本発明の一実施の形態に係る共焦点顕微鏡システムについて図面を参照しながら説明する。
(1)共焦点顕微鏡システムの基本構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る共焦点顕微鏡システム500の構成を示すブロック図である。図1に示すように、共焦点顕微鏡システム500は、測定部100、PC(パーソナルコンピュータ)200、制御部300および表示部400を備える。測定部100は、レーザ光源10、X−Yスキャン光学系20、受光素子30、照明用白色光源40、カラーCCD(電荷結合素子)カメラ50およびステージ60を含む。ステージ60上には、観察対象物Sが載置される。
レーザ光源10は、例えば半導体レーザである。レーザ光源10から出射されたレーザ光は、レンズ1により平行光に変換された後、ハーフミラー4を透過してX−Yスキャン光学系20に入射する。なお、レーザ光源10に代えて水銀ランプ等の他の光源が用いられてもよい。この場合、水銀ランプ等の光源とX−Yスキャン光学系20との間に帯域通過フィルタが配置される。水銀ランプ等の光源から出射された光は、帯域通過フィルタを通過することにより単色光となり、X−Yスキャン光学系20に入射する。
X−Yスキャン光学系20は、例えばガルバノミラーである。X−Yスキャン光学系20は、ステージ60上の観察対象物Sの表面上においてレーザ光をX方向およびY方向に走査する機能を有する。X方向、Y方向およびZ方向の定義については後述する。X−Yスキャン光学系20により走査されたレーザ光は、ハーフミラー5により反射された後、ハーフミラー6を透過し、対物レンズ3によりステージ60上の観察対象物Sに集光される。なお、ハーフミラー4〜6に代えて偏光ビームスプリッタが用いられてもよい。
観察対象物Sにより反射されたレーザ光は、対物レンズ3およびハーフミラー6を透過した後、ハーフミラー5により反射され、X−Yスキャン光学系20を透過する。X−Yスキャン光学系20を透過したレーザ光は、ハーフミラー4により反射され、レンズ2により集光され、ピンホール部材7のピンホールおよびND(Neutral Density)フィルタ8を透過して受光素子30に入射する。このように、本実施の形態においては反射型の共焦点顕微鏡システム500が用いられるが、観察対象物Sが細胞等の透明体である場合には、透過型の共焦点顕微鏡システムが用いられてもよい。
ピンホール部材7のピンホールは、レンズ2の焦点位置に配置される。NDフィルタ8は、受光素子30に入射するレーザ光の強度を減衰させるために用いられる。そのため、レーザ光の強度が十分減衰されている場合には、NDフィルタ8は設けられなくてもよい。
本実施の形態では、受光素子30は光電子増倍管である。受光素子30としてフォトダイオードおよび増幅器を用いてもよい。受光素子30は、受光量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ)を出力する。制御部300は、2つのA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)、FIFO(First In First Out)メモリおよびCPU(中央演算処理装置)を含む。受光素子30から出力される受光信号は、制御部300の1つのA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は画素データとして順次PC200に転送される。
照明用白色光源40は、例えばハロゲンランプまたは白色LED(発光ダイオード)である。照明用白色光源40により発生された白色光は、ハーフミラー6により反射された後、対物レンズ3によりステージ60上の観察対象物Sに集光される。
観察対象物Sにより反射された白色光は、対物レンズ3、ハーフミラー6およびハーフミラー5を透過してカラーCCDカメラ50に入射する。カラーCCDカメラ50に代えてCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ等の撮像素子が用いられてもよい。カラーCCDカメラ50は、受光量に対応する電気信号を出力する。カラーCCDカメラ50の出力信号は、制御部300の他の1つのA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、カメラデータとして順次PC200に転送される。
制御部300は、画素データおよびカメラデータをPC200に与えるとともに、PC200からの指令に基づいてNDフィルタ8によるレーザ光の減衰率、受光素子30のゲイン(受光感度)およびカラーCCDカメラ50を制御する。また、制御部300は、PC200からの指令に基づいてX−Yスキャン光学系20を制御することによりレーザ光を観察対象物S上でX方向およびY方向に走査させる。
対物レンズ3は、レンズ駆動部63によりZ方向に移動可能に設けられる。制御部300は、PC200からの指令に基づいてレンズ駆動部63を制御することにより対物レンズ3をZ方向に移動させることができる。これにより、対物レンズ3に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置を変化させることができる。
PC200は、CPU(中央演算処理装置)210、ROM(リードオンリメモリ)220、作業用メモリ230および記憶装置240を含む。ROM220には、システムプログラムが記憶される。作業用メモリ230は、RAM(ランダムアクセスメモリ)からなり、種々のデータの処理のために用いられる。記憶装置240は、ハードディスク等からなる。記憶装置240には、表面状態観察プログラムが記憶されるとともに、制御部300から与えられる画素データおよびカメラデータ等の種々のデータを保存するために用いられる。表面状態観察プログラムの詳細は後述する。
CPU210は、制御部300から与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。以下、画素データに基づいて生成される画像データを共焦点画像データと呼ぶ。また、共焦点画像データに基づいて表示される画像を共焦点画像と呼ぶ。
CPU210は、制御部300から与えられるカメラデータに基づいて画像データを生成する。以下、カメラデータに基づいて生成される画像データをカメラ画像データと呼ぶ。また、カメラ画像データに基づいて表示される画像をカメラ画像と呼ぶ。
CPU210は、生成した共焦点画像データおよびカメラ画像データに作業用メモリ230を用いて各種処理を行うとともに、共焦点画像データに基づく共焦点画像およびカメラ画像データに基づくカメラ画像を表示部400に表示させる。また、CPU210は、後述するステージ駆動部62に駆動パルスを与える。
表示部400は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。
ステージ60は、X方向移動機構、Y方向移動機構およびZ方向移動機構を有する。X方向移動機構、Y方向移動機構およびZ方向移動機構には、ステッピングモータが用いられる。
