本発明の第1の実施形態に係る固定装置を、図1〜13を用いて説明する。図1は、固定装置10によって、自動車のフロアパネル1の表面に敷かれるカーペット3に対してフロアマット5が固定された状態を示す斜視図である。本実施形態では、フロアマット5は、カーペット3を第1のマット部材としたときに第1のマット部材に固定装置を介して固定される第2のマット部材の一例であり、カーペット3は、第1のマット部材の一例である。
図2は、固定装置10を分解して示す斜視図である。図2に示すように、固定装置10は、カーペット3に固定されるマットベース20と、フロアマット5に固定されるマットアッパ40と、マットロア50と、プッシュボタン部材60と、コイルばね70とを備えている。
図3は、マットベース20を示す斜視図である。図4は、マットベース20を示す側面図である。図3,4に示すように、マットベース20は、上側挟持部21と、下側挟持部22と、本体部23とを有している。
図3に示すように、上側挟持部21は板形状であり、平面形状が一例として長方形状である。図3,4に示すように、下側挟持部22は、上側挟持部21の下面から下方に延びるように設けられている。下側挟持部22は、板形状であり、平面形状が一例として長方形状である。
下側挟持部22の基端部側には、薄肉ヒンジ部24が形成されている。薄肉ヒンジ部24は、他の部位に対して、厚みが薄い。このため、下側挟持部22は、薄肉ヒンジ部24で屈曲可能である。図4中、薄肉ヒンジ部24で屈曲した状態の下側挟持部22を2点鎖線で示している。
上側挟持部21には、上側挟持部用係合部25が形成されている。上側挟持部用係合部25は、下方に向かって突出している。上側挟持部用係合部25の先端部は、鍵上に形成されている。
下側挟持部22には、下側挟持部用係合部26が形成されている。下側挟持部用係合部26は、下側挟持部22に対して略垂直方向に突出している。下側挟持部用係合部26の先端部は、鉤状に形成されている。下側挟持部用係合部26は、薄肉ヒンジ部24で屈曲して下側挟持部22が上側挟持部21と対向する姿勢になったときに、つまり、図4に2点鎖線で示す姿勢になったときに上側挟持部用係合部25に係合する。
下側挟持部用係合部26が上側挟持部用係合部25に係合することによって、図4に2点鎖線で示すように、下側挟持部22の表面が上側挟持部21の下面に対して向かい合う姿勢が固定される。
上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26とは、例えば、樹脂で形成されており、図4に示す係合状態に対して下側挟持部22を係合を解除する方向に引っ張ることによって、上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26とが弾性変形し、それゆえ、上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26との係合状態を解除可能となっている。
図4は、マットベース20がカーペット3に固定された状態も示している。図4に示すように、上側挟持部21は、カーペット3に対して上側に配置される。上側挟持部21の下面はカーペット3の上面に面で接触する。
カーペット3には、下側挟持部22を通す第1のスリット3aが形成されている。下側挟持部22は、第1のスリット3aを通ってカーペット3の下方に挿入される。なお、実際には、カーペット3の下方にはフロアパネル1が位置している。このため、下側挟持部22を第1のスリット3aを通すときは、上側挟持部21に対して下側挟持部22を薄肉ヒンジ部24で曲げた姿勢で行う。
下側挟持部22がカーペット3の下方に配置されるとともに、上面がカーペット3の下面に面で接触するまで薄肉ヒンジ部24を屈曲することによって、カーペット3は、上側挟持部21と下側挟持部2とによって挟持される。上側挟持部21の下面から薄肉ヒンジ部24までの長さは、カーペット3の厚みに応じて適宜設定されている。
