JP5843313B2 - 貼付剤用ゲル及びそれを有する貼付剤 - Google Patents

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Description

本発明は、テープ剤や湿布剤、ハップ剤等を始めとする各種の貼付剤に用いられる貼付剤用ゲルに関する。また本発明は、該ゲルを含有する貼付剤に関する。
貼付剤は腰痛、肩こり、打ち身、捻挫、炎症等の治療や足の疲れを癒す等の用途にテープ剤や湿布剤、パップ剤等として用いられている。更に近年では、顔や体の美容を目的としたシート状パック剤、フェイスマスク、冷却シートなどとしても利用されている。典型的には、不織布やテープ等のシート基材上に、各種有効成分が含まれたゲル状の粘着層を有した層構成を形成している。ゲル状の粘着層には、保形性、保水性、肌密着性、安定性、快適性、柔軟性及び有効成分の徐放性などの各種性能が要求される。
各種貼付剤のうち、粘着層が水性のゲルからなる場合、一般的に、親油性である有効成分やその溶解剤などが、ゲルから徐々に相分離によってブリードし、表面の不快なべたつきとして感じられ、快適性に影響を与えることある。また、貼付剤が袋中に包装された状態では、ブリードにより袋の内部がべたつき、袋からの取り出しが難しかったり、袋から取り出すときに貼付剤がちぎれてしまったりするなど、安定性に不都合を生じる。
ゲル状の粘着層のゲル化剤として、従来用いられている代表的なものは、ゼラチンやカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、アルギン酸ナトリウム、デンプンなどの天然高分子あるいは天然高分子誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどの合成高分子である。しかしながら、これらを用いたゲルは、温度などの外部環境あるいは素材の性状の変動による影響を受けやすいので、夏期や流通上の過程で高温にさらされたときに、ゲルの軟化や成分のブリードに起因して、肌に不快なべたつきを生じるという問題がある。
また貼付剤は、シート基材を内側にして少なくとも2つ折りにして包装されることがあるが、前述したようなブリードによってシート基材どうしが密着してしまい、貼付剤を展開しようとするときに剥がし難しく、無理に展開しようとすると、粘着層とシート基材とが分離して、使用できなくなることがある。そこで特許文献1では、支持体の片面に粘着剤層を設けてなる貼付剤を、両面剥離型処理を施したセパレータの両面を被覆するように折り返して貼着した医療用貼付剤を提案している。しかし、前述したブリード自体を抑制しているとは言えない。
また貼付剤は身体表面に付着した状態で、運動による伸びや縮み等の変形を繰り返すこともあるため、貼付剤用ゲルは保形性を必要とする。一方で、貼付剤用ゲル前駆体(ゲル化する前の原料)は、シート状ゲル製造時の作業性の観点から、流動性が高い方が好ましい。しかし、このゲル前駆体の流動性とゲルの保形性は一般に相反する性能であり、両立し難いものである。すなわち、貼付剤用ゲルの保形性を考えた場合、例えばゲル化剤を多く配合することで機械強度を向上することができる。一方ゲル前駆体の流動性を考えた場合、ゲル化剤を多く用いることはゲル前駆体を増粘させ、作業性を低下させるおそれがある。また有効成分の徐放性や柔軟性の観点からも、ゲル化剤を多く配合することは好ましくない。
例えば特許文献2には、熱架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなることを特徴とするハップ剤用基材が開示されている。
特許文献3には、N−ビニルアセトアミドとアクリル酸及び/又はアクリル酸塩との共重合体と、エポキシ化合物と、湿潤剤とを必須成分とする高分子ゲル状組成物が開示されている。しかしこの組成物には耐熱性に改善の余地がある。
特許文献4には、微細セルロース繊維に関する発明が開示されており、微細セルロースをゲル化剤として使用できる可能性が記載されている。しかし同文献には、ゲルの具体的な製造方法や特性、貼付剤用ゲルへの利用については記載されていない。
実開昭52−1877号公報 特開平2000−95678 特開平5−271517 特開平2008−1728
特許文献2に記載の技術を利用して得られるハップ剤用基剤は、熱架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなるものであるところ、保形性や流動性に優れたハップ剤用基剤が開示されているが、従来の高分子系ゲル化剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いていることから、前述したブリードの課題が改善されているとは言い難い。
また特許文献2記載のゲル状組成物にあっては、ゲル化剤として用いる高分子の配合量が、実質的に全体の5〜10質量%と比較的多量になり、流動性の観点から好ましくない。
したがって本発明の第一の課題は、耐熱安定性が高く、保形性に優れた貼付剤用ゲルを提供することである。
また、本発明の第二の課題は、流動性に優れた貼付剤用ゲルの調製用組成物を提供することである。
本発明者らは、特許文献4に記載の微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)を用いた新規な貼付剤用ゲルについて種々検討した結果、該微細セルロース繊維、すなわち、後述する方法によって得られる特定のセルロースナノファイバーを用いたゲルが、耐熱安定性が高く、かつ保形性に優れるものであることを知見した。具体的には、前記ゲルは高温環境下でも各種成分のブリードが少なく、かつ少ないセルロースナノファイバー配合量で変形に対して高い形状安定性を有していることを知見した。また、前記セルロースナノファイバーを用いたゲル前駆体は流動性に優れていることも知見した。具体的には、前記ゲル前駆体をある大きさの膜状に展延したときに均一に膜が形成できる粘度特性を有していることを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、セルロースナノファイバーと、グリセリン又はその誘導体と、機能化剤とを含む貼付剤用ゲルを提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記の貼付剤用ゲルの調製に用いられる好適な組成物として、セルロースナノファイバーと、グリセリン又はその誘導体と、分散媒とを含む貼付剤用ゲルの調製用組成物を提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記の貼付剤用ゲルの好適な製造方法として、セルロースナノファイバーと、グリセリン又はその誘導体と、機能化剤とを、分散媒中で混合して貼付剤用ゲルの調製用組成物を得、次いで該組成物から分散媒の少なくとも一部を除去する工程を有する貼付剤用ゲルの製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
更に本発明は、前記の貼付剤用ゲルの別の好適な製造方法として、セルロースナノファイバーと、グリセリン又はその誘導体とを、分散媒中で混合して組成物を得、該組成物から分散媒の少なくとも一部を除去してゲルを得、次いで該ゲルに機能化剤を配合する工程を有する貼付剤用ゲルの製造方法を提供するものである。
本発明の貼付剤用ゲルは、耐熱安定性が高く、保形性に優れたものであり、腰痛、肩こり、打ち身、捻挫等の治療や足の疲れを癒す等の用途に、テープ剤や湿布剤、ハップ剤等として用いられる貼付剤用の材料として有用である。また、本発明の貼付剤用ゲルの調製用組成物は、流動性に優れており、前記貼付剤用ゲルの材料として有用である。また、本発明の貼付剤用ゲルの製造方法によれば、本発明の貼付剤用ゲルを安定的に提供することができる。
