JP5846950B2 - フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板及びその製造方法、並びにフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板及びその製造方法、並びにフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 Download PDF

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本発明は、フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板及びその製造方法、並びにフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関する。
自動車の排ガス経路に用いられる部材には、一般的に、耐酸化性や耐腐食性に優れるステンレス鋼が使われている。特に、使用温度が高温になる排ガス経路の上流部材、例えばエキゾーストマニホールド、触媒コンバータ、フロントパイプなどの排気系用部材には、エンジンから排出される高温の排気ガスを通すため、高い耐酸化性、高温強度、耐熱疲労特性など多様な特性が要求される。
従来は、上述したような自動車の排気系用部材には、特許文献1〜6にあるように、Nbを添加して高温強度を高めた材料SUS429(14Cr−Nb鋼)、また、Nbに加えてMoを添加した材料SUS444(19Cr−Nb−Mo鋼)等が使われてきた。いずれの材料もNb添加が前提となっている。これは、NbやMoによる固溶強化あるいは析出強化によって高温強度を高くするためである。
SUS429鋼は、比較的低合金のステンレス鋼であるため、加工性に優れるが、その使用環境は最高到達温度が750℃以下の部位に限られた。また、SUS444鋼は、最高到達温度が850℃でも耐えられる高い高温強度を有するが、SUS429鋼に比べると、加工性が劣る問題があった。
そこで、近年では、特許文献7、8に開示されている様に、SUS429鋼とSUS444鋼の中間グレード材として、SUS429鋼の課題であった耐熱性を向上させ、かつ加工性の低下を極力小さくした、Nb−Cu、Nb−Ti−Cuの複合添加鋼も開発されている。このような複合添加鋼の特徴は、Cuの固溶強化と析出強化を活用する事で、高温強度を高め、その一方で、NbやMoの添加量をSUS444に比べて減じる事により、加工性を向上させたことにある。
ここで、上述したようなCuの析出強化は、上記複合添加鋼を加工した後、排気系用部材等、使用温度が高温となるような環境で使用している最中に発現するものであり、排気系部材等に加工する際には、Cuは溶体化(固溶)されることが一般的である。このため、Cu添加鋼は、析出物の完全な溶体化が困難なNb添加鋼に比べると加工性に有利である。また、MoはCuと同様に製造工程で完全に溶体化する事が容易であるが、Cuに比べて常温での固溶強化能が大きく、Cuに比べると加工性に不利である。さらに、Mo、NbともCuに比べて高価な元素であるため、Cuで代替する事は合金コスト低減にもなる。
一般的に、フェライト系ステンレス鋼は、普通鋼に比べて靭性が低いため、熱延コイルを巻き解いた後、冷間で薄板を圧延や酸洗、焼鈍などの、各工程を通板する際に、耳割れや板破断といった冷間割れが起こる場合がある。そこで、熱延板の靭性を確保するために、熱延巻き取り条件の最適化がおこなわれる。なお、NbやMoを含有するステンレス鋼では、650〜700℃を析出ノーズとする析出物、例えばLaves相(FeNb、FeMo)や、FeNbCにより、熱延板靭性が低下するため、550℃以下の温度で巻取る事が一般的である。
また、1%以上のCuを添加した鋼においても、Cuの析出物による靭性の低下が問題とされている。
例えば特許文献9では、Cuを添加した無方向性電磁鋼板において、巻取温度を550℃以下とする事で靭性を向上させる技術が開発されている。なお、具体的な実施例として、500℃、520℃、540℃で巻き取ると靭性が改善すると説明されている。
一方、Cu添加鋼の材質についても炭素鋼を中心に検討がなされている。
例えば、非特許文献1では、Ti添加極低炭素鋼板の材質特性に及ぼすCuの影響について示されている。具体的には、Cuを1.3%含有した鋼では、熱延板の巻取温度をR.T.(室温)にした場合に、ランクフォード値(r値)が最も高くなり、550℃巻取り、780℃巻取りの順で、r値が低下すると説明されている。また、その時の集合組織については、(222)方位に対する巻取温度の影響は認められないが、(211)、(200)方位が、巻取温度をR.T.にした時に最も低くなると示されている。
特許第2880839号公報 特許第3021656号公報 特許第2959934号公報 特許第2803538号公報 特許第2696584号公報 特許第2562740号公報 国際公開WO2003/004714号公報 特開2008−240143号公報 特開2010−24509号公報
鉄と鋼、第76号(1990)、第5号、pp759−766
本発明者らは、Cu添加による高温強度向上を主に活用する事で、高価なNb、Moの添加を低減する材料開発を行った。その結果、Nb,Moの低減により、熱延板靭性の低下の起因要素とされるLaves相とCuとの複合析出が抑制され、さらに、Cuが微細析出することにより、Nb,Moが無添加もしくは少量添加であっても、耐熱性、高温強度を高める事が可能となった。
しかし、Cuを添加した当該鋼板の製造に於いても、一般的な、自動車の排気系用材料の熱延巻取り条件であれば、特許文献9の条件も満足しており、靭性の問題は生じないと考えられたが、実際に製造したものは、靭性が低く、冷間で、圧延や酸洗、焼鈍などの後工程を通板することは困難であった。即ち、従来知見された技術では、耐熱用にCuを添加したステンレス鋼の靭性を改善する事は出来なかった。
また、従来鋼に比べて、加工性低下の問題も認められた。非特許文献1の技術思考が、ステンレス鋼にも適用できるのであれば、R.T.に近い温度で巻き取る事で、ステンレス鋼でもr値が向上すると考えられたが、実際には、十分なr値を得る事が出来なかった。
即ち、従来知られていたCu添加鋼板の加工性向上のための製造技術は、十分に有効ではなく、更なる改善が必要とされるものであった。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、Cu析出物を微細分散させることで高温特性を向上させ、さらに硬度を制御することで靭性に優れたフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板及びその製造方法、並びに、当該フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板を用いたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、Nb、Moを多量に添加しないCu添加フェライト系ステンレス鋼の熱延鋼板において300℃〜700℃程度におけるCu系析出物の析出挙動と硬度、靭性について詳細に調査した。そして、上記目的を達成すべく種々の検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
上記調査の結果、Cu添加フェライト系ステンレス鋼の場合、450〜600℃の温度域ではナノオーダーのCu−richクラスタが析出し、靭性が極端に低下する事を見出した。即ち、Cu−richクラスタの析出を防止する事で、靭性改善が可能となることが分かった。
ここで、Cu−richクラスタの析出を防止する手段としては以下の2つの方法がある。
第一の方法は、巻取温度を620℃以上にする事で、Cuをε−Cuとして析出させ、硬さを235Hv未満にする方法である。ε−Cuは熱延板靭性に基本的に無害である。Cu系析出物がε−Cuになる過程では、Cu−richクラスタを形成すると考えられるが、例えば、巻取温度が650℃の場合で10分間以上、700℃では60秒以上の保定時間を取る事で、固溶Cuの相当量がε−Cuとなり、冷間(常温)で後工程を通板することが可能なレベルの靭性が得られる。このとき、巻き取り後の熱延板の硬度は235Hv未満に軟質化するが、完全にCuが固溶している状態に較べると、Cu系析出物による析出硬化によって硬化しているために、200Hv以上の硬度になる。
また、このように巻取温度を620℃以上とする事で、冷間圧延後の焼鈍(冷延板焼鈍)工程における昇温過程で析出するCuも少なく、{222}面方位を有する再結晶集合組織を十分に発達させることができるため、加工性に優れる鋼板を製造する事が可能になる。
しかし、巻取温度を620℃以上にする場合の課題として、巻き取り後において、熱延コイルの最内巻き部位(トップ部)、また最外巻き部位(ボトム部)における温度降下が大きくなる場合がある。その結果、熱延コイル内のそれぞれの部位で靭性が低下し、熱延コイル内各部位(具体的には、トップ部、ミドル部、ボトム部の各部位)で靭性に差が生じるおそれがある。そして、700℃以上で巻き取れば、必要な保定時間は60秒と短いため、トップ部、またはボトム部の温度降下については問題ないと思われるが、750℃超の温度で巻き取ると熱延板の酸化が進み、巻き取り後の次工程の酸洗において、熱延板表面の酸化スケールを除去するために長時間を要する問題が生じる。
また、650℃より低い温度で巻き取ると、上記酸化スケール除去の問題は解消できるがトップ部、ボトム部の温度降下は危惧される。このような温度降下は熱延巻き取り機や、巻き取り後の冷却方法、等によって変動するため、一概に問題になるとは言えないが、熱延コイル内各部位の温度降下により靭性に差が生じるおそれがある場合には、例えば、仕上げ圧延後の熱延鋼板を注水冷却する際、熱延コイルのトップ部、ボトム部となる部位に対しては冷却条件を適宜調整して冷却を制御することにより、熱延鋼板の温度分布がトップ部、ボトム部となる部位がミドル部となる部位より高温となるように調整し、その後、このような温度分布状態で巻き取るなどの措置を取ることにより、トップ部、ボトム部における温度降下を小さくすることができ、熱延コイル内各部位の靭性のばらつきを抑制することが可能となる。つまり、熱延コイル全長にわたって、コイル内の温度履歴が620〜750℃の温度域で、下記式(1)を満たすようにする事が有効である。
