図1〜3は、それぞれ、実施の形態に係るワイヤーハーネス用部材セットが備える保持部材1を示す正面図、側面図及び斜視図である。図2は、図1に示される保持部材1を紙面左側から見た際の側面図である。保持部材1は、複数の電線から成る電線束を有するワイヤーハーネスを保持する部材であって、例えば樹脂で形成されている。
図1〜3に示されるように、保持部材1は、ワイヤーハーネスを保持する保持部100と、後述する連結部材2及びクリップ部材3が取り付けられる取付部110とを備えている。保持部100と取付部110とは一体成形されている。
保持部100は、ワイヤーハーネスに巻き付けられるバンド部101と、バンド部101が係止するバンド係止部105とを備えている。バンド部101は、バンド係止部105から延びており、その一端が自由端となっており、ワイヤーハーネスに巻き付けられて当該ワイヤーハーネスを保持する。バンド部101の一方の主面102には、当該バンド部101の長手方向に沿って複数の係止溝104が設けられている。バンド部101は、一方の主面102を外側にして、言い換えれば当該主面102とは反対側の主面103を内側にして、ワイヤーハーネスに対して巻き付けられる。
バンド係止部105は、ワイヤーハーネスに対して巻き付けられたバンド部101と係止して、その状態を維持する。バンド係止部105には、バンド部101が挿通される挿通穴106が設けられている。この挿通穴106には、バンド部101の係止溝104と係止する係止片107が設けられている。バンド部101が、その先端からバンド係止部105の挿通穴106に挿通されると、バンド係止部105の係止片107は、バンド部101の複数の係止溝104のうちの一つと係止して、バンド部101が挿通穴106から抜けないようになっている。
取付部110は、バンド係止部105上に設けられており、バンド部101とは反対側でバンド係止部105と繋がっている。バンド部101は、バンド係止部105から、取付部110とは反対側に向かって延びている。
取付部110は、例えば円柱状を成している。取付部110の表面は、互いに対向する二つの円形表面120,121と、当該二つの円形表面120,121を繋ぐ円柱面122とで構成されている。取付部110の中央部には、連結部材2及びクリップ部材3が挿入される挿入穴111が設けられている。挿入穴111は、例えば四角柱形状を成しており、取付部110の一方の円形表面120の中央部に向かって開口している。したがって、連結部材2及びクリップ部材3は、円形表面120側から挿入穴111に挿入される。取付部110の他方の円形表面121はバンド係止部105と繋がっている。なお、後述するように、連結部材2は挿入穴111に着脱可能に挿入される。つまり、連結部材2は挿入穴111に対して抜き差し能となっている。
挿入穴111の内面は、互いに対向する一対の側面112aと、当該一対の側面112aの対向方向に対して垂直な方向で互いに対向する一対の側面112bと、底面112dとで構成されている。一対の側面112aには、一対の第1係合部113がそれぞれ設けられている。一対の第1係合部113は、一対の側面112aに垂直な方向で互いに対向している。また一対の側面112aには、一対の第2係合部114がそれぞれ設けられている。一対の第2係合部114は、一対の側面112aに垂直な方向で互いに対向している。第1係合部113は例えば係合突起部であって、第2係合部114は例えば係合凹部である。以後、第1係合部113を「第1係合突起部113」と呼び、第2係合部114を「第2係合凹部114」と呼ぶことがある。
図4,5は保持部材1のうち取付部110だけの断面構造を示す図である。図4には、側面112aに垂直な面での取付部110の断面構造が示されている。図5には、側面112bに垂直な面での取付部110の断面構造が示されている。
第1係合突起部113は、側面112aにおける、挿入穴111の深さ方向の略中央部に設けられている。第1係合突起部113の表面には、側面112aに対して傾斜した第1傾斜面113a及び第2傾斜面113bが設けられている。第1傾斜面113aは、側面112aから一方の円形表面121側(底面112d側)に斜め方向に延びている。第2傾斜面113bは、側面112aから他方の円形表面120側(挿入穴111の挿入口側)に斜め方向に延びている。第1傾斜面113aの側面112aとは反対側の端辺と、第2傾斜面113bの側面112aとは反対側の端辺とは繋がっている。これにより、第1係合突起部113における、側面112aに垂直な面での断面構造は三角形となっている。
