以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
まず図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る硬貨搬送装置1を説明する。図1(A)は硬貨搬送装置1の概略構成を示す正面図、図1(B)は硬貨搬送装置1の部分側面図である。図2は硬貨搬送装置1の硬貨放出部まわりの概略構成を示す平面図である。硬貨搬送装置1は、硬貨Cを放出する硬貨放出部としての放出部10と、放出部10から放出された硬貨Cを水平方向に搬送する水平搬送ベルト21と、水平搬送ベルト21との間に搬送空間Sを形成する規制ガイド30とを備えている。硬貨Cは、本実施の形態では、我が国(日本国)で流通している貨幣であるとして説明する。以下、単に「硬貨C」というときは、金種を区別しない総称であるものとする。なお、図2では、説明の便宜上、規制ガイド30を省略している。
図1(A)に示すように、硬貨搬送装置1は、硬貨Cの種類ごとに区別された4つの放出部10を有している。具体的には、硬貨搬送装置1は、50円硬貨を取り扱う放出部10Aと、100円硬貨を取り扱う放出部10Bと、10円硬貨を取り扱う放出部10Cと、500円硬貨を取り扱う放出部10Dとを、この順に一列に配列させて有している。この配列は、硬貨Cの直径が小から大の順となっている。本実施の形態では、10円硬貨及び100円硬貨の取扱い量が比較的多いことに鑑みて、放出部10B及び放出部10Cが、放出部10A及び放出部10Dよりも、多くの硬貨を収容できるように大きな容量になっている。各放出部10A〜10Dは、取り扱う硬貨Cの大きさの相違に起因する構造の違い及び上述の容量の違いを除き、同じ構成となっている。各放出部10A〜10Dについて、共通する構成や機能を説明するときは「放出部10」と総称する。水平搬送ベルト21は、各放出部10A〜10Dが連なる方向に延びるようにして、設置されている。各放出部10A〜10Dと水平搬送ベルト21との間には、平面視において両者を区画するベース20(図2参照)が設けられている。各放出部10A〜10Dから水平搬送ベルト21上へ硬貨Cが移動する際に通過する放出口10hが、ベース20に形成されている。
以下、主に図1(B)及び図2を参照して、各構成要素をさらに詳しく説明する。放出部10は、硬貨Cを複数枚貯留可能なホッパー11と、ホッパー11内の硬貨Cを放出口10hに向けて1枚ずつ弾き出すキャリングディスク12と、ホッパー11から弾き出された硬貨Cを水平搬送ベルト21に向けて滑らす滑台13と、滑台13の上方を覆う上カバー14とを有している。ホッパー11は、上面が開口した容器であり、平面視で矩形(長方形又は正方形)に形成されている。本実施の形態では、放出部10B及び放出部10Cのホッパー11が、放出部10A及び放出部10Dのホッパー11よりも大きいサイズで構成されている。ホッパー11は、ベース20に近い側面である近側面11nの上部が、ベース20に平行になるように配設されている。ホッパー11の底面11bは、近側面11nに対向する側面である遠側面11fから近側面11nに向かって下り勾配となるように傾斜している。本実施の形態では、底面11bが、水平面に対して概ね30°傾いている。
キャリングディスク12は、基本形状が円形板状に形成されており、ホッパー11内で底面11bに取り付けられている。キャリングディスク12は、硬貨Cの直径よりも大きい半径を有する大きさで、硬貨Cの厚さ程度の厚みを有している。キャリングディスク12は、中心部に挿通されたピン12aを介して、ホッパー11の底面11bに対してピン12aの軸線まわりに回転可能に取り付けられている。キャリングディスク12には、硬貨Cを1枚収容できる収容孔12hが、ピン12aを囲むように複数形成されている。収容孔12hは、キャリングディスク12の外周部分で、硬貨Cの直径を超える開口が形成されており、硬貨Cがキャリングディスク12の外に出られるように構成されている。ホッパー11の底面11bには、近側面11n側を除いてキャリングディスク12を囲む包囲板12sが設けられている。包囲板12sは、概ねキャリングディスク12と同じ厚さに形成されている。