本発明の貼付剤用ゲルは、(1)セルロースナノファイバーと、(2)グリセリン又はその誘導体と、(3)機能化剤を含んでいる。本発明においては、貼付剤用ゲルにこれら3成分が含有されていれば良く、その含有形態は特に制限されず、貼付剤用ゲルが所定の性質を有し得る範囲で適宜の含有形態を選択することができる。また本発明の貼付剤用ゲルは、必要に応じ付加的に液状媒体を含んでいてもよい。以下に前記の3成分について詳細に説明する。
本発明で用いるセルロースナノファイバー(以下、単に「ナノファイバー」ともいう。)は、好ましくは平均繊維径が200nm以下であり、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは10〜1nmである。平均繊維径は下記測定方法により測定される。
<平均繊維径の測定方法>
固形分濃度で0.0001質量%のセルロースナノファイバーに水を加えて分散液を調製する。該分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料とする。原子間力顕微鏡(NanoNaVi IIe, SPA400,エスアイアイナノテクノロジー(株)製、プローブは 同社製 SI−DF40Alを使用)を用いて、該観察試料中のセルロースナノファイバーの繊維高さを測定する。セルロースナノファイバーが確認できる顕微鏡画像において、セルロースナノファイバーを5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。一般に高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は36×36の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、前記原子間力顕微鏡画像で分析できる高さを繊維の径と見なすことができる。
本発明に係るセルロースナノファイバーは、平均アスペクト比(繊維長/繊維径)が、好ましくは10〜1000、更に好ましくは10〜500、特に好ましくは100〜350である。平均アスペクト比が斯かる範囲にあるセルロースナノファイバーを本発明の貼付剤用ゲルの材料として用いることで、後述する方法によって得られる該セルロースナノファイバーとグリセリン又はその誘導体と機能化剤を含む貼付剤用ゲルにおいて、少ない該セルロースナノファイバーの含有率でも高い耐熱安定性と保形性が発現する。平均アスペクト比は下記測定方法により測定される。
<平均アスペクト比の測定方法>
平均アスペクト比は、セルロースナノファイバーに水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の質量濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。分散液のセルロースナノファイバーの質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロースナノファイバーのアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。下記式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロースナノファイバーの濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。なお、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
Figure 0005843313
前記セルロースナノファイバーは、本発明の貼付剤用ゲルの構成成分である。本発明の貼付剤用ゲルは、ナノファイバーによる網目状のネットワークが形成する多数の微小な空間に、後述するグリセリン又はその誘導体及び機能化剤を含む液状媒体が保持され、斯かる構造に起因して耐熱安定性及び保形性の高い貼付剤用ゲルとなると考えられる。本発明の貼付剤用ゲル中の前記セルロースナノファイバー含有量は、所定の性質を有し得る範囲で任意に設定することができるが、耐熱安定性及び保形性という性質に加え、柔軟性や機能化剤の徐放性などの貼付剤用として要求される各性質を考慮すると、好ましくは0.1〜90質量%、更に好ましくは2〜50質量%、一層好ましくは2〜20質量%である。特に、以下に説明するセルロースナノファイバー(平均繊維径及びカルボキシル基含有量が特定範囲にあるセルロースナノファイバー)を用いることで、0.1質量%という極めて少量のセルロースナノファイバー含有量であっても、高弾性、高耐熱性の貼付剤用ゲルが得られる。なお、貼付剤用ゲルの透明性は、主として液状媒体の透明性に由来するものであり、セルロースナノファイバーは、透明性の高い液状媒体を用いた場合に、その液状媒体の高い透明性を損なわずに、高弾性、高耐熱性を実現する。斯かる観点から、貼付剤用ゲルの透過率は、70〜100%、特に80〜100%、とりわけ90〜100%であることが好ましい。透過率は紫外可視分光硬度計(例えば、紫外可視分光硬度計U−3310、島津製作所(株)製)を用いて、波長660nmでの透過率で測定することで評価できる。なお、透過率が低い液状媒体を用いた場合、貼付剤用ゲルの透過率は斯かる範囲外になることもある。
本発明で用いるセルロースナノファイバーは、例えば次の方法により製造することができる。すなわち、本発明で用いるセルロースナノファイバーは、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、及び該反応物繊維を微細化処理する微細化工程を含む製造方法により得ることができる。以下に各工程について詳細に説明する。
前記酸化反応工程では、先ず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていても良い。
次に、水中においてN−オキシル化合物を酸化触媒として天然セルロース繊維を酸化処理して反応物繊維を得る。セルロースの酸化触媒として使用可能なN−オキシル化合物としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO等を用いることができる。これらN−オキシル化合物の添加は触媒量で十分であり、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して0.1〜10質量%となる範囲である。
前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤(例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等)と、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)とを併用する。酸化剤としては、特に、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜100質量%となる範囲である。また、共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜30質量%となる範囲である。
また、前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化反応を効率良く進行させる観点から、反応液(前記スラリー)のpHは9〜12の範囲で維持されることが望ましい。また、酸化処理の温度(前記スラリーの温度)は、1〜50℃において任意であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。また、反応時間は1〜240分間が望ましい。
