以下、本発明の定着装置及び画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の例示的一態様であるフルカラーレーザプリンタを示す概略構成図である。このカラーレーザプリンタは、装置本体41の下部に二段の給紙装置を備えた給紙部42が、その上方に作像部43が配置された構成となっている。なお、図1においては、本発明に特徴的な定着装置の構成は現されておらず、概略的に示すにとどめている。
このようなプリンタでは、一般にコピー等に用いられる普通紙(以下、単に普通紙という)と、OHPシートや、カード、ハガキといった90K紙(坪量:約100g/m2相当以上)の厚紙や封筒等の普通紙よりも熱容量が大きな、いわゆる特殊シート(以下、単に特殊シートという)とのいずれをも、シート状の記録媒体として用いることが可能である。
また、作像部43には給紙側を下に排紙側を上とするように配置された転写ベルト装置44が設けられている。転写ベルト装置44は、図示簡略する複数のローラからなるローラ群45で巻き掛けられたエンドレスの転写ベルト46を有し、ローラ群の内の1つのローラ47が図示しない駆動源によって駆動されることにより転写ベルト46が矢印A方向に回転駆動される。
転写ベルト46の下部走行辺には、転写ベルト回転方向(矢印A方向)上流側から順に、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、黒(Bk)用の4つの作像ユニット51M、51C、51Y、51Bkが並列配置されている。
各作像ユニット51M、51C、51Y、51Bkには、それぞれ図1(b)にモデル的に示すように画像担持体としての感光体52が設けられ、感光体52は駆動手段(図示せず)によって図中時計方向へ回転駆動されるようになっている。
感光体52の回りには、帯電手段としての帯電ローラ53、光書込み装置54aによってレーザ光書込みが行われる光書込み部54、現像装置55、クリーニング装置56が設けられている。現像装置55は二成分現像装置であって、消費されたトナー量に応じて図示しないトナー補給搬送装置によりトナーが補給される。
これら作像ユニット51M、51C、51Y、51Bkによってそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、及び、黒の画像が形成され、これら単色の画像は転写ベルト46の周面に次々と重ね合わされるように転写されてカラー画像が形成され、次いで、これらカラー画像は第1転写ローラ48、及び、第2転写ローラ49により転写ベルト46から記録材(記録媒体)Pへ転写され、画像が転写された記録材Pは定着装置10へと送出される。
定着装置10では定着ローラ1と加圧ローラ2との間に形成されるニップ部によって加圧・加熱されて画像は転写紙に定着されて、図示しない上部トレーに送出される。この定着装置10が本発明に特徴的な構成を具備する。
以下、本発明の定着装置について、その特徴的な構成について説明する。
図2は、本発明の定着装置の特徴的な構成を説明するための、定着装置10の例示的一態様を示す斜視図である。定着装置10は、内部に発熱源たるヒータ3を有する円筒状の定着ローラ(加熱回転体)1、及び、定着ローラ1と周面が相互に接触して定着用のニップ部を形成する加圧ローラ(加圧回転体)2を含んでなる。定着ローラ1は、軸心4の中心軸を回転中心(回転軸S)として不図示の動力装置によって矢印B方向に回転し、加圧ローラ2はそれに従動回転する。定着装置10のニップ部に、未定着トナー像が担持された記録材Pが通過する際に、熱と圧力とを受けてトナーが記録材Pに定着される。
安定したトナーの定着を得るためには、ニップ部の温度を一定に保持することが望まれる。そのため、温度検知手段11a、11bにて定着ローラ1の表面温度を検出し、それぞれの温度検出箇所が規定の温度領域に収まるように制御回路(不図示)よりヒータ3に断続電力が供給される。
しかし、一般に定着ローラ1の軸方向中央に合わせて通紙される(一般に「センターレジ」と称されている。)ので、小サイズの記録材Pを連続的に長時間定着すると、定着ローラ1の非通紙部となる端部及びその近傍の温度が上昇する。その温度上昇に対応して、温度検知手段11bの検知結果が規定の温度領域の上限に達するとヒータ3への電力供給が中断され、定着ローラ1の端部に比して軸方向中央付近の温度が低い状態のまま全体として温度低下する。そして、今度は、温度検知手段11aの検知結果が規定の温度領域の下限に達し、ヒータ3への電力供給が開始する。中央付近と端部との温度の隔たりが大きくなると、このヒータ3への電力供給のON−OFF切り替えの頻度が上がり、遂にはフリッカが発生してしまう場合があった。
本発明では、定着ローラ1の特徴的な端部構造によって、軸方向における良好な温度分布を長期間維持することができ、延いてはフリッカの問題を抑制することができる。
図3は、定着装置10の図2における定着ローラ1の右方向からの側面図である。図2
及び図3に示されるように、定着ローラ1の端部には、外部に露出する円盤状の外側板5が設けられ、それに対向し定着ローラ1の内周面に接触した状態で円盤状の内側板6が間隔を置いて設けられている。外側板5には、回転軸S近傍に位置する中心側通気口7と、外側板5の外縁近傍に位置する外縁側通気口8a,8b,8cとが設けられている。また、外側板5と内側板6との間には、中心側通気口7と外縁側通気口8aとを連通する流路9a、中心側通気口7と外縁側通気口8bとを連通する流路9b、中心側通気口7と外縁側通気口8cとを連通する流路9cの3つの流路が形成されている。
定着装置10が稼働して定着ローラ1が矢印B方向に回転すると、流路9a,9b,9c内に存在する空気が回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口7から外縁側通気口8a,8b,8cへと流れる気流が生じる。当該気流によって定着ローラ1の端部近傍が空冷されて、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙された際にも温度上昇を抑制することができる。したがって、本例によれば、簡単な構成で、定着ローラ1の軸方向における温度分布のばらつきを抑制することができ、結果として、フリッカの問題を抑制することができる。
以上、図2及び図3を用いて、本発明の定着装置の特徴的な構成について説明したが、勿論、これら図面に表された構成はあくまでも例示であり、本発明は当該構成に限定されるものではない。
たとえば、外側板5及び内側板6とその間に設けられた流路9a,9b,9cからなる本発明に特徴的な端部構成(以下、当該構成を「端部温度調整機構」と称する場合がある。)が、図2における右側端部にのみ描かれているが、勿論、左側端部に配してもよいし、左右両端部に配しても構わない。一般的なセンターレジの装置においては、左右両端部に端部温度調整機構を配することが望まれ、定着ローラ1の軸方向の左右何れかの端部に記録材の辺を合わせて通紙される(一般に「サイドレジ」と称されている。)装置においては、記録材の辺が合わされる側とは反対側の端部に端部温度調整機構を配することが望まれる。
