図1は、本発明の発電システムの一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、発電システム1は、温度が経時的に上下する熱源2と、熱源2の温度変化により電気分極する第1デバイス3と、第1デバイス3から電力を取り出すための第2デバイス4とを備えている。
熱源2としては、温度が経時的に上下する熱源であれば、特に制限されないが、例えば、内燃機関、発光装置などの各種エネルギー利用装置が挙げられる。
内燃機関は、例えば、車両などの動力を出力する装置であって、例えば、単気筒型または多気筒型が採用されるとともに、その各気筒において、多サイクル方式(例えば、2サイクル方式、4サイクル方式、6サイクル方式など)が採用される。
このような内燃機関では、各気筒において、ピストンの昇降運動が繰り返されており、これにより、例えば、4サイクル方式では、吸気工程、圧縮工程、爆発工程、排気工程などが順次実施され、燃料が燃焼され、動力が出力されている。
このような内燃機関において、排気工程では、高温の排気ガスが、排気ガス管を介して排気される。このとき、排気ガス管は、排気ガスの熱エネルギーを授受し、温度上昇する。
一方、その他の工程(排気工程を除く工程)では、排気ガス管中の排気ガス量が低減されるため、排気ガス管の授受する熱エネルギーが低減され、その結果、排気ガス管の温度が低下する。
このように、内燃機関の温度は、排気工程において上昇し、吸気工程、圧縮工程および爆発工程において下降し、つまり、経時的に上下する。
とりわけ、上記の各工程は、ピストンサイクルに応じて、周期的に順次繰り返されるため、内燃機関における各気筒の排気ガス管は、上記の各工程の繰り返しの周期に伴って、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
発光装置は、点灯(発光)時には、例えば、赤外線、可視光などの光の熱エネルギーにより温度上昇し、一方、消灯時には温度低下する。そのため、発光装置は、経時的に、点灯(発光)および消灯することにより、その温度が経時的に上下する。
とりわけ、例えば、発光装置が、経時的に照明の点灯および消灯が断続的に繰り返される発光装置(明滅(点滅)式の発光装置)である場合には、その発光装置は、点灯(発光)時における光の熱エネルギーにより、周期的に温度変化、より具体的には、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
また、熱源2としては、さらに、例えば、複数の熱源を備え、それら複数の熱源間の切り替えにより、温度変化を生じることもできる。
より具体的には、例えば、熱源として、低温熱源(冷却材など)と、その低温熱源より温度の高い高温熱源(例えば、加熱材など)との2つの熱源を用意し、経時的に、それら低温熱源および高温熱源を、交互に切り替えて用いる形態が挙げられる。
これにより、熱源としての温度を、経時的に上下させることができ、とりわけ、低温熱源および高温熱源の切り替えを、周期的に繰り返すことにより、周期的に温度変化させることができる。
切り替え可能な複数の熱源を備える熱源2としては、特に制限されないが、例えば、燃焼用低温空気供給系、蓄熱式熱交換器、高温ガス排気系、および、供給/排気切替弁を備えた高温空気燃焼炉(例えば、再公表96−5474号公報に記載される高温気体発生装置)、例えば、高温熱源、低温熱源および水素吸蔵合金を用いた海水交換装置(水素吸蔵合金アクチュエータ式海水交換装置)などが挙げられる。
これら熱源2としては、上記熱源を単独使用または2種類以上併用することができる。
熱源2として、好ましくは、経時により周期的に温度変化する熱源が挙げられる。
また、熱源2として、好ましくは、内燃機関が挙げられる。
第1デバイス3は、熱源2の温度変化に応じて電気分極するデバイスである。
ここでいう電気分極とは、結晶の歪みにともなう正負イオンの変位により誘電分極し電位差が生じる現象、例えばピエゾ効果、および/または、温度変化により誘電率が変化し電位差が生じる現象、例えば焦電効果、および/または、温度変化や温度勾配などにより電荷に偏りが発生し電位差が生まれる現象、例えばゼーベック効果などのように、材料に起電力が発生する現象と定義する。
このような第1デバイス3として、より具体的には、例えば、ピエゾ効果により電気分極するデバイス、焦電効果により電気分極するデバイス、ゼーベック効果により電気分極するデバイスなどが挙げられる。
ピエゾ効果は、応力または歪みが加えられたときに、その応力または歪みの大きさに応じて電気分極する効果(現象)である。
このようなピエゾ効果により電気分極する第1デバイス3としては、特に制限されず、例えば、薄膜型、バルク型などの、公知のピエゾ素子(圧電素子)を用いることができる。