前記酸化反応工程後、前記微細化工程前に精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、前記スラリー中に含まれる反応物繊維及び水以外の不純物を除去する。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散していないため、精製工程では、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法を行うことができ、その際に用いる精製装置は特に制限されない。こうして得られる精製処理された酸化セルロース繊維(若しくはセルロースナノファイバー中間体と呼ぶ)は、通常、適量の水を含浸させた状態で次工程(微細化工程)に送られるが、必要に応じ、乾燥処理した繊維状や粉末状としても良い。
前記微細化工程では、前記精製工程を経た酸化セルロース繊維を水等の溶媒中に分散させ微細化処理を施す。この微細化工程を経ることにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にあるセルロースナノファイバーが得られる。
前記微細化処理において、分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)を使用しても良く、これらの混合物も好適に使用できる。また、微細化処理で使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、二軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における酸化セルロース繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。該固形分濃度が50質量%を超えると、分散に極めて高いエネルギーを必要とするため好ましくない。
前記微細化工程後に得られるセルロースナノファイバーの形態としては、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)、あるいは乾燥処理した粉末状(ただし、セルロースナノファイバーが凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることもできる。なお、懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用しても良く、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用しても良い。
このような天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、好ましくは平均繊維径が200nm以下にまで微細化された高結晶性セルロース繊維を得ることができる。この高結晶性セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いるセルロースナノファイバーが、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。すなわち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造を構築しており、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、前記酸化処理によるアルデヒド基あるいはカルボキシル基の導入によって弱め、更に前記微細化処理を経ることで、セルロースナノファイバーが得られる。そして、前記酸化処理の条件を調整することにより、前記カルボキシル基含有量を所定範囲内にて増減させ、極性を変化させたり、該カルボキシル基の静電反発や前記微細化処理により、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
セルロース繊維の微細化や本発明の貼付剤用ゲルの物性の観点から、セルロースナノファイバーは、カルボキシル基含有量(該セルロースナノファイバーを構成するセルロースのカルボキシル基含有量)が好ましくは0.1〜3mmol/g、更に好ましくは0.4〜1.8mmol/g、一層好ましくは0.6〜1.5mmol/gである。本発明の貼付剤用ゲルは、カルボキシル基含有量が斯かる範囲にあるセルロースナノファイバーを原料として製造され、その結果として、該セルロースナノファイバーを含んで構成されている。この範囲のカルボキシル基含有量を有するセルロースナノファイバーは、例えば上述した製造方法によって好適に得ることができる。またカルボキシル基含有量は下記測定方法により測定される。なお、本発明の貼付剤用ゲルには、カルボキシル基含有量が斯かる範囲外であるセルロース繊維が、意図せずに不純物として含まれることもあり得る。
前記カルボキシル基含有量は、平均繊維径が好ましくは200nm以下という微小な繊維径のセルロースナノファイバーを安定的に得る上で重要な要素である。すなわち、天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーが先ず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、本発明で用いる微細セルロース繊維は、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その一部を酸化し、カルボキシル基に変換することによって得られる。したがって、セルロースに存在するカルボキシル基の量の総和(カルボキシル基含有量)が多い方が、より微小な繊維径として安定に存在することができ、また水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより増大する。前記カルボキシル基含有量を好ましくは0.1mmol/g以上とすることで、繊維径200nm以下という微小な繊維径をもつナノファイバーを容易に得ることができ、また、水等の極性溶媒中における分散安定性を容易に高めることができる。前記カルボキシル基含有量は下記測定方法により測定される。
<カルボキシル基含有量の測定方法>
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、セルロース繊維のカルボキシル基含有量を算出する。
カルボキシル基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
なお、本発明の貼付剤用ゲルは、前記の酸化処理を含む製造方法で得られたセルロースナノファイバーを原料として用いれば、カルボキシル基含有量が前記範囲外であっても構わない。例えば後述するグリセリン又はその誘導体と機能化剤を含む液状媒体との親和性を向上させるために、カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロースナノファイバーに対して化学変性処理を行い、カルボキシル基を他の変性基へと誘導体化しても構わない。この場合、この変性セルロースナノファイバーのカルボキシル基含有量は前記範囲外になる可能性もあるが、この変性セルロースナノファイバーも本発明においては好適に用いられる。
