以下、本実施形態の昇降装置10を図1ないし図3に基づいて説明する。なお、図中において同じ部材に対しては、同じ番号を付している。
本実施形態の昇降装置10は、図1に示すように、吊材2と、吊材2の巻き取りおよび巻き戻しをするドラム4とドラム4を回転させる駆動部1と駆動部1の駆動を制御する制御部3とを有し構造物の天井A側に取り付ける本体部5とを備えている。また、昇降装置10は、吊材2に吊持され吊材2の巻き取りあるいは巻き戻しに伴い本体部5に対して昇降可能な昇降体7を備えている。昇降体7には、照明器具本体21が固定されている。照明器具本体21は、たとえば、図示していない照明ランプを装着させ照明ランプからの光を所定の方向に反射する反射板を備えた構成としている。すなわち、本実施形態の昇降装置10は、昇降体7に照明器具本体21が備えられた昇降式照明器具20を構成している。なお、昇降装置10は、本体部5がカバー部5abにより覆われている。また、昇降装置10は、昇降装置10の本体部5と、正面視がC字状で天井A側に固定された取付アーム24とを、ボルト25,25により取り付けている(図2を参照)。
昇降装置10は、たとえば、昇降体7を降下させ昇降体7に備えた照明器具本体21の清掃や照明ランプの交換などの保守点検作業を行うことができる。
特に、本実施形態の昇降装置10における制御部3は、駆動部1の駆動を制御し、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避けて吊材2の共振を抑制させる第1状態にすることができる。また、制御部3は、駆動部1の駆動を制御し、上記固有振動数と上記振動数とを合わせることで吊材2に第1状態よりも大きな振幅の共振を発生させる第2状態にすることができる。制御部3は、昇降装置10が予め設定した状況になると第1状態と第2状態とを切替える。
本実施形態の昇降装置10は、吊材2の素材の弾性係数(ヤング率)、吊材2の断面積、本体部5側から昇降体7側までの吊材2の長さや照明器具本体21を備えた昇降体7の負荷質量により、吊材2における固有振動数を予め設定している。また、本実施形態の昇降装置10は、駆動部1としてモータ1aを備えており、制御部3がモータ1aの回転速度を制御して回転するドラム4の振動数を制御している。これにより、昇降装置10は、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避けて吊材2の共振を抑制させる第1状態とすることができる。また、昇降装置10は、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数とを合わせることで第1状態よりも大きな振幅の共振を発生させる第2状態とすることができる。
昇降装置10は、たとえば、通常時において、制御部3が駆動部1となるモータ1aの回転速度を制御して第1状態とする。また、昇降装置10の制御部3は、予め設定した状況として、本体部5の寿命末期になると、第1状態から第2状態に切替える。
これにより、本実施形態の昇降装置10は、通常期よりも寿命末期において吊材2が大きく振れることで、予め設定した状況にあることを、使用者に判別し易く報知することが可能となる。
以下、本実施形態の昇降装置10の各構成を説明する。
本実施形態の昇降装置10は、本体部5の一側端側(図2の紙面の右側)に吊材2の巻き取りおよび巻き戻しをするドラム4を設けている。昇降装置10は、モータ1aの回転によりドラム4を回転させる。昇降装置10の本体部5では、ドラム4に一端部を固定してある吊材2をドラム4から水平方向(図2の紙面の左右方向)に引き出している。吊材2は、滑車8aに巻き渡しされてU字状に方向転換され、滑車8bにより鉛直方向(図2の紙面の上下方向)へ方向転換している(図2を参照)。本体部5は、滑車8bから鉛直方向の下方へ延びる吊材2を昇降体7に設けた一対の滑車7c、7dに巻き渡して鉛直方向の上方に引き出し、本体部5のかしめ部5jに吊材2の他端部を固定している。
また、昇降装置10は、本体部5の外部に設けた切換スイッチ23を介して、交流商用電源AC(100V)と本体部5の端子台22とを電気的に接続している。切換スイッチ23は、たとえば、交流商用電源ACの一端側を端子台22の共通端子と接続し、交流商用電源ACの他端側を端子台22の上昇端子(図示していない)または端子台22の下降端子(図示していない)と切換えて電気的に接続できるように構成している。昇降装置10は、制御部3を介して端子台22とモータ1aとを電気的に接続している。昇降装置10は、切換スイッチ23の切換により、昇降体7の上昇動作と、昇降体7の降下動作と、昇降体7の昇降動作の停止とを行うことができる。
