JP5832415B2 - ロボットシステム - Google Patents

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Description

この発明は、産業用ロボットとして用いられるロボットシステムに関するものである。
リンク構造を持つロボットマニピュレータは,手先位置決め精度を向上させるために筐体の剛性が高くて慣性・質量が大きい上,動作時に加減速を激しく繰り返している。
つまり,ロボット動作のために必要な投入エネルギー量が大きいという問題がある。ロボット動作において、減速時の運動エネルギーを効率的に回生して再利用することは、通常は困難である。
そこで、機構的に減速時にエネルギーを蓄積し、加速時にエネルギーを解放して加速のために再利用する方法が試みられている。例えばロボットの関節に対し並列にバネなどの弾性体を装着する方法がある。関節に弾性体を並列装着する技術は知られており、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1に開示された技術は、関節で連接されるリンク、関節を駆動するアクチュエータ、アクチュエータと並列接続された可変弾性の(弾性値を可変設定可能な)弾性体、弾性体と関節の接続を入切するクラッチを備え、特許文献2に記載の技術は、それに加えて弾性値(弾性率)の制御則を備えている。
特開2001−287177号公報 特許第3674778号公報
特許文献1及び特許文献2のいずれに開示の技術も、ジャンプ動作など、瞬間的に大きな外力を受け止めたり、大きな作用力を発揮する際に、小さな出力のアクチュエータでも動作できるようにしたりする効果を狙っている。その弾性体の弾性値は、ロボットの所望の関節動作の周期が、弾性体による固有振動の周期よりも遙かに低くなるよう設定されている。あるいは、関節が共振現象振動の影響を受けないように、弾性体が振動し始めたらクラッチを切って関節に振動が伝わらないような制御を行っている。つまり、産業用ロボットで多用される周期的な作業動作において省エネルギー化を図ることは何ら考慮されていない。
このように、特許文献1、特許文献2で開示された従来の技術は、構造状、弾性体を用いてはいるものの、省エネルギー効果を発揮できていないという問題点があった。
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、繰り返し往復運動を行なうロボットにおいて,上記往復運動を継続して実行するために必要なエネルギー投入を必要最小限に抑え省エネルギー化を図ったロボットシステムを得ることを目的とする。
この発明に係る請求項1記載のロボットシステムは、ロボットと、前記ロボットの動作を制御するロボット制御部とを備え、前記ロボットは、ベース部と第1の関節部を介して接続される第1のアーム部と、前記第1のアーム部と第2の関節部を介して接続される第2のアーム部とを備え、前記第1及び第2のアーム部は第1及び第2の関節部を中心とした回転動作が可能であり、前記ベース部及び第1のアーム部間に設けられ、第1の弾性値が可変設定可能な第1の弾性体と、前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部間に設けられ、第2の弾性値が可変設定可能な第2の弾性体とを備え、前記ロボット制御部は、一方作業領域内における一方目標位置と他方作業領域内における他方目標位置間を、前記第1及び第2の弾性体による弾性力が作用しない平衡角度点を通過させながら、前記第1及び第2のアーム部に前記回転動作を実行させて前記一方作業領域,前記他方作業領域間を往復運動させる際、前記平衡角度点〜前記一方目標位置間の区間である一方目標区間において共振動作可能に前記第1及び第2の弾性値を一方目標位置用弾性値として設定し、前記平衡角度点〜前記他方目標位置間の区間である他方目標区間において共振動作可能に前記第1及び第2の弾性値を他方目標位置用弾性値として設定し、前記往復運動の前記平衡角度点の通過時において、前記一方目標区間は前記一方目標位置用弾性値となり、前記他方目標区間は前記他方目標位置用弾性値となるように切り替え制御を行う。
請求項1記載の本願発明であるロボットシステムにおけるロボット制御部は、往復運動の平衡角度点の通過時において、一方目標区間は一方目標位置用弾性値となり、他方目標区間は前記他方目標位置用弾性値となるように切り替え制御を行うことにより、第1及び第2の弾性体による共振動作によって、一方目標位置〜他方目標位置間の往復運動をロボットに実行させることができる。その結果、上記回転動作を実現する駆動源である第1及び第2の関節部を駆動するアクチュエータによるエネルギー消費を最小限に抑えながら、省エネルギー化した往復運動を実行することができる。
