JP5857582B2 - 燃料噴射装置の制御方法、内燃機関、及びそれを搭載した車両 - Google Patents

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

本発明は、背反する熱効率、排出ガス、及び燃焼音を同時に改善する最適噴射形態で燃料を噴射する燃料噴射装置の制御方法、内燃機関、及びそれを搭載した車両に関する。
ディーゼルエンジンの性能改善に対しては、燃料噴射技術の革新が大きく寄与する。一方、市場ニーズとしては、ディーゼルエンジンに対する燃費、排出ガス、及び騒音などの諸性能の一層の改善が求められており、これらの要求に対応するための燃料噴射技術として圧電(ピエゾ)素子により燃料噴射弁を直接駆動する燃料噴射装置(以下、直動ピエゾインジェクタという)が提案されている。ピエゾ素子は応答性に優れ、印加電圧、電流によって素子の伸縮を制御することで、1サイクルあたりの噴射回数、単位時間あたりの噴射量(噴射率)などの燃料噴射形態の調節に関する自由度を向上することができる。
排出ガスを改善するには、完全燃焼で発生するNOx(窒素酸化物)と不完全燃焼で発生するPM(微量粒子)双方の発生を抑えることが必要であり、高圧の燃料を噴射し完全燃焼させることと、噴射を複数回行うことで燃焼室の高温化を防ぐことが有効となる。また、騒音成分のうち燃焼に起因して発生する燃焼音の改善には、燃焼初期の急激なシリンダ内圧力の上昇率を抑制することが有効となる。
よって、直動ピエゾインジェクタを用いて燃費、排出ガス、及び騒音の同時改善を図る場合は、燃料噴射形態として燃料噴射を複数回に分ける多段噴射(以下、マルチ噴射という)や、噴射率を噴射途中で変化させる噴射、所謂ブーツ型噴射(以下、レートシェイプ噴射という)の有効性が知られている。
レートシェイプ噴射とは、ディーゼルエンジンにおいて噴射期間中の噴射率を制御することである。このレートシェイプ噴射は、直動ピエゾインジェクタの噴射ノズルの開度を調整する方法や、2系統の圧力が異なる燃料回路を途中で切り換える方法などより可能となる。
そこで、そのレートシェイプ噴射を用いて、着火性を向上して排気ガスを低減した装置がある(例えば、特許文献1参照)。ここで、従来のレートシェイプ噴射について、図5を参照しながら説明する。図5の(a)に棚付きのブーツ型のレートシェイプ噴射を示し、図5の(b)にスロープ形状のブーツ型のレートシェイプ噴射を示す。
これらのレートシェイプ噴射の狙いは、図5の(a)及び(b)に示すように、最初の噴射率(初期噴射率)を低くすることで、急激な燃焼開始を緩和させて燃焼音やNOx排出を低減し、その後、噴射率を上げることで燃焼速度を向上させて熱効率を改善することにある。
一方で、マルチ噴射を用いて、燃焼音を低減し、排気ガスを抑制した装置もある(例えば、特許文献参照2、又は3参照)。ここで、従来のマルチ噴射について、図6を参照しながら説明する。このマルチ噴射の噴射率波形30は、パイロット噴射31やプレ噴射32と呼ばれるメイン噴射33の前に微量の燃料を噴射する手法と、アフター噴射34やポスト噴射35と呼ばれるメイン噴射33の後に燃料を噴射する手法とを組み合わせている。
このマルチ噴射を用いた装置は、パイロット噴射31やプレ噴射32を行うことによっ
て、着火直前に燃料と空気との混合を促進し、また、微量の燃料を燃やす予備的な燃焼により、メイン噴射時の拡散燃料を活発化、燃料を噴射してから着火するまでの着火遅れ時間を短縮することができる。これにより、NOxの発生を抑制すると共に燃焼音や振動を低減することができる。