昇降装置10は、切換スイッチ23の切換により交流商用電源ACの他端側が端子台22の降下端子側に接続すると、制御部3がモータ1aに正回転の駆動を行う。昇降装置10は、たとえば、モータ1aの正回転により吊材2を巻き戻すようにドラム4が正回転すると、照明器具本体21を備えた昇降体7が降下する。また、昇降装置10は、切換スイッチ23の切換により交流商用電源ACの他端側が端子台22の上昇端子側に接続すると、制御部3がモータ1aに逆回転の駆動を行う。昇降装置10は、モータ1aの逆回転により吊材2を巻き取るようにドラム4が逆回転すると、照明器具本体21を備えた昇降体7が上昇する。
本実施形態の昇降装置10は、たとえば、リミットスイッチを用いた上死点検知部5eを備えている。上死点検知部5eは、本体部5の凹部5aaにおける上死点に昇降体7が達していることを検知する。上死点検知部5eは、制御部3と電気的に接続している。昇降装置10は、本体部5側に昇降体7を上昇させ上死点検知部5eが昇降体7を検知すると、制御部3が昇降体7の上昇動作を停止させるようにモータ1aを制御する。すなわち、昇降装置10は、上死点検知部5eを利用して、昇降体7と本体部5との嵌合時あるいは嵌合解除時に昇降体7の昇降回数をカウントすることができる。
本実施形態の昇降装置10は、本体部5の凹部5aaの内底面側に給電端子5a,5bを備えている。給電端子5a,5bは、制御部3を介して交流商用電源ACと電気的に接続されている。給電端子5a,5bは、昇降体7が本体部5の凹部5aa内に嵌合したときに接点圧を確保する、ばね5baを好適に備えている。給電端子5a,5bは、昇降体7と当接し昇降体7の上昇に伴って、本体部5と給電端子5a,5bとの間に配置された、ばね5baの押圧に抗って上死点検知部5eが昇降体7を検知するまで本体部5側に移動する。また、給電端子5a,5bは、昇降体7が降下すると、ばね5baの押圧に元の位置に復帰する。
本実施形態の昇降装置10は、照明器具本体21の照明ランプを点灯させる点灯装置(図示していない)を制御部3に設けている。昇降装置10は、昇降体7が本体部5の凹部5aaに嵌合して、本体部5の給電端子5a,5bと昇降体7の受電端子7a,7bとが接触することで昇降体7に備えられた照明器具本体21側に給電する構成としている。本実施形態の昇降装置10では、制御部3に内蔵した点灯装置が交流商用電源ACからの電力を照明器具本体21に装着される照明ランプの種類に応じた点灯用の電力に電力変換して照明ランプ側に給電する。なお、昇降装置10は、たとえば、昇降装置10と別途に配置した点灯装置から給電端子5a,5bに給電できるように電気的に接続したものでもよい。
本実施形態の昇降装置10は、上死点検知部5eが昇降体7を検知した回数に基づいて昇降装置10の状況を判定する。
本実施形態の昇降装置10は、たとえば、上死点検知部5eが検知した昇降体7の回数を制御部3の記憶部(図示していない)に記憶させている。本実施形態の昇降装置10では、上死点検知部5eの昇降体7を検知した回数が予め設定した回数内の場合を通常時としている。また、本実施形態の昇降装置10では、上死点検知部5eの昇降体7を検知した回数が予め設定した回数を超えた場合、本体部5側のモータ1aなどの使用部材が使用耐用回数を超えた寿命末期としている。なお、昇降装置10は、予め設定した状況として、上死点検知部5eの昇降体7を検知した回数から昇降装置10の状況を判定するものだけに限られない。昇降装置10は、たとえば、昇降装置10に内蔵する各種センサなどにより本体部5や昇降体7の異常、故障などを検知して第1状態と第2状態とを切替えるものでもよい。したがって、昇降装置10は、第1状態と第2状態とを切替えることにより、たとえば、昇降体7に付着した塵芥などを振るい落とすことも可能となる。
昇降装置10は、通常時において、制御部3がモータ1aの回転速度を制御して吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避けて、吊材2の共振を抑制させる第1状態にする。これにより、昇降装置10は、昇降体7の昇降中に吊材2が所定の振幅以上で振れる吊材2の共振を抑制している。なお、吊材2の振幅は、昇降装置10の用途や設置場所に応じて適宜に設定すればよい。
