JP5841837B2 - セルロース複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロース繊維及びオキシ水酸化金属を含有するセルロース複合体、該複合体の製造方法、及び該複合体を用いた水処理方法に関する。
近年、科学技術の発展に伴って、多種多様な化学物質が製造、使用されている。このような化学物質は、人の健康や生態系に影響を及ぼすものも数多く存在している。例えば、水処理の場合、フッ素、ヒ素、シアン等が知られている。また、気体処理の場合、排ガス中の硫化水素、青酸、フッ化水素、ヒ素等が知られている。
上記物質は、飲料水、水道水、ミネラルウォーター、治療用水、農業用水、工業廃水、及び土壌中、排ガス中等に溶解、懸濁、乳化、固化又は浮遊した状態で含まれている場合があり、これらの物質を分離、除去することが試みられている。
従来、物質の吸着材としては、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を使った材料が注目され、これに関して種々の改良技術が提案されている。
例えば特許文献1には、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維、各種セラミックスファイバー等の無機質繊維等の繊維状物質の基材の表面に、水酸化第二鉄や水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を保持させた、水溶液中の微細粒子の付着材が開示されている。ここで用いられている繊維状物質の繊維径は0.5〜100μmの範囲である。
特許文献2には、鉄イオン含有水溶液をpH9以下にして沈殿物を生成させ、それを乾燥した後、水を接触させ、不活性ガス雰囲気下で加熱処理してオキシ水酸化鉄を製造する方法、及びその方法で得られたオキシ水酸化鉄を主成分とする吸着材が開示されている。
特開平5−293316号公報 国際公開第2006/88083号パンフレット
しかしながら、特許文献1及び2等の吸着材は、吸着能が不十分なものであった。
本発明は、フッ化物イオンや過酸化水素等の活性酸素類等を効率的に除去できるセルロース複合体、該複合体の製造方法、及び該複合体を用いた水処理方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の平均繊維径を有するセルロース繊維とオキシ水酸化金属とを複合化することにより、フッ化物イオンや活性酸素類等を吸着除去できるセルロース複合体を見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[3]を提供する。
[1]セルロース繊維とオキシ水酸化金属とを含むセルロース複合体であって、セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであるセルロース複合体。
[2]過酸化水素又はフッ化物イオンを含有する被処理水と前記[1]のセルロース複合体とを接触させる工程を有する水処理方法。
[3]セルロース繊維と金属イオン含有水溶液とを混合した後、アルカリ剤でpHをアルカリ側に調整する、前記[1]のセルロース複合体の製造方法。
本発明によれば、フッ化物イオンや過酸化水素等の活性酸素類などの除去材料として有用なセルロース複合体、該複合体の製造方法、及び該複合体を用いた水処理方法を提供することができる。
[セルロース複合体]
本発明のセルロース複合体は、セルロース繊維とオキシ水酸化金属とを含むセルロース複合体であって、セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmである。以下、本発明のセルロース複合体の構成要素について説明する。
<セルロース繊維>
本発明で用いられるセルロース繊維は、その平均繊維径が1〜200nmである。該平均繊維径は、オキシ水酸化金属の担持性を高め、フッ化物イオンや活性酸素類等を効率的に除去する観点から、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nm、より更に好ましくは1〜10nmである。
セルロース繊維の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、上記と同様の観点から、好ましくは10〜1000、より好ましくは10〜500、更に好ましくは100〜350である。
平均繊維径及び平均アスペクト比の測定方法は、実施例記載の方法による。
セルロース繊維を構成するセルロースは、カルボキシ基を有するものが、フッ化物イオンや過酸化水素等の活性酸素類の除去効果において好ましい。これは、カルボキシ基によりオキシ水酸化金属の担持性が高まっているためと考えられる。該カルボキシ基含有量は、フッ化物イオンや活性酸素類等の除去能力の観点から、好ましくは0.1〜3.0mmol/gであり、より好ましくは0.4〜2.0mmol/g、更に好ましくは0.6〜1.8mmol/gで、より更に好ましくは0.6〜1.6mmol/gである。
ここで、カルボキシ基は、酸型のカルボキシ基(−COOH)であっても、ナトリウム塩等の塩型のカルボキシ基(例えば、−COONa基)であってもよい。
なお、カルボキシ基含有量は、実施例記載の方法によって測定される。
