JP5170089B2 - 薄板のプレス成形装置及びプレス成形方法 - Google Patents
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Description
また、薄板のプレス成形と同時に、金型にはプレス機加圧力又は被加工材変形抵抗の反力などが作用するため、金型は弾性変形を起こす。この弾性変形を金型ひずみと呼ぶ。上述したような、プレス金型によって湾曲凸形状を薄板に形状転写する際に発生する割れやネッキング、しわなどの成形異常には、この金型ひずみの発生が大きく影響している。
金型ひずみを測定する装置としては、特開平5−337554号公報に、上ビームに取り付けたパンチ及び下ビームに取り付けたダイを接離動作させることにより前記パンチ及びダイ間でワークを折り曲げ加工するプレスブレーキにおいて、前記上ビームの長手方向に沿って設けられ、前記上ビームのひずみを検出する複数の上ビーム用歪みセンサと、前記下ビームの長手方向に沿って設けられ、前記下ビームのひずみを検出する複数の下ビーム用歪みセンサと、前記下ビームと下金型の間又は前記上ビームと上金型の間に折り曲げ加工線の方向に添って分散配置され、前記下金型又は上金型に上下方向の加圧力を加える複数のアクチュエータと、加圧開始後加圧完了までの途中で前記上ビームの下降を停止させ、この停止状態のときに前記上ビーム用歪みセンサおよび前記下ビーム用歪みセンサの検出出力を取り込み、これらの各検出出力に基づき上ビーム及び下ビームのひずみ量を演算し、該演算値に基づき上ビーム及び下ビームのひずみ量が適正値になるよう前記複数のアクチュエータの駆動制御を行い、この後加圧制御を再開させる制御を行う制御手段と、を具えるプレスブレーキの中開き補正装置が開示されている。これにより全長に亘って均一な曲げ角度を有する成形品を得ようとしている。
また、特開2004−249365号公報に、ポンチ、ダイス、及びしわ押さえ金型と、前記ダイス及び前記しわ押さえ金型の間に取り付けられる摩擦力測定手段と、しわ押さえ荷重調節手段を有することを特徴とする薄板のプレス成形装置が開示されている。これにより、金型と被加工物の間の潤滑性や表面性状などの変動要因によらず、適正な摩擦力を付与することができ、素材特性のばらつきや環境変化によらず、常に良好な成形品を提供しようとしている。
また、本発明者らの一部は、第57回塑性加工連合講演会論文集pp.165−166(2006)に、直交する方向の圧縮・引張ひずみを測定する圧電素子(金型摩擦センサー)をダイ肩近傍に内蔵したプレス成形装置が開示され、金型摩擦センサーの情報からスプリングバック、ねじれなどの成形品形状の予測が可能であることを開示した。
特開平5−337554号公報には、金型ひずみ測定機能を有する装置に関する発明が開示されているが、ビーム用歪みセンサはプレスブレーキ用ビームの長手方向に沿って設けられること以外は開示されていない。プレスブレーキ用ビームよりも複雑形状を有する金型を使用するプレス成形において、高精度に金型ひずみを測定するためには、ポンチ、ダイ、しわ押さえ金型などの金型内部にひずみ測定機能を設置し、発生する金型ひずみを直接測定することが不可欠であり、そのためには特開平5−337554号公報の発明では不十分である。
また、上記発明では成形途中に一旦成形を中断し、この停止状態のときに上下ビームのひずみ量を検出し、上下ビームのひずみ量が適正値となるようアクチュエータによる制御を行い、この後成形を再開させるが、プレスブレーキのような曲げ主体の成形とは異なり、プレス成形においては、途中で成形を中断した場合、被加工材と工具間の摩擦力は成形中の摩擦力とは大きく異なる。従って、上記発明をプレス成形に適用した場合、測定される金型ひずみ量は成形中の金型ひずみ量とは異なり、測定精度は不十分である。
また、特開2004−249365号公報には、摩擦力を直接測定する原理として、歪み測定素子を挟み込むようにして平板としわ押さえ金型をボルト等で締結することが記載されている。この状態で、被加工物をダイスと前記平板で挟み、摺動させると、前記歪み測定素子にせん断ひずみが発生し、摩擦力を測定することが可能となるものである。歪み測定素子を使用する点では本発明と類似しているが、これは、しわ押さえ金型、または、ダイスに何らかの構造物を設置して摩擦力を計測しようとするものであり、しわ押さえ金型、ダイスの金型ひずみを直接測定するものではない点で本発明と相違する。
金型ひずみを高精度に測定するためには、ポンチ、ダイ、しわ押さえ金型の金型ひずみを直接測定することが不可欠であり、そのためには特開2004−249365号公報の発明では不十分である。第57回塑性加工連合講演会論文集pp.165−166(2006)に開示された発明は、ダイ肩近傍に摩擦センサーを内蔵しているが、実際の金型の形状は複雑であり、ダイ肩が不明瞭な金型もあるため、実際の金型では、どこにひずみセンサーを配置すればよいのか、試行錯誤によらなければ分からないという問題がある。
上記目的を達成するために、本発明は、ポンチと、該ポンチに対して相対移動するダイの少なくとも一つを測定対象金型としたときに、該測定対象金型は、少なくとも1つ以上の湾曲形状を有する成形部品を成形可能であり、該測定対象金型の内部に設置され、プレス成形に応じて生じる該測定対象金型のひずみ量を測定するためのひずみ量測定手段を有し、前記ひずみ量測定手段は、前記測定対象金型が成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置することを特徴とするプレス成形装置を提供する。
好ましくは、ひずみ量測定手段は、測定対象金型が表面に有する湾曲形状の曲率半径をRとしたとき、前記湾曲形状の曲率中心から10×R以内の領域に位置する。
より好ましくは、ひずみ量測定手段は、測定対象金型の湾曲形状の端部を通り該端部における法線に対して前記湾曲形状から離れる方向に45°傾斜した面よりも曲率中心側の領域に位置する。
さらに好ましくは、ひずみ量測定手段は、測定対象金型の表面から5mm以上離れて位置する。
