JP5831828B2 - W/oエマルションの製造方法及び乳化物 - Google Patents

W/oエマルションの製造方法及び乳化物 Download PDF

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Description

本発明は、W/Oエマルションの製造方法、及びW/Oエマルションを含む乳化物に関する。
従来、機能性油性基剤又は機能性顆粒を水に乳化分散させる場合には、機能性油性基剤の所要HLBや顆粒表面の性質に応じて界面活性剤を選択し、乳化分散を行っていた。また、乳化剤として用いられる界面活性剤の所要HLB値は、O/W型エマルションを作る場合とW/O型エマルションを作る場合とのそれぞれに応じて使い分ける必要があり、しかも、熱安定性や経時安定性が十分でないため、多種多様な界面活性剤を混合して用いていた(非特許文献1〜4等参照)。
しかしながら、界面活性剤は、生分解性が低く、泡立ちの原因となるので、環境汚染等の深刻な問題となっている。また、機能性油性基剤の乳化製剤の調製法として、HLB法、転相乳化法、転相温度乳化法、ゲル乳化法等の物理化学的な乳化方法が一般に行われているが、いずれも油/水界面の界面エネルギーを低下させ、熱力学的に系を安定化させる作用をエマルション調製の基本としているので、最適な乳化剤を選択するために非常に煩雑かつ多大な労力を有しており、まして、多種類の油が混在していると、安定に乳化させることは殆ど不可能であった。
そこで、特許文献1には、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成され、200nm〜800nmの粒度分布を有する閉鎖小胞体を含有する乳化剤が開示され、この乳化剤が分散した水に対し、種々の油を添加することで、種々の乳化物を製造したことが開示されている。また、特許文献1には、水と油の量比を変更することで、O/Wエマルション及びW/Oエマルションの双方を製造したことも開示されている。
特開2006−241424号公報
"Emulsion Science" Edited by P. Sherman, Academic Press Inc. (1969) "Microemulsions−Theory and Practice" Edited by Leon M. price, Academic Press Inc. (1977) 「乳化・可溶化の技術」 辻薦,工学図書出版(1976) 「機能性界面活性剤の開発技術」 シー・エム・シー出版(1998)
しかし、特許文献1の方法では、O/Wエマルション及びW/Oエマルションのいずれが製造されるかは、水と油の量比によって決定されるところ、O/Wエマルションは広範囲に亘る量比において製造できるものの、W/Oエマルションは、水に対する油の量比が相当に高い条件下でしか製造できない。また、特許文献1の方法で得られるW/Oエマルションを含む乳化物は、乳化安定性が充分には高くなく、分離した水相を含みやすい。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、条件の許容範囲が広いW/Oエマルションの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、乳化安定性に優れるW/Oエマルションを提供することを第2の目的とする。
本発明者らは、水相になる水と、油相になる油とを接触させる時点での環境により、水相及び油相がエマルションの内相及び外相のいずれになるかを決定できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1) 乳化対象を含みかつエマルションの油相になる油に対し、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつ前記エマルションの水相になる水を添加し、前記油及び水を混合する工程を有するW/Oエマルションの製造方法。
(2) 前記油の量に対する前記水の添加量の質量比を20/80以上にする(1)記載の製造方法。
(3) 前記混合は、前記油に対する前記水の添加が終了する前に撹拌を開始することで行う(1)又は(2)記載の製造方法。
(4) 前記水の添加は、前記油を含む被添加対象の量の50質量%以下の量で行う(1)から(3)いずれか記載の製造方法。
(5) 前記油の親水性を向上させる親水化処理を行う工程を更に有する(1)から(4)いずれか記載の製造方法。
(6) 前記親水化処理は、前記乳化対象に対し、前記乳化対象より高い誘電率を有しかつ前記乳化対象との相溶性を有する高誘電率材料を混合する工程を有する(5)記載の製造方法。
(7) 前記乳化対象は、2.1以下の比誘電率(22℃)を有する(6)記載の製造方法。
(8) 前記高誘電率材料は、前記油の比誘電率(22℃)が2.2以上になる量で混合する(6)又は(7)記載の製造方法。
(9) 前記乳化対象は軽油を含み、前記高誘電率材料はバイオディーゼル燃料を含む(6)から(8)いずれか記載の製造方法。
(10) 前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子の疎水性を向上させる疎水化処理を行う工程を更に有する(1)から(9)いずれか記載の製造方法。
