図1は本発明の第一実施形態に係るハイブリッド式ショベルの側面図である。図1に示すハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つエンジン(図示せず。)等の駆動源が搭載される。また、上部旋回体3には、ハイブリッド式ショベルの作業要素の動作を制御するための制御部であるコントローラ30(図2参照)が設けられる。コントローラ30は、オペレータからの指示、及びハイブリッド式ショベルの各部に設けられたセンサからの検出情報に基づいて、各作業要素の動作を制御する。コントローラ30は電子制御部であり、演算を行うCPU及び記憶装置(メモリ)としてのROM,RAM等を備えている。
ブーム4は上部旋回体3に対して上下に旋回可能に支持されており、旋回支持部(関節)にブーム角度センサS1(図4、図5参照。)が取り付けられている。ブーム角度センサS1により、水平方向からのブーム4の傾き角度であるブーム角θ1を検出することができる。
アーム5はブーム4の先端に旋回可能に支持されており、旋回支持部(関節)にアーム角度センサS2(図4、図5参照。)が取り付けられている。アーム角度センサS2によりブーム4に対するアーム5の角度を検出し、検出したアーム5の角度とブーム角θ1から、水平方向からのアーム5の傾き角度であるアーム角θ2を検出することができる。
バケット6はアーム5の先端に旋回可能に支持されており、旋回支持部(関節)にバケット角度センサS3(図4、図5参照。)が取り付けられている。バケット角度センサS3によりアーム5に対するバケット6の角度を検出し、検出したバケットの角度、ブーム角θ1及びアーム角θ2から、水平方向からのバケット6の傾き角度であるバケット角θ3を検出することができる。
上部旋回体3を旋回させる旋回機構2には、旋回角度センサ(図示せず)が設けられている。旋回角度センサにより、上部旋回体3が正面を向いた位置からの角度である旋回角を検出することができる。
図2は、図1に示すハイブリッド式ショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。メインポンプ14は斜板式可変容量型油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、並びにバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。電動発電機12とインバータ20とで電動発電系が構成される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータを駆動制御することによる蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。コントローラ30は、蓄電器(キャパシタ)の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)に基づいて、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これにより蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。
この昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバスに設けられたDCバス電圧検出部によって検出されるDCバス電圧値、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値、及び蓄電器電流検出部によって検出される蓄電器電流値に基づいて行われる。
さらに、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)のSOCが算出される。また、上述では蓄電器の一例としてキャパシタを示したが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
図2に示すハイブリッド式ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。インバータ20と、旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回変速機24とで負荷駆動系が構成される。
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113とが設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113とによって検出されるキャパシタ 電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作とを切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18、20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