プレス成形装置はさらに、被加工材に対してしわ押さえ荷重を付与するしわ押さえ金型を有することができる。
ひずみ量測定手段の好適な具体例は圧電素子センサである。本発明において測定されるひずみ量は弾性変形によるものであり、線形弾性理論が成り立つ。すなわち等方弾性材料についての構成則(フックの法則)を用いることにより、ひずみ量と応力は等価に変換することが可能である。またひずみ量は、各種変位計により測定された変位を換算して求めてもよい。
また本発明は、上記プレス成形装置を用いて、ひずみ量測定手段により測定したひずみ量が、所定範囲を超えたとき又は所定範囲を下回ったときに成形品の成形異常と判定するプレス成形方法を提供する。
さらに本発明は、上記プレス成形装置を用いて、ひずみ量測定手段により測定したひずみ量が、所定範囲を超えたとき又は所定範囲を下回ったときに測定対象金型の異常と判定するプレス成形方法を提供する。
本発明において、ダイ肩とは、図3、図4に示すように、ダイフェース面21(被加工材4が最初にダイ2に当接する面)を含むダイの肩部22を言い、またダイ肩R止まりとは、ダイ肩22が有する丸み部分(R部)の両端部23及び24を言う。これらの端部のうち、ダイフェース面21側に位置するR部端部23を材料流入側のダイ肩R止まりと言い、一方、よりプレス方向(矢印で図示)側に位置し、すなわち材料から見れば、材料がダイ肩R上で変形を受けた後に縦壁部への流出を開始する端部24を、材料流出側のダイ肩R止まりと言う。
また、プレス方向とは、図3、図4に矢印で示すように、ダイ2の凹形状に対してポンチ1がダイに接近するように相対移動する方向、又は被加工材4に対してポンチ1が加圧し成形する方向と定義する。
本発明により、プレス金型表面の湾曲形状に発生する金型のひずみを測定でき、さらには測定したひずみ量に基づいてプレス成形品の成形異常を判定できる、高精度かつ応用性の高いプレス成形装置及びプレス成形方法を提供することができる。
図1は、本発明に係るプレス成形装置のうち、プレス機スライダにダイが設置されているプレス成形装置の概略図を示す。
図2は、本発明に係るプレス成形装置のうち、プレス機スライダにポンチが設置されているプレス成形装置の概略図を示す。
図3は、図1に示すプレス成形装置における、金型ひずみ測定手段の設置状況の詳細図を示す。
図4は、図2に示すプレス成形装置における、金型ひずみ測定手段の設置状況の詳細図を示す。
図5は、本発明に係るプレス成形装置における、ポンチにひずみ量測定手段が設置されている場合を示す。
図6は、本発明に係るプレス成形装置における、ダイにひずみ量測定手段が設置されている場合を示す。
図7は、図1に示すプレス成形装置に加えて、しわ押さえ金型が設置されているプレス成形装置の概略図を示す。
図8は、図2に示すプレス成形装置に加えて、しわ押さえ金型が設置されているプレス成形装置の概略図を示す。
図9bは、ひずみ測定手段とプラグの側面図を示し、図9aは、図9bの構成を取り付け可能なきり穴を示す。
図10は、本発明のプレス成形方法に係る、ひずみ量測定結果と成形異常判定の為のひずみ量所定範囲を示す。
図11は、本発明のプレス成形方法に係る、ひずみ量測定結果と金型異常判定の為のひずみ量所定範囲を示す。
図12は、本発明に係るプレス成形装置によって成形する成形品の外観図を示す。
図13は、ひずみ量測定手段の設置位置を示す。
図14は、本発明に係るプレス成形方法による、製品異常または金型異常の判定方法を示す。
図15は、ひずみ量測定手段の別の設置位置を示す。
図16は、本発明に係るプレス成形方法による、製品異常または金型異常の別の判定方法を示す。
図17は、本発明に係るプレス成形装置によって成形する別の成形品の外観図を示す。
図18は、ひずみ量測定手段の別の設置位置を示す。
図19は、本発明に係るプレス成形方法による、製品異常または金型異常の別の判定方法を示す。
図20は、ひずみ量測定手段の別の設置位置を示す。
図21は、本発明に係るプレス成形方法による、製品異常または金型異常の別の判定方法を示す。
図22は、角部頂点に集中力が作用している状態を概略的に示す。
図23は、曲率半径を有する角部に面圧が作用している状態を概略的に示す。
図24は、図22に対応する応力分布の等高線を示す。
図25は、図23に対応する応力分布の等高線を示す。
図26は、ひずみ量測定手段の好適な設置位置を示す。
図27は、プレス成形において被加工材に作用する力又は応力を概略的に示す。
図28は、プレス成形においてダイに作用する力又は応力を概略的に示す。
図29は、ひずみ量測定手段の設置範囲をさらに限定することを説明するグラフを示す。
図30は、凸形状のダイ部分におけるひずみ量測定手段の好適な設置範囲を示す。
図31は、被加工材の強度とプレス成形時の弾性変形範囲との関係を概略的に示す。
図32は、凹形状のダイ部分におけるひずみ量測定手段の好適な設置範囲を示す。
図33は、曲率半径が大きい部分でのひずみ量測定手段の設置例を示す。
2 ダイ
3 しわ押さえ金型
4 被加工材
5 ひずみ量測定手段
6 ひずみ量測定手段設置可能領域
7 湾曲中心
8 ひずみセンサ
詳細な説明
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態に係るプレス成形装置の断面図を図1または図2に示す。図1はプレス機スライドにダイ2が設置されている場合、図2はプレス機スライドにポンチ1が設置されている場合であるが、いずれもポンチ1と、ポンチ1に対して相対移動するダイ2を有する。
被加工材4は、ダイ2によってポンチ1に押し付けられ、所定の形状に成形される。このとき、ポンチ1やダイ2の表面に造型された湾曲凸形状の近傍かつ金型内部に、以下に説明するひずみ量測定手段5を設置し、そのひずみ量を監視することで、割れやネッキング、しわなどの成形異常、または、金型かじりなどの金型異常を判定することが可能であることを我々は見出した。
