JP5844671B2 - フィラメントワインド成形物及びその製造方法 - Google Patents

フィラメントワインド成形物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、クラックの発生が少ないフィラメントワインド成形物に関する。特には熱歪に強い中空フィラメントワインド成形物に関する。
ガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維等を強化繊維材料として用い、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を補強する複合材料は、スポーツ用品、自動車部品を始め広く使用されている。
中でも軽量の複合材料としては中空物が好ましく用いられており、中空体の表面に補強用繊維を捲きつけるフィラメントワインディング(以下「FW」ということがある)による中空物の成形方法、いわゆるFW法による複合材料が多く採用されている。
ところで、このFW法には、あらかじめ熱硬化性樹脂マトリックスを含浸したストランドを用意し、これをマンドレルやスレーブなどの中空体に巻き付けて成形する方法(Dry FW法)や、ストランドに低粘度樹脂を含浸させながら、中空体に巻き付けて成形する方法(Wet FW法)等が一般的である。さらにWet FW法では、ストランドに低粘度樹脂を含浸させる方法の種類によって、キスタッチ法、浸漬法等の各種の方法が存在する。
しかしこれらのいずれの方法を採用するにしても、成形時にFW成形物の層高が高くなり肉厚になると、隣接する繊維ストランド間に局所的クラックが生じやすい傾向にある。特に同一の配向角度を有する繊維ストランド群は一つの単位としてまとまりやすく、結果的に、配向角度が異なるストランド群相互の間にクラックが生じやすいという問題があった。
特に使用時に熱衝撃や荷重変動が頻繁に起こる使用環境や、製造工程の樹脂の硬化時においてこの問題は顕著であった。さらに、産業・機械用資材等の耐熱性が要求される分野で使用される場合においては、通常、複合材料の耐熱性を高めるために耐熱性能の高い熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用するが、このような樹脂は靱性が低く、なおさらクラックが生じやすい傾向にある。
そこで一般にはFW法によるFW成形物の成形時に、ストランド間或いはストランド群間に生ずるクラックを防止するための手段として、(1)FW時の巻角度を減らしマトリックス材料の負荷を軽減する方法や、(2)積層物の肉厚を薄くする方法、あるいは(3)靱性のあるマトリックス樹脂を使用する方法が採用されてきた。
しかしながら、これらの方法は全て、FW成形物の性能が低下する手段であり、高い性能を得ることが困難であった。あまり高い耐熱性が要求されない用途ではある程度のクラック防止効果は期待できるものの、特に高い耐熱性が要求される場合には、採用できないという問題があった。例えば高い耐熱性を有する熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用する場合には、そのような樹脂は本来脆性な性質を有するため、どうしてもクラックを有効に防止できなかったのである。
また、特許文献1には、熱硬化性樹脂をストランド内に含浸させ、かつストランドの外周部に熱可塑性樹脂粉末を局在化させることにより、耐クラック性を向上させるFW技術が開示されている。しかしまだその耐クラック性は十分とは言えないものであった。
特開2000−246807号公報
本発明は、前記した従来の技術が有する問題を解決し、強化繊維を用いたフィラメント成形物において、製品表面に発生するクラックを低減し物性に優れたフィラメントワインド成形物を提供することにある。
本発明のフィラメントワインド成形物は、金属から構成される中空体の表面に繊維補強層が存在し、その繊維補強層が一方向繊維と樹脂からなるストランド層と繊維織物と樹脂からなる織物層とから構成され、織物の目付が10〜200g/m の範囲であり、織物層がストランド層の間に位置することを特徴とする。
さらには、中空体が2種類以上の材料を張り合わせた構造であることや、中空体の繊維補強層と接する表面に溝が存在すること、繊維補強層中の織物層の占める厚さが20%以内であることが好ましい。また繊維補強層中に熱可塑性樹脂粉末が含有していることや、繊維が炭素繊維であることが好ましい。
