JP5866813B2 - 内燃機関 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に関し、詳しくは、高セタン価燃料を燃料として使用する内燃機関に関する。
従来、高セタン価燃料のエネルギー効率を高めるための予混合圧縮着火式の内燃機関が知られている。予混合圧縮着火式の内燃機関は、予め空気と高セタン価燃料とを混合させて形成された予混合気を着火させることで得られたエネルギーにより駆動される。この予混合圧縮着火式の内燃機関は、着火が安定しないという問題がある。予混合圧縮着火式の内燃機関の着火を安定させるために、例えば特許文献1に記載の内燃機関は、追加圧縮を行うことで、予混合気を着火させることにより、着火時期の制御性を高めようとしている。
特開平10−196424号公報
ところが、特許文献1に記載の内燃機関は、追加圧縮により予混合気の温度を上昇させるため、予混合気の温度が自着火可能な温度まで上昇するのに時間がかかる。よって、予混合気の着火遅れが発生する。ここで、燃料の性状や吸気温度等により着火の温度条件がばらつけば、着火時期のばらつきが大きくなる。
また、混合気を圧縮自着火させるため、燃焼時の燃焼室の容積は従来までの高セタン価燃料の内燃機関と略同じとなる。これにより、燃焼時の圧力が内燃機関の制限圧力を超えることを防止するために、過給を行うことができない。したがって、特許文献1に記載の内燃機関の場合、スモークが発生しないようにするには、低負荷に限定して運転せざるを得なくなる。
さらに、特許文献1に記載の内燃機関は、機械式の追加圧縮により予混合気を着火させるため、内燃機関の高回転による運転には向かない。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、着火遅れおよび着火時期のばらつきを抑制可能な内燃機関を提供することにある。
請求項1に係る発明によると、内燃機関は、ピストン、シリンダ、燃料噴射装置、点火装置、および、制御装置を備える。ピストンは往復移動可能である。シリンダは、ピストンを収容し、ピストンの往復移動により容積が可変する燃焼室を有する。燃料噴射装置は、噴孔を有し、噴孔から燃焼室に燃料を噴射する。点火装置は、点火源を生じることにより、燃焼室に噴射された燃料を着火させる。制御装置は、燃料噴射装置の燃料噴射、および、点火装置の点火を制御する。
制御装置は、通常運転を行う条件である通常運転条件を満たす場合、燃料噴射装置により第1所定量の燃料を噴射する通常噴射を行い、通常噴射により噴射された燃料と空気との混合気がピストンの移動によって圧縮されることで得られた熱量により、混合気を自着火させる。また、制御装置は、通常運転条件とは異なる条件である特定運転条件を満たす場合、燃料噴射装置により、通常噴射の後、第2所定量の燃料を噴射する追加噴射を行い、点火装置により追加噴射された燃料を着火させて得られた熱量により、混合気を自着火させる。また、特定運転条件は、燃焼室の圧縮比が通常運転条件での燃焼室の圧縮比と同じであり、ピストンの往復移動速度が所定値を超えることを前提条件として含む。
これにより、特定運転条件を満たす場合、点火装置により、熱の発生速度が速くなるため、着火遅れを抑制することができ、着火時期のばらつきを抑制することができる。また、熱発生量は、燃料の第2所定噴射量により制御可能であるため、着火時期の制御性を高めることができる。さらに、混合気を自着火可能な温度まで昇温させるのに必要な熱量を発生する燃料の量(第2所定量)を極めて少なくすることができる。このため、第N回噴射する燃料の量を低減することによりNOx(窒素酸化物)およびPM(燃料の燃え残り)の発生を抑制することができる。
請求項2に係る発明によると、制御装置は、特定運転条件を満たす場合、ピストンが上死点近傍に位置するとき、燃料噴射装置により追加噴射を行い、点火装置により追加噴射された燃料を着火させる。
これにより、燃焼中心をピストンの上死点に近付けることができる。したがって、熱効率の悪化を抑制することができる。
請求項3に係る発明によると、特定運転条件は、燃焼室の圧縮比が燃焼室内に噴射された燃料を常に自着火させる圧縮比より小さいことを前提条件として含む。
これにより、特定運転時には、圧縮比を小さくすることで、燃焼時の最大圧力を低減することができる。このため、過給が可能になり、高負荷でPMを低減することができ、すす等の抑制効果を高めることができる。したがって、低PM燃焼の運転範囲を拡大することができる。
また、圧縮比の低下により熱効率が低下するが、予混合化によりエミッションに余裕ができるため、EGR(排気再循環)により還流する排気の量を低減することができる。よって、比熱比を増加することができる。
求項に係る発明によると、第2所定量は、第1所定量より少ない。