図2に戻り、コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ 19に供給される。
ここで、図4を参照しながら、ハイブリッド式ショベルが行う掘削・積込み動作について説明する。なお、図4は掘削動作時のハイブリッド式ショベルの側面図である。掘削・積込み動作は、バケットで土砂を掘ってすくい上げ、運搬車の荷台に土砂を載せるという動作である。掘削・積込み動作は、一般的に4つの動作区間に分けられる。4つの動作区間とは、土砂を掘削してバケットに入れる掘削動作区間、土砂が入ったバケットを運搬車の荷台の上まで移動するブーム上げ旋回動作区間、運搬車の荷台にバケットの土砂を排出するダンプ動作区間、及び、バケットを掘削位置まで移動するブーム下げ旋回動作区間である。この4つの動作区間のうち、掘削動作区間において掘削による反力がバケットに作用する。したがって、掘削動作区間において掘削による反力(掘削反力)を算出し、算出した掘削反力に基づいて掘削動作を制御することが好ましい。第一実施形態では、掘削動作時のブーム4、アーム5、バケット6の姿勢(位置、角度)からバケット6の先端に作用する掘削反力を演算により求める。そして、演算により求めた掘削反力が予め設定された閾値よりも大きくなった場合に、エンジン11の出力及び電動発電機12の出力を含む駆動源の出力を増大させるパワーアップ運転を開始させる。また、演算により求めた掘削反力が予め設定された上限値よりも大きくなった場合に、掘削動作を一旦停止し、あるいはアーム閉じ動作を継続させながら、ブーム4を自動的に上げて掘削深さを浅くし、掘削反力を減少させた上で掘削動作を継続できるようにする。以下では、この制御を「ブーム上げ制御」と称する。
掘削動作時にはブーム4が下げられてバケット6が土砂の中に差し込まれた状態となっており、それからアーム5を閉じながらバケット6を閉じることで、バケット6で土砂をすくい上げる。
図4において、掘削する土砂の頂上にバケット6の先端が到達したところから掘削が開始されるとする。ハイブリッド式ショベルが置かれた地面のレベルをゼロ(0)と定義し、地面から下方向を正と定義し、さらに、掘削する土砂の頂上と地面との差を掘削開始高さH0と定義すると、図4において、掘削開始高さH0は地面より高い位置であるため、H0は負の値となる。なお、H0は、バケットが地面に接地するときのブームシリンダ内の圧力の変化によって判断可能である。そして、ブーム4を下げてバケット6を土砂に差し込んだときの、地面(0)からバケット6の先端までの深さを掘削途中深さHと定義する。掘削途中のバケット6の先端の位置は、地面より低い位置となるため、Hは正の値となる。掘削深さΔHは、掘削する土砂の頂上からバケット6を土砂に差し込んだときのバケット6の先端までの距離に相当し、掘削開始深さH0と掘削途中深さHとの和となる。ここで、掘削途中深さHは正の値であり、掘削開始深さH0は負の値であるため、掘削深さΔHを求めるには、HからH0を引く(ΔH=H−H0)。H0は負の値であるため、掘削深さΔHはHとH0の絶対値が加算された値となる。また、掘削動作時における水平面からのバケット6の傾き角度(すなわち、バケット角θ3)をバケット姿勢θ3とする。また、掘削開始高さH0が地面より下の場合には正の値となるため、掘削深さΔHはHからH0の絶対値が減算された値となる。
第一実施形態では、後述のように、バケット姿勢θ3(バケット6の水平からの角度)と掘削開始深さΔHとから、掘削時のバケット6の先端に作用する土砂の反力(掘削反力F)を演算により求める。
図5は掘削反力を算出する際のパラメータを示す図である。ブーム4は、ブームの支持点P1とアームの支持点P2とを結ぶ線分として表される。ブーム角θ1はこのブーム4を表す線分と水平線との間の角度である。アーム5は、アーム5の支持点P2とバケット6の支持点P3とを結ぶ線分として表される。アーム角θ2はこのアーム5を表す線分と水平線との間の角度である。バケット6は、バケット6の支持点P3とバケット6の先端とを結ぶ線分として表される。バケット角θ3はこのバケット6を表す線分と水平線との間の角度である。
ブーム4には、ブームシリンダ7の駆動力F1による回転モーメントτ1が加わる。アーム5には、アームシリンダ8の駆動力F2による回転モーメントτ2が加わる。バケット6には、バケットシリンダ9の駆動力F3による回転モーメントτ3が加わる。ここで、バケット6の先端に作用する掘削反力Fの方向は、バケット6の先端の速度Vの方向と逆向きとなる。