中心側通気口7や外縁側通気口8a,8b,8c、これらを連通する流路9a,9b,9cの位置や数も特に限定するものではなく、たとえば、中心側通気口が全流路に兼用の上記例に限らず、流路の数に応じて設けられてもよいし、中心側通気口、外縁側通気口共に、各流路に複数設けられていても構わない。流路の数も3つに限定されるものではなく、2つや4つ以上の複数でも何ら問題ないし、単一の流路のみでも、さらには流路として仕切らずに外側板5と内側板との間の空間全域を流路としても構わない。さらに、中心側通気口の位置は外縁側通気口に対して加熱回転体の中心軸側であればいずれの箇所でも構わないし、外縁側通気口の位置は中心側通気口に対して加熱回転体の周面側であればいずれの箇所でも構わず、遠心力による流路内の空気流が生じさえすればよい。勿論、本発明の効果が良好に奏されるように、適切な構成に設計することが望ましい。
その他、発熱源として定着ローラ1の内部から加熱するヒータ3を例示しているが、たとえば、電磁誘導加熱方式の如く、ローラの外部から加熱する方式の発熱源を採用しても、本発明において何ら問題はない。
ところで、図2及び図3で説明した端部温度調整機構を備えた定着装置においては、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙された際には、逆に当該端部が冷却され過ぎて、中心部よりも低温になってしまう場合がある。それを考慮して、上記した中心側通気口や外縁側通気口の数、大きさ、位置、流路の形状、数、大きさ、その他外側板5と内側板6との間隔等を適宜設計して、使用態様に見合った冷却効率になるように端部温度調整機構を構成することが望まれる。
本発明においては、外側板と前記内側板との間に、温度に応じて曲率が変化して、前記加熱回転体の回転時に前記流路中を流れる空気流量を増減させるバイメタルで構成される熱変形部材をさらに備えることが好ましい。かかる熱変形部材を備えることで、端部温度調整機構による冷却効率を加熱回転体端部の温度に応じて自律的に調整することができる。なお、以降の説明において、感温部材としての熱変形部材を用いて前記流路中を流れる空気流量を調整する機構を、以下「感温流量調整機構」と称する場合がある。
本発明において熱変形部材は、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせてなる「バイメタル」で構成されたものであり、温度の変化によって曲率が変化する性質がある。
図2及び図3で説明した定着装置において、さらに前記感温流量調整機構を備えることで、定着ローラ1の端部近傍の冷却効率を自律的に制御することができる。すなわち、かかる感温流量調整機構は、中心側通気口7と外縁側通気口8a,8b,8cとを連通する流路9a,9b,9c中の空気流量が、定着ローラ1の周内面における外側板5乃至内側板6が配された位置近傍の温度が上昇すると増加し、同温度が下降すると減少するように、温度による熱変形部材の形状変化を利用して調整する機構である。
前記感温流量調整機構を備えることとすれば、定着ローラ1の端部近傍の温度に応じて空冷による冷却効率が適切に調整されるので、定着ローラ1の軸S方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができ、結果として、フリッカの問題を抑制することができる。
また、定着ローラ1の軸S方向における温度分布のばらつきが抑制されることから、本例において軸S方向の中央部と端部の2箇所に設けられている温度検知手段11a,11bについて、その一方のみにすることが可能になる。温度検知手段の個数を少なくできれば、部品点数減少によって装置の小型化やコスト低減に繋がるほか、温度制御機構を簡略化することにもなり、それに基づくコスト低減にも繋がる。
この場合の唯一の温度検知手段は、11a,11bの箇所に限定されず、軸S方向の任意の箇所に設置することができる。勿論、設計上あるいは精度上等各種観点から、温度検知手段の設置個数は1個や2個に限定されるものではなく、3個以上であっても構わない。
前記感温流量調整機構における流路9a,9b,9c中の空気流量の増減は、たとえば、中心側通気口7や外縁側通気口8a,8b,8cの開口面積(面積ゼロ、すなわち閉止状態を含んでもよい。)や、流路9a,9b,9cそのものの少なくとも一部の断面積(断面積ゼロ、すなわち封鎖状態を含んでもよい。)を調整可能に構成しておき、これらのいずれか、または、複数の組み合わせを熱変形部材の温度による変形を利用して、適宜調整し得るように構成すればよい。その他、流路9a,9b,9c中に空気流を阻害する弁を設けておき、当該弁の開放度を熱変形部材の温度による変形を利用して、適宜調整し得るように構成してもよい。
詳しくは、前記熱変形部材の少なくとも一部が、定着ローラ1の内周面における外側板5及び内側板6が配された位置近傍の温度に応じてその形状が変化し得る箇所に配置され、熱変形部材特有の性質である温度に基づく変形に応じて、既述の通り、中心側通気口7や外縁側通気口8a,8b,8cの開口面積や、流路9a,9b,9cそのものの少なくとも一部の断面積、流路9a,9b,9c中に設けられた弁の開放度等を、機械的に制御し得るように構成することで、電気的乃至機械的な複雑な構成に頼ることなく、ごく簡易な構成で前記感温流量調整機構を実現することができる。
以下、例示的な実施形態を5つ挙げて、前記感温流量調整機構を備えた本発明の定着装置をより具体的に説明する。なお、以下の実施形態においては、加熱回転体における端部温度調整機構が設けられた一方の端部のみを抜き出して説明するが、実際には両端部に端部温度調整機構が設けられている。勿論、既述の通り、一方の端部のみに以下説明するような端部温度調整機構が設けられていても、本発明の範疇に含まれる。
[第1の実施形態]
図4は、本発明の例示的一態様である第1の実施形態の定着装置における加熱回転体たる定着ローラ101の端部近傍を表す斜視図である。また、図5は、定着ローラ101の図4における右方向からの側面図である。
これら図面に示されるように、本実施形態においては、定着ローラ101の回転軸方向における端部に、外部に露出する円盤状の外側板105が設けられるとともに、外側板105の内側における定着ローラ101の内周面に接触して円盤状の内側板106が、3組の熱変形板(熱変形部材)112a,112bを挟んで間隔を置いて設けられている。
外側板105の中心(定着ローラ101の回転軸)近傍には中心側通気口107が設けられ、外側板105の外縁近傍には3つの外縁側通気口108が設けられており、3組の熱変形板112a,112bの各組は、それぞれ外縁側通気口108を挟み込みつつ中心側通気口107近傍から放射状に相互に遠ざかるように配される。
図6は、本実施形態における端部温度調整機構を構成する部材の分解斜視図である。ただし、本図においては、3組ある熱変形板112a,112bのうち、1組のみが代表して描かれている。
