JP5833466B2 - 炭化用原料シート、その製造方法および製造装置、炭化物 - Google Patents
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Description
従来から炭素繊維には、PAN系とピッチ系の2種類の炭素繊維があるが、これらの炭素繊維を用いた炭化シートの製法としては、炭素繊維をいったん繊維として紡糸した後、不溶化工程を経て、1000℃以上の温度で焼成することで炭化するものである。これをシート化するにはさらにシートに織り上げる工程が必要である。
しかるに、この方式は、高強度の炭素繊維が得られる反面、不溶化工程が必要であり、焼成化工程が複雑であるために製造コストが嵩むという問題がある。
しかるに、この製法で得た炭化シートは、そのままの状態では破損する恐れがあるので、表裏両面を織物等の補強材で被覆補強し、使用に供するようにしている。このように、補強工程が必要なことから、やはり製造コストが高くなる。しかも、この補強や被覆は炭化シートが破損する恐れの高い状態で実行しなければならないので、注意深い操作と複雑高価な設備を必要とし、やはり製造コストは高いものとなる。
第2発明の炭化用原料シートは、第1発明において、前記植物繊維が竹繊維であること
を特徴とする。
第3発明の炭化用原料シートの製造方法は、繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とする植物繊維からなる植物繊維層を作る芯層工程と、繊維長が30〜70mmの範囲から選択されたものである植物系再生繊維からなる植物系再生繊維層を作る上下層工程と、前記植物繊維層の表裏両面に前記植物系再生繊維層を積層する積層工程と、前記植物系再生繊維層の植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通して、前記植物繊維層と前記植物系再生繊維層を互いに絡める絡め工程とを実行することを特徴とする。
第4発明の炭化用原料シートの製造装置は、繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とする植物繊維からなる植物繊維層を作成する芯層作成部と、繊維長が30〜70mmの範囲から選択されたものである植物系再生繊維からなる植物系再生繊維層を作成する上下層作成部と、前記植物繊維層に前記植物系再生繊維層を積層する積層機構と、積層された上下層における植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通す絡め部とを備えることを特徴とする。
第5発明の炭化物の製法は、請求項1記載の炭化用原料シートを任意の形状に加工し、
これを300〜1000℃で加熱して焼成することを特徴とする。
第6発明の炭化物は、請求項1記載の炭化用原料シートを任意の形状に加工し、これを
焼成して炭化したことを特徴とする。
また、植物系再生繊維の繊維長が、植物繊維層を植物系再生繊維層の間で絡めるに充分な長さを有しているので、植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通すだけで、植物繊維層を植物系再生繊維層に対し固定できる。このため、製造が簡単となり、製造コストを低減できる。
加えて、製品用途に応じた形状に加工する際にも、表裏両面を長繊維の植物系再生繊維層で挟まれているため丈夫であり、加工時に炭化用原料シートが損壊することはない。
第2発明によれば、植物繊維として竹繊維を用いているので、竹繊維由来の抗菌性・抗臭性、電磁波遮断性、遠赤外線放射性を発揮する炭化シートを製造できる。
第3発明によれば、芯層工程と上下層工程で作った植物繊維層と植物系再生繊維層を積層工程で、その順に積層しておくと、絡め工程で植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通すだけで、植物繊維層を植物系再生繊維層に対して絡めて固定できる。このように簡単な工程で炭化用原料シートを製造できるので、製造コストを低減できる。
第4発明によれば、芯層作成部で植物繊維層を作成でき、上下層作成部で植物系再生繊維層を作成できるので、積層機構で植物繊維層の両側に植物系再生繊維層を積層するだけで、絡め工程実行の準備ができる。絡め部では、植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通すという単純な作業だけで芯層を上層および下層に絡めることができるので、製造が早く能率よく行える。このため、製造コストを低減できる。
第5発明によれば、植物繊維層と植物系再生繊維層は、接着剤や熱融着繊維を用いずに植物系再生繊維のみで絡めているので、焼成しても繊維間の結合力が失われない。このため、焼成するだけで炭化シートが得られるので、製造コストを低減できる。また、焼成後に追加して被覆や補強を要することなく、丈夫な炭化物が得られる。