カーペット3には、上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26とを通す第2のスリット3bが形成されている。上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26とは、第2のスリット3b内で互いに係合する。このことによって、マットベース20は、カーペット3に固定される。
本体部23は、上側挟持部21に一体に形成されおり、上側に突出している。本体部23は、一例として円筒形状である。図5は、マットベース20を上方から見た状態を示す斜視図である。図5に示すように、本体部23内には、第1の挿入孔27が形成されている。第1の挿入孔27は、本体部23の先端に開口している。第1の挿入孔27の平面形状は、円である。第1の挿入孔27は、本体部23に対して同軸に配置されている。つまり、本体部23の軸線Xと第1の挿入孔27の軸線Yとは、同一直線上に配置される。軸線Xは、本体部23の中心を通り、軸線Yは、第1の挿入孔27の中心を通る。なお、図3に示されるマットベース20は、第1の挿入孔27内に後述されるプッシュボタン部材60が挿入された状態を示している。
本実施形態では、上下方向は、カーペット3とフロアマット5とが重なる方向であり、カーペット3に対してフロアマット5がある側を上としている。本実施形態では、マットベース20がカーペット3に固定された状態では、軸線X,Yは、カーペット3とフロアマット5とが重なる方向に一致する。マットベース20の上下方向は、マットベース20がカーペット3に固定されたときの状態に基づいて設定されている。
本体部23の周壁部28の一部には、第1の挿入孔27の径方向に変位可能な変位壁部28aが形成されている。本実施形態では、変位壁部28aは、一例で2つ形成されており、第1の挿入孔27の軸線Yに対して対称な位置に葉形成されている。
変位壁部28aについて具体的に説明する。図5に示すように、本体部23の周壁部28には、スリット28bが形成されている。スリット28bは、形成すべき変位壁部28aを囲うように形成されている。なお、変位壁部28aの縁部の上端に当たる部分にはスリット28bは形成されていない。
変位壁部28aは、スリット28bが形成されていない上端縁部回転中心として、第1の挿入孔27の径方向内側に変位できる。なお、本体部23は樹脂で形成されている。このため、変位壁部28aが内側に変位すると、変位壁部28aは、樹脂の弾性によって、変位前の位置に戻ることができる。
変位壁部28aには、外面から外側に突出する第1の係合突部29が形成されている。第1の係合突部29は、第1の挿入孔27の径方向外側に突出している。第1の係合突部29の外面は、上端から上下方向中間位置に向かって進むにつれて径方向外側に拡径する傾斜面となっている。この傾斜面を、挿入時ガイド面29aとする。また、中間位置から下端に向かって進むにつれて径方向内側に縮径する傾斜面になっている。引き抜き時ガイド面29bとする。
また、第1の挿入孔27の内壁部には、回転案内用突部30が形成されている。回転案内用突部30は、第1の挿入孔27の内面から内側に突出している。回転案内用突部30は、一例として2つ形成されており、第1の挿入孔27の軸線Yに対して対称な位置に配置されている。回転案内用突部30については、後で具体的に説明する。
図6は、マットアッパ40を示す斜視図である。図6は、マットアッパ40を下から上に向かって見た状態を示している。図1に示すように、マットアッパ40は、フロアマット5に固定される。図1,6に示すように、マットアッパ40は、本体部41と、本体部41の上端から外側に延出するフランジ部42とを備えている。
本体部41は、一例として円筒形状である。本体部41の内側には第2の挿入孔43が形成されている。第2の挿入孔43は、平面形状が円である。第2の挿入孔43は、本体部41と同軸になる位置に配置されている。つまり、本体部41の軸線Vと第2の挿入孔43の軸線Wとは同一直線上に配置されている。軸線Vは、本体部41の中心を通り、軸線Wは、第2の挿入孔43の中心を通る。
本実施形態では、マットアッパ40がフロアマット5に固定された状態では、軸線V,Wは、カーペット3とフロアマット5とが重なる方向に一致する。マットアッパ40の上下方向は、マットアッパ40がフロアマット5に固定されたときの状態に基づいて設定されている。
