強材20は、第2補強層22中のシート状補強材14の繊維よりも引張弾性率の高い無機系繊維で製織されたメッシュシート23からなる。本例では、メッシュシート23に炭素繊維(引張弾性率E=240GPa)が使用されている。
複合構造層12では、使用される複数種の繊維のうち引張弾性率が一番高い炭素繊維のメッシュシート23を躯体11側の位置に配置し、メッシュシート23よりも躯体11と反対側となる位置(より表面側の位置)にバサルト繊維のメッシュシート16を配置している。バサルト繊維よりも3倍近く引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23を使用することで、コンクリート構造物10が必要な曲げ強度を得るうえで必要なメッシュシートの枚数を減らしたり、メッシュシートの枚数が少ないままでコンクリート構造物10の曲げ強度を十分高めることができる。しかも、引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23を躯体11側に配置することで、コンクリート構造物10の曲げ強度を効果的に高めることができる。
また、複合構造層12内におけるメッシュシート23よりも表面側の位置に、炭素繊維の伸び率1.5%よりも伸び率が2.4%と高いバサルト繊維のメッシュシート16を配置しているので、比較的高い曲げ靱性を確保できる。よって、バサルト繊維のメッシュシート16と炭素繊維のメッシュシート23との混入により、曲げ強度及び曲げ靱性が一層高いコンクリート構造物10(つまり複合構造層12)の提供が可能になる。
図8は本実施形態の複合構造層12の施工方法を示すフローチャートである。施工方法は基本的に第1実施形態の図6に示すものと同様であるが、二種類のシート状補強材14,20を用いて二種類の補強層21,22を形成する関係上、その補強層の種類毎に第1実施形態と基本的に同様の施工手順を繰り返す。以下、図8に従って本実施形態の施工方法を説明する。
図8に示すように、まずステップS11では、躯体11の表面に母材13の一部の層を構成する下地モルタル層17を形成(打設)する。本実施形態では、このステップS11の工程が、第1母材層形成工程の一例に相当する。
ステップS12では、下地モルタル層17の表面の所定エリア(一例として全面)に接着剤18を塗布する。次のステップS13では、使用される繊維のうち最も高い引張弾性率を有する材質よりなる繊維(本例では炭素繊維)で製織された第1シート状補強材20を下地モルタル層17の接着剤塗布面に貼り付ける。このとき、下地モルタル層17に塗布された接着剤18が第1シート状補強材20の片面(下地モルタル層17と対向する裏面)に転写される。すなわち、シート状補強材14の片面(裏面)への接着剤18の塗布は、前層のモルタル層からの転写により行われる。なお、本実施形態では、ステップS12の工程が、第1塗布工程の一例に相当し、ステップS13の工程が補強材貼付工程の一例に相当する。
そして、ステップS14では、貼付け後のシート状補強材14の表面に接着剤18を塗布する。こうしてシート状補強材14の両面に接着剤18が塗布される。ここで、S12,S14において接着剤18を塗布する方法は、前記第1実施形態と同様に、ローラ塗布法、刷毛で塗布する方法、吹付法、転写法などを使用できる。なお、本実施形態では、このステップS14の工程が、第2塗布工程の一例に相当する。
次のステップS15では、シート状補強材14の接着剤塗布面に、未硬化のモルタルを所定厚さで塗り付けて、母材13の他の一部の層を構成する被覆モルタル層19を形成する。なお、本実施形態では、このステップS15の工程が、第2母材層形成工程の一例に相当する。
図7及び図9の例では、第1補強層21中の強化繊維層15が1層なので、S12〜S15の工程を1回行うと、第1補強層21の施工が終了する。例えば第1補強層21中の強化繊維層15が複数層ある場合は、S11〜S15の処理を1回終わった段階で、第1補強層21の施工終了とはならず(S16で否定判定)、S12〜S15の工程を第1補強層21の施工終了まで繰り返す。こうして、炭素繊維のメッシュシート23を規定の層数含む第1補強層21の施工を終えると(S16で肯定判定)、ステップS17に進む。
