JP5850480B2 - コンクリート柱の補強構造 - Google Patents
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Description
この従来の補強構造は、図14に示すように断面が四角形のコンクリート製の既存柱1の前面1aのみを一対の鋼板2,3からなる枠体aで囲み、この枠体a内に上下方向筋5を設け、この上下方向筋5を設けた上記枠体a内にグラウト材4を充填した補強部を構築し、この補強部を既存柱1に一体化したものである。この補強構造は、図示のように既存柱1の両側に面一で壁面10が連続している場合や、既存柱1の一方向からしか作業ができないような現場に適した構造である。
そして、上記一対の鋼板2,3からなる枠体aを複数備え、それら複数の枠体aを既存柱1の上下方向に積層して、当該既存柱1の前面1aであって、その補強必要長さの全長にわたって囲うものである。
また、上記一対の鋼板2,3は、それらの前面片2a,3aを重ね合わせた状態で枠体aを構成するが、それら前面片2a,3aの重ね合わせ量を調整することによって側面片2b,3bの対向間隔を調整できるようにしている。
そして、一対の鋼板2,3からなる各枠体aを既存柱1の前面1aに沿わせて一つずつ積層していくもので、その作業は次の通りである。
まず、最下段の枠体aを、上記上下方向筋5を囲うようにして既存柱1の前に置き、上記前面片2a,3aの重ね合わせ量を調整しながら、上記側面片2b,3bからなる枠体aの側面部の対向間隔を既存柱1の幅に一致させる。
このようにして最下段の枠体aを組み立てたら、その最下段の枠体aの上に、同じく一対の鋼板2,3からなる別の枠体aを積層していき、これら複数の枠体aで既存柱1の前面1aの全長を囲う。なお、上記タイバー8は、各枠体aのそれぞれに止めるものである。
上記のように帯状シート6を巻き付けた枠体aで既存柱1の前面1aを囲ったら、これら枠体a内にグラウト材4を充填する。枠体a内にグラウト材4を充填すれば、枠体aとグラウト材4からなる補強部が既存柱1と一体になるので、既存柱1の断面積が当該補強部の分だけ拡大したことになる。しかも、この補強部は鋼板2,3で囲われるとともに、この補強部にはアンカーボルト7、タイバー8及び上下方向筋5が含まれるので、既存柱1よりも大きな強度を保つことができる。したがって、補強部と既存柱1との一体化によって、大きな補強効果が得られることになる。
しかしながら、枠体aを既存柱1の前面にきっちりと正対させる作業は、工事現場において難しい作業になり、それが工期短縮の障害にもなっていた。
しかも、上記枠体aを構成する鋼板は、その厚さが3mm程度と薄いので、それらの位置を正確に決めながら、積層していくことはかなり難しい作業になるが、それも工期短縮の障害になっていた。
しかしながら、薄い鋼板を細分化すれば、個々の鋼板2,3が施工過程で一時的に不安定な状態に置かれるので、鋼板の数が増えれば増えるほど、各鋼板の位置関係を正確に定めてその状態を保つことがさらに難しくなる。
なお、上下方向長さも短くしながら、さらに細分化した一対の鋼板2,3を用いるようにしたのは、個々の鋼板の重量を軽減して、クレーンなどの重機を用いずに当該鋼板2あるいは3を運搬したり、積み上げたりできるようにするためである。
このように施工現場の制約条件があったとしても、補強工事ができるようにするためには、鋼板を細分化することが有利であるが、作業性という観点からすると、多くの問題を含んでいるというのが現状である。
この発明の第1の目的は、従来の補強構造の利点を生かしつつ、作業性を向上させることができるコンクリート柱の補強構造を提供することである。
第2の目的は、細分化した各枠体を正確かつ迅速に積層できるコンクリート柱の補強構造を提供することである。
第3の目的は、枠体及びグラウト材が一体化した補強部の強度を実質的に向上させることができるコンクリート柱の補強構造を提供することである。
