次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1〜8Bは、本発明の第1実施形態を説明する図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る家具としての座椅子1Aは、水平状に配置される水平部としての座部2Aと、立上り部としての背凭れ部3Aとを具備している。座部2Aは、水平状に配置される水平フレームとしての座フレーム2を有している。背凭れ部3Aは、水平フレームに対して立上り状に配置される立上りフレームとしての背フレーム3を有している。同図では、背フレーム3(背凭れ部3A)は、座フレーム2(座部2A)の後端部に座フレーム2(座部2A)に対して立上り状に配置されている。
なお図1において、「L」は座椅子1Aの左側、「R」は座椅子1Aの右側を示している。また、「6」は座部2A用クッション体(一点鎖線で示す)であり、「7」は背凭れ部3A用クッション体(一線鎖線で示す)である。両クッション体6、7は互いに一体に繋がって形成されている。各クッション体6、7の構成については後述する。
座フレーム2は、略U字状に屈曲された金属丸パイプ材からなるものであり、互いに離間して平行に配置された左右一対の側枠部2a、2bと、両側枠部2a、2bの両前端同士を連結した前枠部2cとを有している。本第1実施形態の座椅子1Aでは、座フレーム2の両側枠部2a、2bの少なくとも両後端部2aa、2ba側は真直に形成されており、即ち略水平に配置されている。
座フレーム2の両側枠部2a、2bの両後端部2aa、2baの内側には座椅子1Aの後方への転倒を防止する転倒防止用後枠部2dが配置されている。後枠部2dは、略U字状に屈曲された金属丸パイプ材から製作されている。そして、座フレーム2の両側枠部2a、2bの両後端部2aa、2ba同士が後枠部2dを介して連結されている。
背フレーム3は、背フレーム3の高さ方向(即ち背フレーム3の立上り方向)の中間部における所定の分割位置で上背フレーム部4と下背フレーム部5とに分割されている。背フレーム3の詳細な分割位置については後述する。
上背フレーム部4は、略U字状に屈曲された金属丸パイプ材からなるものであり、互いに離間して平行に配置された左右一対の上側枠部4a、4bと、両上側枠部4a、4bの両上端同士を連結した上枠部4cとを有している。
下背フレーム部5は、互いに離間して平行に配置された左右一対の下側枠部5a、5bを有している。各下側枠部5a、5bは真直な円筒状の金属パイプ材からなる。そして、両下側枠部5a、5b同士が水平状に配置された真直な補強フレーム5cを介して連結されている。補強フレーム5cは金属丸パイプ材からなる。
背フレーム3において、上背フレーム部4の左上側枠部4aの下端部と下背フレーム部5の左下側枠部5aの上端部とが左関節器10Aを介して連結されており、上背フレーム部4の右上側枠部4bの下端部と下背フレーム部5の右下側枠部5bの上端部とが右関節器60を介して連結されている。左関節器10A及び右関節器60の構成については後述する。
座フレーム2の左側枠部2aの左後端部2aaと下背フレーム部5の左下側枠部5aの下端部とは左角度調節器9を介して連結されており、座フレーム2の右側枠部2bの右後端部2baと下背フレーム部5の右下側枠部5bの下端部とは右角度調節器9を介して連結されている。
各角度調節器9は、座フレーム2(座部2A)に対する背フレーム3(背凭れ部3A)の展開角度αを調節するものであり、詳述すると座フレーム2に対する背フレーム3の下背フレーム部5の展開角度αを調節するものである。各角度調節器9はラチェット機構を有している。両角度調節器9、9は互いに同一形状及び同一構成である。
ここで、座椅子1A、両角度調節器9、9及び両関節器10A、60の構成及び動作を理解し易くするため、便宜上、座フレーム2に対する背フレーム3の展開角度αが減少する回転方向を「(背フレーム3の)正回転方向」、座フレーム2に対する背フレーム3の展開角度αが増加する回転方向を「(背フレーム3の)逆回転方向」と定義する。
各角度調節器9は、ラチェット機構が有する逆回転規制機能によって、背フレーム3の正回転方向への回転を許容するが背フレーム3の逆回転方向への回転を規制(阻止)するように構成されている。したがって、背フレーム3は正回転方向へは回転できるが、逆回転方向へは回転できないようになっている。
背フレーム3を逆回転方向に回転させる場合には、背フレーム3を正回転方向に最大回転させることにより両角度調節器9、9のラチェット機構による規制を解除するという規制解除操作が行われる。これにより、背フレーム3を逆回転方向に回転させることが可能となる。
座フレーム2(後枠部2dを含む)及び両角度調節器9、9は、座部2A用クッション体6の内部に配置されており、これにより、座部2A用クッション体6がこれらの部材(2、9、9)の全体を覆う状態にして座フレーム2に取り付けられている。
背フレーム3(補強フレーム5cを含む)及び両関節器10A、60は、背凭れ部3A用クッション体7の内部に配置されており、これにより、背凭れ部3A用クッション体7がこれらの部材(3、10A、60)の全体を覆う状態にして背フレーム3に取り付けられている。
座部2A用クッション体6と背凭れ部3A用クッション体7はそれぞれ弾性を有するウレタン(例:ウレタンフォーム)等からなり、上述のように両クッション体6、7は互いに一体に繋がって形成されている。さらに、両クッション体6、7の表面全体が柔軟な表面カバーで包覆されている。
背フレーム3における上背フレーム部4と下背フレーム部5との分割位置は、図3に示すように、上背フレーム部4を倒伏位置に配置させたときに背凭れ部3Aにおける上背フレーム部4の対応部分が座部2A上に座部2Aと略平行に重なり得る位置であり、詳述すると、背フレーム3の高さ方向の中間部における下端寄りの位置であって且つ座部2Aの座面2Aaよりも若干高い位置である。
次に、左右両関節器10A、60の構成について以下に説明する。
両関節器10A、60のうちいずれか一方は、所定のロック機構50及びロック解除機構51を備えたものであり、他方はそのような機構を備えていないものである。本第1実施形態では、左関節器10Aがロック機構50及びロック解除機構51を備えている。
右関節器60は、ロック機構及びロック解除機構を備えていないものである。したがって、図1及び2に示すように、右関節器60は、背フレーム3の上背フレーム部4の右上側枠部4bの下端部と下背フレーム部5の右下側枠部5bの上端部とを一方向及び反対向に回転フリーに連結している。すなわち、右関節器60では、上背フレーム部4の右上側枠部4bの下端部に取り付けられた第1アーム61と下背フレーム部5の右下側枠部5bの上端部に取り付けられた第2アーム62とが両回転方向に回転フリーに枢着されている。
左関節器10Aは、図4A〜4Cに示すように、第1アーム11、第2アーム21等を備えている。第1及び第2アーム11、21はそれぞれ金属板が所定形状に屈曲されて形成されたものである。
第1アーム11は、図4C、図6A及び6Bに示すように、上背フレーム部4の左上側枠部4aの下端部に取り付けられる円筒状の取付け部12と、取付け部12の基端側(即ち下端側)に取付け部12と一体に形成された左右一対の連結板部13、14とを有している。両連結板部13、14は左右方向に互いに離間して且つ対向状に配置されている。
