以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(以下「電子時計100」という)を含むGPSシステムの全体図である。電子時計100は、GPS衛星20からの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正する腕時計であり、腕に接触する面(以下、「裏面」という)の反対側の面(以下「表面」という)に時刻を表示する。
GPS衛星20は、地球上空における所定の軌道上を周回する位置情報衛星であり、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。以降の説明では、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波を「衛星信号」という。衛星信号は、右旋偏波の円偏波である。
現在、約31個のGPS衛星20(図1においては、約31個のうち4個のみを図示)が存在しており、衛星信号がどのGPS衛星20から送信されたかを識別するために、各GPS衛星20はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。したがって、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
GPS衛星20は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報(以下、「GPS時刻情報」という)が含まれている。また、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星20に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれている。電子時計100は、1つのGPS衛星20から送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを使用して内部時刻を正確な時刻に修正する。
衛星信号にはGPS衛星20の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。電子時計100は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行うことができる。測位計算は、電子時計100の内部時刻にはある程度の誤差が含まれていることを前提として行われる。すなわち、電子時計100の3次元の位置を特定するためのx,y,zパラメータに加えて時刻誤差も未知数になる。そのため、電子時計100は、一般的には4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行う。
図2は、電子時計100の平面図である。図2に示すように、電子時計100は、セラミックやプラスチック等の非導電性部材で形成された円筒状の外装ケース80を備え、外観上は、外装ケース80の表面側周縁に、セラミックやプラスチック等の非導電性部材で形成された環状のベゼル81が嵌合されている。このベゼル81の内周側に、プラスチックで形成された環状のダイヤルリング83を介して、円盤状の文字板11が時刻表示部として配置され、この文字板11上には、時刻や日付等を表示する指針13(13a〜c)及び液晶表示パネル14が配置されている。そして、外装ケース80の表面側の開口は、ベゼル81を介してカバーガラス84で塞がれており、カバーガラス84通じて、内部の文字板11、指針13(13a〜c)及び液晶表示パネル14が視認可能となっている。なお、図2中において、液晶表示パネル14に表示された"TYO"の文字は、「東京」の意味であり、ワールドタイム機能の日本の時刻を表示している。
ダイヤルリング83は、外周側が、ベゼル81の内周面に接触する水平な環状部分となっているととともに、さらにその内周側が内方へ傾斜したすり鉢状部分となっており、この環状部分及びすり鉢状部分と、ベゼル81の内周面とによりドーナツ状の収納空間82が画成されている。この収納空間82内には、環状の一部を切り欠いたいわゆるC型形状のアンテナ体40が収納されている。
このアンテナ体40は、環状の一部を切り欠いたループアンテナを、時刻表示部である文字板11の外縁に沿って環状に配置して構成され、本実施形態では、文字板11の周囲に配置されているとともに、このアンテナ体40に対する2箇所の給電電極40a及び40bが、文字板11上の6時から9時位置又は12時から3時位置に配置されている。この給電電極40a及び40bは、アンテナ体40の始点及び終点に位置し、アンテナ体40に給電する電極である。
また、電子時計100は、図1及び図2に示す竜頭16や操作ボタン17及び18を手動操作することにより、少なくとも1つのGPS衛星20からの衛星信号を受信して内部時刻情報の修正を行うモード(時刻情報取得モード)と複数のGPS衛星20からの衛星信号を受信して測位計算を行い内部時刻情報の時差を修正するモード(位置情報取得モード)に設定できるように構成されている。また、電子時計100は、時刻情報取得モードや位置情報取得モードを定期的に(自動的に)実行することもできる。
図3は電子時計100の内部構造を示す一部断面図であり、図4は電子時計100の一部の分解斜視図である。図3及び4に示すように、電子時計100は、セラミックで形成された円筒状の外装ケース80の表面側には、セラミックで形成された環状のベゼル81が嵌合されているとともに、ベゼル81の内周に沿って、プラスチックで形成された環状のダイヤルリング83が取り付けられている。外装ケース80の二つの開口のうち、表面側の開口は、環状のベゼル81を介してカバーガラス84で塞がれており、裏面側の開口は金属で形成された裏蓋85で塞がれている。金属製の裏蓋85と金属製の外装ケース80とは、スクリュー溝で固定されている。
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、リチウムイオン電池などの二次電池27を備える。二次電池27は、後述のソーラーパネル87が発電した電力で充電される。すなわち、ソーラー充電が行われる。電子時計100は、外装ケース80の内側に、光透過性の文字板11と、文字板11を貫通した指針軸12と、指針軸12を中心に周回して現在時刻を指し示す複数の指針13(秒針13a、分針13b及び時針13c)と、指針軸12を回転させて複数の指針13を駆動する駆動機構30とを備える。指針軸12は、外装ケース80の中心軸に沿って表裏方向に延在している。
文字板11は、外装ケース80の内側で時刻を表示する時刻表示部を構成する円形の板材であり、プラスチックなどの光透過性の材料で形成され、カバーガラス84との間に指針13(13a〜c)を挟み、ダイヤルリング83の内側に配置されている。文字板11の中央部には、指針軸12が貫通する穴が形成されているとともに、液晶表示パネル14を視認させるための開口部が形成されている。
駆動機構30は、地板38に取り付けられ、ステップモーターと歯車などの輪列とを有し、当該ステップモーターが当該輪列を介して指針13を回転させることにより、複数の指針13を駆動する。具体的には、時針13cは12時間、分針13bは60分、秒針13aは60秒で一周する。また、駆動機構30が取り付けられた地板38は、指針13との間に文字板11を挟むように配置されている。
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、光発電を行うソーラーパネル87を備える。ソーラーパネル87は、光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する複数のソーラーセル(光発電素子)を直列接続した円形の平板であり、文字板11と駆動機構30との間に配置され、指針軸12の横断面に沿って延在している。またソーラーパネル87は、その延在方向において、ダイヤルリング83の内側に配置されている。またソーラーパネル87の中央部には、指針軸12が貫通する穴が形成されているとともに、液晶表示パネル14を視認させるための開口部が形成されている。
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、アンテナ接続ピン44A及び44Bと、回路基板25と、回路基板25に実装されたバラン10、GPS受信部(無線受信部)26及び制御部70とを備える。バラン10は、平衡−不平衡の変換素子であり、平衡給電で作動するアンテナ体40からの平衡信号を、GPS受信部26で扱うことができる不平衡信号に変換する。