第1デバイス3としてピエゾ素子が用いられる場合には、ピエゾ素子は、例えば、その周囲が固定部材により固定され、体積膨張が抑制された状態において、熱源2に対して、近接、または、後述する電極を介して接触するように、配置される。固定部材としては、特に制限されず、例えば、後述する第2デバイス4(例えば、電極など)を用いることもできる。
そして、このような場合には、ピエゾ素子は、熱源2の経時的な温度変化により、加熱または冷却され、これにより、膨張または収縮する。
このとき、ピエゾ素子は、固定部材により体積膨張が抑制されているため、ピエゾ素子は、固定部材に押圧され、ピエゾ効果(圧電効果)、または、キュリー点付近での相変態により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、熱電変換素子から電力が取り出される。
また、このようなピエゾ素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定(すなわち、体積一定)になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように熱源2が周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、ピエゾ素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、ピエゾ素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
焦電効果は、例えば、絶縁体(誘電体)などを加熱および冷却する時に、その温度変化に応じて絶縁体が電気分極する効果(現象)であって、第1効果および第2効果を含んでいる。
第1効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により自発分極し、絶縁体の表面に、電荷を生じる効果とされている。
また、第2効果は、絶縁体の加熱時および冷却時において、その温度変化により結晶構造に圧力変形が生じ、結晶構造に加えられる応力または歪みにより、圧電分極を生じる効果(ピエゾ効果、圧電効果)とされている。
このような焦電効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の焦電素子を用いることができる。
第1デバイス3として焦電素子が用いられる場合には、焦電素子は、例えば、熱源2に対して、近接、または、後述する電極を介して接触するように、配置される。
このような場合において、焦電素子は、熱源2の経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その焦電効果(第1効果および第2効果を含む)により、電気分極する。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、焦電素子から電力が取り出される。
また、このような焦電素子は、通常、加熱状態または冷却状態が維持され、その温度が一定になると、電気分極が中和され、その後、冷却または加熱されることにより、再度、電気分極する。
そのため、上記したように熱源2が周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、焦電素子が周期的に繰り返し加熱および冷却されるため、焦電素子の電気分極およびその中和が、周期的に繰り返される。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
ゼーベック効果は、例えば、金属または半導体の両端に温度差を生じさせると、その温度差に応じて、金属または半導体に起電力が生じる効果(現象)である。
このようなゼーベック効果により電気分極するデバイスとしては、特に制限されず、公知の熱電変換素子を用いることができる。
第1デバイス3として熱電変換素子が用いられる場合には、熱電変換素子は、例えば、その一方側端部が、熱源2に対して、近接、または、後述する電極を介して接触するとともに、他方側端部が熱源2から離間するように配置される。
このような場合において、熱電変換素子は、その一方側端部のみが、熱源2の経時的な温度変化により、加熱または冷却され、その熱電変換素子の両端(一方側端部および他方側端部の間)に、温度差が生じる。このとき、ゼーベック効果により、熱電変換素子に起電力が生じる。これにより、詳しくは後述するが、第2デバイス4を介して、熱電変換素子から電力が取り出される。
また、このような熱電変換素子は、その両端における温度差が大きい場合には、起電力が高くなり、高電力を取り出すことができ、一方、温度差が小さい場合には、起電力が小さくなり、取り出される電力が低下する。
そのため、上記したように熱源2が周期的に温度変化し、高温状態と低温状態とが周期的に繰り返される場合などには、熱電変換素子の一方側端部の温度が、周期的に繰り返し上下するため、それに応じて、起電力の大きさの度合いが、周期的に上下する。
