JP5849667B2 - 低カルシウム鋼の溶製方法 - Google Patents

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本発明は、カルシウムの含有量が0.0005質量%以下、更には0.0004質量%以下である低カルシウム鋼を、RH真空脱ガス装置を用いて溶製する方法に関する。
鉄鋼材料の高機能化及び高品質化への要求の高まりから、鋼中の不純物元素を極限まで低減する或いは無害化することが望まれており、溶鋼段階での鋼の高純度化及び高清浄度化のための技術が必要とされている。鋼中の不純物元素の1つであるカルシウム(Ca)は、酸素と反応して酸化物を形成したり、別の酸化物と反応して複合酸化物となったりする。これらが鋼中に存在すると、鋼板における欠陥の原因となったり、操業を阻害したりする場合があり、鋼中のカルシウム含有量の低減が必要とされている。
例えば、特許文献1では、曲げ加工性を阻害するCaOを含む酸化物系介在物の生成を抑制するために、カルシウム含有量が0.0005質量%以下である高強度冷延鋼板を開示している。また、特許文献2では、プレス割れの原因となる介在物中CaO濃度を低減するべく、カルシウム含有量を0.0004質量%以下とした薄鋼板を開示している。また、特許文献3には、耐食性を高めるためにカルシウム含有量を0.0005質量%以下とした二相ステンレス鋼が開示されている。
更に、特許文献4には、鋼の連続鋳造中における鍋ノズルや浸漬ノズルへの高CaO濃度の酸化物の付着によるノズル閉塞を防止するために、不可避不純物として0.5質量%以上のカルシウムを含有する合金鉄を、Al脱酸前の溶存酸素濃度が0.0050質量%以上の時点で目標濃度の80質量%以上となるように添加し、Al脱酸後にはカルシウム濃度の増加分が0.0006質量%以下となる範囲内で合金鉄を添加する方法が開示されている。
特開2002−363694号公報 特開2006−97110号公報 特開2009−7638号公報 特開2006−192439号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
即ち、特許文献1及び特許文献3は、鋼のカルシウム含有量を0.0005質量%以下とすることを必須としているが、カルシウム含有量を低減するための具体的な手法を開示していない。また、特許文献2は、カルシウム含有量を0.0004質量%以下とするためには、カルシウムを含有する金属や合金鉄の使用を避けるべきとしており、不純物であるカルシウム含有量の多い安価な金属や合金鉄を使用できず、経済的とは言えない。
また、特許文献4では、多量の金属や合金鉄の添加が必要な鋼種の場合には、Al脱酸後の添加量も多くなってしまうことから、金属や合金鉄の添加によるカルシウム濃度の増加分を0.0006質量%以下となるように添加するには、高純度の金属或いは合金鉄を使用しなければならず、経済的でない。また、Al脱酸前に成分調整用の金属や合金鉄を添加すると、添加する金属や合金鉄中の珪素、マンガン、クロムなどが酸化されて歩留まりが低下するとともに、その酸化物がスラグへ移行し、それらがAl脱酸後に溶鋼中のアルミニウムによって還元されて溶鋼に戻り、成分のばらつきにつながるのみならず、Al23が継続的に生成することから、鋼の清浄性が劣化する。
尚、溶鋼温度(1550〜1600℃)においてはカルシウム(沸点=1440℃)の蒸気圧は高く、一般的に、真空処理や強攪拌処理によって溶鋼中カルシウムの除去は可能である。しかし、溶鋼中のカルシウムの濃度によっては処理が不足してカルシウムが目標濃度以下に下がらなかったり、一方、処理が過剰の場合には処理コストの面から不利益になったりする。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶鋼成分調整用の金属や合金鉄のカルシウム含有量を規制しなくても、金属や合金鉄から持ち来たされるカルシウム量に応じた的確な環流時間で処理することにより、カルシウムの含有量が0.0005質量%以下更には0.0004質量%以下である低カルシウム鋼を、RH真空脱ガス装置を用いて安定して溶製することのできる低カルシウム鋼の溶製方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]カルシウムの含有量が0.0005質量%以下である低カルシウム鋼の溶製方法であって、RH真空脱ガス装置の真空槽と該真空槽直下の取鍋との間を環流しているAl脱酸後の溶鋼に、成分調整用の金属または合金鉄を前記真空槽にて添加して溶鋼の成分を調整するにあたり、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点からの必要環流時間t0を、(1)式の目標カルシウム濃度CTを溶製対象の低カルシウム鋼のカルシウム濃度の上限値とする下記の(1)式によって求め、求めた必要環流時間t0を確保し、且つ、必要環流時間t0よりも60秒を越えない範囲内で溶鋼を環流し、その後、精錬を終了することを特徴とする、低カルシウム鋼の溶製方法。