また、昇降装置10の制御部3は、上死点検知部5eが検知した回数が記憶部に記憶させている耐用回数を超えると、本体部5側の使用部材の交換時期が迫った寿命末期であると判定する。昇降装置10は、寿命末期において、制御部3がモータ1aの回転速度を制御して吊材2における固有振動数とドラム4の振動数とを合わせることで吊材2に第1状態よりも大きな振幅の共振を発生させる第2状態に切替える。
以下、本実施形態の昇降装置10において、吊材2の共振を抑制させる第1状態と、吊材2に第1状態よりも大きな振幅の共振を発生させる第2状態とを説明する。
図3に示す昇降装置10において、吊材2における固有振動数fは、質量mの物体が、ばね定数kのばねに繋がれた調和振動子の基本周波数と同様に表すことができる。したがって、吊材2における固有振動数fは、予め選定された吊材2の素材の弾性係数をE、吊材2の断面積をS、本体部5側から昇降体7側までの吊体2の長さをL、昇降体7側の負荷質量をMとする場合、次式により与えられる。
吊材2における固有振動数は、吊材2、昇降体7や照明器具本体21を適宜に選定することにより予め設定することができる。また、ドラム4の振動数は、ドラム4を回転させる駆動部1を制御することにより調整することができる。昇降装置10は、昇降体7の昇降速度を一定とした場合、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数とを合わせると昇降体7の昇降中の所定箇所(昇降させる負荷質量によって異なる)で吊材2が所定の振幅以上で振れる共振を発生する。言い換えると、本実施形態の昇降装置10は、意図的に、吊材2に共振現象が発生可能なように予め吊材2における固有振動数と駆動部1により回転するドラム4の振動数とを設定している。
本実施形態の昇降装置10は、制御部3が駆動部1を制御し、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避ける条件とすることで、吊材2の共振を抑制させる第1状態となる。また、昇降装置10は、制御部3が駆動部1を制御し、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数とを合わせる条件とすることで、昇降体7の昇降中の所定箇所で吊材2が所定の振幅以上で振れる共振を発生させる第2状態となる。
昇降装置10は、たとえば、使用部材の交換時期が迫った寿命末期であることを、吊材2が所定の振幅以上で振れることで使用者に判別し易く報知することができる。そのため、本実施形態の昇降装置10は、構造物の天井A側の高所に取り付けられた本体部5側が保守点検などされることなく長期使用されることを回避することが可能となる。また、本実施形態の昇降装置10は、昇降装置10が故障する前に昇降装置10を構成する使用部材の交換を促すことも可能となる。
以下、より具体的な昇降装置10の構成を図4ないし図7を用いて説明する。なお、図5に示す昇降装置10では、本体部5の内部構造を説明するため、本体部5のカバー部5abや照明器具本体21を省略して図示している。
図5に示す昇降装置10では、吊材2と、吊材2の巻き取りおよび巻き戻しをするドラム4とドラム4を回転させる駆動部1と駆動部1の駆動を制御する制御部3とを有し構造物の天井A側に取り付ける本体部5とを備えている。ここで、駆動部1は、モータ1aとモータ1aの回転速度を減速させてドラム4を回転させる減速機1bとを備えている。また、昇降装置10は、吊材2に吊持され吊材2の巻き取りあるいは巻き戻しに伴い本体部5に対して昇降可能な昇降体7を備えている。
制御部3は、駆動部1の駆動を制御し、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避けて吊材2の共振を抑制させる第1状態にすることができる。また、制御部3は、駆動部1の駆動を制御し、上記固有振動数と上記振動数とを合わせることで吊材2に第1状態よりも大きな振幅の共振を発生させる第2状態にすることができる。制御部3は、予め設定した状況に応じて第1状態と第2状態とを切替える。