ステップS17では、前層のモルタル層17の表面の所定エリア(一例として全面)に接着剤18を塗布する。次のステップS18では、被覆モルタル層19の接着剤塗布面に、バサルト繊維で製織された第2シート状補強材14を貼り付ける。第2シート状補強材14を構成する第2繊維(本例ではバサルト繊維)は、第1シート状補強材20を構成する第1繊維(本例では炭素繊維)よりも、引張弾性率は低いものの、より高い伸び率を有している。この第2シート状補強材14の貼り付けにより、被覆モルタル層19の表面から第2シート状補強材14の片面(被覆モルタル層19と対向する裏面)に接着剤18が転写される。このように第2補強層22の形成時も、第2シート状補強材14の片面(裏面)への接着剤18の塗布が転写により行われる。
そして、ステップS19では、貼付け後のシート状補強材14の表面に接着剤18を塗布する。こうしてシート状補強材14の両面に接着剤18が塗布される。ここで、S17,S19において接着剤18を塗布する方法は、第1補強層21の形成時と同様に、ローラ塗布法、刷毛で塗布する方法、吹付法、転写法などを使用できる。なお、本実施形態では、S12〜S14、S17〜S19により、シート状補強材に接着剤を塗布する接着剤塗布工程が構成される。但し、接着剤塗布工程は、上記の手順に限定されず、例えばモルタル層へ接着剤の塗布を止めて、シート状補強材のモルタル層への貼り付け前に予めシート状補強材の両面に接着剤を塗布し、このシート状補強材をモルタル層の表面に貼り付ける手順でもよい。この場合、接着剤の塗布方法としては、ローラ塗布法、刷毛で塗布する方法、吹付法、転写法の他、シート状補強材を接着剤貯留槽中の接着剤液に浸漬する浸漬塗布法(ディッピング法)などを採用できる。
次のステップS20では、シート状補強材14の接着剤塗布面に未硬化のモルタルを所定厚さ塗り付け、母材の他の一部の層を構成する被覆モルタル層19を形成する。なお、本実施形態では、ステップS17の工程が第1母材層形成工程の一例に相当し、ステップS18の工程が補強材貼付工程の一例に相当する。また、ステップS19の工程が第2塗布工程の一例に相当し、ステップS20の工程が第2母材層形成工程の一例に相当する。
図7及び図9に示す例では、第2補強層22中の強化繊維層15が複数層(本例では2層)あるので、S17〜S20の工程を1回(1層形成分)行って、第2補強層22の施工終了でなければ(S21で否定判定)、S17〜S20の工程を第2補強層22の施工終了まで繰り返す。こうしてバサルト繊維のメッシュシート16を含む強化繊維層15を規定の層数含む第2補強層22の施工を終えると(S21で肯定判定)、ステップS22に進む。なお、第2補強層22中の強化繊維層15の層数は、1層あるいは3層以上であってもよい。
ステップS22では、接着剤18とモルタル層17,19とを硬化させる。すなわち、それぞれに必要な硬化時間のうち長い方の時間(養生時間)だけ放置して、接着剤18とモルタル層17,19とを共に硬化させる。このとき、互いに流動性を有する未硬化の接着剤18と未硬化のモルタル層17,19とは、貼り付けや塗り付け(打設)時に互いに接触する状態で押さえ付けられる。このため、接着剤18とモルタル層17,19との界面18aには、網目のピッチとほぼ同周期で起伏する図4に示す起伏面と、施工時の貼り付けや塗り付け時に付与された圧力でモルタル中の細骨材13aを含む母材粒子の一部が接着剤18中に入り込んでできた図5に示す微細な凹凸を有する凹凸面とが形成される。そして、この硬化を終えることで、複合構造層12の施工が終了する。なお、本実施形態では、このステップS22の工程により、母材13と接着剤18とを硬化させる硬化工程の一例が構成される。
この第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(8)の効果を同様に得られるうえ、以下の効果も得られる。
(9)バサルト繊維のメッシュシート16と、バサルト繊維よりも高弾性率である炭素繊維のメッシュシート23とを使用するので、必要な曲げ強度及び曲げ靱性を得るために必要なシート状補強材14,20(メッシュシート16,23)の層数(枚数)を減らしたり、同じ層数で必要な曲げ強度及び曲げ靱性を高めたりすることができる。また、シート状補強材14の層数の低減により繊維14aの引き抜けを抑制し易く、コンクリート構造物10の靱性向上に寄与する。