本発明で用いられるセルロース繊維は、天然セルロース繊維をその構成単位であるミクロフィブリル(結晶化度50〜95%程度、セルロース分子30〜100本よりなるものが好適な例として挙げられる。)に分離することにより得られるものが好ましい。なお、該セルロース繊維は必ずしもミクロフィブリル1本1本の単位に分離されている必要はない。
ミクロフィブリルの形状は原料によって様々であるが、多くの天然セルロース繊維においては、セルロース分子鎖が数十本集まって結晶化した矩形の断面構造を有する。例えば高等植物の細胞壁中のミクロフィブリルは、一般的にセルロース鎖が6本×6本集まったほぼ正方形の断面構造として観察される。本発明で用いられるセルロース繊維の繊維径は、実施例で記載する原子間力顕微鏡像で得られるセルロース繊維の高さを便宜的に繊維径として用いる。
<カルボキシ基を有するセルロース繊維の製造>
天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築している。本発明で用いるセルロース繊維は、好適には、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、N−オキシル化合物を触媒として酸化反応させることでミクロフィブリル表面の水酸基の一部を酸化し、カルボキシ基に変換することによって得ることも可能である。
したがって、セルロースに存在するカルボキシ基量の総和(カルボキシ基含有量)は、多いほうが、より微小な繊維径として安定に存在することができる。また、水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより向上する。
本発明で用いられるカルボキシ基を有するセルロース繊維の製造方法は特に限定されないが、特開2008−1728号公報や国際公開2009/069641号パンフレットに記載の方法、具体的には下記工程(i)及び(ii)を有する方法によれば、効率的に製造することができる。
工程(i):N−オキシル化合物と、酸化剤とを含む反応溶液中で、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る工程(酸化工程)
工程(ii):得られた反応物繊維を媒体に分散させ微細化する工程(微細化工程)
(工程(i):酸化工程)
工程(i)では、まず天然セルロース繊維を水中に分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。
天然セルロース繊維としては、針葉樹系パルプ、広葉樹パルプ、ユーカリパルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ、竹パルプ等の非木材パルプ;バクテリアセルロース、ホヤセルロース等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されてもよい。天然セルロース繊維の平均繊維径は特に限定されないが、N−オキシル化合物の反応性の観点から、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。天然セルロース繊維の平均繊維径は、篩等を用いて調整することができる。
工程(i)においては、酸化触媒としてN−オキシル化合物が用いられる。N−オキシル化合物は、分子内にN−オキシル構造を1個以上有する化合物であり、ピペリジン類のN−オキシル化合物が好ましい。
N−オキシル化合物の好適例としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−アルコキシ−TEMPO等が挙げられるが、TEMPO及び4−アセトアミド−TEMPOがより好ましい。
N−オキシル化合物の添加量は、触媒量であればよく、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.3〜3質量%である。
工程(i)では、酸化剤を使用する。酸化剤としては、特に次亜塩素酸、次亜臭素酸等の次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩等の塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等が好ましい。
酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して好ましくは1〜100質量%である。
また、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)を併用することもできる。共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して好ましくは1〜30質量%である。
工程(i)のより具体的な方法としては、下記(a)法、(b)法が挙げられる。
(a)法は、N−オキシル化合物と、酸化剤として次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩と臭化アルカリ金属塩とを含むアルカリ性の反応溶液中で、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る方法である。この場合の反応溶液のpHは9〜12とすることが好ましい。
