JP5834476B2 - プレス成形金型、及び、金型によるかじり検知方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス成形金型、及び、金型によるかじり検知方法に関し、詳しくは、プレス成形時にワークに生じるかじりを検知する精度を向上させる技術に関する。
従来、板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型が用いられている。このようなプレス成形金型で厚板鋼板をプレス加工する場合は荷重(ワーク成形面の加工面圧)が大きくなるため、ワークにいわゆる「かじり」と呼ばれる傷が発生したり、ワークが破損したりすることにより、成形不良となる場合がある。
上記のようなワークのかじりや破損の発生を検知するため、金型におけるワーク成形面の加工面圧が適正か否かを判定する技術が知られている。具体的には、金型にひずみゲージを設置することにより、金型におけるワーク成形面の加工面圧を測定する技術が公知となっている(例えば、特許文献1を参照)。
また、ワークの側方におけるワーク成形面では微小部位で加工面圧が変化するため、ダイにおける金型とプレス機との間に小型のロードセルを複数並列して設置し、ワークの側方におけるワーク成形面の加工面圧を測定する技術が公知となっている(例えば、特許文献2を参照)。
一方、複数の薄板鋼板を積層してプレス成形金型を形成する技術も公知となっている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照)。
特開2009−12043号公報 特開2010−46698号公報 特開2002−178061号公報 特開2004−337919号公報
前記特許文献1に記載の技術においては、ひずみゲージを設置していない部位でワーク成形面の加工面圧が上昇してかじりが発生する場合は、当該部位の加工面圧を正確に測定することができなかった。
また、前記特許文献2に記載の技術においては、図5(a)及び(b)に示す如く、ロードセル相互の隙間のような微小部位でワーク成形面の加工面圧が上昇してかじりが発生する場合は、当該部位の加工面圧を正確に測定することができなかった。
一方、前記特許文献3及び特許文献4に記載の技術は、複数の薄板鋼板を積層することによってワークの成形精度を向上させるものであり、ワーク成形面の加工面圧を測定するためのものではなかった。
そこで本発明は、上記現状に鑑み、ワーク成形面の加工面圧が微小部位で上昇した場合であっても、当該部位の加工面圧を正確に測定することができ、プレス成形金型において生じるかじりを検知することができる、プレス成形金型、及び、金型によるかじり検知方法を提供するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型であって、前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方は、複数の鋼板が、該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層されて形成された積層部を備え、前記鋼板のうち少なくとも一つには、プレス加工時における所定の方向のひずみを検知する第一ひずみゲージと、該第一ひずみゲージが検知するひずみの方向と直交する方向のひずみを検知する第二ひずみゲージと、を具備する摩擦係数測定手段が配設され、前記摩擦係数測定手段が、前記第一ひずみゲージによる該第一ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第二ひずみゲージによる該第二ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板の縦弾性係数と、から、プレス加工時の、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の摩擦係数を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知するものである。
請求項2においては、板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型であって、前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方は、複数の鋼板が、該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層されて形成された積層部を備え、隣接する鋼板に対して絶縁された鋼板及び前記ワークに接続された電圧計を具備する温度測定手段を備え、温度測定手段は、前記電圧計で前記鋼板と前記ワークとの間に生じる熱起電力を測定し、該熱起電力に基づいて、プレス加工時の、前記電圧計が接続された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の温度を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知するものである。
