以下、本発明に係る燃料噴射制御装置をコモンレール式燃料噴射装置が備えられる多気筒ディーゼルエンジンに適用した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態において、図1に示すエンジン10は、車載主機として車両に搭載されている。エンジン10の吸気通路11には、上流側から順に、吸入される空気量を検出するエアフローメータ12、後述するターボチャージャ16によって過給された吸気を冷却するインタークーラ13、更にはスロットルバルブ装置14が設けられている。スロットルバルブ装置14は、DCモータ等のアクチュエータにより、スロットルバルブ14aの開度を調節する。
吸気通路11においてスロットルバルブ装置14の下流側には、サージタンク15を介してエンジン10の各気筒の燃焼室10aが接続されている。燃焼室10aは、エンジン10のシリンダブロック10b及びピストン17にて区画されている。このシリンダブロック10bには振動検出センサ38が設けられ、エンジン10の振動(加速度振動)の度合いが検出される。本実施形態において、振動検出センサ38は振動検出部及び加速度センサに該当する。
エンジン10には、燃焼室10a内に先端部が突出した燃料噴射弁18が設けられている。燃料噴射弁18には、蓄圧容器としてのコモンレール19から高圧の燃料(具体的には軽油)が供給される。コモンレール19には、燃料ポンプ20から燃料が圧送される。なお、図1では、1つの気筒のみを示している。
燃料噴射弁18は、エンジン10の各気筒に搭載され、コモンレール19が蓄圧している燃料を噴孔から気筒内に噴射する。燃料噴射弁18は、エンジン10の運転状態に基づいて、1回の燃焼サイクルにおいてメイン噴射の前後にパイロット噴射およびアフタ噴射を含む多段噴射を行う。この燃料噴射弁18は、ニードルと、燃料を噴射する噴孔が先端部に複数形成され、内部にニードルが収容されるボディとを備えている。ボディの内面とニードルの外面との間には、ボディの軸方向に延びてかつコモンレール19から供給された燃料が通過する環状の燃料通路が形成されている。ボディ先端部の内面には、ニードルの先端部が着座する着座面が形成されている。ボディのうち着座面よりも先端側には、上記燃料通路において環状に分布する燃料を集合させて噴孔と連通させるサック室が形成されている。この構成において、ニードルを着座面に着座させることにより、上記燃料通路と噴孔との間が遮断され、燃料噴射が停止される。一方、通電操作によってニードルを着座面から離座させることにより、上記燃料通路と噴孔との間が連通される。その結果、燃料通路の燃料は、サック室を介して噴孔から燃焼室10aへと直接噴射供給される。
先の図1の説明に戻り、エンジン10の各気筒の吸気ポート及び排気ポートのそれぞれは、吸気バルブ21及び排気バルブ22のそれぞれにより開閉される。ここでは、吸気バルブ21の開弁によってインタークーラ13で冷却された吸気が燃焼室10aに導入される。吸気等が導入された状態で燃料噴射弁18から燃焼室10aに燃料が噴射されると、燃焼室10aの圧縮によって燃料が自己着火し、燃焼によってエネルギが発生する。このエネルギは、ピストン17を介して、エンジン10のクランク軸23の回転エネルギとして取り出される。燃焼に供されたガスは、排気バルブ22の開弁によって、排気通路24に排気として排出される。なお、クランク軸23付近には、クランク軸23の回転角度を検出するクランク角度センサ25が設けられている。
車両には、ターボチャージャ16が設けられている。ターボチャージャ16は、吸気通路11に設けられた吸気コンプレッサ16aと、排気通路24に設けられた排気タービン16bと、これらを連結する回転軸16cとを備えている。詳しくは、排気通路24を流れる排気のエネルギによって排気タービン16bが回転し、その回転エネルギが回転軸16cを介して吸気コンプレッサ16aに伝達され、吸気コンプレッサ16aによって吸気が圧縮される。すなわち、ターボチャージャ16によって吸気が過給される。
排気通路24のうちターボチャージャ16の下流側には、排気中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒やNOx触媒などの排気浄化装置26が配置されている。また、排気浄化装置26の下流側には、排気浄化装置26から流出する排気の温度を検出する排気温度検出センサ(温度検出部に該当)33が設けられている。
エンジンシステムを制御対象とする電子制御装置であるECU30は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU30には、吸気圧センサ31、吸気温センサ32、排気温度検出センサ33、筒内圧センサ34、燃圧センサ35、水温センサ36、アクセルセンサ37、振動検出センサ38、エアフローメータ12、及びクランク角度センサ25の検出値が入力される。吸気圧センサ31は、サージタンク15内の圧力を検出し、吸気温センサ32は、サージタンク15内の吸気温度を検出し、筒内圧センサ34は、燃焼室10a内の圧力(以下、筒内圧と呼称)を検出する。燃圧センサ35は、コモンレール19内の燃料圧力を検出し、水温センサ36は、エンジン10の冷却水温を検出する。アクセルセンサ37は、ドライバのアクセル操作部材のアクセル操作量(より具体的には、アクセルペダルの踏み込み量)を検出する。このうち、排気温度検出センサ33、筒内圧センサ34、及び振動検出センサ38は状態検出部に該当する。
ECU30は、上述した各種センサの検出値に基づいて、燃料噴射弁18の燃料噴射制御、燃料ポンプ20の駆動制御、及びターボチャージャ16による過給圧制御を含むエンジン10の燃焼制御を行う。このECU30は、第一噴射部と、第二噴射部と、制御部とに該当する。