これにより、追加噴射された第2所定量の燃料の燃焼により、NOxおよびPMの発生を抑制することができる。
請求項に係る発明によると、制御装置は、燃料噴射装置により通常噴射を行うとき、第1所定量の燃料を複数回に分けて噴射する。
所定量の燃料を一度に噴射すると噴霧が飛散し壁面に付着しやすくなる。これに対し、所定量の燃料を複数回分けて噴射すると、燃料がシリンダの壁面に付着することを低減することができる。
請求項に係る発明によると、燃料噴射装置は、点火装置の点火源を生じる端部近傍に燃料を噴射する。
また、請求項に係る発明によると、点火装置は、点火源を生じる端部が燃料噴射装置の噴孔近傍に位置するよう設けられている。
これにより、追加噴射された燃料を着火させる着火性を高めることができる。
本発明の一実施形態のエンジンシステムの概略構成を示す説明図。 図1のII方向視平面図。 図2のIII−III線断面図。 本発明の一実施形態のエンジンの特性図。 本発明の一実施形態のエンジンの特性図。 本発明の一実施形態のエンジンの特性図。 本発明の一実施形態のエンジンの特性図。 本発明の一実施形態のエンジンの制御を示すフローチャート。 本発明の一実施形態のエンジンの制御を示すフローチャート。 本発明の一実施形態のエンジンの特性図。 従来のエンジンの特性図。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(一実施形態)
本発明の一実施形態による内燃機関は、高セタン価燃料を燃料として使用する。ここで、高セタン価燃料というのは、例えば、軽油、DME等のセタン価が40以上の燃料を言う。本発明の一実施形態による内燃機関を適用したエンジンシステムを図1に示す。エンジンシステム1は、車両に搭載されている。
まず、エンジンシステム1の構成について説明する。図1に示すように、エンジンシステム1は、内燃機関(以下、「エンジン」という)10、吸気系20、排気系30、過給機60、燃料噴射系40、および電子制御装置(以下、「ECU」という)50などを備えている。
エンジン10は、略円筒状のシリンダ11を複数有し、当該シリンダ11の内側にピストン13を収容している。ピストン13は、シリンダ11の内側に軸方向へ往復移動可能に設けられる。エンジン10は、シリンダ11の一方の端部を塞ぐシリンダヘッド12を有する。シリンダ11の内壁とピストン13とシリンダヘッド12との間には燃焼室110が形成されている。燃焼室110の容積は、ピストン13の往復移動により変化する。ここで、燃焼室110の最大容積V1(図1参照)と燃焼室110の最小容積V2(図3参照)との比をエンジン10の静的な圧縮比とし、以下、「圧縮比」とする。本実施形態の場合、エンジン10の圧縮比は、11.5〜12.5に設定されている。
シリンダヘッド12には、シリンダ11に対応し、複数の吸気ポート16が設けられている。吸気ポート16の内側には、燃焼室110と連通する通路160が形成されている。また、シリンダ11の吸気ポート16とは反対側には、排気ポート17が設けられている。排気ポート17の内側には、燃焼室110と連通する通路170が形成されている。
また、シリンダヘッド12には、吸気弁161、排気弁171、燃料噴射装置14および点火装置15が設けられている。吸気弁161は、燃焼室110と通路160との間を開閉可能である。排気弁171は、燃焼室110と通路170との間を開閉可能である。
燃料噴射装置14は、例えばソレノイド式インジェクタであり、燃焼室110内に開口する噴孔141を有し、燃料を燃焼室110に噴射する。点火装置15は、例えばスパークプラグであり、火花発生端部151を有し、燃焼室110内の燃料を着火させる。本実施形態では、点火装置15は、火花発生端部151が燃料噴射装置14の噴孔141の近傍に位置するよう設けられている(図2参照)。本実施形態の場合、エンジン10は、燃料噴射装置14から噴射された燃料を燃焼室110で燃焼させることにより稼動する。ここで、火花発生端部151は、特許請求の範囲における「点火源を生じる端部」に対応する。
吸気系20は、吸気管21、エアクリーナ22、および、インタクーラ23を有する。吸気管21は、一方の端部が吸気口211を形成し、他方の端部がエンジン10の吸気ポート16に接続している。吸気管21は、内側に、吸気口211と吸気ポート16の通路160とを接続する吸気通路210が形成されている。これにより、吸気口211から吸入された空気(吸気)は、吸気通路210を通じてエンジン10の各燃焼室110へ導かれる。
エアクリーナ22およびインタクーラ23は、吸気口211側からこの順に吸気通路210に設けられている。また、インタクーラ23と吸気ポート16との間には、圧力センサ51および温度センサ52が設けられている。