ステージ60のX方向移動機構、Y方向移動機構およびZ方向移動機構は、ステージ操作部61およびステージ駆動部62により駆動される。使用者は、ステージ操作部61を手動で操作することにより、ステージ60を対物レンズ3に対して相対的にX方向、Y方向およびZ方向に移動させることができる。
ステージ駆動部62は、PC200より与えられる駆動パルスに基づいて、ステージ60のステッピングモータに電流を供給することにより、ステージ60を対物レンズ3に相対的にX方向、Y方向またはZ方向に移動させることができる。
(2)共焦点画像、超深度画像および高さ画像
図2は、X方向、Y方向およびZ方向を定義するための図である。図2に示すように、対物レンズ3により集光されたレーザ光が観察対象物Sに照射される。本実施の形態においては、対物レンズ3の光軸の方向をZ方向と定義する。また、Z方向と直交する面において、互いに直交する二方向をそれぞれX方向およびY方向と定義する。X方向、Y方向およびZ方向を矢印X,Y,Zでそれぞれ示す。
Z方向において対物レンズ3に対する観察対象物Sの表面の相対的な位置を観察対象物SのZ方向の位置と呼ぶ。共焦点画像データの生成は、単位領域ごとに行なわれる。単位領域は対物レンズ3の倍率により定まる。
観察対象物SのZ方向の位置が一定の状態で、X−Yスキャン光学系20により単位領域内のY方向の端部でレーザ光がX方向に走査される。X方向の走査が終了すると、レーザ光がX−Yスキャン光学系20によりY方向に一定の間隔変移される。この状態でレーザ光がX方向に走査される。単位領域内でレーザ光のX方向の走査およびY方向の変移が繰り返されることにより、単位領域のX方向およびY方向の走査が終了する。次に、対物レンズ3がZ方向に移動される。それにより、対物レンズ3のZ方向の位置が前回と異なる一定の状態で、単位領域のX方向およびY方向の走査が行なわれる。観察対象物SのZ方向の複数の位置で単位領域のX方向およびY方向の走査が行なわれる。
観察対象物SのZ方向の位置ごとにX方向およびY方向の走査により共焦点画像データが生成される。これにより、単位領域内でZ方向の位置が異なる複数の共焦点画像データが生成される。
ここで、共焦点画像データのX方向の画素数は、X−Yスキャン光学系20によるレーザ光のX方向の走査速度と制御部300のサンプリング周期とにより定まる。1回のX方向の走査(1本の走査線)におけるサンプリング数がX方向の画素数となる。また、単位領域の共焦点画像データのY方向の画素数は、X方向の走査の終了ごとのX−Yスキャン光学系20によるレーザ光のY方向の変移量により定まる。Y方向における走査線の数がY方向の画素数となる。さらに、単位領域の共焦点画像データの数は、対物レンズ3のZ方向の移動回数により定まる。単位領域の複数の共焦点画像データに基づいて後述する方法で、超深度画像データおよび高さ画像データが生成される。
図2の例では、まず、ステージ60の最初の位置で単位領域s1における観察対象物Sの複数の共焦点画像データが生成されるとともに単位領域s1の超深度画像データおよび高さ画像データが生成される。続いて、ステージ60が順次移動することにより単位領域s2〜s4における観察対象物Sの複数の共焦点画像データが生成されるとともに単位領域s2〜s4の超深度画像データおよび高さ画像データが生成される。この場合、隣接する単位領域の一部が互いに重なるように、単位領域s1〜s4が設定されてもよい。それにより、パターンマッチングを行うことにより、複数の単位領域s1〜s4の超深度画像データおよび高さ画像データを高い精度で連結することができる。特に、複数の単位領域の合計の面積が後述する画素データの取得範囲よりも大きい場合には、取得範囲からはみ出す部分の面積に相当する部分が重なり部分として設定される。
図3は、1つの画素についての観察対象物SのZ方向の位置と受光素子30の受光強度との関係を示す図である。図1に示したように、ピンホール部材7のピンホールはレンズ2の焦点位置に配置される。そのため、観察対象物Sの表面が対物レンズ3の焦点位置にあるときに、観察対象物Sにより反射されたレーザ光がピンホール部材7のピンホールの位置に集光される。それにより、観察対象物Sにより反射されたレーザ光の大部分がピンホール部材7のピンホールを通過して受光素子30に入射する。この場合、受光素子30の受光強度は最大になる。それにより、受光素子30から出力される受光信号の電圧値は最大となる。
一方、観察対象物Sの表面が対物レンズ3の焦点位置が外れた位置にあるときには、観察対象物Sにより反射されたレーザ光はピンホール部材7のピンホールの前または後の位置に集光される。それにより、観察対象物Sにより反射されたレーザ光の多くはピンホール部材7のピンホールの周囲の部分で遮られ、受光素子30の受光強度は低下する。それにより、受光素子30から出力される受光信号の電圧値は低下する。
このように、観察対象物Sの表面が対物レンズ3の焦点位置にある状態で受光素子30の受光強度分布にピークが現れる。各単位領域の複数の共焦点画像データから、画素ごとにZ方向における受光強度分布が得られる。それにより、画素ごとに受光強度分布のピーク位置とピーク強度(ピークの受光強度)とが得られる。
各単位領域の複数の画素についてのZ方向におけるピーク位置を表すデータを高さ画像データと呼び、高さ画像データに基づいて表示される画像を高さ画像と呼ぶ。高さ画像は、観察対象物Sの表面形状を表す。また、各単位領域の複数の画素についてのピーク強度を表すデータを超深度画像データと呼び、超深度画像データに基づいて表される画像を超深度画像と呼ぶ。超深度画像は、観察対象物Sの表面のすべての部分に対物レンズ3の焦点が合った状態で得られる画像である。PC200は、制御部300から与えられる単位領域の複数の画素データに基づいて単位領域の複数の共焦点画像データを生成し、複数の共焦点画像データに基づいて単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データを生成する。
(3)ピーク強度と観察対象物の形状との関係
図4は、ピーク強度と観察対象物Sの形状との関係を説明するための図である。図4(a)に示すように、例えば円柱形状を有する観察対象物Sをその観察対象物Sの中心軸SCがY方向に平行となるように配置する。この状態で、観察対象物Sの上側の外周面の周方向に沿う線SL上の高さ画像データおよび超深度画像データを生成する。
観察対象物Sの外周面のうちの上端部分SUはXY平面にほぼ平行である。上端部分SUが対物レンズ3の焦点位置にある場合、図4(a)に太い矢印RAで示すように、焦点位置に集光されたレーザ光のほぼ全てが対物レンズ3に向かって反射し、その対物レンズ3を透過して受光素子30に入射する。
一方、観察対象物Sの外周面のうちの両側端部分SE1,SE2はXY平面に対してほぼ垂直である。両側端部分SE1,SE2の近傍の部分が対物レンズ3の焦点位置にある場合、図4(a)に太い点線矢印RB1で示すように、焦点位置に集光されたレーザ光のほぼ全てが観察対象物Sの側方に向かって反射する。そのため、図4(a)に点線矢印RB2で示すように、両側端部分SE1,SE2の近傍で反射されるレーザ光はほとんど対物レンズ3を透過せず、受光素子30にもほとんど入射しない。