第1アーム11において、両連結板部13、14のうち背凭れ部3Aに対して外側に位置する連結板部である左連結板部13には、断面円形状の第1軸孔15(図6A参照)が設けられている。両連結板部13、14のうち背凭れ部3Aに対して内側に位置する連結板部である右連結板部14には、断面非円形状の第1係合孔16(図6B参照)が右連結板部14の厚さ方向に貫通して設けられている。第1係合孔16の断面形状の詳細については後述する。
第2アーム21は、図4C、図6A及び6Bに示すように、下背フレーム部5の左下側枠部5aの上端部に取り付けられる円筒状の取付け部22と、取付け部22の基端側(即ち上端側)に取付け部22と一体に形成された左右一対の連結板部23、24とを有している。両連結板部23、24は左右方向に互いに離間して且つ対向状に配置されている。
第2アーム21において、両連結板部23、24のうち背凭れ部3Aに対して外側に位置する連結板部である左連結板部23には、断面円形状の第2軸孔25(図6A参照)が設けられている。両連結板部23、24のうち背凭れ部3Aに対して内側に位置する連結板部である右連結板部24には、断面非円形状の第2係合孔26(図6B参照)が設けられている。第2係合孔26の断面形状の詳細については後述する。
そして、図4Cに示すように、第2アーム21の両連結板部23、24の間に第1アーム11の両連結板部13、14が配置されており、この状態で、金属製の頭部33付きリベットからなる枢軸ピン30が第2アーム21の右連結板部24の右外側から第2係合孔26、第1係合孔16、第1軸孔15及び第2軸孔25に順次連通して且つ枢軸ピン30の軸線方向に沿ってスライド移動可能に挿通されている。「J」は枢軸ピン30の軸線である。この軸線Jは左右方向に向いている。枢軸ピン30の構成については後述する。
第1アーム11の右連結板部14と第2アーム21の右連結板部24とは互いに重ね合わせ状に配置されている。また同じく、第1アーム11の左連結板部13と第2アーム21の左連結板部23とは互いに重ね合わせ状に配置されている。
第1アーム11の取付け部12は、図4C中に二点鎖線で示すように、上背フレーム部4の左上側枠部4aの下端部に内嵌状態で所定の固定手段(例:カシメ固定、リベット締結、溶接)により固定されて取り付けられている。
第2アーム21の取付け部22は、同図中に二点鎖線で示すように、下背フレーム部5の左下側枠部5aの上端部に内嵌状態で所定の固定手段(例:カシメ固定、リベット締結、溶接)により固定されて取り付けられている。
さらに、第1アーム11は、図1及び2に示すように、上背フレーム部4が立上り状態の下背フレーム部5に対して座部2A側へ倒伏した倒伏位置(図2)から上背フレーム部4が背凭れ部3Aとして使用される時に配置される使用位置(図1)へと移動可能になるように、更に、上背フレーム部4が使用位置(図1)から倒伏位置(図2)へと移動可能になるように、第2アーム21に第2アーム21に対して相対的に回転可能に枢軸ピン30を介して枢着されている。また、第1アーム11の両連結板部13、14は第1アーム11に一体回転可能に設けられている。
そして座椅子1Aは、図3に示すように、上背フレーム部4を倒伏位置に配置した状態、即ち背凭れ部3Aにおける上背フレーム部4の対応部分が座部2A上に座部2Aと略平行に重なるように座椅子1Aを折り畳んだ状態にして、梱包箱(例:段ボール箱)80内に入れて梱包される。
図4A及び4Bにおいて、矢印「X」は、上背フレーム部4の使用位置から倒伏位置への移動により第1アーム11が回転する方向を示している。矢印「Y」は、上背フレーム部4の倒伏位置から使用位置への移動により第1アーム11が回転する方向を示している。
左関節器10Aは、倒伏位置から使用位置に移動した上背フレーム部4が使用位置に固定されるように第1アーム11の回転をロックするロック機構50(図4C参照)を備えており、更に、ロック機構50による第1アーム11の回転のロックを解除するロック解除機構51を備えている。
次に、左関節器10Aのロック機構50及びロック解除機構51の構成について以下に説明する。
図6A及び6Bに示すように、枢軸ピン30は上述したように頭部33付きリベットからなる。したがって、枢軸ピン30は断面円形状の軸部31と軸部31よりも径大の頭部33とを有している。頭部33は軸部31の基端に一体に形成されている。
図4Cに示すように、枢軸ピン30が上述のように第2係合孔26、第1係合孔16、第1軸孔15及び第2軸孔25に挿通された状態において、枢軸ピン30の一端部側としての枢軸ピン30の先端部35側(詳述すると枢軸ピン30の軸部31の先端部35側)は、第2アーム21の外面としての第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aよりも左外側に突出して配置されている。そして、当該左外側面23aよりも左外側に突出した枢軸ピン30の突出部34に付勢部材としての圧縮コイルバネ39が外挿されている。
さらに、枢軸ピン30の軸部31の先端部35がワッシャ(詳述すると平ワッシャ)からなる円環板状のバネ止め部材38の内側に挿通されるとともに、この状態で先端部35がカシメられることにより、枢軸ピン30の軸部31の先端部35にバネ止め部材38が枢軸ピン30の軸線方向に移動不能に固着(詳述するとカシメ固定)されてバネ止め部が形成されている。これにより、圧縮コイルバネ39は、枢軸ピン30の突出部34に外挿された状態で第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと枢軸ピン30の先端部35のバネ止め部材(バネ止め部)38との間に圧縮状態に配置されている。
さらに、図4C及び5に示すように、枢軸ピン30は、その軸線方向に沿ってロック位置(図4C)とロック解除位置(図5)とにスライド移動可能に配置されている。
ロック位置とは、図4Cに示すように、枢軸ピン30がその軸線方向に沿って左方向(即ち背凭れ部3Aに対して左外方向)に移動した位置である。
ロック解除位置とは、図5に示すように、枢軸ピン30がその軸線方向に沿って右方向(即ち背凭れ部3Aに対して内方向)に移動した位置である。
図4Cに示すように、ロック位置では枢軸ピン30の頭部33は第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接している。これにより、枢軸ピン30がロック解除位置(図5)からロック位置(図4C)に移動したとき枢軸ピン30の頭部33が第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接することで枢軸ピン30の移動が停止されるようになっており、すなわちロック解除位置からロック位置へ移動してきた枢軸ピン30がロック位置に停止されるようになっている。
また、枢軸ピン30の頭部33は、枢軸ピン30がロック解除位置(図5)からロック位置(図4C)に移動したとき枢軸ピン30の移動を停止させるストッパ部として機能している。
図4C及び図5に示すように、枢軸ピン30がロック位置とロック解除位置にそれぞれ配置された状態において、第1アーム11の左連結板部13の第1軸孔15と第2アーム21の左連結板部23の第2軸孔25とに対応する枢軸ピン30の軸部31の対応部分は、断面円形状に形成されている(図6A及び6B参照)。また、第1及び第2軸孔15、25の断面形状はそれぞれ上述したように円形状である。したがって、第1及び第2軸孔15、25の断面形状は、枢軸ピン30がロック位置とロック解除位置にそれぞれ配置された状態において枢軸ピン30の軸部31に対して回転可能な形状に形成されている。