T(20.24+log(t))≧17963 ・・・・ (1)
T:熱延鋼板温度(K)、t:保定時間(h)
このように、熱延後の巻取温度を最適化し、さらに、巻き取り後の熱延コイル内の温度履歴を制御することにより、熱延コイル内部において靭性のばらつきを抑制し、良好な熱延板靭性を得られる事を知見した。さらに、冷間圧延焼鈍後、加工性に有利な{222}面方位が発達する事を見出し、加工性を向上させることを知見した。
Cu−richクラスタの析出を防止して熱延板靭性を向上させる第二の方法は、熱間圧延後に、800〜500℃の温度範囲を10℃/秒以上の速度で冷却し、その後、巻取温度を450℃以下とし巻取る。これにより、Cuを固溶させ、良好な熱延板靭性を得る方法である。但し、巻取温度を350℃未満にすると、固溶C、固溶Nが、TiやNb等の炭窒化物として、十分に固定されないために、冷間圧延焼鈍(冷延板焼鈍)時において、{222}面の再結晶集合組織発達が阻害されてしまう。その結果、ランクフォード値が低下して、加工性を損なうおそれがある。従って、Cuを固溶させることにより靭性を向上させる場合は、製品の加工性との両立のため、巻取温度を350℃以上450℃以下とすることが必要である。
このように、熱延後の巻取温度を最適化し、Cu系析出物の形態を制御することで、高い熱延板靭性を得られる事を知見した。さらに、巻き取り条件によっては、冷間圧延焼鈍後、加工性に有利な{222}面方位が発達する事を見出し、加工性を向上させることを知見した。
本発明は、これらの知見に基づいて到ったものであり、上記課題を解決する本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、
C:0.02%以下、
N:0.02%以下、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:1.5%以下、
P:0.035%以下、
S:0.010%以下、
Ni:1.5%以下、
Cr:10〜20%、
Cu:1.0〜3.0%、
Ti:0.08〜0.30%、
Al:0.3%以下、
をそれぞれ含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
ビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が55J/cm 以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
(2)質量%で、
C:0.02%以下、
N:0.02%以下、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:1.5%以下、
P:0.035%以下、
S:0.010%以下、
Ni:1.5%以下、
Cr:10〜20%、
Cu:1.0〜3.0%、
Ti:0.08〜0.30%、
Al:0.3%以下、
をそれぞれ含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
ビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が20J/cm 以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
(3)さらに、質量%で、
Nb:0.3%以下、
Mo:0.3%以下、
Zr:0.3%以下、
Sn:0.5%以下、
V:0.3%以下、
B:0.0002%〜0.0030%、
の1種以上を含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
(4)上記(1)または上記(3)に記載の鋼組成を有するフェライト系ステンレス鋼を鋳造した鋼片に対して熱間圧延の仕上げ圧延を施し熱延鋼板とした後、この熱延鋼板を、巻取温度を620℃以上750℃以下として巻き取り、次いで、熱延コイル全体において、下記式(1)を満足するように熱延鋼板温度T(K)及び保定時間t(h)を制御しつつ、前記熱延コイルを保熱、或いは冷却することを特徴とするビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が55J/cm 以上であるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法。
T(20.24+log(t))≧17963・・・・(1)
(5)上記(2)または(3)に記載の鋼組成を有する鋼片に対して、熱間圧延の仕上げ圧延後850℃〜450℃間の平均冷却速度を10℃/秒以上とするとともに、巻取温度を350℃〜450℃とし巻き取ることを特徴とするビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が20J/cm 以上であるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法。
(6)上記(4)または(5)に記載の方法で製造した熱延鋼板を熱延板酸洗、冷間圧延、冷延板焼鈍、冷延板酸洗を行う事を特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(7)上記(4)または(5)に記載の方法で製造した熱延鋼板を熱延板焼鈍、熱延板酸洗、冷間圧延、冷延板焼鈍、冷延板酸洗を行う事を特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(8)前記冷間圧延を行う際、ロール径が400mm以上である圧延ワークロールを用いることを特徴とする上記(6)または上記(7)に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
以上のように、本発明によれば、Cuを添加した耐熱性に優れたフェライト系ステンレス鋼において、熱間圧延における巻取温度を最適化し、Cu系析出物の形態を制御し、硬度を調整することで、従来の課題であった靭性の劣化を防ぐことができる。
また、巻取温度を制御することにより、Cu系析出物の形態を最適化でき、巻き取り後の工程である冷延板焼鈍後、加工性に有利な{222}面方位を発達させることができる。その結果、鋼板の加工性を向上させることが可能となる。
特に、本発明にかかるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板を自動車などの排気系部材に適用することにより、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果が得られる。
第一の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板のビッカース硬さと、20℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーに及ぼす熱処理温度の影響を示すグラフである。なお、図1に示す熱処理温度は、巻取温度をシミュレーションしたものである。 第一の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板のシャルピー衝撃試験の延性−脆性遷移温度に及ぼす熱処理温度の影響を示すグラフである。なお、図2に示す熱処理温度は、巻取温度をシミュレーションしたものである。 第一の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板において、種々の温度において熱処理後、Cu系析出物の析出状態を透過電子顕微鏡により観察した結果を示す図である 第一の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の20℃におけるシャルピー衝撃試験の衝撃値に及ぼすL値の影響を示すグラフである。 第一の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の熱処理温度が、冷間圧延焼鈍板のランクフォード値に及ぼす影響を示すグラフである。なお、図5における熱処理温度は、巻取温度をシミュレーションしたものである。 第二の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板を、430℃で巻き取った時、850〜450℃までの平均冷却速度が、20℃におけるシャルピー衝撃試験の衝撃値に及ぼす影響を示すグラフである。 第二の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板において、巻取温度と、熱延コイルボトム部の、20℃におけるシャルピー衝撃試験の衝撃値との関係を示すグラフである。 第二の実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の巻取温度が、冷延板焼鈍板後のランクフォード値に及ぼす影響を示すグラフである。
(フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板)
以下に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板について詳細に説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板は、質量%で、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.1〜1.5%、Mn:1.5%以下、P:0.035%以下、S:0.010%以下、Ni:1.5%以下、Cr:10〜20%、Cu:1.0〜3.0%、Ti:0.08〜0.30%、Al:0.3%以下、をそれぞれ含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、ビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有する。