効果的に割れやネッキング、しわなどの成形異常を判定するためには、ひずみ量測定手段5の設置位置が重要である。ひずみ量測定手段5の望ましい設置位置を図3と図4に示す。
図3はプレス機スライドにダイ2が設置されている場合、図4にはプレス機スライドにポンチ1が設置されている場合であるが、いずれの場合においても、ひずみ量測定手段5の設置位置は、ポンチ1及びダイ2を測定対象金型としたときに、測定対象金型、すなわちポンチ1とダイ2が成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置することとする。
この理由は、主としてひずみ量測定手段5の設置に起因する金型の破損や損傷を回避するためである。特にダイ2において、ひずみ量測定手段5が材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置していないと、ひずみ量測定手段5を設置するための穴加工において十分な寸法精度が得られない危険性が高い。一般的に、ひずみ量測定手段5を設置するための穴加工にはドリル加工が用いられるが、このときひずみ量測定手段5を設置するための穴とダイ2表面との間の肉厚が少ないと、ドリルの剛性不足によって肉厚の少ない方向へドリルが曲がってしまい、寸法精度が低くなる問題が発生しやすくなる。この問題が発生すると、実際の加工寸法は指定寸法より肉厚が少なくなる方向、すなわち破損などの危険性が高まる方向になってしまうため、この問題発生を回避するためには、ひずみ量測定手段5は材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置することが望ましい。
またひずみ量測定手段5が材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置していない場合は、熱処理において金型の割れが発生する等、穴加工以外でも加工失敗の発生確率が高い。また穴加工や熱処理が成功したとしても、金型を繰り返し使用している最中で強度不足により破損する危険性が高い。
次に、本発明の第2の実施形態に係るプレス成形装置の断面図を図5または図6に示す。第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、さらに精度の高いひずみ量の測定を実現することを目的として、ひずみ量測定手段5の設置位置を限定したものである。
図5には、ポンチ1に設置されたひずみ量測定手段5周辺の拡大図を示す。ひずみ量測定手段5は、ひずみ量測定手段設置領域6の内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置される。
ひずみ量測定手段5の好ましい設置領域6は、ポンチ1の表面に有する湾曲凸形状の曲率(湾曲)半径をRとしたとき、前記湾曲凸形状の曲率中心7から、10R(Rは当該湾曲形状の曲率半径)以内の領域である。
なお本発明において、曲率半径とは、プレス方向に平行なポンチ、ダイ等の断面において、その湾曲凸形状の一部を一定の曲率半径に近似したときの曲率半径と定義し、この近似された曲率半径に基づき曲率中心7を決定する。
次に、ひずみ量測定手段の設置範囲を湾曲形状の曲率中心7から10R以内とした根拠について説明する。
集中力が作用する2次元応力場の理論解は既に求められており(Melan,(1932)他)、例えば図22に示すように頂角αの角部頂点に集中力F0が作用する場合の2次元応力分布は下記の式(1)から求めることができる。
また図23に示すように、角部が曲率半径rd、曲率角度φの湾曲形状を有し、その湾曲形状に面圧Pが作用している場合であっても、曲率半径rdが小さい場合は式(1)を利用して応力分布を近似できると仮定する(0.3mm<rd<30.0mmの範囲で近似可能とする)。この場合の応力分布は下記の式(2)から求められる。
式(1)及び(2)に示すように、集中力による2次元応力分布において、r、θで表わされる極座標系におけるr方向以外の応力はゼロとなる。またr方向の応力σrは極座標r、θを用いてその分布を表わすことができる。
図24は、式(1)に対応する応力分布の等高線を示す。
図25は、式(2)に対応する応力分布の等高線を示す。
式(2)における応力σrは、図23の角度α、φを一般的なダイ肩形状に相当する以下のような値に固定し、極座標θ=0についてのみ考慮すると、下記式(3)のように簡単にできる。
ひずみ量測定手段5は、前述の式(2)、(3)中のr方向応力σrに起因して発生する弾性ひずみ量を測定することができるが、他の測定器と同様、ひずみ量測定手段5の測定分解能にも測定限界があり、極めて小さなひずみ量またはひずみ量変化は測定が困難である。
ひずみ量測定手段5が高精度の測定を行うためには、ひずみ量測定手段5の設置個所に発生するひずみ量は、最少測定ひずみ量εm以上でなければならないと仮定する。
フックの法則より、最少測定ひずみ量εmに対応する応力σmは弾性係数Eを用いて以下の式(4)のように表わされる。
σm=E・εm (4)
先の仮定より、式(3)のσrの方が式(4)のσmより大きい必要があるので、ひずみ量測定手段5の設置位置の極座標rについて下記の関係式(5)が成り立つ。
式(5)を用いることにより、高精度の測定が可能となるひずみ量測定手段5の設置位置範囲rを決定することができる。
しかし、式(5)の面圧Pは、鋼板と金型の接触面圧に相当し、この値を正確に求めることは困難である。ひずみ量測定手段5の設置位置範囲は金型の製作開始前に決定しなければならず、実測値を用いることは困難だからである。FEM等で概算予測することも可能ではあるが、精度が十分でない等の問題がある。
そこで、正確に求めることが困難な面圧Pを考慮することなく、ひずみ量測定手段5の設置位置範囲rを決定するために、式(4)におけるσmは接触面圧Pの10%の値であると仮定した。すると、式(3)から下記のような関係式(6)を得ることができる。
r<10rd (6)