図6は掘削反力Fの算出方法を示す機能ブロック図である。掘削反力Fの算出は上述のコントローラ30により行われる。第一実施形態において、掘削反力Fは、実測データ分析により得られた掘削反力テーブル32を用いて算出する。掘削反力テーブル32は、バケット姿勢θ3と掘削深さΔHとから決まる掘削反力Fの値が格納されたテーブルであり、実測データ分析により予め求められるテーブルである。より具体的には、掘削反力テーブル32は、実掘削時と空掘削時のバケット姿勢θ3と掘削深さΔHをデータ分析することにより、バケット姿勢θ3と掘削反力Fとの関係をテーブル化して作成される。
ここで、バケット姿勢θ3は、水平方向からのブーム4の角度であるブーム角θ1と、ブーム4に対するアーム5の角度と、アーム5に対するバケット6の角度とから求めることができる。このようにして求めたバケット姿勢θ3から掘削反力テーブル32を用いて掘削反力Fを算出する。なお、掘削反力テーブル32はコントローラ30のメモリに格納されている。
また、第一実施形態では、掘削する土砂の特性(深さ、密度)を考慮して補正しながら掘削反力Fを算出する。すなわち、掘削深さΔHが変わると掘削反力Fは変化するので、掘削深さΔHの変化と掘削反力Fの変化との関係をテーブル化した掘削深さ補正テーブル34を予め準備しておく。そして、掘削反力Fを算出する際に掘削深さΔHを考慮するための補正係数K1を掘削深さ補正テーブル34から求め、掘削反力Fを掘削反力テーブル32から求める際に補正係数K1により掘削反力Fを補正する。掘削深さ補正テーブル34はコントローラ30のメモリに格納されている。
また、掘削反力Fは土砂密度によっても変化するため、土砂密度と掘削反力Fとの関係をテーブル化した密度特性テーブル36を予め準備しておく。そして、掘削反力Fを算出する際に土砂密度を考慮するための補正係数K2を土砂特性テーブル36から求め、掘削反力Fを掘削反力テーブル32から求める際に補正係数K2により掘削反力Fを補正する。土砂特性テーブル36はコントローラ30のメモリに格納されている。
ここで、密度特性テーブルに入力される土砂密度は、掘削する土砂により異なるので、掘削開始時に土砂密度を測定する。例えば、掘削を開始する前にバケット6で土砂をすくい上げ、すくい上げた土砂の重量とバケット6の容積から土砂の密度を測定することができる。第一実施形態では、掘削を開始して最初の掘削動作ですくい上げた土砂の密度を測定して、測定した土砂密度をコントローラ30のメモリに格納しておく。
次に、上述のように算出した掘削反力Fの変化について説明する。まず、掘削動作区間における動作時点t1〜t4について説明する。図7は掘削動作区間における動作時点t1〜t4のそれぞれにおけるバケット6の位置を示す図である。
動作時点t1は掘削動作を始めた時点であり、図7(a)に示すように、ブーム4が下げられてバケット6の先端が土砂に接触した状態である。動作時点t2は掘削動作が進んだ時点であり、図7(b)に示すように、バケット6の先端が掘削深さΔHに到達した状態である。動作時点t3はさらに掘削動作が進んだ時点であり、図7(c)に示すように、バケット6が閉じ始めて土砂をすくい上げている状態である。動作時点t4は掘削動作が終了した時点であり、図7(d)に示すように、掘削した土砂をバケット6に完全にすくい上げた状態である。
図8は掘削動作中のバケット姿勢θ3の変化と掘削反力Fの変化を示すグラフである。図8(a)は掘削動作中のバケット姿勢θ3の変化を示し、図8(b)は掘削動作中の掘削反力Fの変化を示す。なお、バケット姿勢θ3はバケット6を閉じる方向(図5の時計回り方向)をマイナスとし、バケット6を開く方向(図5の反時計回り方向)をプラスとする。
掘削動作が開始されて掘削が進むに連れて、バケット6の水平線からの角度であるバケット姿勢θ3はバケット6を閉じる方向に大きくなり、動作時点t4にて水平に近い最大角度となる。バケット姿勢θ3は、アーム5を閉じる動作とバケット6を閉じる動作により大きくなる。
一方、土砂による掘削反力Fは、バケット6の先端が掘削深さΔHに到達するまでの動作時点t1〜t2の間は急激に大きくなる。すなわち、バケット6で土砂を掘削する動作であり、土砂からの反力を強く受けている。動作時点t2〜t3の間は、掘削した土砂をバケット6ですくい上げる動作であるため、主に土砂の重量による反力が作用するだけであり、掘削反力Fの増大率は減少する。動作時点t3〜t4の間は、バケット6の先端は土砂から離れてすくい上げた土砂の重量による反力だけとなるため、掘削反力は減少する。
図9は図8に示すバケット姿勢θ3の変化に対する掘削反力Fの変化を示すグラフである。掘削動作時にバケット6の先端が土砂に接触してからバケット姿勢θ3が大きくなるにつれて(図の左方向に移動するにつれて)掘削反力Fが変化することが示されている。上述の図6に示す掘削力反力テーブル32は、このバケット姿勢θ3と掘削反力Fとの関係をテーブル化する。