エアクリーナ22は、吸気に含まれる異物を捕集することで吸気を浄化する。インタクーラ23は、後述する過給機60のコンプレッサ62によって高温となった吸気を冷却する。なお、圧力センサ51および温度センサ52は、燃焼室110に吸入された吸気の圧力および温度を検出する。
排気系30は、一方の端部が排気口311を形成し他方の端部がエンジン10の排気ポート17に接続している排気管31を有する。排気管31は、内側に、排気口311と排気ポート17の通路170とを接続する排気通路310が形成されている。排気通路310の排気口311側には、排気浄化部32が設けられている。
過給機60は、吸気管21と排気管31との間に設けられている。過給機60は、タービン63、コンプレッサ62およびシャフト61を有している。タービン63は、排気通路310のエンジン10の排気ポート17と排気浄化部32との間に回転可能に設けられている。一方、コンプレッサ62は、吸気通路210のエアクリーナ22とインタクーラ23との間に回転可能に設けられている。シャフト61は、タービン63とコンプレッサ62とを連結している。排気が排気通路310を流れると、タービン63が回転する。これにより、コンプレッサ62が回転する。コンプレッサ62が回転すると、吸気は、コンプレッサ62により圧縮されてエンジン10に供給される。つまり、過給機60は、吸気をエンジン10に過給するターボチャージャである。
燃料噴射系40は、各燃料噴射装置14が接続されるコモンレール41、及び、コモンレール41へ燃料を圧送する高圧ポンプ43を備える。
コモンレール41は、燃料の圧力を維持したまま、すなわち蓄圧状態で燃料を蓄える。そして、コモンレール41における燃料の圧力を上昇させるのが、高圧ポンプ43である。コモンレール41に蓄えられた燃料は、燃料噴射装置14から噴射される。本実施形態では、燃料噴射装置14内部の燃料通路の開放期間が通電期間として制御されることで、目標とする量の燃料がシリンダ11内へ噴射されることになる。
ECU50は、CPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスラインを有する周知の小型のコンピュータである。
ECU50の入力ポートには、コモンレール41における燃料の圧力を検出する油圧センサ54、アクセルペダル71の踏み込み量を検出するアクセルセンサ55、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ56、シリンダ11内に吸入される吸気の温度および圧力を検出する温度センサ52および圧力センサ51、ならびに、ピストン13の往復移動とともに回転するクランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサ53が電気的に接続されている。一方、ECU50の出力ポートには、上述した燃料噴射装置14、高圧ポンプ43、及び、点火装置15などが電気的に接続されている。
ECU50は、アクセルセンサ55からの信号に基づき目標とする燃料の噴射量を算出すると共に、アクセルセンサ55および回転数センサ56からの両信号に基づき、目標とする燃料圧力を算出する。そして、ECU50は、算出した燃料圧力となるように高圧ポンプ43を制御する。また、算出した噴射量の燃料が噴射されるように燃料噴射装置14への通電を行う。
ECU50は、クランク角センサ53により検出されるクランク角により、インジェクタ15への通電タイミングを決定する。また、インジェクタ15への通電期間は、燃料圧力毎に予め記憶される噴射量と通電期間との対応関係(マップ)によって決定される。
次に、図8および図9のフローチャートに基づいて、ECU50の制御について説明する。
S110では、燃料の目標噴射量を算出する。燃料の目標噴射量は、アクセルセンサ55からの信号に基づくアクセルペダル71の踏み込み量に基づいて算出される。
S120では、過給圧を検出する。この処理では、吸気ポート16とインタクーラ23との間に設けられている圧力センサ51により、シリンダ11に吸入される吸気の圧力を検出する。
S130では、吸気温度を検出する。この処理では、吸気ポート16とインタクーラ23との間に設けられている温度センサ52により、シリンダ11に吸入される吸気の温度を検出する。
S140では、所定回転数Rpを算出する。所定回転数Rpは、シリンダ11内の燃料と空気との混合気が圧縮により自着火可能な最高回転数である。つまり、エンジン10の回転数が所定回転数Rp以下の場合、シリンダ11内の燃料と空気との混合気は圧縮により自着火する。また、エンジン10の回転数が所定回転数Rpより高い場合、シリンダ11内の燃料と空気との混合気は圧縮によって自着火しない。ECU50は、S120で検出された過給圧およびS130で検出された吸気温度に基づいて、所定回転数Rpを算出する。