ホッパー11の近側面11nの下部は、キャリングディスク12よりもベース20側で底面11bに対して直角に当接するように折り曲げられている。曲げられた近側面11nの下端には、硬貨Cをホッパー11から導出する導出口11hが形成されている。導出口11hは、硬貨Cの1枚が通過できる大きさに形成されており、本実施の形態では、高さが硬貨Cの厚みの1倍を超えて2倍未満、幅が硬貨Cの直径の1倍を超えて1.2倍以下の大きさに形成されている。底面11bには、導出口11hを挟むようにして、コインガイド12fと、送出ローラ12gとが設けられている。コインガイド12f及び送出ローラ12gは、協働して、硬貨Cが通過する幅を、取り扱う硬貨Cの直径よりも小さい幅に規制する。コインガイド12f及び送出ローラ12gの配置は、導出口11hに対して、キャリングディスク12が回転する方向の上流側にコインガイド12fが、下流側に送出ローラ12gが、それぞれ設けられている。コインガイド12fは、厚さが包囲板12sと同じかやや厚く形成された台形板状の部材である。送出ローラ12gは、リンク12bによって、硬貨Cが通過する幅が変わる方向に揺動可能に支持されており、硬貨Cが通過する幅を狭くする方向にばね(不図示)によって付勢されている。また、送出ローラ12gとピン12aとの間には、キャリングディスク12によって搬送されてきた硬貨Cの移動を止めて導出口11hへ案内するガイドピン12pが設けられている。ガイドピン12pは、キャリングディスク12の厚さよりも短い長さ(典型的にはキャリングディスク12の厚さの半分の長さ)で、底面11bから突き出ている。キャリングディスク12の裏面には、ガイドピン12pと干渉しないように、キャリングディスク12が回転したときのガイドピン12pの軌跡に沿って、溝が形成されている。
ホッパー11内では、ホッパー11内に投入された多数の硬貨Cが、キャリングディスク12がモーター(不図示)で回転させられることによって1つの収容孔12hに1枚の硬貨Cが入り込む。収容孔12h内の硬貨Cは、キャリングディスク12の回転に伴って導出口11hの脇に至るが、コインガイド12fと送出ローラ12gとの間は硬貨Cの直径よりも小さいので、この時点で硬貨Cは導出口11hから導出されない。収容孔12h内の硬貨Cは、さらにキャリングディスク12が回転してガイドピン12pに至ると、円周まわりの移動が規制されてキャリングディスク12の外周から外に出ようとする。この外に出ようとする硬貨Cは、送出ローラ12gを付勢しているばね(不図示)の付勢力に打ち勝って送出ローラ12gを押し、これによってコインガイド12fと送出ローラ12gとの間隔が広がり、硬貨Cは導出口11hに向かって移動する。コインガイド12fと送出ローラ12gとを結ぶ仮想線よりも硬貨Cの重心が導出口11h側に移動すると、送出ローラ12gはばね(不図示)の付勢力によってコインガイド12f側に戻ろうとする。硬貨Cは、このときの送出ローラ12gの動きによってはじき飛ばされるようにして、導出口11hから1枚ずつ導出されるようになっている。
滑台13は、ホッパー11の導出口11hと、ベース20に形成された放出口10hとの間にわたって設置された板状の部材である。滑台13は、ホッパー11の底面11bと同じ傾斜で、底面11bの延長線上に配設されている。換言すれば、滑台13と底面11bとが傾斜した同一面上に位置するようにホッパー11が配設されている。滑台13は、硬貨Cが移動する方向に見たときの両脇が上方に折り曲げられており、両脇からの硬貨Cの落下を防ぐように構成されている。上カバー14は、硬貨Cがその面を滑台13の面に接触させて移動することができる空間を形成するように、導出口11hの高さと概ね同じ(あるいは一回り大きい)間隔を滑台13に対して空けて、滑台13の上方に設置されている。上カバー14が設けられていることにより、硬貨Cが、滑台13の折り曲げられた両脇を乗り越えて落下することが防止される。
