(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る画像形成システムを模式的に示す構成図である。画像形成システムは、大容量給紙装置100と、上流機200と、下流機300と、排紙装置400と、操作表示部500とを備えている。上流機200及び下流機300のそれぞれは、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置であり、この画像形成システムは、同一構成の画像形成装置を2台直列に接続して構成される、いわゆる直列タンデム型の画像形成システムである。直列タンデム型の画像形成システムでは、一方の画像形成装置(例えば上流機200)で用紙Pの表面に画像を形成し、他方の画像形成装置(例えば下流機300)で用紙Pの裏面に画像を形成することにより、両面印刷を内容とするジョブに対する高速化を図ることができる。
大容量給紙装置100は、用紙Pを大量に蓄積収容し、上流機200及び下流機300に用紙Pを給紙するための装置であり、用紙Pの搬送方向を基準として上流機200の上流側に直列に接続されている。この大容量給紙装置100は、給紙部110を主体に構成されている。給紙部110は、複数の給紙トレイ、例えば3つの給紙トレイ111〜113から構成され、個々の給紙トレイ111〜113は、同一のサイズ・種類又は異なるサイズ・種類の用紙Pをそれぞれ収容することができる。給紙部110は、ジョブに応じた用紙Pを、対応する給紙トレイ111〜113から一枚ずつ給紙して上流機200に搬送する。
上流機200は、用紙Pに画像を形成する装置であり、大容量給紙装置100の下流側に直列に接続されている。この上流機200は、上流の装置、すなわち、大容量給紙装置100から排出された用紙Pを受け入れ可能に構成されており、大容量給紙装置100からの用紙P又は自己が保有する用紙Pに対して画像を形成することができる。上流機200は、画像形成部230と、定着部240と、搬送部250と、制御部260とを主体に構成されている。
画像形成部230は、複数の感光体を一本の中間転写ベルト236に対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を用紙Pに転写する。具体的には、画像形成部230は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックに対応する4つの画像形成部230Y,230M,230C,230Kと、中間転写部235とで構成される。以下、イエローに対応する画像形成部230Yの構成を説明するが、他の色に対応する画像形成部230M〜230Kの構成もこれと同様である。
画像形成部230Yは、感光体ドラム231と、現像ユニット232とを有している。現像ユニット232は、例えば帯電部と、露光部と、現像部とを主体に構成されている。帯電部は、感光体ドラム231の周面を一様に帯電させる。露光部は、感光体ドラム231にレーザ光を照射してその表面に静電潜像を形成する。現像部は、感光体ドラム231の表面に形成した潜像画像をトナーにより顕在化する。これにより、感光体ドラム231上に画像(トナー画像)が形成される。感光体ドラム231上に形成された画像は、中間転写部235を構成する中間転写ベルト236上の所定位置に逐次転写される。
中間転写ベルト236上に転写された各カラーよりなる画像(フルカラーの画像)は、転写ローラー237により、所定のタイミングで搬送される用紙Pに転写される。転写ローラー237は、中間転写ベルト236と圧接して配置されており、中間転写ベルト236との間にニップ部(転写ニップ部)を形成する。
搬送部250は、給紙トレイと、多数の搬送ローラー及びガイド部材からなる搬送ユニットとから構成されている。給紙トレイに収容された用紙P又は大容量給紙装置100から受け入れた用紙は、各搬送ローラーにより搬送されることにより、中間転写ベルト235が担持する画像と同期する所定のタイミングで転写ニップ部へと供給される。転写ニップ部の通過にともない用紙Pの片面には画像が転写され、画像が転写された用紙Pは定着部240に搬送される。
定着部240は、加熱ローラーと加圧ローラーとから構成されている。加熱ローラーには熱源(図示せず)が内蔵されており、この熱源により加熱ローラーが所定の温度に制御される。用紙Pの搬送過程において加熱ローラーと加圧ローラーとのニップ部(定着ニップ部)を用紙Pが通過することにより、用紙Pに転写された画像が加熱・加圧され、これにより、画像が用紙Pに定着される。