請求項3においては、板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型によるかじり検知方法であって、前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方に、複数の鋼板を該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層した積層部を形成し、前記鋼板のうち少なくとも一つに、所定の方向のひずみを検知する第一ひずみゲージと、該第一ひずみゲージが検知するひずみの方向と直交する方向のひずみを検知する第二ひずみゲージと、を具備する摩擦係数測定手段を配設し、前記第一ひずみゲージによる該第一ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第二ひずみゲージによる該第二ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板の縦弾性係数と、から、プレス加工時の、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の摩擦係数を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知するものである。
請求項4においては、板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型によるかじり検知方法であって、前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方に、複数の鋼板を該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層した積層部を形成し、隣接する鋼板に対して絶縁された鋼板及び前記ワークに接続された電圧計を具備する温度測定手段を配設し、前記電圧計で前記鋼板と前記ワークとの間に生じる熱起電力を測定し、該熱起電力に基づいて、プレス加工時の、前記電圧計が接続された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の温度を測定することにより、前記鋼板のうち少なくとも一つにおいて、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
本発明により、プレス成形金型において、ワーク成形面の加工面圧が微小部位で上昇した場合であっても、当該部位の加工面圧を正確に測定することができ、プレス成形金型において生じるかじりを検知することができる。
(a)及び(b)はプレス成形金型を備えたプレス成形装置の概略図。 (a)は第一実施形態に係るプレス成形金型の拡大図、(b)は同じくプレス成形金型が備える鋼板を示した図、(c)は同じくプレス成形金型の断面図。 (a)は同じくプレス成形金型でプレス成形した際の鋼板における面圧の変化を示した図、(b)は第二実施形態に係るプレス成形金型が備える鋼板を示した図。 (a)は第三実施形態に係るプレス成形金型の拡大図、(b)は同じくプレス成形金型でプレス成形した際の鋼板における起電力の変化を示した図。 (a)及び(b)は従来技術に係るプレス成形金型の拡大図。
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
[プレス成形装置10の構成]
まず始めに、第一実施形態に係るプレス成形金型を備えたプレス成形装置10の概略について、図1(a)及び(b)を用いて説明する。
図1(a)及び(b)に示す如く、プレス成形装置10は上下に対向して配設されたポンチ21とダイ12とを備える。ポンチ21は上方に突出した状態で床面に配置されている。ダイ12はプレス機11に配設されており、プレス機11は例えば油圧機構等で構成される図示しないスライド機構によって上下に昇降可能に構成されている。換言すれば、ダイ12は昇降可能なプレス機11に配設されることにより、ポンチ21に対して近接離間可能に構成されているのである。
プレス成形装置10でワークWをプレス成形する際は、図1(a)に示す如く、ポンチ21の上面に板状の素材であるワークWを載置した状態で、矢印Aの方向にプレス機11を下降させる。そして、図1(b)に示す如く、ダイ12の内部にポンチ21を挿入することにより、ワークWをポンチ21及びダイ12の形状に沿って略U字状に塑性変形させるのである。
[第一実施形態]
次に、第一実施形態に係るプレス成形金型の構成について、図2(a)から(c)を用いて説明する。なお、図2(a)は図1(b)におけるプレス成形装置10の成形部分αの拡大図であり、プレス機11は省略して記載している。
本実施形態に係るプレス成形金型におけるダイ12は、複数の鋼板12a・12a・・・が、そのワークW側の周縁部において、プレス加工時にワークWの成形面(ワークWのうち、塑性変形により曲げ加工がなされる部分の表面。以下、「ワーク成形面」とする)と接するように、図2(a)中の矢印に示す前後方向に積層されて形成されている。そして本実施形態においては、それぞれの鋼板12a・12a・・・には、プレス加工時におけるワーク成形面に生じるかじりを検知するかじり検知手段が配設されている。
具体的には、鋼板12a・12a・・・は図2(a)から(c)に示す如く、ひずみゲージ13・13・・・及び計測器15を具備する圧力測定手段をかじり検知手段として備えている。より詳細には、鋼板12a・12a・・・にはその前後の両面において溝部12b・12b・・・が形成され、この溝部12b・12b・・・におけるワークW側の端部に、ワークW側の周縁部に向けて上下方向に並べて配設されるひずみゲージ13・13・・・が収容される。そして、ひずみゲージ13・13・・・により、ひずみゲージ13・13・・・が設けられた側のワークWの周縁部のひずみを検出することが可能となっている。