一方、図4Cに示すように、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態において、第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16に対応する枢軸ピン30の軸部31の対応部分である、枢軸ピン30の軸部31の基端部側(即ち頭部33側)には、断面非円形の非円形状部32が形成されている。
図6A及び6Bに示すように、枢軸ピン30の非円形状部32は、枢軸ピン30の軸部31の基端部側にその外周面よりも軸部31の径方向外側に膨出したロック歯部32aが設けられることで断面非円形状に形成されている。すなわち、非円形状部32の断面形状は、枢軸ピン30の軸部31よりも径方向外側に膨出した形状である。本第1実施形態では、非円形状部32は軸部31の直径方向両外側にそれぞれ膨出した二つのロック歯部32a、32aを有しており、非円形状部32の断面形状は略長方形状である。さらに、各ロック歯部32aは枢軸ピン30の軸部31の基端部側に一体に形成されている。なお、「32b」は、枢軸ピン30の非円形状部32(詳述するとロック歯部32a)の端面である。
第1係合孔16の断面形状は、枢軸ピン30の非円形状部32が第1係合孔16に嵌合可能な形状に形成されており、更に、第1係合孔16に嵌合された非円形状部32に対して第1係合孔16が回転不能な形状に形成されている。本第1実施形態では第1係合孔16の断面形状は非円形状部32の断面形状に対応した形状に形成されており、詳述すると非円形状部32の断面形状と同形(即ち略長方形状)に形成されている。
そして、図4Cに示すように、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態では、枢軸ピン30の非円形状部32は第1係合孔16に嵌合(係合)された状態で挿通されている。これにより、第1アーム11は枢軸ピン30に対して回転不能に配置されている。
さらに、同図に示すように、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態において、枢軸ピン30の非円形状部32は第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26に嵌合(係合)された状態で挿通されている。
図6A及び6Bに示すように、第2係合孔26の断面形状は第1係合孔16の断面形状と同形(即ち略長方形状)に形成されている。これにより、枢軸ピン30は第2係合孔26に対して回転不能に第2係合孔26に挿通保持されている。したがって、図4Cに示すように、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態では、枢軸ピン30は第2アーム21に対して回転不能に第2アーム21(詳述すると第2アーム21の第2係合孔26)に取り付けられている。
このように、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態では、枢軸ピン30は第2アーム21に対して回転不能であり且つ第1アーム11は枢軸ピン30に対して回転不能であるから、第2アーム21に対する第1アーム11の回転はロックされている。
一方、図5に示すように、枢軸ピン30がロック解除位置に配置された状態では、枢軸ピン30の非円形状部32は、第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16から第2アーム21の第2係合孔26側へ即ち右連結板部14の厚さ方向の一方側としての右側へ抜出されるとともに、第2アーム21の第2係合孔26からは抜出されておらず即ち第2係合孔26に嵌合されている。このように非円形状部32が第1係合孔16から抜出された状態では、第1係合孔16に枢軸ピン30の断面円形状の軸部31が配置されており、これにより、第1係合孔16は枢軸ピン30(詳述するとその軸部31)に対して回転可能になっており即ち軸孔として機能する。
したがって、枢軸ピン30がロック解除位置に配置された状態でも、枢軸ピン30は依然として第2アーム21に対して回転不能に第2アーム21(詳述すると第2アーム21の第2係合孔26)に取り付けられているが、第1アーム11は枢軸ピン30の非円形状部32が第1係合孔16から抜出されることで枢軸ピン30に対して回転可能となっている。これにより、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックが解除される。
次に、本第1実施形態の座椅子1Aの動作及び使用方法について以下に説明する。
ここで、図4Aに示すように、説明の便宜上、左関節器10Aの第2アーム21に対する第1アーム11の展開角度θが減少する回転方向を「(第1アーム11の)X方向」、第2アーム21に対する第1アーム11の展開角度θが増加する回転方向を「(第1アーム11の)Y方向」と定義する。
図1に示した座椅子1Aでは、背フレーム3の上背フレーム部4及び下背フレーム部5は、背凭れ部3Aとして使用される立上り位置、即ち使用位置に配置されている。さらに、座フレーム2(座部2A)に対する背フレーム3(背凭れ部3A)の展開角度αは両角度調節器9、9によって保持されている。同図では、背フレーム3の展開角度αは約95°であり、背フレーム3は座フレーム2に対して立上り状に配置されている。
図1に示した状態では、左関節器10Aは、図4A〜4Cに示すように、第2アーム21に対する第1アーム11の展開角度θ(図4A参照)が最大展開角度である約180°になっている。この展開角度θにて上背フレーム部4の倒伏位置側への移動が左関節器10Aのロック機構50によりロックされている。
すなわち、図4Cに示すように、左関節器10Aの枢軸ピン30はロック位置に配置されており、したがって枢軸ピン30の非円形状部32は第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16と第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26とに嵌合(係合)されている。これにより、枢軸ピン30は第2アーム21に対して回転不能であり且つ第1アーム11は枢軸ピン30に対して回転不能となっており、その結果、第2アーム21に対する第1アーム11の回転がロックされている。
さらに、このロック状態では、枢軸ピン30は、圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して枢軸ピン30の頭部33が第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接することによってロック位置に保持されている。
さらに、このロック状態では、左関節器10Aにおいて、第2アーム21に設けられた第1ストッパ部27(図6B参照)に第1アーム11が当接しており、これにより、第1アーム11は第1アーム11の展開角度θが約180°よりも増加する方向(Y方向)に回転しないよう規制されており、また右関節器60においてもこれと同様の機構により第1アーム11の展開角度θが約180°よりも増加する方向(Y方向)に回転しないよう規制されている。
背フレーム3の上背フレーム部4を使用位置(図1)から倒伏位置(図2)へ移動させる場合には、図5に示すように、左関節器10Aの第1アーム11の回転のロックを解除するロック解除操作を行う。