(11) 前記疎水化処理は、前記水を加熱する工程を有する(10)記載の製造方法。
(12) 前記加熱は、前記水の温度を40℃以上に昇温させる(11)記載の製造方法。
(13) 乳化対象を含みかつエマルションの油相になる油に対し、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつ前記エマルションの水相になる水を添加し、前記油及び水を混合してなるW/Oエマルションを含む乳化物。
(14) 内相が水相であり、外相が油相であり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は糖ポリマーの粒子を含むW/Oエマルションを含み、
内相が油相であり、外相が水相であり、前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子を含むO/Wエマルションが乳化物に占める量が20体積%以下である乳化物。
(15) 前記W/Oエマルション及び前記O/Wエマルションは、前記水相と前記油相との界面に前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子が介在することで乳化状態を維持するものである(13)又は(14)記載の乳化物。
本発明によれば、油相になる油に対し、両親媒性物質の閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつ水相になる水を添加することで、油と水との量比が相当に広い許容範囲内である場合において、油相が外相でありかつ水相が内相であり、乳化安定性に優れるW/Oエマルションが得られる。
以下、本発明の実施形態を説明するが、これが本発明を限定するものではない。
本発明に係るW/Oエマルションの製造方法は、乳化対象を含みかつエマルションの油相になる油に対し、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつエマルションの水相になる水を添加し、油及び水を混合する工程を有する。これにより、油と水との量比が相当に広い許容範囲内である場合において、油相が外相でありかつ水相が内相であり、乳化安定性に優れるW/Oエマルションが得られる。具体的に、特許文献1に示される方法では、混合物における油の量を70質量%以上と多量にした場合にのみW/Oエマルションが得られたのに対し、本発明の方法では、水(両親媒性物質も含む)と油との量比(水:油)が、特に限定されないが、例えば90:10〜20:80といった広範な範囲において、W/Oエマルションを得ることができる。
油に対し水を添加することで、油に水が接触した時点において、水が相対的に多量の油で包囲され、これによりW/Oエマルションが得られやすくなる。そこで、混合は、油に対する水の添加が終了する前に撹拌を開始することで行うことが好ましく、これにより、添加される水が常に相対的に多量の油で包囲される。なお、混合、撹拌は、従来公知の方法に従えばよいため(例えば特許文献1参照)、詳細は省略する。
また、水の添加は、特に限定されないが、滴下等で行えばよく、また、油を含む被添加対象の量の50質量%以下の量で行うことが好ましく、より好ましくは40体積%以下である。被添加対象とは、油と、それまでに添加された水とを含む(添加開始直後では油のみ)。添加の態様は、連続、又は間欠(つまり、分割されたバッチを分けて添加する)のいずれでもよい。連続添加の場合、添加対象の単位時間あたり添加量の、被添加対象の単位時間あたり流量に対する比率が、50体積%以下であればよい。
両親媒性物質としては、特に限定されないが、下記の一般式1で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体、もしくは一般式2で表されるジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、又はテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体が挙げられる。
一般式1
Figure 0005831828
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。Eが過大になると、両親媒性物質を溶解する良溶媒の種類が制限されるため、親水性ナノ粒子の製造の自由度が狭まる。Eの上限は好ましくは50であり、より好ましくは40であり、Eの下限は好ましくは5である。
一般式2
Figure 0005831828
式中、R1及びR2は、各々独立して炭素数8〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R3及びR4は、各々独立して水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、XはF、Cl、Br又はIである。
両親媒性物質としては、リン脂質やリン脂質誘導体等を採用してもよい。リン脂質としては、下記の一般式3で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
一般式3
Figure 0005831828
また、下記の一般式4で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩を採用してもよい。
一般式4