セルロースナノファイバーのカルボキシル基に対する変性処理の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基などのアルキル基とのカルボン酸エステル化又はカルボン酸アミド化などが挙げられる。また、セルロースナノファイバー表面における水酸基に対して変性処理を行ってセルロースナノファイバー誘導体を得てもよい。セルロースナノファイバーの水酸基に対する変性処理の例としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等とのエステル化又はエーテル化等が挙げられる。このような各種の変性処理によって得られたセルロースナノファイバー誘導体は、未変性のセルロースナノファイバーに対して親疎水性が変化することに起因して、貼付剤用ゲルに用いる液状媒体やグリセリン又はその誘導体での分散性が向上する場合があり、必要に応じて任意に選択することができる。
本発明の貼付剤用ゲルは、セルロースナノファイバーに加えて、グリセリン又はその誘導体(以下、これらを総称して「グリセリン類」ともいう。)を構成成分とする。グリセリン類は貼付剤においては主に保水剤として用いられる。前記セルロースナノファイバーをゲル化剤として用いることで、グリセリン類と機能化剤を含む液状媒体を、耐熱安定性、保形性の高い貼付剤用ゲルにすることができる。
セルロースナノファイバーが、グリセリン類と機能化剤を含む液状媒体をゲル化することで、本発明の貼付剤用ゲルが得られる。前記液状媒体には、本発明における必須成分であるグリセリン類と機能化剤の他に、貼付剤用ゲルの機能を得るために必要な溶媒が含まれてよい。液状溶媒としては、例えば水や、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びブタノールなどの炭素数1〜8の低級脂肪族モノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、イソブチレングリコール及びソルビトール等の多価脂肪族アルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の多価脂肪族アルコールの脱水重縮合物などのアルコール系溶媒が挙げられる。これらの液状媒体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの液状媒体は、後述する本発明の貼付剤用ゲルの製造方法において用いられる分散媒と同種のものであるか、又は異種のものである。本発明の貼付剤ゲル中に含まれる液状媒体の割合は、貼付剤用ゲルの強度や機能化剤の徐放性の点から0〜50質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることが更に好ましい。液状媒体の含有量は、後述する貼付剤用ゲルの製造方法において各成分の仕込量から算出する方法の他、例えば熱重量分析によって貼付剤用ゲル中の構成成分の熱分解温度の違いを利用する方法や、各種溶媒への溶解性や揮発性の違いを利用して重量変化から算出する方法等
から求めることができる。
本発明で用いられるグリセリン類は、無変性のグリセリンそのもの及びグリセリン誘導体を包含する。グリセリン誘導体としては、例えばモノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリン、トリカプリル酸グリセリル及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステルや、ポリグリセリンなどが挙げられる。グリセリン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましいグリセリン類は、無変性のグリセリンそのものである。用いるグリセリン類中にはゲルの性質に悪影響が出ない範囲内であれば、水や不純物が含まれていてもよい。
本発明の貼付剤用ゲルにおけるグリセリン類の含有量は、所定の性質を有し得る範囲で任意に設定することができるが、耐熱安定性及び保形性という性質に加え、柔軟性や機能化剤の徐放性などの貼付剤用として要求される各性質を考慮すると、好ましくは1〜99質量%、更に好ましくは10〜90質量%、一層好ましくは20〜90質量%である。グリセリン類の含有量は、後述する貼付剤用ゲルの製造方法において、各成分の仕込量から算出することができる。その他にも、例えば熱重量分析によってゲル中の構成成分の熱分解温度の違いを利用する算出法や、各種溶媒への溶解性や蒸気圧の違いを利用して重量変化から算出することもできる。
本発明の貼付剤用ゲルは、前述したセルロースナノファイバー及びグリセリン類に加えて、機能化剤を含むことを特徴とする。前記機能化剤とは、貼付剤の機能を発現するための有効成分を意味し、本発明の貼付剤用ゲルを好適に製造できる範囲においては、これを特に限定されず、従来公知の薬剤あるいは新たに合成、半合成、抽出した薬剤の中から適宜選択して用いることができる。かかる有効成分は人体に対して薬効を有するものである。そのような薬効としては、鎮痛消炎効果、清涼効果、抗炎症効果、抗ヒスタミン効果、中枢神経作用効果、ホルモン効果、降圧効果、強心効果、抗不整脈効果、冠血管拡張効果、局所麻酔効果、筋弛緩効果、抗真菌効果、抗悪性腫瘍効果、排尿障害改善効果、抗てんかん効果、抗パーキンソン病効果、禁煙補助効果、美白効果、シワ改善効果、セラミド産生促進効果、血行促進効果、抗酸化効果、細胞賦活効果が挙げられる。
前記機能化剤としてはサリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、フルルビプロフェン、ケトンプロフェンなどの鎮痛消炎剤、メントール、キシリトールなどの清涼剤、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン等のステロイド系抗炎症剤、インドメタシン、ジクロフェナク等の非ステロイド系抗炎症剤及びそのエステル誘導体、ジフェンヒドラミン等の抗ヒスタミン剤、塩酸イソプレナリン等の中枢神経作用薬、エストラジオール等のホルモン剤、フロセミド等の降圧剤、ジギトキシン等の強心剤、リン酸ジソピラミド等の抗不整脈用剤、塩酸トラゾリン等の冠血管拡張剤、リドカイン等の局所麻酔剤、アセトアミノフェン等の鎮痛剤、塩化スキサメトニウム等の筋弛緩剤、クロトリマゾール等の抗真菌剤、フルオロウラシル等の抗悪性腫瘍剤、塩酸タムスロシン等の排尿障害改善剤、ジアゼパム等の抗てんかん剤、メシル酸ブロモクリプチン等の抗パーキンソン病剤、ニコチン等の禁煙補助剤、アスコルビン酸類、ハイドロキノン類、コウジ酸類、トラネキサム酸類、エラグ酸類、ルシノール類、リノール酸類、アルコキシサリチル酸類、カミツレ抽出物、グルタチオン、トコトリエノール、フェルラ酸、ラズベリーケトン、アデノシン1リン酸、塩化レボカルニチン、ポリフェノール類、アセロラ抽出液、アーモンド抽出物、アルテア抽出物、アロエ抽出物、エイジツ(ノイバラ)抽出物、オウゴン(コガネバナ)抽出物、火棘抽出液、カッコン(クズ)抽出物、キウイ抽出物、クチナシ(サンシン)抽出物、クララ(クジン)抽出物、クロレア抽出物、コメヌカ抽出物、シャクヤク抽出物、ジユ(ワレモコウ)抽出物、ソウハクヒ(クワ)抽出物、大豆抽出物、チャ抽出物、ベニバナ(コウカ)抽出物、メリッサ(コウスイハッカ)抽出物、チョウジ抽出物、ヨクイニン(ハトムギ)抽出物、胎盤抽出物等の美白剤、グアニジン類及びその塩、ショウキョウ抽出物、マロニエ抽出物、レモン抽出物、酵母抽出物等のシワ改善剤、ユーカリエキス等のセラミド産生促進剤、ビタミンEのエステル化物、ニコチン酸エステル、オロチン酸エステルが挙げられ、この他にニコチン酸アミド、ニコチン酸メチル等の血行促進剤、アスタキサンチン、アルファリポ酸、エルゴチオネイン、カロテノイド、カロテン、カテキン、コエンザイムQ10、フラーレン、プラチナナノコロイド、イノバラエキス、ゲンノショウコエキス、スイカズラエキス、ユキノシタエキス、油溶性甘草エキス、ヨモギ葉エキス等の抗酸化剤、レチノール、シアノコバラミン、リボフラビン、ナイアシンアミド、ビルベリーエキス、大豆イソフラボン、ツボクサ抽出液、ヒオウギエキス、ブナの芽抽出液、イブキジャコウソウ抽出液等の細胞賦活剤、更にはビタミン類、プロスタグランジン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の貼付剤用ゲルにおける前記機能化剤の含有量は、所定の性質を有し得る範囲で任意に設定することができるが、好ましくは0.01〜50質量%、更に好ましくは0.05〜20質量%、一層好ましくは0.1〜10質量%の範囲である。前記機能化剤の含有量は、後述する貼付剤用ゲルの製造方法において、各成分の仕込量から算出することもできる。その他にも、例えば熱重量分析によってゲル中の構成成分の熱分解温度の違いを利用する算出法や、各種溶媒への溶解性や蒸気圧の違いを利用して重量変化から算出することもできる。