定着部240により定着処理が施された用紙Pは、排紙ローラーにより、上流機200の機外に排出される。この場合、後述するように、下流機300と協働して両面印刷を行うこと前提に、定着部240から送り出された用紙Pをその表裏を反転して排出する場合、当該用紙Pは、切換ゲートにより、下方にある反転ローラーへと搬送される。反転ローラーは、搬送された用紙Pの後端を挟持した後、逆送することによって用紙Pを反転させるとともに前述の排紙ローラーへと用紙Pを送り出す。これにより、定着ニップ部の通過時と比べて表裏が反転した用紙Pが、排紙ローラーにより、上流機200の機外に排出される。
また、この上流機200は、用紙Pの片面に画像を形成するのみならず、これ単体で用紙Pの両面に画像を形成することもできる。上流機200のみで用紙Pの両面に画像形成を行う場合には、用紙Pの片面に対する画像形成を終えて定着部240から送り出された用紙Pは、切換ゲートにより、下方にある反転ローラーへと搬送される。反転ローラーは、搬送された用紙Pの後端を挟持した後、逆送することによって用紙Pを反転させるとともに再給紙搬送経路に用紙Pを送り出す。再給紙搬送経路へと送り出された用紙Pは、複数の搬送ローラーによって搬送されて転写ニップ部へと回帰させられ、これにより、用紙Pの他方の面に対する画像形成に供される。
制御部260は、上流機200による画像形成動作を統合的に制御する機能を担っている。制御部260は、ユーザーからの指示に応じたジョブに基づいて、上流機200の各部(画像形成部230、定着部240、搬送部250)を制御することにより、以下に示す一連のプロセスを実行する。これにより、所定の画像が用紙Pに形成される。
(1)帯電部により感光体ドラム231を帯電させる
(2)露光部により感光体ドラム231上に静電潜像を形成する
(3)現像部により形成された静電潜像にトナーを付着させる
(4)感光体ドラム231上の画像を中間転写部235により用紙Pに転写させる
(5)画像が転写された用紙Pに定着処理を施す
ここで、画像形成のベースとなる画像データは、所定のタイミングにおいて制御部260によって取得される。例えば画像形成システムが原稿読取装置(図示せず)を備える場合には、ジョブの指示にともないユーザーが操作表示部500を操作して当該原稿読取装置により原稿を読み取る。これにより、原稿読取装置から画像データが出力されることにより制御部260が当該画像データを取得する。また、これ以外にも、画像形成装置に接続されたパーソナルコンピューターや他の画像形成装置からの出力に応じて、制御部260がジョブとともに画像データを取得するものであってもよい。
なお、上流機200は、用紙Pに対して画像を形成することなく機内を搬送し、当該用紙Pを単に機外へと排出することもできる。
下流機300は、用紙Pに画像を形成する装置であり、上流機200の下流側に直列に接続されている。この下流機300は、上流の装置、すなわち、上流機200から排出された用紙Pを受け入れ可能に構成されており、上流機200からの用紙P又は自己が保有する用紙Pに対して画像を形成することができる。下流機300は、画像形成部330と、定着部340と、搬送部350と、制御部360とを主体に構成されている。なお、下流機300は、上流機200と同一な機械構成を備える画像形成装置であり、これを構成する個々の要素330〜360は、上流機200を構成する個々の要素230〜260と対応している。また、下流機300は、上流機200と同様に、用紙Pの片面に画像を形成するのみならず、これ単体で用紙Pの両面に画像を形成したり、用紙Pに対して画像を形成することなく機内を搬送し当該用紙Pを単に機外に排出したりすることもできる。
排紙装置400は、下流機300から排出された用紙Pを排紙トレイ410に排紙し、排紙トレイ410上に集積する。また、この排紙装置400は、ジョブ単位、部数単位又は任意の単位で、排紙トレイ410上の異なる集積位置に仕分けながら用紙Pを集積したり、区切りを示すための挿入紙を挿入しながら用紙Pを集積したりすることができる。
操作表示部500は、例えば、上流機200の装置本体の上部に設けられている。操作表示部500は、液晶ディスプレイなどの表示画面に表示される情報に従い、入力操作を行うことが可能なタッチパネルで構成されている。ユーザーは、この操作表示部500を通じて、ジョブの開始指令、ジョブに係る印刷条件(例えば、片面・両面の印刷種別、画像の濃度や倍率、印刷部数、さらには用紙Pのサイズや斤量など)などを制御部260に指示することができる。すなわち、この操作表示部500は、ユーザーからの指示の入力を受け付ける入力部として機能する。なお、制御部260への操作指令の入力は、操作表示部5を用いて行うのみならず、画像形成装置に接続されたPCなどを用いて行ってもよい。