Figure 0005831828
更に、リン脂質として卵黄レシチン又は大豆レシチン等を採用してもよい。
また、水酸基を有する重縮合ポリマーは、天然高分子又は合成高分子のいずれであってもよく、乳化剤の用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子したもの、又はその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。
閉鎖小胞体及び/又は粒子は、上記の両親媒性物質及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーを分散媒(つまり水)中に添加し、撹拌する等の方法で製造できる(例えば、特許文献1参照)。かかる閉鎖小胞体及び粒子は、エマルション形成前では平均粒子径200nm〜800nm程度であるが、W/Oエマルション構造においては平均粒子径8〜500nm程度である。なお、両親媒性物質の閉鎖小胞体及び水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子は、一方のみが含まれても、双方が含まれてもよい。双方が含まれる場合には、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してよい。
両親媒性物質の閉鎖小胞体及び水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子は、幅広い水相及び油相の組み合わせを乳化させることができる(詳細は特許第3855203号公報)。このため、油相を構成する乳化対象は特に限定されず、軽油、A重油、C重油、タール、バイオディーゼル燃料、再生重油、廃食油、天然物油剤(植物油、鉱物油)等のあらゆるものであってよい。
本発明の方法によれば、幅広い水相及び油相の組み合わせを、幅広い量比で乳化させることができ、乳化安定性に優れた乳化物を製造することができる。ただし、内相の比重が外相の比重と異なる場合、比重の違いによりコアセルベーションが生じることがある。コアセルベーションが生じても、乳化状態は崩壊しないため、使用時に水相及び外相を混合できる用途(例えば、飲食品、調味料)においては、特に問題がない。一方、そうでない用途(例えば、燃料)においては、コアセルベーションを抑制することが有益である。
そこで、本発明の方法は、油の親水性を向上させる親水化処理を行う工程、及び/又は、閉鎖小胞体及び/又は粒子の疎水性を向上させる疎水化処理を行う工程を更に有することが好ましい。これにより、水相の分散性がより向上し、コアセルベーションを抑制することができる。なお、機構は特に限定されないが、油が親水化及び/又は水が疎水化することで、親水性を有する両親媒性物質を油相及び水相の界面へと集中させやすく、これにより、水相同士の合一が抑制されることであると推測される。
親水化処理は、特に限定されないが、乳化対象に対し、乳化対象より高い誘電率を有しかつ乳化対象との相溶性を有する高誘電率材料を混合する工程を有してよい。これにより、油の誘電率が増加し、界面における閉鎖小胞体及び/又は粒子の付着安定性が向上する。親水化処理は、水及び油を混合する時点及び/又はそれより前に行うことが望ましい。
この工程は、乳化対象の誘電率が低い場合(例えば、乳化対象が2.1以下の比誘電率(22℃)を有する場合)に特に有用である。このような乳化対象としては、特に限定されないが、軽油、長鎖飽和炭化水素(流動パラフィン、オクタデカン等)、植物油(長鎖グリセリド)等が挙げられる。一方、乳化対象の誘電率が元来高い場合(例えば、乳化対象がバイオディーゼル燃料等を含み、2.2以上の比誘電率(22℃)を有する場合)には、この工程を行わなくても、充分な分散性を得ることはできる。
誘電率の高低は、乳化対象との比較による相対的な高低を意味し、使用し得る高誘電率材料は、乳化対象の誘電率に応じて決定される。また、高誘電率材料の添加量は、乳化対象の誘電率及び所望の誘電率等に応じて適宜選択されてよいが、油の比誘電率(22℃)が2.2以上になる量であることが好ましく、より好ましくは2.4以上である。これにより、充分な分散性を有するW/Oエマルションを得ることができる。なお、本発明における比誘電率(22℃)は、液体用誘電率計Model 871(日本ルフト社製)により測定されたものを指す。
疎水化処理は、特に限定されないが、水を加熱する工程を有してよい。水の加熱は、水及び油の混合前の水を直接加熱してもよく、混合中に油を加熱し、間接的に水を加熱してもよい。なお、水の温度を40℃以上に昇温させることが好ましい。
特許文献1に示される方法では、水及び油を混合するとO/Wエマルションが形成され、油の量が過剰になると、一部のO/Wエマルションが転相を生じてW/Oエマルションが形成される。このため、得られる乳化物には、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルションが相当量で含まれることを避けられず、乳化安定性も不充分である。これに対し、本発明の方法では、水及び油を混合すると、内相が水相であり、外相が油相であるW/Oエマルションが形成される。このため、本発明の方法で得られる乳化物は、転相を経ていないため、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルションを実質的に含まず、乳化安定性に優れる。