なお、上記第2,3の発明において「上記鋼板接触面を既存柱の上下方向に伸びる稜部に沿わせてなる」とは、鋼板接触面と既存柱の上記稜部とを完全に一致させる場合だけでなく、鋼板接触面と稜部とをわずかにずらしてそれらを平行にする場合も含むものである。
したがって、各枠体が上下方向において互いに位置ずれを起こしたりせず、枠体及びグラウト材からなる補強部が、上下方向において波打ったりしない。このように補強部が上下方向において波打ったりせず、真っ直ぐになるので、地震力に対する耐力も十分に保つことができる。
しかも、積層された複数の枠体をガイド部材によって連結すれば、各枠体はこのガイド部材を介して一体化できるので、さらなる強度を実現できる。
また、ガイド部材の鋼板接触面と枠体の側面部とを固定した場合には、ガイド部材を介して枠体と既存の構造体との結合力が増し、結果として補強部と既存柱との結合力が増加して補強強度をより高めることができる。
また、上記鋼板接触面に枠体の側面部の内側の面を接触させた場合には、ガイド部材がグラウト材に埋設されることになるので、このガイド部材の強度を高くすれば、このガイド部材を、グラウト材中に設けた上下方向筋として機能させることができる。そして、このガイド部材の強度を十分に維持することによって、上記上下方向筋の本数を減らすこともできるし、その本数を減らさなくても、上下方向筋と相まって曲げ耐力をさらに向上させることができる。
また、ガイド部材の構造体接触面が、既存柱の外側で既存の構造体に固定されるので、既存柱の前面に配管などが配置され、既存柱側にガイド部材の構造体接触面を設けることができない場合であっても、ガイド部材を既存の構造体に固定することができる。
例えば、一対の鋼板のそれぞれの側面片をガイド部材に沿わせるだけで、それらの位置決めが可能になる。このように鋼板を積層する過程で、それら鋼板の位置決めがしっかりしていれば、たとえ3mmという薄い鋼板でも、それらを積層することが簡単になる。また、積層された各鋼板は、ガイド部材に支えられるので、鋼板の積層過程でそれらが崩れ落ちたりしない。
また、側面片をガイド部材に沿わせるだけでなく、当該側面片をガイド部材にスポット溶接などで仮止めしたり、あるいはボルトでしっかり止めたりすれば、当該鋼板を固定的に位置決めでき、次の鋼板を積層する作業を正確かつ迅速に実行することができるとともに、積層した鋼板が崩れ落ちたりするのを確実に防止できる。
また、枠体を3分割して搬送することができるため、特に前面部の幅が大きい枠体の搬送性を向上させることができる。
このような枠体を構成する上記一対の鋼板の側面片は、構造体に固定されたガイド部材の、鋼板接触面に接触させるだけで簡単に位置決めができる。そして、上記継鋼板は、上記位置決めされた一対の鋼板に接触させて支えさせることができるので、継鋼板の位置決めも容易になる。
また、タイバーは、横筋としても機能するため、補強部の補強耐力を向上させることができる。
さらに、上記一対の鋼板の位置決め作業時に、上記タイバーを取り付け、ナットを締め付けながら上記側面部を上記鋼板接触面に接触させるようにすれば、タイバーの取り付けと位置決め作業とが同時にできるので作業性はよい。
また、帯筋の配置によって、面内方向または面外方向、あるいは両方向に補強耐力を向上させることができる。帯筋を配置する数や位置によって建造物に応じた構造計算上の必要な補強をすることができるようになった。
加えて、帯筋で複数の上下方向筋を拘束しているため、上下方向筋の座屈を防止できる。
また、枠体を複数の鋼板で形成する場合には、それらを帯状シートで連結することができる。
なお、図1はグラウト材4を充填する前の状態を示している。
また、上記各側面片11b,12bには、ボルト孔11c,12cが形成されている。このボルト孔11c、12cは、側面片11b,12bと後で説明するガイド部材13,14とを固定するためのタイバー32やボルト15,15を貫通させる孔である。このボルト孔11c,12cは側面片11b、12bの上下方向に沿って複数設けるようにしてもよい。