側面112aにおける、第1係合突起部113と繋がった領域と、第1傾斜面113aとが成す角度は、当該領域と第2傾斜面113bとが成す角度よりも小さくなっている。したがって、挿入穴111への連結部材2(クリップ部材3)の挿入方向(図4では上側から下側に向かう方向)から第1傾斜面113aを見ると、当該第1傾斜面113aは比較的緩やかな斜面となっている。一方で、挿入穴111からの連結部材2の抜去方向(図4では下側から上側に向かう方向)から第2傾斜面113bを見ると、当該第2傾斜面113bは比較的急な斜面となっている。後述するように、第1係合突起部113は、挿入穴111に挿入される連結部材2が有する係合部と係合する。
第2係合凹部114は、第1係合突起部113よりも底面112d側(奥側)に設けられている。具体的には、第2係合凹部114は、側面112aにおける、挿入穴111の深さ方向に沿った両端部のうちの底面112d側(奥側)の端部に設けられている。第2係合凹部114は四角柱形状を成している。第2係合凹部114は、後述するように、挿入穴111に挿入されるクリップ部材3が有する係合部と係合する。
図6は、実施の形態に係るワイヤーハーネス用部材セットを備える連結部材2を示す斜視図である。連結部材2は、二つの保持部材1を互いに連結する部材であって、例えば樹脂で形成されている。連結部材2は、保持部材1の取付部110に対して着脱可能となっている。
図6に示されるように、連結部材2は、保持部材1の取付部110の挿入穴111に挿入される挿入部200と、一対の第1係合部210と、一対の第2係合部220とを備えている。挿入部200は、例えば、棒状部分であって、四角柱形状を成している。挿入部200が、その長手方向の一方の端部205からある保持部材1の挿入穴111に挿入され、その長手方向の他方の端部206から別の保持部材1の挿入穴111に挿入されることによって、当該ある保持部材1と当該別の保持部材1とは互いに連結される。挿入部200は挿入穴111に対して着脱可能に挿入される。挿入部200の表面は、互いに対向する一対の側面201と、当該一対の側面201の対向方向に垂直な方向で互いに対向する一対の側面202と、当該挿入部200の長手方向で対向する一対の端面203とで構成されている。
一対の第1係合部210は、一対の側面201に垂直な方向で互いに対向するように当該一対の側面201にそれぞれ設けられている。一対の第2係合部220は、一対の側面201に垂直な方向で互いに対向するように当該一対の側面201にそれぞれ設けられている。第1係合部210は、挿入部200の一方の端部205に設けられている。具体的には、第1係合部210は、側面201における、挿入部200の長手方向の一方の端部に設けられている。第2係合部220は、挿入部200の他方の端部206に設けられている。具体的には、第2係合部220は、側面201における、挿入部200の長手方向の他方の端部に設けられている。第1係合部210は例えば係合突起部であって、第2係合部220は例えば係合突起部である。第1係合部210及び第2係合部220は、保持部材1の第1係合部113と同様の形状を有している。以後、第1係合部210を「第1係合突起部210」と呼び、第2係合部220を「第2係合突起部220」と呼ぶことがある。
連結部材2では、一対の第1係合突起部210の構造が、挿入部200の長さ方向を対称軸とした軸対称となっている。同様に、一対の第2係合突起部220の構造が、挿入部200の長さ方向を対称軸とした軸対称となっている。また、一対の第1係合突起部210の構造と、一対の第2係合突起部220の構造とが、一対の側面201に垂直な方向を対称軸とした軸対称となっている。第1係合突起部210の高さ(側面201からの突出距離)と、第2係合突起部220の高さ(側面201からの突出距離)とは、保持部材1の第1係合突起部113の高さ(側面112aからの突出距離)と一致している。
第1係合突起部210の表面には、側面201に対して傾斜する第1傾斜面210a及び第2傾斜面210bが設けられている。第1傾斜面210aは、側面201から端部206側に斜め方向に延びている。第2傾斜面210bは、側面201から端部205側に斜め方向に延びている。第1傾斜面210aの側面201とは反対側の端辺と、第2傾斜面210bの側面201とは反対側の端辺とは繋がっている。これにより、第1係合突起部210における、側面201に垂直な面での断面構造は三角形となっている。