第6発明によれば、植物繊維層と植物系再生繊維層のいずれも植物由来であり、これらの織物が炭化すると抗菌性・抗臭性、電磁波遮断性、遠赤外線放射性を発揮することができる。
(炭化用原料シート)
図1に示す炭化用原料シートAは、芯層として植物繊維層1を用い、この植物繊維層の表裏両面に植物系再生繊維層2.2を積層したものである。
また、植物繊維層1と表裏両面の植物系再生繊維層2.2とは、植物系再生繊維層2中の一部の植物系再生繊維2aを用いて、互いに絡められ、固定されている。
また、この植物繊維層1は、繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とするものである。すなわち、全繊維量(重量比)の50%以上を1〜20mmの短繊維で占めている。短繊維が100%に近いほどより望ましいが、製造技術上、20mmを越える繊維長の繊維がある程度混入することは避けられないので、50%以上を短繊維で占めていれば、本明細書にいう主成分を占めているものとする。
植物系再生繊維には、様々なものがあるが、主として製法で分類すると、以下のものを例示できる。
1)レーヨン
木材パルプを原料とし、天然セルロースを繊維状に再生したものである。具体的には、セルロースを水酸化ナトリウムと二硫化炭素で処理したものを硫酸液中に紡糸したものを例示できる。
2)ポリノジック
レーヨンの中の高級品であり重合度、即ち結晶度の高いものをいう。湿潤強度に優れる糸である。
3)キュプラ
銅アンモニア法によって作られたレーヨンである。具体的には、銅アンモニア溶液にセルロースを溶解させた後、酸性液中に紡糸して作られる。
4)リヨセル
セルロースそのものを溶剤に溶解させた溶液を紡糸したものである。具体的には、セルロースをメチルモルホリンオキシド溶液に溶解した後、同液の希薄液中に紡糸したものを例示できる。
5)アセテート
セルロースに酢酸を反応させたアセチルセルロースから作る繊維である。アセチル基の数によりジアセテートとトリアセテートとがある。
このように、植物繊維由来(天然繊維も再生繊維も含む)のシートを作成し、そのシートを直接的に焼成することで従来の不溶化・焼成工程、織物工程を省き、簡便的に植物繊維炭素化シートを製造することができる。これが、本発明の技術原理である。
(1)生産速度が早い
本発明の炭化用原料シートAは、長繊維と短繊維の積層方式であり、生産速度として最大30m/minは確保できるので生産性が高い。
(2)シート厚さの調整が容易
本発明の炭化用原料シートAは、3層構造の内の芯層2の植物繊維量を変更するだけで、容易に厚さを調整できる。シートの厚さを容易に調整できるというのは、多方面にわたり活用するにあたって必要不可欠である。
(3)高い電磁波遮断率が可能
本発明の炭化用原料シートAは、植物繊維を積層してシートを形成する方法であるので、目付量を増やすことは容易であり、必然的に空隙率は低くなる。結果として、1m2あたりの植物性の炭素繊維含有量を多くすることが容易となり、電磁波遮断率も高くなる。
(4)追加工程が不用
長繊維の植物系再生繊維層2.2で植物繊維層1を挟んだ構造であるので、強度が高く、そのまま炭化しても更に強度確保のための被覆等の追加工程をする必要がない。このため低コストで製造できる。
本発明の製造方法を、図3に基づき説明する。
同図に示す植物繊維層1および植物系再生繊維層2.2は、それぞれの製造工程で製造されているものである(なお、各製造工程の詳細は後述する)。植物繊維層1の表裏両面に植物系再生繊維層2.2が重ねられた状態で、絡め工程を実行する絡め部50に送り込まれる。
絡め部50では、植物系再生繊維層2の中の一部の長繊維を厚さ方向に通す絡め工程が実行される。この絡め工程には、長繊維を炭化用原料シートAの厚さ方向に通す装置が用いられるが、この装置には、ニードルパンチ機50Aやウォータージェット機、ステッチボンド機などが例示できる。
このため、植物系再生繊維層2.2と植物繊維層1は互いに縫い合わされて固定された状態となる。
図4に基づき、本発明の炭化用原料シートを得るに好適な製造装置を説明する。
本発明の製造装置は、主として、芯層作成部10と上下層作成部20、30と積層機構40と絡め部50とからなる。芯層作成部10は、繊維分散箱11とエアーレイド機12からなる。繊維分散箱11内に、植物繊維1aを入れておき、エアーレイド機12を駆動すると、空気流を利用して短繊維にして、これを積層し、ウエブを形成する。
なお、エアーレイド機12の手前から後述する絡め部50にかけて、コンベヤ41が配設されている。
下層作成部30は、供給箱31とコンベヤ32とカード機33とからなる。