そして、図1、2に示すように、上記前面片11a,12aは既存柱1の前面から所定の間隔を保って配置されるとともに、上記側面片11b、12bの対向間隔を、既存柱1の幅にほぼ一致させている。
また、上記鋼板11,12は、既存柱1の上下方向に複数連続させて設置され(図1参照)、既存柱1の前面1aを上下方向に沿って覆うようにしている。上記のように一部を重ね合わせた前面片11a,12aがこの発明の枠体Aの前面部を構成し、側面片11b、12bが枠体Aの側面部を構成する。
このガイド部材13,14は図4に示すように、それぞれ断面形状をL字状にし、その長さを既存柱1の補強必要長さにほぼ対応する長尺部材である。そして、直角を挟んだ外側の二面のうち、一方の面を構造体接触面13a,14aとするとともに他方の面を鋼板接触面13b,14bとしている。
なお、実施形態1ではガイド部材13,14の長さを既存柱1の補強必要長さにほぼ対応する長さにしているが、既存柱1の補強必要長さにほぼ対応する長さの間で、複数に分割したガイド部材13,14を所定の間隔で設けてもよい。
上記ガイド部材13,14は、鋼板接触面13b,14bの間隔を上記鋼板11,12の側面片11b,12bの対向間隔に合わせるとともに、上記構造体接触面13a,14aを既存柱1の前面1aに固定されている。そして、上記鋼板接触面13b、14bに、鋼板11,12の側面片11b、12bを接触させることによって、鋼板11,12を位置決めしている。
図5に示すように、一対のガイド部材13,14の鋼板接触面13b,14bを、鋼板の側面片11b,12bの設置間隔すなわち既存柱1の幅に合わせるとともに、既存柱1の上下方向に伸びる稜部に沿わせ、構造体接触面13a,14aを既存柱1の前面1aに接触させる。
そして、補強部の幅方向において対向する一対の上下方向筋30,30には、その上下方向筋30に直交して帯筋31がかけ渡されている。上記帯筋31の両端は、上下方向筋30の径に合わせて曲げ加工し、上下方向筋30,30のそれぞれを帯筋31の端部で拘束している。帯筋31は図示されていない結束線材等で、軸方向筋30,30と仮止めされる。
上記帯筋31は上下方向筋30,30に沿って複数本配置することができる。既存の建造物が構造計算上必要とされる補強強度によって、帯筋31の数や位置が決まることになる。
上記帯筋31は、帯筋31の端部を合わせ輪状に加工して一対の軸方向筋30,30を拘束してもよい。
上記一対の上下方向筋30,30の間に複数の上下方向筋30が配置される場合は、一対の上下方向筋30,30を拘束する帯筋31と上記複数の上下方向筋30が交差する点で仮止めされる。
また、既存柱1と前面片11a,12aとの間であって、一対の上下方向筋30,30に並行する位置に複数の上下方向筋30が配置される場合は、一対の上下方向筋30,30に対向する一対の組になる上記複数の上下方向筋30ごとに、一対の上下方向筋30,30と同様に帯筋31で拘束する。
このように既存柱1の前面に並行に配置される帯筋31で拘束された上下方向筋30は、特に耐震力Pが加わる方向に対し、面内方向の耐力を向上させる。
このように、側面片11b,12bをガイド部材13,14の鋼板接触面13b,14bに接触させることによって、全ての鋼板の対向する側面片11b,12bが適性間隔を保って位置決めされる。
この時、上下方向に積層された全ての鋼板11,12は、上記鋼板接触面13b,14bに接触することによってガイド部材13,14の軸線と一致し、全ての枠体Aは軸がずれることなく真っ直ぐに積み上げることができる。
なお、タイバー32の両端で固定しない場合は、上記鋼板接触面13b,14bに鋼板の側面片11b,12bを接触させながらこれらをボルト15によって固定してもよい。
この場合には、ボルト15は、側面片11b,12bの外側から側面片11b,12bの貫通孔11c,12cとガイド部材13,14の貫通孔13d,14dとを貫通し、枠体内でその先端にナット18が固定される。このナット18は、予め上記貫通孔13d,14dに対応させてガイド部材の貫通孔13b,14bに溶接あるいは接着しておくものとする。