(b)法は、N−オキシル化合物と、酸化剤として亜ハロゲン酸又はその塩と次亜ハロゲン酸又はそのアルカリ金属塩とを含む中性又は酸性の反応溶液中で、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る方法である。この場合の反応溶液のpHは4〜7とすることが好ましい。
反応溶液の温度(酸化処理の温度)は、好ましくは1〜50℃であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。反応時間は1〜240分間が好ましい。
工程(i)の終了後、工程(ii)の前に精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、反応液中に含まれる反応物繊維及び水以外の不純物を除去することができる。反応物繊維は、通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散していないため、精製工程では、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法を行うことができる。その際に用いる精製装置は特に限定されない。
こうして得られた精製後の反応物繊維は、通常、適量の水を含浸させた状態で工程(ii)に送られるが、必要に応じ、乾燥処理して繊維状や粉末状としてもよい。
(工程(ii):微細化工程)
工程(ii)では、工程(i)で得られた反応物繊維を媒体中に分散させ微細化する処理を施す。この微細化処理を施すことにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にあるセルロース繊維を得ることができる。
工程(ii)において、分散媒体としては、通常、水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶なエタノール等のアルコール類、エーテル類、ケトン類等の有機溶媒やそれらの混合物を使用することもできる。
微細化処理に使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、単軸押出機、二軸押出機、超音波分散機、家庭用ジューサーミキサー等が挙げられる。微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。
工程(ii)で得られるセルロース繊維は、必要に応じて、固形分濃度を調整し、分散液状の形態(目視的に無色透明又は不透明な液)、又は乾燥処理した粉末状の形態(ただし、セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることができる。分散液状にする場合、分散媒として水のみを使用してもよく、水と前記の有機溶媒や、界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用してもよい。
以上の工程(i)及び(ii)により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がN−オキシル化合物酸化によるアルデヒド基を経由し、更にカルボキシ基へと選択的に酸化され、カルボキシ基含有量が好ましくは3.0mmol/g以下のセルロース繊維からなり、平均粒子径が1〜200nmの微細化された高結晶性のセルロース繊維を容易に得ることができる。
この高結晶性のセルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有していることが好ましい。これは、本発明で用いるセルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース原料が表面酸化され、微細化された繊維であることを意味する。すなわち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、そのミクロミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、工程(i)の酸化処理により、アルデヒド基又はカルボキシ基の導入によって弱め、更に工程(ii)の微細化処理を施すことで、好ましくは1本1本のミクロフィブリルに分離されたセルロース繊維を得ることができる。
そして、工程(i)の酸化処理条件を調整することで、カルボキシ基含有量を所望の範囲内に調整して極性を変化させることができ、また工程(ii)で反応物繊維を微細化処理することによって、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
(セルロース繊維の変性処理)
工程(i)(ii)を経て得られたセルロース繊維は、必要に応じて変性処理することができる。
セルロース繊維の変性処理法としては、セルロース繊維のカルボキシ基のエステル化又はアミド化、水酸基のアシル化、ウレタン化、エーテル化の他、シリル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等の反応性基を有する化合物等と水酸基との反応によりセルロース繊維誘導体を得る方法が挙げられる。また、オキシ水酸化金属との親和性を向上させる目的で、種々のポリマーやシランカップリング剤による変性を行うこともできる。
