JP5858593B2 - 硬化物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素−炭素二重結合とアルコキシシリル基とを有した化合物をラジカル重合させ、更に加水分解縮合させて硬化物を得る方法、及びこれにより得られた硬化物に関する。
ビニル基や(メタ)アクリル基、アリル基などの炭素−炭素二重結合を有する化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下、熱、紫外線、電子線などのエネルギーを加えることでラジカル重合するため、様々な分野で利用されている。分子中に複数の炭素−炭素二重結合を有する化合物においては、ラジカル重合により3次元架橋構造を構築し、耐熱性や機械特性、耐薬品性に優れる硬化物が得られる。得られた硬化物は、例えば液晶テレビ等のディスプレイ前面保護板や液晶偏光フィルム、位相差フィルム等のディスプレイ材料をはじめ、タッチパネル用基板、カラーフィルター用基板、TFT用基板などのガラス代替基板として、また、眼鏡用レンズ材料やプリズム、カメラ等の撮像光学系、表示デバイス等の投影光学系、画像表示装置等の観察光学系、光磁気ディスクドライブ等のレーザ光学系、導波路などに用いるレンズ等の光学素子など、各種フィルムや成形体として使用され、また、ガラス代替品材料としての利用も進んでいる。
このような硬化物の特性は、主に樹脂中の炭素−炭素二重結合の濃度に依存し、炭素−炭素二重結合を高濃度にすることで、より強固な架橋構造が構築でき、熱膨張率の低減や弾性率を向上させることができる。例えば(メタ)アクリル基で改質したエチレン性不飽和化合物を使用して得た積層体(特許文献1参照)や、イソシアヌレート骨格を有したエチレン性不飽和化合物を使用した硬化性組成物から、表面硬度に優れたプラスチックフィルムを得る方法(特許文献2参照)などが報告されている。
ところが、炭素−炭素二重結合による架橋密度が大きくなると硬化収縮率が著しく増大し、得られた硬化物が脆性化する問題がある。また、硬化収縮による残留応力が増大すると共に、重合時に発生する重合熱により硬化速度が加速して急激な硬化が進行することから硬化中にクラックが発生し、厚肉の硬化物を得るのが難しくなる。
それゆえに、従来においては、硬化物を製造する為には、長時間かけ徐々に加熱し硬化を進行させる方法を採らなければならない。紫外線や電子線を硬化に利用する場合も同様であり、弱い照度で長時間露光する必要があることから、生産効率の点で望ましくない。また、炭素−炭素二重結合の濃度を高濃度にすると硬化物中に重合に関与しきれない、未反応の炭素−炭素二重結合が多く残存し、結果として未反応の炭素−炭素二重結合が加熱により酸化劣化の原因となって透明性や機械物性の低下を招いてしまう。特に(メタ)アクリル基の場合には、極性基の増加に伴い硬化物の吸水率が増加してしまう。
特開2005−125142号公報 特開2006−225434号公報
そこで、本発明の目的は、炭素−炭素二重結合の濃度増加に頼らずに、硬化物の架橋密度を増加させることできる新規な方法を提供することにある。また、より強固な架橋構造を構築することに伴う脆性化や硬化収縮率の増加といった、トレードオフの問題を解決した硬化物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために検討を重ねた結果、炭素−炭素二重結合とアルコキシシリル基とを有した化合物を含む硬化性組成物をラジカル重合させ、得られた重合物(一次硬化物)に含まれたアルコキシシリル基を利用してシロキサン結合を形成させることで、炭素−炭素二重結合の増加に頼らずに架橋密度を高めることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、フィルム状、シート状、又は厚板状に成形された硬化物の製造方法であって、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を含んだ有機基とアルコキシシリル基とを有した化合物a、及びラジカル重合開始剤を含んだ硬化性組成物を塗布し、キャストし、又は注型してラジカル重合させて、アルコキシシリル基を有した状態でフィルム状、シート状、又は厚板状の一次成形体を得て、得られた一次成形体を酸性水溶液又は水と接触させてアルコキシシリル基を加水分解縮合させることを特徴とする硬化物の製造方法である。