熱変形板112a,112bは、温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の一対の板状体であって、バイメタルで構成され、湾曲時弧内側になる面が対向している。熱変形板112a,112bにおいて、定着ローラ101の内周面側となる端部がそれぞれ向かい側に折り曲げられ、その端部の側方には、張り出し部112’,112”が形成されている。当該張り出し部112’,112”は、内側板106及び外側板105とともに熱変形板112a,112bを定着ローラ101に組み付けた際に、内側板106及び外側板105の外縁に設けられた切欠き部119’,119”と嵌合する。そして、熱変形板112a,112bが、定着ローラ101の内周面に接触した状態で固定されるようになっている。
熱変形板112a,112bは、その長辺部分が外側板105及び内側板106と略垂直に接触乃至近接しており、熱変形板112a,112b、外側板105及び内側板106(さらに定着ローラ101の内周面)で囲まれた空間は、中心側通気口107と外縁側通気口108とを連通する流路109を構成する。
定着ローラ101が、定着装置の稼働によって回転すると、流路109内に存在する空気が回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口107側から外縁側通気口108側へと流れる気流が生じる。この空気流によって、外部の空気が流路109内に流れ込みかつ内部から吐き出され、定着ローラ101の端部近傍が冷却される。
このとき、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ101端部近傍の温度が上昇するが、その温度上昇によって一対の熱変形板112a,112bは、その曲率が下がって(曲率半径が大きくなって)、図5中の矢印C方向に変形する。すると、一対の熱変形板112a,112bの中心側通気口107近傍の端部が相互に遠ざかり、中心側通気口107に向けた流路109の幅が拡がり、そこを流れる空気流量が増加するため、温度上昇傾向にある定着ローラ101端部近傍の冷却効率が向上する。
その後、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ101の端部近傍の温度が下降するが、その温度下降によって一対の熱変形板112a,112bは、その曲率が上がって(曲率半径が小さくなって)、図5中の矢印D方向に変形する。すると、一対の熱変形板112a,112bの中心側通気口107近傍の端部が相互に近づいて、中心側通気口107に向けた流路109の幅が狭まり、そこを流れる空気流量が減少するため、温度下降傾向に転じていた定着ローラ101端部近傍の冷却効率が低下する。一対の熱変形板112a,112bの中心側通気口107近傍の端部間は、温度によっては、両者が接触して流路109が閉じてしまうように設計しても構わない。
このように、本実施形態によれば、流路109を流れる空気流量が自律的に制御されるため、簡易な構成で、定着ローラ101の軸方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができる。
なお、本実施形態において、本発明における熱変形部材に相当する熱変形板112a,112bは、別体として構成される例を挙げているが、本発明における熱変形部材としては、たとえば、図4及び図5において定着ローラ101の内周面で切り分かれて描かれている箇所において両者がそのまま連続した、1つの部材として構成されていても何ら問題ない。この場合の1つの熱変形部材内における対向する領域同士については、請求項4に係る発明において熱変形部材を構成する「一対の仕切り板」の構成に含めるものとする。また、この場合の、定着ローラ101の内周面に接触固定している板状体の中央領域については、その中央を便宜的に、請求項4に係る発明において熱変形部材の「他方の端部」と称する部位とする。
本実施形態においては、熱変形部材として温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)熱変形板112a,112bを用いた例を挙げたが、逆の変形、即ち、温度の上昇とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の板状体を用いても、面を逆に配置することで、同様の構成の感温流量調整機構を備えた定着装置を構成することができる。
たとえば、本実施形態において、熱変形部材として、熱変形板112a,112bに代えて、温度の上昇とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の一対の板状体を用いた場合には、湾曲時弧外側になる面同士を対向させて配置すればよい。そのように配置しておけば、温度上昇とともに熱変形部材の長手方向の曲率が上がり、両者が背反する状態となって端部が遠ざかり流路が広がる一方、温度下降とともに熱変形部材の長手方向の曲率が下がり、端部が近づいて流路が狭まる。
いずれにしても、熱変形部材は、温度上昇により流路側から後退する向きになるように配置される。
本実施形態においては、流路109の仕切り板に相当する熱変形板112a,112bの両方が熱変形部材を構成する例を挙げたが、どちらか一方のみが熱変形部材を構成し、他方は固定の仕切り板であっても構わない。熱変形部材が一方のみであっても、熱変形部材の変形によって中心側通気口側の端部が変化し、対向する固定の仕切り板との間に形成される流路は、中心側通気口に向けた領域で幅が広狭変化するので、本実施形態の場合と同様に機能するように設計することが可能である。
さらに、本実施形態において、熱変形部材としての熱変形板112a,112bは、一方の端部が中心側通気口107近傍に配置されるとともに、他方の端部が近傍で外縁側通気口108を挟んで対向配置されて、流路109を構成する一対の長尺状の仕切り板として構成される例を挙げたが、熱変形部材としては、温度に応じて長手方向の曲率が変化する長尺状の板状体が、流路の少なくとも一部を構成する状態で、長手方向の何れかの位置(端部であってもよい。)で固定されて、固定されない部位(固定されない端部から固定された部位の手前までの間を指す。)が、温度上昇により流路側から後退する向きに配されれば、熱変形部材によって流路が広狭変化するので、本実施形態の場合と同様に機能するように設計することが可能である。
[第2の実施形態]
図7は、本発明の例示的一態様である第2の実施形態の定着装置における加熱回転体たる定着ローラ201の端部構造を表す概略構成図である。当該図7は、第1の実施形態における定着ローラ101の図4における右方向からの側面図である図5に相当する角度から見た図であり、しかもその一部を拡大して抜き出している。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、外縁側通気口が3つ設けられ、流路が3つ形成されて、3組の端部温度調整機構を具備しているが、図7においてはこれらの内の1組のみを抜き出して拡大表示している。
また、図8は、図7のE−E断面図である。