側面201における、第1係合突起部210と繋がった領域と、第1傾斜面210aとが成す角度は、当該領域と第2傾斜面210bとが成す角度よりも小さくなっている。したがって、第1係合突起部210が設けられた端部205側の端面203の方から第1傾斜面210aを見ると、当該第1傾斜面210aは比較的緩やかな斜面となっている。一方で、端部205とは反対側の端部206側の端面203の方から第2傾斜面210bを見ると、当該第2傾斜面210bは比較的急な斜面となっている。挿入部200が、その端部205側から保持部材1の挿入穴111に挿入されると、当該挿入穴111に内面に設けられた一対の第1係合突起部113と、当該挿入部200の表面に設けられた一対の第1係合突起部210とがそれぞれ係合するようになる。
同様にして、第2係合突起部220の表面には、側面201に対して傾斜する第1傾斜面220a及び第2傾斜面220bが設けられている。第1傾斜面220aは、側面201から端部205側に斜め方向に延びている。第2傾斜面220bは、側面201から端部206側に斜め方向に延びている。第1傾斜面220aの側面201とは反対側の端辺と、第2傾斜面220bの側面201とは反対側の端辺とは繋がっている。これにより、第2係合突起部220における、側面201に垂直な面での断面構造は三角形となっている。
側面201における、第2係合突起部220と繋がった領域と、第1傾斜面220aとが成す角度は、当該領域と第2傾斜面220bとが成す角度よりも小さくなっている。したがって、第2係合突起部220が設けられた端部206側の端面203の方から第1傾斜面220aを見ると、当該第1傾斜面220aは比較的緩やかな斜面となっている。一方で、端部205側の端面203の方から第2傾斜面220bを見ると、当該第2傾斜面220bは比較的急な斜面となっている。挿入部200が、その端部206側から保持部材1の挿入穴111に挿入されると、当該挿入穴111に内面に設けられた一対の第1係合突起部113と、当該挿入部200の表面に設けられた一対の第2係合突起部220とがそれぞれ係合するようになる。
図7,8は、連結部材2の挿入部200が、その端部206側から保持部材1の挿入穴111に挿入される様子を示す図である。図7,8では、保持部材1のうち取付部110だけが示されており、当該取付部110についてはその断面構造が示されている。
図7に示されるように、連結部材2の挿入部200は、その一対の側面201が挿入穴111の一対の側面112aとそれぞれ対向するように、当該挿入部200の端部206から当該挿入穴111に挿入される。そして、挿入部200が挿入穴111に挿入されていくと、挿入部200の端部206の表面に設けられた一対の第2係合突起部220の第1傾斜面220aと、挿入穴111の内面に設けられた一対の第1係合突起部113の第1傾斜面113aとがそれぞれ当接するようになる。
挿入部200がさらに挿入穴111に挿入されていくと、図8に示されるように、一対の第2係合突起部220が一対の第1係合突起部113をそれぞれ乗り越えて当該一対の第1係合突起部113とそれぞれ係合するようになる。このとき、第2係合突起部220の第1傾斜面220aと第1係合突起部113の第1傾斜面113aとが互いに押し合うことによって第2係合突起部220及び第1係合突起部113が弾性変形しながら、第2係合突起部220が第1係合突起部113を乗り越えていく。第2係合突起部220が第1係合突起部113を乗り越えると、第2係合突起部220の第2傾斜面220bと、第1係合突起部113の第2傾斜面113bとが係合するようになる。これにより、連結部材2の挿入部200は、保持部材1の挿入穴111内で保持されるように当該挿入穴111に取り付けられる。本実施の形態では、上述のように、第2係合突起部220の第1傾斜面220aを端部206側の端面203の方から見ると、第1傾斜面220aは緩やかな斜面となっており、第1係合突起部113の第1傾斜面113aを挿入部200の挿入方向から見ると、第1傾斜面113aは緩やかな斜面となっていることから、挿入穴111に対して挿入部200が挿入し易くなっている。
