JP2005256734A - 筒内噴射エンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】 エンジンの高出力化、低燃費化及び排ガスのクリーン化を理想状態に実現するエンジンを提供する。
【解決手段】 エンジン1は、シリンダヘッド2に連通する副シリンダチューブ21及びこれ内を移動可能に挿着された副ピストン22を有する副シリンダ20と、シリンダヘッド2に設けられ、副シリンダ20を中央にして一方側に配置されて燃料室15内の混合気を点火させる点火プラグ25と、シリンダヘッド2に設けられ、副シリンダ20を中央にして他方側に配置されて燃焼室15内に直接燃料を噴射するインジェクタ30とを有する。インジェクタ30は、燃料の噴射方向が副ピストン22の移動中心軸方向に向くように配置される。副シリンダ20にはロック装置が設けられる。エンジン1は、運転状況に応じて成層火花点火燃焼方式、予混合圧縮自着火燃焼方式、複数噴射火花点火燃焼方式及び予混合火花点火燃焼方式のいずれかの燃焼方式で運転される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、筒内噴射エンジンに関し、シリンダヘッドに取り付けられた燃料噴射装置からシリンダ内に燃料を直接噴射する筒内噴射エンジンに関する。
このような筒内噴射エンジンには、インジェクタと呼ばれる燃料噴射装置が搭載されている。インジェクタはシリンダ内に噴射する燃料のタイミングや噴射量が制御可能であり、燃焼室内の混合気の空燃比を容易に制御することができる。このため、エンジンの高出力化、低燃費化及び排ガスのクリーン化が促進されている。
しかしながら、エンジンの高性能化には未だ改善の余地があり、特にエンジンの燃焼方式や圧縮比可変機構については旧来から種々の検討が行なわれている。例えば、ガソリンエンジンにおいて、燃料をシリンダ内に直接噴射して生成した混合気を、所定の運転領域において圧縮して自着火燃焼させる技術が検討されている(特許文献1参照)。この圧縮自着火燃焼の技術は、シリンダ内に燃料を2回に分けて噴射してシリンダ内に成層混合気を形成し、燃料の噴射時期や噴射パルス幅を燃焼の状況指数(筒内の圧力上昇率、圧力上昇最大値、クランク角度)によりフィードバック制御して、圧縮自着火領域の高負荷側で発生するノッキングや燃焼騒音を防止するものである。なお、圧縮自着火燃焼は、無限数の点火プラグを配設したような多点着火燃焼を実現するものであり、火花点火と比べて、燃焼時間が短く、より希薄な空燃比であっても安定した燃焼が可能であり、燃費を向上させることができる。また圧縮自着火燃焼は、通常の火花点火燃焼より燃焼温度が低い低温燃焼であるので、NOxの排出量が低減されて排ガスをクリーンにすることができる。
一方、圧縮比可変機構においては、エンジンのシリンダの頂部に燃焼室に連通する副シリンダを形成し、副シリンダ内に挿着された副ピストンはメカニカル機構及び油圧機構によって移動可能であり、副ピストンの移動に応じてエンジンの圧縮比を変えることができる技術が検討されている(特許文献2参照)。この可変圧縮機構を有したエンジンは、運転状況に応じて副ピストンの位置を最適制御して、理想的な出力や燃費を得ようとするものである。
特開2001−323832号公報 特開2001−515987号公報
ここで、従来の圧縮比可変機構を備えたエンジンでは、圧縮比可変機構を構成するメカニカル機構の占める容積が大きいため、特に多気筒エンジンに圧縮比可変機構を設けようとすると、構成が困難になって実現できない虞が生じる。また圧縮比可変機構にはロック機構が無いので、圧縮比可変機構によって副ピストンの位置を所望位置に移動させても燃焼室内の圧力変動によって副ピストンの位置がずれて所望の圧縮比が得られない虞もある。さらに混合気を形成してから燃焼に至るまでの燃焼パターンは単一であるので、エンジンの運転領域、特にエンジン始動時や加減速時等の運転状況に応じて圧縮比を変化させることができないとういう問題を有している。
一方、成層混合気を形成して圧縮自着火燃焼させる従来の技術では、圧縮自着火可能な領域の上限を僅かに拡大できるに過ぎず、エンジン負荷領域の一部分のみしか使用できないという問題は解決されていない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、多気筒を有したエンジンにおいても圧縮比を目標値に確実に設定可能であり、エンジンの運転状況に応じて圧縮比を可変でき、圧縮自着火可能でかつ広範囲の負荷領域で運転を可能にして、エンジンの高出力化、低燃費化及び排ガスのクリーン化を理想状態に実現する筒内噴射エンジンを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、エンジンのシリンダヘッドの頂部に開口してエンジンの燃焼室内に連通する副シリンダチューブ及び該副シリンダチューブ内を移動可能に挿着された副ピストンを有してなる副シリンダと、シリンダヘッドの頂部に設けられ、副シリンダを中央にしてその両側の一方側に配置されて燃料室内の混合気に点火する点火プラグと、シリンダヘッドの頂部に設けられ、副シリンダを中央にしてその両側の他方側に配置されてエンジンの燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射手段(例えば、実施形態におけるインジェクタ30)とを備え、該燃料噴射手段は、これから噴射される燃料の噴射方向が副ピストンの移動中心軸方向に向くように配置されることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の筒内噴射エンジンにおいて、エンジンに作用する負荷を検出するエンジン負荷検出手段(例えば、実施形態におけるクランク角センサ82、アクセル開度センサ51)と、該エンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷の大きさに応じて、副シリンダチューブに対する副ピストンの移動位置と燃料噴射手段及び点火プラグの作動制御内容とを含んだエンジンの燃焼方式を選択するエンジン運転選択手段(例えば、実施形態における電子制御ユニット(ECU)50)とを備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、副ピストンの移動位置を第1の移動位置に選択することで燃焼室の圧縮比を第1の圧縮比に設定すると共に、副ピストンの移動位置を第2の移動位置に選択することで燃焼室の圧縮比を第1の圧縮比より高い第2の圧縮比に設定することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段によりエンジン始動時に対応する負荷が検出されると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置を選択し、燃焼方式として燃料噴射手段から噴射された燃料噴霧を点火プラグの発火部(例えば、実施形態における放電電極25a)の周辺に集めて点火する成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段により低負荷が検出されると、副ピストンの移動位置として第2の移動位置を選択し、燃焼方式として燃料噴射手段から噴射された燃料噴霧が蒸発して生成させた予混合気を多点着火させる予混合圧縮自着火燃焼方式を選択することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段により中負荷が検出されると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置を選択し、燃焼方式として燃料噴射手段から噴射された燃料噴霧を前記点火プラグの発火部の周辺に集めて点火する成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段により低回転数から高回転数の範囲内のいずれかのエンジン回転数が検出され、且つ高アクセル開度が検出されると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置を選択し、燃焼方式として燃料噴射手段から噴射される燃料を複数回に分けて噴射して噴霧を点火プラグの発火部の周辺に集めて緩やかな成層混合気を形成して点火する複数噴射火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段により低回転のエンジン回転数が検出されているときに、アクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、副ピストンの移動位置として第2の移動位置から第1の移動位置に切り替えて選択し、燃焼方式として予混合圧縮自着火燃焼方式から成層火花点火燃焼方式に切り替えて選択することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項3に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段は、エンジン負荷検出手段により低回転のエンジン回転数が検出されているときに、アクセル開度の低下率が減速時に対応した所定値を超えると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置から第2の移動位置に切り替えて選択し、燃焼方式として成層火花点火燃焼方式から予混合圧縮自着火燃焼方式に切り替えて選択することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1に記載の筒内噴射エンジンの発明において、副シリンダには、副シリンダチューブに対する副ピストンの移動を規制するロック装置が設けられていることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項10に記載の筒内噴射エンジンの発明において、ロック装置は、副シリンダチューブ内に突出入動可能であって副ピストンに形成された係合凹部に係合可能なロックピンと、該ロックピンを移動させるピンアクチュエータと、該ピンアクチュエータの作動を制御するピン作動制御手段(例えば、実施形態におけるピン作動制御装置65、65')とを有してなることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項11に記載の筒内噴射エンジンの発明において、ピン作動制御手段は、副ピストンがエンジンの圧縮比を高める高圧縮比位置に移動すると、ロックピンが副シリンダ側に移動するようにピンアクチュエータの動作を制御して、副ピストンをロック状態にすることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項11に記載の筒内噴射エンジンの発明において、ピン動作制御手段は、エンジンが低負荷状態にあるときに該エンジンのアクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、ロックピンが副シリンダから離反する側に移動するようにピンアクチュエータの動作を制御して、副ピストンのロック状態を解除することを特徴とする
請求項14の発明は、請求項5に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段により副ピストンの移動位置を第1の移動位置に選択した際に、副ピストンが第1の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータを作動させて吸気バルブを遅閉じにして成層火花点火燃焼方式を選択すると共に、燃料噴射手段の噴射パルス幅上限を所定値に設定することを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項4に記載の筒内噴射エンジンの発明において、エンジン運転選択手段により副ピストンの移動位置を第2の移動位置に選択した際に、副ピストンが第2の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータの動作によりバルブオーバーラップを拡大させて成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする。
本発明に係わる筒内噴射エンジンによれば、シリンダヘッドの頂部に設けられた燃料噴射手段と点火プラグとの間に副シリンダを配設し、燃料噴射手段を、これから噴射される燃料噴霧の噴射方向が副ピストンの移動中心軸方向に向くように配置することで、燃料噴射手段から噴射される燃料の噴射時期や噴射量に応じて混合気を成層化することができる。つまり、点火プラグの発火部周辺に比較的リッチな混合気を集め、この周辺に比較的リーンな混合気を集めて成層混合気を形成することができる。このため、良好な点火性を得ることができる。また成層混合気を形成するためにエンジンのシリンダ内を移動する主ピストンの頂部に凹部を形成する必要性が無くなり、主ピストンの製造コストを安価にすることができる。さらに、燃料噴射手段から噴射される燃料噴霧の方向は副ピストンの移動中心軸方向であるので、点火プラグの発火部の周辺に比較的リッチな混合気を確実に集めることができ、成層混合気の点火性をより向上させることができる。
また、エンジン負荷の大きさに応じて、副シリンダチューブに対する副ピストンの移動位置とエンジンの燃焼方式が選択されることで、エンジン負荷の全領域において適切な副ピストンの移動位置と燃焼方式を設定することができ、エンジンの低燃費化及び排ガスのクリーン化を理想状態により近づけることができる。
また、エンジン運転選択手段は、副ピストンの移動位置を第1の移動位置または第2の移動位置を選択することで、燃焼室の圧縮比を第1の圧縮比またはこれより高い第2の圧縮比に設定することができる。
さらに、エンジン始動時では、副ピストンの移動位置として第1の移動位置が選択され、燃焼方式として成層火花点火燃焼方式が選択されることで、副ピストンが第1の移動位置に移動した状態で燃料噴射手段から燃料噴霧が噴射されてリッチな混合気が点火プラグの発火部周辺に形成され、リーンな混合気が燃焼室内の外側に形成される。このため、空燃比がリーンの混合気でもこれを確実に燃焼させることができ、エンジン始動時における燃費の向上を図ることができる。また、エンジンが冷態時の始動であっても同様のことがいえる。
さらに、エンジン負荷が低負荷時では、副ピストンの移動位置として第2の移動位置が選択され、燃焼方式として予混合圧縮自着火燃焼方式が選択されることで、副ピストンが第2の移動位置に移動した状態で燃料噴射手段から燃料噴霧が噴射されると、予混合気は圧縮されて自着火可能な温度に昇温して自着火する。つまり、エンジン負荷が低負荷になると、燃焼室内の予混合気が自着火可能な圧縮比になるように、副ピストンが第2の移動位置に移動する。このため、圧縮自着火燃焼によって、超リーン混合気であっても燃焼室内の予混合気は多点着火のように一斉に着火するので、空気サイクルに近い燃焼形態となって、高い理論熱効率が実現して、燃費を向上させることができる。また圧縮自着火燃焼は、通常の火花点火よりも燃焼温度が低いので、低温燃焼が可能になってNOxの排出量を低減することができ、排気ガスをよりクリーンにすることができる。
また、エンジン負荷が中負荷になると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置が選択され、燃焼方式として成層火花点火燃焼方式が選択されるので、副ピストンが第1の移動位置に移動した状態で燃料噴射手段から燃料噴霧が噴射されると、リッチな混合気が点火プラグの発火部周辺に形成され、リーンな混合気が燃焼室内の外側に形成される。このため、トータル空燃比のリーンな混合気でも確実に燃焼させることができ、運転領域が中負荷時における燃費の向上を図ることができる。
さらに、エンジン回転数として低回転数から高回転数の範囲内のいずれかの回転数が検出され、且つ高アクセル開度が検出されると、副ピストンの移動位置として第1の移動位置が選択され、燃焼方式として複数噴射火花点火燃焼方式が選択されることで、副ピストンが第1の移動位置に移動した状態で燃料噴射手段から燃料が複数回に分けて噴射されると、点火プラグの周りに緩やか成層混合気を形成することができる。このように要求燃料噴射量の多い領域でも緩やかな成層により燃料噴霧の蒸発を良好に保つことができ、点火プラグはススにより汚染されることなく良好な燃焼を実現できる。さらにトータルの空燃比をこの領域としては比較的リーンに維持できるので、従来のコンベンショナルな方式に対して良好な燃焼を得ることができる。
また、エンジン回転数が低回転数にあるときに、アクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、副ピストンの移動位置として第2の移動位置から切り替えられた第1の移動位置が選択され、燃焼方式として予混合圧縮自着火燃焼方式から切り替えられた成層火花点火燃焼方式が選択されることで、エンジンの圧縮比が低下して、ノッキングが発生することなく車両を所望の加速度で走行させることができる。
また、エンジン回転数が低回転数にあるときに、アクセル開度の減少率が減速時に対応した所定値を超えると、副ピストンの移動位置は第1の移動位置から第2の移動位置に切り替えて選択され、燃焼方式は成層火花点火燃焼方式から予混合圧縮自着火燃焼方式に切り替えて選択されることで、アクセル開度の減少率の増加にともなって燃焼室内に流れ込む空気の量が減少するため、ノッキングの危険性も減少するので燃費をよりかせぐため副ピストンの移動位置として第2の移動位置を選択し、燃焼方式として予混合圧縮自着火燃焼方式を選択することで、良好な燃焼でエンジンを運転することができる。