このような構成のエンジン10において、運転領域が高負荷領域である場合を想定する。この場合、要求される燃料噴射量が多くなるため、1燃焼サイクルにおいて燃料噴射量が最大であるメイン噴射の燃料噴射量もまた多くなる。したがって、運転領域が高負荷領域である場合に、メイン噴射により噴射された燃料が燃焼することで上昇する筒内圧のピーク(最大筒内圧Pmax)は、エンジン10が耐えられる許容上限圧を超えて大きくなるおそれがある。
この対策として、従来では、許容上限圧を超えないように最大筒内圧Pmaxを低くする制御を実行している。例えば燃料噴射率が徐々に高くなる尻上がりの噴射パターンを実行し、膨張行程における燃焼室容積の拡大に併せて筒内圧を徐々に上昇させることで、最大筒内圧Pmaxを低下させる制御を実行している。しかし、この制御では、筒内圧が最大筒内圧Pmaxに到達するまでの時間が長くなり、その分、エンジン10は熱効率が低下することになる。その結果、エンジン10の出力も低下することとなる。
よって、本実施形態に係るECU30では、現在のエンジン10の運転領域が高負荷領域である場合に、メイン噴射時の噴射量を分割し、二回に分けて燃料を噴射する。具体的には図2上図に記載されるように、ピストン17が圧縮上死点(圧縮TDC)に達するときには一回目の噴射(以降、第一噴射と呼称)が終了するように第一噴射を実行し、そして、ピストン17がTDCに到達した場合に二回目の噴射(以下、第二噴射と呼称)を実行する。したがって、第一噴射が終了した直後に第二噴射を実行することになる。よって、第二噴射により噴射された燃料は、第一噴射により噴射された燃料が燃焼(以下、第一燃焼と呼称)することで生じる火炎により、燃焼が生じる(以下、第二燃焼と呼称)。そして、膨張行程において第二噴射による燃料の噴射と燃料の燃焼が持続することになる。
第一噴射の噴射率は、第二噴射の最大噴射率よりも大きく、且つ、第一燃焼により生じる最大筒内圧Pmaxが許容上限圧と略一致するように制御する(図2下図参照)。また、第二噴射の噴射率は、筒内圧が許容上限圧に維持されるように、膨張行程における燃焼室容積の拡大に併せて徐々に上昇させる。このとき、許容上限圧とは、エンジン10の信頼性を維持可能な筒内圧の上限値として設定される。
本制御を実行する際には、噴射された燃料の燃焼状態が配慮される。後述の処理を実行することで、噴射された燃料の燃焼状態(例えば、第一燃焼により上昇する筒内圧の上昇率や、第一燃焼により生じるエンジン10の振動や、第二燃焼により生じる排気の温度など)が所定の許容状態となるように、第一噴射及び第二噴射の両方の噴射状態(噴射率や、噴霧の広がり角度、噴射期間に該当)を制御する。
この制御により、筒内圧が許容上限圧を超えて高くなることを抑制することができる。また、第一燃焼により筒内圧を許容上限圧にまで上昇させるため、エンジン10の出力を早期に高めることができる。更に、第二噴射を実行することで、許容上限圧にまで高めた筒内圧を維持させることで、熱効率が低下することを抑制することが可能となる。
本実施形態では、ECU30により後述する図3に記載の分割噴射処理を実行する。図3に示す分割噴射処理は、ECU30が電源オンしている期間中にECU30によって所定周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS100にて、エンジン10の現在の運転領域が高負荷領域であるか否かを判定する。具体的には、エンジン負荷(例えば吸気圧や、アクセル操作量)が所定負荷よりも高い場合に、エンジン10の現在の運転領域が高負荷領域であると判定する。エンジン10の現在の運転領域が高負荷領域ではないと判定した場合には(S100:NO)、本制御を終了する。エンジン10の現在の運転領域が高負荷領域であると判定した場合には(S100:YES)、ステップS110に進む。
ステップS110では、メイン噴射の噴射量を分割する。本実施形態では、等分割を想定しているが、噴射量の分割方法は等分割に限る必要はない。そして、ステップS120にて、燃料噴射弁18に分割噴射を実行させ、本制御を終了する。
次に、図4を参照してECU30により実行される分割噴射の噴射処理を説明する。当該処理は、図3に記載のステップS120に相当するサブルーチン処理である。
まず、ステップS200にて、現時点が燃料噴射弁18に第一噴射を実行させるべきタイミングであるか否かを判定する。本実施形態では、クランク角度センサ25により検出された回転角度が圧縮TDCよりも前に設定された所定角度(例えばBTDC30°CA)に略一致する場合に、燃料噴射弁18に第一噴射を実行させるべきタイミングであると判定する。現時点が燃料噴射弁18に第一噴射を実行させるべきタイミングであると判定した場合に(S200:YES)、ステップS210に進み、燃料噴射弁18に第一噴射を実行させる。第一噴射の噴射状態は、前回の第一噴射後に補正された噴射状態にされる。これにより、燃焼室10a内に第一燃焼が生じる。
ステップS220では、筒内圧センサ34に筒内圧を検出させ、ステップS230で、検出させた筒内圧のピークが許容上限圧と略一致したか否かを判定する。検出させた筒内圧のピークが許容上限圧と略一致していないと判定した場合には(S230:NO)、ステップS280に進み、検出させた筒内圧のピークが許容上限圧よりも小さいか否かを判定する。検出させた筒内圧のピークが許容上限圧よりも小さいと判定した場合には(S280:YES)、後述のステップS310に進む。検出させた筒内圧のピークが許容上限圧よりも大きいと判定した場合には(S280:NO)、後述のステップS320に進む。