掘削反力Fが図9に示すように変化した場合、掘削反力Fは予め設定された第一閾値Fa及び第二閾値Fbを超えていないので、掘削動作は通常のままオペレータのレバー操作のとおりに行われる。ここで、第一閾値Faは、掘削している土砂によりバケット6に所定の負荷が作用したと判定するための値である。すなわち、掘削反力Fが第一閾値Faを超えた場合であっても、バケット6の動きが土砂の負荷により鈍化することはないが、レバー操作によって掘削動作をさらに進めると、バケット6の動きが土砂の負荷により鈍化してしまうおそれがある。また、第二閾値Fbは、掘削している土砂によりバケット6に過大な負荷がかかったと判定するための上限値である。すなわち、掘削反力Fが第二閾値Fbを超えた場合は、レバー操作によって掘削動作をさらに進めると、バケット6が土砂の負荷により停止してしまうおそれがある。
そこで、第一実施形態では、アーム5を閉じながら掘削動作を行っている途中で掘削反力Fが第一閾値Faを超えた場合には、駆動源の出力を増大させるパワーアップ運転を開始させる。掘削動作を進めた場合にバケット6に作用する負荷がさらに増大したとしても、バケット6の動きを鈍化させないようにするためである。
また、第一実施形態では、アーム5を閉じながら掘削動作を行っている途中で掘削反力Fが第二閾値Fbを超えた場合には、ブーム上げ制御が実行される。具体的には、一旦アーム閉じ動作を中断し、あるいはアーム閉じ動作を継続させながら、ブーム4を上げて掘削深さΔHを浅くする。掘削深さΔHを浅くすることで、バケット6に加わる土砂の反力が低減されるためであり、再びアーム閉じ動作を継続し、掘削動作を最後まで行うことができるようにするためである。
図10はコントローラ30が行う上述の掘削動作の制御フローチャートである。まず、掘削動作が開始されると、ステップST1において、ブームシリンダ7のロッド側圧力Prがブームシリンダ7のボトム側圧力Pbより大きいか否かが判定される(ステップST1)。この判定はバケット6が土砂に接触したか否かの判定に利用される。バケット6が上方から土砂に着地(接触)すると、土砂の反力がブーム4に伝わるため、ブームシリンダ7のロッド側圧力Prが、ブームシリンダ7のボトム側圧力Pbより大きな値となる。
ステップST1において、ブームシリンダ7のロッド側圧力Prが、ブームシリンダ7のボトム側圧力Pbより大きな値ではない(ステップST1のNO)と判定されると、処理はステップST2に進み、掘削反力をゼロ(F=0)とする。続いて、処理はステップST1に戻り、ロッド側圧力Prがボトム側圧力Pbより大きいか否かが再び判定される。
ステップST1において、ブームシリンダ7のロッド側圧力Prが、ブームシリンダ7のボトム側圧力Pbより大きな値である(ステップST1のYES)と判定されると、掘削反力Fが生じているため、処理はステップST3に進む。
ステップST3では、上述の図6に示す掘削反力算出方法により掘削反力が算出される。続いて、ステップST4において、算出された掘削反力が第一閾値Faより大きいか否かが判定される。すなわち、ステップST4において、バケット6に所定の負荷が作用しているか否かが判定される。
ステップST4において、掘削反力が第一閾値Fa以下である(ステップST4のNO)と判定されると、処理はステップST5に進む。ステップST5では、バケット6に所定の負荷が作用していないので通常の掘削動作を継続してもよいと判断し、処理はステップST3に戻って再び掘削反力を算出する。一方、ステップST4において、掘削反力が第一閾値Faより大きい(ステップST4のYES)と判定されると、処理はステップST6に進む。
ステップST6では、電動発電機12によるアシスト運転が開始され、かつ、メインポンプ14の吐出流量が増大される。続いて、ステップST7において、掘削反力が第二閾値Fbより大きいか否かが判定される。すなわち、ステップST7において、バケット6が過負荷となっているか否かが判定される。
ステップST7において、掘削反力が第二閾値Fb以下である(ステップST7のNO)と判定されると、処理はステップST3に戻り、再び掘削反力を算出してから、ステップST4以降の処理を繰り返す。一方、ステップST7において、掘削反力が第二閾値Fbより大きい(ステップST7のYES)と判定されると、処理はステップST8に進む。
ステップST8では、ブーム上げ制御が実行される。具体的には、掘削動作を一旦停止し、あるいはアーム閉じ動作を継続させながら、ブーム4を自動的に上げて掘削深さを浅くして掘削反力Fを減少させ、掘削動作を継続できるようにする。
その後、処理はステップST8からステップST3に戻り、再び掘削反力を算出してから、ステップST4以降の処理を繰り返す。以上の処理は、オペレータのレバー操作による掘削動作が終了するまで継続して行われる。
図11はコントローラ30が電動発電機12によるパワーアップ運転を開始させる際の掘削反力F、メインポンプ14の吐出流量Q、エンジン回転数N、パワーアップ指令(アシストトルク指令)、及びブーム上げ指令の時間的推移を示す図である。