このような構成の画像形成システムにおいて、上流機200が備える制御部260は、大容量給紙装置100、下流機300及び排紙装置400と通信可能に構成されており、画像形成システム全体を統合的に制御する制御装置としても機能する。この制御装置としての制御部260は、後述する調整動作の実行期間を除き、画像形成システムの動作モードを、上流機200及び下流機300の双方を稼働するタンデムモードに設定する。このタンデムモードにおいて、制御部260は、ジョブを取得すると、上流機200及び下流機300を制御して、用紙Pに画像を形成する。例えば、ジョブが片面印刷を内容とする場合、制御部260は、上流機200及び下流機300の一方を制御することにより、当該一方の画像形成装置により用紙Pの片面に画像を形成する。また、例えば、ジョブが両面印刷を内容とする場合、制御部260は、上流機200及び下流機300の双方を制御することにより、上流機200により用紙Pの一方の面に画像を形成して下流機300により用紙Pの他方の面に画像を形成し、これにより、用紙Pの両面に画像を形成する。
また、制御部260は、操作表示部500を制御することにより、当該操作表示部500の表示画面を介してユーザーに情報を表示することができる。なお、操作表示部500はユーザーに情報を報知する報知部としての一形態であり、制御部260は、これ以外にも、音声を出力するスピーカー等を報知部として利用することができる。
さらに、制御部260は、必要に応じて、上流機200及び下流機300に対して調整動作の実行を指示する。調整動作は、例えば画像形成システムの起動時などのように、上流機200及び下流機300の双方に対して同時に指示される場合もあれば、メンテナンス用のカウンタが所定のカウント値に到達した場合等のように、調整動作が必要な装置に対してのみ指示される場合もある。
この調整動作は、画像形成に関する性能を調整するものであり、調整動作を実行している画像形成装置は、それが完了するまでの期間にジョブを取得したとしても、当該ジョブを処理するための画像形成を行うことはできない。上流機200と下流機300とは同一の機械構成の画像形成装置であるものの、個体差や、装置の使用頻度の差に応じて、調整動作に要する期間は両者で必ずしも一致しないこともある。
調整動作としては、(1)中間転写ベルトに各色のレジストマークを形成し、各色のレジストマークの形成位置から各色の位置ずれ量を検出して画像書き込み位置を補正する色ずれ補正、(2)各色毎にベタ画像の濃度を調製する濃度調整、(3)各色毎に多階調のグラデーションパターンを中間転写ベルトに形成し、その濃度を検出して再現画像の階調を補正する階調補正、(4)レーザダイオードを発光させてその光量を適正値に補正する光量補正、などが挙げられる。
制御部260は、両面印刷を内容とするジョブを実行する際に、上流機200及び下流機300の一方が調整動作を実行している場合には、単体での両面印刷処理によってジョブを開始させ、その一方の画像形成装置の調整動作が完了した以降に、直列での両面印刷処理に切り換えることとしている。ここで、単体の両面印刷処理は、調整動作を行っていない他方の画像形成装置が用紙Pの両面に画像を形成する処理(第1の両面印刷処理)に相当する。一方、直列での両面印刷処理は、上流機200が用紙Pの一方の面に画像を形成して下流機300が用紙Pの他方の面に画像を形成する処理(第2の両面印刷処理)に相当する。そして、制御部260は、操作表示部500により情報を表示させて、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理への切換タイミングをユーザーに選択させる。
図2は、本実施形態に係る画像形成システムの動作手順を示すフローチャートであり、具体的には、調整動作の実行に伴う画像形成システムの動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、調整動作の実行条件の成立をトリガーとして呼び出され、画像形成システムの制御装置たる制御部260によって実行される。調整動作の実行条件は、例えば画像形成システムの起動時、上流機200又は下流機300のメンテナンス用のカウンタが所定のカウント値に到達した場合、ユーザーからの調整動作の実行指示を受け付けた場合など、調整動作が必要となる予め定められた条件において成立する。
まず、ステップ1(S1)において、制御部260は、調整動作の実行を指示する。例えば、画像形成システムの起動時といったシーンであれば、制御部260は、上流機200及び下流機300のそれぞれに調整動作の実行を指示し、メンテナンス用のカウンタが所定のカウント値に到達した場合には、そのカウント値に到達したカウンタを備える装置に対して調整動作の実行を指示する。この調整動作の実行指示にともない、指示された装置は調整動作の実行を開始し、所定の補正プロセスの終了をもってその調整動作を完了する。