以下、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の鋼組成を限定した理由について説明する。なお、組成についての%の表記は、特に断りがない場合は質量%を意味する。
C:0.02%以下
Cは、成形性と耐食性、熱延板靭性を劣化させるため、その含有量は少ないほど好ましいため、上限を0.02%とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加をもたらし、また、耐食性の観点から考えると、0.001%〜0.009%とすることが望ましい。
N:0.02%以下
Nは、Cと同様、成形性と耐食性、熱延板靭性を劣化させるため、その含有量は少ないほど好ましいため、0.02%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、0.003%〜0.015%とすることが望ましい。
Si:0.1%〜1.5%
Siは、脱酸剤としても有用な元素であるとともに、高温強度と耐酸化性を改善させる元素である。800℃程度までの高温強度は、Si量の増加とともに向上し、その効果は0.1%以上で発現するため、下限を0.1%とする。しかしながら、過度の添加は常温延性を低下させるため、上限を1.5%とする。なお、耐酸化性を考慮すると0.2%〜1.0%が望ましい。
Mn:1.5%以下
Mnは、脱酸剤として添加される元素であるとともに、中温域での高温強度上昇に寄与する元素である。また、長時間使用中にMn系酸化物が表層に形成し、スケール(酸化物)の密着性や異常酸化の抑制効果に寄与する元素である。
一方、過度な添加は、γ相(オーステナイト相)の析出による熱延板靭性の低下を生じる他、MnSを形成して耐食性を低下させるため、上限を1.5%とする。なお、高温延性やスケールの密着性、異常酸化の抑制を考慮すると、0.1〜1.0%が望ましい。
P:0.035%以下
Pは、固溶強化能の大きな元素であるが、フェライト安定化元素であり、しかも耐食性や靭性に対しても有害な元素であるため、可能な限り少ないほうが好ましい。
Pは、ステンレス鋼の原料であるフェロクロムに不純物として含まれるが、ステンレス鋼の溶鋼から脱Pすることは非常に困難であるため、0.010%以上とすることが好ましい。また、Pの含有量は、使用するフェロクロム原料の純度と量でほぼ決定される。しかし、Pは有害な元素であるため、フェロクロム原料のPの純度は低いほうが好ましいが、低Pのフェロクロムは高価であるため、材質や耐食性を大きく劣化させない範囲である0.035%以下とする。なお、好ましくは0.030%以下である。
S:0.010%以下
Sは、硫化物系介在物を形成し、鋼材の一般的な耐食性(全面腐食や孔食)を劣化させるため、その含有量の上限は少ないほうが好ましく、0.010%とする。また、Sの含有量は少ないほど耐食性は良好となるが、低S化には脱硫負荷が増大し、製造コストが増大するので、その下限を0.001%とするのが好ましい。なお、好ましくは0.001〜0.008%である。
Ni:1.5%以下
Niは、フェライト系ステンレス鋼の合金原料中に不可避的不純物として混入し、一般的に0.03〜0.10%の範囲で含有される。また、孔食の進展抑制に有効な元素であり、その効果は0.05%以上の添加で安定して発揮されるため下限を0.01%とすることが好ましい。
一方、多量の添加は、固溶強化による材質硬化を招くおそれがあるため、その上限を1.5%とする。なお、合金コストを考慮すると0.05〜1.0%が望ましい。
Cr:10〜20%
Crは、本発明において、耐酸化性や耐食性確保のために必須な元素である。10%未満では、これらの効果は発現せず、一方で、20%超では加工性の低下や靭性の劣化をもたらすため、10〜20%とする。なお、製造性や高温延性を考慮すると、10%〜18%が望ましい。
Cu:1.0〜3.0%
Cuは、自動車の高温排気系などに代表される高温環境用部材として使用するために必要とされる高温強度を高めるために必要な元素である。Cuは、500〜750℃では主に析出強化能を発揮し、それ以上の温度に於いては固溶強化によって材料の塑性変形を抑制し、熱疲労特性を高める働きを示す。このような効果は、Cu析出物が生成することによる析出硬化作用であり、1.0%以上の添加により発現する。一方、過度な添加は、高温強度の低下を生じるため上限を3.0%とする。なお、冷間圧延焼鈍時にCuを固溶させ、加工性の低下を抑制することを考えると、1.0%〜1.5%が望ましい。
Ti:0.08%〜0.30%
Tiは、C,N,Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、常温延性や深絞り性を向上させる元素である。Tiの含有量は、経済的に成しうるC、N、Sの低減可能な量からその量が決まるため、下限を0.08%とする。しかし、Tiの過剰添加は、連続鋳造時に溶鋼に晶出するTiNにより、鋳片の表面欠陥を増大させるため、その上限を0.30%とする。なお、固溶Tiによる耐食性向上効果や、大型の析出物TiNによる熱延板靭性やプレス加工性の低下も生じる事があるため、0.10%〜0.18%とすることが望ましい
Al:0.3%以下
Alは、脱酸元素として添加される他、耐酸化性を向上させる元素である。また、固溶強化元素として600〜700℃における強度向上に有用である。その作用は0.01%から安定して発現するため、下限を0.01%とすることが好ましい。
一方、過度の添加は、硬質化して均一伸びを著しく低下させる他、靭性を著しく低下させるため、上限を0.3%とする。更に、表面疵の発生や溶接性、製造性を考慮すると、0.01%〜0.07%が望ましい。
また、本実施形態では、上記元素に加えて、V:0.3%以下、B:0.0002%〜0.0030%、Nb:0.3%以下、Mo:0.3%以下、Zr:0.3%以下及びSn:0.5%以下の1種以上を添加することが好ましい。
V:0.3%以下
Vは、微細な炭窒化物を形成し、析出強化作用が生じて高温強度向上に寄与する効果を有するため、必要に応じて添加する。その効果は0.03%以上の添加で安定して発現するため、下限を0.03%とすることが好ましい。
一方、過剰に添加すると、析出物の粗大化を招くおそれがあり、その結果、熱延板靭性が低下するため、上限を0.3%とする。なお、製造コストや製造性を考慮すると、0.03%〜0.1%とすることが望ましい。
B:0.0002%〜0.0030%
Bは、製品のプレス加工時の2次加工性を向上させる元素であると共に、Cu添加鋼の高温強度を向上させる効果もあるため、必要に応じて添加する。その効果は0.0002%以上で発現する。しかし、過度な添加は、CrB、(Cr,Fe)23(C、B)の析出により、靭性や耐食性を損なう他、溶接性も損なう場合もあるため、Bの含有量を、0.0002%〜0.0030%とする。なお、加工性や製造コストを考慮すると、0.0003%〜0.0015%とすることが望ましい。
Nbは、高温強度や熱疲労特性を向上させるために必要に応じて添加すれば良く、これらの効果を発揮させるため、下限を0.01%とすることが好ましい。
一方、過度の添加は、Laves相の生成を生じさせ、この結果、Cu析出による析出強化能力を抑制させてしまうため望ましくない。また、熱間圧延で、630℃以上の高温巻き取りを行うと、Laves相による熱延板靭性の低下が生じるおそれがある。これらを考慮し、Nbの上限を0.3%とする。更に、生産性や製造性の観点から、0.01%〜0.2%とすることが望ましい。
Moは、高温強度や熱疲労特性を向上させるために必要に応じて添加すれば良く、これらの効果を発揮させるため、下限を0.01%とすることが好ましい。
一方、過度の添加は、Nbと同様に、Laves相の生成を生じさせて、Cu析出による析出強化能力を抑制させてしまうため望ましくない。また、熱間圧延で630℃以上の高温巻き取りを行うと、Laves相による熱延板靭性の低下を生じるおそれがある。これらを考慮し、Moの上限を0.3%とする。更に、生産性や製造性の観点から、0.01%〜0.2%が望ましい。
Zrは、TiやNbと同様に、炭窒化物形成元素であり、固溶Ti,Nb量の増加による高温強度向上、耐酸化性の向上に寄与するため、必要に応じて添加しても良い。これらの効果は、0.05%以上の添加により安定して発揮するため、下限を0.1%とすることが好ましい。
しかしながら、過度の添加は、製造性の劣化を著しく招くため、上限を0.3%とする。なお、コストや表面品位を考慮すると、0.1%〜0.2%がより望ましい。
Snは、Moと同様に、耐食性や高温強度の向上に有効な元素である。また、常温の機械的特性を大きく劣化させない効果もあるため、必要に応じて添加してもよい。高温強度への寄与は、0.05%以上の添加で安定して発現するため下限を0.05%とすることが好ましい。
一方、過度に添加すると製造性や溶接性が著しく劣化するため、上限を0.5%とする。なお、耐酸化性等を考慮すると、0.1%〜0.3%が望ましい。
(フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法(第一の実施形態))
次に、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法について説明する。
第一の実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法は、上記鋼組成を有したフェライト系ステンレス鋼を製鋼し、製鋼後、鋳造した鋼片(スラブ)に対して、熱間圧延の仕上げ圧延を施し熱延鋼板とした後、この熱延鋼板を、巻取温度を620℃以上750℃以下として巻き取る。