また、本発明は、フィルム状、シート状、又は厚板状に成形された硬化物であって、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を含んだ有機基とアルコキシシリル基とを有した化合物a、及びラジカル重合開始剤を含んだ硬化性組成物を塗布し、キャストし、又は注型してラジカル重合させて、アルコキシシリル基を有した状態でフィルム状、シート状、又は厚板状の一次成形体を得て、得られた一次成形体を酸性水溶液又は水と接触させてアルコキシシリル基を加水分解縮合させて得られたことを特徴とする硬化物である。
本発明で用いる化合物aについて、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合有する有機基とは、具体的にはビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリル基であるのがよい。この「分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有する有機基とアルコキシシリル基とを有する化合物a」は特に制限されず、得られる硬化物の目的や用途に合わせて適宜選択することができるが、好ましくは、耐熱性や透明性の観点から、数平均分子量が100〜250000である、ケイ素化合物モノマー又はケイ素化合物オリゴマー又はケイ素化合物ポリマーであるのがよい。また、化合物aの炭素−炭素二重結合の数とアルコキシシリル基中のアルコキシル基の数について、好ましくは、炭素−炭素二重結合1つあたりの分子量(化合物aの分子量を炭素−炭素二重結合の数で割った値)が100〜5000であり、アルコキシル基1つあたりの分子量(化合物aの分子量をアルコキシル基の数で割った値)が30〜1000であるのがよく、より好ましくは、炭素−炭素二重結合1つあたりの分子量が150〜5000であり、アルコキシル基1つあたりの分子量が50〜1000であるのがよい。炭素−炭素二重結合1つあたりの分子量が100より小さいと硬化収縮が大きくなり、硬化物を得る事が困難であり、反対に炭素−炭素二重結合1つあたりの分子量が5000より大きいと十分な架橋構造が構築されず、硬化物が脆化してしまう。一方、アルコキシル基1つあたりの分子量が30より小さいと、脱水素縮合時の硬化物の収縮量が大きく硬化物が破損するおそれがあり、反対にアルコキシル基1つあたりの分子量が1000より大きい場合では、脱水素縮合による架橋密度が増加した効果を十分に発現することができない。
化合物aについて、具体的には3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのモノシラン類、鎖状シロキサン類、環状シロキサン類、籠型ロキサン類、不完全縮合籠型シロキサン類、梯子型シロキサン類、不完全縮合梯子型シロキサン類およびこれらのシロキサン類を組み合わせ縮合させたシロキサン類等を例示することができる。このような化合物aを用いると、得られる硬化物の耐熱性を向上させることができる点で好ましい。
また、本発明では、「分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合有する有機基とアルコキシシリル基とを有する化合物a」の他に、「分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物b」を含んだ状態でラジカル重合させて、一次硬化物を得るようにしてもよい。ここで、具体的な化合物bとしては、単官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。
さらに本発明では、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物bが、好ましくは炭素−炭素二重結合の他に水酸基を有するものであるのがよい。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、グリセリンジ(メタ)アクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートなどの水酸基含有多官能アクリレート類、水酸基含有ビニルエーテル類、水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。このような炭素−炭素二重結合と水酸基とを有した化合物bは、その水酸基が化合物aのアルコキシシリル基と脱アルコール縮合が可能であり、また、化合物aのアルコキシシリル基が酸性水溶液により加水分解されたシラノール基と脱水縮合が可能であり、得られる硬化物の架橋密度を向上させることができる。