またもう一つの本発明のフィラメントワインド成形物の製造方法は、金属から構成される中空体表面に繊維からなるストランドを捲き付け、次いで目付が10〜200g/m の範囲の織物とストランドを順に捲き付けることを特徴とする。さらには、ストランドに低粘度樹脂を含浸した後に捲き付けるWet FW法であることが好ましい。
本発明によれば、繊維により補強されるフィラメント成形物において、製品表面に発生するクラックを低減し物性に優れたフィラメントワインド成形物が提供される。
本発明のフィラメントワインド成形物を成形するための中間工程での斜視図である。 本発明に用いられるフィラメントワインド成形物の一例を示す断面図である。
本発明のフィラメントワインド成形物は、中空体表面に繊維と樹脂からなる繊維補強層が存在するものである。そしてこの本発明のフィラメントワインド成形物は、その繊維補強層が一方向繊維と樹脂からなるストランド層と繊維織物と樹脂からなる織物層とから構成され、織物層がストランド層の間に位置することを必須とする。
ここで、本発明に用いられる中空体としては成形物を軽量にするために中空構造として物であれば特に制限は無いが、フィラメントワインディングによりもっとも補強効果が発揮されやすい円筒形のものであることが好ましく、幅方向に径の変動の無いスリーブ形状であることが好ましい。また熱変動により中空体の形状が変化しやすい金属から構成されているものであることや、2種以上の材料を張り合わせた構造である場合に、本本発明は特に有効である。また中空体の補強層と接する表面に溝が存在する場合も、本発明は特に有効である。また中空体の表面に溝が切られている場合、その溝の間に樹脂が入り込み、成形物を冷却する際に中空体を構成する材料との収縮率の違いから捲き付けた補強層にクラックが発生しやすいが、本発明ではそのようなクラックを有効に防止しうるのである。
特にこの中空体が、モーター用のローターのような磁石を含む複数の金属から形成され、中空体の表面には溝が切られている中空体である場合に、本発明は特に効果的にクラックを防止する。例えば中空体が、永久磁石と鉄からなる場合には、熱により永久磁石は収縮し、鉄は逆に膨張するため、中空体は全周にわたり一応に変形するのではなく、各材料の接合形態により複雑な挙動をとる。本発明のフィラメントワインド成形物はそのような中空体であっても、有効にクラックを防止することができる。
本発明のフィラメントワインド成形物は、上記のような中空成形体の表面に繊維補強層が存在するものである。そしてこの繊維補強層は、いわゆる強化繊維と樹脂からなる繊維補強層であることが好ましい。
本発明の繊維補強層に用いられる繊維としては、特に制限は無く、高強度の要件を満たす繊維であれば良く、具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、セラミック繊維等の繊維が適用可能である。また、必ずしも1種類の繊維から構成される必要はなく、複数の種類の繊維を組み合わせて用いてもよい。
しかし、軽量かつ高剛性なフィラメントワインディング成形物を得るためには、比強度、比剛性に優れる炭素繊維の使用がもっとも好ましい。一方、繊維の製造コスト、量産性を鑑みると、ガラス繊維を用いるのも有効であり、高強度、高剛性、量産性をバランスよく満たすには、炭素繊維とガラス繊維を組み合わせて用いても良い。
あえて言えば本発明で用いられる繊維の強度としては、引張強度で2000MPa〜6000MPaの範囲が好ましく、特には4000MPa以上や、5000MPa以下の範囲であることが好ましい。また、繊維の伸度としては、7%以下であることが好ましく、さらには4%以下、特には0.1〜2%の範囲が好ましい。弾性率としては、50〜600GPaが好ましく、さらには200GPa以上、特には350〜550GPaの範囲であることが好ましい。また成形温度である200℃での伸度も低いことが好ましく、200℃での伸度が7%以下、さらには4%以下、特には0.1〜2%の範囲にあることが好ましい。