本体部41の周壁部44にはアッパ用係合突部45が形成されている。アッパ用係合突部45は、本体部41の周方向に沿って延びている。アッパ用係合突部45は、周方向に複数個所形成されているとともに、上下方向に複数個所形成されている。具体的には、アッパ用係合突部45は、上下方方向に5つ並んで形成されており、この5つを一群として、周方向に等間隔離間して4つ形成されている。つまり、上下方向に並ぶ5つのアッパ用係合突部45を一組とすると、この組が、周方向に互いに離間して4つ形成されている。
本体部41の周壁部44には、第2の挿入孔43の軸線Wに平行に延びる位置決め用リブ47が形成されている。本実施形態では、位置決め用リブ47は、複数形成されるとともに、複数の一例として2つ形成されている。
本体部41の第2の挿入孔43には、マットベース20の本体部23が挿入される。図10は、マットベース20の本体部23がマットアッパ40の第2の挿入孔43に挿入された状態を示している。
マットアッパ40の本体部41の先端の内縁部には、第2の挿入孔43の径方向内側に向かって突出する第2の係合突部48が形成されている。第2の係合突部48は、一例として、第2の挿入孔43の軸線Wの周方向に延びる形状である。図10に示すように、マットベース20の本体部23がマットアッパ40の第2の挿入孔43に挿入されると、第2の係合突部48が第1の係合突部29の挿入時ガイド面29aに接触する。この接触状態のまま本体部23を第2の挿入孔43にさらに押し込むと、変位壁部28aが第2の挿入孔43の径方向内側に変位する。このことによって、第2の係合突部48は第1の係合突部29を乗り越える。第2の係合突部 48が第1の係合突部29を乗り越えた後は、第1の係合突部29は、弾性力によって、基の位置戻る。
図7は、マットロア50を示す斜視図である。図7は、マットロア50を下から上に向かって見た状態を示す斜視図である。マットロア50は、フロアマット5に固定される。
図7に示すように、マットロア50は、板形状であり、平面形状が一例として円である。マットロア50には、マットアッパ40の本体部41が挿入される第3の挿入孔51が形成されている。第3の挿入孔51は、平面形状が円である。第3の挿入孔51は、マットロア50の軸線と同軸になる位置に配置されている。言い換えると、マットロア50の軸線Tと第3の挿入孔51の軸線Uとは、同一直線上に位置する。軸線Tは、マットロア50の中心を通り、軸線Uは、第3の挿入孔51の中心を通る。
本実施形態では、マットロア50がフロアマット5に固定された状態では、軸線T,Uは、カーペット3とフロアマット5とが重なる方向に一致する。マットロア50の上下方向は、マットロア50がフロアマット5に固定されたときの状態に基づいて設定されている。
マットロア50において第3の挿入孔51の周縁部52は上下方向に平行に立ち上がっており、円筒状に形成されている。周縁部52の一部には、第3の挿入孔51の径方向に変位可能な変位壁部53が形成されている。変位壁部53について具体的に説明する。
周縁部52において変位壁部53を形成すべき範囲の縁にマットロア50を貫通するスリット54を形成する。スリット54は、変位壁部53の縁の一部には形成されていない。スリット54が形成されていない部分は、他の部分に比べて薄く形成される薄肉部55になっている。変位壁部53は、薄肉部55を始点として変位する。本実施形態では、薄肉部55は、変位壁部53の上端縁に形成されている。
変位壁部53には、第3の挿入孔51の径方向内側に向かって突出するロア用係合突部56が形成されている。変位壁部53は、第3の挿入孔51の周方向に沿って所定の長さを有しており、ロア用係合突部56も周方向に沿って延びている。
変位壁部53は、マットアッパ40の本体部41が第3の挿入孔51に挿入されたときに、アッパ用係合突部45に対向する位置に形成されている。