Figure 0005849667
但し、(1)式において、t0:必要環流時間(s)、C0:成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度(質量%×104)、Yai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄でのカルシウム添加歩留まり(−)、Rai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄のカルシウム濃度(質量%)、Wai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄の添加量(kg)、W:処理溶鋼量(kg)、CT:低カルシウム鋼の目標カルシウム濃度(質量%×104)、G:環流ガス流量(Nm3/s)、A:真空槽の横断面積(m3)、Q:溶鋼環流量(kg/s)、P:真空槽内の圧力(Pa)である。
本発明によれば、RH真空脱ガス装置で溶鋼の成分調整を行うにあたり、脱ガス精錬前の溶鋼中カルシウム濃度が高かったり、成分調整用としてカルシウムを不純物として含んだ金属または合金鉄を添加したりしても、成分調整用の金属または合金鉄を添加した以降の環流時間を溶鋼中に存在するカルシウム量に応じた最適な範囲に制御するので、溶鋼中のカルシウムは目標とする値以下に確実に除去され、その結果、成分調整用として添加する金属中または合金鉄中の不純物であるカルシウムの悪影響を受けることなく、低カルシウム含有鋼を安価に安定して溶製することが実現される。
本発明を実施する際に使用するRH真空脱ガス装置の1例を示す概略縦断面図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯を説明する。本発明者らは、前工程から持ち来たされたり、成分調整用の金属や合金鉄から混入したりする溶鋼中カルシウムの濃度を低減するべく、様々な検討を行った。尚、本発明において、溶鋼中のカルシウム濃度とは、溶鋼に溶解しているカルシウムの濃度と、酸化物や硫化物などの非金属介在物として存在するカルシウムの濃度とを合計した濃度である。
溶鋼中のカルシウムを低減する手段としては、高真空下でのカルシウムの気化除去、及び、強攪拌によるカルシウム系酸化物の除去促進が挙げられる。また、成分調整用として添加される金属や合金鉄は、高い歩留まりで添加することができることから、RH真空脱ガス装置で添加されるのが一般的であり、これらの金属や合金鉄に含有されるカルシウムが溶鋼中に混合して溶鋼のカルシウム濃度が上昇する。これらの事象から、高真空度が得られ、且つ攪拌強度も大きいRH真空脱ガス装置において溶鋼中のカルシウムを除去することが効果的であると考え、本発明ではRH真空脱ガス装置を用いて溶鋼中のカルシウムを除去することとした。
そこで、RH真空脱ガス装置において、Al脱酸後の溶鋼を様々な処理条件で処理し、そのときの溶鋼中カルシウム濃度の挙動を溶鋼から採取した分析試料のカルシウム分析によって調査した。その結果、RH脱ガス精錬における溶鋼中のカルシウム濃度の推移は、下記の(2)式で表されることが確認できた。但し、(2)式において、Cは溶鋼中のカルシウム濃度(質量%×104)、C0’は溶鋼中の初期カルシウム濃度(質量%×104)、Gは環流ガス流量(Nm3/s)、Aは真空槽の横断面積(m3)、Qは溶鋼環流量(kg/s)、Pは真空槽内の圧力(Pa)、tは処理開始後の経過時間(s)である。
Figure 0005849667
即ち、溶鋼中のカルシウム濃度を目標値以下にするためには、RH真空脱ガス装置での処理条件(環流ガス流量、溶鋼環流量、槽内真空度、経過時間)で決まる(2)式の右辺を目標カルシウム濃度以下にすればよいことを見出した。