式(6)を用いると、正確に求めることが困難な面圧Pを考慮することなく、簡便にひずみ量測定手段5の設置位置範囲rを決定することが可能である。よって、本発明ではひずみ量測定手段5の適切な設置位置として、湾曲形状の曲率中心7から10R以内とした。
図26に、式(6)によって定められたひずみ量測定手段5の適切な設置領域を示す。適切な設置領域は、座標(r,θ)=(5rd,0)を中心とする半径5rdの円弧内側の領域である。
本発明では、式(6)を用いてひずみ量測定手段5の適切な設置位置範囲を決定したが、FEM解析結果、理論解析結果、過去の実測データ知見等より求めた面圧Pを用いて式(5)を計算し、式(6)で定めた設置範囲をさらに限定してもよい。しかし式(6)の設置範囲より大きくなることは許されない。
式(6)で定めた設置範囲のさらなる限定方法として、理論解析結果により求めた面圧Pを用いて式(5)を計算した場合の一例を以下に示す。
図27は、プレス成形金型の形状寸法及び成形条件を概略的に示す。ダイ肩Rでの絞り込み応力σdは、被加工材4の降伏応力Y及び板厚t、被加工材4とポンチ1又はダイ2との摩擦係数μ、しわ押さえ荷重H、ダイ2と被加工材4との接触領域の接触角度φ、ポンチ1の中心線から被加工材4の末端部までの距離r0、並びにポンチ1の中心線から、ダイ2と被加工材4との接触領域の材料流出側端部の板厚中心までの距離r2を用いて、以下の式(7)で表すことができる。
また式(7)は、以下の式群(8−1)〜(8−3)のように変形できる。
σd=a0Y+C (8−1)
ここで例えばμ=0.15、φ=π/2rad、r0=100mm、r2=90mm、t=1.0mm、rd=10mm、H=200N/mmの場合は、a0=0.18、C=75.94MPaとなる。
一方、図28に示すように、ダイ肩Rに作用する面圧Pは、ダイ肩Rに作用する集中力F0等を用いて、以下の式(9)で表すことができる。
ここでφ=π/2rad、t=1.0mmという先の仮定を式(9)に代入すると、以下の式(10)が得られる。
式(10)を式(5)に代入すると、ひずみ量測定手段5の適切な設置位置範囲rについて、以下の関係式(11)が得られる。
ここで弾性係数E=206GPa、εm=10μεと仮定し、さらに式(8−1)〜(8−3)を代入して整理すると、式(11)は以下の式(12)となる。
r<0.08Y+33.19 (12)
図29は、式(6)で定めた設置範囲を、上記で算出した関係式(12)でさらに限定している例を示す。被加工材4として降伏応力Y=840MPa(引張強度1500MPa相当)を用いる場合は、関係式(6)及び(12)のいずれを用いても、ひずみ量測定手段5の設置位置範囲は10R以下となる。しかし、降伏応力Y=340MPa(引張強度600MPa相当)を用いる場合は、式(12)を用いた場合はひずみ量測定手段5の設置位置範囲は6R以下に限定可能となる。
図6は、ダイ2に設置されたひずみ量測定手段5周辺の拡大図を示す。ひずみ量測定手段5は、図5の場合と同様に、ひずみ量測定手段5のハッチングで示す設置領域6の内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置される。
なおひずみ量測定手段は、測定対象金型の湾曲形状の端部を通り金型内側方向に45°をなす面よりも曲率中心側の領域に位置することが好ましい(後述する図30及び図32参照)。鋼板を介して金型が受けるひずみは、一般に湾曲形状部において大きくなるが、ひずみ起点より表面から45°以上金型内側の領域内部に伝わりやすく、45°より外側(表面側)の領域には伝わりにくい。そこで、湾曲形状の端部を通り金型内側方向に45°をなす面よりも曲率中心側の領域にひずみ量測定手段を配置することにより、高感度で湾曲形状部のひずみを測定することができる。
またひずみ量測定手段は、測定対象金型の表面から5mm以上離れた領域に位置することが好ましい。金型表面から5mm以内の領域にひずみ量測定手段を配置すると、ひずみ量測定手段近傍の表面部分の強度が不足し、当該部分において金型が破損する可能性があるからである。
次に、本発明の第3の実施形態に係るプレス成形装置の断面図を図7と図8に示す。図7では、図1に記載のプレス成形装置に対して、しわ押さえ金型3が追加された構成となっており、シングルアクションの絞り成形を行うことが可能である。
また、図8では、図2に記載のプレス成形装置に対して、しわ押さえ金型3が追加された構成となっており、ダブルアクションの絞り成形を行うことが可能である。図7及び図8の構成においても、図4及び図5と同様に、所定の設置領域にひずみ量測定手段5を設置することにより、同様の効果を得ることができる。
次に、図9a及び9bは、上述のひずみ量測定手段5の具体的構成例を示す図である。ひずみ量測定手段5の設置方法の一例としては、図9aの模式図に示すようにダイ2に貫通しないきり穴をあけて雌ネジを切り、きり穴の底に図9bに示すひずみセンサ8を入れ、プラグで軸力をかけて圧入する方法がある。この際、ひずみセンサ8として圧電素子センサを使用すると、周波数応答特性の高い好適な測定が可能となる。
図30は、ひずみ量測定手段の好ましい設置領域について説明する図である。上述したように、ひずみセンサ等のひずみ量測定手段は材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に配置されるが、図30に示すように、ダイ2のダイ肩22にひずみ量測定手段としてひずみセンサ8を圧入する場合、ひずみセンサ8の測定点(先端)81の位置と、ダイフェース面21との間の矢印で示すプレス方向側の距離Dは、ひずみセンサ8のためにダイ2に切られたきり穴25の半径以上であることが、ダイの強度上の観点から好ましい。従って例えば、ダイ肩Rが2mmであってもきり穴の半径が4mmであれば、距離Dは4mm以上とすることが好ましく、5mm以上がさらに好ましい。
なお図30に示すように、ひずみセンサ8をプレス方向に垂直な方向に延びるように配置すると、プレス力の影響をあまり受けずに被加工材とダイとの間の摩擦力も検出することができ、有利である。