図11(A)〜(E)の実線は、第一実施形態の処理が実行される場合(掘削反力が第一閾値Faを超えたときにパワーアップ運転を開始させる場合であり、以下「第一実施形態の場合」とする。)の時間的推移を示す。
また、図11(A)〜(D)の破線は、比較対象となる処理が実行される場合(エンジン回転数Nが閾値N0を下回ったときにアシスト運転を開始させる場合であり、以下「比較形態の場合」とする。)の時間的推移を示す。
また、パワーアップ指令は、電動発電機12によるアシスト運転を開始させるためのアシストトルク指令であり、値α1のときにアシスト運転を開始させる。ブーム上げ指令は、ブーム上げ制御を開始させるための指令であり、値β1のときにブーム上げ制御を開始させる。
時刻0からt1において、オペレータはアーム操作レバーをアーム5が閉じる方向に最大に傾けており、掘削反力Fは時間が進むにしたがい大きくなる。このとき、メインポンプ14の吐出流量Qは、現在の吐出圧に応じた最大吐出量であるQ1を吐出している。
ここで、比較形態の場合には、時刻t1において掘削反力Fが第一閾値Faを超えたとしても、メインポンプ14は吐出流量Qを変化させずにQ1を吐出し続ける。
そして、時刻t2において、土砂による負荷の増大によりエンジン回転数Nが所定レベルまで減少すると、メインポンプ14の吐出流量Qは減少し始める。また、アタッチメントによる掘削動作は土砂による負荷の増大により停止してしまい、掘削反力Fは第一閾値Fa付近で推移する。
そして、時刻t3において、エンジン回転数Nが閾値N0を下回ると、アシストトルク指令が発せられて電動発電機12によるアシスト運転が開始され、エンジン回転数Nは通常時の目標回転数である第一設定値N1に復帰する。また、メインポンプ14の吐出流量QもQ1に復帰し、掘削動作が再開され、掘削反力Fが第一閾値Faを上回るレベルで推移できるようにする。
一方、第一実施形態の場合には、時刻t1において掘削反力Fが第一閾値Faを超えると、アシストトルク指令の値が値α1となり、アシストトルク指令が発せられて電動発電機12によるアシスト運転が開始される。これにともない、メインポンプ14の斜板傾転角が調節され、メインポンプ14の吐出流量QがQ1からQ2に増大する。メインポンプ14の吐出流量Qの増大に応じて、アーム5による掘削動作はさらに進められ、掘削反力Fは第一閾値Faを超えて増大する。このように、メインポンプ14の吐出流量の増大により、メインポンプ14の馬力を増大させることができる。
そして、時刻t4において、掘削反力Fが第二閾値Fbを超えると、ブーム上げ指令の値が値β1となり、ブーム上げ指令が発せられてブーム上げ制御が開始される。これによって、ブーム4が所定角度だけ上昇し、土砂による負荷の減少により掘削反力Fは減少に転じる。掘削反力Fの減少にともない、メインポンプ14の斜板傾転角が調節され、メインポンプ14の吐出流量QはQ2からQ1に減少する。
そして、時刻t5において、掘削反力Fが第一閾値Faを下回ると、アシストトルク指令の出力が中止されて電動発電機12によるアシスト運転が停止する。
このように、第一実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えたところで頭打ちとなる前に(すなわち、掘削動作が鈍化しあるいは停止する前に)電動発電機12によるアシスト運転を開始させる。このため、第一実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大するのを許容し、掘削動作をより円滑にして掘削作業効率を向上させることができる。
図12はコントローラ30が電動発電機12によるパワーアップ運転を開始させる際のメインポンプ14の吐出流量Qと吐出圧Pとの間の関係を示すPQ線図である。
第一実施形態では、t1にてパワーアップ運転が開始されると電動発電機12によるアシスト運転が開始され、メインポンプ14が吸収できる馬力は実線で示される状態から破線で示される状態まで増大する。
また、パワーアップ運転が開始されると斜板傾転角の調整が行われ、メインポンプ14の吐出流量Qは、図11(B)の時刻t1からt2までの推移で示されるように、Q1からQ2に増大する。なお、Q1は、パワーアップ運転開始前の吐出圧P1での最大吐出量であり、Q2は、パワーアップ運転開始後の吐出圧P1での最大吐出量である。
その結果、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大することからも明らかなように(図11(A)参照。)、アタッチメントによる掘削動作は、円滑に継続され、掘削作業効率が向上する。
以上の構成により、第一実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、掘削反力Fが第一閾値Faを超えた場合にパワーアップ運転を開始させる。その結果、掘削反力Fが大きくなった場合にも、アタッチメントの動きを鈍化させることなく掘削動作を継続させることができ、掘削作業効率を向上させることができる。