さらに、副シリンダに、副シリンダチューブに対する副ピストンの移動を規制するロック装置を設けることで、燃焼室の圧力変動に拘わらず副ピストンの位置を確実に固定することができ、その結果としてエンジンの圧縮比の変動を確実に防止することができる。
また、ロック装置は、副シリンダチューブ内に突出入動可能であって副ピストンに形成された係合凹部に係合可能なロックピンと、該ロックピンを移動させるピンアクチュエータと、該ピンアクチュエータの作動を制御するピン作動制御手段とを有してなることで、ピン作動制御手段によってピンアクチュエータを介してロックピンの突出入動を所望の動作に制御することができる。
また、ピン作動制御手段は、副ピストンがエンジンの圧縮比を高める高圧縮比位置に移動すると、ロックピンが副シリンダ側に移動するようにピンアクチュエータの動作が制御されて、副ピストンはロック状態にされるので、燃焼室内の圧力変動により副ピストンの位置がずれて高圧縮比が変動する事態を確実に防止することができる。
さらに、ピン動作制御手段は、エンジンが低負荷状態にあって、その後、自動車のアクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、ロックピンが副シリンダから離反する側に移動するようにピンアクチュエータの動作が制御されて、副ピストンのロック状態が解除されるので、燃焼方式が予混合圧縮自着火燃焼方式にあるときにアクセル開度の増加率が増大してノッキングが発生し易い環境になると、副ピストンの移動によって圧縮比を低下させ、また燃焼方式を切り替えることができ、その結果としてノッキングの発生を未然に防止することができる。
また、エンジン運転選択手段が副ピストンの移動位置を第1の移動位置に選択した際に、副ピストンが第1の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータを作動させて吸気バルブを遅閉じにして成層火花点火燃焼方式を選択すると共に、燃料噴射手段の噴射パルス幅上限が所定値に設定されるので、実圧縮比が第1の圧縮比に比較的近く保たれ、エンジン負荷が高負荷となることもないので副ピストンが所望に位置に移動しない場合の非常事態でもノッキングを発生させることなくまた言い換えればエンジンを破損させることなく自動車を安全に運転することができる。
更に、エンジン運転選択手段が副ピストンの移動位置を第2の移動位置に選択した際に、副ピストンが第2の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータの動作によりバルブオーバーラップを標準値に固定化して成層火花点火燃焼方式を選択することで副ピストンが所望に位置に移動しない場合の非常事態でもエンジンの失火を防止することができ、自動車を安全にかつクリーンなエミッションで運転することができる。
以下、本発明に係わる筒内噴射エンジンの好ましい実施の形態を図1から19に基づいて説明する。本実施の形態は、筒内噴射エンジンの一例として、4気筒水平対向型エンジンについて説明する。
筒内噴射エンジン1(以下、エンジン1と記す。)は、図1(平面図)に示すように、エンジン1の両端部にシリンダヘッド2が冠設されている。このシリンダヘッド2には、図2に示す吸気ポート3及び排気ポート4が2つずつ形成されている。吸気ポート3は吸気マニホルド5を介してエアチャンバ6に連通し、エアチャンバ6の上流側には、図示しないスロットル装置等を備えた吸気通路7が連通している。スロットル装置は、スロットル弁(図示せず)とこれを回動させるスロットルアクチュエータ8とを備え、スロットルアクチュエータ8は後述する電子制御ユニット(ECU)50からの信号によって制御される。
図2に示す排気ポート4は排気マニホルド10を介して排気管11に連通し、排気マニホルド10の途中には高温の排気ガスの一部をエアチャンバ6に環流するための排気ガス環流(EGR)通路12が設けられている。
各シリンダヘッド2には、図3(断面図)に示すように、シリンダヘッド2の頂部に開口してエンジン1の燃焼室15内に連通する副シリンダチューブ21及び該副シリンダチューブ21内を移動可能に挿着された副ピストン22を有してなる副シリンダ20と、シリンダヘッド2の頂部に設けられ、副シリンダ20を中央にしてその両側の一方側に配置されて燃料室15内の混合気を点火させる点火プラグ25と、シリンダヘッド2の頂部に設けられ、副シリンダ20を中央にしてその両側の他方側に配置されてエンジン1の燃焼室15内に直接燃料噴霧を噴射するインジェクタ30とが設けられている。
点火プラグ25は、先端の放電電極25aを燃焼室15内に突出した状態で取り付けられ、図1に示すイグニションコイル26を介してイグナイタ27に電気的に接続されている。インジェクタ30は、これから噴射される燃料の噴射方向が副ピストン22の移動中心軸22a方向に向くように配置されている。
副シリンダチューブ21は、一端側に燃焼室15に開口する開口部21aを形成し、他端側に副ピストン22のロッド部22bを挿通する挿通孔(図示せず)を形成している。副シリンダチューブ21内に移動自在に挿着された副ピストン22は、副シリンダチューブ21内に摺動可能に挿着されたピストン本体部22cと、ピストン本体部22cの一端側端部に繋がって延びる前述したロッド部22bとを有してなる。ピストン本体部22cの一端側(ロッド部22b側)の外周面には後述するロックピンに係合可能な係合凹部23が環状に形成されている。副ピストン22は、燃焼室15から離反する側の位置であってエンジン1の圧縮比を標準圧縮比にする標準圧縮比位置PLと、燃焼室15に接近する側の位置であってエンジン1の圧縮比を標準圧縮比よりも高い高圧縮比にする高圧縮比位置PHに移動可能である。副ピストン22が標準圧縮比位置PLに移動すると、ピストン本体部22cのロッド部側端面が副シリンダチューブ21のロッド側端面に当接して副ピストン22のロッド部側への移動が規制される。また、副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動すると、ピストン本体部22cの燃焼室側端部が副シリンダチューブ21の燃焼室側端部に当接して副ピストン22の燃焼室側への移動が規制される。
ロッド部22bの中間部には、副シリンダチューブ21に対する副ピストン22の移動位置を制御するための副ピストン駆動装置40が設けられている。副ピストン駆動装置40は、ロッド部22bに形成されてロッド部22bの軸心方向と直交する方向に延びる円板状の鍔部41と、鍔部41をロッド部22bの軸心方向に移動可能に保持するとともに、鍔部41を覆う筒状のシリンダ部42と、鍔部41によって仕切られたシリンダ部42内の一方側(副シリンダチューブ21から離反する側)の第1油室43と他方側(副シリンダチューブ21に接近する側)の第2油室44に図示しない油圧ポンプから供給される油を第1油室43及び第2油室44に流量制御を行なう流量制御弁45とを有してなる。流量制御弁45は、電磁式制御弁であり、後述するECUからの信号によってその作動が制御される。副ピストン22は、鍔部41の一方側側面に作用する油圧P1と他方側側面に作用する油圧P2との差圧ΔPに応じて移動方向及び移動速度が制御される。
副ピストン22のロッド部22bの一方側端部には、副ピストン22が標準圧縮比位置PLに移動している状態を保持する副ピストン保持装置35が設けられている。副ピストン保持装置35は、副ピストン22を燃焼室15側に付勢する圧縮ばね36と、ロッド部22bの一方側端部を挿抜可能であって電流が流れると励磁されてロッド部22bの一方側端部を引きつけて保持するコイル部37とを有してなる。つまり、副ピストン保持装置35は、コイル部37が非励磁状態になると、副ピストン22を移動可能な状態にするとともに、圧縮ばね36によって燃焼室15側に付勢されて移動させる。副ピストン保持装置35は、後述するECUによって作動が制御される。この制御内容の詳細については後述する。
副シリンダ20には、図4(a)及び図4(b)に示すように、副ピストン22の位置が高圧縮比位置PHに移動したか否かを検出する圧力センサ53が設けられている。この圧力センサ53は、これに繋がる油路54が副ピストン22のロッド部22b内に形成された連通油路24に連通すると、第1油室43内の油圧が作用して高い圧力を検出するように構成されている。連通油路24は、副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動すると油路54と連通し、副ピストン22が高圧縮比位置PHから標準圧縮比位置PL側に移動すると油路54との連通状態が遮断される。このため、副ピストン22の移動に応じて圧力センサ53の検出値が変わり、この検出値の変動によって副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動したか否かを検出することができる。