水平搬送ベルト21は、幅が、水平搬送ベルト21による搬送を予定している硬貨Cのうち、最も大きい硬貨C(以下「最大径硬貨Cx」といい、本実施の形態では500円硬貨。)の直径よりも大きく、好ましくは最大径硬貨Cxの直径の概ね1.05〜1.25倍に構成されている。水平搬送ベルト21は、典型的には上側の面が水平となるように、プーリ21pに張架されて設けられているが、水平搬送ベルト21上における硬貨Cの滞留や楔現象の原因となる硬貨Cの滑りを生じない程度に傾斜して設けられていてもよい。つまり、水平搬送ベルト21上における硬貨Cの滞留や楔現象の原因となる硬貨Cの滑りを生じない程度の傾斜は、水平搬送ベルト21の構成上の「水平」の概念に含まれる。
水平搬送ベルト21は、本実施の形態では、図2に示すように、平面視において、滑台13が延びる方向(硬貨Cが放出されてくる方向)に対して直角に延びるように配設されている。他方、図1(B)に示すように、側面視(立面視)においては、水平搬送ベルト21が、ホッパー11及び滑台13よりも低い位置に設けられており、斜め上方から斜め下方の水平搬送ベルト21に向かって硬貨Cが放出されてくるように配設されている。水平搬送ベルト21は、硬貨Cの搬送方向Dに見たときの一方の脇にはベース20が近接しており、他方の脇には脇板23が近接している。ここでいう近接は、水平搬送ベルト21の移動を阻害せず、硬貨Cが落下しない隙間が形成される状態である。ベース20及び脇板23は、共に水平搬送ベルト21の上面よりも上方に延びており、かつ、水平搬送ベルト21が延びる方向に連なっている。ベース20及び脇板23が設置されていることにより、水平搬送ベルト21の脇から硬貨Cが落下することが防止される。
規制ガイド30は、脇板23からベース20にわたって水平搬送ベルト21の上方に設置され、水平搬送ベルト21の上面並びにベース20及び脇板23と協働して、これらに囲まれた搬送空間Sを形成するように構成されている。搬送空間Sは、放出部10から放出されてきて水平搬送ベルト21上に載った硬貨Cが搬送される空間である。脇板23は、水平搬送ベルト21の上面からの立ち上がりが比較的低く、ベース20は、放出部10の領域と水平搬送ベルト21の領域とを区画するようにホッパー11の上方まで延びている。したがって、規制ガイド30は、脇板23側の端部では脇板23を上方から覆って脇板23の外壁に沿って下方に延びており、ベース20側の端部ではベース20の水平搬送ベルト21側の壁に沿って上方に延びている。このように規制ガイド30が設けられることにより、放出部10から水平搬送ベルト21の上方に移動してきた硬貨Cの軌道を覆うこととなる。
ここで図3を併せて参照して、規制ガイド30まわりについてより詳細に説明する。図3は、規制ガイド30まわりの側面図である。規制ガイド30は、側面視において(搬送方向Dに見て)、脇板23側の平行部31と、ベース20側の傾斜部32とを有している。平行部31及び傾斜部32は、それぞれ水平搬送ベルト21に沿って一様に延びている。平行部31及び傾斜部32は、本実施の形態では、脇板23の外側で下方に延びる部分及びベース20に沿って上方に延びる部分と共に、1枚の板金が折り曲げられることで一体に形成されている。