また、これらの繊維はマルチフィラメントからなる繊維束であることが好ましく、1000フィラメント(1K)以上50000フィラメント(50K)以下であることが好ましい。特には6000フィラメント(6K)以上48000フィラメント(48K)以下の範囲であることが好ましい。また各フィラメントを構成するそれぞれのモノフィラメント(単糸)としては5〜15μmの範囲であることが好ましい。このようなマルチフィラメント構造をとることにより、疲労性に優れた補強繊維とすることが可能となる。
また本発明のフィラメントワインド成形物では、その表面の繊維補強層(以下、補強層と省略して記すことがある)は上記繊維と樹脂から構成されているが、樹脂としては低粘度樹脂であることが作業性に優れ好ましい。
このような補強層に最適なマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネイト樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、酢酸セルロース樹脂などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。特にこれらの中でも、良好な作業性、成形後の優れた機械特性という点を考慮すると熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。中でも、高耐熱、高剛性、耐環境性、かつ耐薬品性に優れるビスマレイミドトリアジン樹脂が特に好ましい。
さらに本発明においては、この補強層中に樹脂粉末が含有していることが好ましい。樹脂粉末が強化繊維の外周に局在していることにより、クラックの発生をより有効に防止することが可能となる。さらにはこの樹脂粉末が熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような樹脂を例示すると、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリオキシメチレン樹脂などの熱可塑性樹脂から選ばれた1種以上が、特に好適に使用できる。
樹脂を局在化させる場合には、その樹脂としては熱可塑性樹脂であることが好ましく、粒径としては100μm以下、嵩密度としては0.1g/ml以上であることが好ましい。さらには特に粒径1〜50μm、嵩密度0.1〜0.5g/mlの範囲にあることが好ましい。粒径が小さくなりすぎると、特に繊維の直径より小さくなる場合、ストランド内に樹脂粒子が含浸しやすくなり、熱衝撃吸収力が小さくなる傾向にある。またこの樹脂としては、複合材料の成形硬化温度よりもガラス転移温度(Tg)や、融点(mp)が高く、耐熱性に優れたものであることが好ましい。
このような好ましく用いられる樹脂粒子の、マトリックス樹脂全体に占める割合としては、30重量%以下であることが好ましく、さらには0.01〜15重量%の範囲であることが好ましい。樹脂粒子の配合量が多くなりすぎると樹脂組成物の粘度が高くなる傾向に有り、成形時に含浸し難く、機械的物性が低下する傾向にある。
またこの樹脂粒子の、FW成形物内における分散形態は、FW成形物を構成するストランド及びストランド群の全てにわたって均一に存在するよりも、FW成形物を構成するストランド及びストランド群の特にクラックの発生しやすい構成、例えば高弾性強化繊維材部、周方向繊維配向部、配向角度の異なるストランド群の界面部等に多く熱可塑性樹脂を集中的に分散し存在させることが好ましい。分散配置することにより、FW成形物全体に占める樹脂粒子の存在を低く抑えることが可能となり、成形物の物性も向上する傾向にある。
そして本発明のフィラメントワインド成形物は、補強層を構成する繊維として、上記のような強化繊維からなる一方向のストランド層が存在し、さらには一方向ストランド層の間に織物層が存在する、つまり織物層がストランド層の間に位置することを必須要件としている。ここで織物層もまた強化繊維を含むものであることが好ましく、少なくともその織物の一方向は強化繊維から構成されていることが好ましい。この織物層としては綾織物等、用途に合わせ様々な織物を用いることが可能であるが、強度利用率の点からも平織物であることが好ましい。また強化繊維としては低伸度の炭素繊維がもっとも好ましく用いられる。織物に用いられる強化繊維の伸度としては、7%以下であることが好ましく、さらには4%以下、特には0.1〜2%の範囲が好ましい。
