JP5842537B2 - 高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、水素ステーション等に設置される水素貯蔵容器や蓄圧器など高圧水素貯蔵容器に好適な、高圧水素環境での使用可能な鋼材に関し、特に引張強度780MPa以上の高強度でかつ靱性の優れたものに関する。
地球温暖化防止のため、燃焼によるCOの発生がない水素エネルギーの利用技術が近年盛んに検討されており、燃料電池や水素貯蔵・輸送・供給システムの開発が国家プロジェクトで進められている。その中の大きな技術的課題は、必要十分な量の水素を供給するために、35MPa以上、特に70MPa程度以上の高圧下で水素を安全に貯蔵、供給することとされている。そのためには高圧の水素を貯蔵する容器が必要で、素材として高圧水素雰囲気より鋼中に侵入する水素が少なく、且つ侵入した水素による材質劣化の小さい材料を用いることが要求される。
従来から低圧の水素貯蔵容器にはCr−Mo鋼が広く使用されているが、Cr−Mo鋼をはじめとする多くの低合金鋼は水素による材質劣化が著しいため、35MPa程度以上の高圧の水素貯蔵容器用の材料は水素による材質劣化の少ないSUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼に限定されている。
しかし、SUS316等のステンレス鋼は強度が低いため、例えば水素圧を70MPaまで高める場合、貯蔵容器の肉厚が極めて厚くなり、容器重量が増大する。そのため、貯蔵容器の大きさが制限されて容器内に貯蔵する水素量が少なくなるだけでなく、素材コストが大きくなり過ぎて経済性に劣るという問題があった。
高圧水素貯蔵容器用材料として、オーステナイト系ステンレス鋼の代わりに、素材コストのより低い低合金鋼を適用するために多くの研究がなされている。特許文献1では、鋼中水素のトラップサイトとして、MnSやCa系介在物、またはVCを活用して非拡散性水素とし、拡散性水素による脆化を抑制する高圧水素環境用鋼が提案されている。
特許文献2、3では、Cr−Mo鋼の調質処理において比較的高い温度で焼戻し処理をすることで引張強度を900〜950MPaの極めて狭い範囲に制御した、耐高圧水素環境脆化特性に優れた低合金高強度鋼が提案されている。
特許文献4では、Mo−V系炭化物を活用し、焼戻し温度を高めることで耐水素環境脆化特性を向上した、高圧水素環境用低合金鋼が提案され、特許文献5では、MoとVを多量に添加し、鋼板製造時に焼準処理の後に長時間の応力除去焼鈍を施すことで、(Mo、V)Cを多量に析出させた耐水素性に優れた高圧水素ガス貯蔵容器用鋼が提案されている。
特開2005−2386号公報 特開2009−46737号公報 特開2009−275249号公報 特開2009−74122号公報 特開2010−37655号公報
しかしながら、特許文献1で提案された鋼材は、MnSやCa系介在物などを多量に含有するため、拡散性水素は低減できるものの、構造用鋼材の基本特性として必要な母材靱性に劣ることが容易に予想され、高圧水素貯蔵用容器などの高い安全性が要求される部品へは適していない。
特許文献2、3で提案された低合金鋼は従来のSUS316等に比べて低コストでかつ高強度であるが、鋼材の引張強度を極めて厳格に管理する必要があり、量産時の合金成分や熱処理温度のバラツキによって強度外れとなる確率が大きく、歩留まり低下によって生産性が劣ることが懸念される。
特許文献4で提案された低合金鋼は、Mo−V炭化物を活用するため多量のMoとVの添加が必要で、素材コストが高くなるだけでなく、高温での焼戻し処理により粗大なMo−V炭化物が多量に生成して母材靱性が劣化する。また、特許文献5で提案された鋼材も、特許文献4と同様にMo−V炭化物を活用するため、母材靱性が劣るだけでなく、長時間の応力除去焼鈍が必要で生産性に劣る。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、70MPa程度の高圧な水素を貯蔵する容器や蓄圧器への使用に適した、鋼中への水素侵入量が低く、かつ水素侵入による材質劣化の小さな、引張強度780MPa以上の高強度でかつ靱性の優れた低合金鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、引張強度780MPa以上の高強度鋼における高圧水素の鋼中への水素侵入挙動及び鋼材の延性低下現象と鋼材の微視的な組織形態の関係を詳細に調査し、以下の知見を得るに至った。