上記のように、観察対象物Sに集光されるレーザ光の強度が一定である場合、受光素子30の受光強度は、対物レンズ3の焦点位置が観察対象物Sの上端部分SUに近づくにつれて大きくなり、対物レンズ3の焦点位置が観察対象物Sの両側端部分SE1,SE2に近づくにつれて小さくなる。
図4(b)にピーク強度と観察対象物SのX方向の位置との関係が示されている。図4(b)に示すように、観察対象物Sの上端部分SUで反射されるレーザ光によるピーク強度の値αに対して、観察対象物Sの両側端部分SE1,SE2の近傍で反射されるレーザ光によるピーク強度の値βは十分に小さい。
高さ画像データおよび超深度画像データは、観察対象物SのZ方向の複数の位置でレーザ光がX方向およびY方向に走査されることにより取得される複数の画素データに基づいて生成される。対物レンズ3の焦点位置が観察対象物Sの表面上にある状態で取得される画素データの値が、ピーク強度の値として取得される。
画素データは受光素子30から出力される受光信号に対応するデジタル信号である。また、画素データは制御部300のA/D変換器から出力される。したがって、画素データの上限値は、A/D変換器の出力レンジの上限値(以下、出力上限値maxと呼ぶ。)である。
本実施の形態に係る共焦点顕微鏡システムでは、感度パラメータを変更することができる。ここで、感度パラメータとは、観察対象物Sの表面の状態(反射率、向き、粗さおよび色等)が一定の条件で制御部300により取得されるべき画素データの値を調整するためのパラメータをいう。
画素データの値は、レーザ光源10の光量が大きいほど大きく、レーザ光源10の光量が小さいほど小さい。また、画像データの値は、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率が大きいほど小さく、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率が小さいほど大きい。さらに、画素データの値は、受光素子30のゲインが高いほど大きく、受光素子30のゲインが低いほど小さい。したがって、レーザ光源10の光量、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率および受光素子30のゲインのうち少なくとも1つを制御することにより感度パラメータを変更することができる。
観察対象物Sの表面の状態が一定の条件で感度パラメータが高く設定されると、受光素子30から出力される受光信号のレベルが高くなり、制御部300により取得される画素データの値が大きくなる。一方、観察対象物Sの表面の状態が一定の条件で感度パラメータが低く設定されると、受光素子30から出力される受光信号のレベルが低くなり、制御部300により取得される画素データの値が小さくなる。
感度パラメータが高すぎると、受光素子30から出力される受光信号のレベルが飽和し、制御部300により取得される画素データの値が出力上限値maxで飽和する可能性がある。例えば、対物レンズ3の焦点位置が図4(a)の観察対象物Sの上端部分SUの画素上にあるときに、取得される画素データの値が出力上限値maxで飽和していると、その画素におけるピーク強度およびピーク位置を取得することができない。そこで、本実施の形態では、高さ画像データおよび超深度画像データを生成するために取得される複数の画素データの値が出力上限値maxよりも小さくなるように感度パラメータが設定される。
一方、感度パラメータが低すぎると、受光素子30から出力される受光信号のレベルがノイズレベル以下となり、制御部300により取得される画素データの値が受光素子30から出力されるノイズのデジタル値(以下、ノイズレベルnlと呼ぶ。)以下になる可能性がある。例えば、図4(a)の両側端部分SE1,SE2の近傍の画素に対応する画素データの値がノイズレベルnl以下であると、両側端部分SE1,SE2の近傍の画素に対応する画素データのピークを受光素子30のノイズから明確に識別することができない。そこで、本実施の形態ではワイドダイナミックレンジ処理が行われる。ワイドダイナミックレンジ処理について説明する。
(4)ワイドダイナミックレンジ処理
図5は、ワイドダイナミックレンジ処理を説明するための図である。ワイドダイナミックレンジ処理においては、まず取得される複数の画素データの値が出力上限値maxよりも小さくなるように感度パラメータを設定する。以下では、ワイドダイナミックレンジ処理の開始後、初めに設定される感度パラメータの値を第1の感度値と呼ぶ。
具体的には、初めに対物レンズ3をZ方向の任意の位置に保持した状態で、単位領域のX方向およびY方向の走査を行うことにより、単位領域内の全ての画素に対応する画素データを取得する。この状態で、いずれかの画素データの値が出力上限値maxである場合には、感度パラメータを減少させるために、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を一定量増加させる。または、感度パラメータを減少させるために、レーザ光源10の光量または受光素子30のゲインを一定量減少させる。その後、再び単位領域のX方向およびY方向の走査を行うことにより、単位領域内の全ての画素に対応する画素データを取得する。
感度パラメータの減少および画素データの取得を繰り返すことにより、全ての画素データの値が出力上限値maxよりも小さくなった場合には、対物レンズ3を一定量Z方向に移動させる。続いて、上記の感度パラメータの減少、画素データの取得、画素データの判定動作および対物レンズ3のZ方向への移動を繰り返す。最終的に、対物レンズ3が、予め定められているZ方向の全範囲の移動を完了したときに設定されている感度パラメータの値が、第1の感度値として図1の作業用メモリ230に記憶される。このようにして、自動的に第1の感度値が設定される(第1の感度値の自動設定)。
上記では、観察対象物SのZ方向の複数の位置で単位領域のX方向およびY方向の走査を行うとともに複数の画素データを取得しつつ第1の感度値が設定される。これに限らず、第1の感度値は、使用者がPC200に接続されたマウス等のポインティングデバイスを操作することにより設定されてもよい(第1の感度値の手動設定)。使用者により第1の感度値が設定される例については後述する。
第1の感度値が設定された状態で、観察対象物SのZ方向の複数の位置で単位領域のX方向およびY方向の走査を行う。これにより、複数の画素データを取得し、単位領域内でZ方向の位置が異なる複数の共焦点画像データを生成する。複数の共焦点画像データに基づいて単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データを生成する。
高さ画像データおよび超深度画像データの生成時には、各画素ごとに対応する画素データのピーク値をピーク強度として検出する。また、抽出された各ピーク強度が取得されたときの対物レンズ3に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置をピーク位置として検出する。