これら図面に示されるように、本実施形態においては、定着ローラ201の回転軸方向における端部に、外部に露出する円盤状の外側板205が設けられるとともに、外側板205の内側における定着ローラ201の内周面に接触して円盤状の内側板206が、熱変形板(熱変形部材)212、摺動仕切り板(摺動可能に配された仕切り板)213及び固定仕切り板(仕切り板)217を挟んで間隔を置いて設けられている。
外側板205の中心(定着ローラ201の回転軸)近傍には中心側通気口207が設けられ、外側板205の外縁近傍には外縁側通気口208が設けられている。また、内側板206にはスリット216を含む6つのスリット(5つは不図示)が、外側板205にはスリット215,215’ を含む6つのスリット(4つは不図示)が、それぞれ中心側通気口205近傍から外縁側通気口205脇まで放射状に穿たれている。
図9は、端部温度調整機構の一部を構成する3つの部材を抜き出した図であり、(a)は摺動仕切り板213の平面図、(b)は熱変形板212の斜視図、(c)は固定仕切り板217の平面図である。
熱変形板212は、温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の一対の板状体であって、バイメタルで構成され、図9(b)に示されるように、一方の端部に突き出し部212’を有する。かかる熱変形板212は、湾曲時弧外側になる面が定着ローラ201の内周面に対向する状態で、外側板205及び内側板206に穿たれた嵌合孔に突き出し部212’が嵌め込まれて、定着ローラ201内周面に接触状態で固定されている(図7において、外側板205の嵌合孔に突き出し部212’が嵌め込まれた状態が描かれており、内側板206側については不図示。)。
摺動仕切り板213は、図9(a)に示されるように、大略長方形状であり、2つの長辺に張り出し部213’,213”を有し、張り出し部213”の端部には突起部213tが突出している。かかる摺動仕切り板213は、張り出し部213’が内側板206に穿たれたスリット216に、張り出し部213”が外側板205に穿たれたスリット215に、それぞれ摺動可能に嵌合している。また、摺動仕切り板213における定着ローラ201の内周面側の端部が、熱変形板212の突き出し部212’とは反対側の端部近傍と当接している。さらに、スリット215の中心側通気口207側の縁端と突起部213tとの間には、ばね(弾性体)214が嵌め込まれ、ばね214が摺動仕切り板213を熱変形板212との当接部分に押し付ける方向(矢印F方向)に押圧する。
固定仕切り板217は、図9(c)に示されるように、大略長方形状であり、2つの長辺に張り出し部217’,217”を有する。かかる固定仕切り板217は、張り出し部217’が内側板206に穿たれた不図示のスリットに、張り出し部217” が外側板205に穿たれたスリット215’に、それぞれ嵌め込まれるとともに、定着ローラ201の内周面側の端部が当該内周面と当接して、固定配置されている。当該固定仕切り板217は、その長辺部分がスリット215及び内側板206のスリット(不図示)に嵌合し固定されることで一体化した状態になっている。
以上のように各部材が配されることで、摺動仕切り板213、固定仕切り板217、外側板205及び内側板206(さらに定着ローラ201の内周面、熱変形板212)で囲まれた空間が、中心側通気口207と外縁側通気口208とを連通する流路209を構成する。
定着ローラ201が、定着装置の稼働によって回転すると、流路209内に存在する空気が回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口207側から外縁側通気口208側へと流れる気流が生じる。この空気流によって、外部の空気が流路209内に流れ込みかつ内部から吐き出され、定着ローラ201の端部近傍が冷却される。
このとき、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ201端部近傍の温度が上昇するが、その温度上昇によって熱変形板212の曲率が下がり(曲率半径が大きくなり)、固定されていない端部が定着ローラ201の内周面に近づく。そして、当該変形した端部に当接する摺動仕切り板213が、ばね214の押圧力によって、定着ローラ201の内周面方向(図7中の矢印F方向)に摺動する。すると、摺動仕切り板213の中心側通気口207近傍の端部が固定仕切り板217の同端部から遠ざかり、中心側通気口207に向けた流路209の幅が拡がって、そこを流れる空気流量が増加するため、温度上昇傾向にある定着ローラ201端部近傍の冷却効率が向上する。
その後、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ201の端部近傍の温度が下降するが、その温度下降によって熱変形板212の曲率が上がり(曲率半径が小さくなり)、固定されていない端部が中心側通気口207側に近づく。そして、当該変形した端部に当接する摺動仕切り板213が、ばね214の押圧力に抗って、中心側通気口207方向(図10中の矢印G方向)に摺動する。ここで、図10は、図7に表された定着ローラ201の端部が温度低下した際の当該端部構造の状態を表す概略構成図である。
摺動仕切り板213の摺動により、摺動仕切り板213の中心側通気口207近傍の端部が固定仕切り板217の同端部に近づいて、中心側通気口207に向けた流路209の幅が狭まり、そこを流れる空気流量が減少するため、温度下降傾向に転じていた定着ローラ201端部近傍の冷却効率が低下する。
なお、摺動仕切り板213の中心側通気口207近傍の端部は、本実施形態の例では、如何に低温となっても固定仕切り板217と間隙を保つように配置されているが、温度によっては、両者が接触して流路209が閉じてしまうように設計しても構わない。
このように、本実施形態によれば、流路209を流れる空気流量が自律的に制御されるため、簡易な構成で、定着ローラ201の軸方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができる。
なお、本実施形態において、対向する仕切り板の内、一方の摺動仕切り板213のみが摺動可能に配されているが、固定仕切り板217の側も摺動可能に構成されていても構わない。この場合、対向する仕切り板同士を線対称に構成すればよい。本実施形態を例にすれば、摺動仕切り板213と線対称の構成を固定仕切り板217の側にも配することで、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することができる。ただし、熱変形部材は、両仕切り板に共用させることができる。熱変形部材を共用させる具体的な構成例は、次の第3の実施形態及びその変形例において説明する。
本実施形態においては、熱変形部材として温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)熱変形板212を用いた例を挙げたが、逆の変形、即ち、温度の上昇とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の板状体を用いても、面を逆に配置することで、同様の構成の感温流量調整機構を備えた定着装置を構成することができる。