この発明の実施の形態1であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。 図2は固有周波数ωによる出力の関係を示すグラフである。 この発明の実施の形態2であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムで用いられるロボットの構成を示す説明図である。 この発明の実施の形態3であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。
<実施の形態1>
(構成)
図1は、この発明の実施の形態1であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。同図に示すように、実施の形態1のロボット1は、一方の作業領域(PICK領域)からワーク(図示せず)をつまみ上げ、他方の作業領域である作業領域(PLACE領域)42に運ぶ作業を実施する。
ロボット1はベース部10、アーム部11、アーム部12、関節部21、関節部22、可変弾性体31、及び可変弾性体32を主要構成部として有する。
ベース部10は固定部13に固定され、X軸に沿って設けられる。アーム部11はベース部10に関節部21を介して取り付けられ、アーム部11は関節部21の中心部を回転軸としてXY平面上で回転可能である。
アーム部12は関節部22を介してアーム部11に取り付けられ、アーム部12は関節部22の中心部を回転軸としてXY平面上で回転可能である。すなわち、実施の形態1におけるロボット1において,省エネルギー動作の対象となる関節数は関節部21及び関節部22の2つである。
また、関節部21及び22に並列に弾性値が可変設定可能な可変弾性体31及び32が取り付けられる。すなわち、可変弾性体31の一端がベース部10に他端がアーム部11にそれぞれ固定されることにより、可変弾性体31はベース部10及びアーム部11間に設けられ、可変弾性体32の一端はアーム部11に他端はアーム部12にそれぞれ固定されことにより、可変弾性体32はアーム部11及びアーム部12間に設けられる。
(原理)
図1において、ロボット1の手先(アーム部12の先端部分、正確にはアーム部12の先端部分に取り付けられる付加軸(図示せず))が到達する空間内の点のXY座標を、目標手先位置9α、目標手先位置9β、目標手先位置9γ及び平衡角度点Xeとする。なお、目標手先位置9αと目標手先位置9βとはX軸に対して対称な位置関係にある。
平衡角度点Xeはx軸上の平衡角度点(中立点、アーム部11及びアーム部12の関節角q及び関節角qが“0”となった状態でX軸上に配置され、可変弾性体31及び32による弾性力が関節部21及び22に作用しなくなる点)である。関節部21及び22においてモータ等のアクチュエータ(図示せず)により回転トルクが印加されることにより、アーム部11及び12を関節部21及び22を回転軸として回転動作させることができる。なお、アクチュエータと関節の間に減速器(図示せず)を設けても良い。
ロボット1のアーム部11及び12のリンク長をそれぞれl及びlとし、関節部21及び22によるベース部10及びアーム部11の延長線に対する角度である関節角(回転角)をそれぞれq及びqとし、関節部21及び22に並列に設けられた可変弾性体31及び32の弾性値をk及びkとしている。
なお、弾性値k及びkは可変設定可能である。可変設定する機構としては、例えば、実施の形態2で詳述する弾性体制御部15及び16に相当する構成が考えられる。
可変弾性体31及び32は弾性値k及びkに従って関節角q及びqに比例した反力を発生し、各関節部21及び22には上記反力に応じたトルクが、アクチュエータの(モータ)トルクに重畳される。
なお、可変弾性体31及び32がバネで構成される場合において、バネ定数は、バネに負荷を加えたときの、荷重を伸びで割った比例定数となる。一方、弾性値(剛性値)は,バネ定数に影響を与える物性のパラメータである。両者は比例関係にあるため、ほぼ同じ意味合いになる。