次に、ひずみ量測定手段の好ましい設置領域について説明する。プレス成形により生じるダイ2の弾性ひずみの分布は、ダイ肩Rが大きくなるに従って拡大することがわかっている。例えば強度600MPaの被加工材をしわ押さえ力3MPaでプレス成形する場合、曲率中心7から概ね4Rの範囲が弾性変形領域となる。但し、弾性変形領域は被加工材の強度と概ね線形関係にあり、例えば図31の実線グラフに示すように、一般的なプレス加工の上限とされる強度1500MPaの高強度の被加工材の場合、上述の弾性変形領域は概ね10Rとなる。より具体的に言えば弾性変形領域の範囲は、被加工材の強度及びダイ肩Rの積に、適当な係数を乗じて得られる値である。
なお弾性変形領域はしわ押さえ荷重によっても変化し、例えばしわ押さえ荷重が2MPa又は5MPaの場合には、図31の点線グラフのように変化する。図31からわかるように、しわ押さえ荷重の影響は被加工材の強度が低い方が大きく、高強度になる程小さくなる傾向がある。例えばしわ押さえ荷重が5MPaの場合、被加工材の強度が600MPaであれば弾性変形領域は概ね曲率中心から7×R以内となるが、被加工材の強度が1500MPaであれば好適な弾性変形領域は殆ど変化しない。以上のことから、ひずみ量測定手段設置領域6の好ましい範囲は曲率中心から最大10×R以内であり、被加工材の強度及びしわ押さえ荷重によって変化する。
さらに、図30に示すように、ダイ2の弾性ひずみをより高感度に測定できる領域はダイ肩R止まり23及び24の各々における法線に対して湾曲部から離れる方向に45度傾斜した面(図30では線で図示)231及び241に挟まれた領域であることが見出されている。従って、図30の例ではハッチングを付した領域が、最も好ましいひずみセンサの測定点の設置領域となる。
図30は凸形状のダイ肩R止まりについて説明したが、図32に示すように、凹形状のダイ又はポンチの湾曲部分についても同様の考え方が適用可能である。但し、凹形状の場合は曲率中心7′が測定対象物の外側に位置するので、好適なひずみ量測定手段の設置領域6′は、図30の例と同様に強度600MPaの被加工材をしわ押さえ力3MPaでプレス成形する場合、曲率中心7′からみて最大4Rまでの概ね半球形状で表された範囲となる。図32の例では、ハッチングを付した領域が最も好ましいひずみセンサの測定点の設置領域となる。
また図33に示すように、凹又は凸形状の曲率が相当に大きい(例えばR=100mm以上)場合は、両R止まり23、24間でのダイ又はポンチの弾性ひずみを1つのひずみセンサで測定することが難しい場合がある。そこでこのような場合は、複数(図示例では2つ)のひずみセンサ8を使用することが有効である。なおひずみセンサの個数は適宜選定可能であるが、図33に示すように、各ひずみセンサの好適な検出範囲はその先端から±45度の角度範囲内にあることが多く、例えばこの検出範囲に基づいて個数を決めることができる。
次に、本発明に係る、成形品の成形異常を判定可能なプレス成形方法について、図10を用いて説明する。図10は、ひずみ量測定手段8によるひずみ量測定結果を示したグラフである。横軸は成形ストロークSであり、被加工材4の成形が開始した時点でのプレス機スライド位置がS start、成形下死点に達して被加工材4の成形が終了した時点でのプレス機スライド位置が、S endである。また、縦軸はひずみ量を表している。ここでひずみ量は圧縮ひずみをプラスの値で表す。
図中の点線G1とG2が、それぞれひずみ量所定範囲の上限と下限を表している。ここでひずみ量所定範囲の上限と下限の決定方法について説明する。複数回のプレス成形を行い、そのうち成形品に異常がないプレス成形時のひずみ量を採取する。異常がないプレス成形時のひずみ量を10以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、成形異常を判定するための平均化ひずみ量とする。
また、前述した複数回のプレス成形において、成形品に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量を上回っているひずみ量を10以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、ひずみ量所定範囲の上限とする。
また、前述した複数回のプレス成形において、成形品に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量を下回っているひずみ量を10以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、ひずみ量所定範囲の下限とする。
図10には、例として、ひずみ量測定結果(i)、ひずみ量測定結果(ii)、ひずみ量測定結果(iii)の3つのひずみ量測定結果を図示してあるが、このうち、ひずみ量測定結果(i)はひずみ量所定範囲の範囲内であるため、成形に問題なしと判定される。一方、ひずみ量測定結果(ii)はひずみ量所定範囲の上限を超過する部分があるため、成形異常と判定される。また、ひずみ量測定結果(iii)はひずみ量所定範囲の下限を下回る部分があるため、成形異常と判定される。以上のようにして、プレス成形品の成形異常を判定する。
特に、成形ストロークSがS endの50%以上となる領域、すなわち成形後半において、ひずみ量測定結果がひずみ量所定範囲の下限を下回る部分がある場合((iii)の場合)、プレス成形品に割れ、またはネッキングが発生していると判定する。
特に、成形ストロークSがS endの50%以下となる領域、すなわち成形前半において、ひずみ量測定結果がひずみ量所定範囲の上限を上回る部分がある場合((ii)の場合)、プレス成形品にスプリングバック、または流入量異常が発生していると判定する。
特に、成形ストロークSがS endの50%以上となる領域、すなわち成形後半において、ひずみ量測定結果がひずみ量所定範囲の上限を上回る部分がある場合、プレス成形品にしわが発生していると判定する。