平行部31は、水平搬送ベルト21の上面に対して間隔を空けて水平に延びている。これにより、水平搬送ベルト21の上面と平行部31との間に平行空間Spが形成される。平行部31は、水平搬送ベルト21の幅方向(搬送方向Dに直交する方向)において、脇板23とベース20との間の距離の0.3〜0.4倍の長さに形成されている。平行空間Spの高さ(鉛直距離)は、水平搬送ベルト21による搬送を予定している硬貨Cのうち直径が最も小さい硬貨C(以下「最小径硬貨Cy」といい、本実施の形態では50円硬貨。)の直径よりも小さく、水平搬送ベルト21による搬送を予定している硬貨Cのうち厚さが最も大きい硬貨C(以下「最大厚硬貨Cz」といい、本実施の形態では500円硬貨。)の厚さよりも大きく、本実施の形態では、各種類の硬貨Cが1枚ずつ合計4枚積み重なることができるように、8mmとなっている。
傾斜部32は、水平搬送ベルト21の幅方向において、平行部31からベース20に近づくにつれて、水平搬送ベルト21の上面との鉛直距離が比例して大きくなるように設けられている。傾斜部32は、本実施の形態では、水平面に対する角度が、滑台13と概ね同様に形成されており、放出口10hの上端よりも上方でベース20に当接している。傾斜部32が設けられることにより、水平搬送ベルト21の上面と傾斜部32との間に拡張空間Seが形成される。拡張空間Seは、平行空間Spと共に搬送空間Sを形成する。傾斜部32は、規制ガイド30における平行部31以外の部分であるため、水平搬送ベルト21の幅方向において、脇板23とベース20との間の距離の0.7〜0.6倍の長さに形成されている。なお、傾斜部32は、滑台13の延長面に対しても、ベース20に近づくにつれて間隔が広がるように設けられていてもよい。このように構成したときは、水平搬送ベルト21への硬貨Cの放出が滞ることをより抑制することができる。
規制ガイド30は、平行部31及び/又は傾斜部32の適所において、板金に透明のアクリル板を嵌め込んで構成されている。ここでの「適所」は、搬送空間S内を確認するのに適切な場所及び数である。このように構成されていると、搬送空間S内の状態を、硬貨搬送装置1が通常稼働している状態で確認することができる。また、規制ガイド30は、傾斜部32で、開閉手段としての蝶番34を介してベース20に取り付けられている。このように構成されていることで、規制ガイド30を開閉できることとなり、硬貨Cを搬送しているときは規制ガイド30を閉じた規制状態として搬送空間Sを形成することで硬貨Cが立つことを防止することができ、搬送空間Sに問題が生じた場合や定期点検等の際は規制ガイド30を開けた開放状態とすることでメンテナンスが容易になる。
拡張空間Seには、ベース20に接して、放出口10hの下方に、下ガイド36が設けられている。下ガイド36は、長方形の板金を長手方向に沿って折り曲げて形成された部材である。下ガイド36は、折り曲げられて形成された2つの面のうちの一方の上面36aが、滑台13の延長線上又は当該延長線よりもやや下方となる位置で設置されている。下ガイド36の他方の下面36bは、上面36aの下方でベース20に向かって延びている。本実施の形態では、上面36aと下面36bとのなす角が、概ね75°〜90°に形成されている。搬送方向Dに直交する方向において、下ガイド36の長さは、拡張空間Seの長さの1/4〜1/3程度に形成されている。下ガイド36が設けられていることで、放出部10から放出されてきた硬貨Cが上面36aを滑って平行空間Spに向かって円滑に導かれ、先に平行空間Spに導入された硬貨Cに後から導入された硬貨Cが潜り込むことを抑制することができる。また、水平搬送ベルト21に衝突した硬貨Cが跳ね返った場合に、下面36bに衝突させることでばたつきを抑制することができる。下ガイド36は、搬送方向Dに沿って延びており、各放出部10A〜10Dの放出口10hにわたって連続している。なお、本実施の形態における下ガイド36とベース20とに囲まれた空間のように、硬貨Cが進入することができない空間は、搬送空間Sから除かれる。下ガイド36が設けられている部分は、下ガイド36の上面36aと傾斜部32との間が、最小径硬貨Cyの直径未満、かつ、最大厚硬貨Czの厚さを超えることとなればよい。