検出させた筒内圧のピークが許容上限圧と略一致したと判定した場合には(S230:YES)、ステップS240に進み、第一燃焼により上昇する筒内圧の上昇率を算出する。具体的には、図2下図に記載の燃焼室10aの体積が一定である期間(等積燃焼期間)に許容上限圧にまで上昇する筒内圧の上昇率を算出する。そして、ステップS250にて、算出した筒内圧の上昇率が許容最大上昇率と略一致したか否かを判定する。第一燃焼により、エンジン10に例えば振動や騒音が生じるが、この振動や騒音の度合いは、筒内圧の上昇率が増加することに伴って大きくなる傾向がある。したがって、許容最大上昇率は、燃料の燃焼に伴って生じる振動や騒音などを考慮して設定される。筒内圧の上昇率が許容最大上昇率と略一致していないと判定した場合には(S250:NO)、ステップS290に進み、筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも小さいか否かを判定する。筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも小さいと判定した場合には(S290:YES)、後述のステップS310に進む。筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも大きいと判定した場合には(S290:NO)、後述のステップS320に進む。
筒内圧の上昇率が所定の許容最大上昇率と略一致したと判定した場合には、(S250:YES)、ステップS260に進み、振動検出センサ38にエンジン10の振動の度合いを検出させ、ステップS270にて、検出させた振動の度合いのピークが許容最大度合いと略一致したか否かを判定する。振動の度合いのピークが許容最大度合いと略一致していないと判定した場合には(S270:YES)、本制御を終了する。振動の度合いのピークが許容最大度合いと略一致していないと判定した場合には(S270:NO)、ステップS300に進み、振動の度合いのピークが許容最大度合いよりも小さいか否かを判定する。振動の度合いのピークが許容最大度合いよりも小さいと判定した場合には(S300:YES)、ステップS310に進み、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射率を増加調整し、本制御を終了する。振動の度合いのピークが許容最大度合いよりも大きいと判定した場合には(S300:NO)、ステップS320に進み、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射率を減少調整し、本制御を終了する。
現時点が燃料噴射弁18に第一噴射を実行すべきタイミングではないと判定した場合に(S200:NO)、ステップS330に進み、現時点が燃料噴射弁18に第二噴射を実行させるべきタイミングであるか否かを判定する。本実施形態では、クランク角度センサ25により検出された回転角度が圧縮TDCに到達した場合に、燃料噴射弁18に第二噴射を実行させるべきタイミングであると判定する。現時点が燃料噴射弁18に第二噴射を実行させるべきタイミングではないと判定した場合には(S330:NO)、本制御を終了する。現時点が燃料噴射弁18に第二噴射を実行させるべきタイミングであると判定した場合には(S330:YES)、ステップS340に進む。
ステップS340では、燃料噴射弁18に第二噴射を実行させる。この第二噴射は、膨張行程時に実行されるものである。この膨張行程では、時間の経過にしたがい燃焼室10a内の容積が増加するため、一般に燃焼室10a内の容積増加に伴って筒内圧は減少することになる。本実施形態では、膨張行程における筒内圧の減少を抑制する為、ステップS350にて、燃焼室10a内の容積増加に伴って第二噴射の噴射率が徐々に増加するように制御する(図2上図参照)。
ステップS360では、排気温度検出センサ33に排気温度を検出させ、ステップS370にて、検出させた排気温度が許容最高温度に略一致したか否かを判定する。許容最高温度は、排気浄化装置26を構成する三元触媒やNOx触媒を熱損傷させるおそれのない排気の温度の上限として設定される。排気温度が許容最高温度に略一致したと判定した場合には(S370:YES)、本制御を終了する。排気温度が許容最高温度に略一致していないと判定した場合には(S370:NO)、ステップS380に進み、排気温度が許容最高温度よりも小さいか否かを判定する。排気温度が許容最高温度よりも小さいと判定した場合には(S380:YES)、ステップS390に進み、次回の燃焼サイクルにおける第二噴射の噴射期間を延長調整し、本制御を終了する。排気温度が許容最高温度よりも大きいと判定した場合には(S380:NO)、ステップS400に進み、次回の燃焼サイクルにおける第二噴射の噴射期間を短縮調整し、本制御を終了する。
上記構成により、本実施形態は、以下の効果を奏する。
・第一噴射の噴射率は第二噴射の噴射率よりも高く設定されており、その高い噴射率で第一噴射を実行させることで、燃焼室10a内の圧力を許容上限圧まで上昇させる。これにより、エンジン10は気筒に損傷を与えない範囲で、早期に筒内圧を許容上限圧まで上昇させることができる。そして、第一噴射の実行後、第二噴射を実行させる。第二噴射の噴射率は時間経過に伴って上昇するように制御することで、膨張行程で燃焼室10a内の容積が時間の経過に伴い増加していっても、燃焼室10a内の圧力を許容上限圧で維持することが可能となる。つまり、エンジン10の熱効率及び出力が低下することを抑制することが可能となる。
・排気温度検出センサ33により検出された排気の温度が許容最大温度になるように、第二噴射の噴射期間が制御される。これにより、触媒を熱損傷させることを抑制した状態で、燃焼室10a内の圧力を許容上限圧に維持する期間を可能な限り延長することができ、ひいては、エンジン10の熱効率が高い状態を最大限保つことができる。
・第一燃焼により生じる燃焼室10a内の圧力の上昇率が許容最大上昇率となるように、第一噴射の噴射率が制御される。これにより、燃料の燃焼に伴って生じる振動や騒音などが過剰に大きくならない範囲で、エンジン10は早期に高い出力を得ることが可能となる。