セルロース繊維のカルボキシ基のエステル化又はアミド化は、アルキル基を有するアルコール又はアミドと反応させることにより行うことができる。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種ミリスチル基、各種パルミチル基、各種ステアリル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。ここで各種とは、イソ、n−、場合によりtert−を示す。
セルロース繊維の水酸基のアシル化、ウレタン化又はエーテル化は、アシル基を有する酸やハロゲン化物、イソシアネート基を有する化合物、又はアルキル基を有するアルコールと反応させることにより行うことができる。
ここで、アシル基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
また、イソシアネート基としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネートネート基等が挙げられ、アルキル基としては前記のものが挙げられる。
このような各種の変性処理によって得られたセルロース繊維誘導体は、未変性のセルロースに対して親疎水性が変化することに起因して、セルロース複合体が媒体中での分散性が向上する場合があり、目的に応じて任意に選択使用することができる。
なお、N−オキシル化合物を触媒として天然セルロースを酸化反応して得られるセルロース繊維と前記セルロース繊維誘導体は、どちらか一方を単独で使用することもできるし、両者を併用することもできる。
<オキシ水酸化金属>
本発明で用いられるオキシ水酸化金属に特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化アルミニウム、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化マンガン、オキシ水酸化コバルト等が挙げられる。
これらのオキシ水酸化金属は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、セルロース繊維への付着性や、フッ化物イオン及び活性酸素類の除去の観点から、オキシ水酸化鉄及び/又はオキシ水酸化アルミニウムが好ましい。
オキシ水酸化金属の製造は、金属イオン含有水溶液にアルカリ剤を添加することにより行うことができる。
鉄イオン含有水溶液としては、3価又は2価の鉄イオン含有水溶液が挙げられる。
3価の鉄イオン含有水溶液としては、塩化第二鉄(FeCl3)、硫化第二鉄(Fe2(SO43)、硝酸第二鉄(Fe(NO33)、蓚酸第二鉄(Fe2(C242)等の第二鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。
2価の鉄イオン含有水溶液としては、塩化第一鉄(FeCl2)、硫酸第一鉄(FeSO4)、硝酸第一鉄(Fe(NO32)、酢酸第一鉄(Fe(CH3CO22)、蓚酸第一鉄(FeC24)等の第一鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。
これらの中では、反応性等の観点から、3価の鉄イオン含有水溶液が好ましく、特に塩化第二鉄(FeCl3)の水溶液が好ましい。
得られるオキシ水酸化鉄は、α−FeOOH(ゲータイト)、β−FeOOH(アカゲナイト)及びγ−FeOOH(レピドクロサイト)の3種類があるが、本発明においてはオキシ水酸化鉄は、β−FeOOHが好ましく、非晶質のβ−FeOOHがより好ましい。また、オキシ水酸化アルミニウムについても非晶質のβ−AlOOHが好ましい。
オキシ水酸化鉄の形態の確認は、X線回折法(XRD)や酸化還元電位(ORP)の測定により行うことができる。
アルミニウムイオン含有水溶液としては、3価又は2価のアルミニウムイオン含有水溶液が挙げられる。
3価のアルミニウムイオン含有水溶液としては、塩化第二アルミニウム(AlCl3)、硫化第二アルミニウム(Al2(SO43)、硝酸第二アルミニウム(Al(NO33)、蓚酸第二アルミニウム(Al2(C242)等の第二アルミニウム化合物を含有する水溶液が挙げられる。
2価のアルミニウムイオン含有水溶液としては、塩化第一アルミニウム(AlCl2)、硫酸第一アルミニウム(AlSO4)、硝酸第一アルミニウム(Al(NO32)、酢酸第一アルミニウム(Al(CH3CO22)、蓚酸第一アルミニウム(AlC24)等の第一鉄化合物を含有する水溶液が挙げられる。
これらの中では、反応性等の観点から、3価のアルミニウムイオン含有水溶液が好ましく、特に塩化第二アルミニウム(AlCl3)の水溶液が好ましい。
アルカリ剤は、鉄、アルミニウムイオン等の金属イオン含有水溶液を中和し、オキシ水酸化金属を含む沈殿生成物を生成させるために使用する。
アルカリ剤としては、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NH3、NH4OH、MgO、MgCO3等の無機アルカリ剤を使用することができる。これらの中では、特に水酸化ナトリウム(NaOH)が好ましい。該アルカリ剤は、通常水溶液として鉄イオン含有水溶液又はアルミニウムイオン含有水溶液に加えられる。
鉄イオン、アルミニウムイオン等の金属イオン含有水溶液の濃度は、アルカリ剤の反応制御の容易さの観点から、0.01〜5mol/Lが好ましく、0.05〜3mol/Lがより好ましく、0.05〜1mol/Lが更に好ましい。また、アルカリ剤の水溶液の濃度は0.1〜10mol/Lが好ましく、0.5〜5mol/Lがより好ましい。
