JP5839888B2 - 振動型駆動装置とその移動体の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなリニア型超音波モータの駆動原理について、図9を用いて説明する。図9(a)のリニア型超音波モータの外観斜視図に示されるように、リニア型超音波モータ510は、振動子501とスライダ506および振動子501をスライダ506に加圧するための加圧部材(不図示)から構成されている。
振動子501は、圧電素子等に代表される電気−機械エネルギー変換素子505と、該電気−機械エネルギー変換素子505の片面に接合されて一体化される矩形の形状に形成された弾性体502と、を備える。そして、この弾性体502の上面に対して凸状に形成された2つの突起部503、504から構成される。
図9(a)のモータでは、図9(b−1)、(b−2)に示す2つの曲げ振動モードを振動子501に励振させる。
この2つの曲げ振動モードはどちらも、板状の振動子501の面外方向の曲げ振動モードである。
一方の振動モードは、振動子501の長手方向に2次の曲げ振動モード(Mode−A)であり、他方の振動モードは、振動子501の短手方向に1次の曲げ振動モード(Mode−B)である。
振動子501の形状は、2つの振動モードの共振周波数が一致するか、近くなるように設計される。
突起部503、504は、Mode−Aの振動において振動の節となる位置の近傍に配置されており、Mode−Aの振動によって、突起部先端面503−1、504−1は振動の節を支点として振り子運動をするため、X方向に往復運動する。
また突起部503、504は、Mode−Bの振動において振動の腹となる位置の近傍に配置されており、Mode−Bの振動によって、突起部先端面503−1、504−1はZ方向に往復運動する。
これら2つの振動モード(Mode−AとMode−B)の振動位相差が±π/2近傍となるように同時に励振し、重ね合わせることで、突起部先端面503−1、504−1が、XZ面内で楕円運動する。
この楕円運動により、加圧接触されたスライダ506を一方向に駆動することが出来る。
この種の振動波モータを図10に示す。
図10において、弾性体102は円環状をしており、弾性体102の上部には複数の突起102bが全周にわたって設けられている。弾性体102に対して移動体103は、不図示の加圧部材によって加圧接触されている。
移動体103は、弾性部材で形成されたリング状の本体部103a、本体部103aより延出したフランジ部103b、フランジ部103bの端部から延出し、かつ弾性体102に摩擦接触する摩擦面を有する接触部103cから構成されている。
圧電素子101は、弾性体102の底面に接着剤にて接着され、モータ駆動時に不図示の駆動回路により位相差を有する交流電圧が印加され、進行性振動波を発生させる。進行性振動波の進行方向がθ方向正の向き(図10の矢印参照)の場合、摩擦により駆動される移動体103の移動方向は、θ方向負の向きとなっている。
例えば、振動子501を3個配置した場合を図11に示す。振動子501の突起部先端面503−1、504−1と移動体103の接触部103cを加圧接触し振動子501に2つの曲げ振動モードを励振させると回転する。
一方、振動子501の短手方向に1次の曲げ振動モードにおいて、振動子501の各突起部先端面503−1、504−1の振動方向は図9(b−2)に示すようにZ方向変位のみである。そのため、突起部先端面503−1、504−1の振動軌跡の方向と移動体103の接触部103cの変位方向が一致せず、径方向の滑りが生じ接触が安定せず駆動効率が低下する。
移動体は、弾性部材で形成された円環状の本環部612と板ばね部613とからなる。
板ばね部613は接触部613aと連結部613cと固定部613bからなり薄板から一体で作製され、固定部613bが本環部612と接合されている。
接触部613aの両端は、連結部613cを介して固定部613bで支持されている。
接触部613aがZ方向の力を受けた際に、接触部613aの両端に位置する連結部613cは、ともに同じ変位量、変位するように、内径側と外形側の連結部613cが変形する。これにより、移動体はバネ性を持つとともに、接触部613aの変位方向が、接触面に対して垂直となり、接触が安定する。
図14(a)は絞り加工前のリング状の薄肉平板である。
図14(b)は、図14(a)を真上から見た図であり、絞り加工時に板を押さえる個所と絞り加工される個所を便宜上分けるために、補助線を円周上に設け、リング状の薄肉平板をV0〜V4の5ヶ所に分けている。