上記の目的を解決するための本発明の燃料噴射装置の制御方法は、1燃焼サイクルあたりに複数回噴射し、主噴射より早期に1回以上のパイロット噴射を行い、主噴射より晩期に1回以上のポスト噴射を行う燃料噴射装置の制御方法において、前記パイロット噴射で噴射された燃料の積算値を予め設定された閾値以下にすること、前記主噴射を初期の噴射率から後期の噴射率までを噴射率が徐々に高くなるスロープ状のブーツ型の噴射波形を有するレートシェイプ噴射にすること、その主噴射を2回以上にすること、および複数回の前記主噴射のうちの後から噴射される方の初期の噴射率を低くする期間を前に噴射される方の初期の噴射率を低くする期間よりも長くすることを条件として、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び燃料の性状に応じて、前記パイロット噴射の回数およびその1回の噴射量、前記主噴射の回数、その1回の噴射量、およびその噴射期間中の噴射率、ならびに、ポスト噴射の回数およびその1回の噴射量のそれぞれを変更した複数の比較噴射形態の中でシリンダ内の燃焼シミュレーションにより熱効率を最大、排出ガス成分を最小、および燃焼音を最小にする形態を最適噴射形態として算出し、算出した前記最適噴射形態に基づいて前記燃料噴射装置を制御することを特徴とする方法である。
しかしながら、前述のレートシェイプ噴射やマルチ噴射を行う装置などで、燃費(熱効率)、排出ガス(すす排出量)、及び燃焼音の改善を考える場合に、燃焼音を改善するとすす排出量が増加するなど、それぞれが背反する場合がある。また、この同時改善を燃料噴射形態の最適化によって実現する場合、直動ピエゾインジェクタのような噴射形態の自由度が高い燃料噴射装置を採用することが有効であるが、自由度が高い反面、無数に実施が可能である噴射形態の中から最適な噴射形態を見出すことが課題となっている。
特開2002−89392号公報 特開2007−187149号公報 特開2011−007203号公報
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチ噴射と複数回のレートシェイプ噴射を組み合わせた最適な燃料噴射形態を算出して、燃費、排出ガス、及び燃焼音を同時に改善することができる燃料噴射装置の制御方法、内燃機関、及びそれを搭載した車両を提供することである。
上記の目的を解決するための本発明の燃料噴射装置の制御方法は、1燃焼サイクルあたりに複数回噴射し、主噴射より早期に1回以上のパイロット噴射を行い、主噴射より晩期に1回以上のポスト噴射を行う燃料噴射装置の制御方法において、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び使用燃料の性状に応じて、予め前記パイロット噴射の回数と噴射量、前記主噴射の回数と噴射量、及び、前記ポスト噴射の回数と噴射量を設定して、熱効率を最大、排出ガス成分を最小、及び燃焼音を最小とする最適噴射形態を算出し、前記燃焼噴射装置が、前記最適噴射形態に基づいて、前記主噴射として噴射率を噴射途中で変化させる噴射を2回以上行うことを特徴とする方法である。
この方法によれば、マルチ噴射と、2回以上のレートシェイプ噴射(噴射率を噴射途中で変化させる噴射)とを組み合わせて算出される最適噴射率形態に基づく燃料噴射を行うことにより、熱効率を最大、排出ガス成分を最小、及び燃料音を最小にすることができる。これまで、マルチ噴射の主噴射として矩形状の噴射率波形を用いることが多かったが、主噴射として、スロープ状のブーツ型の噴射率波形を有するレートシェイプ噴射を複数回行うことで、より熱効率を向上すると共に、主噴射を複数回に分けることで燃焼室の高温化を防ぐことができる。さらに、前述したように、初期の噴射率を低くするレートシェイプ噴射により、急激な燃焼を抑制し、燃焼音を低減し、NOxの発生を抑制することができる。
また、上記の燃料噴射装置の制御方法において、前記最適噴射形態を算出する際に、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び使用燃料の性状に応じて、前記パイロット噴射の回数およびその1回の噴射量、前記主噴射の回数、その1回の噴射量、およびその噴射期間中の噴射率、ならびに、ポスト噴射の回数およびその1回の噴射量の少なくとも一つ変更して、前記比較用噴射形態を生成する生成工程と、前記比較用噴射形態に従って前記燃料噴射装置が燃料を噴射した場合を燃焼シミュレートして、熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音を目的関数として算出する目的関数算出工程と、前記生成工程と前記目的関数算出工程を繰り返して、複数の前記比較用噴射形態の中から熱効率を最大、排出ガス成分を最小、及び燃焼音を最小とする前記最適噴射形態を算出する工程と、を含むことを特徴とする。