副シリンダ20の副シリンダチューブ21には、副シリンダチューブ21に対する副ピストン22の移動を規制するロック装置60が設けられている。ロック装置60は、図5(a)に示すように、副シリンダチューブ21内に突出入動可能であって副ピストン22に形成された係合凹部23に係合可能なロックピン61と、該ロックピン61を移動させるピンアクチュエータ62と、該ピンアクチュエータ62の作動を制御するピン作動制御装置65とを有してなる。副シリンダチューブ21の側面部にはロックピン61を挿抜可能な挿通孔18が形成され、この挿通孔18は、副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動したときに、係合凹部23に連通可能な位置に形成されている。このため、副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動してロックピン61が挿通孔18を通って係合凹部23と係合すると、副ピストン22を高圧縮比位置PHにロックさせることができる。なお、挿通孔18は、図5(b)(断面図)に示すように、副ピストン22が標準圧縮比位置PLに移動すると、ピストン本体部22cの先端部が挿通孔18を露出させる位置に移動して挿通孔18を介して副シリンダチューブ21内の空間部が外部に連通した状態になる。しかしながら、ロックピン61は、副ピストン22のロック状態を解除してもその先端部が挿通孔18内に挿入されたままの状態になって挿通孔18を塞ぐ。このため、副シリンダチューブ21内の混合気が外部に吐出することはない。
ピンアクチュエータ62は、油圧式の複動シリンダであり、シリンダチューブ64とこの内側を移動自在に挿通されたピストン63とを有してなる。ピストン63のロッド部が前述したロックピン61を構成している。ピンアクチュエータ62にはロッド側油室64aに連通する圧力センサ58が設けられている。この圧力センサ58は、図5(a)に示すように、ロックピン61が副ピストン22をロックするロック位置PRに移動すると、ピストン63によってロッド側油室64aと圧力センサ58とを繋ぐ油路59が遮断されて、低圧信号を出力する一方、図5(b)に示すように、ロックピン61が非ロック位置PKに移動するとロッド側油室64aと油路59とが連通状態になって、高圧信号を出力するようになっている。ピン作動制御装置65は、電磁式の方向切替弁であり、本体部66と、本体部66内に移動可能に保持されたスプール67と、スプール67の移動を制御するコイル部68とを有してなる。コイル部68はスプール67の一方側の端部に配設され、コイル部68に電流が流れるとコイル部68は励磁状態になってスプール67をコイル部68側に引き寄せ、コイル部68が非励磁状態になると本体部66内に設けられた圧縮ばね69によってスプール67がコイル部68から離反する方向に付勢されて移動する。
本体部66には、図示しない油圧ポンプから供給された油が流れるポンプ油路70と、タンクに連通するタンク油路71と、ピンアクチュエータ62のボトム側油室64bに連通するボトム室油路72と、ピンアクチュエータ62のロッド側油室64aに連通するロッド室油路73とが繋がっている。スプール67内にはスプール67の移動方向に延びる連通油路75と、タンクに油を戻す2つの帰還油路76、77が形成されている。連通油路75は、図5(a)に示すように、スプール67が、励磁されたコイル部68によって保持されると、連通油路75を介してポンプ油路70とボトム室油路72とが連通し、ロッド室油路73と帰還油路77とが連通してピンアクチュエータ62は伸長動する。一方、コイル部68が非励磁状態になると、図5(b)に示すように、連通油路75を介してポンプ油路70とロッド室油路73とが連通するとともに、ボトム室油路72とタンク油路71とが帰還油路76を介して連通してピンアクチュエータ62は縮小動する。なお、ピン作動制御装置65は、後述するECUによって作動が制御される。この制御内容の詳細については後述する。
再び図1に示すように、各シリンダヘッド2内には動弁機構80が設けられている。この動弁機構80は、ECU50からの駆動信号によってバルブタイミングを連続的に変更可能なカム可変アクチュエータ81を有している。ECU50は、各種センサからのエンジン負荷信号に応じて副シリンダ及びロック装置等の作動を制御する。ECU50は、センサとしてクランク角センサ82、カム角センサ83、水温センサ84、アクセル開度センサ51が電気的に接続されている。クランク角センサ82は、クランクプーリ85に等間隔で複数突設された突起を検出してパルス信号に変換してエンジン回転数を検出する機能を有する。カム角センサ83は、カムプーリ86に設けられた突起による信号を検出する電磁ピックアップであり気筒判別、行程判別を行うために設置されている。アクセル開度センサ51は、アクセルペダルの踏み込み量に比例した電圧値を出力する。また、ECU50の出力側には、スロットルアクチュエータ8、カム可変アクチュエータ81、前述した副ピストン保持装置35、副ピストン駆動装置40、ロック装置60等の各種アクチュエータが電気的に接続されている。
このように構成されたエンジン1は、運転状況に応じてエンジン1の燃焼形態を、成層火花点火燃焼方式、予混合圧縮自着火燃焼方式、複数噴射火花点火燃焼方式(2ゾーン火花点火燃焼)及び予混合火花点火燃焼のいずれかの燃焼方式に選択されて運転される。これらの燃焼方式は、図6(b)に示すように、エンジン回転数Nとエンジン負荷Lとをパラメータとして運転領域を運転領域Iから運転領域IVに区分して、それぞれの運転領域に対応した燃焼方式を設定している。即ち、運転領域Iでは予混合圧縮自着火燃焼を行ない、運転領域IIでは成層火花点火燃焼を行ない、運転領域IIIでは予混合火花点火燃焼を行ない、運転領域IVでは2ゾーン火花点火燃焼を行なうように設定されている。また各運転領域I〜IVは、図6(a)に示すように、エンジン回転数Nとアクセル開度αとをパラメータとしたα−Nマップ上に特定されるとともに、各運転領域には図3に示すインジェクタ30から噴射される燃料の噴射量が予め設定されている。なお、図6(a)及び(b)に示す運転領域Vについては、後述する。
成層火花点火燃焼は、図7に示すように、始動時、暖機時、低負荷急加速時及び中負荷時において行なわれ、圧縮行程の後期の比較的に遅い時期にインジェクタ30から燃料が噴射されて、この燃料を点火プラグ25の放電電極の周辺に比較的リッチな混合気として集めて、良好な点火性を得るものである。図8は成層燃焼時の混合気生成の例であり、圧縮行程中にインジェクタ30から噴射された噴霧はピストン頂面で反射して点火プラグ25周辺と副シリンダチューブ21内に貯留する。この際、噴霧はピストン頂面の熱を吸収して蒸発しやすい状況となる。従って、良好な着火性を得ることができる。
予混合圧縮自着火燃焼は、低回転低負荷時、低回転中負荷減速時において行なわれ、図1に示す動弁機構80のカム可変アクチュエータ81によって排気上死点の前後にかけて吸気弁と排気弁とがともに開弁するオーバーラップ期間を小さくするように吸気弁及び排気弁のバルブタイミングを設定して内部EGR率を制御し、このオーバーラップ期間中又は吸気行程中に図8に示すインジェクタ30から燃料が噴射されて、燃焼室15のガス温度が自着火可能温度に達する前に均一予混合気を形成し、自着火温度に達したときに、燃焼室15内の混合気が一斉に着火して火炎が伝播しない、いわば無限数の点火プラグ25を配したような多点着火燃焼を実現させるものである。つまり、予混合圧縮自着火燃焼は、オーバーラップ期間中に、燃焼室15内に閉じこめられた残留ガスが図8に示すピストン14の上昇にともなって予圧昇温され、その後の吸気行程において吸入された新規ガスが残留ガスにより昇温されるとともに、この新規ガスはその後の圧縮行程によっても昇温されて、自着火可能温度に達する。なお、予混合圧縮自着火燃焼においては、副ピストン22は高圧縮比位置PHに移動している。
図6に示す領域Iでの圧縮自着火燃焼は、その典型的なケースにおいて混合気の燃焼温度が1800℃程度であり、通常の点火によるそれと比較して200℃程度低く、混合気が一斉に着火するので急速低温燃焼が可能である。このため、低温燃焼であるので、NOxの排出量が低減され、しかも一斉に着火するので熱効率が良く、その分希薄燃焼が可能になって直噴ディーゼルエンジン並の燃費を確保しながら、希薄燃料である利点を生かして排気ガスをクリーンにすることができる。なお、予混合圧縮自着火燃焼では、排気上死点の前後にかけて吸気弁と排気弁とがともに閉弁する負のオーバーラップ期間を調整して内部EGR率を制御してもよい。