・振動検出センサ38により検出される振動の度合いが許容最大度合いとなるように第一噴射の噴射率が制御される。これにより、燃料の燃焼に伴って生じる振動の大きさをより正確に把握でき、過剰に振動が大きくならない範囲でエンジン10は早期に高い出力を得ることが可能となる。
上記実施形態を、以下のように変更して実行することもできる。
・上記実施形態において、許容上限圧は、エンジン10の信頼性を維持可能な筒内圧の上限値として設定されていた。この許容上限圧について、例えばエンジン10が耐えられる筒内圧の上限値として設定してもよいし、エンジン10の出力上限により制限される筒内圧の上限値に設定されてもよい。
・上記実施形態では、現在のエンジン10の運転領域が高負荷領域にある場合に、メイン噴射の噴射量を2つに分割して、燃料噴射弁18に分割噴射を実行させていた。このことについて、必ずしもメイン噴射の噴射量を2つに分割しなくてはならない訳ではなく、例えば、メイン噴射の噴射量を3つに分割してもよい。この場合、分割された3つの噴射の内噴射量の多い噴射2つについて、先に実行した燃料噴射を第一噴射とし、後に実行した燃料噴射を第二噴射とする。または、メイン噴射の噴射量を分割することなくメイン噴射(第一噴射に該当)を実行し、クランク角度センサ25により検出された回転角度がTDCに到達した場合にメイン噴射とは別の補助噴射(第二噴射に該当)を実行してもよい。
・上記実施形態では、エンジン10の振動の度合いを振動検出センサ38が検出していた。このことについて、必ずしもエンジン10の振動の度合いを振動検出センサ38が検出する必要はない。エンジン10の振動は、エンジン10の回転速度の変動が大きくなるにつれ大きくなる。したがって、クランク角度センサ25にエンジン10の回転速度を検出させ、検出させた回転速度の変動を算出して、エンジン10の振動の度合いを算出してもよい。この場合、振動検出センサ38をシリンダブロック10bに設ける必要がなくなるため、エンジン10の構成の簡略化を図ることが可能となる。本別例に係るクランク角度センサ25は、状態検出部と、振動検出部と、回転角センサとに該当する。
・上記実施形態では、筒内圧が許容上限圧と略一致しない場合、筒内圧の上昇率が許容最大上昇率と略一致しない場合、エンジン10の振動度合いの最大ピークが許容最大度合いと略一致しない場合、のいずれかに該当する場合に、第一噴射の噴射率を適宜調整していた。このことについて、必ずしも噴射率を調整する必要はない。例えば、第一噴射の噴射率を増加調整する代わりに、第一噴射の噴射期間を延長調整する、あるいは、第一噴射の噴射率を減少調整する代わりに第一噴射の噴射期間を短縮調整するなど、第一噴射の噴射期間を調整してもよい。
・上記実施形態では、第二燃焼により生じた排気の温度が許容最高温度に略一致するように第二噴射の噴射期間を制御していた。この制御は、必ずしも実行する必要はない。具体的には図4のフローチャートにおいて、ステップS360〜ステップS400は省略してもよい。すなわち、第一噴射の噴射状態のみを補正してもよい。
・上記実施形態では、筒内圧や筒内圧の上昇率、エンジン10の振動の度合いを考慮して、第一噴射の噴射率を補正していた。このことについて、第一噴射の噴射率を最大噴射率で固定して、第二噴射の噴射状態のみを補正してもよい。
・上記実施形態では、筒内圧や筒内圧の上昇率、エンジン10の振動の度合いを考慮して、第一噴射の噴射率を補正していた。このうち、エンジン10の振動の度合いに代えて、燃焼室10a内で燃料が燃焼した際に生じる音(以下、燃焼音と呼称)の大きさを考慮して、第一噴射の噴射率を補正してもよい。燃焼音が大きいことで、エンジン10の過度な騒音の懸念がある。したがって、燃焼音が許容最大音量と略一致するように、第一噴射の噴射率を制御する。具体的には、燃焼音が許容最大音量よりも小さい場合には、第一噴射の噴射率を増加調整し、燃焼音が許容最大音量よりも大きい場合には、第一噴射の噴射率を減少調整する。これにより、燃料の燃焼に伴って生じる燃焼音が過剰に大きくならない範囲で、ディーゼルエンジンは高い出力を得ることが可能となる。なお、本別例において、燃焼音は、振動検出センサ38により検出されるエンジン10の振動の度合いから推測される。このため、振動検出センサ38は燃焼音検出部に該当する。もちろん、燃焼音の推測方法はそれに限らず、排気温度検出センサ33により検出される排気温度の高さから推測してもよいし、筒内圧センサ34により検出される筒内圧の高さから推測してもよい。あるいは、排気の圧力を検出する圧力センサを設け、検出される排気の圧力から推測してもよいし、エンジン10近くにマイクを設置し、直接エンジン10から発せられる音を検出してもよい。
・上記実施形態では、第一燃焼により生じた筒内圧の上昇率が許容最大上昇率に略一致するように第一噴射の噴射率を制御していた(図4におけるステップS240、250、及び290に該当)。また、第一燃焼により生じたエンジン10の振動の度合いが許容最大度合いに略一致するよう第一噴射の噴射率を制御していた(図4におけるステップS260、270、及び300に該当)。これら二つの制御は、ともに必ず実行される必要はなく、両方実行しなくてもよいし、二つの制御の内一つの制御だけを実行してもよい。
・エンジン10が排気に含まれているPM(Particulate Matter、粒子状物質)の量を検出するPMセンサを備えている場合には、第一燃焼により生じたPM量を配慮した第一噴射の噴射率制御を実施してもよい。燃料の噴射率が低い場合に、燃焼室10a中心に燃料の濃度が高い混合気が形成され、この混合気が不完全燃焼を生じることでPMが増加する。よって、燃料の噴射率を増加調整することで、噴射燃料の貫徹力を大きくし、燃焼室10a中心に燃料の濃度が高い混合気が形成されることを抑制する。しかし、一方で、燃料の噴射率が過剰に高いと、燃焼室10a壁面近傍で燃焼が生じることになる。この場合、燃焼時に生じた熱エネルギが壁面に伝わり、エンジン10を循環する冷却水に熱エネルギが捨てられる損失(冷却損失)が大きくなる。このため、第一燃焼により生じるPM量が許容上限量となるように第一噴射の噴射率を制御することで、PMの過剰生成と冷却損失の増大をともに抑制する。