硬貨搬送装置1は、制御装置60により制御されるように構成されている。制御装置60は、放出部10内のキャリングディスク12を駆動する駆動部(不図示)と信号ケーブルで接続されており、キャリングディスク12の回転に伴う放出口10hからの硬貨Cの放出のタイミングを制御することができるように構成されている。また、制御装置60は、水平搬送ベルト21の駆動部(不図示)と信号ケーブルで接続されており、水平搬送ベルト21の発停及び搬送速度を制御することができるように構成されている。
引き続き図1乃至図3を参照して、硬貨搬送装置1の作用を説明する。放出部10のホッパー11内には、複数枚の硬貨Cが収容されている。制御装置60が放出部10へ硬貨Cの放出を行わせる信号を送信すると、キャリングディスク12が回転を始め、キャリングディスク12の回転に伴って導出口11hから硬貨Cが導出される。本実施の形態では、キャリングディスク12が1/3回転するごとに1枚の硬貨Cが導出される。制御装置60は、導出させる硬貨Cの枚数についての信号を放出部10に送信しており、導出させるべき硬貨Cの枚数が導出されたところでキャリングディスク12の回転を停止する。また、制御装置60は、各放出部10A〜10Dのそれぞれに硬貨放出信号を送信しており、金種ごとに放出させる枚数を指示している。導出口11hから導出された硬貨Cは、滑台13上を滑り落ち、放出口10hを介して搬送空間Sに放出される。
搬送空間Sの下方の水平搬送ベルト21は、制御装置60から放出部10への硬貨Cの放出に関する信号が送信されたときに、制御装置60から起動信号を受信して駆動が開始される。水平搬送ベルト21は、本実施の形態では、ユーザーが待機ストレスを感じないように高速で硬貨Cを搬送させる観点から、700mm/s〜1000mm/sの搬送速度で駆動される。このような比較的高速で駆動している水平搬送ベルト21上に硬貨Cが放出されると、仮に規制ガイド30が設けられておらず水平搬送ベルト21上に硬貨Cが自由に向きを変えることができる十分な空間があるとすると、硬貨Cが水平搬送ベルト21上に垂直に立った状態の傾輪が発生しやすいという事情がある。従来は、搬送ベルトの上方の搬送路の側壁に突起を設け、傾輪が生じた硬貨を搬送ベルトの幅方向に倒す構成としていたが、このような従来の構成によっても倒れない硬貨が存在する場合があり、硬貨の搬送が阻害される問題が生じていた。
硬貨搬送装置1では、規制ガイド30が設けられているので、放出口10hから放出されてきた硬貨Cが水平搬送ベルト21の上に立ってしまうことを確実に防止することができる。つまり、硬貨搬送装置1では、水平搬送ベルト21の上に立ってしまった硬貨Cを倒すのではなく、水平搬送ベルト21の上方の空間を硬貨Cが立つことが不可能な空間に規制するという思想に基づいて構成されているため、水平搬送ベルト21の上に硬貨Cが立つ余地はなく、水平搬送ベルト21の上に硬貨Cが立ってしまうことを確実に防止することができるのである。
放出口10hから放出されてきた硬貨Cは、下ガイド36の上面36aを経て水平搬送ベルト21に接触する。水平搬送ベルト21に接触した硬貨Cには、脇板23側に向かう力と、水平搬送ベルト21から跳ね上げられる力とが働く。硬貨Cは、放出の勢いで脇板23に衝突してベース20側に跳ね返される場合があるが、脇板23に跳ね返され及び/又は水平搬送ベルト21によって跳ね上げられた後に、規制ガイド30や下ガイド36の下面36bに衝突することで、水平搬送ベルト21上に立つことが防止されると共に、無用なばたつきが抑制されることとなり、速やかに水平搬送ベルト21上に倒すことができる。水平搬送ベルト21の上に確実に倒された硬貨Cは、次段に向けて搬送される。