但し、(2)式によるカルシウム濃度の挙動は、処理途中でカルシウムの混入が無い条件であるので、処理の途中で成分調整用の金属や合金鉄を添加する場合には、(2)式の溶鋼中初期カルシウム濃度C0’を、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度と、RH真空脱ガス装置で最後に添加される金属または合金鉄から持ち来たされるカルシウムによるカルシウム濃度の増加分との和に置き替えればよいことがわかった。この場合には、(2)式の経過時間tは、最後に添加される金属または合金鉄の添加時点を起点とする。
つまり、RH真空脱ガス装置において最後に同一のタイミングで添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちのi番目の金属または合金鉄でのカルシウム添加歩留まりをYai(−)、最後に同一のタイミングで添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちのi番目の金属または合金鉄のカルシウム濃度をRai(質量%)、最後に同一のタイミングで添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちのi番目の金属または合金鉄の添加量をWai(kg)、処理溶鋼量をW(kg)とすると、最後に同一のタイミングで添加される金属または合金鉄から持ち来たされるカルシウムによるカルシウム濃度の増加分ΔC(質量%×104)は、下記の(3)式で表される。尚、最後に添加される金属または合金鉄が1種類の場合には、(3)式においてi=1となる。また、(3)式は、処理溶鋼量Wが、成分調整用の金属や合金鉄の添加量ΣWaiよりも格段に多いという前提の式である。
Figure 0005849667
成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度をC0(質量%×104)、溶鋼の目標カルシウム濃度をCT(質量%×104)とし、(2)式の溶鋼中初期カルシウム濃度C0’を、溶鋼中カルシウム濃度C0とカルシウム濃度の増加分ΔCとの和(C0+ΔC)に置き換えることで、(2)式により、溶鋼中のカルシウム濃度Cが溶鋼の目標カルシウム濃度CTと一致するまでの経過時間tを求めることができる。
下記の(1)式は、溶鋼中初期カルシウム濃度C0’を、溶鋼中カルシウム濃度C0とカルシウム濃度の増加分ΔCとの和(C0+ΔC)に置き換えた上で、溶鋼中のカルシウム濃度Cが溶鋼の目標カルシウム濃度CTと一致するまでの必要環流時間t0(=カルシウム濃度Cが目標カルシウム濃度CTと一致する時点の経過時間t)を求めるために、(2)式を変換した式である。
Figure 0005849667
(1)式によって求めた必要環流時間t0を確保して溶鋼を減圧下で環流することで、目標カルシウム濃度CT以下の濃度の溶鋼を溶製することが実現される。ここで、目標カルシウム濃度CTは、溶製対象の低カルシウム鋼のカルシウム濃度の規格値或いは目標値の上限値とする。つまり、溶鋼中カルシウム濃度が0.0005質量%以下である低カルシウム鋼を溶製する場合には、目標カルシウム濃度CTを0.0005質量%に設定し、溶鋼中カルシウム濃度が0.0004質量%以下である低カルシウム鋼を溶製する場合には、目標カルシウム濃度CTを0.0004質量%に設定する。
また、本発明は効率的な精錬を目的としており、必要環流時間t0を越えて大幅に処理時間を長くすることは適切ではなく、従って、必要環流時間t0よりも60秒を越えない範囲内で溶鋼の環流を終了する、つまり、精錬を終了する。本発明において、溶鋼環流の終了した時点とは、真空槽の排気を終了した時点と定義する。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る低カルシウム鋼の溶製方法は、カルシウムの含有量が0.0005質量%以下更には0.0004質量%以下である低カルシウム鋼の溶製方法であって、RH真空脱ガス装置の真空槽と該真空槽直下の取鍋との間を環流しているAl脱酸後の溶鋼に、成分調整用の金属または合金鉄を前記真空槽にて添加して溶鋼の成分を調整するにあたり、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点からの必要環流時間t0を、(1)式の目標カルシウム濃度CTを溶製対象の低カルシウム鋼のカルシウム濃度の規格値或いは目標値の上限値とする上記の(1)式によって求め、求めた必要環流時間t0を確保し、且つ、必要環流時間t0よりも60秒を越えない範囲内で溶鋼を環流し、その後、精錬を終了することを特徴とする。