また、鋼板12a・12a・・・においては、溝部12b・12b・・・に沿って、ひずみゲージ13・13・・・と計測器15とを接続するリード線が収容されるのである。そして、前記の如く鋼板12a・12a・・・を前後方向に積層した際に、隣接する鋼板12a・12a・・・に配設されたひずみゲージ13・13・・・やリード線が相互に干渉しないように構成されている。
そして、本実施形態に係るプレス成形金型では、計測器15により、ひずみゲージ13・13・・・による各鋼板12a・12a・・・の端部(周縁部)におけるひずみ量の検出値と、ひずみゲージ13・13・・・が配設された鋼板12a・12a・・・の縦弾性係数と、から、プレス加工時におけるワーク成形面と接する鋼板12a・12a・・・の周縁部にかかる面圧を測定する。具体的には、計測器15により、プレス加工時における鋼板12a・12a・・・の周縁部において、同じ上下位置で前後面のそれぞれに配置された二個のひずみゲージ13・13で測定したひずみ量の平均値を算出して、当該部位におけるひずみ量とするのである。そして、ひずみゲージ13・13・・・で検出したひずみ量と、鋼板12a・12a・・・の縦弾性係数と、の積を演算することにより、鋼板12a・12a・・・における応力を算出する。そして、この応力から、プレス加工時に、前記ひずみゲージが配設された鋼板12a・12a・・・における前記ワーク成形面と接する周縁部にかかる面圧を測定するのである。
本実施形態に係るプレス成形金型の、ワークにかじりが発生しなかった部位とかじりが発生した部位とにおける鋼板12aで測定した面圧の変化の違いについて、具体的に図3(a)を用いて説明する。なお、図3(a)中における「スライド変位量」とは、プレス機11の下降量、即ちプレス機11及びダイ12が下方にスライドした変位量を示している。
図3(a)においては、ワークWにかじりが発生しなかった部位における面圧の変化を点線(面圧1:かじりなし)で、ワークWにかじりが発生した部位における面圧の変化を一点鎖線(面圧2:かじりあり)で表している。
図3(a)中の点線に示す如く、ワークWにかじりが発生しなかった部位においては、鋼板12aで測定する面圧はスライド変位量が増加するに伴って滑らかに増加し、スライド変位量が最大となる前から滑らかに減少していく。一方、ワークWにかじりが発生した部位においては、鋼板12aで測定する面圧はスライド変位量の増減に対応して増減するものの、その増加と減少は不規則であり、かつ急激に繰り返される。
このように、ワークWにかじりが発生した場合は、かじりが発生しなかった場合と比較して、鋼板12aの周縁部で検知したひずみに基づいて測定される面圧値の推移グラフの形状が大きく異なる。これにより、作業者はワークWのうち、面圧の変化に異常がある部位において、かじりが発生したことを認識することができるのである。
上記の如く、本実施形態に係るプレス成形金型においては、積層された鋼板12a・12a・・・のそれぞれでひずみを検知することにより、それぞれの部位における加工面圧を正確に測定することができる。つまり、ワークWにおけるどの部位でかじりが発生しても、ワーク成形面の加工面圧の上昇を正確に測定することが可能となるのである。
換言すれば、本実施形態に係るプレス成形金型は、ワーク成形面の加工面圧が微小部位で上昇した場合であっても、当該部位の加工面圧を正確に測定することができ、プレス成形金型において生じるかじりを検知することができるのである。
なお、本実施形態に係るプレス成形金型のダイ12においては、前後方向の全般に亘って、かじり検知手段であるひずみゲージ13・13・・・を備える複数の鋼板12a・12a・・・が積層される積層部として構成としたが、このような鋼板12a・12a・・・はダイ12のうちワークWにかじりが発生する可能性のある部分に限定して、その一部が積層部とされる構成とすることも可能である。
また、鋼板12a・12a・・・の積層方向は前後方向に限定されるものではなく、上下方向に積層する構成とすることも可能である。ただし、ワークWにおけるかじりはプレス方向に発生する場合が多いことから、鋼板12aごとにかじりを検知するためには、本実施形態の如くプレス方向と直交する方向であるワークWの長手方向(本実施形態における前後方向)に積層する構成とすることが好適である。
さらに、本実施形態に係るプレス成形金型においては、ダイ12において複数の鋼板12a・12a・・・が積層される構成としたが、ポンチ21を鋼板の積層構造とすることも可能である。
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係るプレス成形金型の構成について、図3(b)を用いて説明する。本実施形態以降で説明するプレス成形金型については、既出のプレス成形金型と同じ構成については詳細な説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。また、本明細書に記載した各実施形態におけるプレス成形金型の構成を、2以上組み合わせてプレス成形金型を構成することも可能である。
本実施形態に係るプレス成形金型におけるそれぞれの鋼板112aは図3(b)に示す如く、鋼板112aにおける水平方向のひずみを検知する第一ひずみゲージ113aと、第一ひずみゲージ113aと直交して配設されて鋼板112aにおける上下方向のひずみを検知する第二ひずみゲージ113bと、それぞれの計測器115a・115bと、を具備する摩擦係数測定手段をかじり検知手段として備えている。計測器115aと計測器115bとは、互いに電気的に接続されている。