(10)使用される複数種の繊維のうち最も引張弾性率の高い第1繊維(本例では炭素繊維)のメッシュシート23を躯体11側に配置し、第1繊維(炭素繊維)よりも引張弾性率が低いものの伸び率の高い第2繊維(本例ではバサルト繊維)のメッシュシート16を躯体11と反対側の位置に配置した。よって、第1実施形態の構成に比べ、一層高い曲げ強度及び曲げ靱性を有するコンクリート構造物10を得ることができる。例えば、耐震に対しては、小規模の地震では引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23が有効に効き、中規模の地震では、炭素繊維のメッシュシート23とバサルト繊維のメッシュシート16の両方が効き、さらに大規模の地震では、伸び率の高いバサルト繊維のメッシュシート16が効いてくる。よって、耐震性に優れるコンクリート構造物10を提供できる。
<実験>
次に複合構造体の曲げ強度及び曲げ靱性を評価する実験の詳細を説明する。
複合構造体の一例としてのバサルト繊維複合材(Basalt fiber reinforced plastics)(以下、単に「BFRP」とも称す)のメッシュシート26の混入によるモルタルの強度及び靱性の向上効果、及びこのモルタルの曲げ挙動を評価した。詳しくは、コンクリート標準示方書におけるコンクリートの曲げ強度試験方法に準拠した寸法、すなわち幅100mm×高さ100mm×長さ400mmの供試体を作製し、曲げ試験を実施した。実験パラメータはBFRPメッシュシートの枚数(0枚、1枚、2枚、3枚、それぞれCM−N,CM−B1,CM−B2,CM−B3と呼称する。)とエポキシ樹脂の事前塗布による接着の有無(事前塗布を行った供試体をCM−B3−Wと呼称する。)とした。エポキシ樹脂の塗布量は1面当たり200g/mとした。さらにBFRPメッシュシートと炭素繊維複合材(Carbon fiber reinforced plastics)のメッシュシート(CFRPメッシュシートと呼称する。)を混入し、エポキシ樹脂の事前塗布による接着を行った供試体を作製した。それぞれの供試体について3体の実験を行った。
BFRPメッシュシートは、0°,90°の方向に1本200texのバサルト繊維紐を4.2mmの格子間隔で編んだバサルト繊維メッシュシートをエポキシ樹脂で含浸・成形したものである。供試体の幅内にはメッシュシート1枚当たり14本のBFRP棒が混入される。CFRPメッシュシートも、バサルト繊維に替えて炭素繊維を使用している点以外の構成はBFRPメッシュシートと同じである。
BFRPメッシュシート26の詳細寸法を図10に、各種材料の物性値を表1にそれぞれ示す。図10に示すように、供試体は、幅100mm×高さ100mm×長さ400mmで、その母材であるセメントモルタル25中には、供試体の底面から20mmの高さ位置に、幅60mm×長さ100mmのBFRPメッシュシート26を、底面と平行に配置する状態で混入している。BFRPメッシュシート26についてはBFRP棒(1本)の引張試験を10本行い、平均値を物性値として採用した。
また、モルタルの物性については3本のφ100mm×200mmの円柱供試体3体の試験結果を平均した値を採用した。モルタル供試体は、打設後に屋外環境下で湿布養生を行い、28日間の養生後に2000kN加圧試験機により4点曲げ試験を実施した。曲げ強度の状況を図11に示す。計測機器及び項目は、荷重及び供試体両側面の各載荷点に設置した変位計27により測定したたわみ(平均値)とした。
(実験結果と考察)
4点曲げ試験の結果より、荷重(曲げ応力)−たわみ曲線を、図12〜図15に示す。式(1)より求めた曲げ靱性係数の一覧を図16に示す。また、曲げ応力は以下の式(2)より算出した。
ここで、fbバーは曲げ靱性係数、Tbは荷重−たわみ曲線におけるδthまでの面積、δthはスパンの1/150のたわみ、lはスパン、bは破壊断面の幅、そしてhは破壊断面の高さ、Pは荷重である。
CM−Nのケースでは、供試体のスパン中央部に1本のひび割れが発生して2つに割れ、載荷を継続できなくなったが、CM−B1のケースでは1本のひび割れ発生後、一時的にひび割れ発生直前における荷重の50%程度低下するも、その後はやや荷重が増加するひずみ硬化が見られた。また、CM−Nのケースに比べて最大荷重は向上しないが、終局破壊時のたわみは410%、曲げ靱性係数は161%それぞれ増加した。
さらにCM−B2,CM−B3と補強量が大きいほど、このひずみ硬化がより明確に現れ、CM−Nのケースに比べて最大荷重、終局破壊時のたわみ、曲げ靱性係数のすべてで大幅に増加した。しかし、最大荷重時には、BFRPメッシュシート26が数本ずつ段階的に破断し、その都度荷重低下を伴って早期にすべてのBFRPメッシュシート26が破断に至ったため、靱性の向上効果は限定的であった。また、破断後にひび割れ近傍を観察したところ、CM−B1及びCM−B2については剥離や引き抜けは確認できなかったが、CM−B3についてはひび割れから両端に向かって50mm程度離れた箇所に新たにひび割れが生じ、BFRPメッシュシートの引き抜けや段階的な部分破断、かぶりの剥落が生じた。以上から、CM−B3のようにある程度補強量が大きいケースでは、BFRPメッシュシートの引き抜けやすべりが生じるため、メッシュシートを構成する14本のBFRP棒間に生じる応力が不均一化し、モルタルの曲げ挙動が不安定化することから、BFRPメッシュシートの付着確保が重要な課題と考えられた。