図5(a)の上段に、第1の感度値で取得されたピーク強度と画素数との関係を示すヒストグラムが示される。このヒストグラムにおいては、縦軸が画素数を表し、横軸がピーク強度(画素ごとの画素データのピーク値)を表す。横軸において、ピーク強度の最大値(100)は、A/D変換器の出力上限値maxに相当する。
図5(a)の下段に、第1の感度値を用いて生成された超深度画像データに基づく超深度画像V1が示される。超深度画像V1は、観察対象物Sの上側の外周面を表す画像SV1を含む。画像SV1の略中央部分SUVの画素が図4(a)の上端部分SUの画素に対応し、画像SV1の両側辺E1V,E2Vの画素が図4(a)の両側端部分SE1,SE2の画素に対応する。
図5(a)の横軸において、ピーク強度の値tp1は、感度パラメータとして第1の感度値が設定されているときのノイズレベルnlに相当する。ピーク強度の値tp1は例えば3である。
この場合、値tp1以下の画素データを受光素子30のノイズから識別することはできない。そのため、値tp1以下では、受光素子30のノイズがピーク強度として検出される可能性がある。したがって、値tp1以下では正確なピーク強度およびピーク位置を取得することができない。
図5(a)の超深度画像V1においては、画像SV1の中央部およびその近傍の領域SA1で観察対象物Sの表面が複数レベルの濃淡により明確に表される。一方、画像SV1の両側部に沿った一定幅の領域SB1と画像SV1以外の領域SZとが、ほぼ同じ濃度(濃いハッチング)で表される。このように、低い値の画素データしか取得できない領域SB1,SZでは、受光素子30のノイズがピーク強度として検出されることにより、広い範囲に渡って画像の濃度が均一化してしまう。この場合、画像SV1と画像SV1以外の領域SZとの境界を識別することができない。
そこで、第1の感度値で単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データを生成した後、ピーク強度が値tp1以下である画素の数を検出するとともに、検出した画素数を単位領域の全画素数で除算する。このようにして算出される除算値を無効画素比率と呼ぶ。この場合、無効画素比率が大きいほど受光素子30のノイズから識別できないピークを有する画素データの数が多く、無効画素比率が小さいほど受光素子30のノイズから識別できないピークを有する画素データの数が少ない。
ワイドダイナミックレンジ処理においては、予め図1の記憶装置240に基準画素比率が記憶されている。これにより、算出された無効画素比率が基準画素比率以下であるか否かを判定する。
無効画素比率が基準画素比率よりも大きい場合には、レーザ光源10の光量、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率および受光素子30のゲインのうちの少なくとも1つを制御することにより、感度パラメータを第1の感度値よりも高い第2の感度値に変更する。
第2の感度値が設定された状態で、観察対象物SのZ方向の複数の位置で単位領域のX方向およびY方向の走査を行う。これにより、複数の画素データを取得し、単位領域内でZ方向の位置が異なる複数の共焦点画像データを生成する。複数の共焦点画像データに基づいて単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データを生成する。
図5(b)の上段に、第2の感度値で取得されたピーク強度と画素数との関係を示すヒストグラムが示される。このヒストグラムにおいては、縦軸が画素数を表し、横軸がピーク強度(画素ごとの画素データのピーク値)を表す。横軸において、ピーク強度の最大値(100)は、A/D変換器の出力上限値maxに相当する。
図5(b)の下段に、第2の感度値を用いて生成された超深度画像データに基づく超深度画像V2が示される。超深度画像V2は、観察対象物Sの上側の外周面を表す画像SV2を含む。画像SV2の略中央部分SUVの画素が図4(a)の上端部分SUの画素に対応し、画像SV2の両側辺E1V,E2Vの画素が図4(a)の両側端部分SE1,SE2の画素に対応する。
図5(b)の横軸において、ピーク強度の値tp2は、第1の感度値に対する第2の感度値の比率(=第2の感度値/第1の感度値)と図5(a)の値tp1との乗算値である。ピーク強度の値tp2は例えば97である。このように、第2の感度値は、ピーク強度の値tp2がピーク強度の最大値(100)よりもやや小さくなるように設定される。
なお、第2の感度値は、第1の感度値が設定されているときのNDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を予め定められた一定量減少させることにより設定されてもよいし、第1の感度値が設定されているときのレーザ光源10の光量または受光素子30のゲインを予め定められた一定量増加させることにより設定されてもよい。
感度パラメータを第1の感度値から第2の感度値に変更する場合、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率またはレーザ光源10の光量を受光素子30のゲインよりも優先的に制御することが好ましい。
NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率またはレーザ光源10の光量を制御する場合には、感度パラメータの変更の前後でノイズレベルnlの大きさがほとんど変化しない。したがって、感度パラメータを第1の感度値から第2の感度値に変更することによりノイズレベルnlが増加することが防止される。
図5(b)の横軸において、ピーク強度の値tp3は、感度パラメータとして第2の感度値が設定されているときのノイズレベルnlに相当する。ピーク強度の値tp3は例えば3である。
図5(b)の上段に示すように、感度パラメータとして第2の感度値が設定される場合には、多数の画素に対応するピーク強度が最大値(100)で飽和する。一方、感度パラメータとして第2の感度値が設定されることにより、ノイズレベルnlに相当するピーク強度の値tp3が、ピーク強度の値tp2よりも十分に小さくなる。これにより、第1の感度値でノイズレベルnl以下のピーク強度を有する画素について、第2の感度値でノイズレベルnlよりも大きい値のピーク強度を得ることが可能となる。
図5(b)の超深度画像V2においては、画像SV2の中央部およびその近傍の領域SA2で観察対象物Sの表面が一定の濃度(白色)で表され、画像SV2の両側部に沿った一定幅の領域SB2と画像SV2以外の領域SZとが複数レベルの濃淡により明確に表される。
上記のように、第1の感度値で単位領域の超深度画像データを生成し、第2の感度値で単位領域の超深度画像データを生成した後、2つの超深度画像データを合成する。ここでは、第1の感度値で生成される超深度画像データを第1の超深度画像データと呼び、第2の感度値で生成される超深度画像データを第2の超深度画像データと呼ぶ。
まず、単位領域の第1の超深度画像データのうち値tp1以下のピーク強度を有する画素に対応する部分のデータ(図5(a)の領域SB1)を削除する。また、単位領域の第2の超深度画像データのうち最大値(100)のピーク強度を有する画素に対応する部分のデータ(図5(b)の領域SA2)を削除する。