V0とV4が絞り加工時に板を押さえる個所である。V1、V2、V3を絞り加工することによって、リング状に突出した形状を形成する。
絞り加工時に押さえられたV0とV4はほぼ塑性変形せず、V1、V3がそれぞれ垂直方向(Z方向)に絞られ、壁部V11と壁部V13の形状に塑性変形する。V1とV3との境界に位置するV2の一部も円弧状に塑性変形し、V12に示す形状となる。
壁部V11と壁部V13は、それぞれR12とR32の円周上の近傍に設けられる。
壁部V11は、主に平板部V1が塑性変形したものであり、絞り加工前のリング状の薄肉平板の板厚をtとすると、体積は{(R12)2−(R11)2}π×t で表される。
また、壁部V13は、主に平板部V3が塑性変形したものであり、体積は{(R33)2−(R32)2}π×t で表される。
一方、絞り加工後であるV11とV13の板厚をt1とt3として、壁部V11の体積をt1を用いて表すと、約2π(R12)×t1×高さhと表せる。
以上より、t1、t3は以下のように求まる。ただしcは定数である。
t1/c=R12−(R11)2/(R12)
t3/c=(R33)2/(R32)−R32
ここで、R12−R11=R33−R32=k(定数)とすると、
t1/c=2k−2k/R12<2k
t3/c=2k+2k/R32>2k
従って、t1よりもt3のほうが値が大きくなり、絞り加工する際に内径側のほうがより伸び率が高くなり、その結果、絞り加工時に皺が形成されたり、所望の寸法精度を出すことが困難となる。
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子に楕円運動を励振させ、前記振動子と接触する前記移動体を相対移動させる振動型駆動装置であって、前記移動体は、本環部と複数の板ばね部とを備え、
前記複数の各板ばね部は、該板ばね部と前記本環部を接合する固定部と、前記振動子と接触する接触部と、前記接触部と固定部を連結する連結部と、を有し、
前記接触部における前記振動子との接触面が、前記複数の板ばね部同士をつなぎ部により連結することにより構成され、
前記接触部に前記振動子が接触して前記連結部が変形した際に、前記板ばね部に所定のバネ剛性を持たせるように、前記本環部と前記接触部との間に空間部を設けて前記複数の板ばね部が前記固定部を介して前記本環部と接合されることを特徴とする。
前記振動子と接触する、本環部と複数の板ばね部とからなる移動体とを備え、 前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子に楕円運動を励振させ、前記振動子と接触する前記移動体を相対移動させる振動型駆動装置における移動体の製造方法であって、
前記移動体における前記本環部を接合する固定部と、前記振動子と接触する接触部と、前記接触部と固定部を連結する連結部と、を有する前記複数の板ばね部を製造するに際し、
平板部材を用い、少なくとも板ばね部の連結部となる個所を曲げ加工し、前記接触部と前記固定部と前記連結部とを有する前記複数の板ばね部を形成する工程と、
前記接触部に前記振動子が接触して前記連結部が変形した際に、前記板ばね部に所定のバネ剛性を持たせるように、前記本環部と前記接触部との間に空間部を設けて前記複数の板ばね部が前記固定部を介して前記本環部と接合される工程と、
を含むことを特徴とする。
実施例1として、本発明を適用した振動型駆動装置の構成例について説明する。
本実施例の振動型駆動装置は、円環状に形成された回転型の振動型駆動装置を構成する、電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する3つの振動子と、該振動子と接触する移動体を備えている。
そして、前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子に楕円運動を励振させ、前記振動子と接触する前記移動体を相対移動させるように構成されている。
図8に本発明の実施例1に係る振動子701を示す。
振動子701は、矩形状の圧電素子707と弾性体702と2つの突起部703、704から構成されている。
弾性体702は、金属製の弾性部材であり、2つの突起部703、704が接合により又は一体的に設けられる。圧電素子705は、電気量を機械量に変換する電気−機械エネルギー変換素子であり、弾性体702と結合されている。