鉄イオン又はアルミニウムイオン含有水溶液にアルカリ剤の水溶液を加える条件は特に限定はなく、例えば、室温で撹拌しながら添加することができる。
[セルロース複合体の製造方法]
本発明のセルロース複合体は、セルロース繊維と金属イオン含有水溶液とを混合した後、アルカリ剤でpHをアルカリ側に調整することにより得ることができる。より具体的には、セルロース繊維の分散液と金属イオン含有水溶液とを混合した後、アルカリ剤でpHをアルカリ側に移行することにより得ることができる。この方法によれば、セルロース繊維、特に前記工程(i)及び(ii)を有する方法により得られた酸化セルロース繊維の表面に、オキシ水酸化金属が物理的又は化学的に均一に付着した形態のセルロース複合体を安定的に製造することができる。
金属イオン含有水溶液、アルカリ剤は、前記のものが挙げられる。セルロース繊維と金属イオン含有水溶液とを混合した後のpHは、金属イオンによって異なるが、通常0.3〜4程度が好ましい。
鉄イオンの場合、pHは、好ましくは0.3〜2.5、より好ましくは0.5〜2.3、であり、アルミニウムイオンの場合、pHは、好ましくは2〜4、より好ましくは2.5〜3.5である。
セルロース繊維の分散液とオキシ水酸化金属の水溶液の混合には、撹拌しながら、金属イオン含有水溶液にセルロース繊維の分散液を混合して調製することが好ましい。混合する際の温度は、通常、5〜40℃が好ましく、10〜35℃がより好ましい。混合時間は、通常5〜120分が好ましく、5〜60分がより好ましく、10〜40分がさらに好ましい。
混合はアンカー型攪拌棒等を用いて行うことができる。この際の回転数は、通常100〜500rpmが好ましく、100〜300rpmがより好ましい。
オキシ水酸化金属を金属イオンとして物理的又は化学的にセルロース繊維に担持させる観点から、金属イオン量は、セルロース繊維1gに対して、好ましくは0.005〜0.6モル、より好ましくは0.01〜0.4モル、更に好ましくは0.03〜0.3モル、より更に好ましくは0.03〜0.1モルを用いる。
セルロース繊維がカルボキシ基を有する場合、オキシ水酸化金属を化学的にセルロース繊維に担持させることができるが、より有効に担持させる観点から、金属イオン量は、カルボキシ基1モルに対して、1〜500モル用いることが好ましい。金属イオン量は5〜300モルがより好ましく、15〜250モルが更に好ましく、25〜200モルがより更に好ましく、25〜100モルが更に好ましい。なお、金属イオン量とは、Feイオン、ALイオン量を示す。
セルロース繊維の分散液と金属イオン含有水溶液とを混合した後、アルカリ剤と混合して得られる分散液のpHは、金属イオンによって異なるが、次のとおりである。これにより、オキシ水酸化金属がセルロース繊維に吸着すると考えられる。
特に鉄イオンの場合、オキシ水酸化鉄を安定に生成させ、活性を高める観点から、pHは好ましくは2.8〜6、より好ましくは3〜5.5、更に好ましくは3.5〜5.5である。
特にアルミニウムイオンの場合、オキシ水酸化アルミニウムを安定に生成させ、活性を高める観点から、pHは好ましくは4.1〜7、より好ましくは4.3〜6.8、更に好ましくは4.5〜6.5である。
上記の方法によって得られる本発明のセルロース複合体は、セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmであるセルロース繊維、好ましくは酸化セルロース繊維と、オキシ水酸化金属とを含んでおり、オキシ水酸化金属は、前記微細なセルロース繊維に物理的に吸着して一体化している。酸化セルロース繊維を用いる場合は、前記物理的な吸着だけでなく、酸化セルロース繊維のカルボキシ基に化学的に吸着するため、吸着量が高まっていると考えられる。
本発明のセルロース複合体におけるオキシ水酸化金属の含有量は、一般に金属イオンの種類にもよるが、セルロース繊維100質量部に対して、50〜3000質量部が好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。
上記方法によって得られたセルロース複合体は吸引濾過等により濾別し、そのままフッ化物イオンや活性酸素類等の除去材料として使用してもよく、また必要に応じて乾燥して使用してもよい。沈殿物の濾別は吸引濾過等により行うことができるが、不純物除去のためデカンテーションや遠心分離操作を行うことが好ましい。
セルロース複合体を乾燥する場合においては、高温乾燥によるセルロース繊維及びオキシ水酸化金属の酸化を抑制するため、セルロース複合体を70℃以下の温度で乾燥することが好ましい。温度が70℃を超えると乾燥は速いが、酸化の悪影響がでて性能が発揮しないおそれがあり、温度が低すぎると乾燥に時間がかかりすぎ、実用的でない場合がある。このため、乾燥温度は、好ましくは20〜70℃、より好ましくは30〜65℃、更に好ましくは40〜65℃である。
乾燥は、空気中、真空中、不活性ガス中のいずれでもよい。乾燥時間は特に制限はないが、真空中で乾燥させるのが好ましく、通常2時間〜3日間、好ましくは5時間〜24時間であり、より好ましくは5時間〜10時間である。