その結果、後述する第2デバイス4により、電力が、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として取り出される。
これら第1デバイス3は、単独使用または2種類以上併用することができる。
図2は、図1に示す第1デバイスの一実施形態を示す概略構成図である。
上記の第1デバイス3は、図2に示すように、例えば、積層配置して用いることもできる。
このような場合には、複数の第1デバイス3(好ましくは、焦電素子)の間に、後述する第2デバイス4(例えば、電極、導線など)を介在させ、これにより、各第1デバイス3を、電気分極時において電気的に直列となるように接続する。
そして、このようにして得られる第1デバイス3の積層体を、図1に示すように、熱源2に接触または近接するように配置し、積層される各第1デバイス3を、同時に加熱または冷却する。
これにより、複数の第1デバイス3を同時に電気分極させ、それらを電気的に直列接続することができ、その結果、第1デバイス3を単独で(単層として)用いる場合に比べ、大きな電力を取り出すことができる。
図3は、図1に示す第1デバイスの他の実施形態を示す概略構成図である。
上記の第1デバイス3は、図3に示すように、例えば、同一面状に整列配置して用いることもできる。
このような場合には、複数の第1デバイス3の間を、後述する第2デバイス4(例えば、電極、導線など)により、電気分極時において電気的に直列となるように接続する。
そして、このようにして整列配置された複数の第1デバイス3を、図1に示すように、熱源2に接触または近接するように配置し、整列配置される各第1デバイス3を、同時に加熱または冷却する。
これにより、複数の第1デバイス3を同時に電気分極させ、それらを電気的に直列接続することができ、その結果、第1デバイス3を単独で用いる場合に比べ、大きな電力を取り出すことができる。
なお、このとき、例えば、第1デバイス3が焦電素子である場合や、p型半導体からなる熱電変換素子、または、n型半導体からなる熱電変換素子のみを使用する場合などには、各第1デバイス3は、熱源2に接触または近接する一方側が、いずれも正極または負極となり、熱源2から離間する他方側が、いずれも負極または正極となるように電気分極する(図3(a)参照)。
そのため、このような場合には、第1デバイス3の熱源2に接触または近接する側と、他の第1デバイス3の熱源2から離間する側とが、電気的に接続される。
一方、例えば、第1デバイス3として、p型半導体からなる熱電変換素子、および、n型半導体からなる熱電変換素子を用い、それらを交互に配置する場合などには、p型半導体からなる熱電変換素子と、n型半導体からなる熱電変換素子とが逆方向に電気分極するため、各第1デバイス3の熱源2に接触または近接する一方側において、正極および負極が交互に整列配置される。
そのため、このような場合には、第1デバイス3の熱源2に接触または近接する側と、他の第1デバイス3の熱源2に接触または近接する側とが電気的に接続され、また、第1デバイス3の熱源2から離間する側と、他の第1デバイス3の熱源2から離間する側とが、電気的に接続される(図3(b)参照)。
図1において、第2デバイス4は、第1デバイス3から電力を取り出すために設けられる。
このような第2デバイス4は、より具体的には、特に制限されないが、例えば、上記の第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極(例えば、銅電極、銀電極など)、例えば、それら電極に接続される導線などを備えており、第1デバイス3に電気的に接続されている。
そして、図1に示す発電システム1では、その第2デバイス4が、昇圧器5、交流/直流変換器(AC−DCコンバーター)6およびバッテリー7に、順次、電気的に接続されている。
このような発電システム1により、発電するには、例えば、まず、熱源2の温度を経時的に上下、好ましくは、周期的に温度変化させ、その温度変化に応じて、上記した第1デバイス3を、経時的に、好ましくは、周期的に温度変化させ、電気分極させる。
その後、第2デバイス4を介することにより、電力を、第1デバイス3の周期的な電気分極に応じて周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出す。
より具体的には、熱電システム1において、熱源2は、第1デバイス3を、そのキュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように、経時的に温度変化させる。