このような構成において、ロボット1のアーム部12の先端部が平衡角度点Xeから目標手先位置9βに移動して静止し、付加軸(図示せず)を動かしてワークを把持し、その後、平衡角度点Xeを経由して、目標手先位置9αに移動する。その後、目標手先位置9αで静止して、付加軸を動かしてワークをリリースし、次に平衡角度点Xeを経由して目標手先位置9γ(目標手先位置9βと異なる)に移動して静止し、付加軸を動かしてワークを把持し、次に平衡角度点Xeを経由して、再び目標手先位置9αに移動する。さらに、目標手先位置9αで静止して、付加軸を動かしてワークをリリースする。このように、ロボット1はアーム部11及び12による回転動作によって、繰り返し実行される作業領域41,42間の往復運動を行うことができる。なお、目標手先位置9α〜9γへの静止時に関節角度を固定するためのブレーキを用いる態様も考えられる。
実施の形態1のロボットシステムではロボット1の上述した作業領域41,42間で繰り返し実行される往復運動を想定している。この往復運動を実施するための、省エネルギー制御則を考える。ここでいう、省エネルギー化とは、アクチュエータを駆動するエネルギー投入量の最小化を図ることを言う。
そして、ロボット制御部5は、後述する演算式により求めた省エネルギー制御則に沿って、繰り返し実行される上記往復運動が実施できるように、ロボット1を制御する。
(制御則)
実施の形態1では、以下の式(1)で示すPD(比例微分)フィードバック制御則、式(2)で示す剛性調整則を用いる。
Figure 0005832415
ここで、エネルギー評価を行うにあたり、以下の式(3)を設定する。
Figure 0005832415
実施の形態1では、投入エネルギーJnをなるべく小さくすべく、関節部21及び22用のアクチュエータのトルクτを小さくできる制御を考える。
式(1)〜式(3)で決定する条件下で、移動の目標地点(目標手先位置)をたどる目標軌道を得るため,関節部21及び22用のアクチュエータへのトルク指令、弾性値k及びkの変化に関する制御則を以下で示す式(4)を用いて計算する。実施の形態1では、可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを全体のポテンシャルエネルギーが一定になるように変化させることを目標としている。その結果、目標軌道も定まる。
なお、上記したポテンシャルエネルギーとは、図1において、ロボット1のアーム部12の先端が目標手先位置9α(9β,9γ)に位置する場合における可変弾性体31及び32に蓄積された弾性エネルギーを意味する。
まず、ロボットの運動方程式は、以下の式(4)で表される。
Figure 0005832415
実施の形態1において、可変弾性体31及び32それぞれの弾性値k及びkは、ロボットの先端が平衡角度点Xe(Y軸上の点)を通過するとき、その値が変更される。理想的には瞬間的に切り替えられるが、実際には,時間遅れを伴って切り替わる。
上記弾性値k及びkの切り替え時の変化の遅れは可変剛性機構の特性によるため機構の弾性値変化の遅れを可変弾性体31及び32の固有周波数により確認する。可変剛性機構の応答遅れだけを見る場合、減数係数ζ=1にして以下の式(5)で示す伝達関数を設定する。ζ=1はオーバーシュートしないように制御則を設定することで実現できる。
Figure 0005832415
次に、入力をステップ応答にした出力を逆ラプラス変換から以下の式(6)として導入する。
Figure 0005832415
なお、式(5)及び式(6)において、ωは可変弾性体31及び32用に設定される固有周波数である。図2は固有周波数ωによる出力の関係を示すグラフである。同図において、L1,L2,L3,L4及びL5は可変弾性体31及び32の固有周波数ω(Hz)が0.01,0.1,1,10,100の場合の応答特性を示している。同図に示すように、固有周波数ωが大きい程、出力応答性は良い。
以下、ロボットの運動について、線形なダイナミクスから共振状態となるときの振幅比rと、角周波数ωを求めるべく、理想的には可変弾性体31及び32用のアクチュエータのトルクτが“0”となるバネ運動方程式となる式(7)及び式(8)を導出する。なお、式(7)及び式(8)において、k及びkは前述したように可変弾性体31及び32の弾性値であり、mはアーム部12の重量であり、I及びIはアーム部11及び12の慣性モーメントである。
Figure 0005832415
ここで、以下の式(9)及び式(10)に示すように、変数a,bを設定すると、振幅比rと角周波数ωは以下の式(11)及び式(12)で決定する。
Figure 0005832415
Figure 0005832415
(目標振幅)