予混合火花点火燃焼は、高回転数時に行なわれ、吸気行程の初期等の比較的早い時期にインジェクタから燃焼室内に燃料を噴射し、噴射された燃料と新規吸気との混合を促進して、点火プラグ25による点火の際には、均質化された混合気を形成するものである。
2ゾーン火花点火燃焼は、全回転高負荷時に行なわれ、吸気行程の初期等の比較的早い時期及び圧縮行程の比較的遅い時期に図8に示すインジェクタ30から燃焼室15内に燃料を噴射し、最初に噴射された燃料により形成された混合気と後から噴射された燃料により形成された混合気によって層状の混合気が形成され、後から噴射された燃料の混合気が図8に示す点火プラグ25の放電電極25aの周辺に集められて点火されるものである。この成層化は緩やかなものであるので、要求噴射量の多い領域でも点火プラグ25のくすぶりを引き起こすことなく、コンベンショナルな燃焼方式よりもオーバーオールでみてリーンな混合気で運転することができ、燃費が改善される。
次に、エンジン燃焼形態が切り換え制御されるエンジンの運転をフローチャートに従って説明する。先ず、エンジン1を始動し、車速が低速から高速に移行する場合について説明する。図9に示すように、先ず、エンジンスイッチがON状態にされると、ステップ101において、図3に示すエンジン1の圧縮比を標準圧縮比にする副ピストン22の位置、即ち、副ピストン22が標準圧縮比位置PLにあるか否かを判断するため、副ピストン保持装置35のコイル部37に電圧が印加されているか否かを判定する。副ピストン22が標準圧縮比位置PLにないと判定されると、ステップ102において、図5(b)に示すロック装置60のロックピン61が副シリンダ20から離反する側(非ロック位置PK)に移動しているか否かを判断するため、ピンアクチュエータ62に設けられた圧力センサ58の信号が高圧信号であるか否かを判定する。ロックピン61が非ロック位置PKにないと判定されると、ステップ103において、図5(b)に示すピン作動制御装置65のコイル部68に供給されている電圧印加を遮断してロックピン61を非ロック位置PKに移動させる。
そして、ステップ102において、ロックピンが非ロック位置にあると判定されると、ステップ104において、副シリンダを高圧縮比位置から標準圧縮比位置に移動させるため、図3に示す副ピストン駆動装置40の流量制御弁45の作動を制御して鍔部41に作用する差圧による力の向きが燃焼室15から離反する方向になるようにする。また図3に示す副ピストン保持装置35のコイル部37に電圧を印加する。その結果、副ピストン22は標準圧縮比位置PLに保持される。そして、ステップ105において、吸気弁及び排気弁(以下、バルブと記す。)のバルブオーバーラップ角度が標準状態にあるか否かを判定する。つまり、図1に示す動弁機構80のバルブタイミングをカム可変アクチュエータ81によって排気上死点の前後にかけて吸気弁及び排気弁がともに開弁するオーバーラップ期間が小さくなるバルブタイミングに設定されているか否かを判定する。そして、バルブオーバーラップ角度が標準状態にない場合には、ステップ106に移行して、カム可変アクチュエータによってバルブオーバーラップ角度を標準状態にする。
一方、バルブオーバーラップ角度が標準状態にある場合には、ステップ106において、図1に示すスロットルアクチュエータ8によってスロットル弁をワイドオープンスロットル(WOT)に制御し、ステップ107において、セルモータを駆動させ、ステップ108において、点火プラグ25を点火作動させてエンジンを駆動させる。そして、ステップ109において、エンジンの燃焼方式を成層火花点火燃焼方式に設定する。このように、エンジンの始動時は成層火花点火燃焼方式によって運転が行われるため、リーンな空燃比でエンジンを始動させることができ、エンジン始動時の燃費を向上させることができる。
エンジンが成層火花点火燃焼方式によって始動すると、ステップ112に移行して、エンジン内の冷却水温度Twを読み込み、ステップ113において、エンジン内の冷却水温度Twが所定温度Tkを超えているか否か、つまりエンジンが暖機状態にあるか否かを判定する。そして、エンジンが暖機状態にないと判定されると、図11に示すステップ134に移行する。一方、エンジンが暖機状態にあると判定されると、図10に示すように、ステップ114において、車両が走行状態にあるか否かが判定され、車両が非走行状態、即ち、停止状態にあるときには、ステップ112へ移行し、車両が走行状態にあるときにはステップ115に移行する。
ステップ115では、エンジン回転数Nが所定の低回転数N以下であり且つアクセル開度αが所定の低アクセル開度α以下であるか否か、即ち、エンジンの運転領域が図6(a)に示すα−Nマップ上の運転領域Iの範囲内にあるか否かが判定される。エンジンの運転状況が運転領域Iにないと判定されると、S115−1へ移行する。一方、エンジンの運転状況が運転領域Iにあると判定されると、ステップ116において、エンジンの圧縮比を高めるため、図3に示す副シリンダ20の副ピストン22を標準圧縮比位置PLから高圧縮比位置PHに移動させる。つまり、副ピストン保持装置35のコイル部37への印加電圧を遮断し、副ピストン駆動装置40によって副ピストン22を高圧縮比位置PHに移動させる。
そして、ステップ117において、副ピストンが高圧縮比位置にあるか否かを図4(a)に示す圧力センサ53からの検出値の大小によって判断する。即ち、圧力センサ53からの検出値が小さいと、副ピストン22が高圧縮比位置PHにないと判定されて、ステップ116に戻り、副ピストン22が高圧縮比位置PHにあると判定されると、ステップ118に移行して、図5に示すロック装置60のロックピン61を副シリンダ20に接近する側(ロック位置PR)に移動させる。ロックピン61がロック位置PRに移動すると、ロックピン61が副ピストン22の係合孔23に係合して、副ピストン22はロック状態になる。このため、燃焼室内の圧力が大きく変動しても副ピストン22は移動せず、その結果として副ピストン22が脈動する事態を確実に防止することができるとともに、エンジンの圧縮比を高圧縮比にしたままに維持することができる。
そして、ステップ119において、吸気弁と排気弁とがともに開弁するオーバーラップ期間を小さくするように、カム可変アクチュエータを作動させる。その結果、内部EGR率を増加させることができる。そして、ステップ120において、エンジンの燃焼方式を予混合圧縮自着火燃焼方式に設定して、点火プラグ25の作動をOFFにする。
つまり、車両が低速且つ低負荷の状態で走行すると、エンジンの燃焼方式は、成層火花点火方式から予混合圧縮自着火燃焼方式に切り換えられる。予混合圧縮自着火燃焼方式では極めてリーンの混合気で運転できるので低速且つ低負荷の運転状態では低燃費を維持することができ、さらにNOx排気量を非常に少なく抑えることができる。
さて、エンジンが予混合圧縮自着火燃焼方式で運転されているときに、アクセル開度αが加速側に増加しているか否かが判断され(ステップ122)、アクセル開度αが加速側に増加していなければステップ122の判断が繰り返されて車両は低速走行したままとなる。一方、アクセル開度αが加速側に増加していると判定されると、ステップ123に移行してエンジン回転数Nが所定の低回転数N以下の状態にあるか否かが判断され(ステップ123)。ここで、エンジン回転数が低回転数Nを超えていると判定されると、ステップ115−1にステップする。一方、エンジン回転数Nが予め設定された所定の低回転数N以下であると判定されると、ステップ124に移行して、アクセル開度αが図6(a)に示すα−Nマップ上における低回転低負荷(低アクセル開度)領域Iの上限のアクセル開度上限値αLよりも僅かに小さいアクセル開度αよりも大きいか否かが判断される。
詳細については後述するが、車両が低速走行しているときに急加速走行するようにアクセルが踏み込まれた場合、エンジンの燃焼方式を予混合圧縮自着火燃焼方式から成層火花点火燃焼方式に変更する指令信号が出力されてから実際に燃焼方式が変更されるまでには、図3に示す副ピストン22や図5(a)に示すロックピン61の移動が完了する必要があり、燃焼方式の変更には若干時間がかかる。このため、ステップ124において、アクセル開度αが図6(a)に示すα−Nマップ上の燃焼方式を切り換える境となるアクセル開度αよりも僅かに小さいアクセル開度のときにアクセル開度の増加率が所定値を超えると燃焼方式を変更するようにして、メカ機構(副ピストン等)の作動による燃焼方式の変更時期のタイミングの遅れをカバーしている。
具体的には、ステップ124において、アクセル開度αがアクセル開度αよりも大きくないと判断されると、ステップ122にリターンし、アクセル開度αがアクセル開度αよりも大きくなると、ステップ125に移行して、アクセル開度の増加率が所定値Δαを超えているか否かが判断され、超えていれば後述するステップ127に進み、成層燃焼に切り換えるための手順を経てステップ132において、燃焼方式が成層火花点火燃焼方式に切り換えられる.