S150では、現在回転数Rと所定回転数Rpを比較する。ここで、現在回転数Rが所定回転数Rpより大きい場合(S150:YES)、処理はS160へ移行する。一方、現在回転数Rが所定回転数Rpより小さい場合(S150:NO)、処理はS170へ移行する。
S160では、エンジン10はECU50の制御により特定運転モードに入る。また、S170では、エンジン10はECU50の制御により通常運転モードに入る。本実施形態の場合、通常運転モードというのは、通常運転を行う条件である通常運転条件を満たす場合、ECU50の制御により燃料噴射装置14が第1所定量の燃料を噴射する通常噴射を行い、通常噴射により噴射された燃料と空気との混合気がピストン13の移動によって圧縮されることで得られた熱量により、混合気を自着火させる運転モードを言う。また、特定運転モードというのは、通常運転条件とは異なる条件である特定運転条件を満たす場合、ECU50の制御により、燃料噴射装置14が通常噴射の後第2所定量の燃料を噴射する追加噴射を行い、点火装置15が追加噴射された燃料を着火させて得られた熱量により、混合気を自着火させる運転モードを言う。通常運転モードまたは特定運転モードが終了すると、処理はS180へ移行する。
S180では、エンジン10の運転を停止するか否かを判断する。「YES」と判断された場合、処理は「エンド」へ移行し、エンジン10の運転は停止する。一方、「NO」と判断された場合、処理はS110へ戻る。
ここで、図9のフローチャートに基づいて、特定運転モードの制御について説明する。
特定運転モードの制御を説明する前に、まず、特定運転モードの前提条件について説明する。本実施形態では、ピストン13が上死点まで移動するとき、シリンダ11内の燃料と空気との混合気が圧縮により自着火しないという特定運転モードの前提条件は、エンジン10の圧縮比が11.5〜12.5に設定されているということである。ここで、図4〜図7に基づいて、エンジン10の圧縮比を11.5〜12.5に設定する根拠について説明する。
図4〜図6は、温度が40℃であり、圧力がそれぞれ0.1MPa(図4の場合)、0.14MPa(図5の場合)、0.18MPa(図6の場合)である吸気がシリンダ11内に吸入された場合の、圧縮比と回転数との関係を示す図である。0.18MPaは、吸気が過給機60によって過給された場合の最大圧力である。図6に示すように、圧縮比が12.5より高い場合、自着火させないための所定回転数Rpは3200rpmよりも高くなる。ここで、所定回転数Rpを3200rpm以下に設定可能にするため、エンジン10の圧縮比の上限を12.5に設定する。
図7は、圧縮された予混合気を着火させるのに必要となる追加噴射の噴射量と圧縮比との関係を示す図である。ここで、シリンダ11内に吸入された吸気の圧力が0.1MPa、0.14MPa、および0.18MPaの場合の異なる関係をそれぞれ曲線L1、L2、およびL3で示す。図7に示すように、吸気圧が高いほど、吸入された空気の量が多くなる。このため、昇温するのに必要とする熱量が多くなり、必要とする燃料の量が増加する。しかしながら、低エミッション燃焼を維持するためには、追加噴射の噴射量を少なくするほうが良い。ここで、追加噴射の噴射量を例えば2.5mm3以下に設定すると、低エミッション燃焼を維持することができる。よって、低エミッション燃焼を維持するため、圧縮比の下限を11.5に設定する。
続いて、特定運転の制御について説明する。
S161では、目標噴射量、過給圧、吸気温度、および現在回転数により、予め行う通常噴射の毎回の噴射量を算出する。
S162では、クランク角センサ53によりクランク角を検出する。
S163では、燃料噴射装置14により通常噴射を行う。ECU50は、S162で検出されたクランク角に基づいて通常噴射のタイミングを決定する。本実施形態の場合、燃料噴射装置14は、ピストン13が下死点から上死点まで移動するときに通常噴射を行う。また、本実施形態の通常噴射は、燃料噴射装置14により燃料噴射を3回行う。これにより、シリンダ11内に燃料と空気とからなる混合気が形成される。
S164では、燃料噴射装置14により追加噴射を行う。ECU50は、S162で検出されたクランク角に基づいて追加噴射のタイミングを決定する。本実施形態では、ピストン13が上死点近傍に位置するときに、燃料噴射装置14による追加噴射を行う。また、本実施形態の追加噴射の噴射量は、極めて少量であり、通常噴射の毎回の噴射量よりも少なくなるよう設定されている。例えば、目標噴射量が18mm3である場合、通常噴射の毎回の噴射量は6mm3であり、追加噴射の噴射量は2.5mm3である。燃料噴射装置14は、点火装置15の火花発生端部151の近傍に燃料を噴射する。
