JP5831393B2 - めっき被膜の異物採取方法 - Google Patents
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Description
さらに、本発明は電子材料に用いられる金属化ポリイミドフィルム上の凹みや凸欠陥の要因となる異物を解析するために異物を採取する方法に適している。
このなかで、フレキシブル配線基板は、その柔軟性を生かしてLCDドライバー用配線基板、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)モジュール、携帯電話のヒンジ部のような屈曲性が要求される部分で使用できることから、その需要はますます増加してきている。
第一に、絶縁フィルムと銅箔(導体層)を接着剤で貼り付けた金属化ポリイミドフィルム(通常「3層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
第二に、絶縁フィルムと導体層となる銅箔などの銅層を、接着剤を使わずに、キャスティング法、ラミネート法、メタライジング法等により直接、複合させた金属化ポリイミドフィルム(通常「2層金属化ポリイミドフィルム」と呼ばれる)である。
特許文献1には、ポリイミド系フィルムにニッケル−クロム合金のスパッタ層を形成し、次いで銅めっき層を形成し、さらに電解銅厚付けめっきで銅めっき層を形成して、半導体キャリアフィルムを製造する技術が開示されている。
そのため、めっき被膜の内部や表面に存在する異物を容易に採取する技術が求められている。
そこで、本発明は、金属層、特にめっき被膜中に埋め込まれ、被覆された異物を採取する方法を提供するものである。
先ず金属化ポリイミドフィルムの構成を説明し、次いで、その製造方法を示す。
図1は、本発明の実施に際して用いたメタラインジング法で作製した金属化樹脂フィルム(金属化ポリイミドフィルム)7の断面模式図である。
この金属化樹脂フィルム(以後、説明に際しては金属化ポリイミドフィルムと称す)7の構成は、樹脂フィルムにポリイミドフィルム1を用い、そのポリイミドフィルム1の少なくとも一方の面には、ポリイミドフィルム側から下地金属層2、銅薄膜層3、銅めっき方法によって形成された銅めっき被膜4(銅薄膜層3と銅めっき被膜4から銅層5を形成)の順に成膜して積層された金属積層体6で構成されている。
乾式めっき法には、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、真空蒸着法、CVD法等がある。
いずれの方法を用いても良いが、生産効率が高いことから、工業的にはマグネトロンスパッタ法を一般的に用いる。
下地金属層の膜厚が3nm未満では、最終的に得られた金属化ポリイミドフィルムの金属皮膜層をエッチングして配線を作製したとき、エッチング液が金属薄膜を浸食してポリイミドフィルムと金属皮膜層の間に染み込み、配線が浮いてしまう場合がある。一方、下地金属層の膜厚が50nmを超えると、エッチングして配線を作製する場合、金属薄膜が完全に除去されず、残渣として配線間に残るため、配線間の絶縁不良を発生させる恐れがある。
下地金属層の上に銅薄膜層を設けることによって通電抵抗が下がり、電気めっき時の電流密度の安定化を図ることができる。
乾式めっき法では、スパッタリング法、マグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、真空蒸着法、CVD法等がいずれも使用でき、下地金属層と銅薄膜層の成膜は同じ方法でも、又は異なる方法でも可能である。
例えば下地金属層をマクネトロンスパッタリング法で成膜した後、銅薄膜層を蒸着法で設けることもできる。
この時、下地金属層と銅薄膜層は、同一の真空装置内で連続して形成することが好ましい。また、下地金属層を成膜した後、ポリイミドフィルムを装置内から大気中に取り出し、他のスパッタリング装置を用いて銅薄膜層を形成する場合には、銅薄膜を成膜する前に水分を十分に取り除いておく必要がある。
この銅層の厚みは、例えばサブトラクティブ法によって配線パターンを形成する場合、数μm〜12μmが一般的である。なお、電気めっきによる銅層などの金属層の形成に先立って、予め金属薄膜の表面に銅等の金属を無電解めっき法で成膜しておくこともできる。
次に、金属化ポリイミドフィルムの製造方法を説明する。先ず、基材のポリイミドフィルム上に下地金属層と銅薄膜層を設けた金属薄膜付ポリイミドフィルムの製造方法を示し、次に、その金属薄膜付樹脂フィルム上に銅めっき被膜である銅層を設けた金属化ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
巻取式スパッタリング装置10は、その構成部品のほとんどを収納した直方体状の筐体12を備えている。