従って、本発明は、乳化対象を含みかつエマルションの油相になる油に対し、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつ前記エマルションの水相になる水を添加し、前記油及び水を混合してなるW/Oエマルションを含む乳化物も包含する。なお、かかる乳化物は、同様の乳化安定性及び組成(両親媒性物質の閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルションを実質的に含まない)が得られる限り、上記方法によって製造されたものに限定されない。
また、本発明は、内相が水相であり、外相が油相であり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むW/Oエマルションを含み、内相が油相であり、外相が水相であり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むO/Wエマルションが乳化物に占める量が20体積%以下である乳化物も包含する。なお、O/Wエマルションの量は、乳化物を静かに水へと添加し、水相の増加した体積を計測することによって得られる。O/Wエマルションが乳化物に占める量は、乳化物に対し、15体積%以下であることが好ましく、より好ましくは10体積%以下、7.5体積%以下、5体積%以下、2.5体積%以下である。
本発明の乳化物は、前述のように乳化分散性に優れ、種々の用途において好適に使用できる。用途としては、特に限定されないが、燃料、潤滑油、香粧品、医薬品、食品、ペイント、洗浄剤等が挙げられる。本発明の乳化物を用いた燃料は、水を多量に含むこともでき、排ガス中のNOx濃度を低減できる。本発明の乳化物を用いた潤滑油は、水により比熱が増すため、熱交換効率に優れる。また、本発明の乳化物は外相が水であるため、接触する機器類(例えば、エンジン、配管)への負担を抑制することもできる。
<実施例1>
市販品のA−重油又は中鎖トリグリセリド(MCT)を乳化対象として用いた。また、両親媒性物質としては、親水性のナノ微粒子を形成するポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうち、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が40である誘導体(以下、HCO−40という)を用い、これを、表1に示す比率で、水で分散させた分散液を水として使用した。油に対し、水を0.5g/秒の速度で、油と水の質量比が80:20(ただし、両親媒性物質は油に含める)になるように添加し、ホモジナイザーで20000rpm、5分間に亘り撹拌してエマルションを含む乳化物を調製した。
乳化物を静かに水へと添加し、水相の増加した体積を計測したところ、いずれの乳化物もW/Oエマルションを多量に含み、O/Wエマルションが乳化物に占める量は5体積%であった。このような乳化物を室温で1ヶ月に亘り保持し、乳化状態を観察した。この結果を表1に示す。なお、表1において、Aは静置下で乳化状態が安定である、Bは乳化状態が維持されるものの、コアセルベーションが生じている、ことをそれぞれ指す。
Figure 0005831828
表1に示されるように、油に対し、両親媒性物質の閉鎖小胞体を含む水を添加することで、両親媒性物質の量にかかわらず、良好に乳化した乳化物が得られることが分かった。
<実施例2>
油、両親媒性物質の閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子として、表2に示すものを用い、乳化剤における水の量を表2に示すようにした点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。なお、表2において「HCO−10」はエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が10である誘導体であり、「2S10G」はジステアリン酸デカグリセリルである。
Figure 0005831828
表2に示されるように、種々の油を良好に乳化させ、またコアセルベーションを起こさせなかった。
<実施例3>
油及び両親媒性物質の閉鎖小胞体として、表3及び4に示すものを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。なお、両親媒性物質の量は、いずれも2質量%とした。表3及び4において、流動パラフィン(軽)とは「ハイコールK−230」(カネダ社製)であり、流動パラフィン(重)とは流動パラフィン(和光純薬工業社製)である。また、評価結果のCとは、乳化状態が維持されるものの、乳化状態にある水粒子同士が凝集していることを指す(乳化状態が崩壊し、水粒子が合一する現象とは明確に異なる)。なお、表4において、「D−5S」はペンタステアリン酸デカグリセリルであり、「D−3O」はトリオレイン酸デカグリセリルであり、「D−5O」はペンタオレイン酸デカグリセリルであり、「Di−1S」はモノステアリン酸ジグリセリルであり、「S−1P」はモノパルミチン酸ソルビタンであり、「PR−15」はポリリシノレイン酸ヘキサグリセリルであり、「5IS10G」はペンタイソステアリン酸デカグリセリルであり、「SO−10」はモノオレイン酸ソルビタンであり、「SO−15」はセスキオレイン酸ソルビタンである。