本実施形態にかかる製鋼においては、上記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉にて溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。
次に、溶製した溶鋼を、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。そして、このスラブを所定の温度に加熱し、次いで、所定の板厚に熱間圧延することによりスラブを熱延鋼板(熱延板)とする。なお、熱間圧延の仕上げ圧延終了温度(仕上げ温度)は、800℃〜980℃の範囲内とする。
次に、仕上げ圧延後、熱延鋼板を冷却し、コイル状に巻き取ることにより熱延コイルとする。
ここで、仕上げ圧延後、熱延鋼板をコイル状に巻取る温度(巻取温度)は熱延板靭性に大きく影響する。
以下に、本実施形態における巻取温度の限定理由について説明する。
本実施形態においては、巻取温度を620〜750℃とする。
このような巻取温度の範囲内で巻き取ることにより、Cuをε−Cuとして析出させることができ、巻き取り後の熱延鋼板の硬さを235Hv未満にすることができる。
析出したε−Cuは上述したように、熱延板靭性に基本的に無害である。また、Cu系析出物がε−Cuになる過程では、Cu−richクラスタを形成すると考えられるが、巻き取り後、巻取温度に応じて所定の時間の間保熱することにより、固溶Cuの相当量をε−Cuとして析出させることができる。その結果、常温(冷間)で後工程を通板することが可能な熱延板の靭性を得ることができる。なお、熱延鋼板を巻き取り熱延コイルとした後、この熱延コイルを保熱する時間を保定時間tと呼ぶこととする。
また、このような巻取温度範囲内で巻き取ることにより、後工程である冷延板焼鈍における昇温過程において析出するCuも少なく、{222}面方位を有する再結晶集合組織がよく発達し、加工性に優れる冷延鋼板を製造する事が可能となる。
しかし、620℃未満で巻き取ると、巻き取り後の熱延コイルのトップ部またはボトム部の温度降下が大きくなり、十分な保定時間tを確保できないおそれがある。そして、このように保定時間tを確保できないと、ε−Cuを十分に析出させることができないため、トップ部及びボトム部それぞれの部位で靭性が低下し、熱延コイル内の各部位において靭性に差が生じるおそれがある。
また、750℃超で巻き取ると、熱延コイルの酸化が進み、次工程である熱延板酸洗において、熱延鋼板表面の酸化スケールを除去するために長時間を要してしまう。従って、本実施形態においては、巻取温度を620〜750℃とする。
また、本実施形態において、熱延鋼板を巻き取り熱延コイルとした後、この熱延コイル全長において、下記式(1)を満足するように、熱延鋼板温度T(K)及び保定時間t(h)を制御しつつ、熱延コイルを保熱、或いは冷却することが好ましい。このように、熱延コイル全長にわたる温度履歴を、下記式(1)を満足するように制御することにより、熱延コイル内の各部位における靭性のばらつきを防ぐことができ、良好な熱延板靭性を得ることができる。
T(20.24+log(t))≧17963・・・・(1)
以下、上記式(1)について説明する。なお、上記式(1)におけるT(20.24+log(t))をL値と呼ぶこととする。
一般的に、熱延鋼板を巻き取り熱延コイルとした後の冷却工程において、熱延コイルのトップ部やボトム部の冷却速度は大きくなる。そのため、熱延コイル内のトップ部、ボトム部の温度降下は、ミドル部に比べ大きくなるとともに、トップ部及びボトム部の靭性が劣化し、熱延コイル内における各部位の靭性にばらつきが生じるおそれがある。さらに、このような熱延コイル内のトップ部、ボトム部の温度降下は巻取温度が低温になればなるほど危惧される。しかし、このような温度降下は、使用する熱延巻き取り機や、巻き取り後の熱延コイルの冷却方法、等によって変動する。そのため、一概に問題になるとは言えないが、熱延コイル内での温度降下による靭性の劣化が問題となる場合は、熱延コイル全長にわたる温度履歴が620〜750℃の温度域で、上記式(1)を満たすようL値を制御することが好ましい。つまり、巻き取り後の熱延コイルの各部位における温度(熱延鋼板温度T)を制御し、さらに、各部位において熱延鋼板温度T下での保定時間tを調整しながら熱延コイルの保熱、或いは冷却を行うことが好ましい。
ここで、L値を制御する方法は、特に限定せず、一般的に用いられている方法や条件から適宜選択して行うことができる。例えば、仕上げ圧延後の熱延鋼板を注水により上記巻取温度の範囲内まで冷却する際、熱延コイルのトップ部、ボトム部となる部位に対しては冷却条件を適宜調整して冷却を制御する。これにより、巻き取り前の熱延鋼板の温度分布を、トップ部、ボトム部となる部位がミドル部となる部位より高温となるように調整する。その後、このような温度分布状態である熱延鋼板を巻き取り熱延コイルとする。つまり、熱延コイルとした後の冷却工程において、トップ部やボトム部の温度が降下してしまった場合でも、巻取温度範囲内においてミドル部よりも高温となるように制御しているため、保定時間tを確保することができ、熱延コイル全長にわたり上記式(1)を満たすことができる。
以下に、このような巻取温度及び上記式(1)の限定理由について詳細に説明するための調査結果を示す。なお、以下で説明する熱延板靭性の評価方法は、サンプル数を3つとし、20℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを求める。そして、得られた結果の最低値で評価した。
図1では、本実施形態にかかるフェライト系ステンレス鋼を、仕上げ温度を850℃として、板厚5mmに熱間圧延し熱延板とした。その後、400℃までの平均冷却速度を100℃/秒とし水冷で冷却し、その後は空冷にて冷却した。
次に、得られた熱延板を用いて、熱間圧延後の巻き取りの際の巻取温度の影響を調べるべく、巻き取り時の温度履歴を再現するために、種々の温度で1時間の熱処理を行った。
次に、熱処理後の熱延板(熱処理板)のビッカース硬さを測定するとともに、熱延板から板厚ままのシャルピー衝撃試験片(板厚ままのサブサイズ)のサンプルとして3つ採取し、20℃でシャルピー衝撃試験を行い、熱延板靭性を評価した。なお、種々の温度における吸収エネルギーの最低値を図1に示す。
図1から明らかなように、熱処理温度が450℃超〜600℃の間で、熱延板の硬度が235Hv以上に急激に増加し、一方で、靭性は大きく低下することが分かる。これは、Cu−richクラスタが析出したためと考えられる。しかし、熱処理温度が620℃以上の場合は、硬度が235Hv未満と軟化しているとともに、吸収エネルギーは急激に上昇し、靭性が大きく上昇していることが分かる。
なお、図1に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.5%Si−0.5%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
図2では、図1の場合と同様の手法で製造した熱処理板を−40℃〜140℃の範囲でシャルピー衝撃試験を行った結果を図2に示す。
図2により明らかなように、450〜550℃で熱処理したものは延性−脆性遷移温度が100℃近くまで上がっている事が分かる。一方、650℃、700℃で熱処理したものは、延性−脆性遷移温度が20℃以下となり、未熱処理の熱延板と同等以上の靭性を示すことがわかる。
なお、図2に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.9%Si−0.5%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.5%Cu−0.0005%Bである。
熱延板の靭性が、図2に示した様に熱処理温度で大きく変化する原因を明確にするべく、図2に示した熱処理材中のCu析出物を透過電子顕微鏡で観察した。なお、観察した熱処理材は、未熱処理の熱延板(as Hot材)、550℃熱処理材及び700℃熱処理材の3種である。観察結果を図3(a)〜(c)に示す。図3(a)はas Hot材、図3(b)は550℃熱処理材、図3(c)は700℃熱処理材をそれぞれ示す。
図3(a)から明らかなように、未熱処理の熱延板にはCuの析出物が認められない。一方で、図3(b)に示す550℃熱処理材では、数nmサイズの微細なCuが析出している事が確認できる。この微細なCuはCu−richクラスタであると考えられ、転位上では比較的大きく、その他の場所ではより微細に析出していることが分かる。また、図3(c)に示す700℃熱処理材では、ε−Cuが析出していることが観察でき、観察されるサイズは30〜100nmであった。
なお、Cu−richクラスタによって靭性が低下する原因は明確ではないが、引張試験を行った際に、均一伸びが約10%あったことから、常温における延性が乏しくて脆性破壊を生じたと考えるよりは、析出物が極めて細かく分散しているがために、高速な転位の移動が阻害されて、脆性破壊したものと推測される。
図4では、図1の場合と同様の手法で製造した熱延板を、塩浴を用いて620〜750℃に急速加熱し、種々の時間熱処理した後、水冷により冷却した。その後、熱延板靭性を調査した。加熱温度及び熱処理時間をL値(T(20.24+log(t)))で整理して、図4に示した。620〜750℃で熱処理しても、短時間では靭性が低下していることが分かる。この結果より、本実施形態においては、熱延板を巻き取った後、コイル全長において、上記式(3)を満足するように熱延板を保熱、或いは冷却することが好ましい。
なお、図4に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.5%Si−0.3%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