本別例に係る制御の一例を、図5を用いて説明する。図5は、図4のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、図4におけるステップS260、ステップS270、及びステップS300は削除される。また、ステップS240に該当する筒内圧の上昇率を算出する処理に代えて、ステップS540では、PMセンサに排気内に含まれるPM量を検出させる。このPMセンサは、排気浄化装置26よりも排気通路24の下流側に配設される従来のPMセンサを想定している。ステップS250に該当する筒内圧の上昇率が許容最大上昇率に略一致するか否かの判定に代えて、ステップS550では、PMセンサに検出させたPM量が許容上限量に略一致するか否かを判定する。ステップS290に該当する筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも小さいか否かの判定に代えて、ステップS590では、PMセンサに検出させたPM量が許容上限量よりも大きいか否かを判定する。
上記変更した箇所の具体的な処理内容を説明する。
ステップS540にて、PMセンサにPM量を検出させ、ステップS550に進む。ステップS550では、PMセンサに検出させたPM量が許容上限量に略一致するか否かを判定する。検出させたPM量が許容上限量に略一致する場合には(S550:YES)、本制御を終了する。検出させたPM量が許容上限量に略一致しない場合には(S550:NO)、ステップS590に進む。ステップS590では、検出させたPM量が許容上限量よりも大きいか否かを判定する。検出させたPM量が許容上限量よりも大きいと判定した場合には(S590:YES)、ステップS610に進む。検出させたPM量が許容上限量よりも小さいと判定した場合には(S590:NO)、ステップS620に進む。
それ以外のステップについて、図4の各ステップS200,210,220,230,280,310,320,330,340,350,360,370,380,390,及び400の処理は、それぞれ、図2の各ステップS500,510,520,530,580,610,620,630,640,650,660,670,680,690,及び700の処理と同一である。
上記制御により、第一燃焼により生じるPM量が所定の許容上限量となるように、第一噴射の噴射率が制御される。これにより、PMの生成量を許容上限量よりも少なくしつつ、冷却損失を最小とすることが可能となる。
本別例では、PMセンサにより検出されたPM量が許容上限量に略一致するように、第一噴射の噴射率を制御していた。このことについて、第一噴射の噴射率に限らず、例えば、第一噴射における燃料噴霧の広がり角度又は第一噴射の噴射期間を制御することで、PM量が許容上限量に略一致するように制御してもよい。
第一噴射における燃料噴霧の広がり角度を制御することで、PM量が許容上限量に略一致するように制御する場合を想定する。PM量が許容上限量よりも多い場合、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の燃料噴霧の広がり角度を拡張調整する。つまり、図5に記載のステップS610に該当する第一噴射の噴射率増加調整に代えて、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の燃料噴霧の広がり角度を拡張調整する。燃料噴霧の広がり角度は、噴孔径の異なる複数の噴孔を有する燃料噴射弁18において、噴射に使用する噴孔を切り替える等により調整することができる。これにより、燃焼室10a中心以外の方向にも燃料を噴射することになるため、燃焼室10a中心に燃料の濃度が高い混合気が形成されることを抑制することができる。一方で、燃料噴霧の広がり角度が過剰に大きいと、燃焼室10a壁面方向にも燃料を噴霧することになり、壁面近傍で燃焼が生じるおそれがある。この場合、冷却損失が大きくなる。よって、PM量が許容上限量よりも少ないならば、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の燃料噴霧の広がり角度を縮小調整する。つまり、図5に記載のステップS620に該当する第一噴射の噴射率減少調整に代えて、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の燃料噴霧の広がり角度を縮小調整する。これによって、PM量が許容上限量に収まる範囲内で、冷却損失を最大限抑制できる。
第一噴射の噴射期間を制御することで、PM量が許容上限量に略一致するように制御する場合を想定する。PM量が許容上限量よりも多い場合には、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射期間を縮小調整する。つまり、図5に記載のステップS610に該当する第一噴射の噴射率増加調整に代えて、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射期間を縮小調整する。これにより、第一噴射により噴射される燃料噴射量は少なくなるため、燃焼室10a中心に形成される混合気の濃度を低くすることができるため、PMの生成を抑制することが可能となる。一方で、第一噴射の噴射期間が過剰に縮小すると、第一燃焼により生じる最大筒内圧Pmaxが許容上限圧に届かなくなり、エンジン10の出力が低くなる。この場合は、補正された第一噴射の噴射期間はそのままに、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射率を増加させてもよい。また、PM量が許容上限量よりも少ない場合には、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射期間を延長調整する。つまり、図5に記載のステップS620に該当する第一噴射の噴射減少調整に代えて、次回の燃焼サイクルにおける第一噴射の噴射期間を延長調整する。