なお、稀に、硬貨Cが下ガイド36にもたれるような状態となることがあるかもしれないが、硬貨Cと水平搬送ベルト21との摩擦力を、硬貨Cと下ガイド36との摩擦力よりも大きくすることで、傾輪のような状態が発生することを防止することができる。また、硬貨搬送装置1では、典型的には処理時間短縮のために各放出部10A〜10Dから同時に硬貨Cの放出が行われるところ、例えば、放出部10Aから放出された硬貨Cが水平搬送ベルト21によって放出部10Bに隣接する場所に搬送されてきたときに、放出部10Bから硬貨Cが放出されてくる場合があり得るが、放出部10Aから放出された硬貨Cが脇板23に衝突して下ガイド36の下方まで跳ね返されることにより、放出部10Aから放出された硬貨Cの下に、後で放出部10Bから放出された硬貨Cが潜り込むことが抑制される。さらに、下ガイド36が、搬送方向Dに沿って延びていて各放出部10A〜10Dの放出口10hにわたって連続しているので、水平搬送ベルト21に搬送されている硬貨Cが最下流の放出部10Dの放出口10hを通過するまでは常に下ガイド36に沿って搬送されることとなり、上述した硬貨Cの潜り込み抑制の効果が継続することとなる。
次に図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る硬貨処理装置100を説明する。図4は硬貨処理装置100の系統図である。硬貨処理装置100は、上述した硬貨搬送装置1と、硬貨Cの投入を受け付ける投入口51と、投入口51から投入された硬貨Cの種類を識別する識別部52と、硬貨Cを種類に応じて振り分けると共に計数する振分計数部53と、振分計数部53で振り分け及び計数が行われた硬貨Cを一時的に保留する一時保留部54と、硬貨搬送装置1の水平搬送ベルト21に搬送された後の硬貨Cを貯留する硬貨貯留部55と、硬貨処理装置100から取り出される硬貨Cを差し出す出金口56と、硬貨搬送装置1と兼用の制御装置60とを備えている。
投入口51は、複数枚の硬貨Cを受けることができる大きさに形成されており、複数の種類が混在した状態で複数枚の硬貨を受け付けることができるように構成されている。識別部52は、投入口51から投入された硬貨Cを振分計数部53に向けて搬送する入金搬送路41に設けられている。識別部52は、入金搬送路41によって内部を通過する硬貨Cの種類を識別し、識別結果を信号として制御装置60に送信することができるように構成されている。制御装置60は、識別部52から受信した信号を基に、投入口51から投入された硬貨Cの合計金額を算出することができるように構成されている。識別部52は、硬貨処理装置100が取り扱いを予定している種類の硬貨C(本実施の形態では、10円、50円、100円、500円の各硬貨)以外の硬貨(以下「リジェクト硬貨」という。)を検出した場合も異常硬貨である旨の信号を制御装置60に送信するように構成されている。制御装置60は、リジェクト硬貨である旨の信号を識別部52から受信したときは、リジェクト硬貨が振分計数部53に導入されずにリジェクト搬送路(不図示)に導かれるように、フラップ(不図示)を作動させるように構成されている。
振分計数部53は、硬貨Cを外形で振り分けることができるように、対象とする硬貨Cを通すがその硬貨Cよりも一回り以上大きい硬貨Cは通さない振分孔(不図示)が形成されており、振分孔(不図示)は対象とする硬貨Cの径の小さいものから順に、硬貨Cが搬送される方向の上流から下流に向けて配列されている。振分計数部53は、図4では便宜上1台が示されているが、識別部52を通過してきた硬貨Cを扱う入金硬貨用と、硬貨貯留部55から導入された硬貨Cを扱う硬貨貯留部用とが、同じ構成でそれぞれ別に設けられている。
一時保留部54は、硬貨Cを種類で分けて保留することができるように、内部に区画壁54wが設けられている。一時保留部54に保留されている硬貨Cは、状況に応じて横搬送部43あるいは放出部10のいずれかに導かれるように構成されている。横搬送部43には、硬貨搬送装置1の水平搬送ベルト21に搬送された後の硬貨Cを上方に搬送する上昇搬送部42の下流端が接続されている。上昇搬送部42は、典型的には搬送ベルトに張力保持特性を有するものが用いられており、水平搬送ベルト21から複数枚重なって搬送されてきた硬貨Cをそのまま複数枚重ねて搬送することができるように構成されている。また、横搬送部43は、一方の端部に出金口56が接続されており、他方の端部に硬貨貯留部55が接続されている。