ここで、本実施形態において、巻き取り後の熱延コイルの温度履歴を上記L値により既定した理由について説明する。
鋼板におけるε−Cuの析出は、Cuの析出ノーズ近傍である温度域、620〜750℃であれば高温の温度域ほど短時間で進行する。また析出現象は原子の拡散律則である事から、鋼板温度と保定時間の対数の積で整理される。そこで、図4における試験結果をL値で整理したところ、L値が17963以上の条件下で、良好な熱延板靭性が得られる事が分かった。これより、本実施形態において、L値の下限を17963とした。なお、操業の管理の難易度を考慮するとL値を18240以上とする事がより好ましい。
また、図5では、図1の場合と同様の手法で製造した熱延板を、400〜750℃で1時間熱処理した後空冷し、再結晶焼鈍を省略して、板厚5.0mmから2.0mmまで冷間圧延し、880〜920℃の範囲で冷延板焼鈍した。なお、冷延板焼鈍における平均昇温速度は4℃/sで行った。得られた冷延焼鈍板を用いて測定したランクフォード値(r値)と、熱延板に施した熱処理温度との関係を図5に示す。なお、熱処理温度は、本実施形態における巻取温度を再現するために行ったものである。
図5から明らかなように、620〜750℃の温度範囲でランクフォード値が高くなり、700℃で最も高い値となるころが分かる。つまり、巻取温度を620〜750℃とすることで、冷延板の加工性が向上することが分かった。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造においては、通常、熱間圧延後に実施される熱延板焼鈍を施しても良いが、生産性向上の観点から、施さない方が好ましい。通常のNb添加鋼は熱延鋼板が硬質であるため、冷延する前に熱延板焼鈍が施されるが、本実施形態に係る鋼板は、Nbを添加しないか、若しくは少量添加であるため、熱延鋼板の焼鈍を省略することが可能となり、製造コストの低減をもたらすことができる。
また、熱延板の焼鈍を省略することにより、巻き取り時に析出させたε−Cuを、冷間圧延時、そして冷延板焼鈍時の昇温過程で、維持して析出させておく事が可能となる。このため、冷間圧延、冷延板焼鈍後の集合組織が発達し、r値向上や異方性低減によりプレス成形性を向上させることができる。
また、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法の後工程である冷間圧延を行う際、ロール径が400mm以上である圧延ワークロールを用いることが好ましい。
ここで、ステンレス鋼板の冷間圧延は、通常、ワークロール径(ロール径)が60〜100mm程度のゼンジミア圧延機でリバース圧延されるか、もしくは、ワークロール径が400mm以上のタンデム式圧延機で一方向圧延されるかのいずれかである。なお、いずれも、複数パスで圧延される。
本実施形態では、加工性の指標であるr値を高くするために、ロール径が400mm以上のタンデム式圧延機で冷間圧延を施す方が好ましい。例えばロール径が100mm以下と小さい小径ロールを用いた場合、冷間圧延時に鋼板表層近傍にせん断歪みが多く導入され、次工程の冷延板焼鈍(再結晶焼鈍)時に{222}や{554}結晶方位発達が抑制され、r値の向上が困難となる。しかし、大径ロールで冷間圧延することによって、せん断歪みの抑制によって上記結晶方位が顕著に発達し、r値をより向上させることができる。また、タンデム式圧延は一方向圧延であり、ゼンジミア圧延に比べて圧延パス数が少ないため、生産性においても優れる。
尚、冷間圧延工程における圧下率が低いと、冷延板焼鈍後に再結晶組織が得られなかったり、過度に粗粒化して機械的性質を劣化させたりするため、冷間圧延工程の圧下率は50%以上が望ましい。
また、本実施形態において、他の製造工程については特に規定しないが、熱延板の板厚、冷延板焼鈍温度、冷延板焼鈍雰囲気などは適宜選択すれば良い。なお、好ましい条件としては、熱延板の板厚を3.0〜5.0mmとし、冷延板焼鈍温度を、860〜960℃に、冷延板焼鈍雰囲気は、燃焼ガス雰囲気とするか、又は水素と窒素の混合雰囲気とすることが望ましい。また、冷間圧延、冷延板焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品(冷延鋼板)板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。
なお、本発明はNb無添加ないし含有量が低いので、冷間圧延後の冷延板焼鈍温度は850〜970℃と低い温度とすることができる。但し、冷却過程ではCu−richクラスタの析出による硬化を防止するために、10℃/s以上の冷却速度で冷却する事が望ましい。
以上のように、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板によれば、Cuがε−Cuとして析出しているため、鋼板の硬さを235Hv未満にすることができる。その結果、常温(冷間)で後工程を通板することが可能な熱延板の靭性を得ることができる。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法によれば、熱間圧延における巻取温度を最適化し、Cu系析出物の形態を制御し、硬度を調整することで、従来の課題であった靭性の劣化を防ぐことができる。
また、巻き取り後の熱延鋼板全体の温度履歴を制御することにより、熱延鋼板の巻き取り後のコイル内部において、靭性のばらつきを抑制することができ、その結果、良好な熱延板靭性を確保することができる。
また、巻取温度や巻き取り後の温度履歴を制御することにより、Cu系析出物の形態を最適化でき、巻き取り後の工程である冷延板焼鈍後後、加工性に有利な{222}面方位が発達させることができる。その結果、鋼板の加工性を向上させることが可能となる。
また、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板は、NbやMoのような高価な合金元素をCuで代替しているため、自動車などの排気系用部材に適用する際に、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果を得ることができる。
(フェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法(第二の実施形態))
次に、本発明の第二の実施形態であるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法は、上記鋼組成を有したフェライト系ステンレス鋼を製鋼し、製鋼後、鋳造した鋼片(スラブ)に対して、熱間圧延の仕上げ圧延後、850℃〜450℃間の平均冷却速度を10℃/秒以上とするとともに、巻取温度を350℃〜450℃とし巻き取る熱延工程を行う。
なお、本実施形態の製造方法は、上記第一の実施形態の製造方法における仕上げ圧延後の冷却条件、及び巻取温度において相違があるが、両実施形態どちらの製造方法を採用した場合でも、上述したような効果を奏することができる。
本実施形態にかかる製鋼においては、上記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉にて溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。
次に、溶製した溶鋼を、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。そして、このスラブを、所定の温度に加熱し、所定の板厚に熱間圧延し、スラブを熱延鋼板(熱延板)とする。なお、熱間圧延の仕上げ圧延終了温度(仕上げ温度)は、800℃〜980℃の範囲内とする。
次に、仕上げ圧延後、熱延鋼板を水冷にて冷却し、コイル状に巻き取る。
ここで、仕上げ圧延後の冷却条件と、その後、熱延鋼板を巻取る温度(巻取温度)は熱延板靭性に大きく影響する。
以下に、本実施形態における冷却条件と、巻取温度の限定理由について説明する。
まず、冷却条件の限定理由について説明する。
本実施形態においては、仕上げ圧延後、850℃〜450℃間の平均冷却速度を10℃/秒以上とする。
上述したように、本発明者らの調査によると、Cu添加フェライト系ステンレス鋼の場合、仕上げ圧延後〜450℃(特に、600℃〜450℃)の温度域では、ナノオーダーのCu−richクラスタが析出し、靭性が極端に低下する事が分かった。つまり、このような温度範囲の冷却速度を上げることにより、Cu−richクラスタの析出を防止する事ができる。このような効果は平均冷却速度が10℃/秒以上で安定的に発揮されるため、仕上げ圧延後、850℃〜450℃間の平均冷却速度を10℃/秒以上とする。なお、靭性の改善を考慮すると、20℃/秒以上とすることが好ましい。
次に、巻取温度の限定の理由について説明する。
本実施形態においては、巻取温度を350℃〜450℃とする。
巻取温度が低すぎると、固溶C、固溶Nが、TiやNb等の炭窒化物として、十分に固定されないために、冷延板焼鈍時に、{222}面の再結晶集合組織発達が阻害されてしまう。その結果、加工性が劣化してしまうおそれがある。一方、巻取温度が高すぎると、Cu−richクラスタが析出し、熱延板靭性が低下するおそれがある。従って、加工性と熱延板靭性の向上を両立させるため、本実施形態においては、巻取温度を350℃〜450℃とする。なお、コイル内の各部位における温度ばらつきを考慮すると、靭性の改善には巻取温度を380℃〜430℃とすることが好ましい。
以下に、このような冷却条件及び巻取温度の限定理由について詳細に説明するための調査結果を示す。なお、以下で説明する熱延板靭性の評価方法は、上記第一の実施形態と同様にサンプル数を3つとし、20℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを求める。そして、得られた結果の最低値で評価した。