本発明のセルロース複合体により除去する好ましい物質は、(1)フッ化物イオン、(2)ペルフルオロオクタン酸(C715COOH)等のペルフルオロカルボン酸(PFCA)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(C817SO3H)等のペルフルオロアルキルスルホン酸(PFAS)、ペルフルオロアルキルカルボン酸(CF3(CF2nCOOH)等のフッ素化合物、(3)過酸化水素、一重項酸素(12)、脂質ヒドロペルオキシド、次亜塩素酸、オゾン、脂質アルコキシルラジカル、脂質ペルオキシラジカル、スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシルラジカル(OH・)、一酸化窒素ラジカル(NO・)、二酸化窒素ラジカル(NO2・)等の活性酸素である。
フッ化物イオンやフッ素化合物は、本発明のセルロース複合体に吸着させて除去することができ、また本発明のセルロース複合体から、脱離させることにより、本発明のセルロース複合体を再利用することができる。具体的には、フッ化物イオンを含有する水を、本発明のセルロース複合体に接触させて該フッ化物イオンを吸着させた後、該フッ化物イオンを脱着(溶離)させ、フッ化物イオンを効率的に回収することができる。
活性酸素類は、フェントン反応によって分解することができると考えられる。その場合、本発明のセルロース複合体は、オキシ水酸化鉄を含むことが好ましい。
[本発明のセルロース複合体を用いた水処理方法]
本発明のセルロース複合体を用いた水処理方法は、過酸化水素等の活性酸素又はフッ化物イオンを含有する被処理水と、前記の本発明のセルロース複合体とを接触させる工程を有する。
本発明により、フッ化物イオンや活性酸素類等を含む被処理水(工業排水等)を処理する場合、処理後のフッ化物イオンや活性酸素類の濃度が、処理前の値に比べて、少なくとも50%以下、すなわち除去率が50%以上となることを目安に処理を行うことが好ましい。
水処理方法する際には、活性酸素濃度やフッ化物イオンの濃度にもよるが、セルロース複合体量/被処理水量(重量比)が、1/10000〜1/5が好ましく、1/1000〜1/5がより好ましく、1/100〜1/10が更により好ましい。
通常、水処理の方法は、常温、常圧で行うことができ、処理時の温度は5〜70℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。処理時間は、2〜48時間が好ましく、4〜24時間がより好ましい。処理中は、適宜攪拌することが好ましい。
本発明の水処理方法は、本発明の成形体を充填塔(槽)に充填し、通水する方法で行うこともできる。
被処理水としては、繊維製品の殺菌及び/又は洗浄に使用した排水が挙げられる。例えば、リネンサプライ工場のように、活性酸素類を含む洗浄媒体を用いて繊維製品等を洗浄する洗浄方法では、本発明の方法により処理された排水は、循環させて再使用することができ、再使用システムの大幅な変更を必要とせずに実施することができる。また、繊維等のすすぎ工程での排水は、残存成分の濃度等によっては他の工程、例えば本洗工程での排水の処理に適用することもできる。
また、他の被処理水としては、食品加工用の設備(施設、加工装置等)及び/又は容器(包装容器、器具の容器等)の、殺菌及び/又は洗浄に使用した排水等が挙げられる。これらの分野においても、本発明の方法に処理された排水を再利用することができる。
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
また、実施例、比較例における各物性の測定、評価は、以下の方法により行った。
(1)セルロース繊維の平均繊維径の測定
固形分濃度で0.2質量%のセルロース繊維に水を加えて分散液を、0.001質量%に調製し、該分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(NanoNaVi IIe,SPA400,エスアイアイナノテクノロジー株式会社製、プローブは、同社製SI−DF40Alを使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を20本抽出し、それらの繊維高さから数平均繊維径を算出した。
(2)平均アスペクト比の測定
平均アスペクト比は、セルロース繊維に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の質量濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出した。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定した。そして分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とした。
Figure 0005841837
式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS, CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。尚、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
(3)カルボキシ基含有量の測定