ステップ2(S2)において、制御部260は、ジョブを取得したか否かを判断する。ジョブは、操作表示部500又は画像形成システムに接続するPCから取得することができる。このステップ2において否定判定された場合、すなわち、制御部260がジョブを取得していない場合には、ステップ3(S3)に進む。一方、ステップ2において肯定判定された場合、すなわち、制御部260がジョブを取得した場合には、後述するステップ6(S6)に進む。
ステップ3において、制御部260は、上流機200及び下流機300の両方が調整動作の実行中であるか否かを判断する。このステップ3において肯定判定された場合、すなわち、2台とも調整動作の実行中である場合には、ステップ2に戻る。一方、ステップ3において否定判定された場合には、ステップ4(S4)に進む。
ここで、ステップ3において否定判定されるケースとしては、(a)上流機200及び下流機300の両方に調整動作の実行指示がなされたシーンにおいて、そのうち一方が調整動作をいまだに実行しているものの他方が調整動作を完了している場合、(b)上流機200及び下流機300の両方に調整動作の実行指示がなされたシーンにおいて、その両方が調整動作を完了している場合、(c)上流機200及び下流機300のいずれかに調整動作の実行指示がなされたシーンにおいて、それが調整動作をいまだに実行している場合、(d)上流機200及び下流機300のいずれかに調整動作の実行指示がなされたシーンにおいて、それが調整動作を完了している場合、が該当する。
ステップ4において、制御部260は、上流機200及び下流機300の一方のみが調整動作の実行中であるか否かを判断する。このステップ4において肯定判定された場合、すなわち、1台のみが調整動作の実行中である場合(上記(a),(c))には、ステップ2に戻る。一方、ステップ4において否定判定された場合、すなわち、上流機200及び下流機300がともに調整動作を完了している場合(上記(b),(d))には、ステップ5(S5)に進む。
ステップ5において、制御部260は、画像形成システムの動作モードをタンデムモードに移行し、上流機200及び下流機300の双方が稼働する状態(ジョブに応じた印刷を可能な状態)においてジョブの取得を待機する。タンデムモードへ移行すると、制御部260は、再度調整動作の実行が指示されるまで、このタンデムモードの状態を維持する。
なお、タンデムモードに移行する場合には、上流機200と下流機300との相互間における、画像の位置ずれ、濃度ずれ、色調ずれ等を補正するタンデム用調整動作を実行する期間を介在させてもよい。
ステップ6において、制御部260は、ステップ3の処理と同様、上流機200及び下流機300の両方が調整動作の実行中であるか否かを判断する。このステップ6において肯定判定された場合には、ステップ6の処理に戻る。このループ処理により、上流機200及び下流機300のいずれか1台が調整動作を完了するまで待機してから、ジョブが実行されることとなる。一方、ステップ6において否定判定された場合には、ステップ7(S7)に進む。
ステップ7において、制御部260は、ステップ4の処理と同様、上流機200及び下流機300の一方のみが調整動作の実行中であるか否かを判断する。このステップ7において否定判定された場合には、ステップ8(S8)に進む。一方、ステップ7において肯定判定された場合には、後述するステップ10(S10)に進む。
ステップ8において、制御部260は、ステップ5の処理と同様、タンデムモードに移行する。そして、ステップ9(S9)において、制御部260は、上流機200及び下流機300の双方により、ジョブに応じた印刷処理を開始する。具体的には、制御部260は、片面印刷を内容とするジョブを実行する場合、上流機200及び下流機300のいずれかを選択的に用いることで用紙Pの片面に画像を形成する。また、制御部260は、両面印刷を内容とするジョブを実行する場合には、上流機200により用紙Pの一方の面に画像を形成して下流機300により用紙Pの他方の面に画像を形成することにより用紙Pの両面に画像を形成する。
一方、ステップ10(S10)において、制御部260は、タンデムモードへ移行していない環境下において、ジョブの内容又はユーザーの選択に応じた印刷処理を行う。図3は、ステップ10における印刷処理の詳細を示すフローチャートである。