次に、本発明に係る、金型異常を判定可能なプレス成形方法について、図11を用いて説明する。図11は、図10と同様にひずみ量測定結果を示したグラフである。図中の点線G3とG4が、それぞれひずみ量所定範囲の上限と下限を表している。
ここでひずみ量所定範囲の上限と下限の決定方法について説明する。上述の成形異常を判定可能なプレス成形方法と同様に、複数回のプレス成形を行い、そのうち金型に異常がないプレス成形時のひずみ量を採取する。異常がないプレス成形時のひずみ量を50以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、金型異常を判定するための平均化ひずみ量とする。
また、前述した複数回のプレス成形において、金型に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量を上回っているひずみ量を50以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、ひずみ量所定範囲の上限とする。
また、前述した複数回のプレス成形において、金型に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量を下回っているひずみ量を50以上集めてそれらを平均化したひずみ量を、ひずみ量所定範囲の下限とする。
図11には、例として、ひずみ量測定結果(iv)、ひずみ量測定結果(v)、ひずみ量測定結果(vi)の3本のひずみ量測定結果が図示してあるが、このうち、ひずみ量測定結果(iv)はひずみ量所定範囲の範囲内であるため、金型に問題なしと判定される。一方、ひずみ量測定結果(v)はひずみ量所定範囲の上限を超過する部分があるため、金型異常と判定される。また、ひずみ量測定結果(vi)はひずみ量所定範囲の下限を下回る部分があるため、金型異常と判定される。以上のようにして、プレス金型の異常を判定する。
特に、成形ストロークSがS endの50%以下となる領域、すなわち成形前半において、ひずみ量測定結果がひずみ量所定範囲の上限を上回る部分がある場合、プレス金型にかじりが発生していると判定する。
なお図10に示すように、成形異常によりひずみ量測定結果が上限を超える場合(グラフ(ii))は、S startから2番目以降の極大点において上限を超える傾向があり、一方図11に示すように、金型異常によりひずみ量測定結果が上限を超える場合(グラフ(v))は、S startから最初の極大点において上限を超える傾向がある。従ってこれにより、成形異常と金型異常とを判別することができる。
本成形では、測定対象金型としてポンチとダイの両方を選定し、図13に示すようにひずみ量測定手段5をポンチ1に1つ、ダイ2に1つ、計2つ設置した。
2つのひずみ量測定手段5はいずれも、ポンチ1とダイ2が成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりも、矢印で示すプレス方向側に位置するように設置した。
ただし、ポンチ1がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R5は5mmであり、ひずみ量測定手段5は当該湾曲凸形状の曲率中心7からプレス方向に−60mm離れた金型の内部に設置されている。つまり、曲率中心7から10×R以内の領域の外側にひずみ量測定手段5は配置されている。
また、ダイ2がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R3は3mmであり、ひずみ量測定手段5は当該湾曲凸形状の曲率中心7からプレス方向に+40mm離れた金型の内部に設置されている。つまり、曲率中心7から10×R以内の領域の外側にひずみ量測定手段5は配置されている。
ひずみ量測定手段5は、図9aに示したような、金型に貫通しないきり穴をあけて雌ねじを切り、きり穴の底に図9bに示したようなひずみセンサ8を入れて、プラグで軸力をかけて圧入する方法を用いた。
ひずみセンサ8としては、圧電素子センサを用いた。また、その圧電素子センサが測定する圧縮・引張ひずみの方向は、プレス方向と同一とした。
上述したように設置したひずみ量測定手段5によって測定されたひずみ量は、図14に示すグラフにプロットされるようになった。そして、図14に既に示されている、金型異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G5及び下限G6に挟まれる範囲)、または、成形異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G7及び下限G8に挟まれる範囲)に収まっているか否かによって、金型異常や成形異常を判定した。
本成形部材では、被加工材4の成形が開始した時点でのストロークは0mm、成形が完了下時点でのストロークは105mmである。また、図示されている成形異常を判定するための平均化ひずみ量G9は、まず100回のプレス成形を行い、成形品に異常がないことを確認した75回のプレス成形において、ひずみ量測定手段8により得られたひずみ量を平均することで得たものである。
また、前述した100回のプレス成形において、成形品に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量を上回っているひずみ量のデータが11得られたので、それらを平均化したひずみ量をひずみ量所定範囲の上限G7とした。ひずみ量所定範囲の上限は、平均化ひずみ量G9に対して全ストローク範囲で100μεを加算したものとほぼ等しい結果となった。
また、前述した100回のプレス成形において、成形品に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量G9を下回っているひずみ量のデータが14得られたので、それらを平均化したひずみ量をひずみ量所定範囲の下限G8とした。ひずみ量所定範囲の下限G8は、平均化ひずみ量G9に対して全ストローク範囲で80μεを減算したものとほぼ等しい結果となった。