一方、ステップ125の判断において、アクセル開度の増加率が所定値Δαを超えていなければステップ126に移行して、アクセル開度αがαより大きいか否かが判断される。ステップ126において、アクセル開度αがαより大きいと判断されると、ステップ127に進み、成層燃焼に切り換えるための手順を経てステップ132において、燃焼方式が成層火花点火燃焼方式に切り換えられ、アクセル開度αがαより大きくないと判断されると、ステップ122にリターンする。
そして、図11に示すように、ステップ127において、燃焼方式を成層火花点火燃焼方式に切り換えるため、図5(b)に示すロック装置60のコイル部68に印加されている電圧を非印加状態にしてロックピン61を非ロック位置PKに移動させる。そして、ステップ128において、ロックピンが非ロック位置に移動したか否かが判定され、即ち、図5(b)に示す圧力センサ58から高圧信号が出力された状態にあるか否かが判定される。ロックピンが非ロック位置になければ、ステップ127の作動が繰り返され、ロックピンが非ロック位置にあればステップ129に移行する。
ステップ129では、前述したステップ104と同様に、図4(b)に示す副シリンダ20の副ピストン22を高圧縮比位置から標準圧縮比位置PLに移動させるため、副ピストン駆動装置40の流量制御弁45の作動を制御して鍔部41に作用する差圧による力の向きが燃焼室15から離反する方向になるようにする。また図3に示す副ピストン保持装置35のコイル部37に電圧を印加する。その結果、副ピストン22は標準圧縮比位置PLに保持される。そして、ステップ130において、副ピストンが標準圧縮比位置にあるか否かを判定する。尚、この判定方法は、前述したステップ101の判定と同じ内容である。副ピストンが標準圧縮比位置にないと判定されると、ステップ129の内容が繰り返され、副ピストンが標準圧縮比位置あると判定されると、ステップ131において、バルブオーバーラップ角度が標準状態に戻され、ステップ132において、エンジンの燃焼方式を成層火花点火燃焼方式に設定して点火プラグ25の作動をON状態にする。その後、ステップ112へリターンする。
このように、エンジンの運転領域が低負荷、低回転領域にあるときに車両が急加速するようにアクセル操作が行なわれると、燃焼方式が予混合圧縮自着火燃焼方式から成層火花点火燃焼方式に切り替わる。これは、予混合圧縮自着火燃焼方式により予混合気が燃焼しているときに、アクセル開度の増加率が上昇すると、燃焼室内に流れ込む空気の量が増加してノッキングが発生し易い環境になる。そこで、エンジンの圧縮比を低下させるため副ピストンの移動位置を高圧縮比位置から標準圧縮比位置に切り替える。また、急加速するには燃焼速度が早い燃焼方式にする必要がある。そこで、燃焼速度が速い成層火花点火燃焼方式を選択する。その結果、ノッキングが発生することなく、車両を所望の加速度で走行させることができる。
一方、ステップ115の判定において、エンジンの運転状況が運転領域Iにないと判定されると、ステップ115−1に移行し、エンジン回転数Nが所定の低回転数Nを超え且つアクセル開度αが所定の高アクセル開度αを下回っているか否か、即ち、エンジンの運転領域が図6(a)に示すα−Nマップ上の運転領域IIIの範囲内にあるか否かが判定される。エンジンの運転領域が運転領域IIIにないと判定されると、ステップ134へ移行し、エンジンの運転領域が運転領域IIIにあると判定されると、ステップ115−2に移行する。ステップ115−2から以降のステップ115−4にかけては、前述のステップ102からステップ104と同じ内容であるため詳細な説明は省略する。
ステップ115−2では、ロック装置60のロックピン61が副シリンダ20から離反する側(非ロック位置PK)に移動しているか否かの判定を行ない、ロックピン61が非ロック位置PKにないと判定されると、ステップ115−3において、ロックピン61を非ロック位置PKに移動させる。そして、ステップ115−2において、ロックピン61が非ロック位置PKにあると判定されると、ステップ115−4において、副ピストン22が標準圧縮比位置になるように副ピストン駆動装置40の流量制御弁を制御する。また、副ピストン保持装置35のコイル部37に電圧を印加して副ピストン22を標準圧縮比位置に保持する。
続くステップ115−5において、前述したステップ101の判定方法により副ピストンが標準圧縮比位置にあるか否かを判定する。副ピストンが標準圧縮比位置にないと判定されると、ステップ115−4の内容が繰り返され、副ピストンが標準圧縮比位置にあると判定されると、ステップ115−6において、バルブオーバーラップ角度が標準状態に戻され、続くステップ115−7にて、エンジンの燃焼方式を予混合火花点火燃焼方式に設定して点火プラグ25の作動をON状態にする。その後、ステップ112へリターンする。
さて、ステップ113またはステップ115−1から、図11に示すステップ134に移行すると、アクセル開度αが高アクセル開度αを超え、且つエンジン回転数Nが低回転数Nを超えているか否かが判定される。即ち、エンジンの運転領域が図6(a)に示すα−Nマップ上の運転領域IVの範囲内にあるか否かが判定される。なお、低回転数Nは前述した低回転数Nよりも小さい予め設定された回転数である。一方、上述の運転領域IVの範囲内にないと判断されると、前述したステップ127へ移行して燃焼方式が成層火花点火燃焼方式に設定される。一方、アクセル開度α及びエンジン回転数Nが前述した所定値を超えていると、2ゾーン火花点火燃焼が行なわれる(ステップ135)。このため、緩やかな成層混合気が形成され、このように要求噴射量の大きな領域でも点火プラグにくすぶりを発生させることなく、コンベンショナルな方式よりもオーバーオールでリーンの混合気で運転することができ、良好な燃費を得ることができる。
なお、図12に示すように、ステップ129の後に、ステップ130'を設けて、副ピストン22の位置が標準圧縮比位置PLに移動されてから(ステップ129)、アクセル開度αが高アクセル開度αに達するまでエンジンの燃焼方式を予混合圧縮自着火燃焼方式にして運転するようにしてもよい。つまり、図7に示す低回転中負荷時におけるエンジンの運転領域を図6(a)に示すα−Nマップ上において、アクセル開度αがアクセル開度αとαの間にあり、且つエンジン回転数Nが所定の低回転数N以下の領域を運転領域Vとし、この運転領域Vにて副ピストン22の位置が標準圧縮比位置PLにされた予混合圧縮自着火燃焼方式を行うようにしている。
このように本発明のエンジンは、図7に示すように、始動時、暖機時及び低回転中負荷時において燃費を向上させる燃焼方式(成層火花点火燃焼方式、予混合圧縮自着火燃焼方式)が採用され、急加速時及び高負荷時では成層火花点火燃焼方式及び2ゾーン火花点火燃焼方式が採用されることで、超低燃費領域又は超低エミッション領域と急加速・高負荷走行領域とが両立可能なエンジンを提供することができる。また、始動時及び暖機時において、成層火花点火燃焼方式を採用することで、エネルギーロスを抑制することができ、燃費の最適化を行なうことができる。
また、エンジンが成層火花点火燃焼方式によって運転されている状態から、急減速するようにアクセル開度αの低下率が所定値を超えて減速される場合、アクセル開度αが所定のアクセル開度αに達する前に副ピストン22を高圧縮比位置に移動させると共にエンジンの燃焼方式を予混合圧縮自着火燃焼方式に設定することが好ましい。これは、前述したエンジンの運転状態が低負荷、低回転領域にあるときに急加速する場合と同様に、メカ機構(副ピストン等)の作動による燃焼方式の変更時期のタイミング遅れをカバーするためである。この成層火花点火燃焼方式から予混合圧縮自着火燃焼方式へ移行する制御について図13のフローチャートに従って説明する。なお、図13のフローチャートは、前述した図11のフローチャートのステップ132の状態を起点とするものである。
先ず、燃焼方式が成層火花点火燃焼方式に設定された後(ステップ132)、ステップ140では、図6(a)に示すα−Nマップ上に運転領域II内のアクセル開度αが、前述したアクセル開度上限値αよりも僅かに大きなアクセル開度αよりも小さいか否かが判断される。