また、本発明の貼付剤用ゲル中には、セルロースナノファイバー、グリセリン類、機能化剤に加えて、更に必要に応じて、粘着剤としてポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴムなどのセルロースナノファイバー以外の高分子材料や、カオリン、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム等の白色無機顔料、架橋剤等のゲル化補助剤、径皮吸収促進剤、酸化防止剤、溶解剤、着色剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤、紫外線吸収剤、充填剤、冷/温感付与剤、pH調整剤、リモネン等の香料、従来の貼付剤用ゲルに用いられているタック剤などを含んでいてもよい。
以上の各成分を含有する本発明の貼付剤用ゲルは、先に述べたとおり保形性の高いものであり、高弾性、高耐熱性で機械強度が強く、引張、曲げ、捻りに対して柔軟で、変形後の復元性が高い。つまり、ゲルの状態を長期に亘って維持し得るものである。
本発明の貼付剤用ゲルは、広範な温度領域で一定のゲル物性を維持し得る高い耐熱性を有していることが好ましく、斯かる観点から、弾性率の温度依存性が小さいことが好ましい。より具体的には、温度25〜110℃の範囲における、弾性率の変化率(以下、弾性率の温度依存性変化率ともいう)が0.5〜5、特に0.7〜4、とりわけ0.9〜1.5であることが好ましい。弾性率の温度依存性変化率とは、後述する方法によって測定される貼付剤用ゲルの動的粘弾性における貯蔵弾性率の変化を表すものであり、その値が1に近いほど温度によるゲル物性の変化が少ない、すなわち耐熱性が高いことを意味する。
本発明の貼付剤用ゲルは、ゲルの状態を長期に亘って維持し得る高い形状安定性を有していることが好ましく、斯かる観点から、弾性率の周波数依存性が小さいことが好ましい。より具体的には、本発明の貼付剤用ゲルは、周波数0.01〜10Hzの範囲における、弾性率の変化率(以下、弾性率の周波数依存性変化率ともいう)が0.1〜20、特に0.5〜10、とりわけ0.8〜5であることが好ましい。弾性率の周波数依存性変化率とは、後述する方法によって測定されるゲル状体の動的粘弾性における貯蔵弾性率の変化を表すものであり、その値が1に近いほど周波数によるゲル物性の変化が少ないことを意味する。弾性率の周波数依存性変化率が斯かる範囲にある本発明の貼付剤用ゲルは、外力が加えられてもゾル化し難く、高弾性なゲルの状態を長期に亘って維持し得る。
本発明の貼付剤用ゲルは、ゲルの状態を有していることが好ましく、斯かる観点から、損失正接(tanδ)が小さいことが好ましい。損失正接とは、動的粘弾性における測定正弦歪み波と検出正弦応力波の間の位相差δのtan値で、物理的な意味合いは粘性応答/弾性応答比である。損失正接の値は損失弾性率/貯蔵弾性率で定義され、その値(tanδ値)が1より大きければ粘性応答が支配的で、小さければ弾性応答支配ということになる。ゲルについては、tanδ値が小さいほど固体的なゲルであることを意味する。より具体的には、本発明のゲル状体は、損失正接が0.6未満、特に0.1未満、とりわけ0.07未満であることが好ましい。一般に、ゲルは損失正接が1未満であり、高分子(本発明においてはセルロースナノファイバー)によって溶媒を不動化している状態と考えられているが、外力の負荷(大きな歪みや周波数領域)によって損失正接が1以上、すなわち流動化したゾル状態となるものもある。損失正接が斯かる範囲にある本発明の貼付剤用ゲルは、高弾性、高耐熱性で機械強度が強く、引張、曲げ、捻りに対して柔軟で、変形後の復元性が高い。
同様の観点から、本発明の貼付剤用ゲルは損失正接の温度変化率が小さいことが好ましい。より具体的には、25℃における損失正接値(E)及び110℃における損失正接値(F)から定義される、F/Eが0.1〜5、特に0.4〜2、とりわけ0.5〜1.5であることが好ましい。損失正接値E及びFは、下記測定方法(ii)で測定される。損失
正接の変化率が斯かる範囲にある本発明の貼付剤用ゲルは、温度変化に依らず高弾性のゲル状態を維持し得る。
前記の貯蔵弾性率、損失弾性率、及び損失正接は、例えば回転型レオメーター(装置:MCR300、PHYSICA社製)を用いて次のように測定される。測定セルは直径25mmのパラレルプレートでサンプル厚みは0.5〜1mmとする。ゲルサンプルの測定にあたっては、測定セル表面とサンプル界面での滑りの抑制と熱膨張によるサンプル厚みの変化に対応するため、セル表面を介してサンプルに1N程度の力が加わる測定制御モードを選択して用いる。本発明の貼付剤用ゲルの特徴が揮発成分の蒸発により物性が変化し難いことより、レオロジー測定は温度制御した乾燥窒素ガス(液体窒素を気化させたもの)を測定セル部に流しながら行う。また、サンプルからの揮発成分の蒸発程度を見積もれるよう、測定は、予め25℃に制御した測定セルにサンプルをマウントし、最初に弾性率の周波数依存性変化率(周波数依存性)を下記測定方法(i)に従って測定し、続いて弾性率の温度依存性変化率(温度依存性)を下記測定方法(ii)に従って測定する。損失正接は、下記測定方法(ii)における25℃での測定値を使用する。
測定方法(i):弾性率の周波数依存性変化率(周波数依存性)は、温度25℃、線形歪みにおいて、0.01Hzから100Hzへ変動させたときに測定される0.01Hzにおける貯蔵弾性率(C)及び10Hzにおける貯蔵弾性率(D)から、D/Cで定義する。
測定方法(ii):弾性率の温度依存性変化率(温度依存性)は、線形歪み、周波数2Hzにおいて、2.5℃/分で25℃から110℃へ昇温したときに測定される25℃における貯蔵弾性率(A)及び110℃における貯蔵弾性率(B)から、B/Aで定義する。なお、昇温過程での弾性率の低下が大きく、同条件で110℃まで測定できなかったゲル状体の弾性率の変化率は0とする。
本発明の貼付剤用ゲルは、高弾性のゲルであることが好ましく、斯かる観点から貯蔵弾性率の値が大きいことが好ましい。より具体的には、(ii)で測定される25℃での貯蔵弾性率が102Pa以上、特に103Pa以上、とりわけ104Pa以上が好ましい。貯蔵弾性率が斯かる範囲にある本発明の貼付剤用ゲルは、高強度なゲルとして用いることができる。
また、本発明の貼付剤用ゲルは、内包する液状媒体が加熱によって溶出し難い、高い耐熱性を有していることが好ましく、より具体的には、下記測定方法により測定される液状媒体の溶出量が20質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。
<液状媒体の溶出量の測定方法>