ステップ11(S11)において、制御部260は、ジョブの内容が両面印刷であるか否かを判断する。ステップ11において否定判定された場合、すなわち、ジョブの内容が片面印刷である場合には、ステップ12(S12)に進む。一方、ステップ11において肯定判定された場合、すなわち、ジョブの内容が両面印刷である場合には、後述するステップ14(S14)に進む。
ステップ12において、制御部260は、上流機200及び下流機300のうち調整動作を行っていない他方の画像形成装置を用いてジョブを実行する。これにより、当該他方の画像形成装置が用紙Pの片方の面に画像を形成する片面印刷処理が開始される。
ステップ13(S13)において、制御部260は、ジョブに係る印刷の全部が終了したか否かを判断する。このステップ13において肯定判定された場合、すなわち、ジョブに係る印刷の全部が終了した場合には、前述のステップ2に戻る。一方、ステップ13において否定判定された場合、すなわち、ジョブに係る印刷の全部が終了していない場合には、ステップ13の処理に戻る。
これに対して、ステップ14において、制御部260は、上流機200及び下流機300のうち調整動作を行っていない他方の画像形成装置を用いてジョブを実行する。これにより、単体での両面印刷処理が開始される。
例えば、下流機300のみが調整動作を実行している場合には、上流機200を用いて用紙Pの両面に画像を形成する。すなわち、上流機200は、大容量給紙装置100又は自己が保有する給紙トレイから供給される用紙Pを対象として、当該用紙Pの一方の面に画像形成を行った後に、他方の面にも画像形成を行う。そして、両面に画像が形成された用紙Pは調整動作を実行中の下流機300に排出される。この下流機300では、例えば補正演算中といった、調整動作のうち用紙搬送の妨げとならないような期間に対応して上流機200からの用紙Pを排紙装置400に排出する。
これに対して、上流機200のみが調整動作を実行している場合には、下流機300を用いて用紙Pの両面に画像を形成する。すなわち、下流機300は、大容量給紙装置100から調整動作を実行中の上流機200を経由して供給される用紙P、又は自己が保有する給紙トレイから給紙される用紙Pを対象として、当該用紙Pの一方の面に画像形成を行った後に、他方の面にも画像形成を行う。そして、両面に画像が形成された用紙Pは排紙装置400に排出される。なお、調整動作中の上流機200では、例えば補正演算中といった、調整動作のうち用紙搬送の妨げとならないような期間に対応して用紙Pを下流機300に排出する。
ステップ15(S15)において、制御部260は、ジョブに係る印刷の全部が終了したか否かを判断する。このステップ15において肯定判定された場合、すなわち、ジョブに係る印刷の全部が終了した場合には、前述のステップ2に戻る。一方、ステップ15において否定判定された場合、すなわち、ジョブに係る印刷の全部が終了していない場合には、ステップ16(S16)の処理に進む。
ステップ16において、制御部260は、先のステップ7において調整動作をいまだに実行していると判断された一方の画像形成装置について、調整動作が完了したか否かを判断する。このステップ16において肯定判定された場合、すなわち、調整動作が完了した場合には、ステップ17(S17)に進む。一方、ステップ16において否定判定された場合、すなわち、調整動作が完了していない場合には、ステップ15の処理に戻る。
ステップ17において、制御部260は、単体での両面印刷処理を停止した上で、タンデムモードに移行する。
ステップ18(S18)において、制御部260は切換処理を行う。図4は、ステップ18の切換処理の詳細を示すフローチャートである。この切換処理は、前述した一方の画像形成装置の調整動作が完了した以降、すなわち、上流機200及び下流機300の双方が稼働する状態(ジョブに応じた印刷を可能な状態)となった以降に、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理へ切り換えを行うための処理である。
ステップ20において、制御部260は、操作表示部500を制御して、選択情報を表示する。ここで、選択情報は、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理への切換タイミングをユーザーに選択させる情報である。本実施形態において、制御部260は、選択情報の表示を通じて、(1)調整動作の完了時、(2)部に係る印刷の終了時、及び、(3)ジョブに係る印刷の終了時のいずれかを切換タイミングとして選択させることとしている。