また、第一実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、掘削反力Fが第二閾値Fbを超えた場合にブーム上げ制御を開始させる。その結果、掘削反力Fが過度に大きくなった場合にも、アタッチメントの動きを停止させることなく掘削動作を継続させることができ、掘削作業効率を向上させることができる。
次に、図13〜図15を参照しながら、本発明の第二実施形態に係るハイブリッド式ショベルについて説明する。
第二実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、エンジン11によるパワーアップ運転を実行する点において、電動発電機12によるパワーアップ運転を実行する第一実施形態に係るハイブリッド型ショベルと相違し、その他の点において共通する。
そのため、共通部分の説明を省略しながら、相違部分を詳細に説明することとする。なお、ここでは、第一実施形態で用いた参照符号をそのまま用いることとする。
図13は、第二実施形態においてコントローラ30が行う掘削動作の制御フローチャートであり、ステップST16以外は図10の制御フローチャートと同じである。
具体的には、ステップST14において、掘削反力が第一閾値Faより大きい(ステップST14のYES)と判定されると、処理はステップST16に進む。
ステップST16では、エンジン11の回転数を増大し、かつ、メインポンプ14の吐出流量を増大することによってパワーアップ運転を開始させる。
図14は、図11に対応する図であり、コントローラ30がエンジン11によるパワーアップ運転を開始させる際の掘削反力F、駆動源出力W、エンジン回転数N、パワーアップ指令(噴射量増大指令)、及びブーム上げ指令の時間的推移を示す図である。なお、駆動源出力Wは、エンジン11による出力WEと電動発電機12による出力(アシストトルク)WMとを含む値である。
図14(A)〜(E)の実線は、第二実施形態の処理が実行される場合(掘削反力が第一閾値Faを超えたときにパワーアップ運転を開始させる場合であり、以下「第二実施形態の場合」とする。)の時間的推移を示す。また、図14(A)〜(D)の破線は、図11同様、比較形態の場合の時間的推移を示す。また、第二実施形態におけるパワーアップ指令は、エンジン11に対する燃料噴射量を増大させてエンジン11の回転数を増大させるための噴射量増大指令であり、値α1のときにエンジン回転数を増大させる。なお、比較形態におけるパワーアップ指令は、図11同様、電動発電機12によるアシスト運転を開始させるためのアシストトルク指令であり、値α1のときにアシスト運転を開始させる。
時刻0からt1において、オペレータはアーム操作レバーをアーム5が閉じる方向に最大に傾けており、掘削反力Fは時間が進むにしたがい大きくなる。このとき、メインポンプ14の吐出流量Qは、現在の吐出圧に応じた最大吐出量であるQ1を吐出する(図11(B)参照。)。
ここで、比較形態の場合には、時刻t1において掘削反力Fが第一閾値Faを超えたとしても、エンジン11は回転数Nを変化させずに第一設定値N1で回転し続けようとし、駆動源出力W(この段階ではエンジン出力WEのみで構成される。)は一時的に増大する。
そして、時刻t2において、土砂による負荷の増大によりエンジン回転数Nが所定レベルまで減少すると、駆動源出力W(エンジン出力WE)は減少に転じる。また、アタッチメントによる掘削動作は土砂による負荷の増大により停止してしまい、掘削反力Fは第一閾値Fa付近で推移する。
そして、時刻t3において、エンジン回転数Nが閾値N0を下回ると、アシストトルク指令が発せられて電動発電機12によるアシスト運転が開始され、エンジン回転数Nは通常時の目標回転数である第一設定値N1に復帰する。また、駆動源出力W(この段階ではエンジン出力WEと電動発電機出力WMとの合計で構成される。)は当初(エンジン出力WEのみで構成される場合)より高いレベルで推移し、掘削動作が再開され、掘削反力Fが第一閾値Faを上回るレベルで推移する。
一方、第二実施形態の場合には、時刻t1において掘削反力Fが第一閾値Faを超えると、エンジン回転数が第一設定値N1から第二設定値N2へ変更される。これにより、噴射量増大指令が発せられてエンジン11の回転数が増大する。また、エンジン11の回転数の増大に応じて駆動源出力W(エンジン出力WE)も増大する。また、これにともない、メインポンプ14の吐出流量QがQ1からQ2に増大する(図11(B)参照。)。メインポンプ14の吐出流量Qが増大すると、アーム5による掘削動作はさらに進められ、掘削反力Fは第一閾値Faを超えて増大する。このように、メインポンプ14の吐出流量の増大により、メインポンプ14の馬力を増大させることができる。