上記第一の実施形態でも述べたが、図1から明らかなように、熱処理温度が450℃超〜600℃の間で、硬度は上昇する一方、靭性は大きく低下することが分かる。これは、Cu−richクラスタが析出したためと考えられる。
なお、図1に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.5%Si−0.5%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
次に、図6では、本実施形態にかかるフェライト系ステンレス鋼を、仕上げ温度850℃として、板厚5mmに熱間圧延した。その後、450℃までの平均冷却速度を変化させながら炉冷、空冷、気水冷却或いは水冷のいずれかにて冷却し、冷却後は430℃で巻き取り、熱延コイルとした。巻き取り後の熱延板靭性を20℃で評価した結果を図6に示す。
図6より明らかなように、平均冷却速度の増加と共に、衝撃値が増加した。また、平均冷却速度が10℃/s以上では衝撃値が20J/cmを超え、常温での冷間圧延や酸洗処理等の後工程における通板が可能と判断された。
これは、平均冷却速度が10℃/s未満の場合は、冷却過程においてCu−richクラスタが析出してしまい、硬化してしまったためと考えられる。
なお、図6に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、17%Cr−0.1%Si−0.2%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
図7では、本実施形態にかかるフェライト系ステンレス鋼を、仕上げ温度を850℃として、板厚5mmに熱間圧延した。次いで、巻取温度を300℃〜800℃まで変化させて巻き取った後、得られた熱延コイルのボトム部からサンプルを採取し、熱延板靭性を評価した結果を図7に示す。
図7から明らかなように、ボトム部の衝撃値は、巻取温度を500℃〜700℃とした時に、20J/cm未満となる事が分かる。
これは、図1に示したグラフと同様に、巻取温度を500℃〜700℃の範囲とした場合、ボトム部でCu−richクラスタが析出したため、靭性が低下したものと考えられる。なお、こういった場合では、熱延コイル全長にわたる温度履歴を、上記式(1)を満足するように制御することにより、このような熱延コイル内の各部位における靭性のばらつきを解消することが可能である。
また、図7に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.9%Si−0.5%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
図8では、本実施形態にかかるフェライト系ステンレス鋼を、仕上げ温度を830℃として、板厚5mmに熱間圧延した。その後、巻取温度を30℃から550℃まで変化させ巻き取った。
次いで、熱延コイルのスケールを酸洗により除去した後、冷間圧延により板厚5mmから板厚2mmまで圧延し、その後、900℃で冷延板焼鈍した。なお、冷延板焼鈍における平均昇温速度は7℃/sで行った。得られた冷延板を用いて測定したランクフォード値と、巻取温度との関係を図8に示す。
図8から明らかなように、ランクフォード値は、巻取温度が350℃〜450℃の間で極大値を示した。つまり、巻取温度を350℃〜450℃の間とすることで、冷延板の加工性が向上することが分かった。一方、450℃超の巻取温度でのランクフォード値の低下は、Cu−richクラスタの析出によるもの、また、350℃未満でのランクフォード値の低下は、固溶C,Nの増加に起因するものであると考えられる。
なお、図8に示す関係を調査すべく用いたフェライト系ステンレス鋼の鋼成分は、14%Cr−0.5%Si−0.5%Mn−0.005%C−0.010%N−0.15%Ti-1.2%Cu−0.0005%Bである。
ここで、本実施形態では巻取温度を350〜450℃と低温側の範囲内と規定している。このように巻取温度が低温側の場合は、冷延板焼鈍における平均昇温速度を5℃/s以上とすることが好ましい。昇温速度が遅すぎると、巻き取り時に析出させたε−CuがCu−richクラスタに成長してしまう場合がある。そのため、冷延板焼鈍における平均昇温速度を5℃/s以上とすることにより、Cu−richクラスタの生成を抑制でき、その結果としてr値の低下を抑制することがより可能となる。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造においては、通常、熱間圧延後に実施される熱延板焼鈍を施しても良いが、生産性向上の観点から、施さない方が好ましい。
通常のNb添加鋼は熱延鋼板が硬質であるため、冷延する前に熱延板焼鈍が施されるが、本実施形態に係る鋼板は、Nbを添加しないか、若しくは少量添加であるため、熱延鋼板の焼鈍を省略することが可能となり、製造コストの低減をもたらすことができる。
なお、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼板の製造では、熱間圧延と熱延板酸洗との間に、熱延板焼鈍を行ってもよい。上述したように、本実施形態にかかる製造方法においては、該熱延板焼鈍の工程を省略することが可能ではあるが、該熱延板焼鈍を行う際には、熱延板焼鈍温度を880℃〜1000℃の範囲とし、この場合の雰囲気としては、燃焼ガス雰囲気とすることが好ましい。これは、製造コストと生産性のためである。
また、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法では、上記第一の実施形態と同様に、冷間圧延を行う際、ロール径が400mm以上である圧延ワークロールを用いることが好ましく、加工性の指標であるr値を高くするために、ロール径が400mm以上のタンデム式圧延機で冷間圧延を施す方が好ましい。
尚、冷間圧延工程における圧下率が低いと、冷延板焼鈍後に再結晶組織が得られなかったり、過度に粗粒化して機械的性質を劣化させたりするため、冷間圧延工程の圧下率は50%以上が望ましい。
また、本実施形態においても上記第一の実施形態と同様に、他の製造工程については特に規定しないが、熱延板厚、冷延板焼鈍温度、冷延板焼鈍雰囲気などは適宜選択すれば良い。なお、好ましい条件としては、熱延板厚を3.0〜5.0mmとし、冷延板焼鈍温度を、860〜960℃に、冷延板焼鈍雰囲気は、燃焼ガス雰囲気とするか、又は水素と窒素の混合雰囲気とすることが望ましい。但し、冷延板焼鈍後の冷却過程では、Cu−richクラスタの析出による硬化を防止するために、空冷以上の冷却速度で冷却する事が望ましい。
また、冷間圧延、冷延板焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。
以上のように、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板の製造方法によれば、熱延後の巻取温度を最適化し、Cu系析出物の形態を制御することで、従来の課題であった靭性の劣化を防ぐことができる。また、固溶C量や固溶N量も制御可能となり、加工性を向上させることができる。
また、巻取温度を最適化するとともに、熱間圧延後の平均冷却速度を制御することにより、Cuを固溶させることができ、その結果、良好な靭性を確保することができる。
また、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼板は、NbやMoのような高価な合金元素をCuで代替しているため、自動車などの排気系用部材に適用する際に、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果を得ることができる。
以下、実施例により本発明の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、まず、表1及び表2に示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造した。このスラブを1190℃に加熱後、仕上げ温度を800〜950℃の範囲内として、板厚5mmまで熱間圧延し、熱延鋼板とした。
次に、平均冷却速度を10〜100℃/sとして、冷却速度に応じて空冷と水冷を使い分けて、表3、4に示す各巻取温度まで冷却した。その後、表3、4に示す所定の巻取温度で巻き取り熱延コイルとした。なお、熱間圧延後の熱延鋼板温度は放射温度計にてモニターしながら計測した。
引き続き、熱延コイルを酸洗することによりスケールを除去し、板厚2mm厚まで冷間圧延し、冷延板とした。なお、冷間圧延する際は、表3、4に示すような圧延ワークロールを用いた。ここで、表3、4中の試験番号P58〜P63については、上記酸洗を行う前に、焼鈍温度を950℃、焼鈍時間を120秒、雰囲気を燃焼ガス雰囲気として熱延板焼鈍を施した。
冷間圧延後、燃焼ガス雰囲気にて冷延板焼鈍を施した後、酸洗時間が140秒になるような通板速度で酸洗を施し、製品板とした。なお、冷延板焼鈍における平均昇温速度は4℃/sで行った。
また、冷間圧延では、大径ロール(直径400mm)を有する圧延機で一方向の多パス圧延を行うか、小径ロール(直径100mm)を有する圧延機でリバース式の多パス圧延を行った。
また、冷延板焼鈍温度は、結晶粒度番号を6〜8程度とするために、880〜950℃の範囲とした。なお、Nb含有量が本発明の上限を外れる比較例については、冷延板焼鈍温度を1000〜1050℃の範囲とした。
表1中のNo.0A〜0C、及び1〜24は本発明例、表2中のNo.25〜44は比較例である。
このようにして得られた、熱延コイルの硬さをビッカース硬さ試験(JIS Z 2244に準拠)で評価し、235Hv未満を合格とした。なお、このときの試験荷重は5kgfとし硬さ試験を行った。