S165では、点火装置15による点火を行う。点火装置15は、ECU50によって制御され、火花発生端部151から火花を発生する。本実施形態の場合、点火装置15は、火花発生端部151が燃料噴射装置14の噴孔141の近傍に位置するよう設けられている。また、点火装置15による点火と燃料噴射装置14による追加噴射とは略同時に行う。これにより、追加噴射された燃料は、点火装置15から発生する火花により燃焼する。そして、追加噴射された第2所定量の燃料の燃焼で得られた熱量により、シリンダ11内に通常噴射により予め形成されている混合気を着火させる。
ここで、第2所定量を調節することで、着火時期を調節することができる。例えば、第2所定量を増加することで着火時期を短縮し、第2所定量を低減することで着火時期を延長することができる。
図10は、本実施形態の特定運転を行う場合の混合気の温度の時間経過による変化を示している。また、曲線L4はピストンの移動により圧縮される混合気の温度の変化を示し、L5は特定運転の制御による混合気の温度変化を示す。図10に示すように、特定運転の制御により、時刻t1で追加燃料を着火させる。すると、混合気は、時刻t2で着火可能な温度T1に達し、時刻t3で温度T2に達して完全着火する。ここで、「着火可能な温度」というのは、少なくとも一部の混合気の着火開始可能な温度を意味する。
図11は、上述した特許文献1に記載された発明と同様の構成における場合、混合気の温度の時間経過による変化を示す。また、曲線L6はピストンの移動により圧縮される混合気の温度の変化を示し、曲線L7は、追加圧縮を行った時の混合気の温度変化を示す。図11に示すように、追加圧縮により、時刻t4で追加圧縮を開始する。すると、混合気は、時刻t5で着火可能な温度T3に達し、時刻t6で温度T4に達して完全着火する。
図10および図11を比較すると、時刻t1から時刻t3までの時間は、時刻t4からt6までの時間より短いということが分かる。つまり、点火装置を用いることは、追加圧縮を用いることより熱の発生速度が速い。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)本実施形態では、シリンダ11内に予め形成されている混合気は、追加噴射された燃料を燃焼させて得られた熱量により着火する。これにより、従来のエンジンに比べ、熱の発生速度が速いため、着火遅れを抑制することができ、着火時期のばらつきを抑制することができる(図10および図11参照)。また、熱発生量は燃料の噴射量(第2所定量)により制御可能であるため着火時期の制御性を高めることができる。さらに、本実施形態の場合、混合気を自着火可能な温度まで昇温させるのに必要な熱量を発生する燃料の量(第2所定量)は、第1所定量に比べて極めて少ない。このため、追加噴射する燃料の量を低減することによりNOx(窒素酸化物)およびPMの発生を抑制することができる。
(2)本実施形態では、エンジン10の静的な圧縮比は、11.5〜12.5に設定されている。これにより、エンジン10の圧縮比を従来のエンジンの圧縮比より小さくすることで、燃焼時の最大圧力を低減することができる。このため、過給が可能になり、高負荷でPM(燃料の燃え残り)を低減することができ、すす等の抑制効果を高めることができる。したがって、低PM燃焼の運転範囲を拡大することができる。
また、本実施形態では、圧縮比の低下により熱効率が低下するが、予混合化によりエミッションに余裕ができるため、EGR(排気再循環)により還流する排気の量を低減することができる。よって、比熱比を増加することができる。
(3)本実施形態では、燃料噴射装置14による追加噴射は、ピストン13が上死点近傍に位置するときに行う。これにより、燃焼中心をピストン13の上死点に近付けることができる。したがって、熱効率の悪化を抑制することができる。
(4)本実施形態では、通常噴射では通常噴射により予混合気を形成する。所定量の燃料を一度に噴射すると噴霧が飛散し壁面に付着しやすくなる。これに対し、通常噴射により所定量の燃料を複数回に分けて噴射すると、燃料がシリンダの壁面に付着することを低減することができる。
(5)本実施形態では、追加噴射の噴射量は、極めて少量であり、通常噴射の毎回の噴射量よりも少なくなるよう設定されている。これにより、追加噴射された燃料の燃焼により、NOxおよびPMの発生を抑制することができる。
(6)本実施形態では、点火装置15の火花発生端部151は、燃料噴射装置14の噴孔141近傍に位置する。また、燃料噴射装置14は、点火装置15の火花発生端部151の近傍に燃料を噴射する。これにより、追加噴射された燃料を着火させる着火性を高めることができる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、通常運転および特定運転を選択的に行う例を示した。これに対し、他の実施形態では、特定運転のみ行うこととしても良い。