また、同じく図示されている金型異常を判定するための平均化ひずみ量G10は、1000回のプレス成形を行い、金型に異常がないことを確認した895回のプレス成形において、ひずみ量測定手段8により得られたひずみ量を平均することで得たものである。
また、前述した1000回のプレス成形において、金型に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量G10を上回っているひずみ量のデータが52得られたので、それらを平均化したひずみ量をひずみ量所定範囲の上限G5とした。ひずみ量所定範囲の上限G5は、平均化ひずみ量G10に対して全ストローク範囲で250μεを加算したものとほぼ等しい結果となった。
また、前述した1000回のプレス成形において、金型品に異常があるプレス成形時のひずみ量を採取し、そのうち平均化ひずみ量G10を下回っているひずみ量のデータが53得られたので、それらを平均化したひずみ量をひずみ量所定範囲の下限G6とした。ひずみ量所定範囲の下限G6は、平均化ひずみ量G10に対して全ストローク範囲で200μεを減算したものとほぼ等しい結果となった。
表2から表5に、本発明例1として試作したプレス成形装置を用いたプレス成形試験結果を示す。
以上の結果より、本発明実施によって、製品異常の判定、もしくは金型異常の判定が達成されたものと考えられる。
被加工材として用いた鋼板の特性は表1に示した通りである。また、試作したプレス成形装置を用いて成形した部材形状は図12に示した通りである。
本成形では、測定対象金型としてポンチとダイの両方を選定し、図15に示すようにひずみ量測定手段5をポンチ1に1つ、ダイ2に1つ、計2つ設置した。2つのひずみ量測定手段5はいずれも、ポンチとダイが成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりも、矢印で示すプレス方向側に位置するように設置した。
さらに、ひずみ量測定手段5は、ポンチ1がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R5が5mmであるので、湾曲凸形状の曲率中心7から半径50mm以内の領域内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置した。また、ダイ2の表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R3が3mmであるので、湾曲凸形状の曲率中心7から半径30mm以内の領域内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置した。
ひずみ量測定手段5は、図9aに示したような、金型に貫通しないきり穴をあけて雌ねじを切り、きり穴の底に図9bに示したようなひずみセンサ8を入れて、プラグで軸力をかけて圧入する方法を用いた。
ひずみセンサ8としては、圧電素子センサを用いた。また、その圧電素子センサが測定する圧縮・引張ひずみの方向は、プレス方向と同一とした。
上述したように設置したひずみ量測定手段5によって測定されたひずみ量は、図16に示すグラフにプロットされるようになっている。そして、図16に既に示されている、金型異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G11及び下限G12に挟まれる範囲)、または、成形異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G13及び下限G14に挟まれる範囲)に収まっているか否かによって、金型異常や成形異常を判定した。
図16に示されている、成形異常を判定するための平均化ひずみ量G15とそのひずみ量所定範囲、または、金型異常を判定するための平均化ひずみ量G16とそのひずみ量所定範囲の決定方法は、実施例1と同一の方法で行った。
表6から表9に、本発明例2として試作したプレス成形装置を用いたプレス成形試験結果を示す。
以上の結果より、本発明によって、製品異常の判定、もしくは金型異常の判定が高精度に達成されたものと考えられる。すなわち、湾曲凸形状の曲率中心7から10×R以内の領域にひずみ量測定手段5を配置することにより、製品異常の判定、もしくは金型異常の判定精度を発明例1よりも向上させることができる。
本成形では、測定対象金型としてポンチとダイの両方を選定し、図18に示すようにひずみ量測定手段5をポンチ1に1つ、ダイ2に1つ、計2つ設置した。
2つのひずみ量測定手段5はいずれも、ポンチとダイが成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりも、矢印で示すプレス方向側に位置するように設置した。
ただし、ポンチ1がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R5は5mmであり、ひずみ量測定手段5は当該湾曲凸形状の曲率中心7からプレス方向に−60mm離れた金型の内部に設置されている。つまり、曲率中心7から10×R以内の領域の外側にひずみ量測定手段5は配置されている。
また、ダイ2がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R3は3mmであり、ひずみ量測定手段5は当該湾曲凸形状の曲率中心7からプレス方向に+40mm離れた金型の内部に設置されている。つまり、曲率中心7からプレス方向に10×R以内の領域の外側にひずみ量測定手段5は配置されている。
ひずみ量測定手段5は、図9aに示したような、金型に貫通しないきり穴をあけて雌ねじを切り、きり穴の底に図9bに示したようなひずみセンサ8を入れて、プラグで軸力をかけて圧入する方法を用いた。
ひずみセンサ8としては、圧電素子センサを用いた。また、その圧電素子センサが測定する圧縮・引張ひずみの方向は、プレス方向と同一とした。