たとえば、本実施形態において、熱変形部材として、熱変形板212に代えて、温度の上昇とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の板状体を用いた場合には、湾曲時弧内側になる面を定着ローラ201の内周面に対向させて配置すればよい。そのように配置しておけば、温度上昇とともに熱変形部材の長手方向の曲率が上がり、固定されていない端部が定着ローラ201の内周面に近づき、これに当接する摺動仕切り板213が定着ローラ201の内周面方向(図7中の矢印F方向)に摺動して流路が広がる一方、温度下降とともに熱変形部材の長手方向の曲率が下がり、同端部が中心側通気口207側に近づき、これに当接する摺動仕切り板213が中心側通気口207方向(図10中の矢印G方向)に摺動して流路が狭まる。
いずれにしても、熱変形部材は、温度下降により加熱回転体の内周面に近づく向きになるように配置される。
[第3の実施形態]
図11は、本発明の例示的一態様である第3の実施形態の定着装置における加熱回転体たる定着ローラ301の端部構
造を表す概略構成図である。当該図11は、第1の実施形態における定着ローラ101の図4における右方向からの側面図である図5に相当する角度から見た図であり、しかもその一部を拡大して抜き出している。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、外縁側通気口が3つ設けられ、流路が3つ形成されて、3組の端部温度調整機構を具備しているが、図11においてはこれらの内の1組のみを抜き出して拡大表示している。
本実施形態においては、定着ローラ301の回転軸方向における端部を封止するように、外部に露出する円盤状の外側板305が設けられるとともに、第1の実施形態と同様、外側板305の内側における定着ローラ301の内周面に接触して円盤状の内側板(不図示)が、熱変形板(熱変形部材)312、天板(可動仕切り板)318及び摺動仕切り板(摺動可能に配された仕切り板)313,313’を挟んで間隔を置いて設けられている。
外側板305の中心(定着ローラ301の回転軸)近傍には中心側通気口307が設けられ、外側板305の外縁近傍には外縁側通気口308が設けられている。
本実施形態において、摺動仕切り板313は、第2の実施形態における摺動仕切り板213と近似した形状・構造で、外側板305及び内側板(不図示)の双方と摺動可能に設けられている。すなわち、外側板305との関係について述べれば、摺動仕切り板313は、その張り出し部が外側板305に穿たれたスリット315に、摺動可能に嵌合し、スリット315の中心側通気口307側の縁端と摺動仕切り板313の張り出し部に設けられた突起部との間には、ばね(弾性体)314が嵌め込まれ、ばね314が摺動仕切り板313を定着ローラ301の内周面方向(矢印H方向)に押圧する。
このように、摺動仕切り板313は、第2の実施形態における摺動仕切り板213と同様の構成で配されるが、第2の実施形態において熱変形板212と当接している端部が、本実施形態においては、図11に示されるように天板318に当接している点が異なる。
また、本実施形態においては、第2の実施形態における固定仕切り板217の代わりに、摺動仕切り板313’が、ばね(弾性体)314’とともに設けられる。この摺動仕切り板313’及びばね314’は、外側板305に設けられた外縁側通気口308を挟んで、摺動仕切り板313に対向配置される。正確には、外側板305の半径であって外縁側通気口308中央を通る線を基準に、摺動仕切り板313及びばね314と線対称の位置に摺動仕切り板313’及びばね314’が設けられる。
摺動仕切り板313’及びばね314’は、配される位置以外については、天板318に当接する点を含めて全て摺動仕切り板313及びばね314と同様の構成であるため、その詳細な説明は割愛する。
天板318は、一対の摺動仕切り板313,313’を定着ローラ301の内周面側の端部で橋渡し、外縁側通気口308から露出する位置に、外側板305及び内側板(不図示)と略垂直に接触乃至近接状態で支持され、一対の摺動仕切り板313,313’の摺動移動に連れて移動する。したがって、天板318は、ばね314,314’によって、(一対の摺動仕切り板313,313’を介して)間接的に、定着ローラ301の内周面側押圧された状態になっている。当該天板318は、外縁側通気口308からその一部が外部に露出する領域に位置する際、外縁側通気口308における流路309側のみが流路309に連通する開口面積になる。
熱変形板312は、温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の一対の板状体であって、バイメタルで構成され、湾曲時弧内側になる面が天板318に対向しつつ、その両端が天板318に当接し、かつ、弧外側になる面の中央部が定着ローラ301の内周面に当接しており、天板318と定着ローラ301の内周面との間に嵌め込まれた状態になっている。
熱変形板312は、湾曲の程度によって、天板318と定着ローラ301の内周面との間に嵌め込まれた部分の厚み、すなわち、両端を結ぶ線(天板318の当接面に相当)と熱変形板312の長手方向の中心点(定着ローラ301との当接点)との距離が変化する状態になっている。具体的には、温度の下降とともに前記厚みが増し、上昇とともに前記厚みが減ずる。
以上のように各部材が配されることで、一対の摺動仕切り板313,313’、天板318、外側板305及び内側板306で囲まれた空間が、中心側通気口307と外縁側通気口308とを連通する流路309を構成する。そのため、外縁側通気口308は、外側板305に形成された孔の全面積の内、定着ローラ301の内周面側の領域が天板318に阻まれて閉ざされ、天板318よりも中心側通気口307側の領域のみが開口面積となっている。
定着ローラ301が、定着装置の稼働によって回転すると、流路309内に存在する空気が回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口307側から外縁側通気口308側へと流れる気流が生じる。この空気流によって、外部の空気が流路309内に流れ込みかつ内部から吐き出され、定着ローラ301の端部近傍が冷却される。
このとき、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ301端部近傍の温度が上昇するが、その温度上昇によって熱変形板312の曲率が下がり(曲率半径が大きくなり)、前記厚みが減ずるため、これに当接する摺動仕切り板313,313’が、ばね314,314’の押圧力によって、定着ローラ301の内周面方向(図11中の矢印H方向)」に摺動し、それに連れて天板318も定着ローラ301の内周面方向に移動する。すると、摺動仕切り板313,313’の中心側通気口307近傍の端部同士が遠ざかり、中心側通気口307に向けた流路309の幅が拡がるとともに、天板318の移動により外縁側通気口308の開口面積が増大し、結果、流路309を流れる空気流量が増加するため、温度上昇傾向にある定着ローラ301端部近傍の冷却効率が向上する。