本発明においては成形物の強度を得るためには一方向ストランドの存在比を多く、織物の存在比が少ないことが好ましい。具体的には織物の目付けとしては10〜200g/mの範囲であることが好ましく、織物の厚さとしては0.01〜1.0mmの範囲であることが、さらには0.03〜0.1mmの範囲であることが好ましい。
また、フィラメントワインド成形物の強化繊維を含む補強層の厚みをtとしたとき、織物層の厚みとしては0.2t未満であることが好ましく、特には0.02t以上0.11t以下の範囲で在ることが好ましい。あるいは1枚の織物に対し、補強層が0.5mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。
一般に織物層は一方向ストランドに比較して補強効果が少なく、高性能のフィラメントワインディング成形物では、使用が避けられることが多かった。しかし本発明者らは織物の有するクラック防止効果を発揮させるためにあえて織物層を用いることにより、総合的なフィラメントワインド成形物の物性を向上させることができたのである。
そのような高性能のフィラメントワインド成形物とするためには中空成形体の軸と一方向ストランドを構成する繊維のなす角(以下、配向角度と称する)が±80〜90°の配向角度で配列されたストランドの層、いわゆるフープ巻き層であることが好ましい。またそのような一方向ストランドと共に用いられる織物は平織物であることが好ましく、配向角度おおよそ±45°や、0/90°の平織物層であることが好ましい。このように左右対称構造に近い配置をとることにより、本発明のフィラメントワインド成形物は、ストランド間のクラック対する耐クラック性が高く、また引張強度が高い成形物となる。
なお、ストランド層の配向角度をこのように大きくすることにより、得られる成形体の引張強度等の物性を高めることができるが、従来では近接層との配向角度の差が小さくなり耐クラック性が低いという問題があったのである。本発明では織物層を配置することによりこの問題を解決したのである。特に平織物層では、配向角度が0/90°に近いほどフィラメントワインド成形物に発生するクラックを低下させることができる。特にしたがって、配向角度が±80〜90°であるストランドの層を含み、配向角度が0/90°の平織物の層を含むフィラメントワインド成形物本体である場合に、引張強度と耐クラック性がバランス良く高い水準となる。
耐クラック性をより高めるためには、織物層が一方向ストランド層に隣接していることが好ましい。そのため織物層は中空体と一方向ストランド層の間や、成形物の最表面ではなく、一方向ストランド層に挟まれた中間に位置することが好ましい。
また成形物の補強層全体に注目した場合、織物層は補強層の外層部よりも内層部により多く存在することが好ましい。このようなフィラメントワインド成形物では、一般にクラックは硬化の際の内面部の中空体と補強層の熱膨張率の差から発生することが多い。そのため、最もひずみが多く発生するのは中空体と補強層の間に織物を配置することが最適なのである。補強層の外周側になるにつれて歪は減少していくため、内部ひずみがより多く発生する補強層の内層に、内部ひずみを抑制する織物を多く配置することにより、本発明は最も効果を発揮できるのである。また、織物の配置としては一箇所に固めることなく、複数の織物層を分散することが好ましく、2〜5層からなることが好ましい。
織物の伸度としては先に述べたように低伸度であることが好ましく、その観点からはガラス繊維織物やアラミド繊維織物のような伸度が高い材料ではなく、低伸度かつ高強度の炭素繊維からなる織物であることが好ましい。
このような本発明のフィラメントワインド成形物は次のような方法にて得ることができる。すなわち、中空体表面に強化繊維からなるストランドを捲き付け、次いで織物とストランドを順に捲き付けるフィラメントワインド成形物の製造方法である。またフィラメントを中空体に捲きつける方法としては、一般にフィラメントワインディング法と言われる方法に加えて、テープワインディング法、シートワインディング法等により、樹脂を含浸させた強化繊維を、スリーブ形状などの中空体に巻き付けて成形する方法などを採用しうる。