また、熱延コイルからVノッチシャルピー衝撃試験片を作成し、20℃でシャルピー試験を行って、吸収エネルギーを測定した。なお、シャルピー試験は、JIS Z 2242に準拠し行うとともに、衝撃値が20J/cm以上を合格(○)、20J/cm未満を不合格(×)として評価を行った。結果を表3、4に示す。
尚、本実施例における試験片は、熱延板板厚ままのサブサイズ試験片であるため、吸収エネルギーを断面積(単位cm)で割ることにより、各実施例における熱延板の靭性(衝撃値)を比較し評価した。
次に、冷延板焼鈍を施した冷延板より、高温引張試験片を作製し、600℃および800℃で高温引張試験を実施し、0.2%耐力を測定した(JIS G 0567に準拠)。なお、高温強度の評価は、600℃耐力が150MPa以上、800℃耐力が30MPa以上を合格とした。
次に、常温でランクフォード値を測定した(JIS Z 2254に準拠)。なお、試験片は、鋼板面の圧延方向に対して平行(0°)、45°及び90°の3方向からそれぞれ採取した。なお、加工性の評価は、得られた3方向における測定値の平均ランクフォード値が1.1以上を特に優れたものとしたが、必ずしも当該数値を達成しなくともよく、0.9以上であれば良好なものと判断した。
以上の製造条件及び評価結果を表3、4に示す。
表3、4から明らかなように、本発明を適用した成分組成、熱延巻き取り条件にて製造した本発明例の場合、比較例に比べて熱延板靭性が良好であることがわかる。また、加工性の指標であるランクフォード値、さらに600℃、800℃における高温強度が高いことがわかる。つまり、本発明を適用した製造方法によると、靭性、さらには高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板を製造することができる。また、本発明にかかる熱延鋼板を用いて冷間圧延した場合でも、加工性が劣化することなく、良好な冷延板とすることができる。表3中の試験番号P17とP23は参考例である。
また、熱延板焼鈍を施した試験番号P58〜60の場合でも、熱延板焼鈍を省略した本発明例と同様の効果が得られることがわかる。
試験番号P1〜4、P15については、巻取温度が450℃未満としたため、鋼板中のCuを固溶させることができ、結果、良好な靭性値を確保することができた。しかし、冷延板焼鈍における昇温過程で過飽和に固溶したCuがCu-richクラスタとして析出したため、ランクフォード値が低下し、加工性が劣化した。
試験番号P5〜7、P12〜14については、巻取温度が450℃超650℃未満と低い温度範囲であった。そのため、Cu-richクラスタが析出してしまい、ビッカース硬度が大きく増加した。また、熱延板の靭性が劣り、さらに、ランクフォード値も大きく低下した。
試験番号P29、30については、巻取温度を750℃超と高温にしたため、靭性は良い値だったが、酸洗性が不良であった。これは、巻取温度が高温であったため、熱延コイルの酸化が進行してしまい、熱延板の酸洗工程において熱延板表面の酸化スケールを除去するために長時間を有したと考えられる。
試験番号P38、53は、CとNの含有量がそれぞれ上限外れであったため、粒界へのCr炭窒化物析出により、熱延板の靭性が低くなった。さらに、CとNの含有量が多かったため、Ti/(C+N)の値が低くなった。つまり、Tiの含有量に対して、CやNの含有量が多すぎたため、固溶C、固溶Nを、Ti等の炭窒化物として、十分に固定させることができなかた。その結果、冷延板焼鈍時において、{222}面の再結晶集合組織発達が阻害されてしまい、ランクフォード値が低い結果となった。
また、試験番号P53については、ビッカース硬度が増加した。これは、Nの含有量が多すぎたため、Cr窒化物が析出してしまい、硬化したものと考えられる。
試験番号P39はSiの含有量が多く、ランクフォード値は良好であったものの、固溶強化により靭性が劣った。
試験番号P40、45は、それぞれ、Mn,Niの含有量が多く、γ相の析出により、熱延板靭性が劣化すると共に、高温強度、ランクフォード値も劣化した。
試験番号P41は、Pの含有量が高く、靭性が劣った。
試験番号P42は、Sの含有量が高く、MnS析出量の増加によって高温強度が劣った。
試験番号P43は、Crの含有量が少なかったために、高温酸化が進み高温強度が損なわれた。また、熱延時のγ相析出により冷延板のランクフォード値が劣った。
一方、試験番号P44はCrの含有量が多かったため、475℃脆性が生じてしまい靭性が劣るとともに、ランクフォード値も劣化した。
試験番号P46は、Cuの含有量が少なかったため、靭性は良好な結果が得られたものの、十分な高温強度が得られなかった。
一方、試験番号P47は、Cuを過度に添加したため、Cu系析出物量が増えすぎて熱延板靭性、ランクフォード値と高温強度が低下した。
試験番号P48は、Tiの含有量が少なく、固溶C、Nを十分に固定できなかったため、粒界にCr炭窒化物が析出し、靭性、ランクフォード値が低下した。
試験番号P49、P50は、Ti、Vの含有量が上限外れのために、析出物が粗大化してしまい、この粗大な析出物が起点となって熱延板靭性が低下した。
試験番号P51は、Alの含有量が上限外れのために、硬質化してしまい、均一伸びが著しく低下した。また、熱延板靭性も低下した。
試験番号P52は、Bの含有量が上限を外れたため、多量のCrBが析出してしまい、熱延板靭性が低下した。
試験番号P54,P55は、Mo,Nbの含有量が上限を超えたため、熱延板にLaves相が析出してしまい、靭性を劣化させた。また、ランクフォード値も低下した。
試験番号P56は、Zrの含有量が上限を超えたため、熱延板靭性が低下するとともに、高温強度も低下した。
試験番号P57は、Snの含有量が上限を超えたため、Snによる固溶強化により靭性が低下すると共に、耐酸化性の低下により高温強度も低下した。
また、試験番号P61〜63は熱延板焼鈍を施した場合であるが、試験番号P5〜7、P12〜14と同様に、巻取温度が450℃超650℃未満と低い温度範囲であった。そのため、Cu-richクラスタが析出してしまい、ビッカース硬度が大きく増加し、さらに熱延板靭性も低下した。
(実施例2)
本実施例では、まず、表5及び表6に示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造した。このスラブを実施例1と同様に、1190℃に加熱後、仕上げ温度を800〜950℃の範囲内として、板厚5mmまで熱間圧延し、熱延鋼板とした。
次に、850〜450℃間の平均冷却速度を、表7、8に示すような所定の速度として、熱延鋼板を表7、8に示す各巻取温度まで水冷により冷却した。その後、表7、8に示す所定の巻取温度で巻き取り熱延コイルとした。なお、熱間圧延後の鋼板温度は放射温度計にてモニターしながら計測した。
引き続き、実施例1と同様の方法により冷間圧延し、冷延板とした。なお、冷間圧延する際は、表7、8に示すような圧延ワークロールを用いた。ここで、表7、8中の試験番号P58〜P64については、上記酸洗を行う前に、焼鈍温度を950℃、焼鈍時間を120秒、雰囲気を燃焼ガス雰囲気として熱延板焼鈍を施した。
冷間圧延後、燃焼ガス雰囲気にて冷延板焼鈍を施した後、酸洗を施し、製品板とした。なお、本実施例では、冷延板焼鈍における平均昇温速度を7℃/sとして行った。
なお、熱延コイルの酸洗は、酸洗時間が140秒になるような通板速度で行った。また、表7、8に示すように、スケールの残存が無い物を合格(○)とし、熱延板の酸洗性を評価した。なお、スケールの残存状況は、ルーペにより確認した。
冷間圧延では、大径ロール(直径400mm)を有する圧延機で一方向の多パス圧延を行うか、小径ロール(直径100mm)を有する圧延機でリバース式の多パス圧延を行った。
また、冷延板焼鈍温度は、結晶粒度番号を6〜8程度とするために、880〜950℃の範囲とした。なお、Nb含有量が本発明の上限を外れる比較例については、冷延板焼鈍温度を1000〜1050℃の範囲とした。
なお、表5及び表6中の鋼種0A〜0C、及び1〜24は本発明例、鋼種25〜44は比較例である。
このようにして得られた、熱延コイルのミドル部とボトム部から、Vノッチシャルピー衝撃試験片を作成し、20℃でシャルピー試験を行って、吸収エネルギーを測定した。シャルピー試験は、JIS Z 2242に準拠し行うとともに、衝撃値が20J/cm以上を合格(○)、20J/cm未満を不合格(×)として評価を行った。
尚、本実施例における試験片は、熱延板板厚ままのサブサイズ試験片であるため、吸収エネルギーを断面積(単位cm)で割ることにより、各実施例における熱延板の靭性を比較し評価した。
次に、冷延板焼鈍を施した冷延板より、高温引張試験片を作製し、600℃および800℃で高温引張試験を実施し、0.2%耐力を測定した(JIS G 0567に準拠)。なお、高温強度の評価は、600℃耐力が150MPa以上、800℃耐力が30MPa以上を合格とした。
次に、常温でランクフォード値を測定した(JIS Z 2254に準拠)。なお、実施例1と同様の方法で試験片を採取した。なお、加工性の評価は、得られた3方向それぞれのランクフォード値の平均値が1.1以上を特に優れたものとしたが、必ずしも当該数値を達成しなくともよく、0.9以上であれば良好なものと判断した。
以上の製造条件及び評価結果を表7、8に示す。
表7、8から明らかなように、本発明を適用した成分組成、熱延巻き取り条件にて製造した本発明例の場合、比較例に比べて熱延板の靭性、酸洗性、冷間圧延焼鈍板の高温強度、ランクフォード値が良好であることがわかる。つまり、本発明を適用した製造方法によると、加工性や靭性、さらには高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造することができる。
また、熱延板焼鈍を施した試験番号P58〜61の場合でも、熱延板焼鈍を省略した本発明例と同様の効果が得られることがわかる。
一方、本発明例から外れる比較例では、シャルピー衝撃値(吸収エネルギー)、0.2%耐力並びにランクフォード値の少なくとも1つが低かった。これにより、比較例におけるフェライト系ステンレス鋼板の靭性、加工性または高温強度が低下したことが分かる。