「分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合と水酸基とを有した化合物b」と「化合物a」との配合割合については、得られる硬化物の用途等に応じ、すなわち弾性率の向上や熱寸法安定性の向上(熱膨張係数の低下)等の目的から化合物bの配合割合を増すようにするのがよいが、化合物bの水酸基の数より化合物aのアルコキシシリル基の数の方が多くなるようにするのが望ましい。水酸基の数の方が多くなってしまうと、後述するように、アルコキシシリル基を利用した加水分解縮合において水酸基が残存し、最終的に得られる硬化物の吸水率が高くなってしまうおそれがある。
本発明における硬化物の製造方法では、上記化合物aを(さらに化合物bを含む場合もある)ラジカル重合(化合物bが含まれる場合は化合物aとのラジカル共重合の場合もある。以下、共重合の場合を含めて「ラジカル(共)重合」ということがある。)させることで、アルコキシシリル基(Si-OR基)を含んだ状態で一次硬化させる。次いで、酸性水溶液又は水と接触させることで、アルコキシシリル基を加水分解縮合させる方法である。すなわち、上記の一次硬化物を酸性水溶液又は水と反応させてアルコキシシリル基の少なくとも一部をシラノール基(Si-OH基)に変換させ、次いで、残ったアルコキシシリル基と変換されたシラノール基との間で酸又は水により脱水縮合や脱アルコール縮合が起こり、シロキサン結合が生成され、架橋密度を増加させる。また、炭素−炭素二重結合と水酸基とを有する化合物bを含む場合は、化合物bの水酸基と一次硬化物のアルコキシシリル基との間でも脱アルコール縮合やアルコキシシリル基が酸性水溶液又は水により加水分解されたシラノール基間での脱水縮合が起こり、ケイ素−酸素−炭素結合が生成して架橋密度が増加する。このように本発明の硬化物の製造方法を用いれば、炭素−炭素二重結合数を増加させることなく、架橋密度を高めることができ、これまでは両立が困難であった、高架橋密度化に伴う脆性化や硬化収縮率増加を抑制した硬化物の製造を可能にする。
本発明における硬化物の製造方法では、少なくとも化合物a(化合物bが含まれる場合もある)とラジカル重合開始剤とを含んだ硬化性組成物を用いて、一次硬化物を得るようにしてもよい。ラジカル重合開始剤としては、公知の光重合開始剤や熱重合開始剤を用いることができ、配合量については、硬化性組成物100重量量に対して0.1〜5重量部の範囲であるのがよく、好ましくは0.1〜3重量部の範囲であるのがよい。ラジカル重合開始剤が0.1重量部に満たないと硬化が不十分となり、得られる硬化物の強度、剛性が低くなり、一方、5重量部を超えると硬化物の着色等の問題が生じるおそれがある。
硬化性組成物を光硬化性組成物とする場合に用いられる光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。
硬化性組成物を光硬化性組成物とする場合に用いられる熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系など各種の有機過酸化物を好適に使用することができる。具体的にはシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1―ビス(t-ヘキサパーオキシ)シクロヘキシサノン、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、t-ブチルパオキシー2-エチルヘキサノエート等を例示することができるが、これらに制限されるものではない。また、これらを単独で使用してもよく、熱重合開始剤を2種類以上併用してもよい。更には、熱重合促進剤や光重合開始剤を併用することもできる。
また、硬化性組成物には、本発明の目的から外れない範囲で各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等を例示することができる。
本発明において、アルコキシシリル基を有する一次硬化物は、例えばラジカル重合開始剤を含んだ硬化性組成物を加熱又は光照射によって硬化させることで得ることができる。このうち、加熱によって重合体(或いは共重合体)を得る場合、その重合温度は、熱重合開始剤や促進剤の選択により、室温から200℃前後までの広い範囲から選択することができる。この際、硬化性組成物を金型内やスチールベルト上で重合硬化させることで所望の形状の一次硬化物を得るようにしてもよい。