測定対象のゲルを槽内温度105℃に設定された恒温槽内に30分間放置することで加熱する。この操作は、例えば、ガラスシャーレに約2gのゲルを収容し、このガラスシャーレごと恒温槽内に入れて30分間放置することで実施できる。30分後、ガラスシャーレを恒温槽から取り出し、ゲルの温度が室温になるまで室温下で放置する。その後、ゲルの表面の溶出物(液状媒体等)を除去してから、該ゲルの質量を測定し、その測定値(質量B)を記録する。溶出物の除去は、例えば、ゲルを、紙(キムワイプ、日本製紙クレシア)で挟むことで、表面の溶出物を吸収させることによって実施することができる。そして、前記質量Bと、予め測定したゲルの加熱前の質量(質量A、前記具体例では約2g)とから、次式により液状媒体の溶出量を算出する。
液状媒体の溶出量(%)={(A―B)/A}×100
また、本発明の貼付剤用ゲルは、高弾性で高い耐熱性を有していることに加えて、柔軟性を有していることが好ましく、斯かる観点から、ASTM D 2240の規格に準拠する方法で測定される硬度が20度以下、特に0.1〜15度、とりわけ1〜10度であることが好ましい。硬度は一般に用いられるゴム、プラスチック用硬度計(例えば、ゴム硬度計GS−709 Aタイプ、株式会社テクロック製)を用いて測定される。
本発明の貼付剤用ゲルは、例えば次のようにして製造することができる。本実施態様の製造方法は、(i)セルロースナノファイバーとグリセリン類とを分散媒中で混合して貼付剤用ゲルの調製用組成物を得る工程、及び(ii)前記組成物から該分散媒の少なくとも一部を除去して貼付剤用ゲルを得る工程を有する。
(i)の工程において、本発明の貼付剤用ゲルの調製用組成物にはセルロースナノファイバーとグリセリン類、そしてこれらを混合するための分散媒(液状媒体)が含まれている。本発明の貼付剤用ゲルの構成成分である機能化剤は、この組成物に配合することもできるし、後述するように(ii)の工程でゲルを形成した後に後から配合することもできる。
分散媒としては、通常水が好ましく用いられるが、貼付剤用ゲルの製造やゲルの物性に悪影響を与えない限りにおいては、例えば非水溶性有機溶媒、水溶性有機溶媒、若しくはこれらと水との混合媒体などを挙げることができる。どのような分散媒を用いるかは、セルロースナノファイバー及びグリセリン類及び機能化剤の溶解性や分散性、あるいは該分散媒の除去のための作業性に応じて適宜決定すればよいが、後述するように、好適には分散媒を乾燥することでゲルが得られるため、ゲルの構成成分であるグリセリン類よりも蒸気圧の大きい、すなわち乾燥過程において該分散媒のみが揮発し、グリセリン類が残存するような関係にあるものを用いることが好ましい。
前記分散媒に用いられる非水溶性有機媒体としては、例えばトルエン、クロロホルム、酢酸エチル、ヘキサンなどを用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記分散媒に用いられる水溶性有機媒体としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記の組成物中に含まれる分散媒の割合は、機材に塗布するための流動性や、貼付剤用ゲルにしたときの保形成、柔軟性の点から50〜99質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることが更に好ましい。
(i)の工程においては、例えばセルロースナノファイバーと、グリセリン類と、分散
媒の三者を混合して前記組成物を調製することができる。ここで用いられる分散媒は、上述したとおり、実質的にセルロースナノファイバー及びグリセリン類を分散又は溶解できればよい。セルロースナノファイバーの分散は、前述したように表面のカルボキシル基を主原因としているため、特に水又は親水性有機溶媒で好ましく達成される。したがって、前記分散媒は水又は親水性有機溶媒であることが好ましい。
前記組成物は、例えば、予め分散媒に分散したセルロースナノファイバーと、分散媒に溶解したグリセリン類とを混合することで製造することができる。また、乾燥されたセルロースナノファイバーや溶解していないグリセリン類単体を分散媒に混合することで製造することもできる。
どのような分散媒を用いる場合であっても、前記組成物中でのセルロースナノファイバーの濃度は0.1〜30質量%、特に0.2〜10質量%、とりわけ0.5〜10質量%とすることが、該組成物の流動性や、セルロースナノファイバーとグリセリン類との均一分散性の観点から好ましい。また、グリセリン類の濃度は0.1〜90質量%、特に0.2〜80質量%であることが好ましい。
前記セルロースナノファイバーと、グリセリン類と、分散媒とを混合することで、目的とする組成物が得られる。このようにして得られた組成物は流動性に優れる。具体的には、該組成物中に含まれるセルロースナノファイバーの割合が上述の範囲内であることを条件として、該組成物の粘度は23℃、回転数50rpmにおいて好ましくは10〜1000mPa・s、更に好ましくは20〜500mPa・s、一層好ましくは20〜100mPa・sである。組成物の粘度をこの範囲内に設定することで、該組成物は塗布性に優れ、均一なゲルを形成しやすくなる。また流動性が適切なものになり、例えば該組成物をある所望の形の膜状に展延してからゲル化させるまでの時間に、該組成物が塗れ広がることが効果的に防止され、所望の形のゲルを容易に得ることができる。組成物中に含まれるゲル化剤であるセルロースナノファイバーの割合が低くても、該組成物の上述の粘度に増粘できることは、極めて意外な知見であった。該組成物の粘度は、TOKIMEC製E型粘度計VISCONICを用い、23℃、回転数50rpmで測定される。
前記組成物は、上述の粘度を有し、流動性が適切なものであることに加え、可視光の波長領域において透明であることによっても特徴付けられる。前記組成物が透明であることによって、例えば該組成物から得られるゲルを含む貼付剤を患部に付着させた際、貼付剤を付着させたまま患部の変化が観察できるなどの有利な効果が奏される。また前記組成物が透明であることは、セルロースナノファイバーが十分に微細化され、粗大物が含まれていないことを意味する。このことより、該組成物から得られる貼付剤用ゲルは肌との密着性や肌触りが向上するという有利な効果が奏される。
また、この組成物中には、本発明の貼付剤用ゲルの構成成分の一つである機能化剤を配合することができる。またセルロースナノファイバー、グリセリン類及び分散媒に加えて、更に必要に応じて、粘着剤としてのポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴムなどのセルロースナノファイバー以外の高分子材料や、カオリン、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム等の白色無機顔料、架橋剤等のゲル化補助剤、径皮吸収促進剤、酸化防止剤、溶解剤、着色剤、界面活性剤、安定剤、防腐剤、紫外線吸収剤、充填剤、冷/温感付与剤、pH調整剤、リモネン等の香料などが含まれていてもよい。前記組成物中にこれらの成分が含まれている場合であっても、該組成物の粘度は上述の範囲内であることが好ましい。