この方法によれば、比較用噴射形態を生成した後、その比較用噴射形態に従った燃量噴射によるシリンダ内の燃焼シミュレーションを行うための温度、圧力などの境界条件の予備計算を行う。その後に燃焼シミュレーションとして、燃料噴霧の分散、化学反応、流体力学についての本計算を実施する。その結果として得られる熱効率、排出ガス成分、燃焼音を目的関数として最適化する。上記の方法をくり返して、その中で、熱効率を最大、排出ガス成分を最小、及び燃焼音を最小となる最適噴射形態を算出することができる。その最適噴射形態に従って、燃料を噴射すると、相反する燃費、排出ガス、及び燃焼音の問題を同時に改善することができる。
また、噴射形態の自由度が高いピエゾインジェクタなどの燃料噴射装置の無数に実施が可能である噴射形態の中から最適な噴射形態を見出すことができる。
上記の目的を解決するための内燃機関は、1燃焼サイクルあたりに複数回噴射し、主噴射より早期に1回以上のパイロット噴射を行い、主噴射より晩期に1回以上のポスト噴射を行う燃料噴射装置と、該燃料噴射装置を制御する制御装置を備えた内燃機関において、前記制御装置が、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び燃料の性状に基づいてシリンダ内の燃焼シミュレーションにより前記パイロット噴射で噴射された燃料の積算値が予め設定された閾値以下に設定され、前記主噴射が初期の噴射率から後期の噴射率までを噴射率が徐々に高くなるスロープ状のブーツ型の噴射波形を有するレートシェイプ噴射に設定され、その主噴射が2回以上に設定され、および複数回の前記主噴射のうちの後から噴射される方の初期の噴射率を低くする期間が前に噴射される方の初期の噴射率を低くする期間よりも長く設定された最適噴射形態に基づいて前記燃料噴射装置を制御するように構成される。
この構成によれば、マルチ噴射と複数回の噴射率を噴射途中で変化させるレートシェイプ噴射を組み合わせることで、燃費、排出ガス、燃焼音を同時に改善することができる。
また、上記の内燃機関において、前記最適噴射形態を算出する手段が、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び使用燃料の性状に応じて、前記パイロット噴射の回数と噴射量、前記主噴射の回数と噴射量、及び、前記ポスト噴射の回数と噴射量を設定して、比較用噴射形態を生成する生成手段と、前記比較用噴射形態に従って前記燃料噴射装置が燃料を噴射した場合をシミュレートして、少なくとも熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音を目的関数として算出する目的関数算出手段と、前記生成手段と前記目的関数算出手段を繰り返して、前記比較用噴射形態の中から前記熱効率を最大、排出ガスを最小、及び燃焼音を最小とする前記最適噴射形態を算出する手段と、を含む。
この構成によれば、最適噴射形態を最適化する場合に、無数に実施が可能である噴射形態の中から最適な噴射形態を見出すことができる。
上記の問題を解決するための車両は、上記に記載の内燃機関を搭載して構成される。こ
の構成によれば、燃費を向上し、すす排出量を低減し、及び燃焼音を低減することができる。
本発明によれば、マルチ噴射と複数回のレートシェイプ噴射を組み合わせた最適な最適噴射形態を算出して、燃費、排出ガス、及び燃焼音を同時に改善することができる。また、マルチ噴射と複数回のレートシェイプ噴射を組み合わせることで、無数に実施が可能である噴射形態の中から最適な噴射形態を選択することができる。