ここで、「調整動作の完了時」は、前述した一方の画像形成装置の調整動作が完了したこと条件として、直列での両面印刷処理へ切り換えることを切換タイミングとするものである。「部に係る印刷の終了時」とは、一連の印刷物を複数の部数に亘って印刷するジョブにおいて、現在処理している部に係る印刷の全部が終了したこと条件として、直列での両面印刷処理へ切り換えることを切換タイミングとするものである。「ジョブに係る印刷が終了時」とは、ジョブに係る印刷の全部が終了したことを条件として、直列での両面印刷処理へ切り換えることを切換タイミングとするものである。
ステップ21(S21)において、制御部260は、操作表示部500を制御して、第1の参考情報を表示する。この第1の参考情報は、「調整動作の完了時」を選択した際の処理の特性を示すための情報である。係る切換タイミングを選択した場合には、生産性を飛躍的に高めることができるものの、同一の部内で処理が切り換わることとなる。この場合、同一の部内において印刷物に画像品質上の差異が生じる可能性がある。そこで、制御部260は、「調整動作の完了と対応したタイミングで処理を切り換えた場合には、同一の部内で画像品質に差が生じる可能性がある」ことを参考情報として表示する。
ステップ22(S22)において、制御部260は、ステップ21での第1の参考情報を受けて、ユーザーが前述の「調整動作の完了時」を選択したか否かを判断する。このステップ22において肯定判定された場合、すなわち、「調整動作の完了時」が選択された場合には、本ルーチンを抜ける。そして、図3に示すステップ19(S19)では、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理へと切り換えるべく、制御部260は、上流機200及び下流機300の双方を用いてジョブに係る印刷の残部を実行する。これにより、当該印刷の残部について、直列での両面印刷処理が開始される。なお、タンデム用調整動作が存在する場合には、当該動作の終了を待って直列での両面印刷処理を開始することが好ましい。
一方、ステップ22において否定判定されると、ステップ23(S23)において、制御部260は、操作表示部500を制御して、第2の参考情報を表示する。この第2の参考情報は、「部に係る印刷の終了時」を選択した際の処理の特性を示すための情報である。係る切換タイミングを選択した場合には、同一部内で処理が切り換わることはないが、同一ジョブ内の部の境目で処理が切り換わることとなる。この場合、同一のジョブ内の部同士で印刷物に画像品質上の差異が生じる可能性がある。そこで、制御部260は、「部に係る印刷が終了するタイミングで処理を切り換えた場合には、同一のジョブ内の部同士で画像品質に差が生じる可能性がある」ことを参考情報として表示する。
ステップ24(S24)において、制御部260は、ステップ23での第2の参考情報を受けて、ユーザーが前述の「部に係る印刷の終了時」を選択したか否かを判断する。このステップ24において肯定判定された場合、すなわち、「部に係る印刷の終了時」が選択された場合には、ステップ25(S25)に進む。このステップ24において否定判定された場合、すなわち、「部に係る印刷の終了時」が選択されていない場合には、後述するステップ26(S26)に進む。
ステップ25において、制御部260は、現在印刷過程にある部に着目し、その部に係る印刷が完了したか否かを判断する。このステップ25において否定判定された場合には、再度ステップ25の処理に戻る。すなわち、このループ処理により、現在の部に係る印刷の全部が完了するまで、単体での両面印刷処理が継続されることとなる。一方、ステップ25において肯定判定された場合、すなわち、現在の部に係る印刷が終了した場合には、本ルーチンを抜ける。そして、図3に示すステップ19では、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理へと切り換えるべく、制御部260は、上流機200及び下流機300の双方を用いて、ジョブに係る印刷の残部を実行する。これにより、当該印刷の残部について、直列での両面印刷処理が開始される。
ステップ26(S26)において、制御部260は、操作表示部500を制御して、第3の参考情報を表示する。この第3の参考情報は、「ジョブに係る印刷の終了時」を選択した際の処理の特性を示すための情報である。係る切換タイミングを選択した場合には、同一ジョブ内で処理が切り換わることはないが、そのジョブの終了時に処理が切り換わることとなる。この場合、現在のジョブと次回以降のジョブというようにジョブ同士で印刷物に画像品質上の差異が生じる可能性がある。そこで、制御部260は、「ジョブに係る印刷が終了するタイミングで処理を切り換えた場合には、ジョブ同士で画像品質に差が生じる可能性がある」ことを参考情報として表示する。