そこで、BFRPメッシュシート26の付着確保のため、モルタルの打設前にBFRPメッシュシート26の表面にエポキシ樹脂を塗布することにより付着確保を図った。
図14に示したCM−B3−WとCM−B3の荷重−たわみ曲線と、図16に示した曲げ靱性係数より、CM−B3−Wのケースでは、CM−B3のケースに比べて最大荷重は63%〜134%、最大荷重時のたわみは40%〜206%、曲げ靱性係数は32%〜78%、それぞれ飛躍的に向上した。
また、図14に示すように、CM−B3のケースでは、最大荷重とBFRPメッシュシート完全破壊時のたわみが大きくばらついているが、CM−B3−Wではばらつきがかなり制御されている。よって、モルタルの打設前にBFRPメッシュシート26の表面にエポキシ樹脂を塗布することにより、BFRPメッシュシート混入モルタルの曲げ耐力及び靱性が飛躍的に向上し、その性能はかなり安定化されることが実験的に明確となった。
また、図15に示したCM−B3C1−Wの荷重−たわみ曲線と、図16に示した曲げ靱性係数のグラフとから、CM−B3C1−Wのケースでは、CM−B3−Wのケースに比べて、最大荷重時のたわみは多少小さくなっているものの、最大荷重、曲げ靱性係数は共に飛躍的に向上した。特に図16に示すCM−B3C1−Wのケースでは、6.0N/mmを超える曲げ靱性係数が得られた。また、炭素繊維メッシュシートを加えることで、剛性(一次剛性及び二次剛性)を容易に上げられることが確認できた。
(第3実施形態)
次に図17及び図18を用いて第3実施形態を説明する。第3実施形態は、前記第1及び第2実施形態における複合構造層12中の一番表面側に混入されるシート状補強材をメッシュシートに替え、織物シートとした例である。以下、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。なお、第2実施形態の構成に対応する符号を括弧内に記す。
図18に示すように、本実施形態の複合構造層12は、一番表面側の強化繊維層15を構成するシート状補強材14が織物シート29になっている。織物シート29は、例えば平織り又は綾織りにより製織されている。図17及び図18に示すように、複数層(N層:一例として3層)のシート状補強材14(20)のうち、躯体11側の(N−1)層の強化繊維層15をそれぞれ構成するシート状補強材14(又は14,20)がメッシュシート16(又は16,23)となっている。躯体11と反対側となる最も表面側に位置する強化繊維層15を構成するシート状補強材14が織物シート29になっている。メッシュシート16(23)を配置した強化繊維層15では、その網目にモルタル又はコンクリートからなる母材13が入り込み易く、母材13とシート状補強材14との間に比較的高い付着力を確保できる。また、一番表面側の強化繊維層15にメッシュシート16(23)の網目に比べ十分小さな織目の織物シート29を配置しているので、この織物シート29が内側(躯体側)への空気の透過を抑制する。このため、母材13であるモルタル又はコンクリートが、空気中の炭酸ガスと反応して徐々に劣化(中性化)する劣化速度を遅くすることができる。
この第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(8)及び第2実施形態の(9),(10)の各効果に加え、以下の効果が得られる。
(11)複合構造層12の最表面側の強化繊維層15を構成するシート状補強材14を織物シート29としたので、織物シート29よりも内側で母材13が空気中の成分と反応して起こる劣化(例えば中性化)の速度を遅らせることができる。
なお、実施形態は、以下に示す態様でもよい。