本発明に係る実施の形態の内燃機関の燃料噴射装置を示した図である。 本発明に係る実施の形態の内燃機関の最適噴射形態を示した図である。 本発明に係る実施の形態の内燃機関の燃料噴射装置の制御を示したフローチャートである。 本発明に係る実施の形態の内燃機関の結果を示した図である。 従来のレートシェイプ噴射を示した図である。 従来のマルチ噴射を示した図である。
以下、本発明に係る実施の形態の燃料噴射装置の制御方法、内燃機関、及びそれを搭載した車両について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態では内燃機関を周知の技術のディーゼルエンジンを例に説明する。
まず、本発明に係る実施の形態の内燃機関の燃焼噴射装置について、図1を参照しながら説明する。図1に示すように、ディーゼルエンジン(内燃機関)のコモンレールシステム1は、燃料タンク2、コモンレール3、高圧ポンプ4、高圧管5、ECU(制御装置)6、及び各インジェクタ(燃料噴射装置)i1〜i4を備える。
このコモンレールシステム1は、燃料タンク2の燃料(軽油)を高圧ポンプ4で高圧化し、その高圧化した軽油を、高圧管5を通してコモンレール3に移送する。そして、ECU6により制御された直動ピエゾインジェクタで形成されたインジェクタi1〜i4から各気筒に噴射するシステムである。
インジェクタi1〜i4は、噴射期間中の噴射率を制御することができるインジェクタであればよく、間接式ピエゾインジェクタやソレノイドインジェクタ、またそれに類するインジェクタのうち、レートシェイプ噴射が可能なインジェクタが好ましい。
次に、インジェクタi1〜i4から噴射される燃料の噴射率波形を示した本発明に係る実施の形態の内燃機関の最適噴射形態10について、図2を参照しながら説明する。最適噴射形態10は、パイロット噴射11aと11b、レートシェイプ噴射(主噴射)12aと12b、及びポスト噴射13を備える。
パイロット噴射11aと11bは、レートシェイプ噴射12aと12bより早期に行われる燃料噴射である。このパイロット噴射11aと11bの総量は5mm以下の微量な噴射量とする。図2によると、この噴射量は噴射率を時間で積分した値であり、本発明では、パイロット噴射11aと11b分の積算値が5mm以下になるように設定すればよい。ここでは、2回のパイロット噴射11aと11bで説明するが、積算値が5mm以下であれば、その回数は限定しない。
このパイロット噴射11aと11bによれば、着火直前に燃料の軽油と空気との混合を
促進することができ、また、予備的な燃焼による熱発生より燃焼を緩慢にし、レートシェイプ噴射12aと12bの拡散燃料を活発化して、燃料を噴射してから着火するまでの着火遅れ時間を短縮することができる。
主噴射であるレートシェイプ噴射12aと12bの着火が遅れると、シリンダ内に噴射されながら燃えていなかった燃料に、あるタイミングで一気に火が付き、燃焼温度が上昇してしまう。この結果、NOxの排出が増加し、燃焼音や振動も大きくなってしまう。よって、レートシェイプ噴射12aと12bより早期に5mm以下の微量な噴射であるパイロット噴射11aと11bを行うことで、着火遅れ時間を短縮することができ、NOxの発生を抑制すると共に、燃焼音や振動を低減することができる。さらに、エンジンが低回転、高負荷時にパイロット噴射11aと11bの時期を早めると最大トルクをアップすることもできる。
レートシェイプ噴射12aと12bは、噴射期間中に噴射率を変化させる噴射率可変噴射であり、最適噴射形態10の中で、一番噴射量の多い主噴射である。このレートシェイプ噴射12aと12bは、前述した通り、初期の噴射率を低くし、その後、噴射率を上げる燃料の噴射である。実施の形態では、2回のレートシェイプ噴射を例に説明するが、2回以上であれば、その回数は限定しない。
このレートシェイプ噴射12aと12bによれば、最初の噴射率を低くすることで急激な燃焼開始を緩和させて、NOx排出や燃焼音を低減し、その後、噴射率を上げることで燃焼速度を向上させて熱効率を向上することができる。また、主噴射であるレートシェイプ噴射を2回に分けて行うことで、急激な燃焼を緩和させて、燃焼速度を向上させることができる。さらに、主噴射を複数回に分割することで、燃焼室の高温化も抑制することができる。これによりNOxの発生を抑制することができる。