逆運動学による目標手先位置から目標関節角度、すなわち、振幅Ad1,Ad2を以下の式(13)及び式(14)から導出する。なお、振幅とは繰り返し実行される上記往復運動の実行時における関節角の変動幅を意味する。また、これらの式において、添え字の“d”は目標手先位置(図1では、dはα〜γ(目標手先位置9α〜目標手先位置9γ)のいずれか)であり、添え字の“1”,“2”はアーム部11及び12を示しており、“1”がアーム部11、“2”がアーム部12を示している。また、前述したようにl及びlはアーム部11,12のリンク長を示しており、x及びyは目標手先位置dにおけるX座標及びY座標を示している。
Figure 0005832415
(目標振幅比)
各関節部21,22の目標振幅から弾性値k及びkを導出すべく、必要な関節部21,22間の目標振幅比rを以下の式(15)により求める。なお、目標角周波数は図2の応答特性を考慮して予め決定される。なお、目標角周波数とは、例えば目標手先位置が目標手先位置9βの場合、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9β間(一方目標区間)の目標位置到達周波数を意味し、目標手先位置が目標手先位置9αの場合、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9α間(他方目標区間)間の目標位置到達周波数を意味する。
この際、アーム部11及び12の回転動作時において、上記一方目標区間の目標角周波数ω(目標位置到達周波数)はアーム部11及び12間で同一に設定され、上記他方目標区間の目標角周波数ω(目標位置到達周波数)はアーム部11及び12間で同一に設定される動作条件が課される。
Figure 0005832415
(目標弾性値)
式(15)により決定した目標振幅比r及び予め決定された目標角周波数ωから、式(11)及び式(12)を解法することにより、以下の式(16)及び式(17)に示すように、振幅比rと目標角周波数ωとに基づき、目標角周波数ωを可変弾性体31及び32の固有振動数とする目標弾性値(k及びk)が算出される。また、上記一方目標区間及び上記他方目標区間の目標振幅比rが同一の場合、目標位置が変化しても滑らかな起動変化が可能となる。
なお、式(16)及び式(17)では、目標手先位置9βの場合の弾性値k及びkを示している。すなわち、繰り返し実行される上記往復運動における平衡角度点Xe〜目標手先位置9βの区間(上記一方目標区間)に設定される可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを示している。
また、前述したように、目標手先位置9αは目標手先位置9βに対してX軸対象であるため、式(16)及び式(17)は、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9αの区間(上記他方目標区間)に設定される可変弾性体31及び32の弾性値k及びkに等しくなる。したがって、式(16)及び式(17)で示される弾性値が作業領域42の目標手先位置9αを目標位置とした場合の上記他方目標区間において設定すべき弾性値k及びkとなる。
Figure 0005832415
その後、目標手先位置9βを他の目標手先位置に切り替える場合、例えば、作業領域41における目標手先位置9βから目標手先位置9γに切り替える場合、以下の式(18)及び式(19)を満足して、目標手先位置9β(9α)及び目標手先位置9γに位置するときのポテンシャルエネルギーを一定にする弾性値k及びkを以下の式(20)及び式(21)により設定する。なお、式(20)及び式(21)は目標手先位置9γとした場合の可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを示している。すなわち、繰り返し実行される上記往復運動における平衡角度点Xe〜目標手先位置9γの区間(上記一方目標区間)に設定されるべき可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを示している。
Figure 0005832415
Figure 0005832415
(変更後目標角周波数)
同様に、作業領域41における目標手先位置が目標手先位置9βから目標手先位置9γに切り替わる場合、式(22)に示すように、目標手先位置9β(9α)及び目標手先位置9γ間のポテンシャルエネルギーが一定になるように、式(20)及び式(21)に従い弾性値を変化させたときの目標角周波数を求める。なお、式(22)は目標手先位置を目標手先位置9γとした場合の目標角周波数を示しており、この目標角周波数が可変弾性体31及び32の固有周波数となる。