その後、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ301の端部近傍の温度が下降するが、その温度下降によって熱変形板312は、その曲率が上がり(曲率半径が小さくなり)、前記厚みが増大ずるため、これに当接する摺動仕切り板313,313’が、ばね314,314’の押圧力に抗って、中心側通気口307方向(図12中の矢印I方向)」に摺動し、それに連れて天板318も中心側通気口307方向に移動する。ここで、図12は、図11に表された定着ローラ301の端部が温度低下した際の当該端部構造の状態を表す概略構成図である。
摺動仕切り板313,313’の摺動により、摺動仕切り板313,313’の中心側通気口307近傍の端部同士が近づいて、中心側通気口307に向けた流路309の幅が狭まるとともに、天板318の移動により外縁側通気口308の開口面積が減少し、結果、流路309を流れる空気流量が減少するため、温度下降傾向に転じていた定着ローラ301端部近傍の冷却効率が低下する。
なお、摺動仕切り板313,313’の中心側通気口307近傍の端部は、本実施形態の例では、如何に低温となっても相互に間隙を保つように配置されているが、温度によっては、両者が接触して流路309が閉じてしまうように設計しても構わない。また、外縁側通気口308の開口面積についても同様に、天板318が外縁側通気口308よりも中心側通気口307側に移動して、開口面積がゼロになるように設計しても構わない。
このように、本実施形態によれば、流路309を流れる空気流量が自律的に制御されるため、簡易な構成で、定着ローラ301の軸方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができる。
なお、本実施形態において、熱変形板312は、その両端が天板318に当接し、かつ、弧外側になる面の中央部が定着ローラ301の内周面に当接した態様を例示しているが、上下反転させて、その両端が定着ローラ301の内周面に当接し、かつ、弧外側になる面の中央部が天板318に当接した態様であっても構わない。熱変形板312を上下反転させても、本実施形態では、曲率変化に伴う前記「厚み」の変化を利用しているため、同様に機能する定着装置を構成することができる。
また、外縁側通気口308の開口面積を増減させる機能については、摺動仕切り板313,313’を配することなく、ばね314,314’等の弾性部材によって直接的に天板318を定着ローラ301の内周面方向に押圧する構成であっても問題なく奏される。したがって、固定された仕切り板と天板318等の可動仕切り板で流路を形成し、当該可動仕切り板を弾性部材によって直接的に押圧する構成であっても、外縁側通気口の開口面積を増減させる点について、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することができる。
さらに、本実施形態では、可動仕切り板に相当する天板318と加熱回転体に相当する定着ローラ301の内周面との間に、熱変形部材に相当する熱変形板312が嵌め込まれた状態になっているが、熱変形部材が嵌め込まれる箇所において、可動仕切り板に対向する面は、加熱回転体の内周面に限定されるものではなく、外側板との位置関係が相対的に固定された面(たとえば、外側板から突設された可動仕切り板と平行な面)であればよく、当該固定面と前記可動仕切り板との間に熱変形部材が嵌め込んだ状態にすることで、外縁側通気口の開口面積を増減させる点について、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することができる。
このような構成の場合には、可動仕切り板は、天板318の如く外側板の略半径方向かつ前記可動仕切り板の略垂直方向である必要すらなく、外縁側通気口にその一部が露出する位置で流路の内外方向に変位可能であれば、可動仕切り板を任意の角度で支持して、それに対向した「外側板との位置関係が相対的に固定された面」との間に熱変形部材を嵌め込んで、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することが可能である。
勿論、本実施形態のように、可動仕切り板の変位が、外側板の略半径方向かつ前記可動仕切り板の略垂直方向であり、前記外側板と相対的に固定された面が、前記加熱回転体の内周面であるように構成することがより好ましい。このように構成すれば、熱変形部材が加熱回転体の端部近傍における内周面と当接しており、前記加熱回転体の端部近傍の温度変化に対してより感度よく反応して流路中を流れる空気流量が自律的に調整されるため、簡易な構成で、加熱回転体の軸方向における温度分布のばらつきをより精度よく抑制することができる。
ところで、熱変形部材は、可動仕切り板とそれに対向する面との間に嵌め込まれる上記構成のほか、変形例として、第2の実施形態における熱変形板212のように、その一端乃至近傍が定着ローラ301の内周面または近傍に固定され、他方の端部のみが天板318に接触するような構成であっても、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することができる。すなわち、固定されない端部が、温度下降によって定着ローラ301の内周面側に近づき、温度上昇によって中心側通気口207側に近づくので、当該端部近傍を天板318に当接させることで、本実施形態と同様の作用及び効果を奏する定着装置を構成することができる。
この変形例においても、第2の実施形態と同様、湾曲時弧内あるいは弧外になる面のいずれの面をどちらに向けても、同様に機能するように設計することが可能である。
また、この変形例において、熱変形部材の一端乃至近傍は、加熱回転体の内周面または近傍に固定される場合のほか、前記外側板との位置関係が相対的に固定されるようにすれば、外縁側通気口の開口面積を増減させる点について、本実施形態と同様に機能する定着装置を構成することができる。
このような構成の場合には、可動仕切り板は、天板318の如く外側板の略半径方向かつ前記可動仕切り板の略垂直方向である必要すらなく、外縁側通気口にその一部が露出する位置で流路の内外方向に変位可能であれば、可動仕切り板を任意の角度で支持して、それを流路外から直接的または間接的に、熱変形部材の固定されない他端または近傍が当接した状態にして、本実施形態及び上記変形例と同様に機能する定着装置を構成することが可能である。
勿論、上記変形例のように、可動仕切り板の変位が、外側板の略半径方向かつ前記可動仕切り板の略垂直方向であり、前記熱変形部材の固定される部位が前記加熱回転体の内周面または近傍であるように構成することがより好ましい。このように構成すれば、熱変形部材が加熱回転体の端部近傍における内周面と当接または接近しており、前記加熱回転体の端部近傍の温度変化に対してより感度よく反応して流路中を流れる空気流量が自律的に調整されるため、簡易な構成で、加熱回転体の軸方向における温度分布のばらつきをより精度よく抑制することができる。