(1)引張強度780MPa以上の高強度を得るためには、Cr−Mo等を添加した低合金鋼に焼入れ−焼戻し処理を施すのが一般的である。しかし、焼入れ処理により生成したマルテンサイトを焼戻すと、過飽和の固溶炭素をセメンタイトとして析出させるが、この場合に生成するセメンタイトは粗大で水素の集積場所となるため高圧水素下では脆化や延性低下を引き起こす。
(2)高強度を得る手段として、Nb、Ti、V等の炭窒化物による析出強化を用いる方法もあるが、Nb,Ti,Vの炭化物はNaCl構造となり、鋼中で整合析出するため、析出物周囲に大きな整合歪場を形成するため、水素吸収能が高く高圧水素中の靱性劣化が大きい。
(3)熱間圧延後の加速冷却によって生成するベイナイト組織も強度靱性に富んだ組織であるが、上部ベイナイト組織は硬質な島状マルテンサイト(MA)を含んだ組織となるため、MAが水素吸収を促進しまた、脆性破壊の起点として作用するため、高圧水素中での靱性劣化が顕著になる。
(4)一方、下部ベイナイト組織は微細なラス構造となり極めて靱性の高い組織である。また、ラス組織内に生成するセメンタイトは、極めて微細で水素の集積場所とならないため、水素侵入による脆化や延性低下を抑制することが可能である。
本発明は、上記知見をもとに、更に検討を加えてなされたもので、すなわち、
1.質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.6超〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、Al:0.01〜0.08%を含有し、且つPcm(%)が0.19以上、残部がFe及び不可避的不純物からなり、金属組織が面積分率70%以上の下部ベイナイトと面積分率3%以下の島状マルテンサイトを備え、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材。
Pcm(%)=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Mo/15+Ni/60+V/10+5B 但し、各元素記号は含有量(質量%)。
2.さらに質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0005〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする1に記載の高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材。
本発明によれば、水素ステーション等に設置される水素貯蔵容器や蓄圧器など、高圧水素環境で使用される容器用素材として必要な高強度・高靱性でかつ水素による材質劣化の小さな鋼材が得られ、産業上極めて有用である。
実施例における本発明例(鋼板No.3)と比較例(鋼板No.4)のミクロ組織を示す図。
本発明では、鋼の化学成分と金属組織を規定する。
1.化学成分
説明において成分%は全て質量%を意味する。
C:0.05〜0.15%
Cは、高強度な下部ベイナイト組織を得るために必要な元素で、下部ベイナイト中にセメンタイトとして微細分散することで、高圧水素雰囲気からの水素侵入による脆化を抑制し、また優れた母材靱性を得るために必要である。しかし、0.05%未満では十分な強度を確保できず、0.15%を超えるとセメンタイトの量が増加し水素侵入による脆化を生じ、さらに母材靱性の低下を招く。従って、0.05〜0.15%とする。
Si:0.01〜0.50%
Siは脱酸のために添加する。この効果は0.01%以上で発揮されるが、一方、0.50%を超えると靭性が劣化するようになるため0.01〜0.50%とする。
Mn:0.6超〜2.5%
Mnは金属組織を下部ベイナイト組織として鋼の強度および靭性を向上させる。0.6%以下ではその効果が十分ではなく、2.5%を超えると靱性が劣化するようになるので、0.6超〜2.5%とする。
P:0.02%以下
Pは不可避的不純物であり、鋼材の強度には大きな影響を及ぼさないが、靱性を劣化させる元素であるため0.02%以下とする。好ましくは、0.015%以下とする。
S:0.003%以下