本実施形態の昇降装置10では、昇降体7の荷重が1kgであり、昇降体7に備えられた照明器具本体21の荷重を5.5kgとしている。2本の吊材2は、照明器具本体21を備えた昇降体7を吊持ちしている。そのため、吊材2は、吊材2の1本当たりに掛かる荷重が3.25kgとなる。ここで、昇降装置10は、断面積Sが0.766mm2、弾性係数Eが105930N/mm2のステンレス鋼の吊材2を用いている。昇降装置10は、吊材2の長さLが9mで、吊材2における固有振動数を凡そ2.7Hzに設定することが可能となる。したがって、昇降装置10は、制御部3により駆動部1を制御してドラム4の振動数を凡そ2.7Hzに設定することで、意図的に、吊材2に共振現象を発生させることが可能となる。
以下、本実施形態の昇降装置10の各構成について、より詳細に説明する。
駆動部1は、ドラム4を回転させドラム4の回転速度を制御可能なものである。駆動部1は、たとえば、モータ1aの回転を減速機1bを介して減速させるものが挙げられる。モータ1aは、たとえば、直流電流で駆動するDCモータを用いることができる。モータ1aは、商用交流電源ACを全波整流した電圧の極性を変えることにより、正回転もしくは逆回転させることができる。減速機1bは、歯車などでモータ1aの回転速度を減速して出力可能なものを用いることができる。なお、モータ1aは、たとえば、上昇用端子、降下用端子および共通用端子を備えたものでもよい。モータ1aは、上昇用端子と共通用端子との間に電圧を印加できるように制御することで、昇降体7を上昇させることができる。また、モータ1aは、降下用端子と共通用端子との間に電圧を印加できるように制御することで、昇降体7を降下させることができる。減速機1bは、図示していないが、たとえば、複数個の遊星歯車、遊星キャリア、内歯車および太陽歯車を備えた遊星歯車減速機などを利用することができる。遊星歯車減速機は、太陽歯車を中心として、複数個の遊星歯車が自転しつつ公転することで、遊星歯車減速機の入力軸と出力軸とを同軸上で減速できる構造となっている。本実施形態の昇降装置10では、円錐状で周囲に歯が刻まれた、かさ歯車(図示していない)などを利用して、減速機1bの出力軸を垂直方向に変換してドラム4に伝達している。駆動部1は、昇降装置10の用途や昇降体7に備えられる照明器具本体21などの負荷質量などに応じて、モータ1aおよび減速機1bの種類や大きさなどを適宜選定すればよい。
吊材2は、ドラム4から複数個(ここでは、2個)の滑車8a,8bを介して方向転換し、昇降体7に設けた複数個(ここでは、2個)の滑車7a,7bに巻き渡して、本体部5側の圧着スリーブを用いた、かしめ部5jで固定している。なお、吊材2としてワイヤロープを用いる場合、吊材2は、一般に、複数本の素線をより合わせたストランドとし、ストランドを複数本より合わせたものを用いることができる。吊材2は、ストランドの中心に補強材を入れてもよい。吊材2は、種々の材料から構成することができ、たとえば、ステンレス材を用いることができる。吊材2は、複数本の素線をより合わせたものを用いた場合、吊材2の初期伸びを除去して素線が相互に密着した状態にすると、吊材2に作用する荷重に比例したフックの法則が成立する。吊材2の弾性係数Eは、吊材2の荷重変化量に対し、吊材2が伸びる変化量から求めることができる。吊材2の弾性係数Eは、構成する素線の数が少ないほど大きく、吊材2の長さが長いほど大きくなる傾向にある。また、吊材2は、荷重の掛かった状態で張られたままの吊材2と比較して、荷重の掛かった状態で移動する吊材2の弾性係数Eが大きくなる傾向にある。したがって、吊材2は、吊材2における固有振動数を設定する場合、初期の吊材2の伸びや吊材2に掛かる荷重も考慮して適宜の弾性係数Eのものを選択することが好ましい。
ドラム4は、減速機1bを介してモータ1aと接続されモータ1aの回転により吊材2の巻き取りおよび巻き戻しを行う。ドラム4には、ドラム4の軸に固定した歯車4aを備えている(図5を参照)。昇降装置10は、ドラム4の軸に固定した歯車4aを回転検知センサ部5iで検知することにより、ドラム4の回転数を検出可能としている。昇降装置10は、たとえば、ドラム4と同軸上に設けた歯車4aの歯がフォトインタラプタを用いた回転検知センサ部5iの光を遮断させることでドラム4の回転数を検出することができる。回転検知センサ部5iは、後述する制御部3の振動数検知部3bfと電気的に接続している。