すなわち、熱電システム1において、第1デバイス3は、その高温状態における温度が、低温状態における温度を超過し、キュリー点に対して−20℃以上になるように、かつ、その低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満であり、キュリー点に対して+10℃以下になるように、温度変化する。
また、好ましくは、第1デバイス3は、そのキュリー点に対して−18℃〜キュリー点に対して+8℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように、さらに好ましくは、キュリー点に対して−15℃〜キュリー点に対して+5℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように、経時的に温度変化させる。
このような第1デバイス3は、そのキュリー点を含まないように温度変化することができる。
具体的には、第1デバイス3は、例えば、高温状態における温度および低温状態における温度のいずれもがキュリー点を超過するとともに、低温状態における温度がキュリー点に対して+10℃以下となるように、温度変化することができる。また、第1デバイス3は、例えば、高温状態における温度および低温状態における温度のいずれもがキュリー点未満であるとともに、高温状態における温度がキュリー点に対して−20℃以上となるように、温度変化することもできる。
さらに、第1デバイス3は、そのキュリー点を含むように、すなわち、高温状態における温度がキュリー点を超過し、かつ、低温状態における温度がキュリー点未満となるように、温度変化することができる。
第1デバイス3として、好ましくは、そのキュリー点を含むように温度変化することが挙げられる。
このような発電システム1では、通常、第1デバイス3の温度の変化量が大きいほど、大きな電圧を取り出すことができるが、第1デバイス3が、キュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように経時的に温度が上下される場合には、温度の変化量が小さくても、大きな電圧を取り出すことができ、優れた効率で発電することができる。
第1デバイス3の温度として、具体的には、その低温状態における温度が、例えば、キュリー点に対して−40℃以上、好ましくは、キュリー点に対して−30℃以上、さらに好ましくは、キュリー点に対して−20℃以上であり、高温状態における温度が、キュリー点に対して+30℃以下、好ましくは、キュリー点に対して+20℃以下、さらに好ましくは、キュリー点に対して+10℃以下である。
すなわち、第1デバイス3は、とりわけ好ましくは、キュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の範囲において、温度変化する。
このような場合において、第1デバイス3の温度は、高温状態における温度が、例えば、30〜1200℃、好ましくは、100〜800℃、より好ましくは、300〜350℃、さらに好ましくは、310〜325℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満であって、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜100℃、好ましくは、20〜50℃である。
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
なお、第1デバイス3の温度は、赤外線放射温度計などにより測定することができる。
そして、熱源2の温度は、第1デバイス3を上記範囲で温度変化させることができる範囲に設定される。
より具体的には、熱源2の温度は、高温状態における温度が、例えば、500〜1200℃、好ましくは、700〜900℃であり、低温状態における温度が、上記の高温状態における温度未満、より具体的には、例えば、200〜800℃、好ましくは、200〜500℃であり、高温状態と低温状態との温度差が、例えば、10〜600℃、好ましくは、20〜500℃である。
また、それら高温状態と低温状態との繰り返し周期は、例えば、10〜400サイクル/秒、好ましくは、30〜100サイクル/秒である。
そして、このようにして発電システム1により取り出された電力を、第2デバイス4に接続される昇圧器5において、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)の状態で昇圧する。昇圧器5としては、交流電圧を、例えば、コイル、コンデンサなどを用いた簡易な構成により、優れた効率で昇圧できる昇圧器が、用いられる。
次いで、昇圧器5において昇圧された電力を、交流/直流変換器6において直流電圧に変換した後、バッテリー7に蓄電する。
このような発電システム1によれば、温度が経時的に上下する熱源2を用いるため、変動する電圧(例えば、交流電圧)を取り出すことができ、その結果、一定電圧(直流電圧)として取り出し、DC−DCコンバーターで変換する場合に比べて、優れた効率で昇圧して、蓄電することができる。