また、レートシェイプ噴射12bは、従来のアフター噴射の役割も果たしている。レートシェイプ噴射12aによる燃焼で発生したすすやCOを再燃焼することができる。よって、このレートシェイプ噴射12bはレートシェイプ噴射12aに近接させることが好ましい。
上記のレートシェイプ噴射12aと12bとは、ブーツ型の噴射率波形であればその噴射率波形は限定しないが、好ましくは、前述の図5の(b)に示すスロープ状のブーツ型の噴射率波形が好ましい。つまり図5の(a)に示す棚付きブーツ型の噴射率波形の場合では、レートシェイプ噴射12aにより筒内温度が上がって、その後の噴射が即着火するような状態であるため、直ぐに着火し急激な燃焼が起きてしまう。そのような状態を回避するため、図5の(b)に示すスロープ状のブーツ型の噴射率波形が好ましい。また、同様の理由から、レートシェイプ噴射12aと12bとでは、レートシェイプ噴射12bの方が、レートシェイプ噴射12aに比べて、噴射率を低くする時間を長くするとよい。
ポスト噴射13は、レートシェイプ噴射12aと12bより晩期に行われる噴射である。このポスト噴射13の総量、及び回数は限定しない。ただし、ポスト噴射13で噴射される燃料は車両走行には使用されないため、噴射量が多いと燃費が悪くなるため、PMの堆積量を検知して、無駄に排気ガスを高温にしないように最適化する。
このポスト噴射13によれば、高温の排気ガスをDPFへ送ることができ、その高温の排気ガスによってDPFが捕集したPMを燃焼し、除去することができる。ポスト噴射13を複数回行うことで、排出ガスの温度の制御も可能になる。また、エンジンから排出されるNOxをN2に戻して放出するSCRのNOx吸着触媒の周辺のO2を極力減らし、燃料を過剰状態にすることができる。
この最適噴射形態10によれば、背反する熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音を同時に改善することができる。
次に、上記の最適噴射形態10の算出方法について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。この算出方法は、ECU6にプログラムとして組み込んでもよく、また、車外のコンピュータなどで算出し、算出された最適噴射形態10をECU6に記憶させてもよい。
最適噴射形態10の算出方法S10は、ディーゼルエンジンの運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び使用燃料の性状に応じて、パイロット噴射の回数と噴射量(5mm以下)、レートシェイプ噴射の回数(2回以上)と噴射量と噴射期間中の噴射率、及び、ポスト噴射の回数と噴射量を設定して、比較用噴射形態を生成するステップS11(生成工程)を行う。このステップS11では、予め実験などにより、用意された噴射率波形を組み合わせたものを用いてもよい。
次に、初期条件を計算するステップS12を行う。ここでいう初期条件とは、シリンダ内の燃焼シミュレーションを行うための温度、圧力などの境界条件の予備計算であり、吸気弁が閉じた時の筒内圧力と温度、及びパイロット噴射などの各噴射が開始される時の筒内ガス密度などを計算する。
次に、ステップS12で計算された初期条件を基に、シリンダ内の燃焼シミュレーションを行うステップS13を行う。このステップS13では、様々な燃焼シミュレーションを行うことができる。例えば、燃料噴霧の分散のシミュレーションとして、流体噴流の微粒化過程をモデル化して計算する工程、化学反応のシミュレーションとして、燃料である軽油の酸化反応をモデル化して計算する工程、または、流体力学のシミュレーションとして、筒内のガス流動及び燃料液滴の運動をモデル化して計算する工程がある。