本体部5は、駆動部1、制御部3やドラム4を保持することが可能なものである。本体部5は、昇降体7を本体部5の上死点の位置で固定させるため、昇降体7が収納される本体部5の中央部を介して両側(図5の紙面の左右側)に昇降体7と嵌合する嵌合機構5c,5dを設けている。昇降装置10は、昇降体7が本体部5の凹部5aa内における上死点位置で嵌合状態にあるとき、嵌合機構5cの電磁弁(図示していない)により回転支軸部5cbを起点にシャッタ5caを回転駆動させる。同様に、昇降装置10は、嵌合機構5dの電磁弁5dcにより回転支軸部5dbを起点にシャッタ5daを回転駆動させる。昇降装置10は、両側のシャッタ5ca,5daが閉じて中央部の昇降体7を挟持することで、昇降体7を本体部5に固定することができる。昇降装置10は、たとえば、フォトインタラプタなどを用いた嵌合センサ部5f,5gが昇降体7と本体部5とが嵌合状態にあることを検出して、後述する制御部3(図6を参照)の嵌合検出部3bcへ検出信号を出力する。なお、昇降装置10では、昇降体7が上死点の位置で固定された場合、昇降体7に設けた各受電端子7a,7bと、本体部5に設けた各給電端子5a,5bとがそれぞれ電気的および機械的に接続される。
制御部3は、図6に示すように、交流商用電源ACからの交流電力を整流してモータ1a側に給電する整流回路部3aを備えている。また、制御部3は、整流回路部3aからモータ1aへの給電を制御する制御回路部3bと、制御回路部3bからの制御信号に基づきモータ1aの回転を制御する駆動回路部3cとを備えている。
整流回路部3aは、交流商用電源ACの一端(図6の共通を参照)側と、切換スイッチ23を介して電気的に接続される交流商用電源ACの他端(図6の上昇または降下を参照)側とにより供給される交流電力を直流電力に整流する。整流回路部3aは、制御回路部3bやモータ1aを駆動させる直流電力の電源として機能する。整流回路部3aは、交流商用電源ACの他端側が切換スイッチ23が切換えられることにより、制御回路部3bの昇降検出部3baへ昇降体7の昇降動作を指示する昇降信号を出力することができる。
制御回路部3bは、切換スイッチ23が切換えられることにより、昇降体7の昇降動作の指示を検出する昇降検出部3baを備えている。制御回路部3bは、昇降体7が上死点に達していることを検知する上死点検知部5eと電気的に接続された上死点検出部3bbを備えている。また、制御回路部3bは、嵌合センサ部5f,5gと電気的に接続され、昇降体7が上死点の位置で嵌合機構5c,5dと嵌合しているか否かを検出する嵌合検出部3bcを備えている。制御回路部3bは、上死点検知部5eが検知した回数を上死点検出部3bbで累算した累算回数(以下、上死点検出回数ともいう)と予め設定している基準値とを比較して上死点検出回数が基準値に達したか否かを判定する比較判定部3bdを備えている。制御回路部3bは、比較判定部3bdからの信号に基づき駆動回路部3cへ出力する信号を制御することで、モータ1aの動作を制御する駆動制御部3beを備えている。さらに、制御回路部3bは、回転検知センサ部5iと電気的に接続され、ドラム4の振動数を検出する振動数検知部3bfを備えている。
昇降検出部3baは、整流回路部3aからの出力を判定して、切換スイッチ23の切換位置が上昇であるか降下の指示であるかを検出する。上死点検出部3bbは、上死点検知部5eが出力する信号により、昇降体7が上昇して上死点に達した回数を予め設定した状況に関する値として検出する。嵌合検出部3bcは、昇降体7が上死点の位置で嵌合機構5c,5dと嵌合しているか否かを検出する嵌合センサ部5f,5gの信号を検出することにより、嵌合状態を検出する。比較判定部3bdは、上死点検出回数と予め設定した基準値とを比較して上死点検出回数が基準値に達したか否かを判定する。所定の基準値は、昇降装置10の使用部材の交換を推奨、あるいは本体部5側の寿命を予告する寿命末期として、たとえば、150回の第1基準回数を設定することができる。また、所定の基準値は、第1基準回数を超えて昇降装置10の昇降が繰り返され、故障回避のため昇降体7の昇降を禁止させる所定の基準値として、たとえば、200回の第2基準回数を設定することができる。駆動制御部3beは、駆動回路部3cへ出力する切換信号を制御することにより、昇降体7の上昇動作、昇降動作の停止、降下動作の各動作を切換える。また、駆動制御部3beは、使用値が第1基準回数に達したと比較判定部3bdが判定したときに、モータ1aの出力を変更することにより、使用者へ寿命末期を報知する。駆動制御部3beは、使用値が第2基準回数に達したと比較判定部3bdが判定した後に、昇降体7が本体部5と嵌合位置にあるときに、モータ1aの出力を停止する。振動数検知部3bfは、回転検知センサ部5iからの出力に基づいてドラム4の振動数を検出する。振動数検知部3bfは、第1状態や第2状態に応じて比較判定部3bdに予め記憶したドラム4の振動数と一致するようにモータ1aを制御するため駆動制御部3beと電気的に接続している。