また、マットロア50において第3の挿入孔51の周縁部52には、位置決め用溝57が形成されている。位置決め用溝57は、第3の挿入孔51にマットアッパ40の本体部41が挿入されたときに位置決め用リブ47が収容される溝である。位置決め用溝57の形状は、位置決め用リブ47が嵌合する形状である。位置決め用リブ47が位置決め用溝57に嵌ることによって、マットアッパ40の本体部41を第3の挿入孔51に挿入する際に、マットアッパ40に対してマットロア50が本体部41を回転軸として回転することを防止できる。また、このことによって、本体部41を第3の挿入孔51に挿入する際には、ロア用係合突部56がアッパ用係合突部45に向かい合うようになる。
ロア用係合突部56は、マットアッパ40の本体部41を第3の挿入孔51に挿入すると、アッパ用係合突部45に接触する。ロア用係合突部56の内面は、上下方向中心位置を境に上側部分は、下方に向かうにつれて内側に向かって傾斜するとともに、下側部分は、下方に向かうにつれて外側に傾斜する。
このため、マットアッパ40の本体部41を第3の挿入孔51に挿入するときにアッパ用係合突部45がロア用係合突部56に接触すると、ロア用係合突部56の傾斜によって、ロア用係合突部56は、径方向外側に付勢される。変位壁部53は、ロア用係合突部56に入力される付勢力を受けて、径方向外側に変位する。このことによって、アッパ用係合突部45は、ロア用係合突部56を乗り越える。アッパ用係合突部45がロア用係合突部56を乗り越えると、変位壁部53は、薄肉部55の弾性によって、径方向内側に戻る。
このことによって、アッパ用係合突部45とロア用係合突部56とは、第3の挿入孔51から本体部41を引き抜く方向に係合する。なお、ロア用係合突部56の内面の下部が上記のように傾斜していることによって、マットアッパ40の本体部41を引き抜くと、変位壁部53が径方向外側に変位することによって、アッパ用係合突部45はロア用係合突部56を乗り越えることができる。つまり、アッパ用係合突部45とロア用係合突部56との係合が解除される。
マットアッパ40とマットロア50との間には、フロアマット5が挟持される。図9は、マットアッパ40とマットロア50との間にフロアマット5が挟持されている状態を示している。フロアマット5には、マットアッパ40の本体部41が挿入される挿入孔6が形成されている。
マットアッパ40は、フロアマット5の上に配置されて本体部41が挿入孔6に挿入される。マットロア50は、フロアマット5の下に配置されている。挿入孔6を通ってフロアマット5の下方に突出する本体部41は、マットロア50の第3の挿入孔51内に挿入される。
そして、本体部41は、マットアッパ40のフランジ部42とマットロア50との間にフロアマット5を挟持するまで第3の挿入孔51内に挿入される。アッパ用係合突部45が上下方向に複数形成されることによって、ロア用係合突部56は、フロアマット5の厚みに応じて、いずれかのアッパ用係合突部45と係合する。アッパ用係合突部45がロア用係合突部56に係合することによって、フロアマット5は、マットアッパ40とマットロア50との間に挟持される状態が固定される。
図6に示すように、マットアッパ40のフランジ部42には、下方に突出する複数の突出部49が形成されている。図2に示すように、マットロア50には、上方に突出する複数の突出部59が形成されている。マットアッパ40とマットロア50との間にフロアマット5が挟持されると、突出部49,59がフロアマット5に食い込む。
図8は、プッシュボタン部材60を示す斜視図である。図8に示すように、プッシュボタン部材60は、円筒形状である。図3に示すように、プッシュボタン部材60は、マットベース20の第1の挿入孔27内に挿入される。プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27に内に嵌まる形状である。
プッシュボタン部材60が第1の挿入孔27内に挿入されたとき、プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27と同軸に配置される。つまり、プッシュボタン部材60の軸線Sは、第1の挿入孔27の軸線Yと同一直線上に配置される。軸線Sは、プッシュボタン部材60の中心を通る。