そして、時刻t4において、掘削反力Fが第二閾値Fbを超えると、ブーム上げ指令が発せられてブーム上げ制御が開始される。これによって、ブーム4が所定角度だけ上昇し、土砂による負荷の減少により掘削反力Fは減少する。掘削反力Fの増大とともに増大していた駆動源出力W(エンジン出力WE)も、掘削反力Fの減少とともに減少に転じる。その後、掘削反力Fの減少にともない、メインポンプ14の吐出流量QはQ2からQ1に減少する(図11(B)参照。)。
そして、時刻t5において、掘削反力Fが第一閾値Faを下回ると、噴射量増大指令の出力が中止されてエンジン11の回転数が第一設定値N1に復帰する。
このように、第二実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えたところで頭打ちとなる前に(すなわち、掘削動作が鈍化あるいは停止する前に)エンジン11の回転数を増大させる。このため、第二実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大するのを許容し、掘削動作をより円滑にして掘削作業効率を向上させることができる。
図15はコントローラ30がエンジン11によるパワーアップ運転を開始させる際のメインポンプ14の吐出流量Qと吐出圧Pとの間の関係を示すPQ線図である。
第二実施形態では、パワーアップ運転が開始されるとエンジン11の回転数が増大し、メインポンプ14が吸収できる馬力は実線で示される状態から破線で示される状態まで増大する。
また、パワーアップ運転が開始されると、メインポンプ14の吐出流量QはQ1からQ2に増大する。なお、Q1は、パワーアップ運転開始前の吐出圧P1での最大吐出量であり、Q2は、パワーアップ運転開始後の吐出圧P1での最大吐出量である。
その結果、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大することからも明らかなように(図14(A)参照。)、アタッチメントによる掘削動作は、円滑に継続され、掘削作業効率が向上する。
以上の構成により、第二実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、第一実施形態に係るハイブリッド型ショベルと同様の効果を実現させることができる。
次に、図16及び図17を参照しながら、本発明の第三実施形態に係るハイブリッド式ショベルについて説明する。
第三実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、エンジン11及び電動発電機12の双方によるパワーアップ運転を実行する点において、電動発電機12、エンジン11のそれぞれによるパワーアップ運転を実行する第一、第二実施形態に係るハイブリッド型ショベルと相違し、その他の点において共通する。
そのため、共通部分の説明を省略しながら、相違部分を詳細に説明することとする。なお、ここでは、第一、第二実施形態で用いた参照符号をそのまま用いることとする。
図16は、第三実施形態においてコントローラ30が行う掘削動作の制御フローチャートであり、ステップST26以外は図10及び図13の制御フローチャートと同じである。
具体的には、ステップST24において、掘削反力が第一閾値Faより大きい(ステップST24のYES)と判定されると、処理はステップST26に進む。
ステップST26では、電動発電機12によるアシスト運転を開始し、エンジン11の回転数を増大し、かつ、メインポンプ14の吐出流量を増大することによってパワーアップ運転を開始させる。
図17は、図11及び図14に対応する図であり、コントローラ30がエンジン11及び電動発電機12の双方によるパワーアップ運転を開始させる際の掘削反力F、駆動源出力W、エンジン回転数N、パワーアップ指令(アシストトルク指令及び噴射量増大指令)、並びにブーム上げ指令の時間的推移を示す図である。なお、駆動源出力Wは、図14同様、エンジン11による出力WEと電動発電機12による出力(アシストトルク)WMとを含む値である。
図17(A)〜(E)の実線は、第三実施形態の処理が実行される場合(掘削反力が第一閾値Faを超えたときにパワーアップ運転を開始させる場合であり、以下「第三実施形態の場合」とする。)の時間的推移を示す。また、図17(A)〜(D)の破線は、図11及び図14と同様、比較形態の場合の時間的推移を示す。なお、図17における比較形態での推移は、図14の場合と同じである。
また、第三実施形態におけるパワーアップ指令は、電動発電機12によるエンジン11の回転数を第一設定値N1から第二設定値N2まで増大させるアシストトルク指令で構成される。そのため、値α1のときにアシスト運転を開始させ、かつ、エンジン回転数を増大させる。なお、比較形態におけるパワーアップ指令は、図11及び図14と同様、電動発電機12によるアシスト運転を開始させるためのアシストトルク指令であり、値α1のときにアシスト運転を開始させる。