図8の例では、挿入部200が挿入穴111に取り付けられた状態では、挿入穴111の深さ方向(図8での縦方向)において挿入部200の遊びが無い状態となっているが、挿入部200の遊びを設けても良い。具体的には、挿入部200が挿入穴111に取り付けられた状態において、挿入部200の端部206側の端面203と、挿入穴111の底面102dとの間に遊びを設けて、挿入穴111に取り付けられた挿入部200が、挿入穴111の深さ方向に沿って多少移動することが可能となるようにしても良い。
また、図8の例では、挿入部200が挿入穴111に取り付けられた状態では、一対の第1側面112aに垂直な方向(図8での横方向)において挿入部200の遊びが無い状態となっているが、挿入部200の遊びを設けても良い。具体的には、挿入部200が挿入穴111に取り付けられた状態において、第2係合突起部220と挿入穴111の側面112aとの間に遊びを設けるとともに、第1係合突起部113と挿入部200の側面201との間に遊びを設けて、挿入穴111に取り付けられた挿入部200が、一対の側面112aに垂直な方向に沿って多少移動することが可能となるようにしても良い。
端部206側から挿入穴111に挿入された挿入部200が当該挿入穴111から取り出される際には、一対の第2係合突起部220が一対の第1係合突起部113をそれぞれ乗り越えて、当該一対の第2係合突起部220と当該一対の第1係合突起部113との係合が解除される。このとき、第2係合突起部220の第2傾斜面220bと第1係合突起部113の第2傾斜面113bとが互いに押し合うことによって第2係合突起部220及び第1係合突起部113が弾性変形しながら、第2係合突起部220が第1係合突起部113を乗り越えていく。本実施の形態では、上述のように、第2係合突起部220の第2傾斜面220bを、端部206側の端面203とは反対側の端面203の方から見ると、当該第2傾斜面220bは急な斜面となっており、第1係合突起部113の第2傾斜面113bを挿入部200の抜去方向から見ると、当該第2傾斜面113bは急な斜面となっていることから、挿入穴111から挿入部200が抜けにくくなっている。
なお、連結部材2の挿入部200がその端部205側から保持部材1の挿入穴111に挿入される場合には、同様にして、当該端部205の表面に設けられた一対の第1係合突起部210が、挿入穴111の内面に設けられた一対の第1係合突起部113をそれぞれ乗り越えて当該一対の第1係合突起部113とそれぞれ係合するようになる。また、端部205側から挿入穴111に挿入された挿入部200が当該挿入穴111から取り出される際には、一対の第1係合突起部210が一対の第1係合突起部113をそれぞれ乗り越えて、当該一対の第1係合突起部210と当該一対の第1係合突起部113との係合が解除される。
図9,10は、それぞれは、クリップ部材3を示す正面図及び側面図である。クリップ部材3は、保持部材1の取付部110に対して、連結部材2の代わりに取り付けられる。クリップ部材3は、保持部材1が保持するワイヤーハーネスを車両パネル等の取付対象物に固定するための部材である。
図9,10に示されるように、クリップ部材3は、クリップ部300と、保持部材1の挿入穴111に挿入されて固定される挿入部310と、当該挿入穴111の内面に設けられた一対の第2係合凹部114とそれぞれ係合する一対の係合部320とを備えている。クリップ部300は、保持部材1が保持するワイヤーハーネスが固定される取付対象物の取付穴に対して、当該取付穴から抜けないように係止する。以後、「取付対象物」と言えば、保持部材1が保持するワイヤーハーネスが固定される取付対象物を意味する。
クリップ部300は、挿入部310から延びる軸部301と、当該軸部301の先端からその根本の方へ折り返された一対の係止羽根部302とを備えている。一対の係止羽根部302は、軸部301を間に挟んで互いに対向配置されており、それらの先端部(挿入部310側の端部)が互いに近づくように弾性変形可能である。一対の係止羽根部302のそれぞれの先端部には、係止段部303が設けられている。クリップ部300がその先端から取付対象物の取付穴に差し込まれる際には、一対の係止羽根部302がそれらの先端部が違いに近づくように弾性変形しながら、当該取付穴内をクリップ部300が進んでいく。そして、クリップ部300が取付対象物の取付穴に差し込まれると、一対の係止羽根部302の係止段部303が、取付対象物における、取付穴の周辺の部分に係止する。これにより、クリップ部300が取付対象物の取付穴に取り付けられる。