次に、ステップS13の結果から、熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音を目的関数として算出するステップS14(目的関数算出工程)を行う。このステップS14では、熱効率を、供給された燃料に対し、ステップS13の燃焼シミュレーションで発生した有効仕事の割合を計算し、算出する。また、排出ガス成分を、ステップS13の燃焼シミュレーションで計算された排出ガス成分毎の生成モデルを用いて算出する。さらに、燃焼音を、ステップS13の燃焼シミュレーションでの筒内圧を周波数分析し、筒内圧と燃焼音との伝達関数を用いて算出する。
次に、ステップS13のシミュレーションが1回目か否かを判断するステップS15を行う。比較用噴射形態であれば、次の噴射率波形を変更するステップS16へと進む。このステップS16では、比較用噴射形態の噴射率波形を基に、パイロット噴射の回数と噴射量(5mm以下)、レートシェイプ噴射の回数(2回以上)と噴射量と噴射期間中の噴射率、及び、ポスト噴射の回数と噴射量を変更する。
変更された噴射形態を用いてステップS12、ステップS13、及びステップS14を行う。そして、次に、熱効率が前回までの結果の中で最大か否かを判断するステップS17を行う。否であれば、ステップS16へ戻る。
熱効率が前回までの結果の中で最大と判断されると、次に、排出ガス成分が前回までの結果の中で最小か否かを判断するステップS18を行う。否であれば、ステップS16へ戻る。排出ガス成分が前回までの結果の中で最小と判断されると、次に、燃焼音が前回までの結果の中で最小か否かを判断するステップS19を行う。否であれば、ステップS1
6へ戻る。
上記のように、ステップS13の燃焼シミュレーションを行い、ステップS14で算出される熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音の目的関数を前回までの結果と比較していき、熱効率が最大、排出ガス成分が最小、及び燃焼音が最小となると終了条件が成立したか否かを判定するステップS20を行う。このステップS20で終了条件が成立しないと判定されるとステップS16へ戻る一方、終了条件が成立したと判定されると完了する。この算出方法S10により、算出された波形が最適燃焼波形10となる。
上記の算出方法S10によれば、マルチ噴射と複数回のレートシェイプ噴射とを組み合わせることで、無数に実施が可能である噴射形態の中から、熱効率が最大、排出ガス成分が最小、及び燃焼音が最小となる最適な燃料噴射形態を算出することができる。また、運転条件や燃料の性状などの使用条件が変わっても、その条件に合わせて最適な燃料噴射形態を算出することができる。加えて、算出方法S10を、ECU6にプログラムとして組み込むと、常に、最適な燃料噴射形態で燃料を噴射することができる。
次に、本発明の実施の形態の内燃機関の燃料噴射装置の制御方法について説明する。ECU6は、インジェクタi1〜i4を上記の算出方法S10で算出された最適噴射形態10に基づいて制御して、各気筒へ燃料を噴射する。これにより、燃費を向上し、すす排出量を低減し、及び燃焼音を低減することができる。
上記の最適燃料噴射率波形10に基づいて燃料を噴射するディーゼルエンジンを搭載した車両の熱効率、すす排出量(NOx排出量とPM排出量を含む)、及び燃焼音の結果を従来のものと比較した表を、図5に示す。従来のものに比べて、熱効率は、1.8%向上し、すす排出量は、91%削減し、燃焼音は、2.8dB低減している。
本発明の内燃機関は、熱効率が最大、排出ガス成分が最小、及び燃焼音が最小になる最適噴射形態に基づいて、各気筒に燃料を噴射し、燃費を向上し、また、すす排出量と燃焼音を低減することができるため、特にディーゼルエンジンを搭載した車両に利用することができる。
1 コモンレールシステム
2 燃料タンク
3 コモンレール
4 高圧ポンプ
5 高圧管
6 ECU(制御装置)
i1〜i4 インジェクタ(燃料噴射装置)
10 最適噴射形態
11a、11b パイロット噴射
12a、12b レートシェイプ噴射(主噴射)