また、熱源2が、周期的に温度変化する熱源であれば、電力を、周期的に変動する波形として取り出すことができ、その結果、より優れた効率で昇圧して、蓄電することができる。
とりわけ、このような発電システム1では、通常、第1デバイス3の温度の変化量が大きいほど、大きな電圧を取り出すことができるが、この発電システム1では、第1デバイス3が、キュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように経時的に温度が上下されるので、温度の変化量が小さくても、優れた効率で発電することができる。
図4は、本発明の発電システムが車載された一実施形態を示す概略構成図である。
図4において、自動車10は、内燃機関11、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15を備えている。
内燃機関11は、エンジン16、および、エキゾーストマニホールド17を備えている。
エンジン16は、4気筒型4サイクル方式のエンジンであって、各気筒に、エキゾーストマニホールド17の分岐管18(後述)の上流側端部が接続されている。
エキゾーストマニホールド17は、エンジン16の各気筒から排出される排気ガスを収束するために設けられる排気多岐管であって、エンジン16の各気筒に接続される複数(4つ)の分岐管18(これらを区別する必要がある場合には、図4の上側から順に、分岐管18a、分岐管18b、分岐管18cおよび分岐管18dと称する。)と、それら分岐管18の下流側において、各分岐管18を1つに統合する集気管19とを備えている。
このようなエキゾーストマニホールド17では、分岐部18の上流側端部が、それぞれ、エンジン16の各気筒に接続されるとともに、分岐管18の下流側端部と集気管19の上流側端部とが接続されている。また、集気管19の下流側端部は、触媒搭載部12の上流側端部に接続されている。
触媒搭載部12は、例えば、触媒担体およびその担体上にコーティングされる触媒を備えており、内燃機関11から排出される排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)などの有害成分を浄化するために、内燃機関11(エキゾーストマニホールド17)の下流側端部に接続されている。
エキゾーストパイプ13は、触媒搭載部12において浄化された排気ガスをマフラー14に案内するために設けられており、上流側端部が触媒搭載部12に接続されるとともに、下流側端部がマフラー14に接続されている。
マフラー14は、エンジン16(とりわけ、爆発工程)において生じる騒音を、静音化すために設けられており、その上流側端部がエキゾーストパイプ13の下流側端部に接続されている。また、マフラー14の下流側端部は、排出パイプ15の上流側端部に接続されている。
排出パイプ15は、エンジン16から排出され、エキゾーストマニホールド17、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13およびマフラー14を順次通過し、浄化および静音化された排気ガスを、外気に放出するために設けられており、その上流側端部がマフラー14の下流側端部に接続されるとともに、その下流側端部が、外気に開放されている。
そして、この自動車10は、図4において点線で示すように、発電システム1を搭載している。
図5は、図4に示す発電システムの要部拡大図である。
図5において、発電システム1は、上記したように、熱源2、第1デバイス3および第2デバイス4を備えている。
この発電システム1では、熱源2として、内燃機関11におけるエキゾーストマニホールド17の分岐管18が用いられており、その分岐管18の周囲に、第1デバイス3が配置されている。
第1デバイス3としては、上記したように、公知の焦電素子(例えば、BaTiO3、CaTiO3、(CaBi)TiO3、BaNd2Ti5O14、BaSm2Ti4O12、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)など)、公知の熱電変換素子(例えば、Bi−Te系熱電変換素子(例えば、Bi2Te3、Bi2Te3/Sb2Te3など))、PbTe、AgSbTe2/GeTe、NaCo2O4、CaCoO3、SrTiO3/SrTiO3:Nb、SiGe、β−FeSi2、Ba8Si46、Mg2Si、MnSi1.73、ZnSb、Zn4Sb3、CeFe3CoSb12、LaFe3CoSb12、SrTiO3/SrTiO3:Nb/SrTiO3、Siナノワイヤー・アレイ、NaCo2O4、(Ce1−xLax)Ni2、(Ce1−xLax)In3、CeInCu2、NaV2O5、V2O5など)、公知のピエゾ素子(例えば、水晶(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム−ナトリウム)(KNaC4H4O6)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、窒化アルミニウム(AlN)、電気石(トルマリン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)などを用いることができる。