・前記各実施形態では、躯体11の形成後にその表面に複合構造層12を追加形成する構成としたが、躯体11を構成するコンクリートの打設時にその表面側の層に複合構造層を形成してもよい。図19に示すように、複合構造体の一例としてのコンクリート構造物30は、コンクリートからなる母材13と、母材13の表面側(図19では下側)の部分に形成された複数層の強化繊維層15とを有している。施工方法は、まずコンクリートを打設して母材13のベース部31を形成し、未硬化のベース部31に接着剤を塗布した後、その接着剤塗布面にシート状補強材14(20)を貼り付け、さらにシート状補強材14(20)の表面に接着剤を塗布し、その接着剤塗布面に所定厚さのコンクリートを打設して被覆層33(被覆コンクリート層)を形成する。以後、必要な層数の施工を終えるまで、前層の表面への接着剤塗布、シート状補強材の貼り付け、シート状補強材の表面への接着剤塗布、被覆コンクリート層の形成からなるこれら一連の手順を繰り返す。なお、母材13はモルタルでもよいし、ベース部31をコンクリートとし被覆層33をモルタルとしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、複数層のシート状補強材を混入する構成では、それぞれを製織している繊維の材質が異なってもよい。例えばバサルト繊維メッシュシート、ガラス繊維メッシュシート及びアラミド繊維メッシュシートのうち少なくとも2つを使用してもよい。また、第3実施形態において、第2シート状補強材の繊維は、バサルト繊維に替え、ガラス繊維又はアラミド繊維としてもよい。
・複合構造層12中に、メッシュシートを複数枚含む強化繊維層と、メッシュシートを1枚のみ含む強化繊維層とが混在していてもよい。
・1つのシート状補強材(例えばメッシュシート)を材質の異なる複数種の繊維を混ぜて製織してもよい。例えば炭素繊維とバサルト繊維とを混ぜたメッシュシート、バサルト繊維とアラミド繊維とを混ぜたメッシュシート、バサルト繊維とガラス繊維とを混ぜたメッシュシートを使用してもよい。
・シート状補強材を構成する繊維は、アラミド繊維以外の有機系繊維でもよい。例えばナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維などの有機系繊維を用いることもできる。また、無機系繊維で製織されたシート状補強材と有機系繊維で製織されたシート状補強材とを母材に混入してもよい。
・複合構造体は、母材がモルタルとコンクリートとのうち少なくとも1つからなることに限定されず、母材がモルタル及びコンクリート以外の無機系材料からなる構成でもよい。無機系材料の一例としては、硬化剤を添加した水ガラスなどが挙げられる。さらに母材が有機系材料である有機系複合構造体でもよい。母材が硬化性樹脂などの有機系材料であっても、接着剤を塗布したシート状補強材と母材とを接着剤が未硬化のうちに複合化すれば、母材及び接着剤を共に硬化させることで高強度かつ高靱性の複合構造体が得られる。
・第3実施形態において複数のシート状補強材の配置順序は、網目(織目)のサイズ順に限定されない。例えばシート状補強材を表面側のものより躯体側のものの方が網目(織目)が細かくなる順番に配置したり、網目サイズの順番をランダムにしたりしてもよい。また、引張弾性率の高い材質のシート状補強材を表面側に配置してもよいし、複合構造体の厚さ方向に引張弾性率の順番をランダムにしてもよい。
・母材に粒子が含まれていなくてもよい。この場合も、シート状補強材の網目や織目の凹凸と同じ周期で起伏する界面(起伏面)を形成でき、この起伏のある界面による一種のアンカー効果によってもシート状補強材と母材13との付着力は確保される。
・エポキシ樹脂の塗布量は1面当たり200g/mに限定されず、例えば50〜300g/mの範囲内の値としてもよい。
・複合構造体としてプレキャストコンクリート製品に適用してもよい。例えば側溝、管、橋桁、擁壁、杭、建物の一部(柱、梁、壁材)、カルバート、マンホールでもよい。
前記各実施形態及び変形例から把握される技術思想を以下に記載する。
(イ)前記複合化工程では、前記接着剤が塗布された前記シート状補強材を、当該接着剤が未硬化のまま、無機系又は有機系の硬化性材料を少なくとも一部に含む未硬化の母材中に混入した状態とすることで、当該シート状補強材と当該母材とを複合化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合構造体の施工方法。
(ロ)前記母材は粒子を含み、前記凹凸状の界面は、当該母材中の粒子の一部が前記硬化性樹脂内に入り込んだ状態で硬化することで当該母材と当該硬化性樹脂との間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の複合構造体。この構成によれば、粒子の一部が硬化性樹脂内に入り込んだ状態で硬化して形成された凹凸状の界面による一種のアンカー効果により、ひび割れ発生後の曲げ応力でシート状補強材の引き抜けが発生し難い。