すなわち、同図に示すように、ロック解除操作者(例:座椅子1Aに対する梱包作業者、収納作業者、保管作業者)の一方の手指(図示せず)等によって背凭れ部3A用クッション体7の左外側から枢軸ピン30の先端部35を圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して右方向(矢印Mの方向)に押して枢軸ピン30をロック位置からロック解除位置にスライド移動させることにより、枢軸ピン30の非円形状部32を第1係合孔16から抜出させる。これにより、第1アーム11が枢軸ピン30に対して回転可能になり、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックが解除される。
また、ロック位置からロック解除位置への枢軸ピン30の移動により、圧縮コイルバネ39が圧縮されて圧縮コイルバネ39の付勢力が増加する。
このロック解除操作において、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したときには圧縮コイルバネ39は第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aとバネ止め部材38との間に挟まれることで密着状態(即ち、圧縮コイルバネ39のコイル部同士が密着した状態)になり、これにより枢軸ピン30の移動が停止される。そのため、枢軸ピン30はロック解除位置に停止される。
そして、ロック解除操作者の一方の手指で枢軸ピン30の先端部35を押して枢軸ピン30をロック解除位置に配置させた状態のままで、ロック解除操作者の他方の手で背凭れ部3Aの上部を掴んで上背フレーム部4を使用位置から倒伏位置側へ移動させる。上背フレーム部4のこの移動動作により、図7A〜7Cに示すように、左関節器10Aの第1アーム11は枢軸ピン30(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)を中心に第2アーム21及び枢軸ピン30に対してX方向に回転するとともに、右関節器60の第1アーム61も同様に回転する。
このように左関節器10Aの第1アーム11がX方向に回転することにより、図7Cに示すように、枢軸ピン30の非円形状部32(詳述するとロック歯部32a)の端面32bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに当接して当該右外側面14aに係止されるとともに、非円形状部32の端面32bが当該右外側面14aに当接することで枢軸ピン30は圧縮コイルバネ39の付勢力に抗してロック解除位置に保持される。したがって、上背フレーム部4を使用位置から倒伏位置側へ移動させることにより、ロック解除操作者は手指を枢軸ピン30の先端部35から離しても枢軸ピン30はロック解除位置に保持される。
使用位置から倒伏位置側へ移動した上背フレーム部4が倒伏位置に到達すると、図2及び3に示すように、背凭れ部3Aにおける上背フレーム部4の対応部分が座部2Aの座面2Aaに当接して上背フレーム部4の移動が停止される。これにより、上背フレーム部4が座フレーム2に対して略平行に配置されるとともに、背凭れ部3Aにおける上背フレーム部4の対応部分が座部2A上に座部2Aと略平行に重なるように座椅子1Aが二折り状に折り畳まれてコンパクトな状態になる。
この折畳み状態においても、図8A及び8Bに示すように、依然として左関節器10Aの枢軸ピン30の非円形状部32の端面32bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに当接して当該右外側面14aに係止されており、したがって枢軸ピン30はロック解除位置に保持されている。
座椅子1Aをその製造工場から出荷するために搬送する際には、座椅子1Aはこのようなコンパクトな折畳み状態にされてから図3に示すように梱包箱80内に入れられて梱包される。さらに、座椅子1Aについて保管や収納等を行う場合にも、座椅子1Aをこのような折畳み状態にして保管、収納することができる。
なお、図8Aに示すように、左関節器10Aの第2アーム21には第2ストッパ部28が設けられている。第2ストッパ部28は、使用位置から移動してきた上背フレーム部4が倒伏位置を超えて下方向(X方向)に過度に移動したときに第1アーム11が当接して上背フレーム部4(第1アーム11)の移動を停止させるものである。右関節器60においてもこれと同様の第2ストッパ部が第2アーム62に設けられている。
座椅子1Aを使用する場合には、まず図3に示した梱包箱80内から折畳み状態の座椅子1Aを取り出し、そして座椅子1Aの背凭れ部3Aの上部を掴んで背フレーム3の上背フレーム部4を倒伏位置から使用位置側へ移動させる。このとき、左関節器10Aの枢軸ピン30は上述のようにロック解除位置に保持されているので(図8B参照)、上背フレーム部4は移動可能である。
上背フレーム部4の倒伏位置から使用位置への移動動作により、図7A〜7Cに示すように、左関節器10Aの第1アーム11は枢軸ピン30(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)を中心に第2アーム11及び枢軸ピン30に対してY方向に回転するとともに、右関節器60の第1アーム61も同様に回転する。
そして、図1に示すように上背フレーム部4が使用位置に移動したとき、左関節器10Aの枢軸ピン30の非円形状部32の端面32bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに当接しなくなり(図7C参照)、すなわち非円形状部32の端面32bの右外側面14aへの係止が解除されて枢軸ピン30が圧縮コイルバネ39の付勢力によって自動的にロック解除位置からロック位置へ移動する。これにより、図4A〜4Cに示すように、枢軸ピン30の非円形状部32が第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16に嵌合されて第1アーム11の回転がロックされる。その結果、第2アーム21に対する第1アーム11の展開角度θが約180°に保持(固定)される。すなわち、上背フレーム部4が下背フレーム部5に対して回転しないように使用位置に固定される。
上記第1実施形態の座椅子1Aには次の利点がある。
座椅子1Aの左関節器10Aは、背フレーム3の上背フレーム部4が下背フレーム部5に対して倒伏位置から使用位置へと移動可能になるように第1アーム11が第2アーム21に相対的に回転可能に枢着されている。したがって、座椅子1Aの搬送時などにおいて、背フレーム3の上背フレーム部4を倒伏位置に配置することにより、図2及び3に示すように座椅子1Aをコンパクトな折畳み状態にすることができる。そのため、座椅子1Aの搬送コストの削減を図り得る。さらに、座椅子1Aを保管や収納する際にも、座椅子1Aをこのような折畳み状態にして保管や収納できるから、座椅子1Aの保管スペースや収納スペースについても省スペース化を図ることができる。
さらに、左関節器10Aはロック機構50を備えているので、座椅子1Aを使用する時には、上背フレーム部4を倒伏位置から使用位置に移動させてロック機構50によって第2アーム21の回転をロックすることにより、上背フレーム部4を使用位置に固定することができる。
しかも、上背フレーム部4を使用位置に固定できることから、座椅子1Aには更に次のような利点がある。
すなわち、図1に示すように、座部2A(座フレーム2)に対する背フレーム3(背凭れ部3A)の展開角度αを両角度調節器9、9により調節する際において、もし背フレーム3の上背フレーム部4が使用位置に固定されていない場合には、背凭れ部3Aの上部を掴んでその調節作業を行うときに上背フレーム部4が倒伏位置側へ不慮に移動してしまい調節作業を行うことが困難となる。その上、上背フレーム部4が固定されていない場合には、背フレーム3を展開角度αに規制している両角度調節器9、9の規制段が左角度調節器9と右角度調節器9とで相異し易くなる。もし相異する場合には、座椅子1A上に着座している着座者の荷重が両角度調節器9、9のうち一方の角度調節器9だけに過大に加わり、その結果、当該一方の角度調節器9が故障し易くなる。