Figure 0005832415
(目標関節角度軌道)
上述した式(13)〜式(22)に基づき、以下の式(23)に示すように、目標軌道を作成することができる。なお、式(23)において、qβ1及びqβ2は目標手先位置9βとした場合の関節部21及び22の関節角度(回転角度)、qγ1及びqγ2は目標手先位置を目標手先位置9γとした場合の関節部21及び22の関節角度を示している。
Figure 0005832415
以上により、目標軌道を実現する制御則の設計ができる。これにより、目標軌道も定まる。
(制御動作)
このように、実施の形態1では、一方の作業領域41内における目標手先位置9β,9γ(一方目標位置)と他方の作業領域42内における目標手先位置9α(他方目標位置)との間を、平衡角度点Xeを通過させながら、アーム部11及び12を回転させて上記往復運動させる際、弾性値k及びkは以下のように設定される。
ロボット制御部5により、上記一方目標区間(作業領域41〜平衡角度点Xe)において共振動作可能な弾性値k及びkが一方目標位置用弾性値として設定され、上記他方目標区間(作業領域42〜平衡角度点Xe)において共振動作可能な弾性値k及びkが他方目標位置用弾性値として設定される。
例えば、目標手先位置9αから目標手先位置9γに移動する場合、目標手先位置9αから平衡角度点Xeまでの区間(上記他方目標区間)において可変弾性体31及び32の弾性値が上記他方目標位置用弾性値として弾性値kα1,kα2(=kβ1,kβ2)に設定され、平衡角度点Xeから目標手先位置9γまでの区間(上記一方目標区間)において可変弾性体31及び32の弾性値が上記一方目標位置用弾性値として弾性値kγ1,kγ2に設定される。
そして、上述した目標角周波数の動作条件下で、ロボット制御部5はロボット1を以下のように制御する。
ロボット制御部5は、ロボット1の上記往復運動の平衡角度点Xeの通過時において、上記一方目標区間は上記一方目標位置用弾性値となり、上記他方目標区間は上記他方目標位置用弾性値となるように弾性値k及びkの切り替え制御を行う。なお、ロボット制御部5は可変弾性体31及び32の弾性値設定、目標軌道に沿ったアクチュエータの駆動制御等、ロボット1に関するあらゆる制御が可能である。
したがって、目標手先位置9αから平衡角度点Xeまでの区間(上記他方目標区間)において可変弾性体31及び32は共振動作を実行し、かつ、目標手先位置9γから平衡角度点Xeまでの区間(上記一方目標区間)においても可変弾性体31及び32は共振動作を実行する。
すなわち、空気抵抗、関節部21及び22における回転時に摩擦抵抗等を無視した場合、上記回転動作を実現する駆動源である関節部21及び22を駆動するアクチュエータによるトルクτを“0”にして、ロボット1に上記往復運動を実行させることができる。
その結果、実施の形態1のロボット1は、繰り返して上記往復運動を実行する場合、関節部21及び22を駆動するアクチュエータの消費エネルギーを大幅に削減することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態1では、上記一方目標位置用弾性値と上記他方目標位置用弾性値とは、上記一方目標位置に到達時の可変弾性体31及び32に蓄積されたポテンシャルエネルギー(一方目標位置用ポテンシャルエネルギー)と、上記他方目標位置に到達時の可変弾性体31及び32に蓄積されたポテンシャルエネルギー(他方目標位置用ポテンシャルエネルギー)とが同一になるように設定されている。
したがって、実施の形態1のロボットシステムは、上記一方目標位置用ポテンシャルエネルギーと上記他方目標位置用ポテンシャルエネルギーとが同一になるように上記一方目標位置用弾性値及び上記他方目標位置用弾性値を設定することにより、ロボット1によって繰り返し実行される往復運動のさらなる省エネルギー化を図ることができる。
<実施の形態2>
図3は、この発明の実施の形態2であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムで用いられるロボットの構成を示す説明図である。