(ハ)前記シート状補強材は、メッシュシートであることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載の複合構造体。この構成によれば、メッシュシートの比較的大きな網目に、塗布した接着剤及び未硬化の母材が含浸し易い。このため、シート状補強材と母材との良好な付着力が確保され、曲げ応力が加わったとき、同一の目付の織物に比べ、繊維の引き抜けが発生しにくく、より高い曲げ強度及びより高い曲げ靱性が得られ易い。
(ニ)前記母材は、水和反応硬化型の無機系材料からなり、当該無機系材料はモルタルとコンクリートのうちから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の複合構造体。この構成によれば、モルタルとコンクリートのうちから選択される少なくとも一方を母材とする複合構造体の曲げ強度及び曲げ靱性を高めることができる。
10…複合構造体の一例であるコンクリート構造物、12…複合構造体の一例を構成する複合構造層、13…母材、13a…細骨材、14…シート状補強材(第2シート状補強材)、14a…繊維、15…強化繊維層、16…メッシュシート、17…下地モルタル層、18…接着剤、18a…界面、19…モルタル層、20…シート状補強材(第1シート状補強材)、21…第1補強層、22…第2補強層、23…メッシュシート、29…織物シート、30…複合構造体の一例であるコンクリート構造物、31…ベース部、32…補強層、33…コンクリート層。

Claims (6)

  1. 無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材に、未硬化の硬化性樹脂材料からなる接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
    前記接着剤が塗布された前記シート状補強材と、無機系又は有機系の未硬化の硬化性材料を少なくとも一部に含む母材とを、当該接着剤が未硬化のまま複合化させる複合化工程と、
    前記母材と前記接着剤とを硬化させる硬化工程と
    を備えたことを特徴とする複合構造体の施工方法。
  2. 前記母材の一部を構成する未硬化の母材層を形成する第1母材層形成工程と、
    前記未硬化の母材層の一面に前記接着剤を塗布する第1塗布工程と、
    前記シート状補強材を前記母材層の接着剤塗布面に貼り付ける補強材貼付工程と、
    前記シート状補強材の前記母材層側と反対側となる面に前記接着剤を塗布する第2塗布工程と、
    前記シート状補強材の接着剤塗布面に未硬化の他の母材層を形成する第2母材層形成工程と、
    を含み、
    前記接着剤塗布工程は、前記第1塗布工程と前記第2塗布工程とを含み、
    前記複合化工程は、前記第1母材層形成工程と前記補強材貼付工程と前記第2塗布工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合構造体の施工方法。
  3. 無機系又は有機系の硬化性材料を少なくとも一部に含む母材と、
    前記母材中に混入され、無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、
    前記シート状補強材を被覆する状態で当該シート状補強材と前記母材との間に介在する硬化性樹脂と、
    前記母材と前記硬化性樹脂とが共に流動性を有する未硬化の状態で接触した痕跡となる凹凸状の界面と
    を有していることを特徴とする複合構造体。
  4. 前記母材中に複数層の前記シート状補強材を含むことを特徴とする請求項3に記載の複合構造体。
  5. 網目の大きさの異なる二種以上の前記シート状補強材を含み、前記複数層のシート状補強材のうち一番網目の小さいシート状補強材が、前記複数層のうち一番表面側の層に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の複合構造体。
  6. 引張弾性率の異なる繊維で製織された二種以上の前記シート状補強材を含み、引張弾性率の一番高い繊維で製織されたシート状補強材が、前記複数層のうち一番奥側の層に配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合構造体。
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