これに対し、本第1実施形態の座椅子1Aは、上背フレーム部4を使用位置に固定できるので、背フレーム3(背凭れ部3A)の展開角度αを調節する際には背凭れ部3Aの上部を掴んでその調節作業を行っても上述のような不具合の発生を抑制することができる。
さらに、左関節器10Aはロック解除機構51を備えているので、上背フレーム部4を使用位置に固定した後でも、第1アーム11の回転のロックを解除することにより、上背フレーム部4を倒伏位置に配置させることができて座椅子1Aを再度、折畳み状態にすることができる。
さらに、ロック機構50は、枢軸ピン30がロック解除位置からロック位置に移動することにより第1アーム11の回転がロックされるように構成されており、ロック解除機構51は、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動することにより第1アーム11の回転のロックが解除されるように構成されている。これにより、ロック機構50及びロック解除機構51の簡素化を図ることができるし、簡単な操作でロック操作及びロック解除操作を行い得る。
さらに、ロック機構50は、枢軸ピン30の非円形状部32が第1アーム11の第1係合孔16に嵌合されることで第1アーム11の回転がロックされるように構成されており、ロック解除機構51は、枢軸ピン30の非円形状部32が第1係合孔16から抜出されることで第1アーム11の回転のロックが解除されるように構成されている。これにより、ロック機構50及びロック解除機構51の簡素化を確実に図ることができる。
さらに、枢軸ピン30の非円形状部32の断面形状が略長方形状であるから、使用位置からの上背フレーム部4の座部2A側への可動範囲を180°付近まで設定することができる。これにより、座椅子1Aを確実に上述した折畳み状態にすることができる。
さらに、枢軸ピン30は、非円形状部32が第2係合孔26に嵌合状態で挿通されていることにより第2アーム21に対して回転不能になるように第2アーム21(詳述すると第2アーム21の第2係合孔26)に取り付けられているので、枢軸ピン30と第2アーム21との取付け構造の簡素化を図ることができる。
さらに、ロック機構50は、上背フレーム部4が使用位置から倒伏位置側に移動されたときから倒伏位置に配置されたときまで、枢軸ピン30の非円形状部32の端面23bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに係止されることで枢軸ピン30が付勢部材としての圧縮コイルバネ39の付勢力に抗してロック解除位置に保持されるとともに、倒伏位置から移動してきた上背フレーム部4が使用位置に配置されたとき、枢軸ピン30の非円形状部32の端面32bの、第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aへの係止が解除されることで枢軸ピン30が圧縮コイルバネ39の付勢力によりロック解除位置からロック位置に移動するように構成されている。これにより、ロック操作を簡単に行うことができる。
さらに、ロック解除機構51は、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したとき枢軸ピン30の移動が停止されるように構成されている。これにより、枢軸ピン30をロック解除位置に確実に停止させることができる。
さらに、圧縮コイルバネ39の付勢力によって枢軸ピン30がロック解除位置からロック位置へ移動されるため、ロック操作を更に簡単に行うことができる。
しかも、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したとき圧縮コイルバネ39が密着状態になることにより枢軸ピン30の移動が停止されるので、圧縮コイルバネ39によって枢軸ピン30をロック解除位置に確実に停止させることができる。
このように圧縮コイルバネ39は、枢軸ピン30をロック解除位置からロック位置へと移動させる付勢部材と、枢軸ピン30の移動を停止させる移動停止部材との二つの役割を有している。これにより、左関節器10Aの部品点数を削減することができる。
さらに、ロック解除機構51は、枢軸ピン30の先端部(一端部)35が押されることにより第1アーム11の回転のロックが解除されるように構成されている。これにより、ロック解除操作を更に容易に行うことができる。
図9A〜10は、本発明の第2実施形態を説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態の座椅子1Aの左関節器10Aの要素と同等の要素に同じ符号が付されている。
本第2実施形態に係る座椅子の左関節器10Bでは、図9A及び9Bに示すように、枢軸ピン30の先端部(一端部)35にキャップ状(詳述すると有底円筒状)のカバー40が枢軸ピン30の先端部35及びバネ止め部材38をその外側から覆う状態に取り付けられている。さらに、カバー49によって圧縮コイルバネ39の半分以上がその外側から覆われている。カバー40は合成樹脂製である。
また、図9Bに示すようにカバー40の内周面にはその周方向に間隔をおいて複数の抜止め用凸部40bが形成されている。そして、これらの凸部40bとカバー40の底面との間にバネ止め部材38が挟着されており、これによりカバー40が枢軸ピン30の先端部35に固定されて取り付けられている。
左関節器10Bのその他の構成は上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。
本第2実施形態の座椅子の左関節器10Bでは、図9A及び9Bの状態の左関節器10Bにおいて、ロック解除操作者が手指で枢軸ピン30の先端部35をカバー40の外側から圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して右方向(矢印Mの方向、図10参照)に押して枢軸ピン30をロック位置からロック解除位置に移動させることにより、図10に示すように、枢軸ピン30の非円形状部32を第1アーム11の第1係合孔16から抜出させる。これにより、第1アーム11が枢軸ピン30(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)に対して回転可能になり、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックが解除される。
また、ロック位置からロック解除位置への枢軸ピン30の移動により、圧縮コイルバネ39が圧縮されて圧縮コイルバネ39の付勢力が増加する。
このロック解除操作において、図10に示すように、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したときにはカバー40の開口端部40aが第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aに当接し、これにより枢軸ピン30の移動が停止される。しかも、圧縮コイルバネ39は密着状態になり、これによっても枢軸ピン30の移動が停止される。そのため、枢軸ピン30はロック解除位置に確実に停止される。
左関節器10Bのその他のロック機構50及びロック解除機構51の構成は、上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。