振動子701と移動体とは、不図示の加圧手段による加圧力により、振動子の突起部と加圧接触するように構成されており、圧電素子に特定の周波数の電圧を印加することで、振動子の突起部に楕円運動を起こさせ、摩擦によって摩擦駆動される。
移動体111は、弾性部材で形成された円環状の本環部112と複数の板ばね部113とからなる。
本環部112は、均一な板厚を有するリング構造となっている。
板ばね部113は、接触部113aと固定部113bと連結部113cからなり、薄板をプレス加工することで製作され、本環部112の円周方向に沿って複数配置される。
図1(c)に板ばね部113の斜視図を示す。板ばね部113は、振動子の突起部先端と接触する接触部113aを有している。
振動子の突起部703、704と板ばね部の接触部113aは、振動子701の駆動周波数(数十kHz以上)で断続接触を繰り返すことになり、駆動力を十分伝えつつ、異音を抑えるため少なくとも一方が適切なばね剛性を有する必要がある。
板ばね部113の接触部113aが連続した周状の面を形成するように板ばね部113を複数、本環部112に配置する。
本実施例では、移動体が摺動する摺動面が、複数の板ばね部同士を隙間なく配設することにより構成される(振動子と移動体(の接触部)とが接触して摺動する面が摺動面となる)。
具体的には、複数の板ばね部113同士の境界部115に隙間が生じないように板ばね部113の幅の大きさL1やL2等を決める。
移動体の摺動面である接触部113aが連続な平面となるようにすることで、振動子の突起部が板ばね部113同士の隣接した境界部115に引っ掛かり、駆動効率が低下するのを防ぐ。
本環部112と板ばね部113の接合は、板ばね部113の固定部113bを接着や溶接することで行う。
例えば、図4の形状では、板ばね部313との接合を本環部312の側面312cではなく、本環部312の平面である上面312aで行うことができる。
このため、板ばね部313の固定部313bと本環部312に隙間が生じにくく、また固定部313bの上方からレーザ溶接等がし易い構造となっている。
本環部312を大きくしてもよい場合にこの構成を取ることができる。
また図5の形状では、本環部の幅を図4より小さくできるため、スペースの有効利用や軽量化を図ることができる。
図4は、移動体311の断面図である。本環部312は、均一な板厚を持つ円環である。
一方、板ばね部313は、接触部313aと固定部313bと連結部313cからなる。
接触部313aと固定部313bは連結部313cにより連結される。接触部313aに振動子が摩擦接触した際に所定のバネ性を有するように連結部313cの形状を決める。
固定部313bの面は、本環部312の面と平行に水平状に形成されている。固定部313bを溶接や接着することにより、本環部312と板ばね部313を接合する。
本環部412は、均一な板厚を持つ円環である。一方、板ばね部413は、接触部413aと固定部413bと連結部413cを有する。
接触部413aと固定部413bは連結部413cにより連結される。接触部に振動子が摩擦接触した際にバネ性を有するように連結部413cの形状を決める。
両持ち構造の板ばね部413を構成している2ヶ所の固定部413bのうち、片方の固定部413bを接触部に対して垂直方向に設ける。
板ばね部113の成形は、金属の薄板を曲げ加工等を用いて行う。
まず、平板部材による薄板から図2に示すような台形形状を含む形に打ち抜く。台形形状とするのは、本環部112に板ばね部113を複数設置して、移動体を形成するときに、隙間を極力なくすためであり、内径側の幅L1を外形側の幅L2よりも適度に小さくする。この時、接触部113aの面も台形形状となる。
その後、駆動方向(短手方向)に沿って、板ばね部の連結部113cとなる個所を曲げ加工することで、図1(c)に示す板ばね部113を作製する。
移動体の板ばね部をリング上の板から絞り加工等により一体で作製する場合と比較し、上記のように曲げ加工を取り入れることで、材料の伸び率を抑えることが出来るため、加工できる形状の制約が少なくなる。また精度よく加工することができる。
板ばね部113の個数を多くして構成するほど、面の台形形状が、長方形形状に近づき、結果として板ばね部113を複数配置した時に均一なバネ剛性を得ることが出来る。
従来技術で示した図10の弾性体102と圧電素子101を用いた円環型振動子を用いる場合は、両持ちロータの接触部の振動角度を円環振動子の接触部の振動角度と合うように、両持ちロータの連結部の形状を決める。これにより、同様に円環型振動子に対応した両持ちロータを提供することが出来る。