Sは不可避的不純物であり、鋼中においては一般にMnS系の介在物となり、靱性の劣化、特にシャルピー吸収エネルギーの低下を招くため、0.003%以下とする。より高い性能が要求される場合は、S量をさらに低下することが有効であり、好ましくは0.002%以下とする。
Al:0.01〜0.08%
Alは脱酸剤として添加する。この効果は0.01%以上で発揮されるが、0.08%を超えると清浄度の低下により延性を劣化させるようになるので、0.01〜0.08%とする。
Pcm(%):0.19以上
Pcm(%)は下式で示す溶接割れ感受性組成(質量%)であるが、本発明では下部ベイナイト組織を得るための成分設計における指数とする。Pcm(%)の値が0.19未満では上部ベイナイトが生成しやすく、十分な分率の下部ベイナイト組織が得られない。よって、Pcm(%)は0.19以上に規定する。Pcm(%)の上限値は特に規定しないが、0.25を超えると強度が高くなり過ぎ水素による脆化感受性が高まるため、Pcm(%)は0.25以下が好ましい。
Pcm(%)=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Mo/15+Ni/60+V/10+5B 各元素記号は含有量(質量%)。
以上が本発明の基本成分組成であるが、更に所望の特性を向上させるため、以下の元素を選択元素として添加することができる。
Cu:1.0%以下
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、1.0%を超えて添加すると鋳造時の鋳片の表面割れを生じる。従って、Cuを添加する場合は1.0%以下とする。
Ni:3.0%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、3.0%を超えて添加すると素材コストが上昇するだけでなく、鋳造時の割れの原因ともなる。従って、Niを添加する場合は3.0%以下とする。
Cr:1.0%以下
Crは、鋼材の焼入れ性を高め下部ベイナイト生成に有効な元素であるが、1.0%を超えて添加すると、セメンタイトが粗大化し高圧水素雰囲気での水素侵入量が増加するため、水素による脆化が促進される。よって、Crを添加する場合は1.0%以下とする。
Mo:1.0%以下
MoもCrと同様に、鋼材の焼入れ性を高め下部ベイナイト生成に極めて有効な元素であるが、1.0%を超えて添加すると、セメンタイトが粗大化し高圧水素雰囲気において水素侵入量が増加するため、水素による脆化が促進される。よって、Moを添加する場合は1.0%以下とする。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、熱間圧延時の粒成長を抑制し、微細粒化により靭性を向上させる。さらに焼入れ性元素であり、強度上昇に極めて有効な元素である。0.005%未満ではそれらの効果が小さく、一方、0.05%を超えて添加しても強度上昇が飽和する。従って、Nbを添加する場合は0.005〜0.05%とする。
V:0.01〜0.10%
Vは、Nbと同様に強度・靱性の改善に有効な元素である。それらの効果を得るには0.01%以上の添加が必要で、一方、0.10%を超えて添加すると強度の改善効果が飽和し、靱性の劣化が生じるようになる。従って、Vを添加する場合は0.01〜0.10%とする。
Ti:0.005〜0.03%
Tiは複合炭窒化物を形成してスラブ加熱時の結晶粒粗大化を防止し、組織を微細化し靱性向上に大きく寄与する。しかし、0.005%未満ではその効果が十分でなく、一方、0.03%を超えると粗大なTiNが増加し靭性が劣化する。従って、Tiを添加する場合は0.005〜0. 03%とする。
B:0.0005〜0.002%
Bは焼入れ性を高め、強度上昇に極めて有効な元素である。その効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.002%を超えて添加してもその効果が飽和する。従って、Bを添加する場合は0.0005〜0.002%とする。
Ca:0.0005〜0.005%
Caは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素である。その効果を得るためには、0.0005%以上の添加が必要であるが、0.005%を超えて添加してもその効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性を劣化させる。従って、Caを添加する場合は、0.0005〜0.005%の範囲とする。