[第4の実施形態]
図13は、本発明の例示的一態様である第4の実施形態の定着装置における加熱回転体たる定着ローラ401の端部構造を表す概略構成図である。当該図13は、本実施形態における定着ローラ401の端部近傍の断面図として描かれている。本実施形態においては、図面における上下一対で構成される端部温度調整機構を具備している。
図13に示されるように、本実施形態においては、定着ローラ401の回転軸方向における端部に、外部に露出する円盤状の外側板405が設けられるとともに、外側板405の内側における定着ローラ401の内周面に接触して円盤状の内側板406が、熱変形板(熱変形部材)412、仕切り板413、ばね(弾性体)414を挟んで間隔を置いて設けられている。
図14は、本実施形態における端部温度調整機構を構成する部材の分解斜視図である。ただし、本図においては、一対で構成される端部温度調整機構のうち、一方のみが代表して描かれている。
図14に示されるように、一対の仕切り板413,413’が、外側板405及び内側板406の間に、これらに対して垂直に挟み込まれている。
外側板405の中心(定着ローラ401の回転軸)近傍には、他の実施形態と同様、中心側通気口407が設けられているが、本実施形態においては、外側板405の外縁近傍には外縁側通気口に相当する孔は穿たれていない。
また、内側板406にはスリット416,416’を含む4つのスリットが、外側板405にはスリット415,415’ を含む4つのスリットが、それぞれ中心側通気口205近傍から放射状に穿たれている。そして、スリット415,416には仕切り板413に設けられた張り出し部が、スリット415’,416’には仕切り板413’に設けられた張り出し部が、それぞれ嵌合している。
スリット416,416’と仕切り板413,413’の張り出し部とは、嵌合し固定されることで一体化しており、内側板406の定着ローラ401の回転軸方向位置が固定されている。これに対して、スリット415,415’と仕切り板413,413’の張り出し部とは、固定されておらず、外側板405が定着ローラ401の回転軸方向(図13における矢印L方向とその逆方向)に移動可能に支持されている。
内側板406の一対のスリット416,416’間には、外側板405に向けて突起部419が設けられており、当該突起部419には穿孔419’が設けられている。また、外側板405の一対のスリット415,415’間の突起部419に対応する位置には、内側板406に向けて突起部420が設けられており、当該突起部420には穿孔420’が設けられている。この穿孔419’,420’には、ばね(弾性体)414の両端部が引っ掛けられて接続され、内側板406と外側板405とを引き寄せるように作用している。
内側板406と外側板405との間には、さらに、ばね414に並列して、熱変形板412が配される。熱変形板412は、温度の下降とともに長手方向の曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)長尺状の一対の板状体であって、一般にバイメタルと称されている部材であり、その一端が内側板406に、他端が外側板405にそれぞれ接するようにして両者間に配されている。
本実施形態の定着装置においては、ばね414で内側板406と外側板405とを引き寄せる作用を熱変形板412で突っ張って阻止している状態になっており、両側板の間隙は、温度によって湾曲して変化する熱変形板412の全長(端部同士の距離)と一致する。
図13に示す低温状態では、熱変形板412の長手方向の曲率が高く(曲率半径が小さく)、その全長が短くなっており、内側板406と外側板405との間隙が狭く、外側板405は定着ローラ401に納まっている。一方、高温状態になると、図15に示されるように、熱変形板412の長手方向の曲率が低く(曲率半径が大きく)、その全長が長くなり、内側板406と外側板405との間隙も広がり、外側板405が定着ローラ401の端部から突出した位置に(矢印M方向へ)移動する。ここで、図15は、図13に表された定着ローラ401の端部が温度上昇した際の当該端部構造の状態を表す概略構成図である。
図15に示されるように、外側板405が定着ローラ401の端部から突出した位置にあると、外側板405と定着ローラ401の縁端との間に間隙408が生じる。この間隙が、本発明にいう外縁側通気口を構成する。そして、内側板406と外側板407との間隙全体が、中心側通気口407と外縁側通気口を構成する間隙408とを連通する流路を構成する。
定着ローラ401が、定着装置の稼働によって回転し、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ401端部近傍の温度が上昇するが、その温度上昇によって熱変形板412の曲率が下がって(曲率半径が大きくなって)、図15に示されるように、外側板405が矢印M方向に移動して定着ローラ401の端部から突出し、間隙408が生じる。すると、既述のように中心側通気口407と間隙408とを連通する流路内に存在する空気が、定着ローラ401の回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口407側から間隙408側へと流れる気流が生じ、外部の空気が当該流路内に流れ込みかつ内部から吐き出され、定着ローラ401の端部近傍が冷却される。より高温になればなるほど、熱変形板412の曲率はより下がり、定着ローラ401の端部からの外側板405の突出の程度も大きくなり、それに連れて間隙408の開口面積が大きくなるため、前記流路を流れる空気流量も増加し、温度上昇傾向にある定着ローラ401端部近傍の冷却効率が一層向上する。
その後、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ401の端部近傍の温度が下降するが、より低温になればなるほど、熱変形板412の曲率は上がり、外側板405が矢印L方向に移動して、定着ローラ401の端部からの外側板405の突出の程度も小さくなり、それに連れて間隙408の開口面積が小さくなるため、前記流路を流れる空気流量も減少し、温度上昇傾向に転じていた定着ローラ401端部近傍の冷却効率が低下する。そして、一層低温状態になれば、図13に示すように、熱変形板412の曲率はより上がり、定着ローラ401に外側板405に納まった状態になり、図15における間隙408が消滅し、前記流路内を空気が流れなくなり、空冷による冷却効果が失われる。
このように、本実施形態によれば、前記流路を流れる空気流量(本実施形態においては、流量ゼロを含む。)が自律的に制御されるため、簡易な構成で、定着ローラ401の軸方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができる。
[第5の実施形態]