筐体12は円筒状でも良く、その形状は問わないが、10−4Pa〜1Paの範囲に減圧された状態を保持できれば良い。
この筐体12内には、ポリイミドフィルム(長尺樹脂フィルム)Fを巻き出す巻出ロール13、キャンロール14、スパッタリングカソード15a、15b、15c、15d、前フィードロール16a、後フィードロール16b、テンションロール17a、テンションロール17b、巻取ロール18を有する。
巻出ロール13、キャンロール14、前フィードロール16a、巻取ロール18にはサーボモータによる動力を備える。
テンションロール17a、17bは、表面が硬質クロムめっきで仕上げられ張力センサーが備えられている。
スパッタリングカソード15a〜15dは、マグネトロンカソード式でキャンロール14に対向して配置される。スパッタリングカソード15a〜15dの長尺樹脂フィルムFの巾方向の寸法は、長尺樹脂フィルムFの巾より広ければよい。
キャンロール14は、その表面が硬質クロムめっきで仕上げられ、その内部には筐体12の外部から供給される冷媒や温媒が循環し、略一定の温度に調整される。
これらの処理条件は、特に限定されるものではなく、通常の金属化ポリイミドフィルムの製造方法に適用されている条件でよい。
電気めっき槽21に貯留されためっき液28に浸漬された金属薄膜層付樹脂フィルムF2は、反転ロール23を経て搬送方向が反転され、給電ロール26bにより電気めっき槽21外へ引き出される。このように、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2がめっき液への浸漬を複数回(図3では4回)繰り返す間に、金属薄膜付ポリイミドフィルムF2の銅薄膜層の表面に銅層が形成される。
1.欠陥と異物の関係
上記で説明したメタライジング法により金属化ポリイミドフィルムを製造すると、微小な(20μm前後)欠陥が発生してしまうことがある。この欠陥は、異物を起因としている。
この異物は、基材のポリイミドフィルムの表面に元々付着していたもの、乾式めっき工程や湿式めっき工程の工程内で付着したものなどが原因として挙げられる。例えば、乾式めっき装置内の異物や、湿式めっき装置のめっき槽内の異物が付着してしまうことで発生すると考えられる。
湿式めっき法の無電解めっきで成膜を行うときは、スパッタリング法等の乾式めっき法と同様に異物の側面方向にはめっき被膜がつきにくい。
このように異物へのめっき皮膜の成膜の異方性や、異物の絶縁性等の電気特性の影響によりめっき被膜の欠陥が生じるのである。
なお、乾式めっき法での成膜前に異物が付着すれば、乾式めっき法で薄膜層をつけた段階のフィルムにおいても異物による凸として欠陥を確認することができる。
発見した金属化ポリイミドフィルムの銅層の微小な欠陥部を、レーザー顕微鏡で観察すると、異物の表面が金属層で被覆されているかどうか、および銅層表面から異物までの深さを知ることができる。
そこで、めっき被膜(例えば銅)を、エッチング等によって溶解して異物を露出させる。
この処理は異物の周囲が、めっき被膜に覆われていると、めっき被膜による拘束力が強いため、異物は硬化させた樹脂固形物に転写され難いために行うものである。
金属化ポリイミドフィルムの場合、その表層のめっき被膜は銅層なので、塩化第二銅水溶液や塩化第二鉄水溶液等の銅用の公知のエッチング液を用いれば、めっき被膜を溶解することができる。したがって、異物が塩化第二銅水溶液や塩化第二鉄水溶液などに溶解しなければ、異物の採取は可能である。しかし、異物によっては、これらのエッチング液では溶解することもあるが、エッチング液は適宜選択すればよい。また、めっき被膜が銅以外の金属では、異物を溶解しない、そのめっき被膜の金属に適したエッチング液を用いればよい。
異物周囲のめっき被膜を、エッチングにより溶解除去して異物表面を露出させ、次に異物とその周辺(めっき被膜溶解部を含む)を硬化性の液相樹脂組成物で覆い、硬化させる。硬化した樹脂(樹脂固形物)を、金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすと、樹脂固形物表面に異物が転写されてくる。
具体的には、硬化性の樹脂組成物で異物の一部分が被服され、樹脂の硬化後、その樹脂固形物を引き剥がすと、異物の一部分が樹脂固形物に埋めこまれた状態で、異物全体が、金属化ポリイミドフィルム(めっき被膜)から剥離されることによって、異物の採取が行われる。
さらに、エポキシ、シリコーン、アクリルなどの光硬化性を有する各種樹脂組成物を用いることも可能である。なお、樹脂組成物とは、構成樹脂に対応した適量の硬化剤や重合開始剤などの添加剤を含むものである。
採取される異物の大きさは、欠陥の大きさと同等もしくはそれよりも小さく、20μm以下と微細な異物も多くあり、物理的な研磨などで露出させることができても、ピンセット等で採取することは困難である。