次いで、本発明を、図面を参照して説明する。図1は、本発明を実施する際に使用するRH真空脱ガス装置の1例を示す概略断面図である。図1において、1はRH真空脱ガス装置、2は取鍋、3は溶鋼、4はスラグ、5は真空槽、6は上部槽、7は下部槽、8は上昇側浸漬管、9は下降側浸漬管、10は環流用ガス吹込管、11はダクト、12は原料投入口である。真空槽5は、内部に耐火物が施工された、横断面が円形の上部槽6及び下部槽7から構成されている。
RH真空脱ガス装置1では、溶鋼3を収納する取鍋2を真空槽5の直下に搬送し、取鍋2を昇降装置(図示せず)によって上昇させて、上昇側浸漬管8及び下降側浸漬管9を取鍋2に収容された溶鋼3に浸漬させる。そして、環流用ガス吹込管10から上昇側浸漬管8の内部にArガスを環流用ガスとして吹き込むとともに、真空槽5の内部をダクト11に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽5の内部を減圧する。真空槽5の内部が減圧されると、取鍋2に収容された溶鋼3は、ガスリフト効果により、環流用ガス吹込管10から吹き込まれるArガスとともに上昇側浸漬管8を上昇して真空槽5の内部に流入し、その後、下降側浸漬管9を介して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。即ち、溶鋼3を取鍋2と真空槽5との間を環流させることで、溶鋼3は真空槽内で減圧下に曝されて、脱炭素、脱水素、脱窒素、脱酸素などが進行する。また、環流中に原料投入口12から金属や合金鉄などの成分調整用原料を真空槽内の溶鋼3に投入することで、成分調整用原料の空気酸化を防止した状態で溶鋼3の成分調整が行われるように構成されている。
転炉或いは電気炉などの精錬炉から取鍋2へ出鋼された溶鋼3を、直接或いは取鍋精錬炉などで事前に溶鋼処理をした後に、RH真空脱ガス装置1に搬送し、RH真空脱ガス装置1にて、脱炭素、脱水素、脱窒素、脱酸素などの精錬を溶鋼3に施す。このRH脱ガス精錬前或いは精錬中に溶鋼3から分析用試料を採取して溶鋼3の成分を分析し、溶鋼3の目標化学成分に不足分がある場合には、原料投入口12から成分調整用の金属または合金鉄を添加する。この成分調整は、溶鋼3がAl脱酸された後である限り、脱水素、脱窒素、脱酸素などの精錬中に行ってもよく、また、一度に行ってもよいし、複数回に分けて実施しても構わない。更に、複数種類の成分調整用原料を一括して投入しても構わない。
溶鋼3のAl脱酸は、転炉や電気炉などの精錬炉、これらの精錬炉から取鍋への出鋼時、取鍋精錬炉での処理中、RH脱ガス精錬中など、RH脱ガス精錬終了前であるならば、どの時点で行っても構わない。
本発明において、溶製対象である溶鋼3の目標カルシウム濃度CT(溶製対象である溶鋼3のカルシウム濃度の規格または目標の上限値)に対し、(1)式を用いて必要環流時間t0を決定するためには、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度C0、最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄でのカルシウム添加歩留まりYai、最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のカルシウム濃度Rai、最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄の添加量Wai、処理溶鋼量W、環流ガス流量G、真空槽5の横断面積A、溶鋼環流量Q、真空槽内の圧力Pが必要である。尚、真空槽5の横断面積Aは、耐火物で囲まれた内側の横断面積である。
これらの因子のうち、真空槽5の横断面積Aは設備仕様で決まっており、また、最後に添加される成分調整用の金属または合金鉄の添加量Waiも溶鋼3の目標化学成分から自ずと決まり、処理溶鋼量W、環流ガス流量G及び真空槽内の圧力Pは測定・制御が可能である。溶鋼環流量Qは、装置形状、環流ガス流量G、真空槽内圧力Pによって決まるものであり、従って、予めトレーサーを用いるなどの何らかの方法を用いて各操業条件における溶鋼環流量Qを測定しておいてもよいし、参考文献1(鉄と鋼、vol.73(1987)、S176)に記載される下記の(4)式を用いて溶鋼環流量Q(kg/s)を算出してもよい。但し、(4)式において、qは溶鋼環流量(トン/min)、gは環流ガス流量(NL/min)、Dは上昇側浸漬管8の内径(m)、P1は大気圧(Pa)、P2は真空槽内の圧力(Pa)であり、求めた溶鋼環流量q(トン/min)を溶鋼環流量Q(kg/s)に換算する必要がある。