アクセル開度αがアクセル開度αよりも小さくないと判断されると、ステップ112へリターンする。一方、アクセル開度αがアクセル開度αよりも小さいと、ステップ141に移行して、エンジン回転数Nが所定の低回転数N以下であるか否かが判断され、超えていればステップ115−7へスキップして燃焼方式が予混合火花点火燃焼方式に切り換えられ、超えていなければステップ142に移行する。ステップ142では、アクセル開度の減少率が所定値Δαを超えているか否かが判断され、超えていれば、燃焼方式を成層火花点火燃焼方式から予混合圧縮自着火燃焼方式に切り換える前述した手順(ステップ116)に移行し、超えていなければステップ143に移行して、アクセル開度αがαより小さいか否かが判断される。ステップ143において、アクセル開度αがαより小さいと判断されると、燃焼方式を切り換えるステップ116に移行し、アクセル開度αがαより小さくないと判断されると、ステップ140にリターンする。
このように、車両が低速中負荷状態にあるときにアクセル開度αの低下率が所定値を超えて減速すると、予混合火花点火燃焼方式への切り換えと副ピストン61の高圧縮比位置への移動が、通常時のタイミングに対して早く行われる。
なお、前述した実施の形態では、図5(a)に示すロックピン61が係合する係合凹部23はピストン本体部22cに設けられた例を示したが、図14(a)に示すように、ロッド部22bの先端部に設けられてもよい。この場合、ピンアクチュエータ62は、図14(b)に示すように、副ピストン22が高圧縮比位置PHに移動したときにロックピン61が係合凹部23に係合可能な位置に配置する。このようにロッド部22bの先端部に係合凹部23を設けることで、副シリンダチューブ21にロックピン61を挿通させる図5(a)に示す挿通孔18を設ける必要性が無くなり、副シリンダチューブ21から混合気が漏れ出す虞を確実に防止することができる。
また、図15(a)に示すように、副ピストン22のロッド部22bに2つの副ピストン駆動装置40、40'を設けてもよい。この場合、ピストン本体部22c側に配置された副ピストン駆動装置40'は、副ピストン22が図15(b)に示す高圧縮比位置PHから図15(a)に示す標準圧縮比位置PLに移動させる場合に駆動する。その結果、エンジンの燃焼方式を予混合圧縮自着火燃焼から成層火花点火燃焼方式に代えるときに、2つの副ピストン駆動装置40、40'を駆動させることで、副ピストンを標準圧縮比位置PLに迅速に移動させることができるとともに、エンジンの圧縮比を短時間で標準の圧縮比にすることができる。なお、図15(a)には、係合凹部23がピストン本体部22cに設けられた例を示しているが、ロッド部22bの先端部に係合凹部23を設けてもよい。
また、図16に示すように、ロック装置60によって副シリンダ20を高圧縮比位置PHでロックするタイミングを、圧力センサからの検出値に応じて制御してもよい。即ち、燃焼室15内の圧力を検出する第1圧力センサ91をシンリンダヘッド2に設け、副ピストン駆動装置40のシリンダ部42内の第1油室43及び第2油室44内の圧力を検出する第2圧力センサ92及び第3圧力センサ93をシリンダ部42に設ける。そして、第2圧力センサ92と第3圧力センサ93とから検出された検出値に応じて副ピストン22を燃焼室15側へ付勢する差圧を算出し、第1圧力センサ91により検出される所定期間内の圧力の最大値よりも小さい場合のみ、ロック装置60を作動させて副ピストン22をロック状態にするようにしてもよい。
さらに、図17に示すように、ピンアクチュエータ62に2つのロッド側油圧室64a、64cを設けて、これらのロッド側油圧室64a、64cのそれぞれに油を供給するように作動するピン作動制御装置65、65'を設けてもよい。ピン作動制御装置65'は、ピン作動制御装置65によってロックピン61が非ロック位置に移動されるようにコイル部68に電圧が印加されたときから所定時間を経過しても、ロックピン61が非ロック位置に移動したことを圧力センサ58が検出しないときに、ロックピン61を非ロック位置側に移動させるようにロッド側油室64cに油を供給するように作動する。つまりピン作動制御装置65'は、ピン作動制御装置65の安全装置としての役割を果たす。このため、ロック装置60にピン作動制御装置65'をさらに設けることで、副シリンダ20のロック解除を確実に行なうことができる。
図18においてロックピン動作フェイルセーフについて示す。ステップ150においてロックピンのロック解除信号を発信し、所定期間を経て、ステップ154にてロックピンのへこみ信号が圧力センサ58から得られるかどうかをチェックする。へこみ信号が得られた場合はシステムが正常に機能していると判断してルーチンを抜ける。へこみ信号が得られない場合はロックピンが副ピストンに膠着していると判断してS155に進み、アクセル開度が所定値αより大であるかどうかの判定を行う。ここで判定がYESであればエンジン負荷は中負荷状態にあると判断し、S156に進み、点火プラグの作動を常時ON状態に固定する。次いでステップ157にて実圧縮比を下げるためにECUよりカムアクチュエータに作動指令を出し、吸気バルブの遅閉じを実行する。さらにステップ158にて燃料噴射タイミングマップを成層燃焼用に固定化する。そしてステップ159にて燃料噴射パルス幅上限を設定してドライバーが例え全負荷運転をしようとアクセル全開加速を試みても、一定以上の負荷がかからないようにしてノッキングによるエンジンの破損を防止する。なお、この際、ドライバーにはシステムが異常であることをインパネ上に表示して知らせるものとする。
図19において副ピストン動作フェイルセーフについて示す。ステップ160において副ピストン移動信号(標準圧縮比→高圧縮比)を発信して所定期間を経てからステップ164にて副ピストンがPH(高圧縮比)位置にあるかどうかをチェックする。このステップでPH位置にある信号圧力センサ53から得られれば、システムは正常と判断してこのルーチンを抜ける。信号が得られなければ副ピストンが副シリンダに膠着しているなどの異常が発生してと判断してステップ165にてアクセル開度が所定値αより小さいかどうかを調べる。YESであればエンジン負荷が低負荷状態に入って、圧縮自着火燃焼をさせるべきであるのに低圧縮比状態で燃焼の要件を満たしていないと判断してステップ166に進み、点火プラグの作動の固定を行う。さらに成層燃焼で運転を実施するためにステップ167でバルブオーバーラップを標準値に固定し、ステップ168で燃料噴射タイミングマップを成層燃焼用に固定する。
これにより、上記条件下においてもエンジンを失火させることなく運転することができる。なお、本ケースにおいては、ドライバーにはシステムが異常であることをインパネ上に表示して知らせるものとする。
本発明の一実施の形態に係わる筒内噴射エンジンの平面図を示す。 この筒内噴射エンジンのシリンダヘッドの概略平面図を示す。 このシリンダヘッド周辺の断面図を示す。 筒内噴射エンジンに設けられたロック装置を示し、同図(a)は副シリンダがロックされた状態を示し、同図(b)は副シリンダが非ロック状態にある場合を示す。 このロック装置の断面図を示し、同図(a)はロックピンがロック位置にある場合を示し、同図(b)はロックピンが非ロック位置にある場合を示す。 エンジンの燃焼領域を表す図であり、同図(a)はエンジン回転数とアクセル開度をパラメータとしたものを示し、同図(b)はエンジン回転数と負荷をパラメータとしたものを示す。 運転状態に応じたエンジンの燃焼形態を示す。 成層火花点火燃焼における成層混合気のモデル図を示す。 エンジンの燃焼方式の切り換えを示すフローチャートである。 エンジンの燃焼方式の切り換えを示すフローチャートである。 エンジンの燃焼方式の切り換えを示すフローチャートである。 燃焼方式が成層火花点火燃焼方式に移行するときのエンジン運転状態を示すフローチャートである。 エンジンが中負荷領域から減速して車両が停止する場合のエンジン運転状態を示すフローチャートである。 ロック装置の他の実施例を示し、同図(a)はロック装置によって副シリンダが非ロック状態にある場合を示し、同図(b)はロック装置によって副シリンダがロック状態にある場合を示す。 副ピストン駆動装置の他の実施例を示し、同図(a)は副ピストン駆動装置によって副ピストンが標準圧縮比位置に移動した状態を示し、同図(b)は副ピストン駆動装置によって副ピストンが高圧縮比位置に移動した状態を示す。 副ピストンの移動位置を制御するための他の実施例を示す。 ロック装置の他の実施例を示す。 ロックピン動作フェイルセーフを示すフローチャートである。 副ピストン動作フェイルセーフを示すフローチャートである。