また、プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27内で軸線を回転中心として回転可能である。このため、プッシュボタン部材60の周面と第1の挿入孔27の内面との間には、回転を許容するだけの隙間が設けられている。また、プッシュボタン部材60の周壁部61には、径方向内側に凹む凹部62が形成されている。周壁部61において凹部62以外の部位は、変位抑制壁部67である。
図8に示すように、プッシュボタン部材60の周壁部61には、回転案内用溝63が形成されている。回転案内用溝63は、外側に向かって開口している。プッシュボタン部材60が第1の挿入孔27に挿入されると、第1の挿入孔27の内面から突出する回転案内用突部30が回転案内用溝63内に収容される。回転案内用溝63の幅は、回転案内用突部30が嵌る形状である。図9は、プッシュボタン部材60が第1の挿入孔27内に挿入された状態を示している。図9に示すように、プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27の軸線Yに沿う長さよりも短い。
第1の挿入孔27内には、コイルばね70が収容されている。プッシュボタン部材60は、コイルばね70によって、図3,9に示すように、第1の挿入孔27から出る状態となる。このため、プッシュボタン部材60と第1の挿入孔27の底との間には、隙間Cが設けられる。この隙間Cによって、コイルばね70の付勢力にあらがってプッシュボタン部材60を第1の挿入孔27内押し込むことができる。
ここで、回転案内用溝63の形状について具体的に説明する。図8に示すように、回転案内用溝63は、軸線Sに対して斜めに延びている。このため、プッシュボタン部材60を第1の挿入孔27内に押し込むと、回転案内用突部30が回転案内用溝63の側面に接触することによって、プッシュボタン部材60が軸線Sを回転中心として回転する。
図13は、回転案内用溝63を示す平面図である。図13に示すように、プッシュボタン部材60を第1の挿入孔27内に押し込むことに伴う、回転案内用溝63内での回転案内用突部30の変位を1点鎖線と2点鎖線で示す。
図8に示すように、回転案内用溝63の下端64は、閉じている。また、プッシュボタン部材60の下端は、回転案内用溝63の下端64に向かって傾斜している。このため、プッシュボタン部材60を第1の挿入孔27内に挿入すると、回転案内用突部30は、プッシュボタン部材60の下端部の傾斜に沿って回転案内用溝63に導かれる。
回転案内用突部30は、回転案内用溝63内に収容されると、閉塞している回転案内用溝63の下端に引っかかることによって、回転案内用溝63から抜け出ることが抑制される。
プッシュボタン部材60が第1の挿入孔27内に挿入されて回転案内用突部30が回転案内用溝63内に収容されると、コイルばね70の付勢力によって、プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27から出る方向に付勢される。
しかしながら、回転案内用突部30が回転案内用溝63下端64に引っかかることによって回転案内用突部30が回転案内用溝63から出ることがないので、これに伴い、プッシュボタン部材60が第1の挿入孔27から抜け出ることが防止される。回転案内用突部30が回転案内用溝63の下端64に引っかかる位置を第1の位置P1とする。
また、回転案内用突部30と回転案内用溝63とは、プッシュボタン部材60が第1の位置P1にあるとき、凹部62は、マットベース20の変位壁部28aと対向するようにお互いの位置が設定されている。凹部62は、第1の係合突部29と第2の係合突部48との係合が解除されるまで変位壁部28aの径方向内側への変位を許容する大きさを有している。
第1の位置P1からプッシュボタン部材60を第1の挿入孔27内に押し込むと、回転案内用突部30は、回転案内用溝63内を1点鎖線で示すように変位する。回転案内用溝63が軸線Sに対して斜めに延びていることによって、プッシュボタン部材60は、押し込まれることに伴って軸線Sを回転中心として回転する。