なお、制御回路部3bは、マイクロプロセッサなどで構成することができる。制御回路部3bは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、適宜の制御プログラムおよび予め設定した状況に応じた所定の基準値を記憶するROM(Read Only Memory)とを備えている。また、制御回路部3bは、各種データを演算する作業用のRAM(Random Access Memory)と、予め設定した状況に関する上死点検出回数を記憶する不揮発性のRAM(Random Access Memory)と、各種の入出力インタフェースとを備えている。制御回路部3bは、ROMに記憶している制御プログラムをCPUが実行することにより各種の動作を行うことができる。
駆動回路部3cは、制御回路部3bの駆動制御部3beから出力される切換信号にしたがって、たとえば、内蔵する4つのスイッチング素子3caを切り換えることにより、整流回路部3aが出力するモータ1aの駆動用直流電力の極性を切り換える。駆動回路部3cは、4つのスイッチング素子3caを切り換えることにより、モータ1aの正回転と逆回転との回転方向の切り換え、およびモータ1aの回転駆動の停止を行う。本体部5の制御部3は、切換スイッチ23の切換えにより、昇降体7の上昇動作、昇降動作の停止および降下動作の各動作を切換えることができる。
なお、本実施形態の昇降装置10では、駆動回路部3cをスイッチング素子3caを切り換えることによって構成しているが、駆動回路部3cは、リレーによって切換を行うものでもよい。駆動回路部3cは、たとえば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子によって構成することができる。昇降装置10は、モータ1aの駆動用の直流電力を供給する整流回路部3aと駆動回路部3cとの間に設けたスイッチング素子3caにより、駆動制御部3beから出力する駆動パルスのデューティ比を変化させることでモータ1aの出力を可変とすることができる。また、昇降装置10は、整流回路部3aと駆動回路部3cとの間にスイッチング素子3caを直列に挿入することなしに、駆動制御部3beからの駆動パルスの変化でモータ1aの出力を可変とするものでもよい。
次に、図7に示すフローチャート図を参照して、昇降装置10における動作を説明する。
最初に、昇降装置10の制御部3は、昇降体7の上昇動作または降下動作の指示待ちの状態である(ステップS1)。
次に、昇降装置10は、切換スイッチ23が切換えられることにより、整流回路部3aと電気的に接続された昇降検出部3baが出力した昇降信号を比較判定部3bdが判定する。比較判定部3bdは、切換スイッチ23による動作指示が昇降体7の降下動作の指示か否かを判定する(ステップS2)。
昇降装置10は、比較判定部3bdの判定が昇降体7の降下動作の指示でなければ、駆動制御部3beが駆動回路部3cを制御してモータ1aを駆動する。モータ1aは、減速機1bを介してドラム4を回転させることにより昇降体7に上昇動作を行わせる(ステップS8)。
昇降装置10は、昇降体7の上昇動作中に上死点検知部5eからの検知信号を上死点検出部3bbが検出すると、上死点検出部3bbと電気的に接続された駆動制御部3beが昇降体7の上昇動作を終了するように駆動回路部3cを制御する。
また、昇降装置10は、昇降体7の降下動作の指示の場合、上死点検知部5eが検知した回数を上死点検出部3bbで累算した上死点検出回数が、予め設定した寿命末期に対応する第1基準回数を超えているか否か比較判定部3bdで判定する(ステップS3)。