中空体にフィラメントワインディングする方法としては、あらかじめ熱硬化性樹脂マトリックスを含浸したストランドを用意し、これをマンドレルに巻き付けて成形する方法(Dry FW法)や、ストランドに低粘度樹脂を含浸させながら、マンドレルに巻き付けて成形する方法(WetFW法)が存在する。本発明においては、繊維ストランドに低粘度樹脂を含浸した後に捲き付けるWet FW法であることが特に好ましく、製造工程にて成形物が温度変動した場合にも、クラックの発生が顕著に抑えられる。また、このWet FW法には、ストランドに低粘度樹脂を含浸させる方法の種類によって、キスタッチ法や浸漬法などが存在するが、繊維がよれにくいキスタッチ法であることが好ましい。
本発明においては、強化繊維からなるストランドを織物と併用することにより、得られた成形物の耐クラック性を向上させたものであるが、製造工程途中におけるクラックも有効に防止しうる方法となった。特に成形時に樹脂の粘度を下げるために高温で成形し、その後冷却して樹脂を硬化させ成形品を完成させる場合には、その間に熱衝撃や荷重が繰返し付加され、従来方法では工程歩留りが低下するという問題があった。本発明の製造方法を用いることにより、クラックの発生を有効に防止し、歩留りを高く保つことが可能になったのである。また、従来はクラックを防止する手段として成形後の冷却時間を長く取ることが歩留りを向上させる上で必要であったが、本発明では顕著にクラックの発生が防止されるため、成形後の冷却時間を短くすることが可能となった。冷却する時間としては、0.1〜100℃/分の広い範囲で十分に効果的である。さらには10〜60℃/分の範囲で好ましく用いることが可能である。
特にこの中空体が、モーター用のローターのような磁石を含む複数の金属から形成され、中空体の表面には溝が切られている中空体である場合に、本発明の製造方法は特に効果的に工程中のクラックの発生を防止する。例えば中空体が、永久磁石と鉄からなる場合には、熱により永久磁石は収縮し、鉄は逆に膨張するため、中空体は全周にわたり一応に変形するのではなく、各材料の接合形態により複雑な挙動をとる。また中空体の表面は磁石であることが多く、どうしてもその表面には溝が存在する。フィラメントワインド成形物ではマトリックス樹脂が加熱した際にその溝の間にかみこみアンカーとなり、冷却する際に各材料の収縮率の違いにより割れが発生しやすい傾向にあった。本発明の製造方法においては、たとえそのような中空体であっても、有効にクラックを防止することができるのである。
特に本発明の製造方法ではクラックの発生が少ないため、今まで使用しにくかった耐熱性の熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用することができるようになった。このような耐熱性に優れた樹脂硬化物は、通常靱性が低く、成形時にクラックが生じやすいため、従来方法では高い歩留りでの製造が困難だったのである。
本発明のフィラメントワインド成形物は、上記のような製造方法で作られるものであるが、次に本発明の一実施形態を、図面を用いてさらに具体的に説明する。
図1に示すように、円筒状のスリーブ1の表面の脱脂を行う。次にフィラメントワインディング装置などにより、未硬化の樹脂を含浸したストランド2を、所定の巻き角度でスリーブ1の軸方向との鉛直方向に巻き付けていき、端部で所定の巻き角度に変更し、同巻き付け方向で反対軸方向に折り返す。この繰り返しによってストランド層3が形成される。
次に、未硬化の樹脂を含浸した平織物4をストランド層3の直上に所定の巻き角度で配置を行う。これにより平織物層5が形成される。
未硬化の樹脂を含浸したストランド層3と平織物層5を交互に所定の厚みごとに配置することで、スリーブ1へ所定量巻き付けてフィラメントがワインドされた成形物を形成する。
この表面に繊維補強層が形成された成形物の最表面に、熱収縮性のあるフィルムを巻き付ける。その後、フィラメントワインド成形物が巻き付けられたスリーブ1を加熱炉に入れ、所定の温度と時間で熱硬化性樹脂を硬化させる。熱硬化性樹脂を硬化させた後、フィラメントワインド成形物を所定の直径に円筒研磨加工することにより、図2に示すような耐クラック性に優れたフィラメントワインド成形物6が得られる。
このような本発明のフィラメントワインド成形物は、製品表面に発生するクラックを有効に低減し、強化繊維の物性を最大限に生かしたフィラメント成形物となる。