なお、本発明鋼の残部はFeおよび不可避的不純物である。
2.金属組織
下部ベイナイトの面積分率:70%以上
下部ベイナイトは本発明で最も重要な組織であり、セメンタイトを微細析出させることで水素侵入を抑制し、高圧水素雰囲気下での脆化や延性低下を防止することが出来る。また、高強度でかつ高靱性を得るために必要な金属組織であり、本発明の目標とする780MPa以上の引張強度を得るためには、その面積分率が70%以上必要である。よって、本発明の金属組織は下部ベイナイトの面積分率を70%以上に規定する。
島状マルテンサイトの面積分率:3%以下
ベイナイトのラス間や粒界上でよく観察される島状マルテンサイト(MAとも言う)は、高圧水素雰囲気下では水素の集積場所にもなり、水素による脆化や延性低下を助長する。また、脆性破壊の起点となって靱性を劣化させるため、その面積分率は少ないほどよい。面積分率が3%以下では水素による脆化や延性低下が小さいため、島状マルテンサイトの面積分率は3%以下に規定する。
本発明では、下部ベイナイト組織、島状マルテンサイトの他に、マルテンサイトや上部ベイナイトまたはフェライトなどの組織が含まれても良い。
本発明は、上述した化学成分と金属組織を有することで、高圧水素雰囲気下での靱性低下が抑制されると共に、引張強度780MPa以上が得られ、高圧水素貯蔵容器などへの適用が可能となる。
本発明に係る高圧水素貯蔵容器用鋼材は製造条件を制限することなく任意の製造方法が適用可能であるが、シームレスプロセスでの鋼管製造や熱間圧延プロセスでの鋼板製造の場合は、以下の条件で製造することが望ましい。
鋳片の加熱温度:1000〜1250℃
ビレットやスラブ等の鋳片加熱温度は、1000℃未満ではミクロ偏析しているCやP、S等の不純物元素の拡散が不十分で均質な材質が得られず、1250℃を超えると、結晶粒が粗大化しすぎ靱性が劣化する。従って、スラブ加熱温度は1000〜1250℃とすることが好ましい。
熱間圧延終了温度:Ar温度以上
鋳片を再加熱した後、所望の管厚または板厚まで熱間で圧延を行うが、熱間圧延の終了温度は、フェライト生成温度であるAr温度以上とすることが好ましい。Ar温度未満では熱間圧延後に直ちに冷却を行うプロセスの場合、軟質なフェライト相の生成により強度低下を招くためである。
Ar温度は鋼の合金成分によって変化するため、それぞれの鋼で実験によって変態温度を測定して求めてもよいが、成分組成から下式で求めることもできる。
Ar(℃)=910−310C(%)−80Mn(%)−20Cu(%)−15Cr(%)−55Ni(%)−80Mo(%)
各合金元素は含有量(質量%)とする。
熱間圧延後の冷却速度:10℃/s以上
熱間圧延後に急冷することで金属組織を下部ベイナイト組織とすることが可能であるが、冷却速度が10℃/s未満では上部ベイナイトやフェライトなどの組織が生成しやすくなる。よって、熱間圧延後の冷却速度は10℃/s以上とすることが好ましい。
冷却停止温度:300〜450℃
熱間圧延後の冷却停止温度が450℃超えでは上部ベイナイト組織が生成しやすくなり、一方、冷却停止温度が300℃未満ではマルテンサイト組織となる。面積分率70%以上の下部ベイナイト組織を得るため、冷却停止温度を300〜450℃の範囲とすることが好ましい。冷却停止後は放冷すればよいが、下部ベイナイトの生成を促進するために、冷却停止温度から50℃程度温度が下がるまでは徐冷することがより好ましい。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜H)を連続鋳造法または真空溶解により鋳片とした後、熱間圧延により板厚20mmの厚鋼板を製造した。鋼種HはJIS・SUS316Lに相当する鋼材である。鋼板の製造条件を表2に示した。得られた厚鋼板の金属組織および機械的性質(引張強度及び破壊靱性)を調査した。