硬貨貯留部55は、放出部10A及び放出部10Bに収容されている硬貨Cのすべて、あるいは放出部10C及び放出部10Dに収容されている硬貨Cのすべてのいずれか多い方の硬貨Cを貯留できる大きさに形成されている。硬貨貯留部55は、補充搬送部45を介して振分計数部53の硬貨貯留部用の方に接続されており、硬貨貯留部55内の硬貨Cを振分計数部53に搬送することができるように構成されている。制御装置60は、硬貨処理装置100の動作を制御することができるように構成されている。制御装置60は、本実施の形態では硬貨搬送装置1と硬貨処理装置100とで兼用となっているが、それぞれに専用のものとして別体で構成されていてもよい。
引き続き硬貨処理装置100の作用を説明する。利用者によって投入口51に一括投入された複数枚の硬貨Cは、入金搬送路41によって1枚ずつ振分計数部53に向けて流れていく。入金搬送路41を通る硬貨Cは、識別部52を通過する際に金種等が識別され、リジェクト硬貨が検出された場合は制御装置60を介してフラップ(不図示)の作動により横搬送部43に導かれて、出金口56に戻される。識別部52を通過した、硬貨処理装置100で取り扱い可能な硬貨Cは、振分計数部53の入金硬貨用の方に導入され、種類ごとに振り分けられた後、一時保留部54の適切な場所に保留される。この状態で、利用者による入金確定操作が行われると、制御装置60は、入金金額と取引金額との比較を行う。
入金金額と取引金額との比較により釣銭(出金)が不要の場合は、次の利用者による入金を待機する。また、硬貨Cを入金した利用者の継続操作において返却操作がなされたときは、一時保留部54に保留されている硬貨Cが、横搬送部43に導出された後に出金口56に返却される。入金金額と取引金額との比較により釣銭(出金)が必要な場合、制御装置60は、出金に関する信号を放出部10に送信する。出金信号を受信した放出部10は、前述した硬貨搬送装置1について説明した要領で、制御装置60が指定した合計金額の硬貨Cを水平搬送ベルト21に放出する。水平搬送ベルト21で搬送されてきた硬貨Cは、上昇搬送部42から横搬送部43を経由して、出金口56に出金される。他方、硬貨Cを入金した利用者の操作が終了して次の利用者による投入口51への硬貨Cの投入が行われると、この新たに投入口51に硬貨Cを投入した利用者の直前の利用者によって投入されて一時保留部54に保留されていた硬貨Cが、放出部10のホッパー11(図2参照)に収容される。
硬貨処理装置100では、上述した入出金動作以外に、硬貨処理装置100内に存在する硬貨Cを精査する装置内計数動作が行われる。装置内計数動作は、典型的には硬貨処理装置100が設置された店舗等の営業時間外に行われる。装置内計数動作が行われる旨の指令が与えられると、制御装置60は、まず、放出部10A及び放出部10Bに硬貨放出信号を送信し、放出部10A及び放出部10Bの硬貨Cのすべてを放出させる。このとき、放出部10A及び放出部10Bは、硬貨Cの放出と同時に計数を行い、計数結果を制御装置60に送信することで、硬貨処理装置100内の硬貨Cについて精査が行われる。この際、上述した入出金動作と比較して、大量の硬貨Cが連続して放出されることとなるため、硬貨Cの挙動のばらつきも多くなりがちとなる。しかしながら、硬貨処理装置100は、硬貨搬送装置1を備えているので、水平搬送ベルト21に放出される硬貨Cが確実に水平搬送ベルト21上に倒れることとなり、大量に連続して放出される硬貨Cを安定して搬送することが可能となる。換言すれば、硬貨搬送装置1は、大量に連続して硬貨Cが放出される装置内計数動作時に、極めて有効となる。