続いて、第2の超深度画像データの値を(tp1/tp2)の比率で圧縮する。具体的には、値tp1が3であり、値tp2が97である場合に、第2の超深度画像データの値に(3/97)を乗算する。その後、第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとを合成する。
第2の超深度画像データのうち値tp2よりも大きく最大値(100)よりも小さいピーク強度を有する画素に対応する部分の圧縮後のデータは、残りの第1の超深度画像データのうち値tp1よりも大きく値(3.09)(=100×(3/97))よりも小さいピーク強度を有する画素に対応する部分のデータと重複する。そこで、第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの重複部分では、第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの平均値を合成後の超深度画像データとして算出する。
これにより、図5(c)に示すように、超深度画像V1,V2が合成された超深度画像V3を得ることができる。超深度画像V3においては、図4の観察対象物Sの表面の上端部分SUから両側端部分SE1,SE2までが、複数レベルの濃淡により明確に表される。また、観察対象物Sの上側の外周面を表す画像SV3と画像SV3以外の領域SZとの境界も濃淡により明確に識別することができる。
上記に加えて、第1の感度値で単位領域の高さ画像データを生成し、第2の感度値で単位領域の高さ画像データを生成した後、2つの高さ画像データを合成する。ここでは、第1の感度値で生成される高さ画像データを第1の高さ画像データと呼び、第2の感度値で生成される高さ画像データを第2の高さ画像データと呼ぶ。
まず、単位領域の第1の高さ画像データのうち値tp1以下のピーク強度を有する画素に対応する部分のデータを削除する。次に、単位領域の第2の高さ画像データのうち最大値(100)のピーク強度を有する画素に対応する部分のデータを削除する。
続いて、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとを合成する。この場合においても、第2の高さ画像データのうち値tp2よりも大きく最大値(100)よりも小さいピーク強度を有する画素に対応する部分のデータは、残りの第1の高さ画像データのうち値tp1よりも大きく値(3.09)(=100×(3/97))よりも小さいピーク強度を有する画素に対応する部分のデータと重複する。そこで、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとの重複部分では、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとの平均値を合成後の高さ画像データとして算出する。このようにして、第1および第2の高さ画像データを合成する。
本実施の形態に係るワイドダイナミックレンジ処理は、無効画素比率が基準画素比率以下である場合に、第1の感度値により超深度画像データおよび高さ画像データが生成されることにより終了する。これにより、1回の測定で観察対象物Sの表面の状態を示す高さ画像データおよび超深度画像データが生成される。したがって、観察対象物Sの表面の状態を短時間で検出することができる。
(5)ワイドダイナミックレンジ処理の設定
図6は、表示部400の一表示例を示す図である。図6に示すように、表示部400の画面上には、画像表示領域410および条件設定領域420が表示される。画像表示領域410には、共焦点画像データに基づく共焦点画像またはカメラ画像データに基づくカメラ画像が表示される。画像表示領域410に、図4の観察対象物Sの上側の外周面を表す共焦点画像SVが表示される。条件設定領域420には、取得開始ボタン425および第1の感度パラメータ設定枠430が表示される。
第1の感度パラメータ設定枠430は、複数のボタンおよび操作用バーを含む。使用者は、画像表示領域410に共焦点画像またはカメラ画像が表示された状態で、PC200に接続されたマウス等のポインティングデバイスを用いて第1の感度パラメータ設定枠430内の複数のボタンおよび操作用バーを操作する。これにより、ワイドダイナミックレンジ処理の設定を行うことができる。第1の感度パラメータ設定枠430の詳細は後述する。
使用者が条件設定領域420の取得開始ボタン425を操作すると、Z方向の複数の位置でレーザ光が単位領域のX方向およびY方向に走査され、複数の画素データが取得される。これにより、単位領域内においてZ方向の異なる複数の位置に対応する複数の共焦点画像データが生成され、生成された複数の共焦点画像データに基づいて高さ画像データおよび超深度画像データが生成される。高さ画像データおよび超深度画像データの生成動作は、使用者が第1の感度パラメータ設定枠430を操作することによるワイドダイナミックレンジ処理の設定内容に応じて変化する。
第1の感度パラメータ設定枠430の詳細を説明する。図7は図6の第1の感度パラメータ設定枠430を示す図である。図7に示すように、第1の感度パラメータ設定枠430には、第1の感度値自動設定ボタン431、ゲイン手動調整バー432、フィルタ手動調整欄433、チェックボックス434およびワイドダイナミックレンジ設定ボタン435が表示される。ゲイン手動調整バー432は水平方向に移動可能なスライダ432a、左ボタン432bおよび右ボタン432cを有する。ゲイン手動調整バー432においては、スライダ432aの位置が現時点の受光素子30のゲインの大きさに対応する。
使用者は、図1の共焦点顕微鏡システム500のステージ60に観察対象物Sが載置された状態で、図7の第1の感度値自動設定ボタン431を操作する。これにより、上述のように対物レンズ3がZ方向の複数の位置に移動されつつ単位領域のX方向およびY方向の走査が行われ、取得される複数の画素データの値の全てが出力上限値maxよりも小さくなるように感度パラメータの値が第1の感度値に設定される。
上述のように、第1の感度値は、使用者により設定されてもよい。使用者は、スライダ432a、左ボタン432bおよび右ボタン432cのいずれかを操作することにより、スライダ432aの位置を変更することができる。この場合、制御部300は、変更されたスライダ432aの位置に応じて受光素子30のゲインを制御することにより第1の感度値を設定する。また、使用者は、フィルタ手動調整欄433を操作することにより、図1のNDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を変更することができる。この場合、制御部300は、使用者によるフィルタ手動調整欄433の操作に基づいてNDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を制御することにより第1の感度値を設定する。
第1の感度値が設定された状態で、使用者がチェックボックス434を指定すると、ワイドダイナミックレンジ設定ボタン435の操作が有効となる。
使用者が、ワイドダイナミックレンジ設定ボタン435を操作することにより、図6の表示部400に第2の感度パラメータ設定ウィンドウが表示される。図8は、第2の感度パラメータ設定ウィンドウを示す図である。