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、セルロース繊維のカルボキシ基含有量を算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
(4)フッ化物イオンの除去率の測定
フッ化物イオンを0.1質量%含む水溶液(20℃)を40mL採取し、これにセルロース/オキシ水酸化金属複合体を1.0g添加し、その後、撹拌(12時間、150rpm)を行った。十分に撹拌した後、ろ過(ろ紙番号:C5 Φ110mm)を行い、得られた上澄みの水溶液をフッ化物イオン濃度測定用の試料とした。
その後、得られた上澄みの試料35gを50mLのスクリュー管へ採取し、フッ化物イオン計(東亜ディーケーケー株式会社製、IM−32型)を用いて、水溶液中のフッ化物イオン濃度を測定し、フッ化物イオンの除去率を算出した。
フッ化物イオンの除去率=[0.1質量%−(測定したフッ化物イオン濃度(質量%)]×100/0.1質量%
(5)活性酸素(過酸化水素)の除去率の測定
過酸化水素を0.1質量%含む水溶液(20℃)を100mL採取し、これにセルロース/オキシ水酸化鉄複合体を5.0g添加し、その後、撹拌(12時間、150rpm)を行った。十分に撹拌した後、ろ過(ろ紙番号:C5 Φ110mm)を行い、その上澄みの水溶液を過酸化水素濃度測定用の試料とした。
試料5.0gを50mLのスクリュー管へ採取し、クロロホルムを20mL加え、試料を完全に溶解した。イオン交換水を10mL加え、約1分間激しくふりまぜ、5分間静置した。上層(水層)へ試験紙を1秒間浸し取り出し、15秒後試験紙の呈色部とカラースケールを比較し濃度を算出した。過酸化水素の測定にMACHEREY−NAGEL社のパーオキシドを用いた。活性酸素の除去率は、フッ化物イオンの除去率と同様にして算出した。
実施例1〜8(セルロース繊維/オキシ水酸化鉄複合体の製造)
(1)セルロース繊維の製造
原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャーチャレンジ カナダ製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、Cl:5%)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ12.5質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20〜30℃で天然セルロース繊維の酸化処理を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化処理後の天然セルロース繊維をイオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行った。その後、前記酸化パルプをイオン交換水により固形分1質量%に調製し、高圧ホモジナイザー(スターバーストラボ HJP−25005、スギノマシン株式会社製)を用いて、245MPaで微細化処理を2回行い、セルロース繊維(CSNF)の水分散液を得た。この水分散液の固形分濃度は、1質量%であった。
得られたセルロース繊維の平均繊維径は3.3nm、平均アスペクト比は225、カルボキシ基含有量1.2mmol/gであった。
(2)セルロース繊維/オキシ水酸化鉄複合体の製造
前記(1)で得られたセルロース繊維の水分散液をイオン交換水で希釈し、0.2質量%のセルロース繊維の水分散液150gと、表1記載の金属イオン源、及び所定濃度の金属イオン原料液(例えば、実施例1では塩化第二鉄水溶液(0.1mol/L))150mlとを、1000mLのポリエチレン容器に注ぎ、アンカーを用いて200rpmで撹拌を行った(25℃、30分)。この混合物を撹拌下で、1mol/LのNaOH水溶液を表1記載の到達pHになるまで添加した。pH値は、東亜ディーケーケー株式会社製のpHメーター NM−21P型を使用した。その後、得られたセルロース複合体を遠心分離及びろ過処理を行ったあと、60℃の真空下で乾燥を行った。なお、得られたオキシ水酸化鉄は、X線回折法(XRD)と酸化還元電位(ORP)の測定により、非晶質のβ−FeOOHであることを確認した。
フッ化物イオン除去率と過酸化水素除去率の結果を表1に示す。
実施例9〜10(セルロース繊維/オキシ水酸化アルミニウム複合体の製造)
実施例1(2)において塩化第二鉄水溶液(0.1mol/L)を表1記載の塩化アルミニウム水溶液(0.1mol/L)に替えた以外は、実施例1と同様にして、セルロース繊維/オキシ水酸化アルミニウム複合体を得た。
実施例11(ミクロフィブリルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体の製造)
実施例1(1)で得られたセルロース繊維の水分散液に替えて、ミクロフィブリルセルロース(商品名:セリッシュFD−200L、ダイセル化学工業株式会社製)をイオン交換水により固形分1質量%に調整した水分散液を用い、高圧ホモジナイザー(スターバーストラボ HJP−25005、スギノマシン株式会社製)を用いて、245MPaで微細化処理を50回行い、セルロース繊維の水分散液を得た。この水分散液の固形分濃度は、1質量%であった。この水分散液を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、ミクロフィブリルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体を得た。平均繊維径は200nm、平均アスペクト比は6.5であった。