このようにして得られた組成物に対して、(ii)工程において分散媒の除去を行い、本発明の貼付剤用ゲルを得る。分散媒の除去の方法は特に制限されないが、主に乾燥によって行う。分散媒の乾燥は自然乾燥でもよく、あるいは加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥など公知の乾燥方法が用いられる。これらの乾燥方法を用いる場合には、前記組成物をキャスト(流延)して乾燥させることが乾燥効率の点から好ましい。いずれの乾燥方法を用いても、耐熱安定性と保形性の高いゲルが得られる。この理由は、セルロースナノファイバーが有するカルボキシル基の静電反発力によって、乾燥過程でもセルロースナノファイバーの凝集が起こらずに均一にグリセリン類を含む液状媒体中に配置されることで、セルロースナノファイバーの網目状のネットワークが形成する多数の微小な空間にグリセリン類を含む液状媒体が保持された構造を形成するためと考えられる。また前述した方法で得られるセルロースナノファイバーは高い結晶性を持つこと、液状媒体中では前述した静電反発力が弱まりナノファイバー間の水素結合(いわゆる架橋点)が固定化されることも、強い応力や熱負荷に対して構造変化しない原因と考えられる。
分散媒はその全体を除去してもよく、あるいは一部を除去してもよい。分散媒の全体を除去する場合、得られるゲルはテープ剤に好適に用いられる。分散媒の一部を除去する場合、得られるゲルはハップ剤や湿布剤に好適に用いられる。分散媒の一部を除去する場合、得られる貼付剤用ゲル中には該分散媒が残存する。残存した分散媒は、上述した液状媒体のことである。(ii)工程において分散媒を除去する程度は、目的とする貼付剤用ゲル中に含まれる液状媒体の割合に応じて適切に設定すればよい。
(i)の工程において、前記組成物中に機能化剤を加えていれば、(ii)の工程で得られたゲルは、セルロースナノファイバーとグリセリン類と機能化剤を含むので、本発明の貼付剤用ゲルが得られる。一方、(i)の工程において、前記組成物に機能化剤を加えていない場合、(ii)の工程で得られたゲルに対し、後から機能化剤を配合することで、本発明の貼付剤用ゲルを得ることができる。後から機能化剤を配合する方法としては、例えば得られたゲルを機能化剤溶液に含浸したり、あるいはゲル中に注射器のような機器で機能化剤を注入する方法が挙げられる。
貼付剤用ゲルの形態は特に制限されない。通常、貼付剤はシート状であるため、例えば不織布やフィルム等のシート基材上にキャスト(流延)して乾燥させることでシート状の貼付剤用ゲルを得ることができる。また、噴霧乾燥を用いることで粒状のゲルを得ることもでき、これをそのまま皮膚等に付着することもできるし、シート状にする前の原料として用いることもできる。噴霧乾燥においては、前記のゲル調製用組成物をノズルから噴出させて微細な液滴となし、次いで対流空気中で加熱乾燥すればよい。また、前記のゲル調製用組成物を任意の形状の型に流し込んで乾燥することで、立体形状の貼付剤用ゲルを製造することもできる。
乾燥の程度は、貼付剤用ゲルが所定の物性を得る範囲において任意に選択できる。すなわち、分散媒の乾燥において、完全に分散媒を除去してもよいし、任意で分散媒が貼付剤用ゲルに残った状態で乾燥を止めても構わない。
分散媒の除去は、乾燥以外にも、透析法(浸透圧差を利用して分散媒のみを除去)や沈殿法(前記組成物を貧溶媒に注いでゲル化)、モレキュラーシーブスのような脱水剤を用いることもできる。
また本発明の貼付剤用ゲルは、前述した(i)及び(ii)の工程を含む製造方法に限られるものではなく、各種ゲル化方法により製造することができる。
例えば次のような方法によっても、本発明の貼付剤用ゲルを製造することができる。セルロースナノファイバーとグリセリン類と分散媒と機能化剤を含む貼付剤用ゲルの調製用組成物をシート基材上に塗布する。その後、ゲル化促進剤を重層塗布することにより、塗布された該組成物の膜が安定なゲルとなり、本発明の貼付剤用ゲルが製造される。この場合、分散媒としては、水又は水とエタノール等の一級アルコールの混合溶媒が好ましく用いられる。またゲル化促進剤としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、金、アルミニウム等のハロゲン酸塩(塩化物等)、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の溶液、ポリ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔(メタ)アクリルアミドアルキルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔アルケニルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルオキシアルキルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルベンジルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔ジアリルアンモニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルピリジニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルイミダゾリニウム四級塩〕、ポリ〔アルキル化四級アンモニウム〕("イオネン")、ポリ〔縮合アンモニウム四級塩〕、ポリ〔(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルベンジルスルホニウム四級塩〕、ポリ〔ジアリルスルホニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルホスホニウム四級塩〕、ポリ〔アクリリックホスホニウム四級塩〕、ポリ〔ビニルベンジルホスホニウム四級塩〕、ポリ〔縮合ホスホニウム四級塩〕、ポリエチレンイミン(塩酸塩)等のホモポリマーや、上記ホモポリマーを構成するモノマーと(メタ)アクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル等のビニルモノマーとのコポリマーなどのカチオン性高分子の溶液が好ましく用いられる。
更に次のような方法でも本発明の貼付剤用ゲルを製造することができる。セルロースナノファイバーとグリセリン類と機能化剤と分散媒を含む前記のゲル調製用組成物を加熱しながら攪拌、混合する。その後、該組成物を所望の形に成形した後、冷却することで安定なゲルとなり、本発明の貼付剤用ゲルが製造される。この場合、加熱の温度は前記組成物が流動性を得られる範囲であればよく、冷却の温度はゲルが所定の耐熱安定性や保形性を得られる範囲であればよい。この際、ゲル化促進剤として、架橋剤やポリマーを併用しても構わない。ゲル化促進剤は好適にゲルが得られる限り、その種類は特に限定されないが、例えばアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸とアクリルアミドのコポリマー、モンモリロナイトなどの板状無機粒子、ポリビニルアルコール、ジェランガム、アガロース、キサンタンガム、ペクチン、カラーギナンなどが用いられる。
その他にも、セルロースナノファイバー分散液を、グリセリン類と機能化剤を含む液状媒体に滴下するドリッピング法や、予め調製したセルロースナノファイバーが網目状に配置されたエアロゲルに、グリセリン類と機能化剤を含む液状媒体を含浸することでも製造することができる。
以上のようにして得られる本発明の貼付剤用ゲルは、耐熱安定性が高く、かつ保形性に優れている。高い耐熱安定性や保形性から、腰痛、肩こり、打ち身、捻挫、炎症等の治療や足の疲れを癒す等の用途にテープ剤や湿布剤、ハップ剤等として用いられる貼付剤用の材料として有用である。
高い耐熱安定性を有する本発明の貼付剤用ゲルは、該ゲル中に含まれる液状媒体のブリードを抑制する効果が高いものである。ブリードの抑制は、ゲル中のセルロースナノファイバー含有率が高いほど顕著になるが、柔軟性や機能化剤の徐放性などの貼付剤用として要求される各性質を考慮すると、ゲル中でのセルロースナノファイバー含有率は、先に述べた範囲内に設定することが好ましい。セルロースナノファイバー含有率がこの範囲内にあるとき、本発明の貼付剤用ゲルは、下記に記される評価方法において、グリセリン類と機能化剤を含む液状媒体の溶出量が、前述した好ましい数値範囲を満たす。