回転案内用溝63は、プッシュボタン部材60の変位抑制壁部67が変位壁部28aと対向する位置まで回転するよう形成されている。変位抑制壁部67が変位壁部28aと対向するまでプッシュボタン部材60が押し込まれた位置、つまり、凹部62が変位壁部28aと対向しなくなる位置を第2の位置P2とする。図14は、プッシュボタン部材60が第2の位置P2まで押し込まれた状態を示している。
プッシュボタン部材60が第2の位置P2にある状態では、変位壁部28aが変位抑制壁部67と対向する。このため、変位壁部28aが第1の挿入孔27の径方向内側に変位しようとすると、変位抑制壁部67に接触することによって、変位できなくなる。つまり、変位抑制壁部67は、初期位置のまま保持される。
プッシュボタン部材60の長さは、第2の位置P2にあるときに先端がマットベース20の本体部23の先端と面一、または、略面一になる長さを有している。なお、マットアッパ40の上端と本体部23の先端とは、略面一である。
図13に示すように、回転案内用溝63の上端部には、プッシュボタン部材60を第2の位置P2に保持するための、保持用突部が形成されている。保持用突部65は、回転案内用溝63の内側に向かって突出している。
プッシュボタン部材60が第2の位置P2まで回転した後、コイルばね70の付勢力によってプッシュボタン部材60が第1の位置P1に向かって戻ろうとすると、回転案内用突部30が保持用突部65に接触することによって、プッシュボタン部材60の回転が規制される。プッシュボタン部材60の回転が規制されることによって、プッシュボタン部材60は、第2の位置P2に保持される。
なお、保持用突部65は、プッシュボタン部材60が第2の位置P2から第1の位置P1に戻る際の回転に伴う回転案内用溝63内での回転案内用突部30の移動方向に沿って傾斜している。
このため、プッシュボタン部材60を第2の位置P2から第1の位置P1に戻すべくプッシュボタン部材60を回転すると、回転案内用突部30は、保持用突部65を乗り越える。回転案内用突部30が保持用突部65を乗り越えると、その後は、コイルばね70の付勢力によって、プッシュボタン部材60は、自然に第1の位置P1に戻る。
言い換えると、第2の位置P2にあるプッシュボタン部材60を、回転案内用突部30が保持用突部65を乗り越えるだけの力で回転することによって、プッシュボタン部材60を第1の位置P1に戻すことができる。
つぎに、固定装置10を用いてカーペット3に対してフロアマット5を固定する動作を説明する。図9〜12は、固定装置10を用いた、カーペット3に対してフロアマット5を固定する動作の一例を示している。
図9は、マットアッパ40とマットロア50によって挟持されたフロアマット5を、マットベース20によって挟持されたカーペットに固定する動作を示す断面図である。図9では、軸線、S,T,U,V,W,X,Y,Zに沿って切断された状態を示している。なお、図10に示すように、固定装置10が全て組み合わさった状態では、一例として、軸線S,T,U,V,W,X,Y,Zは、一致し、同一直線上に配置される。このため、プッシュボタン部材60は、第1の挿入孔27の軸線回りに回転する。
まず、図9に示すように、マットロア50の第3の挿入孔51とフロアマット5を合わせる。ついで、マットアッパ40の本体部41を、フロアマット5の挿入孔51を通して、マットロア50と係合させる。このことによって、マットアッパ40とマットロア50とをフロアマット5に固定する。
また、マットベース20においては、下側挟持部をカーペット3の第1,2のスリット3a,3bを通してカーペット3の下側に配置させ、上側挟持部用係合部25と下側挟持部用係合部26とを係合させる。このことによって、マットベース20をカーペット3に固定する。
ついで、マットベース20の本体部23をマットロア50の第3の挿入孔51に通す。本体部23が第3の挿入孔51に挿入される前の状態では、プッシュボタン部材60は、第1の位置P1に位置させる。プッシュボタン部材60が第1の位置P1にあることによって、凹部62が変位壁部28aと対向するので、変位壁部28aが第1の挿入孔27の径方向内側に変位可能である。