Figure 0005849667
また、最後に添加される成分調整用の金属または合金鉄のカルシウム濃度Raiは予め分析して把握しておき、これら金属または合金鉄の溶鋼中へのカルシウム歩留りYaiも予め測定して把握しておく。成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度C0は、RH真空脱ガス装置1で溶鋼3をAl脱酸した後、最後の金属または合金鉄を添加する直前に溶鋼3から分析試料を採取し、この試料のカルシウム分析値を用いることができる。また、RH脱ガス精錬前にAl脱酸されている溶鋼であれば、RH真空脱ガス装置1へ到着時に採取した分析試料のカルシウム濃度、或いは、RH脱ガス精錬中に採取した分析試料のカルシウム濃度と、分析試料採取後に添加された金属または合金鉄からの混入カルシウム量とに基づき、(2)式を用いて、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度C0を推定することができる。何れの方法を用いて溶鋼中カルシウム濃度C0を把握してもよい。
このようにして各因子の値を定め、(1)式を用いて、溶鋼3の目標カルシウム濃度CTに応じて必要環流時間t0を算出する。最後の金属または合金鉄を添加した後、算出された必要環流時間t0を確保し、必要環流時間t0よりも60秒を越えない範囲内で溶鋼3を環流したなら、真空槽内を大気圧に戻し、RH脱ガス精錬を終了する。
このようにして溶鋼3にRH脱ガス精錬を施すことで、脱ガス精錬前の溶鋼中カルシウム濃度が高かったり、カルシウムを不純物として含んだ金属または合金鉄を成分調整用として添加したりしても、カルシウム含有量が0.0005質量%以下、更には0.0004質量%以下である低カルシウム鋼を、安価に安定して溶製することが実現される。
転炉で約250トンの溶鋼を酸素吹錬した後に、溶製した溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼の際に、Al合金を添加して溶鋼をAl脱酸した。出鋼終了後、真空槽の横断面積Aが3.2m2のRH真空脱ガス装置へ取鍋を搬送し、RH脱ガス精錬を行った。内径Dが0.6mの上昇側浸漬管及び下降側浸漬管を溶鋼に浸漬させ、環流用ガス吹込管から上昇側浸漬管の内部にArガスを0.033Nm3/sで吹き込み、溶鋼を環流させた。溶鋼環流量Qは参考文献1に記載される(4)式を用いて計算した。溶鋼の目標カルシウム濃度CTは0.0005質量%とした。
成分調整用の金属及び合金鉄のカルシウム濃度Raiは予め分析し、成分調整用の金属及び合金鉄のカルシウム歩留まりYaiは予め調査した。
本実施例においては、成分調整用の金属及び合金鉄のうちで最後に添加されるものはFe−Si合金鉄であり、そのカルシウム濃度は0.9質量%、溶鋼添加時のカルシウム歩留まりは50%であった。最後に添加されるFe−Si合金鉄の添加直前に溶鋼から分析試料を採取し、溶鋼のカルシウム濃度C0を分析した。
分析試料採取後にFe−Si合金鉄を必要量添加し、(1)式の必要環流時間t0を満たす処理時間の環流処理を行った。精錬終了後、溶鋼から分析試料を採取し、カルシウム濃度を分析した。
また、比較例として、Fe−Si合金鉄の添加後に300秒間一定の環流処理を実施する操業も行い、この場合についても同様に調査した。表1に、本発明例及び比較例における処理条件及び調査結果を示す。
Figure 0005849667
表1に示すように、本発明例11〜14では実際の環流時間と(1)式で計算される必要環流時間t0との差Δtが60秒以内に処理を完了しており、溶鋼のカルシウム濃度も目標値以下に低減されていた。一方、比較例11、12では溶鋼中のカルシウム濃度が目標値に到達しておらず、また、比較例13、14では環流時間が過剰になっていた。