供給箱31に植物系再生繊維2aを入れてコンベヤ32に定量ずつ供給し、カード機33でウエブを形成する。カード機33は、大径のドラムの半周上に複数本のロールを配置した公知の装置であり、繊維がロールからロールに移るたびに繊維の方向が揃えられる。カード機33の出側は、前記コンベヤ41に接続されているので、方向が揃えられた植物系再生繊維は植物系再生繊維層2としてウエブ形成された状態でコンベヤ42で移送されていく。
下層作成部30で作成された下層用の植物系再生繊維層2は、コンベヤ41にのせられて移送され、その上面に芯層作成部70で作成された植物繊維層1がのせられ、更に上層作成部20で作成された植物系再生繊維層2がのせられて、3層となる。この3層状態で絡め部50へ送り込まれる。
このようにして得られた炭化用原料シートAは、巻取り部60でロールRに巻き取られるか、適度な寸法で切断されシート上で積み上げられる。
(炭化シート)
図5に基づき、本発明の炭化用原料シートAを炭化する方法を説明する。
(I):炭化用原料シートAは、ロールRから巻き出したものか、予めシート状に切断したものである。
(II):炭化用原料シートAを、製品用途に応じた形状に加工する。B1は抗菌・抗臭用のシート状製品を示し、B2は電磁波遮蔽用ボックスを示しているが、これらは例示であり、(II)工程において必要な形状に加工される。
この加工時において、本発明の炭化用原料シートAは、表裏両面を長繊維の植物系再生繊維層2.2で挟まれているため丈夫であり、加工時に損壊することはない。
このようにして得られた炭化物は、下記のように抗菌性・抗臭性、電磁波遮断性、遠赤外線放射性を発揮することができる。
竹炭素繊維の特徴は、多孔質であるため、空気中の汚れや臭いを吸着したり、湿度を調整する機能があるほか、遠赤外線効果による身体をあたためる機能がある。また、電磁波を遮断し、導電性が高いという特徴もある。
竹炭素繊維シートは家庭向きの汎用用途として、抗菌性・抗臭性・電磁波遮断性・遠赤外線効果を活かした寝具、服飾品、家電品カバー、携帯電話ケースなどへの利用が可能であり、軽量材料でありながら、電磁波シールド特性を有している。
電磁波は、電界と磁界の両方の特性を有するため、電界シールド(通電性のよいもの)で囲んでアースして電気を逃す。一方、磁界シールドは有効な厚みを有する磁性体で囲むようにしている。したがって、電磁シールド材としては導電金属、金属メッシュ板、導電塗料、メッキがある。これに近いものが炭素繊維であり、しかもこの炭素繊維は導電性ばかりでなく多孔質であるため電磁波を吸収消滅させるという特性を有するので、電磁波遮断用ボックス等には有効である。
2 植物系再生繊維層
10 芯層作成部
20 上層作成部
30 下層作成部
50 絡め部
A 炭化用原料シート
Claims (6)
- 植物繊維層と、
該植物繊維層の表裏両面に積層された植物系再生繊維層とからなり、
前記植物繊維層と前記植物系再生繊維層は、厚さ方向に通された植物系再生繊維により互いに絡められ、
前記植物繊維は、繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とし、
前記植物系再生繊維は、繊維長が30〜70mmの範囲から選択されたものである
ことを特徴とする炭化用原料シート。 - 前記植物繊維が、竹繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の炭化用原料シート。
- 繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とする植物繊維からなる植物繊維層を作る芯層工程と、
繊維長が30〜70mmの範囲から選択されたものである植物系再生繊維からなる植物系再生繊維層を作る上下層工程と、
前記植物繊維層の表裏両面に前記植物系再生繊維層を積層する積層工程と、
前記植物系再生繊維層の植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通して、前記植物繊維層と前記植物系再生繊維層を互いに絡める絡め工程とを実行する
ことを特徴とする炭化用原料シートの製造方法。 - 繊維長が1〜20mmの短繊維を主成分とする植物繊維からなる植物繊維層を作成する芯層作成部と、
繊維長が30〜70mmの範囲から選択されたものである植物系再生繊維からなる植物系再生繊維層を作成する上下層作成部と、
前記植物繊維層に前記植物系再生繊維層を積層する積層機構と、
積層された上下層における植物系再生繊維の一部を厚さ方向に通す絡め部とを備える
ことを特徴とする炭化用原料シートの製造装置。 - 請求項1記載の炭化用原料シートを任意の形状に加工し、これを300〜1000℃で
加熱して焼成することを特徴とする炭化物の製法。 - 請求項1記載の炭化用原料シートを任意の形状に加工し、これを焼成して炭化したこと
を特徴とする炭化物。
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