水平搬送ベルト21で搬送されてきた大量の硬貨Cは、上昇搬送部42から横搬送部43を経由して、硬貨貯留部55に貯留される。硬貨貯留部55内の硬貨Cは、補充搬送部45によって振分計数部53の硬貨貯留部用の方に搬送され、振分計数部53で硬貨Cの種類ごとに振り分けられた後、各放出部10A、10Bに収容される。放出部10A及び放出部10Bについての装置内計数動作が完了したら、同様の要領で、放出部10C及び放出部10Dについての装置内計数動作が行われる。なお、各放出部10A〜10Dには、あらかじめ決められた枚数の硬貨Cが、準備金として収容される。このため、装置内計数動作の開始時にあらかじめ決められた枚数を超える硬貨Cが収容されている場合は、余剰分の硬貨Cが、各放出部10A〜10Dの放出フラッパ(不図示)が切り替えられることにより、別途設けられる回収庫(不図示)に放出される。他方、硬貨Cが不足する場合は、不足分の硬貨Cを硬貨貯留部55に補充することができる。硬貨貯留部55に補充された硬貨Cも、補充搬送部45によって振分計数部53に搬送されて種類ごとに振り分けられた後、各放出部10A〜10Dに収容される。
以上の説明では、規制ガイド30が、4つの放出部10に隣接する水平搬送ベルト21の長さにわたって形成されているとしたが、少なくとも各放出部10の放出口10hに対応する搬送方向Dにおける長さ分だけ設けることとしてもよい。
以上の説明では、規制ガイド30が平行部31と傾斜部32とを有するとしたが、この形態に限らず、硬貨Cが立つスペースを与えない搬送空間Sを形成することができればよい。
以上の説明では、規制ガイド30が、透明の部材を適所に嵌め込んで構成されているとしたが、搬送空間S内を確認することができれば半透明の部材であってもよい。本明細書では、搬送空間S内を確認することができる程度の半透明及び透明を総称して透光性ということとする。あるいは、透光性を有する部材を嵌め込む代わりに、最小径硬貨Cyが通過できない大きさの貫通孔が、搬送空間S内を確認することができる程度に複数形成されたパンチングメタル等の有孔材料で規制ガイド30を構成してもよい。あるいは、規制ガイド30全体を透光性を有する材料(典型的にはアクリル板)で構成してもよい。これらの透光性を有する部材と有孔材料とは、併用してもよい。規制ガイド30を有孔材料で構成した場合は、強度を維持しやすい。規制ガイド30全体を透光性を有する材料で形成した場合は、規制ガイド30の内部全体の視認性が向上する。他方、板金に透光性を有する部材を嵌め込んで構成した場合は、強度を維持しつつ内部の視認性を確保することができる。
以上の説明では、蝶番34が、傾斜部32とベース20とに取り付けられているとしたが、平行部31と脇板23とに取り付けられていてもよい。また、開閉手段が蝶番34であるとしたが、ビス等の締結用部材で取り付けられていてもよい。開閉手段が締結用部材であると、規制ガイド30を完全に取り外すことが可能になり、メンテナンスの際の作業範囲の制約が低減される。他方、開閉手段を蝶番34とした場合は、開閉を簡便に行うことができると共に、締結用部材を用いたときに生じ得る部材の紛失を抑制することができ、さらに規制ガイド30を閉じるときの噛み合わせの調節が不要になる。
以上の説明では、硬貨貯留部55が、放出部10A及び放出部10Bに収容されている硬貨Cのすべて、あるいは放出部10C及び放出部10Dに収容されている硬貨Cのすべてのいずれか多い方の硬貨Cを貯留できる大きさに形成されているとしたが、各放出部10A〜10Dに収容されている硬貨Cを一括して貯留できる大きさに形成されていてもよい。このように構成されていると、装置内計数動作を1回で済ますことができる。しかしながら、硬貨処理装置100の大型化を抑制する観点からは、装置内計数動作を複数回に分けて行うことを許容して、硬貨貯留部55の小型化を図るとよい。また、硬貨貯留部55の小型化を図る観点からは、硬貨貯留部55が、1つ分の放出部10に収容されている硬貨Cのすべてを収容できる大きさに形成されていてもよい。