関節部21及び22に並列に可変弾性体31及び32を設けた場合において、可変弾性体31及び32の弾性力が関節部21及び22による回転動作に影響を与えないように、影響度合“0”状態に設定できる弾性力除去機能を有するのが実施の形態2のロボット2である。なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様、ロボット2はロボット制御部5相当の制御部によって制御される。
同図に示すように、ベース部10,アーム部11間において、ベース部10の固定点27に可変弾性体31(バネ)の一端を固定し、弾性体制御部15によって可変弾性体31の他端を関節部21の中心部を含むアーム部11上の移動区間D15内を移動可能にしている。
具体的には、弾性体制御部15はモータ23、ネジ25、及びナット29で構成され、可変弾性体31の他端である吊り元に接続されたナット29がネジ25に取り付けられている。ネジ25はモータ23の駆動により回転され、ネジ25の回転によりナット29、すなわち、可変弾性体31の他端は移動区間D15間を移動可能となる。
同様にして、アーム部11,アーム部12間において、アーム部12の固定点28に可変弾性体32(バネ)の一端を固定し、弾性体制御部16によって可変弾性体32の他端を関節部22の中心部を含むアーム部11上の移動区間D16内を移動可能にしている。
弾性体制御部16は弾性体制御部15と同様、モータ24、ネジ25、及びナット30で構成され、可変弾性体32の他端である吊り元に接続されたナット30がネジ26に取り付けられる。ネジ26はモータ24の駆動により回転され、ネジ26の回転によりナット30、すなわち、可変弾性体32の他端は移動区間D16間を移動可能となる。
したがって、弾性体制御部15及び16により、ナット29及びナット30を関節部21及び22の中心点に固定することにより、可変弾性体31及び32が関節部21及び22による回転動作に影響を与えない、影響度合“0”状態に設定できる。
このように、実施の形態2のロボット2における弾性体制御部15及び16は弾性力除去機能を有することにより、可変弾性体31及び32の他端を関節部21及び22の中心点に固定して可変弾性体31及び32の弾性力による回転動作への影響度合を“0”状態に設定することができる。
したがって、実施の形態2のロボット2は、上記影響度合“0”状態に設定することにより、関節部21及び22に並列にバネ等の弾性体を設けない従来のロボットと同様、関節部21及び22の駆動用に設けたアクチュエータにより、任意の軌道上を加減速移動し、任意の目標手先位置で停止することができる。
一方、弾性体制御部15及び16により、可変弾性体31及び32の他端(ナット29及び30)を関節部21及び22の中心点でなく、移動区間D15及びD16上の所望位置に設定することにより、可変弾性体31及び32の弾性値k及びkをそれぞれ所望の弾性値に設定することができる。
すなわち、実施の形態1のロボット1のように、実施の形態2のロボットを制御することにより、省エネルギー化を図った往復運動を行なうことが出来る。
このように、実施の形態2のロボット2は、高速動作が必要なときには、弾性体制御部15及び16の弾性力除去機能により、可変弾性体31及び32を影響度合“0”にして、アクチュエータを通常のロボット同様に制御して上記往復運動の高速化を図ることができる。
一方、省エネルギー動作が必要になれば、弾性体制御部15及び16による弾性力除去機能を発揮させずに、可変弾性体31及び32の弾性値を実施の形態1と同様の制御則で変化させ、アクチュエータへのエネルギー投入を抑制して、省エネルギー化を図った上記往復運動を実行することができる。
このように、実施の形態2は、弾性体制御部15及び16による可変弾性体31及び32の他端の位置を設定することにより、高速化及び省エネルギー化のうち所望する態様で上記往復運動をロボット2に実行させることができる。
なお、図3に示した構成以外にも、可変弾性体31及び32の他端(吊り元)とアーム部11の接続点との間にクラッチを設け、接続・非接続を切り替え、接続状態時は省エネルギー化、非接続状態時には高速化を図った上記往復運動を実行させる構成も考えられる。
上述したように、実施の形態2のロボットシステムにおいて、ロボット2は弾性体制御部15及び16を有している。このため、実施の形態1のロボットシステムと同様、省エネルギー化した上記往復運動をロボット2に実行させたり、上記弾性力除去機能により可変弾性体31及び32の弾性力による回転動作への影響度合を“0”にして、ロボット2を可変弾性体31及び32が存在しない構成のロボットとして上記往復運動の高速化を図ったりすることができる。
<実施の形態3>.