比較例の試験番号P1〜P3は、巻取温度が350℃未満と低い温度であった。そのため、熱延板靭性としては非常に良い結果が得られたが、ランクフォード値が低下した。これは、固溶C、固溶Nが、Ti等の炭窒化物として十分に固定されなかったため、冷延板焼鈍時に、{222}面の再結晶集合組織の発達が阻害されてしまった。その結果、ランクフォード値が低下し、加工性が劣化したと考えられる。
試験番号P8及びP9は、巻取温度が450℃より高く、650℃より低い温度範囲であった。そのため、Cu-richクラスタが析出してしまい、脆化した。これにより、熱延板の靭性が劣り、ランクフォード値も大きく低下した。
試験番号P10は、巻取温度を650℃と高温にしていたため、熱延コイルのミドル部やボトム部の温度降下量に大きな差が生じた。そのため、熱延コイルのミドル部の靭性は非常に良かったが、ボトム部の靭性が悪いという結果となってしまい、熱延コイルの各部位の靭性において、大きな差が生じた。また、ランクフォード値も低い結果となった。
試験番号P11、12は、巻取温度を430℃としたが、巻き取りまでの平均冷却速度が10℃/s未満であったため、熱延板の靭性が低下した。これは、平均冷却速度が低かったため、Cu−richクラスタが析出したためと考えられる。また、ランクフォード値も低下した。
試験番号P38,P53は、CとNの含有量がそれぞれ上限外れであったため、粒界へのCr炭窒化物析出により、熱延板の靭性が低くなった。さらに、CとNの含有量が多かったため、Ti/(C+N)の値が低くなった。つまり、Tiの含有量に対して、CやNの含有量が多すぎたため、固溶C、固溶Nを、Ti等の炭窒化物として、十分に固定させることができなかた。その結果、冷延板焼鈍時において、{222}面の再結晶集合組織発達が阻害されてしまい、平均ランクフォード値が低い結果となった。
試験番号P39はSiの含有量が多く、ランクフォード値は良好であったものの、固溶強化により靭性が劣った。
P40,P45は、それぞれ、Mn,Niの含有量が多く、γ相の析出により、熱延板靭性が劣化すると共に、高温強度、ランクフォード値も劣化した。
試験番号P41は、Pの含有量が高く、靭性が劣った。
試験番号P42は、Sの含有量が高く、MnS析出量の増加によって高温強度が劣った。
試験番号P43は、Crの含有量が少なかったために、高温酸化が進み高温強度が損なわれた。また、熱延時のγ相析出により、熱延板靭性や冷延板のランクフォード値が劣った。
一方、試験番号P44はCrの含有量が多かったため、475℃脆性が生じてしまい、靭性が劣った。
試験番号P46は、Cuの含有量が少なかったため、靭性は良好な結果が得られたものの、十分な高温強度が得られなかった。
一方、試験番号P47は、Cuを過度に添加したため、Cu系析出物量が増えすぎて熱延板靭性、ランクフォード値と高温強度が低下した。
試験番号P48は、Tiの含有量が少なく、固溶C,Nを十分に固定できなかったため、粒界にCr炭窒化物が析出し、靭性、ランクフォード値が低下した。
試験番号P49、P50、P51、P56は、Ti、V、Al、Zrの含有量が上限外れのために、析出物が粗大化してしまい、この粗大な析出物が起点となって熱延板靭性が低下した。
試験番号P52は、Bの含有量が上限を外れたため、多量のCrBが析出してしまい、熱延板靭性が低下した。
試験番号P54,P55は、Mo,Nbの含有量が上限を超えたため、熱延板にLaves相が析出してしまい、靭性を劣化させた。また、酸洗性、ランクフォード値も低下してしまった。
試験番号P57は、Snの含有量が上限を超えたため、Snによる固溶強化により靭性が低下すると共に、耐酸化性の低下により高温強度も低下した。
また、試験番号P62〜64は熱延板焼鈍を施した場合であるが、試験番号62及び63はP8、9と同様に、巻取温度が450℃より高く、650℃より低い温度範囲であった。そのため、Cu-richクラスタが析出してしまい、ビッカース硬度が大きく増加し、さらに熱延板靭性も低下した。試験番号64は、巻取温度を650℃と高温にしていたため、熱延コイルのミドル部やボトム部の温度降下量に大きな差が生じた。そのため、熱延コイルのミドル部の靭性は非常に良かったが、ボトム部の靭性が悪いという結果となってしまい、熱延コイルの各部位の靭性において、大きな差が生じた。
本発明例のうち、巻取温度を350℃〜450℃の範囲とし、熱延後、850℃〜450℃の平均冷却速度を10℃/s以上としたものについては、熱延板靭性、酸洗性、高温強度、ランクフォード値のいずれもが良好な値を示した。
なお、本発明例である、試験番号P21、P25は、冷間圧延を行う際、直径100mmの小径ロールを有する圧延機を用いた。このため、ランクフォード値は合格値の範囲内であったものの、若干低い値であった。これにより、冷間圧延を行う際、直径400mmの大径ロールを有する圧延機を用いたほうが好ましいことが分かる。
これらの結果から、上述した知見を確認することができ、また、上述した各鋼組成及び構成を限定する根拠を裏付けることができた。
以上の説明から明らかなように、本発明のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法によれば、NbやMoのような高価な合金元素をCuで代替しているため、高い高温強度を有するようなステンレス鋼板において、熱延板靭性も高める事が可能になる。このため、高効率な製造が可能になる。また、本発明を適用した材料を、特に排気用部材に適用することにより、部品コストの低減や軽量化による環境対策などの社会的寄与度を高めることができる。つまり、本発明は、産業上の利用可能性を十分に有する。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.02%以下、
    N:0.02%以下、
    Si:0.1〜1.5%、
    Mn:1.5%以下、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Ni:1.5%以下、
    Cr:10〜20%、
    Cu:1.0〜3.0%、
    Ti:0.08〜0.30%、
    Al:0.3%以下、
    をそれぞれ含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
    ビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が55J/cm 以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.02%以下、
    N:0.02%以下、
    Si:0.1〜1.5%、
    Mn:1.5%以下、
    P:0.035%以下、
    S:0.010%以下、
    Ni:1.5%以下、
    Cr:10〜20%、
    Cu:1.0〜3.0%、
    Ti:0.08〜0.30%、
    Al:0.3%以下、
    をそれぞれ含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
    ビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が20J/cm 以上であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Nb:0.3%以下、
    Mo:0.3%以下、
    Zr:0.3%以下、
    Sn:0.5%以下、
    V:0.3%以下、
    B:0.0002%〜0.0030%、
    の1種以上を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板。
  4. 請求項1または請求項3に記載の鋼組成を有するフェライト系ステンレス鋼を鋳造した鋼片に対して熱間圧延の仕上げ圧延を施し熱延鋼板とした後、この熱延鋼板を、巻取温度を620℃以上750℃以下として巻き取り、次いで、熱延コイル全体において、下記式(1)を満足するように熱延鋼板温度T(K)及び保定時間t(h)を制御しつつ、前記熱延コイルを保熱、或いは冷却することを特徴とするビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が55J/cm 以上であるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法。
    T(20.24+log(t))≧17963・・・・(1)
  5. 請求項2または請求項3に記載の鋼組成を有する鋼片に対して、熱間圧延の仕上げ圧延後850℃〜450℃間の平均冷却速度を10℃/秒以上とするとともに、巻取温度を350℃〜450℃とし巻き取ることを特徴とするビッカース硬さで235Hv未満の硬さを有し、衝撃値が20J/cm 以上であるフェライト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載の方法で製造した熱延鋼板を熱延板酸洗、冷間圧延、冷延板焼鈍、冷延板酸洗を行う事を特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  7. 請求項4または請求項5に記載の方法で製造した熱延鋼板を熱延板焼鈍、熱延板酸洗、冷間圧延、冷延板焼鈍、冷延板酸洗を行う事を特徴とするフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  8. 前記冷間圧延を行う際、ロール径が400mm以上である圧延ワークロールを用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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