本第2実施形態の座椅子の左関節器10Bでは、枢軸ピン30の先端部35にカバー40が先端部35及びバネ止め部材38を覆う状態に取り付けられているので、ロック解除操作者が手指等で枢軸ピン30の先端部35を押すときに感じる痛みを緩和することができるし、枢軸ピン30の先端部35と背凭れ部3A用クッション体7(図1参照)との接触によるクッション体7の損傷を抑制することができる。
さらに、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したときカバー40の開口端部40aが第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aに当接することにより枢軸ピン30の移動が停止されるので、カバー40によって枢軸ピン30をロック解除位置に確実に停止させることができる。
このようにカバー40は、ロック解除操作者の痛みを緩和する痛み緩和部材と、クッション体7の損傷を抑制する損傷抑制部材と、枢軸ピン30の移動を停止させる移動停止部材との三つの役割を有している。これにより、左関節器10Bの部品点数を削減することができる。
図11A〜12は、本発明の第3実施形態を説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態の座椅子の左関節器10Aの要素と同等の要素に同じ符号が付されている。
本第3実施形態の座椅子の左関節器10Cでは、図11A及び11Bに示すように、枢軸ピン30の先端部(一端部)35が枢軸ピン30の突出部34よりも小径の雄ねじ部で形成されている。
「41」は押しボタン部材である。押しボタン部材41は合成樹脂製であり、その形状は略円柱状乃至略半球状である。さらに、押しボタン部材41には金属製ナット42が固定状態に埋設されている。そして、枢軸ピン30の先端部(雄ねじ部)35がバネ止め部材38内に挿通されるとともに先端部35にナット42が螺着されることにより、枢軸ピン30の先端部35に押しボタン部材41が先端部35を覆う状態に取り付けられている。さらに、枢軸ピン30の突出部34の先端部35側の端部に形成された段部34aと押しボタン部材41(詳述するとナット42)との間にバネ止め部材38が挟着固定されている。
さらに、枢軸ピン30の突出部34の外周面と突出部34に外挿された圧縮コイルバネ39との間の隙間であって且つ第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと押しボタン部材41(詳述するとバネ止め部材38)との間に、円筒リング状の移動停止部材43が突出部34に対して外挿状且つ遊挿状に配置されている。移動停止部材43は、高い剛性を有する金属製のものであり、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したとき枢軸ピン30の移動を停止するものである。
左関節器10Cのその他の構成は上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。
本第3実施形態の座椅子の左関節器10Cでは、図11A及び11Bの状態の左関節器10Cにおいて、ロック解除操作者が手指で枢軸ピン30の先端部35の押しボタン部材41を圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して右方向(矢印Mの方向、図12参照)に押して枢軸ピン30をロック位置からロック解除位置に移動させることにより、図12に示すように、枢軸ピン30の非円形状部32を第1アーム11の第1係合孔16から抜出させる。これにより、第1アーム11が枢軸ピン30(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)に対して回転可能になり、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックが解除される。
また、ロック位置からロック解除位置への枢軸ピン30の移動により、圧縮コイルバネ39が圧縮されて圧縮コイルバネ39の付勢力が増加する。
このロック解除操作において、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したときに第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと押しボタン部材41(詳述するとバネ止め部材38)との間に移動停止部材43が挟まれ、これにより枢軸ピン30の移動が停止される。しかも、このとき圧縮コイルバネ39は密着状態になり、これによっても枢軸ピン30の移動が停止される。そのため、枢軸ピン30はロック解除位置に確実に停止される。
左関節器10Cのその他のロック機構50及びロック解除機構51の構成は、上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。
本第3実施形態の座椅子の左関節器10Cでは、枢軸ピン30の先端部35に押しボタン部材41が先端部35を覆う状態に取り付けられているので、ロック解除操作者が手指等で枢軸ピン30の先端部35を押すときに感じる痛みを緩和することができるし、枢軸ピン30の先端部35と背凭れ部3A用クッション体7(図1参照)との接触によるクッション体7の損傷を抑制することができる。
さらに、枢軸ピン30がロック位置からロック解除位置に移動したとき第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと押しボタン部材41(バネ止め部材38)との間に移動停止部材43が挟まれることにより、枢軸ピン30の移動が停止されるので、移動停止部材43によって枢軸ピン30をロック解除位置に確実に停止させることができる。
さらに、バネ止め部材38は枢軸ピン30の先端部35にカシメ固定されておらず、枢軸ピン30の突出部34の段部34aと押しボタン部材41との間に挟着されることにより固定されているので、バネ止め部材38の固定作業を容易に行うことができる。
図13は、本発明の第4実施形態を説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態の座椅子の左関節器10Aの要素と同等の要素に同じ符号が付されている。
本第4実施形態の座椅子の左関節器10Dでは、枢軸ピン30がロック位置に配置された状態において、第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16に対応する枢軸ピン30の軸部31の対応部分である、枢軸ピン30の軸部31の基端部側(頭部33側)には、その外周面の周方向の一部に局部的に径方向外側に膨出したロック歯部32aが一体に形成されており、これにより断面非円形の非円形状部32が形成されている。
第1係合孔16の断面形状は、枢軸ピン30の非円形状部32の断面形状に対応した形状に形成されており、詳述すると非円形状部32の断面形状と同形及び同寸に形成されている。
第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26の断面形状は、第1係合孔16の断面形状と同形及び同寸に形成されている。
左関節器10Dのその他の構成は上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。また、左関節器10Dのロック機構50及びロック解除機構51の構成は、上記第1実施形態の左関節器10Aと同じである。