そのため、上記鋼板11,12を積み上げる工程で、位置決めした鋼板11,12は崩れることがないので、真っ直ぐに積み上げる作業の作業性はよい。
この構成でタイバー32を配置させる場合には、ガイド部材13,14と接触していない側面片11b,12bに新たな孔をあけ、タイバー32の先端を貫通させ、ナット33で固定する。
なお、帯状シート6を貼りつける際には、上記帯状シート6において上記側面片11b,12bから突出した上記タイバー32に対応する位置に孔をあけ、タイバー32の両方の端部を外方へ突出させながら上記帯状シート6を貼り付け、この帯状シート6が上記タイバー32の端部によって浮き上がることなく鋼板11,12に密着するようにしている。
上記帯状シート6としては、圧力によって膨らみにくく、曲げ耐力を発揮する材質として、例えばアラミドからなる繊維シートなどが適している。
この第1実施形態の補強構造は、構造体接触面13a,14aを既存柱1の所定の位置に固定することによって鋼板11,12の各側面片11b,12bの位置及び対向間隔が保持され、前面片11a,12aと既存柱1aとが正対するような鋼板11,12の正確な位置決めが容易になる。
このように上記鋼板11,12の位置決め作業が容易になれば、補強工事の作業性がよくなり、結果として工期短縮ができる。
さらに、既存柱1に対して補強部の位置がずれることもないので、目的の補強強度を実現することができる。
一対の鋼板11,12を用いて一つの枠体Aを構成する場合には、個々の鋼板11,12が軽量になるため搬送性が上がるうえ、前面部を構成する前面片11a,12aの重ね合わせ量を変化させて対向する側面片11b,12bの間隔を現場で調整できるというメリットがある。このように現場で側面片11b,12bの間隔が調整できれば、予め形成する個々の鋼板の寸法管理を厳密にしなくてもよくなる。
しかし、この第1実施形態では、上記ガイド部材13,14によって上記対向する側面片11b,12bの位置合わせが容易にできる。
また、上下方向に積層する鋼板11,12の側面片11b,12bを、既存柱1の上下方向に連続した鋼板接触面13b,14bに接触させるだけで、既存柱1の上下方向全長にわたって鋼板11,12を適性位置に配置することができる。つまり、既存柱1の囲み方向及び上下方向のいずれにおいても、上記鋼板11,12の位置決めが簡単にでき、位置決め作業の作業性が向上する。
さらに、既存柱1の稜部に沿った部分には、ねじ部材16の結合力やグラウト材4の圧力によって上記構造体接触面13a,14aを押し付けることになるので、既存柱1の稜部すなわち既存柱1の角を押さえて崩れにくくすることもできる。
特に、構造体接触面13a,14aの面積を大きくすれば、上記ねじ部材16の埋め込み位置を既存柱1の角から離して、既存柱1の角をさらに崩れにくくできるし、既存柱1内の既存の補強筋と干渉しない位置に上記ねじ部材16を埋め込むこともできる。
また、上記ボルト15の長さを長くして、その先端側をグラウト材4内に埋設するようにすれば、これがアンカーボルトとして機能し、グラウト材4と鋼板11,12との結合力を強くすることができる。
但し、この第1実施形態では、上記側面片11b,12bは、上記ボルト15でなく、スポット溶接などによって、簡易的に上記鋼板接触面13b,14bに固定するようにしてもよい。
また、帯筋31の配置によって、面内方向または面外方向、あるいは両方向に補強耐力を向上させることが調整できる。そのため、帯筋31を配置する数や位置によって建造物に応じた構造計算上の必要な補強をすることができるようになった。
加えて、帯筋31で複数の上下方向筋30を拘束しているため、上下方向筋30の座屈を防止する。