比較例1
原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャーチャレンジ カナダ製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)500mm×500mm×1.5mmをシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけ、約10mm×5mm×1.5mmのチップ状にした。光学顕微鏡により、20本のセルロース繊維の繊維径と繊維長を測定した。数平均繊維径は50μm、平均アスペクト比は40であった。
得られたチップ状のセルロース繊維を0.2質量%になるようにイオン交換水を配合し、0.2質量%のセルロース繊維とイオン交換水との混合物150gと、表1記載の濃度の塩化第二鉄水溶液(0.1mol/L)150gとを、1000mLのポリエチレン容器に注ぎ、アンカーを用いて実施例1(2)と同様にして200rpmで撹拌を行った。
この混合物を撹拌状態の下で、1mol/LのNaOH水溶液を表1記載のpHになるまで添加した。pH値は、東亜ディーケーケー株式会社製のpHメーター NM−21P型を使用した。その後、得られたセルロース/オキシ水酸化鉄複合体を遠心分離又はろ過処理を行ったあと、60℃の真空下で乾燥を行った。
比較例2
比較例1で用いたクラフトパルプをメチルセルロース4000cps(シグマアルドリッチジャパン製)に変更した以外は、比較例1と同様にしてメチルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体を調製した。しかしながら、メチルセルロースは水溶性のため、メチルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体は得られなかった。
比較例3
比較例1で用いたクラフトパルプをカルボキシルメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業株式会社製)に変更した以外は、比較例1と同様にしてカルボキシルメチルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体を調製した。しかしながら、カルボキシルメチルセルロースナトリウムは水溶性のため、カルボキシルメチルセルロース/オキシ水酸化鉄複合体は得られなかった。
Figure 0005841837
表1から、実施例1〜11は、比較例1に比べて、フッ化物イオン除去率と過酸化水素除去率が高いことが分かる。
また、実施例1と実施例11と比較すると、カルボキシ基を有するセルロース繊維を用いた場合は、フッ化物イオンの除去率が向上することが分かるが、これはオキシ水酸化鉄がセルロース繊維のカルボキシ基と化学的に結合して、セルロース繊維に担持されていることから吸着効率が高いと考えられる。

Claims (11)

  1. セルロース繊維とオキシ水酸化金属とを含むセルロース複合体であって、セルロース繊維の平均繊維径が1〜200nmである、セルロース複合体。
  2. オキシ水酸化金属が、オキシ水酸化鉄及び/又はオキシ水酸化アルミニウムである、請求項1に記載のセルロース複合体。
  3. セルロース複合体がカルボキシ基を有する、請求項1又は2に記載のセルロース複合体。
  4. セルロース繊維のカルボキシ基含有量が0.1〜3.0mmol/gである、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース複合体。
  5. セルロース複合体が、セルロース繊維が有するカルボキシ基1モルに対して、金属イオンを1〜500モル用いて得られる化合物である、請求項4に記載のセルロース複合体。
  6. 過酸化水素又はフッ化物イオンを含有する被処理水と、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース複合体とを接触させる工程を有する水処理方法。
  7. セルロース繊維と金属イオン含有水溶液とを混合した後、アルカリ剤でpHをアルカリ側に調整する、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース複合体の製造方法。
  8. 金属イオン量が、セルロース繊維1gに対して0.005〜0.6モルである、請求項7に記載のセルロース複合体の製造方法。
  9. セルロース複合体がカルボキシ基を有し、セルロース繊維のカルボキシ基含有量が0.1〜3.0mmol/gである、請求項7又は8に記載のセルロース複合体の製造方法。
  10. 金属イオン量が、セルロース繊維が有するカルボキシ基1モルに対して1〜500モルである、請求項9に記載のセルロース複合体の製造方法。
  11. セルロース繊維と金属イオン含有水溶液とを混合した後のpHが、0.3〜4である、請求項7〜10のいずれかに記載のセルロース複合体の製造方法。
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