符号の説明
1 筒内噴射エンジン(エンジン)
2 シリンダヘッド
15 燃焼室
20 副シリンダ
21 副シリンダチューブ
22 副ピストン
22a 移動中心軸
25 点火プラグ
25a 放電電極(発火部)
30 インジェクタ(燃料噴射手段)
50 電子制御ユニット(エンジン運転選択手段)
60 ロック装置
61 ロックピン
62 ピンアクチュエータ
65、65' ピン作動制御装置(ピン作動制御手段)
82 クランク角センサ(エンジン回転数検出手段)

Claims (15)

  1. エンジンのシリンダヘッドの頂部に開口して前記エンジンの燃焼室内に連通する副シリンダチューブ及び該副シリンダチューブ内を移動可能に挿着された副ピストンを有してなる副シリンダと、
    前記シリンダヘッドの頂部に設けられ、前記副シリンダを中央にしてその両側の一方側に配置されて前記燃料室内の混合気に点火する点火プラグと、
    前記シリンダヘッドの頂部に設けられ、前記副シリンダを中央にしてその両側の他方側に配置されて前記エンジンの燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射手段とを備え、
    該燃料噴射手段は、これから噴射される燃料の噴射方向が前記副ピストンの移動中心軸方向に向くように配置されることを特徴とする筒内噴射エンジン。
  2. 前記エンジンに作用する負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、
    該エンジン負荷検出手段により検出されたエンジン負荷の大きさに応じて、前記副シリンダチューブに対する前記副ピストンの移動位置と前記燃料噴射手段及び前記点火プラグの作動制御内容とを含んだ前記エンジンの燃焼方式を選択するエンジン運転選択手段と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射エンジン。
  3. 前記エンジン運転選択手段は、前記副ピストンの移動位置を第1の移動位置に選択することで前記燃焼室の圧縮比を第1の圧縮比に設定すると共に、前記副ピストンの移動位置を第2の移動位置に選択することで前記燃焼室の圧縮比を第1の圧縮比より高い第2の圧縮比に設定することを特徴とする請求項2に記載の筒内噴射エンジン。
  4. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段によりエンジン始動時に対応する負荷が検出されると、前記副ピストンの移動位置として前記第1の移動位置を選択し、前記燃焼方式として前記燃料噴射手段から噴射された燃料を前記点火プラグの発火部の周辺に集めて点火する成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射エンジン。
  5. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段により低負荷が検出されると、前記副ピストンの移動位置として前記第2の移動位置を選択し、前記燃焼方式として前記燃料噴射手段から噴射された燃料が蒸発して生成させた予混合気を多点着火させる予混合圧縮自着火燃焼方式を選択することを特徴とする請求項3に記に記載の筒内噴射エンジン。
  6. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段により中負荷が検出されると、前記副ピストンの移動位置として前記第1の移動位置を選択し、前記燃焼方式として前記燃料噴射手段から噴射された燃料を前記点火プラグの発火部の周辺に集めて点火する成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射エンジン。
  7. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段により低回転数から高回転数の範囲内のいずれかのエンジン回転数が検出され、且つ高アクセル開度が検出されると、前記副ピストンの移動位置として前記第1の移動位置を選択し、前記燃焼方式として前記燃料噴射手段から噴射される燃料を複数回に分けて噴射して前記点火プラグの発火部の周辺に集めて点火する複数噴射火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射エンジン。
  8. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段により低回転のエンジン回転数が検出されているときに、アクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、前記副ピストンの移動位置として前記第2の移動位置から前記第1の移動位置に切り替えて選択し、燃焼方式として予混合圧縮自着火燃焼方式から成層火花点火燃焼方式に切り替えて選択することを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射エンジン。
  9. 前記エンジン運転選択手段は、前記エンジン負荷検出手段により低回転のエンジン回転数が検出されているときに、アクセル開度の低下率が減速時に対応した所定値を超えると、前記副ピストンの移動位置として前記第1の移動位置から前記第2の移動位置に切り替えて選択し、燃焼方式として成層火花点火燃焼方式から予混合圧縮自着火燃焼方式に切り替えて選択することを特徴とする請求項3に記載の筒内噴射エンジン。
  10. 前記副シリンダには、前記副シリンダチューブに対する前記副ピストンの移動を規制するロック装置が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射エンジン。
  11. 前記ロック装置は、前記副シリンダチューブ内に突出入動可能であって前記副ピストンに形成された係合凹部に係合可能なロックピンと、該ロックピンを移動させるピンアクチュエータと、該ピンアクチュエータの作動を制御するピン作動制御手段とを有してなることを特徴とする請求項10に記載の筒内噴射エンジン。
  12. 前記ピン作動制御手段は、前記副ピストンが前記エンジンの圧縮比を高める高圧縮比位置に移動すると、前記ロックピンが前記副シリンダ側に移動するように前記ピンアクチュエータの動作を制御して、前記副ピストンをロック状態にすることを特徴とする請求項11に記載の筒内噴射エンジン。
  13. 前記ピン動作制御手段は、前記エンジンが低負荷状態にあるときに該エンジンのアクセル開度の増加率が急加速時に対応した所定値を超えると、前記ロックピンが前記副シリンダから離反する側に移動するように前記ピンアクチュエータの動作を制御して、前記副ピストンのロック状態を解除することを特徴とする請求項11に記載の筒内噴射エンジン。
  14. 前記エンジン運転選択手段により前記副ピストンの移動位置を前記第1の移動位置に選択した際に、前記副ピストンが第1の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータを作動させて吸気バルブを遅閉じにして前記成層火花点火燃焼方式を選択すると共に、前記燃料噴射手段の噴射パルス幅上限を所定値に設定することを特徴とする請求項5に記載の筒内噴射エンジン。
  15. 前記エンジン運転選択手段により前記副ピストンの移動位置を前記第2の移動位置に選択した際に、前記副ピストンが第2の移動位置に移動されない場合、カム可変アクチュエータの動作によりバルブオーバーラップを拡大させて前記成層火花点火燃焼方式を選択することを特徴とする請求項4に記載の筒内噴射エンジン。
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