上下方向筋30は、枠体A内に既存柱1の長手方向に沿って連続しており、複数本配置されている。上記上下方向筋30は、既存柱1の前面1aと鋼板11,12の側面片11b,12bの直交する隅と、鋼板11,12の前面片11a,12aと側面片11b,12bの直交する隅とに4本配置されている。そして、これら4本の上下方向筋30は、既存柱1と鋼板11,12から所定の間隔を保っている。さらに、鋼板11,12の側面片11b,12bに沿ったそれぞれ2本の上記上下方向筋30の間におけるほぼ中間地点に鋼板11,12から所定の間隔を保ってそれぞれ1本の上下方向筋30が配置されている。枠体A内に配置される複数の上下方向筋30は、縦横に整列して配置される。
なお、第2実施形態では合計6本の上下方向筋30を使用しているが、上下方向筋30を配置する数や位置は、対象となる既存の構造物ごとに異なり、既存の建造物が構造計算上必要とされる補強強度によって決まることになる。
上記帯筋31の両端は、軸方向筋30,30の径に合わせて曲げ加工し、枠体A内の既存柱1の前面1aと側面片11b,12bの直交する隅に配置された2本の上下方向筋30をそれぞれ帯筋31の端部で拘束している。帯筋31は図示されていない結束線材等で、複数の上下方向筋30と仮止めされる。
上記帯筋31は上下方向筋30に沿って複数本配置することができる。既存の建造物が構造計算上必要とされる補強強度によって、帯筋31の数や位置が決まることになる。
なお、上記帯筋31は、帯筋31の端部を合わせ輪状に加工して、既存柱1の前面1aと鋼板11,12に対応する部分に、複数の上下方向筋30を配列した外周にそって上下方向筋30を拘束してもよい。
そこで、結合強度を向上させるには、ねじ部材34を通常のねじ部材よりも長いものを使用し、既存柱1に上記ねじ部材34の一端を深く埋め込んで固定させるととともに、上記ねじ部材34のもう一方の端部を既存柱1の前面1aから突出させ、上記構造体接側面13a,14aの貫通孔13c,14cに貫通させて、その端部をナット35で固定する。
既存柱1に深く埋め込んで固定したねじ部材34は、図示していない既存柱1の内部に配置された主筋の外周端の内側に配置されていることが良い。ねじ部材34を埋め込む深さや、ねじ部材34の本数は、補強部の体積や強度によって決められる。
上記以外の構成は第1実施形態と同じである。
その他の構成は上記第1実施形態と同じなので、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を用い、各構成要素の説明は省略する。
そして、上記鋼板11,12の外周面に帯状シート6を貼り付け、上記鋼板11,12からなる枠体Aと既存柱1との間隔内にグラウト材4を充填して固化させる。
また、既存柱1の上下方向に沿って設けられたガイド部材13,14はその強度を強くしておけば、側面片11b,12bの外側で上下方向に沿って接触している鋼板接触面13e,14eが副木のように機能し、上下方向に積層された枠体Aで構成された補強部の曲げ耐力を向上させる。
さらに、上記グラウト材4に埋設された構造体接触面13a,14a側は、グラウト材4内で上下方向筋としても機能する。
さらにまた、上記ねじ部材16及びボルト15の突出長さを長くすることによって、グラウト材4と既存柱1及び鋼板11,12との結合力を強くすることができ、結果として補強強度を上げることができる。
上記鋼板接触面13e,14eと上記側面片11b,12bとがボルト15などで固定されていなくても、両側面片11b,12bを上記鋼板接触面13e,14eに押し付けることによって鋼板11,12の位置決めができる。
但し、この第3実施形態では、側面片11b,12bが上記鋼板接触面13e,14eの内側に配置されるので、鋼板11,12を位置決めしながら上方へ積層する際には、側面片11b,12bが内側へ移動しないように、上記側面片11b,12bの対向間隔を維持する必要がある。
なお、上記第1,2実施形態の補強構造は、既存柱1の両脇に壁面10などの構造体が連続していなくても、前面1a側からのみ補強工事を行ないたい場合に適用できるものである。