時刻0からt1において、オペレータはアーム操作レバーをアーム5が閉じる方向に最大に傾けており、掘削反力Fは時間が進むにしたがい大きくなる。このとき、メインポンプ14の吐出流量Qは、現在の吐出圧に応じた最大吐出量であるQ1を吐出する(図11(B)参照。)。
第三実施形態の場合には、時刻t1において掘削反力Fが第一閾値Faを超えると、エンジン11の回転数設定値が第二設定値N2へ変更され、アシストトルク指令が発せられる。これにより、電動発電機12によるアシスト運転が開始し、エンジン11の回転数が増大する。また、駆動源出力Wは、アシスト運転の開始とエンジン回転数の増大とに応じて増大する。また、これにともない、メインポンプ14の吐出流量QがQ1からQ2に増大する(図11(B)参照。)。メインポンプ14の吐出流量Qが増大すると、アーム5による掘削動作はさらに進められ、掘削反力Fは第一閾値Faを超えて増大する。そして、エンジン11の回転数を第二設定値N2に維持するように、噴射量増大指令が発せられる。このように、メインポンプ14の吐出流量の増大により、メインポンプ14の馬力を増大させることができる。
そして、時刻t4において、掘削反力Fが第二閾値Fbを超えると、ブーム上げ指令が発せられてブーム上げ制御が開始される。これによって、ブーム4が所定角度だけ上昇し、土砂による負荷の減少により掘削反力Fは減少する。掘削反力Fの増大とともに増大していた駆動源出力W(エンジン出力WE+電動発電機出力WM)も、掘削反力Fの減少とともに減少に転じる。また、掘削反力Fの減少にともない、吐出圧が減少し、メインポンプ14の馬力が低下する。
そして、時刻t5において、掘削反力Fが第一閾値Faを下回ると、アシストトルク指令の出力が中止されてアシスト運転が停止し、かつ、エンジン11の回転数が第一設定値N1に復帰する。
このように、第三実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えたところで頭打ちとなる前に(すなわち、掘削動作が鈍化あるいは停止する前に)、アシスト運転を開始させ、かつ、エンジン11の回転数を増大させる。このため、第三実施形態の場合には、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大するのを許容し、掘削動作をより円滑にして掘削作業効率を向上させることができる。
図18はコントローラ30がエンジン11及び電動発電機12の双方によるパワーアップ運転を開始させる際のメインポンプ14の吐出流量Qと吐出圧Pとの間の関係を示すPQ線図である。
第三実施形態では、パワーアップ運転が開始されると電動発電機12によるアシスト運転が開始され、メインポンプ14の馬力は実線で示される状態から破線で示される状態まで増大する。さらに、エンジン11の回転数が増大され、メインポンプ14の馬力は破線で示される状態から一点鎖線で示される状態までさらに増大する。なお、アシスト運転の開始による馬力の増大、及び、エンジン回転数の増大による馬力の増大の順番は不同であり、両者が同時に行われてもよい。
また、パワーアップ運転が開始されると、メインポンプ14の吐出流量QはQ1からQ2に増大する(図11(B)参照。)。なお、Q1は、パワーアップ運転開始前の吐出圧P1での最大吐出量であり、Q2は、パワーアップ運転開始後の吐出圧P1での最大吐出量である。
その結果、掘削反力Fが第一閾値Faを超えて増大することからも明らかなように(図17(A)参照。)、アタッチメントによる掘削動作は、円滑に継続され、掘削作業効率が向上する。
以上の構成により、第三実施形態に係るハイブリッド式ショベルは、第一、第二実施形態のそれぞれに係るハイブリッド型ショベルと同様の効果を実現させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、第二実施例において、ハイブリッド式ショベルは、電動発電機12を持たないショベルであってもよい。エンジン回転数を増大させることによってパワーアップ運転が実行されるため、電動発電機12を備える必要がないためである。
図19は、電動発電機12を持たないショベルの一例である油圧式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。この油圧式ショベルは、エンジン11がメインポンプ14及びパイロットポンプ15に直接接続される点、電動発電系、蓄電系、及び負荷駆動系が省略される点、及び、旋回用電動機21の代わりに旋回用油圧モータ2Aを備える点で、図2のハイブリッド型ショベルと相違するが、その他の点で共通する。
以上の構成により、この油圧式ショベルは、第二実施形態に係るハイブリッド型ショベルと同様の効果を実現させることができる。