加工後の本発明のフィラメント成形物はその表面にクラックがなく、物性に優れた成形物となる。またその表面にクラックが無いことから、補強層内部や、中空体に対する悪影響が少ない材料となる。例えば使用条件によっては、表面に存在するクラックから内面の中空物までの間を流体(例えば、作動油など)や水蒸気が通ることがあるが、それらによって補強部や中空物に与える劣化を防止することが可能となった。
また本発明のフィラメントワインド成形物は、様々な用途に使用可能であるが、特にはモーターやフライホイールなどの鉄道車両、自動車、一般産業用の機械などのあらゆる回転体の補強部材として最適に利用可能である。特にこのような回転体は、一度クラックが発生するとその部分を起点にクックが伸展する傾向にあるため、そのようなクラックの発生を防止する本発明は特に効果的である。
またこのような回転体は高速回転中に成形物が変形しないように一方向ストランドの配向角が大きく、また内部に磁石等を設置したり重量が必要であるために熱による寸法変化の大きい金属部品を、さらに2種以上組み合わせて中空体として用いることが多い。その結果、製造工程のみならず使用段階でもクラックが発生しやすい状況におかれており、本発明のフィラメントワインド成形物の効果がもっとも顕著に発揮されるのである。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
なお以下の実施例及び比較例では、下記の材料を使用した。
材料:
(炭素繊維):
PAN系の炭素繊維12Kストランド(弾性率380GPa)〔東邦テナックス株式会社製「UMS40 F22 12K 400TEX」,引張強度470kgf/mm,引張弾性率40tf/mm,伸度1.2%,繊維直径4.8μm,密度1.79g/cm〕。
(マトリックス樹脂):
ビスマレイミド−トリアジン系樹脂〔三菱ガス化学株式会社製「BT3005N」〕。
(樹脂粒子(熱可塑性樹脂)):
ポリエーテルイミド粉末(以下PEI粉末と記す)、粒径20〜30μm。
(平織物1):
超軽量炭素繊維織物〔サカイオーベックス株式会社製「W1105」;目付61g/m,基材厚み約0.074mm/ply,使用原糸(炭素繊維 HTS40 XS18 1K XS1、引張強度430kgf/mm),伸度1.8%,平織り;経密度11.55本/inch,緯密度11.55本/inch〕。
(平織物2):
ガラスクロス〔日東紡株式会社製「WPA 03 104BZ」(目付24.7g/m,基材厚み約0.038mm/ply,引張強度(縦方向)105N/inch,引張強度(横方向)93N/inch,伸度4%,平織り;経密度60本/inch,緯密度52本/inch)〕。
[実施例1]
直径125mmで、厚さ1.0mmの鉄製スリーブの外周に、厚さ1.5mmの永久磁石が貼り付けられたスリーブ(中空体)を用意した。なお、熱による鉄の膨張と永久磁石の収縮挙動を低減させるよう、永久磁石のつなぎ目には溝が存在していた。
一方、マトリックス樹脂と樹脂粒子(熱可塑性樹脂、PEI粉末)とを、樹脂粒子が5wt%になるように攪拌機にて混合して、樹脂混合物とし、この樹脂混合物を樹脂浴槽に入れた。樹脂浴槽内の樹脂混合物の温度は約45℃の一定になるように調整した。
炭素繊維ストランドを使用し、キスタッチ方式でストランドに樹脂混合物を含浸させ、2種の金属からできたスリーブ(中空体)に巻き上げた。このときの繊維張力は約1000(g/ストランド)に調整した。層の厚み1.0mmの厚さまで、配向角±85°にて繊維ストランドを中空体上にFW法にて巻き付けた。その上に平織物1(CFクロス)も同様にキスタッチ方式で樹脂混合物を含浸させ、0/90°となるようにCFクロスをハンドレイアップにて積層した。
続いて、層の厚み2.0mmの厚さまで、配向角±85°にて繊維ストランドを中空体上にFW法にて巻き付け、同じく、同様に含浸させたCFクロスをハンドレイアップにて積層した。さらに層の厚み4.0mmの厚さまで、配向角±85°にて繊維ストランドを中空体上にFW法にて巻き付け、同じく、同様に含浸させたCFクロスをハンドレイアップにて積層した。そして層の厚み7.0mmの厚さまで、配向角±85°にて繊維ストランドを中空体上にFW法にて巻き付け巻き付けた後、テーピングを行った。このものを、90℃×3時間+120℃×3時間+200℃×2時間の条件にて硬化炉にて硬化させ、引き続き20℃まで約18分で急冷し(降温10℃/分)、繊維ストランドと織物にて補強された成形物を得た。