一方、光照射によって重合体(或いは共重合体)を製造する場合、例えば波長10〜400nmの範囲の紫外線や波長400〜700nmの範囲の可視光線を照射することで、一次硬化させることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。また、紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光開始剤の種類に応じて選定される。
光照射によってアルコキシシリル基を有した一次硬化物を得る際には、例えば任意のキャビティ形状を有し、石英ガラス等の透明素材で構成された金型内に硬化性組成物を注入し、例えば上述したような紫外線ランプで紫外線を照射して重合硬化を行い、金型から脱型させることで所望の形状の一次硬化物を得ることができる。また、金型を用いない場合には、例えば移動するスチールベルト上にドクターブレードやロール状のコーターを用いて硬化性組成物を塗布し、上記のような紫外線ランプで重合硬化させることで、シート状の一次硬化物を得ることができる。さらには、アルコキシシリル基を有した一次硬化物に一軸延伸や二軸延伸などの延伸加工を施し、一次硬化物をフィルム状やシート状等の任意の形状に加工して、塩基水溶液で処理するようにしてもよい(熱による硬化等の場合も同様である)。
既に一部述べたが、一次硬化物を得る際には、硬化性組成物を目的とする硬化物となるように所定の形状とし、ラジカル(共)重合させるようにするのがよい。ここで、得られる一次硬化物が熱可塑性である場合、例えば射出成型、押出成形、押出ラミネート成形、圧縮成形、中空成形、カレンダー成形、真空成形、Tダイ法等の各種の成形法を採用できる。ただし、化合物aまたは化合物bの一分子当たりの炭素−炭素二重結合数が1.0を超える場合は、三次元架橋構造体を有する(共)重合体となるため、通常、成形硬化が採用される。なお、本明細書中では、ラジカル(共)重合のことを硬化ともいう。ラジカル(共)重合には、加熱又は電子線、紫外線等のエネルギー線照射が適当である。
また、得られた一次硬化物を酸性水溶液又は水と接触させてアルコキシシリル基を加水分解縮合させる際、酸性水溶液の酸としては、水に溶解するものであれば特に制限されない。酸としての例を挙げると、塩酸、硫酸、酢酸、蟻酸、トリフロオロメタンスルホン酸等が例示できる。これらの中でも、塩酸又は硫酸を用いるのが好ましい。
酸性水溶液の濃度については、1重量%〜37重量%の範囲が好ましい。酸性濃度が希薄すぎると完全な加水分解縮合に長時間を要し、反対に濃度が高すぎるとシロキサン結合などが切断され、得られる硬化物の機械特性が悪化してしまう。一次硬化物と酸性水溶液を接触させる方法としては、浸漬、噴霧、シャワー等の公知の方法を用いることができるが、なかでも酸性水溶液中に一次硬化物を浸漬させる方法が好ましい。浸漬時間は、一次硬化物に残存するアルコキシシリル基数や一次硬化物の厚みのほか、酸性水溶液の種類により異なるが、好ましくは1時間以上浸漬させるのがよい。また、加水分解縮合は一次硬化物が酸性水溶液と接触している箇所から進行する為、浸漬方法を変えることで、部分的に架橋密度を高めることもできる。例えば、浸漬時間を短くすることで一次硬化物の表面のみ架橋密度を高めるようにしてもよい。さらには最終的に得られる硬化物の表面から中心部までの架橋密度が異なる傾斜材料とすることも可能であり、得られる硬化物の用途に合わせて浸漬条件を変えるようにすることもできる。
酸性水溶液に接触させた後は、一次硬化物の不純物除去や、経時による寸法安定性を高める目的で、後処理を施すのが望ましい。このような後処理としては、例えば一次硬化物を水洗し酸を除去させ、また、酸性水溶液との接触による加水分解縮合が不完全であり、アルコキシシリル基がシラノール基として残存する可能性があるため、水洗後更に加熱処理するようにしてもよい。この加熱処理については100℃〜300℃の温度範囲で1時間以上加熱することが好ましく、より好ましくは180℃〜250℃の温度範囲で1〜3時間加熱するのがよい。なお、酸性水溶液の代わりに水を利用する場合の加水分解縮合についても同様であるが、加水分解縮合速度が遅くなる為、酸性水溶液を使う場合に比べてより長い時間の処理(浸漬時間等)が必要となる。