図16は、本発明の例示的一態様である第5の実施形態の定着装置における加熱回転体たる定着ローラ501の端部構造を表す概略構成図である。当該図16は、第1の実施形態における定着ローラ101の図4における右方向からの側面図である図5に相当する角度から見た図である。
また、図17は、本実施形態における端部温度調整機構を構成する部材の分解斜視図である。ただし、本図においては、3組あるうち1組の仕切り板513,513’のみが代表して描かれている。
これら図面に示されるように、本実施形態においては、定着ローラ501の回転軸方向における端部に、外部に露出する円盤状の外側板505が設けられるとともに、外側板505の内側における定着ローラ501の内周面に接触して円盤状の内側板506が、3組6枚の仕切り板513,513’を挟んで間隔を置いて設けられている。
外側板505の中心(定着ローラ501の回転軸)近傍には中心側通気口507が設けられ、外側板505の外縁近傍には3つの外縁側通気口508が設けられており、3組の仕切り板513,513’の各組は、それぞれ外縁側通気口508を挟み込みつつ中心側通気口507近傍から放射状に相互に遠ざかるように配される。
なお、仕切り板513,513’の形状・構造や内側板506及び外側板505との結合の態様は、第2の実施形態における固定仕切り板217の形状・構造や内側板206及び外側板205との結合の態様と同様なので、その詳細な説明は割愛する。
本実施形態においては、外縁側通気口508の開口部に、板状の熱変形片(熱変形部材、板状片)512が接続している。
図18は、本実施形態における外縁側通気口508周辺の拡大斜視図である。
熱変形片512は、温度の上昇とともに曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)板状の金属片であり、一般にバイメタルと称されている部材であり、その湾曲しない一辺が外縁側通気口508の縁に固定されて、低温時全体として外縁側通気口508の一部を塞ぎ得る位置に配されている。なお、ここでいう「低温」とは、定着ローラ501の設定温度範囲の下限時における熱変形片512の温度に比して低温であることを意味し、外縁側通気口の位置や数、各種材料の選択、構造等各種条件により変動するため、一義的に温度を定義できるものではない。
熱変形片512と外側板505との接続は、別体の物を溶接や接着、あるいはビス止め等によって固着させてもよいし、部位により材料を変えて一体成型して製造しても構わない。また、用いる熱変形部材としては、熱変形により湾曲するのが必ずしも長手方向である必要はなく、短い辺が湾曲する物であってもよいし、正方形の物であってもよい。いずれにしても、熱変形部材の湾曲しない一辺が外縁側通気口の縁に固定するように構成すれば構わない。
以上のように各部材が配されることで、仕切り板513,513’ 、外側板505及び内側板506(さらに定着ローラ501の内周面)で囲まれた空間が、中心側通気口507と外縁側通気口508とを連通する流路509を構成する。
定着ローラ501が、定着装置の稼働によって回転すると、流路509内に存在する空気が回転による遠心力で外側に引っ張られ、中心側通気口507側から外縁側通気口508側へと流れる気流が生じる。この空気流によって、外部の空気が流路509内に流れ込みかつ内部から吐き出され、定着ローラ501の端部近傍が冷却される。
このとき、たとえば、小サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ501端部近傍の温度が上昇するが、その温度上昇によって熱変形片512の曲率が上がり(曲率半径が小さくなり)、矢印J方向に捲り上がる。すると、外縁側通気口508の一部を塞ぐように位置していた熱変形片512が後退して、外縁側通気口508の開口面積が大きくなり、そこを流れる空気流量が増加するため、温度上昇傾向にある定着ローラ201端部近傍の冷却効率が向上する。
その後、たとえば、大サイズの記録材が連続的に通紙されると、定着ローラ501の端部近傍の温度が下降するが、その温度下降によって熱変形片512の曲率が下がり(曲率半径が大きくなり)、矢印K方向に戻る。すると、外縁側通気口508から後退していた熱変形片512が、外縁側通気口508の一部を塞ぐ方向へと沈み込み、外縁側通気口508の開口面積が小さくなって、そこを流れる空気流量が減少するため、温度下降傾向に転じていた定着ローラ501端部近傍の冷却効率が低下する。
なお、熱変形片512は、本実施形態の例では、如何に低温となっても外縁側通気口508と間隙を保つように配置されているが、温度によっては、両者が接触して開口面積がゼロになるように設計しても構わない。
このように、本実施形態によれば、流路509を流れる空気流量が自律的に制御されるため、簡易な構成で、定着ローラ501の軸方向における温度分布のばらつきを精度よく抑制することができる。
なお、本実施形態においては、熱変形部材として、温度の上昇とともに曲率が上がる(曲率半径が小さくなる)熱変形片512を用いた例を挙げているが、温度の上昇とともに曲率が下がる(曲率半径が大きくなる)熱変形片を用いて同様の構成とすることも可能である。この場合、既述の意味における「低温」で曲率が大きく(曲率半径が小さく)なった状態で、全体として外縁側通気口の少なくとも一部を塞いで開口面積が小さくなり、高温で曲率が小さく(曲率半径が大きく)なった状態で、外縁側通気口の開口面積が大きくなるように、熱変形片の接続の角度を調整すればよい。
以上、本発明について、5種類の好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の定着装置はこれら実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、加熱側及び加圧側の双方とも円筒体(ローラ)である、いわゆる2ローラ方式の定着装置を例に挙げて説明しているが、本発明の構成は加熱側のみが特徴的なのであり、加圧側がベルト状やパット状等如何なる構成であっても適用可能である。
また、本発明の定着装置を備えた本発明の画像形成装置として、4色の作像ユニットが並列配置されてなる、いわゆるタンデム方式のフルカラー画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明の定着装置は、熱及び圧力によって定着する定着装置を備えたあらゆる画像形成装置に適用可能であり、勿論上記例に限定されるものではない。したがって、1つの感光体に4つの画像形成ユニットで順次各色画像を形成して、その都度中間転写体または記録材に転写し、積層してフルカラー画像を形成するいわゆるロータリー方式の画像形成装置や、さらには単色画像を形成するモノクロタイプの画像形成装置であっても、本発明の定着装置を適用可能である。
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の定着装置及び画像形成装置を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の定着装置乃至画像形成装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。