実施の形態3のロボットシステムは、実施の形態1のロボットシステムの動作モードに加え、アーム部12の先端に関し、任意の作業目標手先位置・姿勢(実施の形態1で述べた目標手先位置9α〜9γ等)を教示する教示モードを備える。
図4は、この発明の実施の形態3であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。実施の形態3のロボット3は、実施の形態2のロボット2と同様、弾性体制御部15及び16に相当の弾性値制御機能(弾性力除去機能を含む)を有しており、実施の形態2では、実施の形態1のロボット制御部5に相当するロボット制御部6内にプログラム記憶手段として記憶部7を有している。記憶部7は教示モード用に設けられる。
実施の形態2のロボットシステムは、いわゆるダイレクトティーチ、あるいは、ロボット制御部6に有線あるいは無線で接続されるティーチングペンダント8によるリモート操作により、ロボット3を、所望する作業目標手先位置に移動させる。ダイレクトティーチの場合は実施の形態2のロボット2の弾性体制御部15及び16相当の制御部を制御し、弾性力除去機能を発揮させ可変弾性体31及び32の弾性力の回転動作への影響度合“0”にして行う。また、ダイレクトティーチの場合は手動で関節位置を変更することになる。リモートティーチの場合は、アクチュエータに微少動作指令を加えて少しずつ関節位置を駆動させることになる。教示点は初めて教える場合と、教示点を追加する場合があるが、いずれでも同様に追加できる。
そして、ロボット3の先端に取り付けられたエンドエフェクタあるいはロボットハンドが、ロボット3の作業空間内に存在する目標手先位置および目標姿勢に到達するように、ロボット3の各関節角度、関節位置を動かして行き、目標に到達したときに静止させる。目標手先位置に到達したことは、作業者の目視、あるいはセンサの指示値により確認することができる。
目標手先位置に到達した場合に、ロボットの関節部21及び22それぞれの関節角q及びqを、プロクラム記憶手段である記憶部7に記憶させる。記憶させる目標手先位置が目標手先位置9α、〜9γ(以下、単に「α,β,γ」と略記する場合あり)の3点の場合は、同じ作業を3回繰り返し、関節部21及び22それぞれのqα、qβ、qγが記憶部7に記憶させられる。
つぎに、目標手先位置9α〜9γを巡回するシーケンスを記憶部7に記憶させる。これは、ロボット言語による記述、あるいはフローチャートによる記述を用いる。ロボット言語の場合は、{mov α,mov β,mov α,mov γ}というように作業者がロボット制御部6上あるいは他のパソコン上で実行可能なテキストエディタソフトウェア等を用いて作成したテキストデータを記憶部7に記憶させることで実現される。
その結果、目標手先位置に関し、{α→β→α→γ→α→β・・・}という動きを繰り返すことになる。フローチャートの場合は、作業者がロボット制御部6あるいは他のパソコン上のフローチャート専用エディタソフトウェアで作成した{α→β→α→γ}と記したフローチャートのデータを記憶部7に記憶させる。
このとき、各目標手先位置への移動は、省エネモード(可変弾性体31及び32を有効に機能させるモード)で移動するか通常モード(高速動作可能に可変弾性体31及び32の回転動作への影響度合を“0”にするモード)で移動するかも併せて指定する。あるいは、ロボットプログラム中で省エネモードと通常モードの切り替え宣言を記述しておくこともできるものとする。例えば次のとおり、{mov α,省エネモード;mov β,省エネモード;mov α,省エネモード;mov γ,省エネモード}と記載してもよく、ロボットシステムのロボット制御部6用の操作盤にモード切替スイッチを設けても良い。
すべての目標手先位置の教示完了後、あるいは新規目標手先位置の追加教示完了後、ロボット3のアーム部11及び12の共振動作上の平衡角度点Xe(実施の形態1のように、アーム部11及び12がX軸に沿って伸びている状態等)が求められ、アーム部11及び12が平衡角度点Xeを通過する際に、可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを変化させるが、弾性値の値及び変化させる順番を計算で求めて、記憶部7に記憶させる。具体的には、アーム部11及び12用の関節部21及び22に並列に設けられる可変弾性体31及び32の弾性値k及びkを以下のように切り替えることが、記憶部7に記憶させる。