図8に示すように、第2の感度パラメータ設定ウィンドウ440には、チェックボックス441、ゲイン手動調整バー442、フィルタ手動調整欄443およびOKボタン444が表示される。
第2の感度パラメータ設定ウィンドウ440において、使用者がチェックボックス441を指定した後、OKボタン444を操作する。この場合、図6の取得開始ボタン425が操作されることにより、第1の感度値が設定された状態で単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データが生成された後、上述の無効画素比率が算出される。
算出された無効画素比率が基準画素比率よりも大きい場合には、感度パラメータが第1の感度値よりも高い第2の感度値に変更される。その後、第2の感度値が設定された状態で単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データが生成される。最後に、第1の感度値および第2の感度値で生成された第1および第2の高さ画像データが合成されるとともに、第1の感度値および第2の感度値で生成された第1および第2の超深度画像データが合成される。したがって、観察対象物Sの表面の状態が領域ごとに異なる場合でも、使用者が煩雑な操作を行うことなく、観察対象物Sの表面の状態を正確に検出することができる。
一方、算出された無効画素比率が基準画素比率以下である場合には、第1の感度値が設定された状態で取得された画素データに基づいて、単位領域の高さ画像データおよび超深度画像データが生成され、ワイドダイナミックレンジ処理が終了する。これにより、使用者が煩雑な操作を行うことなく、1回の測定で取得された複数の画素データに基づいて高さ画像データおよび超深度画像データが短時間で生成される。
第1の感度値と同様に、第2の感度値は、使用者により手動で設定されてもよい。ゲイン手動調整バー442においては、スライダ442aの位置が現時点の受光素子30のゲインの大きさに対応する。
チェックボックス441が指定されていない状態で、ゲイン手動調整バー442およびフィルタ手動調整欄443の操作が有効となる。この場合、使用者は、チェックボックス441を指定することなくスライダ442a、左ボタン442bおよび右ボタン442cのいずれかを操作することにより、スライダ442aの位置を変更することができる。使用者は、第2の感度パラメータ設定ウィンドウ440において、ゲイン手動調整バー442を操作した後OKボタン444を操作する。
この場合、制御部300は、図6の取得開始ボタン425が操作されることにより、第1の感度値で単位領域の第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データが生成された後、ゲイン手動調整バー442におけるスライダ442aの位置に基づいて受光素子30のゲインを制御することにより第2の感度値を設定する。
また、使用者は、フィルタ手動調整欄443を操作することにより、NDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を所望の値に設定することができる。使用者は、第2の感度パラメータ設定ウィンドウ440において、フィルタ手動調整欄443を操作した後OKボタン444を操作する。
この場合、制御部300は、図6の取得開始ボタン425が操作されることにより、第1の感度値で単位領域の第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データが生成された後、使用者により設定された値に基づいてNDフィルタ8によるレーザ光の減衰率を制御することにより第2の感度値を設定する。
上記のように、使用者により第2の感度値が設定された場合には、第1の感度値が設定された状態で単位領域の第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データが生成された後、第2の感度値が設定された状態で単位領域の第2の高さ画像データおよび第2の超深度画像データが生成される。その後、第1および第2の高さ画像データが合成されるとともに、第1および第2の超深度画像データが合成される。
(6)表面状態観察処理フロー
図9〜図12は、表面状態観察処理のフローチャートである。上記のワイドダイナミックレンジ処理は表面状態観察処理の一部を構成する。表面状態観察処理は、使用者により図6および図7の第1の感度パラメータ設定枠430が操作されることにより開始される。図1のCPU210は、記憶装置240に記憶される表面状態観察プログラムを実行することにより表面状態観察処理を行う。
図9に示すように、CPU210は、まず第1の感度値が設定されているか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、CPU210は、図1の作業用メモリ230に第1の感度値として感度パラメータの値が記憶されている場合に第1の感度値が設定されていると判定し、作業用メモリ230に第1の感度値として感度パラメータの値が記憶されていない場合に第1の感度値が設定されていないと判定する。
第1の感度値が設定されている場合、CPU210は、後述するステップS4の処理に進む。一方、第1の感度値が設定されていない場合、CPU210は、使用者により図7の第1の感度値自動設定ボタン431、ゲイン手動調整バー432およびフィルタ手動調整欄433のいずれかが操作されたか否かに基づいて、第1の感度値の自動設定または手動設定が指令されたか否かを判定する(ステップS2)。
第1の感度値の自動設定および手動設定のいずれもが指令されていない場合、CPU210は、ステップS1の処理に戻る。一方、CPU210は、第1の感度値の自動設定が指令された場合に自動的に第1の感度値を設定し、第1の感度値の手動設定が指令された場合に使用者によるゲイン手動調整バー432およびフィルタ手動調整欄433の操作に従って第1の感度値を設定する(ステップS3)。
続いて、CPU210は、使用者により図7のチェックボックス434が指定されたか否かに基づいて、ワイドダイナミックレンジ処理が指令されたか否かを判定する(ステップS4)。
ワイドダイナミックレンジ処理が指令された場合、CPU210は、使用者により図8のチェックボックス441が指定されたか否かに基づいて、第2の感度値の自動設定が指令されたか否かを判定する(ステップS5)。
第2の感度値の自動設定が指令された場合、CPU210は、使用者により図6の取得開始ボタン425が操作されたか否かに基づいて単位領域の複数の画像データの取得の開始が指令されたか否かを判定する(ステップS6)。
画像データの取得の開始が指令されていない場合、CPU210は、上記のステップS5の処理に戻る。一方、画像データの取得の開始が指令された場合、CPU210は、第1の感度値により複数の画素データを取得する(ステップS7)。