上記実施形態では、点火装置としてスパークプラグが開示されている。これに対し、他の実施形態では、点火装置としてレーザー点火装置またはプラズマ点火装置等を用いることとしても良い。
上記実施形態では、燃料噴射装置としてソレノイド式インジェクタを用いる例を示した。これに対し、他の実施形態では、燃料噴射装置としてピエゾ式インジェクタ等他の電子制御式インジェクタを用いることとしても良い。
上記実施形態では、エンジンの静的な圧縮比を11.5〜12.5に設定している。これに対し、他の実施形態では、例えばエンジンの静的な圧縮比を16に設定し、特定運転を行うときのみバルブタイミング調整装置等により動的に圧縮比を11.5〜12.5に設定することとしても良い。
上記実施形態では、エンジンの圧縮比は11.5〜12.5に設定されている。これに対し、他の実施形態では、燃焼室内に噴射された燃料を常に自着火させる圧縮比より小さい圧縮比であれば、エンジンの圧縮比を11.5より小さい圧縮比、または、12.5より大きい圧縮比に設定することとしても良い。
上記実施形態では、燃料噴射装置の通常噴射は、燃料を3回噴射する。これに対し、他の実施形態では、通常噴射により、燃料を1回、2回、または4回以上噴射することとしても良い。
以上、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限度において種々の形態で実施できる。
1 ・・・エンジンシステム
10 ・・・エンジン(内燃機関)
11 ・・・シリンダ
13 ・・・ピストン
14 ・・・燃料噴射装置
15 ・・・点火装置
110・・・燃焼室
141・・・噴孔
151・・・火花発生端部(点火源を生じる端部)
161・・・吸気弁
171・・・排気弁

Claims (7)

  1. 往復移動可能なピストンと、
    前記ピストンを収容し、前記ピストンの往復移動により容積が可変する燃焼室を有する筒状のシリンダと、
    噴孔を有し、当該噴孔から前記燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射装置と、
    点火源を生じることにより、前記燃焼室に噴射された燃料を着火させる点火装置と、
    前記燃料噴射装置の燃料噴射、および、前記点火装置の点火を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置は、
    通常運転を行う条件である通常運転条件を満たす場合、前記燃料噴射装置により第1所定量の燃料を噴射する通常噴射を行い、前記通常噴射により噴射された燃料と空気との混合気が前記ピストンの移動によって圧縮されることで得られた熱量により、前記混合気を自着火させ、
    前記通常運転条件とは異なる条件である特定運転条件を満たす場合、前記燃料噴射装置により、前記通常噴射の後、第2所定量の燃料を噴射する追加噴射を行い、前記点火装置により前記追加噴射された燃料を着火させて得られた熱量により、前記混合気を自着火させ
    前記特定運転条件は、前記燃焼室の圧縮比が前記通常運転条件での前記燃焼室の圧縮比と同じであり、前記ピストンの往復移動速度が所定値を超えることを前提条件として含むことを特徴とする内燃機関。
  2. 前記制御装置は、前記特定運転条件を満たす場合、前記ピストンが上死点近傍に位置するとき、
    前記燃料噴射装置により、前記追加噴射を行い、前記点火装置により、前記追加噴射された燃料を着火させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記特定運転条件は、前記燃焼室の圧縮比が前記燃焼室内に噴射された燃料を常に自着火させる圧縮比より小さいことを前提条件として含むことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
  4. 前記第2所定量は、前記第1所定量より少ないことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関。
  5. 前記制御装置は、前記燃料噴射装置により前記通常噴射を行うとき、前記第1所定量の燃料を複数回に分けて噴射することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関。
  6. 前記燃料噴射装置は、前記点火装置の前記点火源を生じる端部近傍に燃料を噴射することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関。
  7. 前記点火装置は、前記点火源を生じる端部が前記燃料噴射装置の前記噴孔近傍に位置するよう設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の内燃機関。
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