マットベース20の本体部23をマットアッパ40の第2の挿入孔43に挿入すると、第2の係合突部48が第1の係合突部29の挿入時ガイド面29aに接触する。この接触状態のままマットベース20の本体部23をさらに第2の挿入孔43に押しこむと、変位壁部28aが第1の挿入孔27の径方向内側に変位することによって、第2の係合突部48が第1の係合突部29を乗りこえる。このことによって、第1,2の係合突部29,48が係合する。
図10は、図9と同様に切断した状態を示している。図10に示すように第1,2の係合突部29,48が係合すると、図11に示すように、プッシュボタン部材60を押し込む。プッシュボタン部材60を押し込むことによって、プッシュボタン部材60は、第1の位置P1から第2の位置P2まで回転する。図11は、プッシュボタン部材60以外は、図9と同様に切断した状態を示している。
図12は、プッシュボタン部材60が第2の位置P2まで回転した状態を示している。プッシュボタン部材60が第2の位置P2まで回転することによって、マットベース20の変位壁部28aは、第1の挿入孔27の径方向内側に変位できなくなる。つまり、第1,2の係合突部29,48の係合を解除ができなくなる。図12は、プッシュボタン部材60以外は、図9と同様に切断した状態を示している。
このことによって、固定装置10を介した、カーペット3とフロアマット5との固定が解除されることがなくなる。
つぎに、固定装置10を介したカーペット3とフロアマット5との固定の解除の動作の一例を説明する。プッシュボタン部材60の上端部に形成される溝69に工具を挿入し、プッシュボタン部材60を軸線S回りに回転する。このとき、図13に示すように、回転案内用突部30が回転案内用溝63の保持用突部65を乗り越えるよう、力を加える。
回転案内用突部30が保持用突部65を乗り越えると、プッシュボタン部材60は、コイルばね70の付勢力によって第1の位置P1まで戻る。プッシュボタン部材60が第1の位置P1まで戻ることによって、プッシュボタン部材60の凹部62が変位壁部28aと対向するので、変位壁部28aは、第1の挿入孔27の径方向内側に変位できるようになる。
ついで、フロアマット5をカーペット3から離す。このことによって、第1,2の係合突部29,48の係合が解除されて、マットベース20の本体部23がマットアッパ40の第2の挿入孔43から引き抜かれる。
このように構成される固定装置では、カーペット3とフロアマット5との固定を解除するためには、プッシュボタン部材60を回転する必要がある。プッシュボタン部材60を回転する動作は、工具を用いる必要があるため、不意に生じることが抑制される。つまり、カーペット3とフロアマット5との固定が不意に解除されることを抑制することができる。
また、プッシュボタン部材60は、第2の位置P2にあるときその先端とマットベース20の本体部23の先端とマットアッパ40の第2の挿入孔の先端とが面一になる。このため、カーペット3とフロアマット5とを固定している状態の固定装置10の見栄えがよくなる。なお、略面一になる場合であっても、見栄えはよい。
また、プッシュボタン部材60を第1の位置P1に向かって付勢する付勢部材の一例としてコイルばね70を用いることによって、プッシュボタン部材60を、回転案内用突部30が保持用突部65を乗り越えるまで回転するだけで、その後は、自然に第1の位置P1に戻すことができる。このため、固定解除動作を簡単にすることができる。
なお、第1の実施形態では、回転案内用突部30がプッシュボタン部材60に形成され、回転案内用溝63が、マットベース20の本体部23の周壁部28に形成された。他の例としては、回転案内用突部30が周壁部28に形成され、回転案内用溝63がプッシュボタン部材60の周壁部61に形成されてもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用と効果とが得られる。
つぎに、本発明の第2の実施形態に係る固定装置を、図14,15を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の効果を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、プッシュボタン部材60に代えて、回転部材80が用いられる。また、回転部材80が用いられることに伴い、回転案内用突部30が形成されない。他の構造は、第1の実施形態と同じである。