以上の本実施例の構成によれば、複数の板ばね部により移動体に所定のバネ剛性を持たせる構成にすることで、板ばね部を曲げ加工により製作することができ、製造コストが低く、高精度に加工可能な振動型駆動装置とその移動体の製造方法を実現することができる。
実施例2として、実施例1と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図3は、本実施例の移動体211を振動子の突起部が接触する側から見た図である。
本実施例は、上記した実施例1に対して、さらに、リング状の摺動部材からなる摺動リング216が設けられている点において相違するが、それ以外の構成は上記した実施例1と基本的に同じ構成であるから、重複する説明は省略する。
移動体211は、弾性部材で形成された円環状の本環部212と複数の板ばね部213と摺動リング216からなる。
図3に示すように、215は境界部であり、摺動リング216は複数の板ばね部213上に設けられる。
摺動リング216は、リング状の薄肉金属板である。この摺動リング216を複数の板ばね部213の摺動面側に配置することにより、移動体211の摺動面が連続平面となり、複数の板ばね部213同士に隙間が生じていたとしても、連続的な摺動面を形成することができる。
実施例3として、実施例1と異なる形態の振動型駆動装置の構成例について説明する。
図6は、本実施例の移動体511を振動子の突起部が接触する側から見た図である。512は本環部である。
本実施例は、上記した実施例1に対して、移動体511の板ばね部513を図6に示す構造とした点において相違が、それ以外の構成は上記した実施例1と基本的に同じ構成であるから、重複する説明は省略する。
まず、実施例1に対して板ばね部の異なる構造について説明する。
実施例1では、複数の板ばね部間同士の隙間を設けることなく、本環部と接合することで連続的な摺動面を構成している。
これに対して、本実施例では、複数の板ばね部513がつなぎ部517により連結されており、一体的な形状となっている。
つなぎ部517は、板ばね部513同士の接触部513aを連結する部分であり同一平面で連続的な摺動面を構成するために設けている。
そのため、板ばね部同士の隙間が空いている場合であっても、実施例2で用いた摺動リングを用いず、部品点数を削減できる。
まず、金属の平板からプレス加工により図7に示すような、リング形状と前記リング形状の径方向両側から一定間隔、径方向に張り出した形状を一体のまま打ち抜く。
その後、径方向にそって、板ばね部の曲部となる個所を曲げ加工することで、図6に示す板ばね部513を作製する。
112:本環部
113:板ばね部
113a:接触部
113b:固定部
113c:連結部
114:空間部
701:振動子
Claims (4)
- 電気−機械エネルギー変換素子と弾性体を有する振動子と、前記振動子と接触する移動体とを備え、
前記電気−機械エネルギー変換素子への交流電圧の印加により前記振動子に楕円運動を励振させ、前記振動子と接触する前記移動体を相対移動させる振動型駆動装置であって、前記移動体は、本環部と複数の板ばね部とを備え、
前記複数の各板ばね部は、該板ばね部と前記本環部を接合する固定部と、前記振動子と接触する接触部と、前記接触部と固定部を連結する連結部と、を有し、
前記接触部における前記振動子との接触面が、前記複数の板ばね部同士をつなぎ部により連結することにより構成され、
前記接触部に前記振動子が接触して前記連結部が変形した際に、前記板ばね部に所定のバネ剛性を持たせるように、前記本環部と前記接触部との間に空間部を設けて前記複数の板ばね部が前記固定部を介して前記本環部と接合されることを特徴とする振動型駆動装置。 - 前記摺動面が、リング状の摺動部材からなる摺動リングを配設することにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
- 前記板ばね部と前記つなぎ部は同一平板から一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
- 前記接触面は連続的な面であることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置。
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