・図4に記載の分割噴射の噴射処理において、ステップS310及びステップS320にて第一噴射の噴射率を調整していた。このことについて、特にステップS290に該当する筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも小さいか否かの判定、又はステップS300に該当する振動の度合いのピークが許容最大度合いよりも小さいか否かの判定を受けて実行するステップS310又はステップS320について想定する。この場合、筒内圧が許容上限圧と略一致した状態で、第一噴射の噴射率が調整されるため、次回の燃焼サイクルにおいて、再度分割噴射の噴射処理を実施した際に、ステップS230にて筒内圧が許容上限圧に略一致しないと判定されることが懸念される。したがって、ステップS290、又はステップS300の判定処理を受けて実行するステップS310又はステップS320では、第一噴射の噴射率を調整すると共に、許容上限圧を変更してもよい。
具体的には、ステップS310にて第一噴射の噴射率を増加調整した場合には、噴射率を増加調整することで上昇が見込まれる筒内圧の変化量だけ許容上限圧を増加補正する。また、ステップS320にて第一噴射の噴射率を減少調整した場合には、噴射率を減少調整することで減少が見込まれる筒内圧の変化量だけ許容上限圧を減少補正する。これにより、筒内圧を許容上限圧に略一致させた状態で、筒内圧の上昇率を許容最大上昇率に略一致させることと、振動度合いの最大ピークを許容最大度合いに略一致させることを、より確実に両立することが可能となる。なお、本別例における制御を実施する場合、許容上限圧は予めエンジン10の信頼性を維持可能な筒内圧の上限値よりも低い値に設定される。これにより、ステップS310にて第一噴射の噴射率を増加調整し、それに伴って許容上限圧を増加補正しても、エンジン10の信頼性を維持可能な筒内圧の上限値よりも高く許容上限圧が設定されることを抑制する事ができる。
・図4に記載の分割噴射の噴射処理では、第一噴射を実行した後、まず筒内圧が許容上限圧と略一致しているか否かを判定していた。このことについて、筒内圧が許容上限圧と略一致しているか否かの判定を最初に行う必要はない。図6にその一例が記載されている。図6では、ステップS270に該当する振動の度合いの最大ピークが許容最大度合いと略一致するか否かの判定において、YES判定となった場合に、ステップS230に該当する筒内圧が許容上限圧に略一致しているか否かの判定を実施する。また、筒内圧が許容上限圧と略一致していないと判定した場合(S230:NO)に実行するステップS280に該当する筒内圧が許容上限圧よりも低いか否かの判定処理は、ステップS290又はステップS300の判定処理においてYES判定となった場合に実行するように設置される。これにより、仮に筒内圧の上昇率が許容最大上昇率よりも小さかったとしても、あるいは、振動の度合いの最大ピークが許容最大度合いよりも小さかったとしても、第一噴射の噴射率の増加調整処理を実施する前に、必ず筒内圧が許容上限圧よりも小さいか否かが判定される。したがって、ステップS310に該当する第一噴射の噴射率の増加調整処理は、筒内圧が許容上限圧よりも高くなる事の無い範囲で実施されることが可能となる。
[別例1]上記実施形態では、現在のエンジン10の運転領域が高負荷領域にある場合に、燃料噴射弁18に分割噴射を実行させていた。このとき、分割噴射の噴射処理は、スロットル開度の開度量に関係なく一律に図4に記載のフローチャートの手順に沿った制御を実施していた。このことについて、スロットルバルブ14aの開度量を検出するスロットル開度検出センサ40をエンジン10が備える構成ならば、スロットル開度検出センサ40により検出されたスロットル開度の開度量が最大開度量であるか否かで、分割噴射の噴射処理の内容を変更してもよい。別例1において、スロットル開度検出センサ40は、スロットル開度量取得部に該当する。
別例1に係る制御の一例を、図7を用いて説明する。図7は、図3のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS110に該当するステップS510と、ステップS120に該当するステップS520との間に、ステップS515を挿入する。このステップS515では、スロットルバルブ14aの開度が最大開度量(WOT:Wide Open Throttle)であるか否かを判定する。スロットルバルブ14aの開度がWOTであると判定した場合には(S515:YES)、ステップS520に進み、分割噴射の第一処理を実行し、本制御を終了する。スロットルバルブ14aの開度がWOTではないと判定した場合には(S515:NO)、ステップS530に進み、分割噴射の第二処理を実行し、本制御を終了する。なお、図7のステップS500は、図3のステップS100の処理と同一である。
次に、図8を参照してECU30により実行される分割噴射の第一処理を説明する。当該処理は、図7に記載のステップS520に相当するサブルーチン処理である。