本発明によって得られた硬化物は、一次硬化の際の成形条件により、例えばフィルム状のものから厚板まで種々の状態で得ることができ、硬化後の形状に特に制限はない。そのため、液晶テレビ等のディスプレイ前面保護板や液晶偏光フィルム、位相差フィルム等のディスプレイ材料をはじめ、タッチパネル用基板、カラーフィルター用基板、TFT用基板などのガラス代替基板として、また、眼鏡用レンズ材料やプリズム、カメラ等の撮像光学系、表示デバイス等の投影光学系、画像表示装置等の観察光学系、光磁気ディスクドライブ等のレーザ光学系、導波路などに用いるレンズ等の光学素子など、各種用途に適用可能である。
本発明における硬化物の製造方法によれば、モノマー中の炭素−炭素二重結合の濃度増加に頼らずに、強固な架橋構造を構築した硬化物が得られるため、炭素−炭素二重結合により架橋密度を高めたことによる硬化収縮率の増加や脆性化といった問題を解消することができる。そのため、得られた硬化物は、熱膨張率の低減、弾性率の向上、硬化収縮率の抑制、脆性化の防止等が同時に図られたものであり、また、本発明の製造方法は、従来ではクラックの発生が懸念されるような厚肉の硬化物を得るのにも好適な方法である。
また、本発明の硬化物の製造方法は、アルコキシシリル基を有した状態で一次硬化物を得て、酸性水溶液(又は水)を用いた加水分解縮合によりシロキサン結合を形成させるため、取扱い性等の点でも優れ、工業的にも有利な方法である。すなわち、一次硬化物を得る際には、ゲル化のおそれや脱水縮合反応性により制御が困難であるSi−OH基を有した化合物を用いるのではなく、アルコキシシリル基を有した化合物aを用いて一次硬化物を得て、酸性水溶液又は水と反応させてアルコキシシリル基の少なくとも一部をシラノール基(Si-OH基)に変換させ、残ったアルコキシシリル基と変換されたシラノール基との間で脱水縮合や脱アルコール縮合によりシロキサン結合を形成するため、取扱い性の観点からも優れた方法である。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を含んだ有機基とアルコキシシリル基とを有した化合物aとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM503)を準備し、炭素−炭素二重結合を有する化合物b-1としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートDCP-A))を準備し、炭素−炭素二重結合と水酸基とを有する化合物b-2としてペンタエリスリトールトリアクリレート(同社製 ライトアクリレートPE-3A)を準備し、更に光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを準備して、表1に示した配合比(重量部)からなる実施例1〜3に係る硬化性組成物を得た。また、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの代わりにペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトアクリレートPE-4A)を用い、表1に示すように比較例1〜3に係る硬化性組成物を得た。なお、表1では、硬化性組成物における成分にアルコキシシリル基が含まれるか否かを有無で示した。
Figure 0005858593
上記で得られた実施例1に係る硬化性組成物を、ロールコーターを用いてガラス板上に厚さ0.2mmになるようにキャスト(流延)し、次いで、30W/cmの高圧水銀ランプを用いて8000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、厚み0.2mmのフィルム状のアルコキシシリル基を有した一次成形体(一次硬化物)を得た(弾性率は780MPaでCTEは240pp/K)。得られた一次成形体を酸性水溶液として5重量%塩酸に48時間室温で浸漬させた。浸漬後、一次成形体を取り出して水洗を行った。さらに室温で1時間自然乾燥させた後、200℃のオーブンで1時間加熱させて、実施例1の最終成形体(本発明の硬化物)を得た。
上記で得られた実施例1の最終成形体について、以下に記した各条件で物性を評価した。結果を表2に示す。
[成形性]
得られた最終成形体を目視で確認し、クラックや欠けが無い場合を「良」とし、クラックや欠けが発生している場合を「不良」とする2段階評価を行った。
[弾性率]
引張弾性率(試験片:8mm x 80mm x 0.2mm、試験速度0.5mm/min、チャック間距離50mm)の値を示す。また表2中の「×」は所定サイズの試験片が得られず測定が不可であったことを示す。
[CTE]