より詳細には、鋼板112aにはその前後の両面において溝部112b・112bが直交する水平方向及び上下方向に向けて形成される。そして、この溝部112b・112bに第一ひずみゲージ113a及び第二ひずみゲージ113bが収容される。
そして、本実施形態に係るプレス成形金型では、前記摩擦係数測定手段の計測器115a・115bが、第一ひずみゲージ113aの検出値(第一ひずみゲージ113aが配設された鋼板112aの端部における水平方向のひずみ量)と、第二ひずみゲージ113bの検出値(第二ひずみゲージ113bが配設された鋼板112aの端部における上下方向のひずみ量)と、第一ひずみゲージ113a及び第二ひずみゲージ113bが配設された鋼板112aの縦弾性係数と、から、プレス加工時の、第一ひずみゲージ113a及び第二ひずみゲージ113bが配設された鋼板112aにおけるワーク成形面と接する周縁部の摩擦係数を測定する。
具体的には、プレス加工時における鋼板112aの周縁部において、同じ位置で前後面のそれぞれに配置された二個の第一ひずみゲージ113a・113aで測定した水平方向ひずみ量の平均値を算出して、当該部位における水平方向ひずみ量とするのである。また、同じ位置で前後面のそれぞれに配置された二個の第二ひずみゲージ113b・113bで測定した水平方向ひずみ量の平均値を算出して、当該部位における上下方向ひずみ量とするのである。そして、図示しない制御部において、第一ひずみゲージ113a及び第二ひずみゲージ113bで測定したひずみ量と、鋼板112aの縦弾性係数とから、鋼板112aの周縁部における摩擦係数を測定するのである。
本実施形態において、ワークWにかじりが発生した場合は、かじりが発生しなかった場合と比較して、鋼板112aの周縁部で検知したひずみに基づいて測定される摩擦係数の推移グラフの形状が前記第一実施形態と同様に大きく異なる。これにより、作業者はワークWのうち、摩擦係数の変化に異常がある部位において、かじりが発生したことを認識することができるのである。
上記の如く、本実施形態に係るプレス成形金型においては、積層された鋼板112aのそれぞれで直交する方向のひずみを検知することにより、それぞれの部位における摩擦係数を正確に測定することができる。つまり、ワークWにおけるどの部位でかじりが発生しても、ワーク成形面の摩擦係数の上昇を正確に測定することが可能となるのである。
換言すれば、本実施形態に係るプレス成形金型においても、ワーク成形面の摩擦係数が微小部位で上昇した場合であっても、当該部位の加工面圧の上昇に伴う摩擦係数の変動を正確に測定することができ、プレス成形金型において生じるかじりを検知することができるのである。
[第三実施形態]
次に、第三実施形態に係るプレス成形金型の構成について、図4(a)を用いて説明する。本実施形態に係るプレス成形金型においては、図4(a)に示す如く、前後方向に積層される各鋼板212a・212a・・・の間に、樹脂等で形成された絶縁体216・216・・・を介装してダイ212が構成されている。また、隣接する鋼板212a・212aに対して絶縁体216・216により絶縁される各鋼板212a、及びワークWに接続された電圧計217を具備する温度測定手段を前記かじり検知手段として備えている。なお、図4(a)では、一つの鋼板212aに接続された一個の電圧計217のみを図示し、他の鋼板212aに接続された電圧計は図示を省略している。
そして、本実施形態に係るプレス成形金型では、電圧計217でプレス加工時における鋼板212aとワークWとの間に生じる熱起電力を測定する。そして、温度測定手段は、測定した熱起電力に基づいてワーク成形面と接する周縁部の温度を測定する。
具体的には、温度測定手段により、プレス加工時における鋼板212aとワークWとを熱電対として熱起電力を測定し、この熱起電力と温度との関係値から、プレス加工時の、前記電圧計217が接続された鋼板212aにおける前記ワークの成形面と接する周縁部の温度を測定するのである。
本実施形態に係るプレス成形金型の、ワークにかじりが発生しなかった部位とかじりが発生した部位とにおける鋼板212aで測定した起電力の変化の違いについて、具体的に図4(b)を用いて説明する。なお、図4(b)中における「スライド変位量」とは、プレス機11の下降量、即ちプレス機11及びダイ12が下方にスライドした変位量を示している。
図4(b)においては、ワークWにかじりが発生しなかった部位における起電力の変化を点線(起電力1:かじりなし)で、ワークWにかじりが発生した部位における起電力の変化を一点鎖線(起電力2:かじりあり)で表している。
図4(b)中の点線に示す如く、ワークWにかじりが発生しなかった部位においては、鋼板212aで測定する起電力の増加は小さい。一方、ワークWにかじりが発生した部位においては、当該部位における加工面圧が上昇することにより、鋼板212aで測定する起電力はスライド変位量が増加するに従って大幅に増加している。
このように、ワークWにかじりが発生した場合は、かじりが発生しなかった場合と比較して、鋼板212aの周縁部で検知した起電力の発生状況が大きく異なる。これにより、作業者はワークWのうち、起電力の発生に異常がある部位において、かじりが発生したことを認識することができるのである。
上記の如く、本実施形態に係るプレス成形金型においても、積層された鋼板212a・212a・・・のそれぞれで起電力を検知することにより、それぞれの部位における温度を正確に測定することができる。つまり、ワークWにおけるどの部位でかじりが発生しても、ワーク成形面の温度上昇を正確に測定することが可能となるのである。