図8は、図4のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS320に該当するステップS720の処理を実行した後に、新規ステップであるステップS725を実行する。ステップS725では、第二噴射の噴射期間を最大限延長補正する。これにより、筒内圧が許容上限圧よりも高くならないように制御する一方で、筒内圧を許容上限圧に制御する期間を延長できるため、エンジン10の出力が高く維持される期間を延長することが可能となる。
それ以外のステップについて、図8のステップS720以外の各ステップは、それぞれ、図4のステップS320以外の各ステップの処理と同一である。
次に、図9を参照してECU30により実行される分割噴射の第二処理を説明する。当該処理は、図7に記載のステップS530に相当するサブルーチン処理である。
図9は、図4のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS310に該当するステップS1010の処理を実行した後に、新規ステップであるステップS1015を実行する。ステップS1015では、ステップS1010で実行した第一噴射の噴射率の増加調整により増加した燃料噴射量の分だけ第二噴射の噴射量が減少するように、第二噴射の噴射期間を短縮補正する。ステップS320に該当するステップS1020の処理を実行した後に、新規ステップであるステップS1025を実行する。ステップS1025では、ステップS1020で実行した第一噴射の噴射率の減少調整により減少した燃料噴射量の分だけ第二噴射の噴射量が増加するように、第二噴射の噴射期間を延長補正する。ステップS390に該当するステップS1090の処理を実行した後に、新規ステップであるステップS1095を実行する。ステップS1095では、ステップS1090で実行した第二噴射の噴射期間の延長調整により増加した燃料噴射量の分だけ第一噴射の噴射量が減少するように、第一噴射の噴射率を減少補正する。ステップS400に該当するステップS1100の処理を実行した後に、新規ステップであるステップS1105を実行する。ステップS1105では、ステップS1100で実行した第二噴射の噴射期間の短縮調整により減少した燃料噴射量の分だけ第一噴射の噴射量が増加するように、第一噴射の噴射率を増加補正する。
それ以外のステップについて、図9のステップS1010,1020,1090,及び1100以外の各ステップは、それぞれ、図4のステップS310,320,390,及び400以外の各ステップの処理と同一である。
スロットルバルブ14aの開度量がWOTではない場合に、例えば第一噴射と第二噴射とで噴射される燃料噴射量の総量が増えるように、第一噴射及び第二噴射の一方の噴射状態を制御すると、エンジン10の出力がドライバが想定する出力よりも高くなるおそれがある。したがって、スロットルバルブ14aの開度量がWOTではない場合において、第一噴射の噴射状態を制御した際には、第一噴射と第二噴射とで噴射される合計の噴射量が変化しないように第二噴射の噴射期間が制御される。あるいは、第二噴射の噴射状態を制御した際には、第一噴射と第二噴射とで噴射される合計の噴射量が変化しないように第一噴射の噴射率が制御される。これにより、エンジン10にドライバが想定する出力を発生させることが可能となる。
別例1では、筒内圧や筒内圧の上昇率、エンジン10の振動の度合い、排気温度を考慮して、第一噴射の噴射率又は第二噴射の噴射期間を補正していた。このことについて、燃料が燃焼することで生成される窒素酸化物(NOx)の量も考慮の対象としてもよい。燃料の燃焼時の温度(以下、燃焼温度と呼称)が高いほど、NOxが多く生成される。したがって、別例1に適用される本別例において、NOxの量は、排気温度検出センサ33により検出される排気温度から推測される。具体的には、排気温度とNOxの生成量との関係を示すマップを予め記憶しておき、排気温度検出センサ33により検出される排気温度に基づいてマップから排気に含まれるNOxの量を取得する。このため、本別例において、排気温度検出センサ33及びECU30は、NOx排出量検出部に該当する。もちろん、NOxの量の推測方法はそれに限らず、筒内圧センサ34により検出される筒内圧の高さから推測してもよいし、排気の圧力を検出する圧力センサを設け、検出される排気の圧力から推測してもよい。また、排気浄化装置26よりも下流側に設置されるNOxセンサを設置し、排気に含まれるNOxの量を直接検出してもよい。
具体的に、図10及び図11を参照して、排気に含まれるNOxの量を考慮した噴射処理を説明する。まず、図10において、スロットルバルブ14aの開度量がWOTであるときの分割噴射の第一処理を説明する。
図10は、図8のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS770に該当するステップS1370の判定処理にて、YES判定だった場合に、新規ステップであるステップS1372及びステップS1374が実行される。ステップS1372では、排気温度検出センサ33により検出される排気温度に基づいて、マップから排気に含まれるNOxの量を取得する。そして、ステップS1374において、取得したNOx量が第一許容最大排出量と略一致しているか否かを判定する。NOx量が第一許容最大排出量と略一致していると判定した場合には(S1374:YES)、本制御を終了する。NOx量が第一許容最大排出量と略一致していないと判定した場合には(S1374:NO)、新規ステップであるステップS1376に進む。ステップS1376では、NOx量が第一許容最大排出量よりも少ないか否かを判定する。NOx量が第一許容最大排出量よりも少ないと判定した場合には(S1376:YES)、ステップS790に該当するステップS1390に進む。NOx量が第一許容最大排出量よりも多いと判定した場合には(S1376:NO)、ステップS800に該当するステップS1400に進む。
それ以外のステップについて、図10のステップS1370,1390,及び1400以外の各ステップは、それぞれ、図8のステップS770,790,及び800以外の各ステップの処理と同一である。