このような第1デバイス3のキュリー点は、例えば、−30〜1500℃、好ましくは、−10〜1200℃、より好ましくは、10〜1000℃である。
また、第1デバイス3が、焦電素子および/またはピエゾ素子(絶縁体(誘電体))である場合には、その比誘電率は、例えば、1以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、2000以上である。
このような発電システム1では、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))の比誘電率が高いほど、エネルギー変換効率が高く、高電圧で電力を取り出すことができるが、第1デバイス3の比誘電率が上記下限未満であれば、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
なお、第1デバイス3(絶縁体(誘電体))は、熱源2の温度変化によって電気分極するが、その電気分極は、電子分極、イオン分極および配向分極のいずれでもよい。
例えば、配向分極によって分極が発現する材料(例えば、液晶材料など)では、その分子構造を変化させることにより、発電効率の向上を図ることができるものと期待されている。
第1デバイス3が、熱電変換素子である場合には、その性能は、例えば、下記式(1)により示される。
ZT=S2σT/κ (1)
(式中、Zは、性能指数を示し、Tは、絶対温度を示し、Sは、ゼーベック係数を示し、σは、電気伝導率を示し、κは、熱伝導率を示す。)
このような第1デバイス3(熱電変換素子)において、そのZT値(無次元性能指数)は、例えば、0.3以上である。
ZT値(無次元性能指数)が上記下限未満である場合には、エネルギー変換効率が低く、得られる電力の電圧が低くなる場合がある。
また、通常、熱電変換素子は、材料内部の温度差で発電するため、熱伝導率が低いほど、エネルギー変換効率が高くなるが、この発電システム1では、第1デバイス3(熱電変換素子)両端の温度差が必要なく、そのため、第1デバイス3(熱電変換素子)の熱伝導率は、特に制限されない。
第2デバイス4は、第1デバイス3を挟んで対向配置される2つの電極、および、それら電極に接続される導線を備えている。なお、第1デバイス3の一方側面に配置される電極および導線は、第1デバイス3と分岐管18(熱源2)との間に介在するように配置されており、第1デバイス3の他方側面に配置される電極および導線は、分岐管18(熱源2)に接触することなく、露出されている。
また、発電システム1は、図4に示すように、昇圧器5、交流/直流変換器6およびバッテリー7に、順次、電気的に接続されている。
そして、このような自動車10では、エンジン16の駆動により、各気筒において、ピストンの昇降運動が繰り返され、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が順次実施される。
より具体的には、例えば、分岐管18aに接続される気筒、および、分岐管18cに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、高温の排気ガスが、分岐管18aおよび分岐管18cの内部を排気工程において通過する。
このとき、分岐管18aおよび分岐管18cの温度は、排気工程において上昇し、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)において下降するので、ピストンサイクルに応じて、経時的に上下し、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
一方、それら2つの気筒とはタイミングを異にして、分岐管18bに接続される気筒、および、分岐管18dに接続される気筒の2つの気筒において、ピストンが連動し、吸気工程、圧縮工程、爆発工程および排気工程が、同位相で実施される。これにより、燃料が燃焼され、動力が出力されるとともに、分岐管18aおよび分岐管18cとは異なるタイミングにおいて、高温の排気ガスが、分岐管18bおよび分岐管18dの内部を排気工程において通過する。
このとき、分岐管18bおよび分岐管18dの温度は、排気工程において上昇し、その他の工程(吸気工程、圧縮工程、爆発工程)において下降するので、ピストンサイクルに応じて、経時的に上下し、高温状態と低温状態とが、周期的に繰り返される。