図11は、クリップ部材3のうち挿入部310及び一対の係合部320だけを示す斜視図である。図9〜11に示されるように、挿入部310は、例えば、棒状部分であって、四角柱形状を成している。挿入部310の表面は、互いに対向する一対の側面310aと、当該一対の側面310aの対向方向に垂直な方向で互いに対向する一対の側面310bと、当該挿入部310の長手方向で対向する一対の端面310cとで構成されている。
クリップ部300の軸部301は、一対の端面310cのうちの一方の端面310cから挿入部310の長手方向に沿って延びている。一対の端面310cのうちの他方の端面310cには、一方の側面310bから他方の側面310bまで達するように凹部(溝部)310dが設けられている。この凹部310dは、当該他方の端面310cと、軸部301と繋がった一方の端面310cとの間の略中間地点まで達している。挿入部310では、凹部310dが形成されていない部分が、クリップ部300と繋がった接続部分311となっており、凹部310dが形成されている部分が、当該接続部分311から延びる一対の脚部分312となっている。一対の脚部分312は、接続部分311におけるクリップ部300側とは反対側から、クリップ部300側とは反対側に向けて延びている。一対の脚部分312は隙間を空けて互いに対向配置されている。クリップ部材3は、一対の脚部分312から保持部材1の挿入穴111に挿入される。一対の脚部分312は、それらの先端部が互いに近づくように弾性変形可能である。
一対の係合部320は、一対の脚部分312の外面(外側の表面)312aにそれぞれ設けられている。係合部320は、脚部分312の外面312aにおける、当該脚部分312の先端側の端部(接続部分311側とは反対側の端部)に設けられている。言い換えれば、係合部320は、挿入部310の側面310aにおける、クリップ部300側とは反対側の端部に設けられている。係合部320は、例えば係合突起部である。以後、係合部320を「係合突起部320」と呼ぶことがある。
係合突起部320の表面は、脚部分312の外面312aから外側に向けて、当該外面312aに対して垂直な方向に延びる垂直面321を有している。この垂直面321は、挿入部310が保持部材1の挿入穴111に挿入された際に、当該挿入部310を当該挿入穴111から取り出そうとする方向(抜去方向)に対して垂直を成している。
また、係合突起部320の表面は、脚部分312の外面312aにおいて、垂直面321よりも脚部分312の先端側の箇所(より詳細には、脚部分312の外面312aにおいて、当該脚部分312の先端側の端辺)から、垂直面321における外面312aとは反対側の端辺に向けて延びる凸状のR曲面322を有している。このR曲面322の軸方向(R曲面322の半径方向に垂直な方向)は、挿入穴111に対する挿入部310の挿入方向に対して垂直を成している。挿入部310が挿入穴111に挿入される際には、挿入穴111の内面に設けられた第1係合突起部113の第1傾斜面113aに対してR曲面322が当接する。係合突起部320の高さ(外面312aからの突出距離)は、保持部材1の第1係合突起部113の高さよりも大きく、連結部材2の第1係合突起部210及び第2係合突起部220の高さもよりも大きくなっている。
図12,13は、クリップ部材3の挿入部310が、その一対の脚部分312から保持部材1の挿入穴111に挿入される様子を示す図である。図12,13では、保持部材1のうち取付部110だけが示されており、当該取付部110についてはその断面構造が示されている。
図12に示されるように、クリップ部材3の挿入部310は、その一対の脚部分312の外面312aが挿入穴111の一対の側面112aとそれぞれ対向するように、当該一対の脚部分312から当該挿入穴111に挿入される。このとき、一対の脚部分312は、それらの先端部が互いに近づくように少し弾性変形した状態で挿入穴111に挿入される。そして、挿入部310が挿入穴111に挿入されていくと、一対の脚部分312の外面312aにそれぞれ設けられた一対の係合突起部320のR曲面322と、挿入穴111の内面に設けられた一対の第1係合突起部113の第1傾斜面113aとがそれぞれ当接するようになる。