図14は、本実施形態の固定装置10を示す断面図である。図14に示すように、回転部材80は、円筒形状であり、その軸線Q回りに回転可能に、第1の挿入孔27内に挿入されている。軸線Qは、回転部材80の中心を通る。回転部材80が第1の挿入孔27内に挿入されると、一例として、軸線Q,T,U,V,W,X,Y,Xは、一致し、同一直線上に配置される。このため、回転部材80は、第1の挿入孔27の軸線を回転中心として回転する。回転部材80は、第1の実施形態と同様に、第1の挿入孔27内に挿入されたときに、その先端が本体部23の先端と、マットアッパ40の上端と面一になる。または、略面一であってもよい。
回転部材80は、マットベース20の本体部23の変位壁部28aの径方向内側への変位を許容する、凹部81が形成されている。回転部材80において凹部以外の部位は、第1の挿入孔27の内面に略接触している。凹部81が変位壁部28aと対向していないときは、回転部材80の周面において凹部81以外の部位が対向しており、それゆえ、変位壁部28aは、径方向内側に変位することができない。凹部81以外の部分は、変位壁部28aの径方向内側への変位を禁止する変位抑制壁部87である。このことによって、第1,2の係合突部29,48の係合が解除されなくなる。
図15は、凹部81が変位壁部28aと対向する位置にある状態を示す断面図である。図15に示すように、凹部81が変位壁部28aと対向することによって、変位壁部28aが径方向内側に変位することができるので、第1,2の係合突部29,48の係合を解除することができる。
なお、回転部材80の上端部には、第1の実施形態で説明されたプッシュボタン部材60の溝69と同様の溝が形成されている。回転部材80を回転するときには、溝に工具を差し込む。
本実施形態では、回転部材80を回転することによって、凹部81が変位壁部28aと対向する状態と、対向しない状態とを切り替えることができる。言い換えると、第1,2の係合突部29,48の係合を解除するために、回転部材80を回転する必要があるので、固定装置10による、カーペット3とフロアマット5との固定が不意に解除されることを抑制することができる。
また、回転部材80の先端と、マットベース20の本体部23の先端と、マットアッパ40の上端とが面一になので、固定装置10の見栄えをよくすることができる。なお、略面一となる場合であっても、見栄えは良くなる。
第1,2の実施形態では、カーペット3は、第1のマット部材の一例である。フロアマット5は、第2のマット部材の一例である。マットベース20は、第1のマット部材に固定される第1の固定部材の一例である。
マットアッパ40とマットロア50とは、第2のマット部材に固定されるとともに、第1の固定部に解除可能に固定される第2の固定部材の一例である。
本体部23は、第1のマット部材に対して第1,2のマット部材の重なる方向に突出するとともに、突出端に開口する第1の挿入孔が形成される突出部の一例である。
第1の係合突部29は、突出部の周壁部に設けられて外側に向かって突出するとともに第1の挿入孔の内側に向かって変位可能な第1の係合部の一例である。
本体部41は、突出部が挿入される第2の挿入孔と第1の挿入孔と連通する開口とが設けられる被挿入部の一例である。第2の係合突部48は、第2の挿入孔の内壁部に形成されて第2の挿入孔の内側に向かって突出し、第2の挿入孔内に突出部が挿入されたときに第1の係合部に接触することによって第1の係合部を第1の貫通孔の内側に変位させて第1の係合部を乗り越えて重なる方向に第1の係合部と係合する第2の係合部の一例である。
第1の実施形態では、プッシュボタン部材60は、固定解除禁止部材の一例である。第2の実施形態では、回転部材80は、固定解除禁止部材の一例である。コイルばね70は、付勢部材の一例である。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態の構成を組み合わせてもよい。