上述したように設置したひずみ量測定手段5によって測定されたひずみ量は、図19に示すグラフにプロットされるようになっている。そして、図19に既に示されている、金型異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G17及び下限G18に挟まれる範囲)、または、成形異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G19及び下限G20に挟まれる範囲)に収まっているか否かによって、金型異常や成形異常を判定した。
図19に示されている、成形異常を判定するための平均化ひずみ量G21とそのひずみ量所定範囲、または、金型異常を判定するための平均化ひずみ量G22とそのひずみ量所定範囲の決定方法は実施例1と同一の方法で行った。
表11から表14に、本発明例3として試作したプレス成形装置を用いたプレス成形試験結果を示す。
以上の結果より、本発明実施によって、製品異常の判定、もしくは金型異常の判定が達成されたものと考えられる。
本成形では、測定対象金型としてポンチとダイの両方を選定し、図20に示すようにひずみ量測定手段5をポンチ1に1つ、ダイ2に1つ、計2つ設置した。2つのひずみ量測定手段5はいずれも、ポンチとダイが成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりも、矢印で示すプレス方向側に位置するように設置した。
さらに、ひずみ量測定手段5は、ポンチ1がその表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R5が5mmであるので、湾曲凸形状の曲率中心7から半径50mm以内の領域内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置した。
また、ダイ2の表面に有する湾曲凸形状の曲率半径R3が3mmであるので、湾曲凸形状の曲率中心7から半径30mm以内の領域内部で、かつ、金型内部である領域に、図示するように設置した。
ひずみ量測定手段5は、図9aに示したような、金型に貫通しないきり穴をあけて雌ねじを切り、きり穴の底に図9bに示したようなひずみセンサ8を入れて、プラグで軸力をかけて圧入する方法を用いた。
ひずみセンサ8としては、圧電素子センサを用いた。また、その圧電素子センサが測定する圧縮・引張ひずみの方向は、プレス方向と同一とした。
上述したように設置したひずみ量測定手段5によって測定されたひずみ量は、図21に示すグラフにプロットされるようになっている。そして、図21に既に示されている、金型異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G23及び下限G24に挟まれる範囲)、または、成形異常を判定するためのひずみ量所定範囲(上限G25及び下限G26に挟まれる範囲)に収まっているか否かによって、金型異常や成形異常を判定した。
図21に示されている、成形異常を判定するための平均化ひずみ量G27とそのひずみ量所定範囲、または、金型異常を判定するための平均化ひずみ量G28とそのひずみ量所定範囲の決定方法は実施例1と同一の方法で行った。
表15から表18に、本発明例3として試作したプレス成形装置を用いたプレス成形試験結果を示す。
以上の結果より、本発明実施によって、製品異常の判定、もしくは金型異常の高精度な判定が達成されたものと考えられる。すなわち、湾曲凸形状の曲率中心7から10×R以内の領域にひずみ量測定手段5を配置することにより、製品異常の判定、もしくは金型異常の判定精度を実施例3よりも向上させることができる。
説明のために選定された特定の実施形態を参照して本発明が説明されたが、当業者には本発明の基本的概念及び範囲から逸脱することなく多数の変更が可能であることは明らかである。
Claims (7)
- ポンチと、該ポンチに対して相対移動するダイの少なくとも一つを測定対象金型としたときに、該測定対象金型は、少なくとも1つ以上の湾曲形状を有する成形部品を成形可能であり、該測定対象金型の内部に設置され、プレス成形に応じて生じる該測定対象金型のひずみ量を測定するためのひずみ量測定手段を有し、前記ひずみ量測定手段は、前記測定対象金型が成形下死点位置にあるときに、材料流出側のダイ肩R止まりよりもプレス方向側に位置し、前記ひずみ量測定手段は、前記測定対象金型の湾曲形状の端部を通り該端部における法線に対して前記湾曲形状から離れる方向に45°傾斜した面よりも曲率中心側の領域に位置することを特徴とするプレス成形装置。
- 前記ひずみ量測定手段は、前記測定対象金型が表面に有する湾曲形状の曲率半径をRとしたとき、前記湾曲形状の曲率中心から10×R以内の領域に位置することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形装置。
- 前記ひずみ量測定手段は、前記測定対象金型の表面から5mm以上離れて位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形装置。
- 被加工材に対してしわ押さえ荷重を付与するしわ押さえ金型をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス成形装置。
- ひずみ量測定手段が圧電素子センサであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレス成形装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレス成形装置を用いて、前記ひずみ量測定手段により測定したひずみ量が、所定範囲を超えたとき又は所定範囲を下回ったときに成形品の成形異常と判定するプレス成形方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレス成形装置を用いて、前記ひずみ量測定手段により測定したひずみ量が、所定範囲を超えたとき又は所定範囲を下回ったときに測定対象金型の異常と判定するプレス成形方法。
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