挿入部310がさらに挿入穴111に挿入されていくと、一対の係合突起部320が、一対の第1係合突起部113の第1傾斜面113a上をそれぞれ滑りながら挿入穴111のさらに奥まで進んでいく。このとき、一対の脚部分312はそれらの先端部が徐々に互いに近づくように内側に弾性変形する。係合突起部320は、そのR曲面322が第1傾斜面113aと当接しながら当該第1傾斜面113a上を滑ることから、係合突起部320は第1傾斜面113a上を滑りやすくなっている。これにより、挿入部310を挿入穴111に対して挿入し易くなる。
一対の係合突起部320が、一対の第1係合突起部113の第1傾斜面113a上をそれぞれ滑って、当該第1傾斜面113aの端までそれぞれくると、一対の係合突起部320が一対の第1係合突起部113をそれぞれ乗り越えるようになって、一対の第1係合突起部113よりも奥の方まで挿入穴111を進入するようになる。
その後、挿入部310がさらに挿入穴111に挿入されていくと、図13に示されるように、一対の係合突起部320は、挿入穴111の内面に設けられた一対の第2係合凹部114にそれぞれ係合するようになる。係合突起部320は、第2係合凹部114に入り込んで、当該第2係合凹部114と嵌合する。係合突起部320の高さは、それが乗り越えた第1係合突起部113の高さよりも大きくなっていることから、係合突起部320は第2係合凹部114と嵌合することが可能となっている。
係合突起部320と第2係合凹部114とが係合(嵌合)した状態では、係合突起部320の垂直面321は、第2係合凹部114の上面(挿入部310を挿入穴111から取り出そうとする方向に対して垂直な面)と係合するようになる。具体的には、係合突起部320の垂直面321は、第2係合凹部114の上面に当たるようになる。これにより、挿入部310は挿入穴111に固定されて、挿入部310が挿入穴111から抜けないようになっている。
図13の例では、挿入部310が挿入穴111に取り付けられた状態では、挿入穴111の深さ方向において挿入部310の遊びが無いが、当該遊びを設けても良い。具体的には、挿入部310が挿入穴111に取り付けられた状態において、挿入部310の一対の脚部分312の先端と、挿入穴111の底面102dとの間に遊びを設けて、挿入穴111に取り付けられた挿入部310を、挿入穴111の深さ方向に沿って多少移動可能としても良い。
また、図13の例では、挿入部310が挿入穴111に取り付けられた状態では、挿入穴111の一対の側面112aに垂直な方向において挿入部310の遊びが無いが、当該遊びを設けても良い。具体的には、挿入部310が挿入穴111に取り付けられた状態において、第1係合突起部113と脚部分312との間に遊びを設けて、挿入穴111に取り付けられた挿入部310が、一対の側面112aに垂直な方向に沿って多少移動可能としても良い。
以上のような保持部材1、連結部材2及びクリップ部材3を備えるワイヤーハーネス用部材セットを用いることによって、ワイヤーハーネスを束ねることができるととともに、ワイヤーハーネスを取付対象物に固定することができる。具体的には、保持部材1と連結部材2とを使用してワイヤーハーネスを束ねることができ、保持部材1とクリップ部材3を使用してワイヤーハーネスを取付対象物に固定することができる。以下に、ワイヤーハーネス用部材セットの使用方法について詳細に説明する。
図14は保持部材1及び連結部材2が使用されてワイヤーハーネス500が束ねられている様子の一例を示す図である。図14の例では、二つの保持部材1とそれらを連結する一つの連結部材2とが使用されてワイヤーハーネス500が束ねられている。図15は、ワイヤーハーネス500を保持する二つの保持部材1が一つの連結部材2で連結されている様子を示す図である。なお、ワイヤーハーネス500を束ねる際に使用する保持部材1及び連結部材2の数はこの限りではない。
図14に示されるワイヤーハーネス500では、複数の電線から成る電線束501がコルゲートチューブ等の被覆部材502で覆われている。そして、電線束501の一方端及び他方端にはそれぞれコネクタ503が取り付けられている。図14の例では、ワイヤーハーネス500は、環状に複数回巻かれるようにして束ねられている。