これにより、CPU210は、取得した複数の画素データに基づいて第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データを生成する(ステップS8)。続いて、CPU210は、第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データに基づいて、第2の感度値により複数の画素データを取得すべきか否かを判定するための値(以下、判定値と呼ぶ。)として無効画素比率を算出する(ステップS9)。
その後、CPU210は、無効画素比率が基準画素比率以上であるか否かを判定する(ステップS10)。無効画素比率が基準画素比率よりも小さい場合、CPU210は表面状態観察処理を終了する。一方、無効画素比率が基準画素比率以上である場合、CPU210は予め作業用メモリ230に記憶された第2の感度値により複数の画素データを取得する(ステップS11)。これにより、CPU210は、取得した複数の画素データに基づいて第2の高さ画像データおよび第2の超深度画像データを生成する(ステップS12)。
最後に、CPU210は、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとを合成するとともに、第1の超深度画像データと第2の超深度画像データとを合成し(ステップS13)、表面状態観察処理を終了する。
上記のステップS5において、第2の感度値の自動設定が指令されていない場合、CPU210は、使用者により手動で第2の感度値が設定されているか否かを判定する(ステップS21)。
第2の感度値が設定されている場合、CPU210は、後述するステップS24の処理に進む。一方、第2の感度値が設定されていない場合、CPU210は、使用者により図8のゲイン手動調整バー442およびフィルタ手動調整欄443のいずれかが操作されたか否かに基づいて、第2の感度値の手動設定が指令されたか否かを判定する(ステップS22)。
第2の感度値の手動設定が指令されていない場合、CPU210は、ステップS21の処理に戻る。一方、CPU210は、第2の感度値の手動設定が指令された場合に使用者による図8のゲイン手動調整バー442およびフィルタ手動調整欄443のうちの少なくとも一方の操作に従って第2の感度値を設定する(ステップS23)。
次に、CPU210は、使用者により図6の取得開始ボタン425が操作されたか否かに基づいて単位領域の複数の画像データの取得の開始が指令されたか否かを判定する(ステップS24)。
画像データの取得の開始が指令されていない場合、CPU210は、上記のステップS5の処理に戻る。一方、画像データの取得の開始が指令された場合、CPU210は、第1の感度値により複数の画素データを取得する(ステップS25)。
これにより、CPU210は、取得した複数の画素データに基づいて第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データを生成する(ステップS26)。
続いて、CPU210は、予め作業用メモリ230に記憶された第2の感度値により複数の画素データを取得する(ステップS27)。これにより、CPU210は、取得した複数の画素データに基づいて第2の高さ画像データおよび第2の超深度画像データを生成する(ステップS28)。
最後に、CPU210は、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとを合成するとともに、第1の超深度画像データと第2の超深度画像データとを合成し(ステップS29)、表面状態観察処理を終了する。
上記のステップS4において、ワイドダイナミックレンジ処理が指令されていない場合、CPU210は、使用者により図6の取得開始ボタン425が操作されたか否かに基づいて、単位領域の複数の画像データの取得の開始が指令されたか否かを判定する(ステップS31)。
画像データの取得の開始が指令されていない場合、CPU210は、上記のステップS1の処理に戻る。一方、画像データの取得の開始が指令された場合、CPU210は、第1の感度値により複数の画素データを取得する(ステップS32)。これにより、CPU210は、取得した複数の画素データに基づいて高さ画像データおよび超深度画像データを生成し(ステップS33)、表面状態観察処理を終了する。
上記の表面状態観察処理フローにおいては、ステップS5〜S13,S21〜S29の一連の処理が上述のワイドダイナミックレンジ処理に相当する。
(7)他の実施の形態
(7−1)上記実施の形態では、第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データの生成後に第2の感度値により複数の画素データを取得すべきか否かを判定するための判定値として無効画素比率が用いられるが、無効画素比率とは異なる値を判定値として用いることもできる。
例えば、CPU210は、第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データの生成後に、観察対象物Sの表面のうち予め定められた領域内の複数の画素(例えば単位領域内の5画素、10画素または全画素等)に対応する複数のピーク強度の値の和または平均値を判定値として算出する。
この場合、図1の記憶装置240に予め基準値が記憶される。これにより、CPU210は、複数のピーク強度の値の和または平均値が基準値以上であるか否かを判定し、和または平均値が基準値よりも小さい場合に表面状態観察処理を終了し、和または平均値が基準値以上である場合に第2の感度値により複数の画素データを取得してもよい。
あるいは、CPU210は、第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データの生成後に、生成された高さ画像データに基づいて単位領域内の全画素に対応する複数のピーク位置を表すデータを生データとして作業用メモリ230に記憶する。また、CPU210は、生データに対してノイズを除去するための平滑化処理(メディアンフィルタ処理等)を行い、平滑化処理後のデータを処理データとして作業用メモリ230に記憶する。続いて、CPU210は、作業用メモリ230に記憶された生データおよび処理データを読み込み、画素ごとに対応する処理データと生データとの差分を差分データとして算出する。その後、CPU210は、画素ごとに算出された差分データの和または平均値を判定値として算出する。
この場合においても、図1の記憶装置240に予め基準値が記憶される。これにより、CPU210は、複数の差分データの和または平均値が基準値以上であるか否かを判定し、和または平均値が基準値よりも小さい場合に表面状態観察処理を終了し、和または平均値が基準値以上である場合に第2の感度値により複数の画素データを取得してもよい。
(7−2)上記実施の形態では、第2の感度値が予め定められている。これに限らず、第2の感度値は、第1の感度値で取得される複数の画素データに基づいてCPU210により自動的に決定されてもよい。この場合、第2の感度値を適切な値に設定することができる。
例えば、一部が削除された第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの合成時に、2つの超深度画像データの重複部分に対応する画素の数が一定数以上となるように第2の感度値を設定する。