転炉で約250トンの溶鋼を酸素吹錬した後に、溶製した溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼後、取鍋を取鍋精錬炉に搬送し、金属Alを添加して溶鋼をAl脱酸し、その後、溶鋼に脱硫処理を施した。脱硫処理後、溶鋼の一部の成分を調整した後、真空槽の横断面積Aが2.5m2のRH真空脱ガス装置へ取鍋を搬送し、RH脱ガス精錬を行った。内径Dが0.56mの上昇側浸漬管及び下降側浸漬管を溶鋼に浸漬させ、環流用ガス吹込管から上昇側浸漬管の内部にArガスを0.033Nm3/sで吹き込み、溶鋼を環流させた。溶鋼環流量Qは参考文献1に記載される(4)式を用いて計算した。溶鋼の目標カルシウム濃度CTは0.0004質量%とした。
成分調整用の金属及び合金鉄のカルシウム濃度Raiは予め分析し、成分調整用の金属及び合金鉄のカルシウム歩留まりYaiは予め調査した。
本実施例においては、成分調整用の金属及び合金鉄のうちで最後に添加されるものは電解Mn、または、電解MnとFe−Si合金鉄であり、このうち、電解Mnのカルシウム濃度は0.3質量%、電解Mnの溶鋼添加時のカルシウム歩留まりは20%であった。また、Fe−Si合金鉄のカルシウム濃度は0.9質量%、溶鋼添加時のカルシウム歩留まりは50%であった。
最後に添加される電解Mnまたは電解Mn及びFe−Si合金鉄の添加時点直前の溶鋼中カルシウム濃度C0は、RH脱ガス精錬開始時の溶鋼中カルシウム濃度を分析し、その後添加した合金からの混入カルシウム分を考慮し、(2)式によって計算した。
電解Mnまたは電解MnとFe−Si合金鉄とを必要量添加し、(1)式の必要環流時間t0を満たす処理時間の環流処理を行った。精錬終了後、溶鋼から分析試料を採取し、カルシウム濃度を分析した。
また、比較例として、電解Mnまたは電解MnとFe−Si合金鉄とを必要量添加した後、900秒間一定の環流処理を実施する操業も行い、この場合についても同様に調査した。表2に、本発明例及び比較例における処理条件及び調査結果を示す。
Figure 0005849667
表2に示すように、本発明例21〜24では実際の処理時間と(1)式で計算される必要環流時間t0との差Δtが60秒以内に処理を完了しており、溶鋼のカルシウム濃度も目標値以下に低減されていた。一方、比較例21、22では溶鋼中のカルシウム濃度が目標値に到達しておらず、また、比較例23、24では環流時間が過剰になっていた。
1 RH真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 スラグ
5 真空槽
6 上部槽
7 下部槽
8 上昇側浸漬管
9 下降側浸漬管
10 環流用ガス吹込管
11 ダクト
12 原料投入口

Claims (1)

  1. カルシウムの含有量が0.0005質量%以下である低カルシウム鋼の溶製方法であって、RH真空脱ガス装置の真空槽と該真空槽直下の取鍋との間を環流しているAl脱酸後の溶鋼に、成分調整用の金属または合金鉄を前記真空槽にて添加して溶鋼の成分を調整するにあたり、成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点からの必要環流時間t0を、(1)式の目標カルシウム濃度CTを溶製対象の低カルシウム鋼のカルシウム濃度の上限値とする下記の(1)式によって求め、求めた必要環流時間t0を確保し、且つ、必要環流時間t0よりも60秒を越えない範囲内で溶鋼を環流し、その後、精錬を終了することを特徴とする、低カルシウム鋼の溶製方法。
    Figure 0005849667
    但し、(1)式において、t0:必要環流時間(s)、C0:成分調整用の金属または合金鉄の最後の添加時点直前における溶鋼中カルシウム濃度(質量%×104)、Yai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄でのカルシウム添加歩留まり(−)、Rai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄のカルシウム濃度(質量%)、Wai:最後に添加される1種または2種以上の金属または合金鉄のうちでi番目の金属または合金鉄の添加量(kg)、W:処理溶鋼量(kg)、CT:低カルシウム鋼の目標カルシウム濃度(質量%×104)、G:環流ガス流量(Nm3/s)、A:真空槽の横断面積(m3)、Q:溶鋼環流量(kg/s)、P:真空槽内の圧力(Pa)である。
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