可変弾性体31の弾性値を{kα1→kβ1→kα1→kγ1}で変化させ、可変弾性体32の弾性値を{kα2→kβ2→kα2→kγ2}で変化させる。
教示モードにおける目標手先位置の記憶と各種計算が完了すると、ロボット制御部6の制御下で通常モードあるいは省エネモードでロボット3による上記往復運動を実行することができる。
このように、実施の形態3のロボットシステムは、教示モードにて確認しながら他方目標位置(目標手先位置9α)及び一方目標位置(目標手先位置9β,9γ)を設定して、省エネルギー化あるいは高速化を図った、他方目標位置及び一方目標位置間の往復運動をロボットに実行させることができる。
(その他)
ロボット制御部5及びロボット制御部6による、弾性値k及びk等の設定処理、ロボット1〜3の制御動作等の一連の処理は、例えば、ソフトウェアに基づくCPUを用いたプログラム処理によって実行される。
実施の形態3のロボットシステムにおけるロボット制御部6内の記憶部7は、HDD、DVD、メモリなどによって構成される。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
1〜3 ロボット、5,6 ロボット制御部、7 記憶部、9α〜9γ 目標手先位置、10 ベース部、11,12 アーム部、21,22 関節部、31,32 可変弾性体、41,42 作業領域。

Claims (3)

  1. ロボットと、
    前記ロボットの動作を制御するロボット制御部とを備え、
    前記ロボットは、
    ベース部と第1の関節部を介して接続される第1のアーム部と、
    前記第1のアーム部と第2の関節部を介して接続される第2のアーム部とを備え、前記第1及び第2のアーム部は第1及び第2の関節部を中心とした回転動作が可能であり、
    前記ベース部及び第1のアーム部間に設けられ、第1の弾性値が可変設定可能な第1の弾性体と、
    前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部間に設けられ、第2の弾性値が可変設定可能な第2の弾性体とを備え、
    前記ロボット制御部は、
    一方作業領域内における一方目標位置と他方作業領域内における他方目標位置間を、前記第1及び第2の弾性体による弾性力が作用しない平衡角度点を通過させながら、前記第1及び第2のアーム部に前記回転動作を実行させて前記一方作業領域,前記他方作業領域間を往復運動させる際、
    前記平衡角度点〜前記一方目標位置間の区間である一方目標区間において共振動作可能に前記第1及び第2の弾性値を一方目標位置用弾性値として設定し、前記平衡角度点〜前記他方目標位置間の区間である他方目標区間において共振動作可能に前記第1及び第2の弾性値を他方目標位置用弾性値として設定し、
    前記往復運動の前記平衡角度点の通過時において、前記一方目標区間は前記一方目標位置用弾性値となり、前記他方目標区間は前記他方目標位置用弾性値となるように切り替え制御を行うことを特徴とする、
    ロボットシステム。
  2. 請求項1記載のロボットシステムであって、
    前記一方目標位置用弾性値と前記他方目標位置用弾性値とは、前記一方目標位置に到達時の前記第1及び第2の弾性体に蓄積された一方目標位置用ポテンシャルエネルギーと、前記他方目標位置に到達時の前記第1及び第2の弾性体に蓄積された他方目標位置用ポテンシャルエネルギーとが同一になるように設定されることを特徴とする、
    ロボットシステム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のロボットシステムであって、
    前記ロボット制御部は、
    教示モードにて前記ロボットを動作させ前記一方目標位置及び前記他方目標位置を設定し、その後に前記一方目標位置用弾性値及び前記他方目標位置用弾性値及びその変更シーケンスを自動生成して、設定及び自動生成した情報を記憶部に記憶させる教示機能を有することを特徴とする、
    ロボットシステム。
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