なお、第1から第3の参考情報に示す具体的な形態は一例であり、各処理の特性を示すものであれば、種々の形態を採用することができる。
ステップ27(S27)において、制御部260は、現在印刷過程にあるジョブに着目し、そのジョブに係る印刷の全部が完了したか否かを判断する。このステップ27において否定判定された場合には、再度ステップ27の処理に戻る。すなわち、このループ処理により、現在のジョブに係る印刷の全部が完了するまで、単体での両面印刷処理が継続されることとなる。一方、ステップ25において肯定判定された場合には、本ルーチンを抜ける。そして、次なるジョブが存在する場合、図3に示すステップ19では、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理へと切り換えるべく、制御部260は、上流機200及び下流機300の双方を用いて、新たなジョブに係る印刷を実行する。これにより、当該新たなジョブに係る印刷について、直列での両面印刷処理が開始される。一方、次なるジョブが存在しない場合、制御部260は、図3に示すステップ19をスキップし、新たなジョブを待機する。そして、制御部260は、新たなジョブを取得した際には、直列での両面印刷処理によりジョブを開始する。
なお、制御部260は、単体での両面印刷処理により画像が形成された用紙Pと、タンデムモードへ移行後の両面印刷処理により画像が形成された用紙Pとの境目が分かるように、排紙装置400を制御してもよい。具体的には、図5(a)に示すように、単体での両面印刷処理により画像形成がされた用紙P(P1)と、タンデムモードへ移行して直列での両面印刷処理により画像形成がされた用紙P(P2)とを排紙トレイ410上の異なる位置に仕分けて集積してもよい。あるいは、同図(b)に示すように、単体での両面印刷処理により画像形成がされた用紙P(P1)と、タンデムモードにより上流機200及び下流機300の双方により画像形成がされた用紙P(P2)との間に挿入紙P3を介在させてもよい。挿入紙P3は、用紙P1,P2とは異なる種類(色彩、紙種、坪量など)の用紙を用いてもよいし、排紙位置を用紙P1,P2とオフセットさせてもよく、これにより、挿入紙P3の識別を容易としてもよい。
このように本実施形態において、画像形成システムは、直列タンデム式の画像形成システムであり、上流機200及び下流機300のそれぞれが用紙Pの両面に対して画像を形成可能に構成されている。また、画像形成システムの制御装置たる制御部260は、両面印刷を内容とするジョブを実行する際に、上流機200及び下流機300の一方が調整動作を実行している場合には、調整動作を行っていない他方の画像形成装置による単体での両面印刷処理によってジョブを開始させ、調整動作を行っている一方の画像形成装置の調整動作が完了した以降に、直列での両面印刷処理に切り換えることとしている。そして、制御部260は、操作表示部500により情報を報知させて、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理への切換タイミングをユーザーに選択させる。
係る構成によれば、単体での両面印刷処理によりジョブを先行して開始することができるので、上流機200及び下流機300の双方が正常に稼働する状態を待つことがないため、ダウンタイムを抑制することができる。また、調整動作が完了した以降は、画像形成装置は画像形成が可能な状態(稼働状態)へと自立的に復帰するので、タンデムモードへ移行し、直列での両面印刷処理によりジョブを開始することが可能となる。これにより、単体での両面印刷処理を継続し続ける場合と比較して、生産性の向上をさらに図ることができる。このように、上流機200及び下流機300をなす画像形成装置の調整動作による影響を極力抑え、システムの生産性の向上を図ることができる。
一方で、直列での両面印刷処理に切り換えた場合には、その前後の印刷物の画像品質が相違する可能性があるので、本実施形態では、単体での両面印刷処理から直列での両面印刷処理への切換タイミングをユーザーに選択させることとしている。これにより、生産性と画像品質とをユーザーのニーズに応じて調和させることができるので、ユーザーの利便性の向上を図ることができる。
また、本実施形態において、制御部260は、調整動作の完了時、部に係る印刷の終了時、及び、ジョブに係る印刷の終了時のいずれかを切換タイミングとして選択させている。