図14A〜17Bは、本発明の第5実施形態を説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態の座椅子の左関節器10Aの要素と同等の要素に同じ符号が付されている。以下では、本第5実施形態の座椅子の左関節器10Eの構成を、上記第1実施形態の座椅子の左関節器10Aとは相異する点を中心に以下に説明する。
本第5実施形態の座椅子の左関節器10Eでは、図14A、14B及び16Aに示すように、枢軸ピン30Eは、第2アーム21の右連結板部24の右外側からではなく第2アーム21の左連結板部23の左外側から、第2アーム21の左連結板部23の第2軸孔25と第1アーム11の左連結板部13の第1軸孔15と第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16と第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26とに順次連通して且つ枢軸ピン30Eの軸線方向に沿ってスライド移動可能に挿通されている。
図16A及び16Bにおいて、「55」は、枢軸ピン30Eとは別体に形成された、ロック歯部32a、32a付きストッパ部材である。このストッパ部材55は、枢軸ピン30Eの軸部31の先端部35が挿通される断面円形状の挿通孔56を有する環状のものであり、詳述すると円環板状のものである。そして、二つのロック歯部32a、32aが互いに離間して対向状に配置された状態にしてストッパ部材55に一体に形成されている。ストッパ部材55は金属製であり、詳述すると金属焼結品からなるものである。
そして、図14Bに示すように、枢軸ピン30Eの軸部31の先端部35がストッパ部材55の挿通孔56に挿通されるとともに、この状態で先端部35がカシメられることにより、枢軸ピン30Eの軸部31の先端部35にストッパ部材55が枢軸ピン30Eの軸線方向に移動不能に且つ枢軸ピン30Eの軸部31に対して回転不能に固着(詳述するとカシメ固定)されている。これにより、枢軸ピン30Eの軸部31の所定部位の外周面にロック歯部32a、32aが固定状態に配置されて枢軸ピン30Eの軸部31の所定部位に断面非円形状の非円形状部32が形成されている。
第1係合孔16の断面形状は、図16Aに示すように、枢軸ピン30Eの非円形状部32の断面形状に対応した形状に形成されており、詳述すると非円形状部32の断面形状と同形及び同寸に形成されている。
第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26の断面形状は、第1係合孔16の断面形状と同形及び同寸に形成されている。
図14A及び14Bに示すように、枢軸ピン30Eがロック位置に配置されている状態では、枢軸ピン30Eの軸部31の基端部(頭部33)側は、第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aよりも左外側に突出して配置されている。そして、当該左外側面23aよりも左外側に突出した枢軸ピン30Eの突出部34に付勢部材としての圧縮コイルバネ39が外挿されるとともに、この状態で第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと枢軸ピン30Eの頭部33との間に圧縮状態に配置されている。すなわち、枢軸ピン30Eの頭部33はバネ止め部として機能している。
さらに、枢軸ピン30Eがロック位置に配置されている状態では、ストッパ部材55(詳述すると、ストッパ部材55における両ロック歯部32a、32a間の部分55a、55a)は第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接している(図14A、図16B参照)。これにより、枢軸ピン30Eがロック解除位置(図15)からロック位置(図14B)に移動したときストッパ部材55が第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接することで枢軸ピン30Eの移動が停止されるようになっており、すなわちロック解除位置からロック位置へ移動してきた枢軸ピン30Eがロック位置に停止されるようになっている。
さらに、枢軸ピン30Eがロック位置に配置されている状態では、枢軸ピン30Eの非円形状部32は第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16に嵌合(係合)された状態に挿通されており、更に、第2アーム21の右連結板部24の第2係合孔26に嵌合(係合)された状態に挿通されている。したがって、枢軸ピン30Eは第2アーム21に対して回転不能であり且つ第1アーム11は枢軸ピン30(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)に対して回転不能になっている。よって、第2アーム21に対する第1アーム11の回転はロックされている。
さらに、このロック状態では、枢軸ピン30Eは、圧縮コイルバネ39の付勢力に抗してストッパ部材55が第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接することによってロック位置に保持されている。
図15に示すように、枢軸ピン30Eがロック解除位置に配置されている状態では、枢軸ピン30Eの非円形状部32は第1係合孔16から第2係合孔26側へ抜出されており、これにより、第1係合孔16は枢軸ピン30E(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)に対して回転可能になっており即ち軸孔として機能する。一方、枢軸ピン30Eの非円形状部32は第2係合孔26からは抜出されておらず即ち第2係合孔26に嵌合されている。したがって、枢軸ピン30Eは依然として第2アーム21に対して回転不能であり且つ第1アーム11は枢軸ピン30E(枢軸ピン30Eの軸部31)に対して回転可能になっている。よって、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックは解除されている。
背フレーム3の上背フレーム部4を使用位置(図1)から倒伏位置(図2)へ移動させる場合には、図15に示すように、枢軸ピン30Eの基端部である頭部33を圧縮コイルバネ39の付勢力に抗して右方向(矢印Mの方向)に押して枢軸ピン30Eをロック位置からロック解除位置に移動させることにより、枢軸ピン30Eの非円形状部32を第1係合孔16から抜出させる。これにより、第1アーム11が枢軸ピン30E(詳述すると枢軸ピン30の軸部31)に対して回転可能になり、第2アーム21に対する第1アーム11の回転のロックが解除される。
また、ロック位置からロック解除位置への枢軸ピン30Eの移動により、圧縮コイルバネ39が圧縮されて圧縮コイルバネ39の付勢力が増加する。
このロック解除操作において、枢軸ピン30Eがロック位置からロック解除位置に移動したときには圧縮コイルバネ39は第2アーム21の左連結板部23の左外側面23aと枢軸ピン30Eの頭部33との間に挟まれることで密着状態(即ち圧縮コイルバネ39のコイル部同士が密着した状態)になり、これにより枢軸ピン30Eの移動が停止される。そのため、枢軸ピン30Eはロック解除位置に停止される。
そして、枢軸ピン30Eの頭部33を押して枢軸ピン30Eをロック解除位置に配置させた状態のままで、上背フレーム部4を使用位置から倒伏位置側へ移動させる。上背フレーム部4のこの移動動作により、図17A及び17Bに示すように、左関節器10Aの第1アーム11は枢軸ピン30E(詳述すると枢軸ピン30Eの軸部31)を中心に第2アーム21及び枢軸ピン30Eに対してX方向に回転する。