二つの保持部材1は、ワイヤーハーネス500の互いに離れた部分を保持している。各保持部材1は、その保持部100のバンド部101が被覆部材502に巻き付けられることによって、ワイヤーハーネス500を保持している。二つの保持部材1の取付部110には一つの連結部材2の挿入部200が取り付けられている。ワイヤーハーネス500を保持する二つの保持部材1は、ワイヤーハーネス500を環状に束ねるようにして連結部材2で連結されている。保持部材1及び連結部材2が使用されて束ねられたワイヤーハーネス500は、この荷姿状態で梱包ケース内に例えば複数個収められて出荷される。なお、ワイヤーハーネス500の束ね方(荷姿状態)はこの限りではない。
束ねられた状態で出荷されたワイヤーハーネス500は、その結束状態が解除された後に、車両等に配策されて、車体パネル等の取付対象物に固定される。各保持部材1の取付部110から連結部材2を取り外すことによって、ワイヤーハーネス500の結束状態を解除することができる。具体的には、各保持部材1の取付部110の挿入穴111に挿入された連結部材2の挿入部200を当該挿入穴111から抜き去ることによって、ワイヤーハーネス500の結束状態を解除することができる。上記のように、連結部材2は保持部材1の取付部110に対して着脱可能に取り付けられることから、連結部材2を破損することなく取付部110から取り外すことができる。なお、保持部材1はワイヤーハーネス500に取り付けられたままである。
ワイヤーハーネス500を束ねる際に使用されていた各保持部材1から連結部材2を取り外すと、各保持部材1の取付部110に対して、取り外した連結部材2の代わりにクリップ部材3を取り付ける。具体的には、各保持部材1の取付部110の挿入穴111に対して、上述のようにしてクリップ部材3の挿入部310を挿入することによって、当該取付部110に当該クリップ部材3を取り付ける。そして、ワイヤーハーネス500を束ねる際に使用された各保持部材1とそれに取り付けられたクリップ部材3とを用いてワイヤーハーネス500を取付対象物に固定する。
図16は、保持部材1とクリップ部材3とが用いられてワイヤーハーネス500が取付対象物600に固定されている様子の一例を示す図である。図16に示される取付対象物600は、例えば車体パネルである。図16では、取付対象物600については、それが有する取付穴601での断面構造が示されている。
図16に示されるように、保持部材1の保持部100で保持されたワイヤーハーネス500は、当該保持部材1の取付部110に取り付けられたクリップ部材3によって取付対象物600に固定されている。具体的には、クリップ部材3のクリップ部300が取付対象物600の取付穴601に挿入されて係止することによって、当該クリップ部材3が取り付けられた保持部材1で保持されたワイヤーハーネス500は当該取付対象物600に固定される。図16に示されるように、クリップ部300の一対の係止羽根部302の係止段部303が、取付対象物600における、取付穴601の周辺の部分に係止することによって、当該クリップ部300が当該取付穴601に取り付けられている。なお、図14の例では、ワイヤーハーネス500に対して二つの保持部材1が取り付けられていることから、当該ワイヤーハーネス500は、当該二つの保持部材1が取り付けられている二箇所において別々のあるいは同じ取付対象物に対して固定することが可能である。
以上のように、本実施の形態では、ワイヤーハーネス500を保持する二つの保持部材1を互いに連結する連結部材2が設けられているため、ワイヤーハーネス500を束ねることができる。また、ワイヤーハーネス500を保持する保持部材1の取付部110には、連結部材2が着脱可能であるとともに、取付対象物の取付穴に係止するクリップ部300を有するクリップ部材3を取り付けることができる。したがって、保持部材1から連結部材2を取り外すことによって束ねられたワイヤーハーネス500の結束状態を解除し、その後、当該保持部材1に対してクリップ部材3を取り付けることができる。よって、ワイヤーハーネス500を束ねる際に使用された保持部材1と、それに取り付けられたクリップ部材3とを使用して当該ワイヤーハーネス500を取付対象物に固定することができる。
このように、本実施の形態では、ワイヤーハーネス500を束ねる際に使用された保持部材1を使用して当該ワイヤーハーネス500を取付対象物に固定することができることから、ワイヤーハーネス500の結束状態が解除された後に当該保持部材1が使用されずに邪魔になることを抑制することができる。したがって、ワイヤーハーネス500が車両内等に配策される際に保持部材1が周囲と干渉することを抑制することができる。さらに、ワイヤーハーネス500の結束状態が解除された後でも保持部材1は使用されることから、ワイヤーハーネス500が無駄に重くなることを抑制できるとともに、ワイヤーハーネス500のコストアップを抑制することができる。