この周期的な温度変化は、分岐管18aおよび分岐管18cの周期的な温度変化とは、周期が同じである一方、位相が異なる。
そして、この発電システム1では、各分岐管18(熱源2)に、第1デバイス3が配置されている。
そのため、各分岐管18(熱源2)の経時的な温度変化により、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、その素子(例えば、ピエゾ素子、焦電素子、熱電変換素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果、ゼーベック効果など)により、電気分極させることができる。
そのため、この発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
また、この発電システム1では、分岐管18aおよび分岐管18cの温度と、分岐管18bおよび分岐管18dの温度とが、同じ周期、かつ、異なる位相で周期的に変化するため、電力を、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、連続的に取り出すことができる。
そして、排気ガスは、各分岐管18を通過した後、集気管19に供給され、集気された後、触媒搭載部12に供給され、その触媒搭載部12に備えられる触媒により浄化される。その後、排気ガスは、エキゾーストパイプ13に供給され、マフラー14において静音化された後、排出パイプ15を介して、外気に排出される。
このとき、各分岐管18内を通過する排気ガスは、集気管19において集気されるので、集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15を順次通過する排気ガスは、その温度が、平滑化されている。
そのため、温度が平滑化されたこのような排気ガスを通過させる集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14および排出パイプ15の温度は、通常、経時的に上下することなく、ほぼ一定である。
そのため、集気管19、触媒搭載部12、エキゾーストパイプ13、マフラー14または排出パイプ15を熱源2として用い、その周囲に、上記した第1デバイス3を、第2デバイス4を介して配置する場合には、第1デバイス3から取り出される電力は、その電圧が小さく、また、一定(直流電圧)である。
そのため、このような方法では、得られる電力を、簡易な構成で効率良く昇圧することができず、蓄電効率に劣るという不具合がある。
一方、上記したように、内燃機関11(分岐管18)を熱源2として採用する発電システム1では、その熱源2の経時的な温度変化により、第1デバイス3を、周期的に高温状態または低温状態にすることができ、第1デバイス3を、そのデバイス(例えば、ピエゾ素子、焦電素子、熱電変換素子など)に応じた効果(例えば、ピエゾ効果、焦電効果、ゼーベック効果など)により、周期的に電気分極させることができる。
そのため、この発電システム1では、第2デバイス4を介して、各第1デバイス3から電力を周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)として、取り出すことができる。
その後、この方法では、例えば、図4において点線で示すように、上記により得られた電力を、第2デバイス4に接続される昇圧器5において、周期的に変動する波形(例えば、交流、脈流など)の状態で昇圧し、次いで、昇圧された電力を、交流/直流変換器6において直流電圧に変換した後、バッテリー7に蓄電する。バッテリー7に蓄電された電力は、自動車10や、自動車10に搭載される各種電気部品の動力などとして、適宜、用いることができる。
そして、このような発電システム1によれば、温度が経時的に上下する熱源2を用いるため、変動する電圧(例えば、交流電圧)を取り出すことができ、その結果、一定電圧(直流電圧)として取り出し、DC−DCコンバーターで変換する場合に比べて、優れた効率で昇圧して、蓄電することができる。
とりわけ、このような発電システム1によれば、第1デバイス3が、キュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように経時的に温度が上下されるので、優れた効率で発電することができる。
なお、詳しくは図示しないが、第1デバイス3は、その素子の種類や、必要および用途に応じて、図2に示すように、積層配置して用いることができ、さらには、図3に示すように、同一面状に整列配置して用いることもできる。
第1デバイス3を、積層配置および/または同一面状に整列配置して用いれば、複数の第1デバイス3を同時に電気分極させるとともに、それらを電気的に直列接続することができ、その結果、第1デバイス3を単独で用いる場合に比べ、大きな電力を取り出すことができる。