このように第1アーム11がX方向に回転することにより、図17Bに示すように、枢軸ピン30Eの非円形状部32(詳述するとロック歯部32a)の端面32bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに当接して当該右外側面14aに係止され、これにより、枢軸ピン30Eは圧縮コイルバネ39の付勢力に抗してロック解除位置に保持される。したがって、上背フレーム部4を使用位置から倒伏位置側へ移動させることにより、枢軸ピン30Eはロック解除位置に保持される。
背フレーム3の上背フレーム部4を倒伏位置(図2)から使用位置(図1)へ移動させる場合において、左関節器10Aの枢軸ピン30Eは上述のようにロック解除位置に保持されているので、上背フレーム部4は移動可能である。
上背フレーム部4の倒伏位置から使用位置への移動動作により、左関節器10Aの第1アーム11は枢軸ピン30E(詳述すると枢軸ピン30Eの軸部31)を中心に第2アーム11及び枢軸ピン30Eに対してY方向に回転する。そして、上背フレーム部4が使用位置に移動したとき、左関節器10Aの枢軸ピン30Eの非円形状部32の端面32bが第1アーム11の右連結板部14の右外側面14aに当接しなくなり、すなわち非円形状部32の端面32bの右外側面14aへの係止が解除されて枢軸ピン30Eが圧縮コイルバネ39の付勢力によって自動的にロック解除位置からロック位置へ移動する。これにより、図14Bに示すように、枢軸ピン30Eの非円形状部32が第1アーム11の右連結板部14の第1係合孔16に嵌合されて第1アーム11の回転がロックされる。その結果、第2アーム21に対する第1アーム11の展開角度θが約180°に保持(固定)される。すなわち、上背フレーム部4が下背フレーム部5に対して回転しないように使用位置に固定される。
本第5実施形態の座椅子の左関節器10Eでは、枢軸ピン30Eの軸部31の軸線方向の所定部位の外周面に、枢軸ピン30Eとは別体に形成されたロック歯部32aが固定状態に配置されることにより枢軸ピン30Eの軸部31の所定部位に非円形状部32が形成されているので、枢軸ピン30Eの軸部31の所定部位に非円形状部32を容易に形成することができる。
さらに、ロック歯部32aがストッパ部材55に一体に形成されているので、ロック歯部32aを枢軸ピン30Eの軸部31に容易に取り付けることができる。
さらに、枢軸ピン30Eがロック解除位置からロック位置に移動したときストッパ部材55が第2アーム21の右連結板部24の右外側面24aに当接することで枢軸ピン30Eの移動が停止されるので、枢軸ピン30Eをロック位置に確実に停止させることができる。
図18は、本発明の第6実施形態を説明する図である。これらの図には、上記第1実施形態の座椅子1Aの要素と同等の要素に同じ符号が付されている。
本第6実施形態の座椅子1Bは、左右両角度調節器(図1参照:9、9)を備えていない。また、座部2Aの座フレーム2の左右両側枠部2aの両後端部2aa側が局部的に立上り状に屈曲されることにより、当該立上り状に屈曲した部位からなる、背フレーム3の下背フレーム部5の左右両下側枠部5aが形成されている。そして、上背フレーム部4の左上側枠部4aの下端部と下背フレーム部5の左下側枠部5aの上端部とが上記第1実施形態で示した左関節器10Aを介して連結されるとともに、上背フレーム部4の右上側枠部の下端部と下背フレーム部5の右下側枠部の上端部とが右関節器(図示せず)を介して連結されている。
左関節器10Aは上述したロック機構50及びロック解除機構51を備えたものである。右関節器は上述したロック機構50及びロック解除機構51を備えていないものであり、例えば上記第1実施形態で示した右関節器60(図1及び2参照)が用いられる。
なお本発明では、左関節器10Aは上記第1実施形態で示したものに限定されるものではなく、その他に例えば上記第2〜第5実施形態で示した左関節器10B〜10Eのいずれかであっても良い。
図19は、本発明の第7実施形態を説明する図である。
本第7実施形態に係る家具は折畳み式のソファー70である。ソファー70は、座部72と、座部72の左右両端部にそれぞれ立上り状に設けられた立上り部としての左右一対の肘掛け部74、74と、座部72の後端部に立上り状に設けられた立上り部としての背凭れ部73とを具備している。
各肘掛け部74は立上りフレームとして肘掛けフレーム75を有している。肘掛けフレーム75は、その高さ方向の中間部で上肘掛けフレーム部76と下肘掛けフレーム部77とに分割されている。
上肘掛けフレーム部76と下肘掛けフレーム部77にはそれぞれクッション体(図示せず)が各フレーム部の全体を覆う状態に取り付けられている。両クッション体は互いに一体に繋がって形成されている。そして、上肘掛けフレーム部76が立上り状の下肘掛けフレーム部77に対して座部72側へ倒伏した倒伏位置から上肘掛けフレーム部76が肘掛け部74として使用される時に配置される使用位置(二点鎖線で示す)へと移動可能になるように、上肘掛けフレーム部76と下肘掛けフレーム部77が一対の関節器78、78を介して連結されている。
両関節器78、78のうち少なくとも一方は上述したロック機構50及びロック解除機構51を備えたものである。
なお本発明では、本第7実施形態のソファー70は、座部72に対する背凭れ部73の展開角度が180°になるように背凭れ部73が座部72の後方へ水平状に倒れうるように構成されていても良いし、又は/及び、背凭れ部73の背フレームがその高さ方向の中間部で上背フレーム部と下背フレーム部とに分割されるとともに、上背フレーム部と下背フレーム部が上述したロック機構50及びロック解除機構51を備えた関節器を介して連結されていても良い。
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に示したものに限定されるものではない。
また、これらの実施形態では、左右両関節器10A〜10E、60のうち左関節器10A〜10Eがロック機構50及びロック解除機構51を備えているが、本発明では、その他に例えば、右関節器60がロック機構50及びロック解除機構51を備えていても良いし、あるいは両関節器のそれぞれがロック機構50及びロック解除機構51を備えていることを排除するものではない。
また、これらの実施形態に示すように関節器10A〜10Eの第1及び第2アーム11、21のうち第1アーム11が背フレーム3の上背フレーム部4に取り付けられるとともに、第2アーム21が下背フレーム部5に取り付けられていることが、上背フレーム部4の倒伏位置から使用位置への移動動作によっても枢軸ピン30は回転しないという点で特に望ましいが、本発明では、その他に例えば、関節器10A〜10Eの第1アーム11が下背フレーム部5に取り付けられるとともに、第2アーム21が上背フレーム部4に取り付けられていることを排除するものではない。
また、本発明に係る家具は、これらの実施形態で示した技術的特徴を二つ以上組み合わせて構成されていても良い。
さらに、本発明に係る家具は、座椅子及びソファーに限定されるものではなく、その他に例えば、座椅子以外のリクライニング椅子であっても良いし、リクライニング椅子以外の椅子であっても良い。さらに本発明では、椅子が筋力向上のためのトレーニングやフィットネスのためのトレーニング等の様々なトレーニングの際に用いられる椅子であることを排除するものではないし、椅子以外の家具を排除するものでもない。