また、本実施の形態では、連結部材2が保持部材1に着脱可能であることから、ワイヤーハーネス500の結束及びその解除を繰り返して行うことができる。例えば、束ねられた状態で1次メーカから出荷されたワイヤーハーネス500に関して、2次メーカにおいて、保持部材1から連結部材2が取り外されてその結束状態が一旦解除され、その後、ワイヤーハーネス500に部品等が取り付けられた後に、保持部材1に再度連結部材2が取り付けられ、ワイヤーハーネス500が再び束ねられて3次メーカに出荷される。3次メーカにおいても同様に、保持部材1から連結部材2が取り外されてワイヤーハーネス500の結束状態が一旦解除され、ワイヤーハーネス500に部品等が取り付けられた後に、保持部材1に再度連結部材2が取り付けられ、ワイヤーハーネス500が再び束ねられて出荷される。
このように、ワイヤーハーネス500の結束及びその解除を繰り返して行うことができることから、作業性が向上するとともに、コストアップを抑制することができる。
また、本実施の形態では、クリップ部材3の挿入部310が保持部材1の挿入穴111に挿入される際には、当該挿入部310に設けられた脚部分312が弾性変形しながら当該脚部分312の表面に設けられた係合突起部320が当該挿入穴111の内面に設けられた第1係合突起部113を乗り越えて、当該内面に設けられた第2係合凹部114と係合するようになっている。したがって、挿入部310の挿入穴111への挿入時に係合突起部320が第1係合突起部113に当たる場合であっても、挿入部310を挿入穴111に挿入し易くなる。よって、作業性が向上する。
なお、上記の例では、クリップ部材3の挿入部310には二つの脚部分312が設けられているが、三つ以上の脚部分312を設けても良い。この場合には、三つ以上の脚部分312の外面312aにそれぞれ設けられた三つ以上の係合部320にそれぞれ嵌合する三つ以上の第2係合部114が挿入穴111の内面に設けられる。
また、挿入穴111の内面には二つの第1係合部113が設けられていたが、三つ以上の第1係合部113を設けても良い。この場合には、三つ以上の第1係合部113にそれぞれ係合する三つ以上の第1係合部210と、三つ以上の第1係合部113にそれぞれ係合する三つ以上の第2係合部220とが、連結部材2の挿入部200の表面に設けられる。
また、保持部材1の第1係合部113及び第2係合部114はそれぞれ突起部及び凹部であり、連結部材2の第1係合部210及び第2係合部220はそれぞれ突起部であり、クリップ部材3の係合部320は突起部であったが、第1係合部113、第2係合部114、第1係合部210、第2係合部220及び係合部320の形状は他の形状であっても良い。例えば、保持部材1の第1係合部113は、連結部材2の第1係合突起部210及び第2係合突起部220のそれぞれと解除可能に嵌合して係合する係合凹部であっても良い。また、連結部材2の第1係合部210及び第2係合部220のそれぞれは、保持部材1の第1係合突起部113と解除可能に嵌合して係合する係合凹部であっても良い。また、保持部材1の第2係合部114を係合突起部とし、クリップ部材3の係合部320を、当該係合突起部と嵌合して係合する係合凹部としても良い。
また、上記の例では、クリップ部材3の挿入部310は、保持部材1の挿入穴111に挿入されて固定されるようになっていたが、連結部材2の挿入部200と同様に、挿入穴111に着脱可能に挿入されても良い。この場合には、クリップ部材3のクリップ部300が取付対象物の取付穴に係止した状態において、保持部材1の挿入穴111から当該クリップ部材3の挿入部200が抜けないようにする。これにより、クリップ部材3が破損等した場合に、他のクリップ部材3を保持部材1に取り付けることが可能となる。
また、上記の例の保持部材1においては、第1係合部113が第2係合部114よりも挿入穴111の挿入口側に配置されているが、第2係合部114を第1係合部113よりも挿入穴111の挿入口側に配置しても良い。
また、上記の例の保持部材1においては、バンドタイプの保持部100であったが、当該保持部100の代わりに、ワイヤーハーネス500とともにテープが巻き付けられる板状保持部を採用しても良い。