昇降装置10の制御部3は、上死点検出回数が比較判定部3bdに予め記憶させた第1基準回数を超えていなければ、通常時と判定する。制御部3では、比較判定部3bdから駆動制御部3beに通常時の信号が出力される。昇降装置10は、通常時として、制御部3の駆動制御部3beが駆動回路部3cを制御し、モータ1aによりドラム4を反時計回りの方向へ正回転させて昇降体7の昇降速度を変化させながら吊材2における固有振動数とドラム4の振動数との一致を避けた第1状態の降下動作を昇降体7に行わせる。昇降装置10は、通常時において、制御部3がモータ1aの駆動を制御して昇降体7の下降動作と下降動作の一時停止との間欠的な降下を行わせるように、駆動制御部3beから駆動回路部3cに制御信号を出力する。昇降装置10は、昇降体7が予め設定した床面側の所定位置まで降下するとモータ1aの駆動を止めて昇降体7の降下を終了する(ステップS7)。
ここで、昇降装置10は、昇降体7の降下動作において、回転検知センサ部5iが出力するドラム4の回転に応じたパルス数に基づいて所定距離(たとえば、1m)だけ昇降体7を降下させる降下動作を行う。また、昇降装置10は、昇降体7の下降動作の一時停止(たとえば、2秒間)を行う。昇降装置10は、昇降体7を所定距離だけ降下させた降下動作の後に、昇降体7の降下動作を一時停止させる間欠的な降下を繰返す。昇降装置10の制御部3は、モータ1aを制御して昇降体7の下降動作と下降動作の一時停止との間欠的な降下を行うことにより、昇降体7の動作に変化を与えて吊材2の共振を抑制させる第1状態とする。なお、昇降装置10は、吊材2の共振を抑制させる第1状態にするために昇降体7に間欠的な降下を行わせるものだけには限られない。昇降装置10は、昇降体7の降下速度を変化させることにより、吊材2の共振を抑制させる第1状態とすることもできる。また、昇降装置10は、制御部3がモータ1aの回転速度を段階的に変更して昇降体7の降下速度を変化させることにより第1状態としてもよい。昇降装置10は、たとえば、吊材2に共振が生ずる吊材2の長さL近傍における昇降体7の昇降速度を速めるなどにより、吊材2の共振を抑制させる第1状態とすることができる。言い換えれば、本実施形態の昇降装置10の制御部3は、駆動部1を制御して昇降体7の昇降速度を任意に変化させることにより、吊材2の共振を抑制する第1状態にすることができる。また、昇降装置10は、昇降体7の降下動作と降下動作の一時停止との間欠的な降下に加え、降下動作中の昇降体7の降下速度を変化させることにより第1状態としてもよい。
昇降装置10の制御部3は、上死点検出回数が第1基準回数を超えていれば、上死点検出回数が予め設定した使用停止回数に対応する第2基準回数であるか否かを判定する(ステップS4)。
昇降装置10は、上死点検出回数が予め設定した使用停止回数となっていれば、昇降装置10を構成する使用部材の耐用寿命を超えて使用されることを防止するためにモータ1aを駆動させずに停止した状態を維持する(ステップS9)。これにより、昇降装置10は、昇降機能が停止した状態となる。昇降装置10の制御部3は、昇降体7が本体部5と嵌合した状態で、昇降機能が停止した状態となるようにモータ1aを制御することが好ましい。
昇降装置10の制御部3は、ステップS4の判定で、上死点検出回数が使用停止回数となる第2基準回数未満であれば、モータ1aを制御して、吊材2における固有振動数とドラム4の振動数とを合わせることで第2状態とした降下動作を昇降体7に行わせる。昇降装置10は、昇降体7が予め設定した床面側の所定位置まで降下するとモータ1aの駆動を止めて昇降体7の降下を終了する(ステップS5)。
昇降装置10は、第1基準回数を超えて第2基準回数までの間、制御部3がモータ1aの駆動を制御して昇降体7の昇降を連続的に昇降するように、駆動制御部3beから駆動回路部3cに制御信号を出力する。これにより、昇降装置10は、意図的に、吊材2に共振を発生させて、昇降装置10が予め設定した本体部5側の寿命末期の状況にあることを使用者に報知することが可能となる。
なお、本実施形態の昇降装置10は、昇降体7の降下時にのみ吊材2に共振を発生させる第2状態として昇降装置10の状況を報知させているが、昇降体7の上昇動作時のみに第2状態としてもよい。また、昇降装置10は、昇降体7の降下動作時および上昇動作時の両時ともに吊材2に共振を発生させる第2状態としてもよい。また、昇降装置10は、予め設定した状況を判断するため、上死点検出回数を用いるものだけに限定されるものでもない。昇降装置10は、予め設定した状況である本体部5側の寿命末期の判定に、たとえば、ドラム4の回転を検出する回転検知センサ部5iの信号に基づいて昇降距離を累算した累算移動距離やモータ1aの駆動時間を累算した累算稼動時間などを利用してもよい。