この得られたFW成形物を円筒研磨加工を行い、製品とした。研磨後の製品外観を確認したところ、クラックの発生は全く見られなかった。
[実施例2]
硬化後の200℃から20℃への急速冷却時間を、約18分(降温10℃/分)から約3分(降温60℃/分)に変更した以外は、実施例1と同様にして、FW成形物を得た。研磨後の製品外観を確認したところ、実施例1と同様にクラックの発生は全く見られなかった。
[実施例3]
実施例1の平織物1(CFクロス)を層の厚さ1mm、2mm、4mm、の3箇所用いる代わりに、層の厚さ1mmと2mmの2箇所のみに用い、実施例2と同様に硬化後の200℃から20℃への急速冷却時間を、実施例1の約18分(降温10℃/分)から約3分(降温60℃/分)に変更した以外は、実施例1と同様にして、FW成形物を得た。研磨後の製品外観を確認したところ、このような厳しい条件でも、実施例1と同様にクラックの発生は全く見られなかった。
[比較例1]
実施例1の平織物1(CFクロス)を使用せず、炭素繊維ストランドのみで層の厚さ7mmまで捲き付けた以外は、実施例1と同様にして、FW成形物を得た。
研磨後の製品外観を確認したところ、クラック幅が最大で0.5mmのものが見られた。また試作した4個中全ての成形物にて、0.1mm以上の幅のクラックが観察された。
[比較例2]
比較例1と同様に実施例1の平織物1(CFクロス)を使用せず炭素繊維ストランドのみで層の厚さ7mmまで捲き付け、硬化後の200℃から20℃への急速冷却時間を、実施例1や比較例1の約18分(降温10℃/分)から約30時間(降温0.1℃/分)に変更した以外は、実施例1と同様にして、FW成形物を得た。
研磨後の製品外観を確認したところ、クラック幅が最大で0.5mmのものが見られた。また試作した47個中、0.1mm以上の幅のクラックが発生したFW成形物が20個観察された。さらに残りのほとんどの製品にも0.05mm以上のクラックが発生していた。
[実施例4]
実施例1の平織物1(CFクロス)を層の厚さ1mm、2mm、4mm、の3箇所用いる代わりに、平織物2(ガラスクロス)を層の厚さ0.5mm、1mm、1.7mm、2.7mm、4.0mm、5.7mm、6.3mmの6箇所に用いる変更を行った以外は、急速冷却時間(降温10℃/分)も含め実施例1と同様にして、FW成形物を得た。なお、平織物2(ガラスクロス)は平織物1(CFクロス)の約半分の厚さであるため、補強層厚さ中の織物の厚さの比は同じになった。
製品外観としては概ね良好だったものの、0.1mm以上のクラックの成形体が、作成した12個中7個存在した。
1 スリーブ(中空体)
2 繊維ストランド
3 ストランド層
4 織物
5 織物層
6 フィラメントワインド成形物

Claims (8)

  1. 金属から構成される中空体の表面に繊維補強層が存在し、その繊維補強層が一方向繊維と樹脂からなるストランド層と、繊維織物と樹脂からなる織物層とから構成され、織物の目付が10〜200g/m の範囲であり、織物層がストランド層の間に位置することを特徴とするフィラメントワインド成形物。
  2. 中空体が2種類以上の材料を張り合わせた構造である請求項1記載のフィラメントワインド成形物。
  3. 中空体の繊維補強層と接する表面に溝が存在する請求項1または2記載のフィラメントワインド成形物。
  4. 繊維補強層中の織物層の占める厚さが20%以内である請求項1〜3のいずれか1項記載のフィラメントワインド成形物。
  5. 中空体が磁石を含む複数の金属から形成されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載のフィラメントワインド成形物。
  6. 繊維が炭素繊維である請求項1〜5のいずれか1項記載のフィラメントワインド成形物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載のフィラメントワインド成形物からなる回転体。
  8. 金属から構成される中空体表面に繊維からなるストランドを捲き付け、次いで目付が10〜200g/m の範囲の織物とストランドを順に捲き付けることを特徴とするフィラメントワインド成形物の製造方法。
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