高圧水素中脆化特性は、これらの鋼板から丸棒引張試験片を採取し、水素圧力が70MPaの高圧水素中での10−6低歪速度の引張試験と大気中での同じ条件の低歪速度の引張試験を実施し、大気中での絞り値に対する高圧水素中での絞り値の比で評価した。これらの試験は常温で行った。高圧水素中の引張試験は、高圧チャンバー内に試験片をセットした後に水素ガスを導入し、70MPaに到達した後直ちに引張試験を開始し、試験中は水素圧力が一定になるようにして試験を実施した。また、いくつかの鋼種については、試験規格であるASTM E1681に従った破壊靱性試験を実施した。ここで、破壊靱性試験片の形状はASTM E399に規定された1/2−inch CT試験片(厚さB=13mm、幅W=26mm)とし、試験片の方向はき裂進展方向が鋼板の圧延方向と平行になるT−L方向とした。そして、初期き裂長さをaとして、a/W=約0.5となるように疲労予き裂を導入して、大気中及び70MPa高圧水素中で破壊靱性試験を実施した。破壊靱性値Kは、破断荷重または最高荷重をPとして、K=P・f(a/W)/B√W、(f(a/W)は試験規格に従って求められる係数)から導出した。
金属組織は光学顕微鏡により主体となる組織を同定した。ベイナイト組織については、走査電子顕微鏡(SEM)により詳細な観察を行い、上部ベイナイトまたは下部ベイナイト組織を特定した。
組織分率は光学顕微鏡またはSEMによる複数視野の写真から、画像解析により求めた。
表2に金属組織の観察結果と高圧水素中脆化特性を示す。金属組織特定の例として、図1にNo.3及びNo.4の鋼板の走査電子顕微鏡写真を示す。鋼板No.3は微細なラス構造からなっておりラス内に微細な炭化物(セメンタイト)が析出していることから、下部ベイナイト組織と同定された。一方、鋼板No.4は微細ラス構造は見られず、ベイニティックフェライトと粒界及び粒内に島状に見られるMA(島状マルテンサイト)からなり、上部ベイナイト組織と同定された。鋼板No.9はオーステナイトステンレス鋼であり炭化物やMAの無いオーステナイト単相組織であった。
本発明例である鋼板No.1〜3はいずれも、高圧水素中での絞り値の低下がほとんど見られず、水素による脆化が少なく靭性に優れている。一方、鋼板No.4〜8は、化学成分および/または金属組織が本発明の範囲外であるため、本発明例と比較して高圧水素中では絞り値が低下しており、水素によって脆化していることが認められた。なお、引張強度は鋼板No.5及びNo.9を除いていずれも780MPa以上であった。No.9はSUS316Lに相当する鋼種であり、高圧水素中でも絞り値の低下が見られないが、強度が低い。
表3に破壊靱性試験の結果を示す。表中の鋼板Noは表2に示したものと同じある。本発明である、No.3は高圧水素中において破壊靱性値の低下が見られるが、高圧水素中においても80MPa√m以上の高い破壊靱性値を示している。一方、No.6及びNo.7は大気中では十分高い破壊靱性値であるが、高圧水素中では大幅に低下している。また、No.9は高圧水素中でも破壊靱性値の低下は見られないが、破壊靱性値が小さく高圧水素容器などの大きな負荷が加わる構造部材への適用には適していない。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.6超〜2.5%、P:0.02%以下、S:0.003%以下、Al:0.01〜0.08%を含有し、且つPcm(%)が0.19以上、残部がFe及び不可避的不純物からなり、金属組織が面積分率70%以上の下部ベイナイトと面積分率3%以下の島状マルテンサイトを備え、引張強度が780MPa以上であることを特徴とする圧力35MPa以上の高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材。
    Pcm(%)=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Mo/15+Ni/60+V/10+5B 但し、各元素記号は含有量(質量%)であり、含有しない元素は0とする
  2. さらに質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下、Cr:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Nb:0.005〜0.05%、V:0.01〜0.10%、Ti:0.005〜0.03%、B:0.0005〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の圧力35MPa以上の高圧水素貯蔵容器用高強度鋼材。
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