本発明の異物採取方法であれば、硬化した樹脂を金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすことで異物の採取が可能となるので、容易である。
採取した異物は、公知の物理分析方法や化学分析方法により、その同定を行う。その際の分析方法は限定されない。
この金属薄膜付ポリイミドフィルムの作製は、図2に示すスパッタリング装置1を用い、スパッタリンカソード15aに20重量%Cr−Ni合金ターゲットを、スパッタリングカソード15b、15c、15dに銅ターゲットを装着し、アルゴンガス1.3Paの雰囲気で製造した。
作製した金属化ポリイミドフィルムには、スパッタリング後、銅めっき後において、表面が金属層で被覆されている異物が原因となった欠陥を確認した。
異物は深さ(表面からポリイミドフィルム方向への深さ)7.5μmの位置に存在し、銅層に埋没しており、塩化第二鉄水溶液で銅層を溶解させて異物の一部を露出させた。
次に、露出させた異物とその周辺に熱硬化性の樹脂組成物(ストルアス社製 スペシフィックス樹脂・硬化剤(エポキシ系))を垂らし、硬化させた。その硬化した樹脂固形物を金属化ポリイミドフィルムから引き剥がすと、樹脂固形物表面上に、その異物が転写されてくることを確認した。
その採取された異物をFT−IRにて分析し、その異物を同定することができた。
実施例1と同様に銅層を溶解して異物の表面を露出させ、本発明による樹脂への転写をさせず表面に突出した異物を直接分析することを試みたが、表面に難溶性の下地金属層が残っており、異物を同定できなかった。
実施例1と同様に銅層を溶解させることで異物の採取を試みたが、異物表面の金属層が完全に除去される溶液にて溶解させると、異物が脱落あるいは変質してしまい採取できなかった。
また実施例1と同様に異物を露出させた後にマニピュレーターにて異物の採取を試みたが、異物が小さすぎる、かつ脆くてくずれるためうまく採取できなかった。
2 下地金属層
3 銅薄膜層
4 銅めっき被膜
5 銅層
6 金属積層体
7 金属化ポリイミドフィルム(金属化樹脂フィルム)
10 巻取式スパッタリング装置
12 筐体
13 巻出ロール
14 キャンロール
15a、15b、15c、15d スパッタリングカソード
16a 前フィードロール
16b 後フィードロール
17a テンションロール
17b テンションロール
18 巻取ロール
20 ロールツーロール方式の連続めっき装置
21 電気めっき槽
22 巻出ロール
23 反転ロール
24a〜h 陽極
26a〜e 給電ロール
28 めっき液
29 巻取ロール
F ポリイミドフィルム(長尺樹脂フィルム)
F2 金属薄膜付ポリイミドフィルム(金属薄膜付樹脂フィルム)
S 金属化ポリイミドフィルム(金属化樹脂フィルム)
Claims (8)
- 基材を被覆しためっき被膜に存在する異物と、前記異物の周囲を被覆するように硬化性を有する液状樹脂組成物を流し込み、前記液状樹脂組成物を硬化させ、固体樹脂組成物を形成する第一の手順を行い、
次いで、前記固体樹脂組成物を、前記基材より引き剥がす第二の手順を順番に行うことによって、
前記固体樹脂組成物に、少なくとも一部分が埋め込まれた状態で前記異物が転写されることを特徴とする異物採取方法。 - 前記異物が、前記めっき被膜に被覆された状態で存在する場合、前記異物を覆うめっき被膜をエッチングにより除去して、前記異物の一部分を露出させるエッチング手順を、前記第一の手順の前に行うことを特徴とする請求項1に記載の異物採取方法。
- 前記エッチング手順が、前記めっき被膜の凹部欠陥の深さ、又は凸部欠陥の高さを計測する測定手順の後に行われることを特徴とする請求項2に記載の異物採取方法。
- 前記エッチング手順におけるめっき被膜に対するエッチングが、化学エッチングであり、湿式手順で行われることを特徴とする請求項2または3に記載の異物採取方法。
- 前記めっき被膜が、乾式めっき被膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の異物採取方法。
- 前記めっき被膜が、湿式めっき被膜であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の異物採取方法。
- 前記めっき被膜が、銅めっき被膜であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の異物採取方法。
- 前記硬化性を有する液状樹脂組成物が、熱硬化性或いは光硬化性の液状樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の異物採取方法。
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