13 ポスト噴射

Claims (5)

  1. 1燃焼サイクルあたりに複数回噴射し、主噴射より早期に1回以上のパイロット噴射を行い、主噴射より晩期に1回以上のポスト噴射を行う燃料噴射装置の制御方法において、
    前記パイロット噴射で噴射された燃料の積算値を予め設定された閾値以下にすること、前記主噴射を初期の噴射率から後期の噴射率までを噴射率が徐々に高くなるスロープ状のブーツ型の噴射波形を有するレートシェイプ噴射にすること、その主噴射を2回以上にすること、および複数回の前記主噴射のうちの後から噴射される方の初期の噴射率を低くする期間を前に噴射される方の初期の噴射率を低くする期間よりも長くすることを条件として、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び燃料の性状に応じて、前記パイロット噴射の回数およびその1回の噴射量、前記主噴射の回数、その1回の噴射量、およびその噴射期間中の噴射率、ならびに、ポスト噴射の回数およびその1回の噴射量のそれぞれを変更した複数の比較用噴射形態の中でシリンダ内の燃焼シミュレーションにより熱効率を最大、排出ガス成分を最小、および燃焼音を最小にする形態を最適噴射形態として算出し、
    算出した前記最適噴射形態に基づいて前記燃料噴射装置を制御することを特徴とする燃料噴射装置の制御方法。
  2. 前記最適噴射形態を算出する際に、
    内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び使用燃料の性状に応じて、前記パイロット噴射の回数およびその1回の噴射量、前記主噴射の回数、その1回の噴射量、およびその噴射期間中の噴射率、ならびに、ポスト噴射の回数およびその1回の噴射量の少なくとも一つ変更して、前記比較用噴射形態を生成する生成工程と、
    前記比較用噴射形態に従って前記燃料噴射装置が燃料を噴射した場合を燃焼シミュレートして、熱効率、排出ガス成分、及び燃焼音を目的関数として算出する目的関数算出工程と、
    前記生成工程と前記目的関数算出工程を繰り返して、複数の前記比較用噴射形態の中から熱効率を最大、排出ガス成分を最小、及び燃焼音を最小とする前記最適噴射形態を算出する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置の制御方法。
  3. 1燃焼サイクルあたりに複数回噴射し、主噴射より早期に1回以上のパイロット噴射を行い、主噴射より晩期に1回以上のポスト噴射を行う燃料噴射装置と、該燃料噴射装置を
    制御する制御装置を備えた内燃機関において、
    前記制御装置が、内燃機関の運転条件、気筒内へ吸入される燃料の条件、及び燃料の性状に基づいてシリンダ内の燃焼シミュレーションにより前記パイロット噴射で噴射された燃料の積算値が予め設定された閾値以下に設定され、前記主噴射が初期の噴射率から後期の噴射率までを噴射率が徐々に高くなるスロープ状のブーツ型の噴射波形を有するレートシェイプ噴射に設定され、その主噴射が2回以上に設定され、および複数回の前記主噴射のうちの後から噴射される方の初期の噴射率を低くする期間が前に噴射される方の初期の噴射率を低くする期間よりも長く設定された最適噴射形態に基づいて前記燃料噴射装置を制御することを特徴とする内燃機関。
  4. 請求項1または2に記載の燃料噴射装置の制御方法に基づいて、前記制御装置が前記燃料噴射装置を制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
  5. 請求項3又は4に記載の内燃機関を搭載することを特徴とする車両。
JP2011209103A 2011-09-26 2011-09-26 燃料噴射装置の制御方法、内燃機関、及びそれを搭載した車両 Expired - Fee Related JP5857582B2 (ja)

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