なお、上記した説明では、分岐管18の周囲(外側壁)に、第1デバイス3を配置したが、温度変化を平均化することなく第1デバイス3に伝達させるため、分岐管18の内部(例えば、内側壁)に第1デバイス3を配置することが好ましい。
以下において、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
バルク型のピエゾ素子(構造:NbおよびSn添加PZT(Nb/Sn/Pb(Zr,Ti)O3)、キュリー点315℃、比誘電率:約2500、製番:H5C、住友金属エレクトロデバイス製)を、25mm×25mm×1.2mmサイズにカットし、その表面および裏面に、銀ペーストを20mm×20mm×0.1mmの大きさとなるように塗布し、銀電極を形成した。
次いで、得られたピエゾ素子および銀電極を、電気炉によって300℃で1時間熱処理し、サンプルを得た。
その後、20mm×20mmのアルミテープを用いて、2つの導線(リード線)の一方側を各銀電極上に貼着させるとともに、他方側をデジタルマルチメータに接続した。
熱源としてヒートガンを用い、その噴射口をピエゾ素子に向けるとともに、噴射口がピエゾ素子から5cm離間するように、ヒートガンおよびピエゾ素子を、それぞれ配置した。
ヒートガンから熱風を噴き出し、経時的にヒートガンのON/OFFを切り替えることにより、ヒートガンおよび熱風の温度を経時的に上下させ、この温度変化により、ピエゾ素子の温度を経時的に上下させるとともに電気分極させ、電極および導線を介して、発電電圧(電力)を取り出した。
なお、ピエゾ素子の温度を赤外線放射温度計により測定し、その温度が、295℃(キュリー点に対して−20℃)〜325℃(キュリー点に対して+10℃)の範囲の少なくとも一部を含み、また、その温度変化量が約30℃となるように、熱風温度を調整した。また、加熱と放冷とは、加熱/放冷=5s/10s周期で切り替えた。
そして、ピエゾ素子から取り出された電力の電圧変化を電圧計により観測した。発電電圧と温度変化との関係を、図6に示す。
比較例1
実施例1から引き続き、ピエゾ素子の温度を経時的に上下させるとともに電気分極させ、電極および導線を介して、発電電圧(電力)を取り出した。
なお、ヒートガンによる加熱および冷却では、ピエゾ素子の温度を赤外線放射温度計により測定し、その温度が、295℃(キュリー点に対して−20℃)〜325℃(キュリー点に対して+10℃)の範囲を含まないように、さらに、その温度変化量が約150℃となるように、熱風温度を調整した。
また、加熱と放冷とは、加熱/放冷=12.5s/12.5s周期で切り替えた、
そして、ピエゾ素子から取り出された電力の電圧変化を電圧計により観測した。発電電圧と温度変化との関係を、図6に示す。
(考察)
ピエゾ素子が、キュリー点に対して−20℃〜キュリー点に対して+10℃の温度範囲の少なくとも一部を含むように経時的に温度が上下されている実施例1によれば、約30℃という僅かな温度変化量であっても、上記温度範囲を含まないように温度が上下されている場合の、温度変化量が約150℃である比較例1と同程度に、優れた効率で発電できることが確認された。
実施例2
実施例1と同様にしてサンプルを得て、実施例1と同様の方法により、そのサンプルのピエゾ素子の温度を経時的に上下させるとともに電気分極させ、電極および導線を介して、発電電圧(電力)を取り出した。
なお、ヒートガンによる加熱および冷却においては、ピエゾ素子の高温状態における温度と低温状態における温度との中間温度が、140〜335℃の範囲で変化するように、熱風温度および噴き付け周期を調整した。また、ピエゾ素子の温度変化量は、30℃とした。
そして、ピエゾ素子から取り出された電力の電圧変化を電圧計により観測した。発電電圧と温度変化との関係を、図7に示す。
実施例3
ピエゾ素子を熱処理することなく、実施例2と同様の方法により、そのサンプルのピエゾ素子の温度を経時的に上下させるとともに電気分極させ、電極および導線を介して、発電電圧(電力)を取り出した。
そして、ピエゾ素子から取り出された電力の電圧変化を電圧計により観測した。発電電圧と温度変化との関係を、図7に併せて示す。
(考察)
熱処理されたピエゾ素子、および、熱処理されていないピエゾ素子のいずれにおいても、高温状態における温度と低温状態における温度との中間温度が、295℃(キュリー点−20℃)〜325℃(キュリー点+10℃)の範囲であれば、優れた効率で発電できることが確認された。
また、高温状態における温度と低温状態における温度との中間温度が、315℃(キュリー点)付近であれば、とりわけ優れた発電効率を得られることが確認された。
一方、高温状態における温度と低温状態における温度との中間温度が、325℃(キュリー点+10℃)を超過すると、発電性能の低下が確認された。これは、ポーリング効果の低下によるものであると推察される。