換言すれば、本実施形態に係るプレス成形金型は、ワーク成形面の加工面圧が微小部位で上昇した場合であっても、当該部位の加工面圧の上昇に伴う温度上昇を正確に測定することができ、プレス成形金型において生じるかじりを検知することができるのである。
10 プレス成形装置
11 プレス機
12 ダイ
12a 鋼板
13 ひずみゲージ
21 ポンチ
W ワーク

Claims (4)

  1. 板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型であって、
    前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方は、複数の鋼板が、該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層されて形成された積層部を備え、
    前記鋼板のうち少なくとも一つには、プレス加工時における所定の方向のひずみを検知する第一ひずみゲージと、該第一ひずみゲージが検知するひずみの方向と直交する方向のひずみを検知する第二ひずみゲージと、を具備する摩擦係数測定手段が配設され、
    前記摩擦係数測定手段が、前記第一ひずみゲージによる該第一ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第二ひずみゲージによる該第二ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板の縦弾性係数と、から、プレス加工時の、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の摩擦係数を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知する、
    ことを特徴とする、プレス成形金型。
  2. 板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型であって、
    前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方は、複数の鋼板が、該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層されて形成された積層部を備え、
    隣接する鋼板に対して絶縁された鋼板及び前記ワークに接続された電圧計を具備する温度測定手段を備え、
    温度測定手段は、前記電圧計で前記鋼板と前記ワークとの間に生じる熱起電力を測定し、該熱起電力に基づいて、プレス加工時の、前記電圧計が接続された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の温度を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知する、
    ことを特徴とする、プレス成形金型。
  3. 板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型によるかじり検知方法であって、
    前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方に、複数の鋼板を該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層した積層部を形成し、
    前記鋼板のうち少なくとも一つに、所定の方向のひずみを検知する第一ひずみゲージと、該第一ひずみゲージが検知するひずみの方向と直交する方向のひずみを検知する第二ひずみゲージと、を具備する摩擦係数測定手段を配設し、
    前記第一ひずみゲージによる該第一ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第二ひずみゲージによる該第二ひずみゲージが配設された鋼板のひずみ量の検出値と、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板の縦弾性係数と、から、プレス加工時の、前記第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージが配設された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の摩擦係数を測定することにより、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知する、
    ことを特徴とする、金型によるかじり検知方法。
  4. 板状の素材をポンチとダイとによりプレス加工してワークを成形するプレス成形金型によるかじり検知方法であって、
    前記ポンチとダイとのうち少なくとも一方に、複数の鋼板を該鋼板のうち少なくとも一つの周縁部において、プレス加工時に前記ワークの成形面と接するように積層した積層部を形成し、
    隣接する鋼板に対して絶縁された鋼板及び前記ワークに接続された電圧計を具備する温度測定手段を配設し、
    前記電圧計で前記鋼板と前記ワークとの間に生じる熱起電力を測定し、該熱起電力に基づいて、プレス加工時の、前記電圧計が接続された鋼板における前記ワークの成形面と接する周縁部の温度を測定することにより、前記鋼板のうち少なくとも一つにおいて、プレス加工時における前記ワークの成形面に生じるかじりを検知する、
    ことを特徴とする、金型によるかじり検知方法。
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