この場合、一部が削除された第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの間でパターンマッチングを行うことができる。したがって、第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとを精度よく合成することができる。
同様に、一部が削除された第1の高さ画像データと一部が削除された第2の高さ画像データとの合成時に、2つの高さ画像データの重複部分に対応する画素の数が一定数以上となるように第2の感度値を設定する。
この場合においても、一部が削除された第1の高さ画像データと一部が削除された第2の高さ画像データとの間でパターンマッチングを行うことができる。したがって、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとを精度よく合成することができる。
(7−3)上記では、無効画素比率を算出するための値tp1はノイズレベルnlに相当するが、値tp1は第1の感度値で取得される複数の画素データに基づいてCPU210により自動的に決定されてもよい。
例えば、一部が削除された第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの合成時に、2つの超深度画像データの重複部分に対応する画素の数が一定数以上となるように値tp1を設定する。
この場合、一部が削除された第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとの間でパターンマッチングを行うことができる。したがって、第1の超深度画像データと圧縮された第2の超深度画像データとを精度よく合成することができる。
同様に、一部が削除された第1の高さ画像データと一部が削除された第2の高さ画像データとの合成時に、2つの高さ画像データの重複部分に対応する画素の数が一定数以上となるように値tp1を設定する。
この場合においても、一部が削除された第1の高さ画像データと一部が削除された第2の高さ画像データとの間でパターンマッチングを行うことができる。したがって、第1の高さ画像データと第2の高さ画像データとを精度よく合成することができる。
(7−4)上記では、図8のチェックボックス441が指定されていない場合に、無効画素比率が算出されず、無効画素比率が基準画素比率以下であるか否かの判定も行われない。これに限らず、図8のチェックボックス441が指定されていない場合でも、CPU210は、第1の感度値による単位領域の第1の高さ画像データおよび第1の超深度画像データの生成後、無効画素比率が基準画素比率以下であるか否かの判定結果に基づいて、第2の感度値による画素データの取得を行うか否かを判定してもよい。
(7−5)上記では、共焦点顕微鏡システム500において表面状態観察処理が実行される。
これに限らず、上記の表面状態観察処理は、光源からの光を対物レンズ3を通して観察対象物に収束するように投射し、受光素子30に導かれる光の強さに対応して取得されるデジタル信号に基づいて観察対象物の表面の状態を観察する顕微鏡システムに適用することができる。投射された光の焦点位置を光軸方向に移動させつつ観察対象物の表面の状態を観察する顕微鏡システムとして、例えば光干渉法を用いた顕微鏡システムおよび光学顕微鏡システム等がある。
(7−6)上記実施の形態において、X−Yスキャン光学系20が制御されることによりレーザ光が観察対象物S上でX方向およびY方向に走査されるが、これに限定されない。ステージ60が移動されることによりレーザ光が観察対象物S上でX方向およびY方向に走査されてもよい。
また、レーザ光としてライン光(例えばX方向に延びる細長い光)が用いられてもよい。この場合、X−Yスキャン光学系20に代えてX方向への走査を行わないYスキャン光学系が用いられる。また、受光素子30に代えて、X方向に対応する方向に配列された複数の受光素子からなるラインCCDカメラ等が用いられる。
なお、ラインCCDカメラの各受光素子のY方向に対応する方向の受光面のサイズは一般的に数10μmである。この場合、ラインCCDカメラの受光面がレンズ2の焦点位置に配置される。観察対象物Sの表面が対物レンズ3の焦点位置にあるときに、観察対象物Sにより反射されたライン光がラインCCDカメラの受光面に集光される。それにより、観察対象物Sにより反射されたライン光の大部分がラインCCDカメラの受光面に入射する。
一方、観察対象物Sが対物レンズ3の焦点位置から外れた位置にあるときには、観察対象物Sにより反射されたライン光はラインCCDカメラの受光面の前または後の位置に集光される。それにより、観察対象物Sにより反射されたライン光の一部のみがラインCCDカメラの受光面に入射する。したがって、ラインCCDカメラの前にピンホール部材7を配置することが不要となる。
(7−7)上記実施の形態において、対物レンズ3がZ方向に移動されることにより対物レンズ3に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置が変化されるが、これに限定されない。ステージ60がZ方向に移動されることにより対物レンズ3に対する観察対象物Sの相対的なZ方向の位置が変化されてもよい。
(7−8)上記実施の形態において、X−Yスキャン光学系20が制御されることによりレーザ光が観察対象物S上でX方向およびY方向に走査されるが、これに限定されない。ステージ60が移動されることによりレーザ光が観察対象物S上でX方向およびY方向に走査されてもよい。
(7−9)上記実施の形態において、PC200のCPU210が制御部300の機能を有していてもよい。この場合、制御部300は設けられなくてもよい。
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
観察対象物Sが観察対象物の例であり、共焦点顕微鏡システム500が共焦点顕微鏡システムの例であり、レーザ光源10がレーザ光源の例であり、受光素子30が受光素子の例であり、X−Yスキャン光学系20が走査光学系の例であり、対物レンズ3が対物レンズの例であり、レンズ駆動部63がレンズ駆動部の例であり、NDフィルタ8が受光光学系の例である。
また、第1の感度値および第2の感度値で取得される複数の画素データが画素データの例であり、各画素のピーク値(ピーク強度)を示す画素データが画像データの例であり、制御部300が画素データ出力部の例であり、PC200が感度設定部および画像データ生成部の例である。
さらに、無効画素比率を算出するための値tp1がしきい値の例であり、高さ画像データおよび超深度画像データが表面画像データの例である。また、無効画素比率、複数のピーク強度の値の和または平均値、または複数の差分データの和または平均値が判定値の例であり、第1の感度値による複数の画素データの取得後に算出される無効画素比率が基準画素比率以下であること、複数のピーク強度の値の和または平均値が基準値以上であること、または複数の差分データの和または平均値が基準値以上であることが予め定められた条件の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。