Figure 0005831828
Figure 0005831828
表3及び4に示されるように、任意の両親媒性物質により、種々の油を良好に乳化させることができた。
<実施例4>
油及び両親媒性物質の閉鎖小胞体又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子として、表5に示すものを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。また、油及び両親媒性物質の閉鎖小胞体として、表6に示すものを用い、水の添加速度を0.1g/秒とし、ディスパーサ又は家庭用ハンドミキサで10分間に亘って撹拌した点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。表5において「3OG10」とはトリオレイン酸デカグリセリルであり、「パーム油」とはパーム硬化油及び菜種油の混合油であり、「再生重油」とは再生重油(使用済みの潤滑油に由来)に灯油を配合した油である。
Figure 0005831828
Figure 0005831828
表5及び6に示されるように、両親媒性物質により、種々の油を良好に乳化させることができた。
<実施例5>
両親媒性物質及び水の量を表7に示すようにし、水及び油を55℃に加熱した点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。
Figure 0005831828
表7に示されるように、水を加熱することで、コアセルベーションの発生が抑制された。
<実施例6>
油として、軽油(比誘電率(22℃)2.14)に対し、バイオディーゼル燃料(比誘電率(22℃)3.56;BDFという)を表8に示す質量比で添加したものを用い、水及び油の質量比を13(12質量%の水と1質量%のHCO−10とを含む):87で統一した点を除き、実施例1と同様の手順で乳化物を調製した。各乳化物を室温で1ヶ月に亘り保持し、乳化状態を観察した結果を表8に示す。
Figure 0005831828
表8に示されるように、誘電率が2.2以上になる量でバイオディーゼル燃料を混合することで、コアセルベーションを抑制できた。
<実施例7>
油として、オクタン(比誘電率(22℃)1.95)に対し、オレイン酸(比誘電率(22℃)2.46)を、表9に示すモル比で混合した点を除き、実施例6と同様の手順で乳化物を調製し、乳化性能を評価した。
Figure 0005831828
表9に示されるように、誘電率が2.2以上になる量でオレイン酸を混合することで、コアセルベーションを抑制できた。

Claims (12)

  1. エマルションの油相になる油に対し、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含みかつ前記エマルションの水相になる水を添加し、前記油及び水を混合する工程を有するW/Oエマルションの製造方法。
  2. 前記油の量に対する前記水の添加量の質量比を20/80以上にする請求項1記載の製造方法。
  3. 前記混合は、前記油に対する前記水の添加が終了する前に撹拌を開始することで行う請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記水の添加は、前記油を含む被添加対象の量の50質量%以下の量で行う請求項1から3いずれか記載の製造方法。
  5. 前記油の親水性を向上させる親水化処理を行う工程を更に有し、前記親水化処理は、前記油に対し、前記油より高い誘電率を有しかつ前記油との相溶性を有する高誘電率材料を混合する工程を有する請求項1から4いずれか記載の製造方法。
  6. 前記油は、2.1以下の比誘電率(22℃)を有する請求項5記載の製造方法。
  7. 前記高誘電率材料は、前記油の比誘電率(22℃)が2.2以上になる量で混合する請求項5又は6記載の製造方法。
  8. 前記油は軽油を含み、前記高誘電率材料はバイオディーゼル燃料を含む請求項5から7いずれか記載の製造方法。
  9. 前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子の疎水性を向上させる疎水化処理を行う工程を更に有し、前記疎水化処理は、前記水を加熱する工程を有する請求項1から8いずれか記載の製造方法。
  10. 前記加熱は、前記水の温度を40℃以上に昇温させる請求項9記載の製造方法。
  11. 内相が水相であり、外相が油相であり、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子を含むW/Oエマルションを含み、
    内相が油相であり、外相が水相であり、前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子を含むO/Wエマルションが乳化物に占める量が20体積%以下である乳化物。
  12. 前記エマルションは、前記水相と前記油相との界面に前記閉鎖小胞体及び/又は前記粒子が介在することで乳化状態を維持するものである請求項11記載の乳化物。
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