この第4実施形態では、ガイド部材14,13の構造体接触面14a,13aを、それぞれ既存柱1の稜部に沿わせ、既存柱1の両脇に連続する壁面10,10にねじ部材19及びナット20によって固定している。
このように既存柱1の稜部に沿って壁面10,10に固定されたガイド部材14,13の鋼板接触面14b,13bは、既存柱1の幅、すなわち側面片11b,12bの設置間隔を保って対向することになる。
側面片11b,12bが位置決めされたら、これら側面片11b,12bと上記鋼板接触面14b,13bとをボルト15及びナット18によって固定するが、この第3実施形態では、上記ナット18は予め上記側面片11b,12b側に取り付けておくものとする。
そして、上記鋼板11,12の外周面に帯状シート6を貼り付け、鋼板11,12からなる枠体Aと既存柱1との間隔内にグラウト材4を充填して固化させる。
そして、この第4実施形態では、ガイド部材14,13の構造体接触面14a,13aを、既存柱1の前面1aではなく壁面10,10に固定するので、既存柱1の稜部付近であって前面1a側に、例えば配管などがあってガイド部材14,13を沿わせることができないような場所の補強に適している。
上記鋼板接触面14b,13bと上記側面片11b,13bとがボルト15などで固定されていなくても、両側面片11b,12bを上記鋼板接触面14b,13bに押し付けることによって鋼板11,12の位置決めができる。
但し、この第4実施形態でも、鋼板11,12を位置決めしながら上方へ積層する際には、側面片11b,12bが内側へ移動しないよう、上記側面片11b,12bの対向間隔を維持する必要がある。
なお、この第5実施形態においても、上記第1,3実施形態と同様の構成要素には、上記と同じ符号を用いている。
すなわち、既存柱1の左右に連続する壁面10,10にそれぞれガイド部材14,13の構造体接触面14a,13aをねじ部材19及びナット20で固定している。これにより、鋼板接触面14e,13eがほぼ既存柱1の幅の間隔を保って外方に向いて配置されることになる。これら鋼板接触面14b,13bに鋼板11,12の側面片11b,12bの内側の面を接触させることによって側面片11b,12bの位置決めができ、枠体Aの位置が決まる。
そして、上記鋼板11,12の外周面に帯状シート6を貼り付け、鋼板11,12とからなる枠体Aと既存柱1との間隔内にグラウト材4を充填して固化させる。
また、既存柱1の上下方向に沿って壁面10,10に固定されたガイド部材13,14の強度を強くしておけば、グラウト材4内に埋設された鋼板接触面14e,13e側の部分が上下方向筋として機能し、補強構造の曲げ耐力を向上させることができる。
但し、上記鋼板接触面14e,13eを固定しない場合には、グラウト材4の充填時に一対の鋼板11,12がグラウト材の圧力で移動しないように、外部に支持部材を設けるか、タイバー32などを用いる必要がある。そして、上記第1実施形態と同様に、上記タイバー32を取り付けながら鋼板11,12を積層することによって、その作業性が上がる。
この第5実施形態も、上記第3実施形態と同様に既存柱1の両端付近であって前面1a側に配管などがある場合の補強に適した構造である。
なお、この第6実施形態においても、上記第1実施形態と同様の構成要素には、上記と同じ符号を用いている。
上記一対の21b,22bは、第1実施形態と同様に、既存柱1に固定したガイド部材13,14によって位置決めされるが、この時、鋼板21,22の前面片21a,22aは重ならずに、その先端が間隔を保って対向するか、つき合わせとなる寸法にしている。
そして、上記継鋼板23の両端に上記前面片21a,22aの先端部分を重ね合わせて、前面片21a,22aの対向間隔を塞き、枠体Bの前面部を構成している。
上記一対の鋼板21,22が固定されたら、継鋼板23は、上記鋼板21,22に接触させるだけで位置決めできる。結果として、枠体Bの位置決めが容易にできることになる。
但し、複数の枠体Bを上下方向に積層する際には、上記鋼板21,22に接触させて位置決めした継鋼板23を、鋼板21あるいは22にスポット溶接やビス止めなどで仮止めしながら積層する必要がある。