ここで、図6は、ジョブの実行概念を示す説明図である。同図には、上流機200及び下流機300の双方に調整動作の実行が指令されたことを前提に、一方の画像形成装置の調整動作がタイミングT1で完了し、他方の画像形成装置の調整動作がタイミングT2で完了した様子を示している。なお、タイミングT2’は、タンデム用調整動作の終了タイミングを示している。また、2つのジョブを連続して実行するものとし、個々のジョブは500面の両面印刷を3部だけ印刷するものである。
調整動作の完了時に直列での両面印刷処理を切り換えた場合には、上流機200及び下流機300の双方が稼働する状態へ整ったタイミングで即座に直列での両面印刷処理を切り換えることができる。これにより、システムの生産性の向上を図ることができる。一方、部に係る印刷の終了時に直列での両面印刷処理を切り換えた場合には、生産性を高めつつ、同一の部内で画像品質に差が生じるといった事態を抑制することができる。さらに、ジョブに係る印刷の終了時に直列での両面印刷処理を切り換えた場合には、生産性を高めつつ、同一のジョブ内で画像品質に差が生じるといった事態を抑制することができる。
また、本実施形態において、制御部260は、(1)調整動作の完了と対応したタイミングで処理を切り換えた場合には、同一の部内で画像品質に差が生じる可能性があること、(2)部に係る印刷が終了するタイミングで処理を切り換えた場合には、同一のジョブ内の部同士で画像品質に差が生じる可能性があること、(3)ジョブに係る印刷が終了するタイミングで処理を切り換えた場合には、ジョブ同士で画像品質に差が生じる可能性があること、を併せて報知することとしている。
係る構成によれば、切換タイミングを選択するための参考情報を報知することができる。これにより、どのような観点で切換タイミングを選択すればよいかを補助することができるので、ユーザーの使い勝手の向上を図ることができる。
また、本実施形態において、制御部260は、単体での両面印刷処理により画像が形成された用紙Pと、直列での両面印刷処理により画像が形成された用紙Pとの境目が分かるように、排紙装置400を制御している。
このような構成によれば、処理の切り換わりの境目を明示的に示すことができるので、その境目をユーザーに提示することができる。これにより、印刷品質を容易に管理することができるので、ユーザーの使い勝手の向上を図ることができる。
また、本実施形態において、制御部260は、上流機200及び下流機300の両方が調整動作を行っている場合には、一方の画像形成装置が調整動作を完了するまで待機してから、両面印刷を内容とするジョブを実行することとしている。
上流機200と下流機300とは同一の機械構成の画像形成装置であるものの、個体差や、装置の使用頻度の差に応じて、調整動作に要する期間は必ずしも一致しない傾向にある。そのため、上流機200及び下流機300の両方に調整動作を指示した場合であっても、いずれか一方が先行して調整動作が終了するといった事態が起こりえる。この点、本実施形態によれば、上流機200及び下流機300の双方が正常に稼働する状態を待たずに、調整動作が完了した一方の画像形成装置にて先行してジョブを開始することができる。これにより、前述のごとき選択をユーザーに促すことができるので、利便性の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施形態に係る画像形成システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、本発明の直列タンデム型の画像形成システムにおいて、上流機及び下流機としての画像形成装置は、電子写真方式以外の方式を採用する画像形成装置であってもよい。
また、上流機と下流機との間に、用紙の表裏の反転を行う中継装置を介在させることで、上流機と下流機とを直列的に接続してもよい。この場合、直列での両面印刷処理によってジョブを実行する場合には、中継装置によって用紙の反転を行ってもよい。また、このような中継装置を備える画像形成システムであれば、上流機及び下流機は、反転排紙機能を備えていなくてもよい。さらに、上流機と下流機とは厳密な意味で同一構成ではなくてよく、それぞれが単体での両面印刷処理を実行可能に構成されていれば足りる。
また、上述した実施形態では、画像形成システムにおける制御装置の機能を、上流機の制御部が担っているが、制御部を備えるいずれかの装置の制御部によって代替してもよいし、専用の制御装置を独立して設け、これにより実現してもよい。
また、上述した実施形態では、調整動作中の画像形成装置を中継させて用紙を搬送する場合には、画像形成用の搬送経路を利用しているが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、上流機及び下流機に、画像形成用の搬送経路とは異なるバイパス経路を設け、これにより、用紙を中継してもよい。