また本発明の貼付剤用ゲルは、機械特性に加えて、液状の有機溶媒を高濃度で保持できることも特徴とする。例えば、本発明の貼付剤用ゲルに水への親和性の高い機能剤を内包させることで、有機媒体から肌などの高含水表面への機能剤の分配移動を促進し、高い徐放性を有する基材とすることもできる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の範囲は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔酸化セルロース繊維の製造方法〕
原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20〜0℃で天然セルロース繊維の酸化処理を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止した。酸化処理後の天然セルロース繊維をイオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行った。こうして、カルボキシル基含有量1.2mmol/gの酸化セルロース繊維を得た。
〔セルロースナノファイバーの製造方法〕
前記〔酸化セルロース繊維の製造方法〕で得られた酸化セルロース繊維10g(固形分換算)とイオン交換水990gとを、ミキサー(大阪ケミケル(株)製、Vita-mix-Blender ABSOLUTE)にて120分間攪拌した(すなわち微細化処理時間120分間)。こうして、平均繊維径4nm、カルボキシル基含有量1.2mmol/gのセルロースナノファイバーの水懸濁液(固形分濃度1.0質量%)を得た。
〔実施例1〕
前記〔セルロースナノファイバーの製造方法〕で得られたセルロースナノファイバーを用い、グリセリン(和光純薬工業(株)製)を用い、分散媒としてイオン交換水を用い、機能化剤としてサリチル酸メチル(和光純薬工業(株)製)を用い、前述した本発明の貼付剤用ゲルの製造方法に準じた方法で貼付剤用ゲルを製造した。より具体的には、前記セルロースナノファイバーの水懸濁液(固形分濃度1.0質量%)100質量部に対して、グリセリン48質量部、サリチル酸メチル0.9質量部加えて、30分間マグネチックスターラーで攪拌して、貼付剤用ゲルの調製用組成物を得た。この組成物は、可視光の波長領域において透明なものであった。該組成物をポリスチレン製シャーレ(φ80mm)に30g注いで、室温環境下(23℃、50%RH)で2週間静置することで、イオン交換水の一部を揮発させて乾燥処理を行い、厚み約0.8mmの本発明の貼付剤用ゲルを得た。こうして得られた貼付剤用ゲル及び貼付剤用ゲルの調製用組成物を実施例1のサンプルとした。以下の表1に各項目の評価結果を示した。同表中、保形性、含水率、セルロースナノファイバー含有率は以下の基準で評価した。
〔保形性の評価基準〕
指で摘んでもシート形態を維持でき、曲げ変形に対して復元性がある ◎
指で摘んでもシート形態を維持できるが、曲げ変形に対して復元性がない ○
指で摘むとシート形態を維持できない、粘稠性又は流動性のあるゲル △
なお、曲げ変形はシート状ゲルを180°で折り曲げ、切れなかった場合を復元性があると評価した。
<含水率の測定方法及びセルロースナノファイバー含有量の算出方法>
ゲルを、水分計(ハロゲン水分計HR83、メトラー・トレド製)を用いて、105℃で40分間加熱し、その含水率を評価した。また、この含水率から、貼付剤用ゲルにおけるセルロースナノファイバー含有量を算出した。
〔実施例2〕
グリセリンを32質量部加え、サリチル酸メチルを0.6質量部加えた以外は実施例1と同様にして貼付剤用ゲルの調製用組成物を得た。得られた組成物を用い、実施例1と同様にして本発明の貼付剤用ゲルを得た。こうして得られた貼付剤用ゲル及び貼付剤用ゲルの調製用組成物を実施例2のサンプルとした。以下の表1に各項目の評価結果を示した。
〔比較例1〕
カルボキシメチルセルロース(略名:CMC、商品名:セロゲンHE1500F、第一工業製薬(株)製)1gをイオン交換水99gに加えて攪拌し、固形分濃度1質量%のCMC水溶液を得た。セルロースナノファイバー分散液に代えて、該CMC水溶液を用いた以外は実施例2と同様にして貼付剤用ゲル及び貼付剤用ゲルの調製用組成物を得、これを比較例1とした。以下の表1に各項目の評価結果を示した。
Figure 0005843313
表1に記載したように、実施例1〜2で得られたゲル調製用の組成物の粘度はすべて20〜100mPa・sの範囲にあり、貼付剤用ゲルの調製用組成物として好適な流動性を示した。一方、比較例1は実施例2で用いたセルロースナノファイバーと同量のCMCを配合したものであるところ、実施例2と比して極めて高い粘度を示した。
また実施例1〜2で得られた貼付剤用ゲルはすべて、グリセリンを含む液状媒体の溶出量が10%以下であり、極めて高い耐熱安定性を示した。一方、セルロースナノファイバーに代えてCMCを用いた比較例1は、加熱によって固体状のゲルの部分と、グリセリンを含む液状媒体が分離してしまっていた。この理由は、前述したように、高結晶性のセルロースナノファイバーがゲル中で強固な網目状ネットワークを形成し、そのネットワーク中にグリセリンを含む液状媒体が保持されるためであると考えられる。
保形性に関し、実施例1〜2は、セルロースナノファイバー含有率が低いにもかかわらず、指で摘んでもシート形態を維持できる程度以上の高い形状安定性を有していた。特にセルロースナノファイバー含有率が3質量%以上である実施例2では、曲げ変形に対する復元性も高かった。一方、セルロースナノファイバーに代えてCMCを用いた比較例1では、実施例1〜2に比べて保形性が低かった。

Claims (5)

  1. 平均繊維径が200nm以下であり、且つカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロースナノファイバーと、グリセリンと、機能化剤とを含む貼付剤用ゲル。
  2. 請求項1に記載の貼付剤用ゲルの調製用組成物であって、
    平均繊維径が200nm以下であり、且つカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロースナノファイバーと、グリセリンと、分散媒とを含む貼付剤用ゲルの調製用組成物。
  3. 請求項1に記載の貼付剤用ゲルからなる粘着層がシート基材の一面に設けられてなる貼付剤。
  4. 請求項1記載の貼付剤用ゲルの製造方法であって、
    平均繊維径が200nm以下であり、且つカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロースナノファイバーと、グリセリンと、機能化剤とを、分散媒中で混合して貼付剤用ゲルの調製用組成物を得、次いで該組成物から分散媒の少なくとも一部を除去する工程を有する貼付剤用ゲルの製造方法。
  5. 請求項1記載の貼付剤用ゲルの製造方法であって、
    平均繊維径が200nm以下であり、且つカルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gであるセルロースナノファイバーと、グリセリンとを、分散媒中で混合して組成物を得、該組成物から分散媒の少なくとも一部を除去してゲルを得、次いで該ゲルに機能化剤を配合する工程を有する貼付剤用ゲルの製造方法。
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