また、この第6実施形態においても、上記実施形態と同様に上下方向に連続するガイド部材13,14が曲げ耐力を向上させる。
また、前面部を3分割して搬送することができるため、特に前面部の幅が大きい枠体Bの搬送性を向上させることができる。
なお、継鋼板23を用いた枠体Bの構成は、上記第1〜5実施形態のいずれにも適用することができる。
図12に示す第7実施形態は、断面形状が六角形の既存柱24の前面24aを、一対の鋼板25,26からなる枠体Cで囲んで補強する補強構造である。
なお、この第7実施形態においても、上記他の実施形態と同様の構成要素には、上記と同じ符号を用いている。
そして、上記前面片25a,26aの先端側を重ね合わせて枠体Cの前面部を構成し、一対の側面片25b,26bで枠体Cの側面部を構成している。この枠体Cは、上記前面片25a,26aの重ね合わせ量に応じて上記側面片25b,26bの対向間隔を変更できるものである。
そして、上記構造体接触面27a,28aを既存柱24の幅方向両端に合わせてねじ部材16及びナット17で固定してから、鋼板接触面27b,28bに鋼板の側面片25b,26bを接触させることで、鋼板25,26の位置決めができる。
また、ガイド部材は、上記のように構造体接触面27a,28aと鋼板接触面27b,28bとの角度を適当に調整すれば、様々な形状の既存柱の前面を補強する際に枠体の位置決め作業を容易にすることができる。
上記枠体を構成する一対の鋼板36,37は、第1実施形態で使用される断面L字状の鋼板11,12の所定の縁にリブを形成しているものである。
上記鋼板36,37は、図13で示すように、既存柱1の表面1aに平行に配置される前面片36a,37aと、これら前面片36a,37aに直交する側面片36b、37bとからなる。そして、上記鋼板36,37の上下方向の長さは、既存柱1の上下方向の長さを複数に分割した長さにしている。
前面片36a,37aが側面片36b、37bに直交する反対側の縁には、前面片36a,37aに直交する縦リブ38が側面片36b、37bと平行にL字の内側に向かって形成されている。また、前面片36a,37aの上下の縁には、前面片36a,37aに直交する前面横リブ39がL字の内側に向かって形成される。さらに側面片36b、37bの上下のガイド部材13,14の鋼板接触面13b,14bが接しない部分の縁には、側面片36b、37bに直交する側面横リブ40がL字の内側に向かって形成されている。
なお、上記各リブは、リブを構成する板片を溶接したり、あるいは鋼板を折り曲げたりして形成される。
そして、上記前面部36a,37aを既存柱1の前面1aから所定の間隔を保って配置するとともに、上記側面片36b、37bをガイド部材13,14の鋼板接触面13b,14bに接触するようにしている。
なお、上記鋼板36,37は、ガイド部材13,14の鋼板接触面が側面片36b、37bの内側で接触する構成にある実施形態ならば、第1実施形態と同様に利用することができる。
さらに、図示していない側面片の幅方向全長と同じ、もしくはほぼ同じ側面横リブ40を有する鋼板36,37については、ガイド部材13,14の鋼板接触面が側面片36b、37bの外側で接する場合に利用される。
上記以外の構成は第1実施形態と同じである。また、このようにした第8実施形態における補強構造としての機能は、第1実施形態と同じである。
その場合には、一対の側面部の対向間隔が、予め既存柱の幅に合わせて形成されていることになるが、上記対向する側面部を既存柱に固定したガイド部材の鋼板接触面に接触させることによって、枠体の前面部と既存柱とを正対させることができる。つまり、1枚の鋼板で構成された枠体も、この発明の一対のガイド部材を用いることによって既存柱の幅方向の位置合わせが容易にでき、補強部がずれてしまうことを防止できる。