熱機械的分析を行い、50℃から150℃の線膨張係数(CTE)を測定した。3mm幅に試験片を加工し、チャック間距離15mmで固定して昇温速度昇温速度5℃/min、引張荷重4.2mNで測定した。
[吸水率]
試験片サイズを100mm x 100mm角とし、50℃で24時間乾燥させた後、重量を測定し、ついで25℃の温水中に24時間浸漬させ、次の式により吸水率を求めた。また表2中の「×」は所定サイズの試験片が得られず測定が不可であったことを示す。
吸水率(%)=[(吸水重量−乾燥重量)/乾燥重量]×100
Figure 0005858593
また、表2に示すようにして、各硬化性組成物と以下に記した硬化条件との組合せから実施例2〜3及び比較例1〜3の最終成形体を得た。得られた最終成形体について、実施例1と同様な方法で物性評価を行った。結果を表2に示す。
[硬化条件1]
ロールコーターを用いて、ガラス板上に硬化性組成物を厚さ0.2mmになるようにキャスト(流延)し、30W/cmの高圧水銀ランプを用いて8000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、所定の厚み(0.2mm)を有したフィルム状の一次成形体を得た。
[硬化条件2]
硬化条件1に加え更に、硬化条件1で得られた一次成形体を酸性水溶液として5%塩酸に48時間室温浸漬させ、成形体を取り出し、水洗後室温で1時間自然乾燥させた後、200℃のオーブンで1時間加熱させ、フィルム状の最終成形体を得た。
実施例1に示したとおり、アルコキシシリル基を有する一次成形体を酸性水溶液に接触させることでアルコキシシリル基が加水分解縮合し、架橋密度が増加したことにより、弾性率が向上し、CTEが低下した。また各実施例及び比較例の結果から、本発明の製造方法を用いれば、炭素−炭素二重結合を増加させたことと同等の弾性率とCETをもつ最終成形体(本発明の硬化物)を良好な成形性で得ることができ、尚且つ得られた最終成形体は低吸水性を併せ持つことが可能である。
本発明によれば、炭素−炭素二重結合数の増加に頼らずに、一次硬化物に含有されるアルコキシシリル基の加水分解縮合を利用し、最終的に得られる硬化物の架橋密度を増加させることが可能である。そして、本発明によって得られた硬化物(最終硬化物)は各種フィルムやシート状の成形体として利用することができ、例えば液晶テレビ等のディスプレイ前面保護板や液晶偏光フィルムなどのディスプレイ材料をはじめ、タッチパネル用基板、カラーフィルター用基板、TFT用基板などのガラス代替基板として利用できる。また、例えば眼鏡用レンズ材料やプリズム、カメラ等の撮像光学系、表示デバイス等の投影光学系、画像表示装置等の観察光学系、光磁気ディスクドライブ等のレーザ光学系、導波路などに用いるレンズなどの光学素子としても利用することができる。すなわち、本発明によって得られた硬化物は、これまで主にガラスが使われていた各種ガラス材料にかわって使用することができる。

Claims (4)

  1. フィルム状、シート状、又は厚板状に成形された硬化物の製造方法であって、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を含んだ有機基とアルコキシシリル基とを有した化合物a、及びラジカル重合開始剤を含んだ硬化性組成物を塗布し、キャストし、又は注型してラジカル重合させて、アルコキシシリル基を有した状態でフィルム状、シート状、又は厚板状の一次成形体を得て、得られた一次成形体を酸性水溶液又は水と接触させてアルコキシシリル基を加水分解縮合させることを特徴とする硬化物の製造方法。
  2. 化合物aのほかに、分子中にラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を有した化合物bを硬化性組成物に含めた状態で一次成形体を得る請求項1に記載の硬化物の製造方法。
  3. 化合物bが、水酸基を有する化合物である請求項2に記載の硬化物の製造方法。
  4. 化合物aは、数平均分子量が100〜250000のケイ素化合物モノマー、ケイ素化合物オリゴマー、又はケイ素化合物ポリマーであり、また、化合物aの分子量を炭素−炭素二重結合の数で割った値が100〜5000であると共に、化合物aの分子量をアルコキシル基の数で割った値が30〜1000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
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