スロットルバルブ14aの開度量がWOTである状態は、筒内圧が許容上限圧を超えて高くなる可能性が最も高い。この状態で、例えばNOxの排出量が第一許容最大排出量よりも低いことを受けて第一噴射の噴射率を増大制御すると、筒内圧が許容上限圧を超えて高くなるおそれがある。したがって、スロットルバルブ14aの開度量がWOTである場合には、第一噴射の噴射状態は変化させずに、第二噴射の噴射期間が制御される。これにより、筒内圧が許容上限圧を超えて高くなることを抑制しつつ、NOxの排出量もまた過剰に多くならないように制御することが可能となる。
図10について、NOx量が第一許容最大排出量と略一致していない場合に、第二噴射の噴射期間を適宜調整していた。このことについて、第二噴射の噴射期間を適宜調整する代わりに、第二噴射の噴射率を適宜調整してもよい。
次に、図11において、スロットルバルブ14aの開度量がWOTではないときの分割噴射の第二処理を説明する。図11は、図9のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS970に該当するステップS1570の判定処理にて、YES判定だった場合に、新規ステップであるステップS1572及びステップS1574が実行される。これらステップS1572及びステップS1574は図10に記載のステップS1372及びステップS1374の処理と同一である。ステップS1574の判定処理にて、YES判定であった場合には、新規ステップであるステップS1576が実行される。このステップS1576もまた、図10に記載のステップS1376の処理に準じた処理である。ステップS1576でYES判定となった場合にはステップS1010に該当するステップS1610に進む。ステップS1576でNO判定となった場合には、ステップS1020に該当するステップS1620に進む。
それ以外のステップについて、図11のステップS1570,1610,及び1620以外の各ステップは、それぞれ、図9のステップS970,1010,及び1020以外の各ステップの処理と同一である。
スロットルバルブ14aの開度量がWOTではない場合には、燃料噴射弁18に要求される要求噴射量も相対的に少なく、筒内圧が許容上限圧を超えて高くなる可能性は低い。したがって、スロットルバルブ14aの開度量がWOTではない場合には、第一噴射の噴射率が制御される。これにより、燃料の燃焼温度の最大ピークが過剰に大きくならないように制御することができ、NOxの排出量をより効果的に抑制する事ができる。
・上記実施形態では、筒内圧や筒内圧の上昇率、エンジン10の振動の度合いを考慮して、第一噴射の噴射率を補正していた。このことについて、更に、排気に含まれる未燃燃料(HC)の量を考慮の対象としてもよい。燃焼室10a内の壁面近傍で燃料の噴霧が冷却されると、一部の燃料が燃えることなく排出されるおそれがある。排気に含まれるHCは、燃焼温度が低いほど、量が多くなる傾向がある。したがって、本別例において、HCの量は、排気温度検出センサ33により検出される排気温度から推測される。具体的には、排気温度とHCの生成量との関係を示すマップを予め記憶しておき、排気温度検出センサ33により検出される排気温度に基づいてマップから排気に含まれるHCの量を取得する。このため、本別例において、排気温度検出センサ33及びECU30は、未燃燃料排出量検出部に該当する。もちろん、HCの量の推測方法はそれに限らず、筒内圧センサ34により検出される筒内圧の高さから推測してもよいし、排気の圧力を検出する圧力センサを設け、検出される排気の圧力から推測してもよい。また、排気浄化装置26よりも下流側に設置されるHC検出センサを設置し、排気に含まれるHCの量を直接検出してもよい。
具体的に、図12を参照して、排気に含まれるHCの量を考慮した噴射処理を説明する。図12は、図4のフローチャートの一部を変容したものである。すなわち、ステップS270に該当するステップS1870の判定処理にて、YES判定だった場合に、新規ステップであるステップS1872及びステップS1874が実行される。ステップS1872では、排気温度検出センサ33により検出される排気温度に基づいて、マップから排気に含まれるHCの量を取得する。そして、ステップS1874において、取得されたHCの量が第二許容最大排出量と略一致しているか否かを判定する。HCの量が第二許容最大排出量と略一致していると判定した場合には(S1874:YES)、本制御を終了する。HCの量が第二許容最大排出量と略一致していないと判定した場合には(S1874:NO)、新規ステップであるステップS1876に進む。ステップS1876では、HCの量が第二許容最大排出量よりも少ないか否かを判定する。HCの量が第二許容最大排出量よりも少ないと判定した場合には(S1876:YES)、ステップS310に該当するステップS1910に進む。HCの量が第二許容最大排出量よりも多いと判定した場合には(S1876:NO)、ステップS320に該当するステップS1920に進む。
これにより、排気に混入される未燃燃料の量が過剰に多くならない範囲で、ディーゼルエンジンは高い出力を得ることができる。
別例1に記載の第一噴射と第二噴射との合計噴射量を変化しないようにする制御を、実施形態や他の別例に適用してもよい。
・図10で排気温度に関する処理を省略したり、図11で筒内圧の上昇率に関する処理を省略したり、図12で筒内圧の上昇率に関する処理を省略したりしてもよい。また、第一噴射について未燃燃料を抑制する処理(図12のS1872〜1876)を実行し、第二噴射についてNOxを抑制する処理(S1374〜S1376)を実行してもよい。すなわち、上述した第一噴射に関する処理と第二噴射に関する処理とを、適宜組み合わせて実行してもよい。