さらに、上記実施形態1〜8では外周面に帯状シート6を貼り付けているが、この帯状シート6は必須ではない。また、既存柱の囲い方向に配置される複数の鋼板や上下方向に配置される複数の枠体同士の結合方法は、限定されず溶接などでもかまわない。
但し、帯状シート6を貼り付けることによって、既存柱の囲い方向に配置される複数の鋼板や上下方向に配置される複数の枠体同士を確実に結合できるとともに、帯状シートの靱性によってさらなる強度向上が期待できる。
1 既存柱
4 グラウト材
6 帯状シート
10 壁面
11,12 鋼板
11a,12a 前面片
11b,12b 側面片
13,14 ガイド部材
13a,14a 構造体接触面
13b,14b 鋼板接触面
13e,14e 鋼板接触面
21,22 鋼板
21a,22a 前面片
21b,22b 側面片
23 継鋼板
24 既存柱
24a 前面
25,26 鋼板
25a,26a 前面片
25b,26b 側面片
27,28 ガイド部材
27a,28a 構造体接触面
27b,28b 鋼板接触面
30 上下方向筋
31 帯筋
32 タイバー
34 ねじ部材
36,37 鋼板
38 縦リブ
39 前面横リブ
40 側面横リブ
Claims (8)
- 前面部とこの前面部の両側における一対の側面部とを備えた枠体が、既存柱の幅方向に複数の鋼板を組み合わせて構成されるとともに、
上記側面部を既存柱の上下方向に沿わせて、複数の上記枠体が既存柱の上下方向に積層され、
上記前面部と既存柱の前面との間に上記側面部に相当する間隔が保たれており、この間隔にグラウト材を充填してなるコンクリート柱の補強構造において、
既存柱の補強必要長さにほぼ対応する長さの一対のガイド部材を備えており、
このガイド部材は、上記枠体の側面部に接触する鋼板接触面と、既存柱あるいは既存柱に隣接する既存壁等の既存の構造体に接触する構造体接触面とを備えており、
上記鋼板接触面を上記枠体における上記一対の側面部の設置間隔に合わせて既存柱の上下方向に沿わせており、上下方向に積層された上記枠体のすべての側面部が上記鋼板接触面に接触しており、
上記構造体接触面を既存柱又は既存柱に隣接する既存の構造体に固定してなるコンクリート柱の補強構造。 - ガイド部材の上記鋼板接触面を既存柱の上下方向に伸びる稜部に沿わせてなるとともに、上記構造体接触面が既存柱に固定され、枠体の上記側面部の内側あるいは外側のいずれか一方の面が上記鋼板接触面に接触されて、上記構造体接触面が上記グラウト材に埋設されてなる請求項1記載のコンクリート柱の補強構造。
- ガイド部材の上記鋼板接触面を既存柱の上下方向に伸びる稜部に沿わせてなるとともに、上記構造体接触面が既存柱に隣接する既存の構造体に固定され、枠体の上記側面部の内側あるいは外側のいずれか一方の面が上記鋼板接触面に接触されてなる請求項1記載のコンクリート柱の補強構造。
- 上記枠体は、前面片とこの前面片に連続する側面片とからなる一対の鋼板を備えてなり、これら鋼板の上記前面片同士を重ね合わせて上記前面部が構成され、これら重ね合わされた上記側面片が上記側面部とされ、上記前面片の重ね合わせ量に応じて上記側面部の対向間隔が可変にした請求項1〜3のいずれか1に記載のコンクリート柱の補強構造。
- 上記枠体は、上記前面片と側面片とからなる一対の鋼板と、上記一対の前面片の先端部分を重ね合わせて上記前面部を構成する平板状の継鋼板とを備えており、上記側面片が上記側面部とされ、上記前面片の重ね合わせ量に応じて上記側面部の対向間隔が可変にした請求項1〜3のいずれか1に記載のコンクリート柱の補強構造。
- 上記枠体の側面部間には、タイバーがかけ渡された請求項1〜5のいずれか1に記載のコンクリート柱の補強構造。
- 上記枠体内には、複数の軸方向筋を配置され、補強部の幅方向において対向する軸方向筋が帯筋で拘束された請求項1〜6のいずれか1に記載のコンクリート柱の補強構造。
- 上記枠体の外側に帯状シートが貼り付けられた請求項1〜7のいずれか1に記載のコンクリート柱の補強構造。
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