そして、電子時計100は、環状の一部を切り欠いた形状のアンテナ体40を備える。このアンテナ体40は、リング形状の誘電体40dを基材として、これに金属のアンテナパターン40cをメッキや銀ペースト印刷などにより形成したものである。このアンテナ体40は、本実施形態では、文字板11の周囲に配置されており、ベゼル81の内周面側に収容され、その上方をダイヤルリング83及びカバーガラス84で覆われている。この誘電体としては、酸化チタンなどの高周波で使える誘電材料を樹脂に混ぜて成形することができ、これにより誘電体の波長短縮と相俟ってアンテナをより小型化できる。
例えば、GPS受信の場合1.575GHzなので一波長は19cmとなり、通常のアンテナを腕時計のベゼル部分に埋め込むにはそのままでは収まらず、波長短縮が必要となる。本実施形態では、誘電体による波長短縮が√εrとなることから、本実施形態では、誘電体40dとしては、εr=5〜10程度を用いている。これにより、GPS受信用のアンテナであっても、腕時計に1波長ループアンテナを収めることができ、アンテナの小型化を図ることができる。
また、アンテナ体40は、アンテナ体40の両端、すなわちC形状の切欠部分に位置する二つの給電電極40a及び40bを通じて給電され、この給電電極40a及び40bでは、アンテナ下面に配置されたアンテナ接続ピン44A及び44Bと接続されている。アンテナ接続ピン44A及び44Bはスプリングを内蔵した金属で形成されたピン状のコネクタであり、回路基板25上に突設されて、地板38に開口された挿通孔38a及び38bを貫通されて収納空間82内へ挿通され、回路基板25と、収納空間82内部のアンテナ体40とを接続する。
本実施形態において、アンテナ体40への給電は、バラン10から2箇所の給電電極40a及び40bを通じての平衡給電となる。具体的には、アンテナ体40の両端に、プラス及びマイナスの給電電極40a及び40bを有し、これら二つの給電電極40a及び40bがアンテナ接続ピン44A及び44Bと接続されている。これらアンテナ接続ピン44A及び44Bを介して平衡給電が行われ、GPS受信部26は、アンテナ体40を用いて無線信号を受信する。なお、アンテナ体40は、1波長ループアンテナであることから、給電に対して自己平衡作用があり、上記バラン10を介さず、直接給電することも可能である。
図5は、電子時計100の回路構成を示すブロック図である。図5に示すように、電子時計100は、GPS受信部26及び制御表示部36を含んで構成されている。GPS受信部26は、衛星信号の受信、GPS衛星20の捕捉、位置情報の生成、時刻修正情報の生成等の処理を行う。制御表示部36は、内部時刻情報の保持及び内部時刻情報の修正等の処理を行う。
ソーラーパネル87は、充電制御回路29を通じて二次電池27を充電する。電子時計100はレギュレータ34及び35を備え、二次電池27は、レギュレータ34を介して制御表示部36に、レギュレータ35を介してGPS受信部26に駆動電力を供給する。また電子時計100は、二次電池27の電圧を検出する電圧検出回路37を備える。なお、レギュレータ35に代えて、例えば、RF部50(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−1と、ベースバンド部60(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−2(ともに図示せず)とに分けて設けてもよい。レギュレータ35−1は、RF部50の内部に設けてもよい。
また電子時計100は、アンテナ体40、バラン10、及びSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ32を含む。アンテナ体40は、図1で説明したように、複数のGPS衛星20からの衛星信号を受信する。ただし、アンテナ体40は衛星信号以外の不要な電波も若干受信してしまうため、SAWフィルタ32は、アンテナ体40が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ32は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
また、GPS受信部26は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50とベースバンド部60を含んで構成されている。以下に説明するように、GPS受信部26は、SAWフィルタ32が抽出した1.5GHz帯の衛星信号から航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する処理を行う。
RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51、ミキサ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53、PLL(Phase Locked Loop)回路54、IFアンプ55、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルタ56、ADC(A/D変換器)57等を含んで構成されている。
SAWフィルタ32が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅される。LNA51で増幅された衛星信号は、ミキサ52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号を位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。その結果、VCO53は基準クロック信号の周波数精度の安定したクロック信号を出力することができる。なお、中間周波数として、例えば、数MHzを選択することができる。
ミキサ52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅される。ここで、ミキサ52でのミキシングにより、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も生成される。そのため、IFアンプ55は、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も増幅する。IFフィルタ56は、中間周波数帯の信号を通過させるとともに、この数GHzの高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルタ56を通過した中間周波数帯の信号はADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。
ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61、CPU(Central Processing Unit)62、SRAM(Static Random Access Memory)63、RTC(リアルタイムクロック)64を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリ66等が接続されている。
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。フラッシュメモリ66には、例えば時差情報が記憶されている。時差情報は、時差データ(座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられたUTCに対する補正量等)が定義された情報である。
ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する処理を行う。
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、後述する衛星検索工程において、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、ベースバンド部60は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星20に同期(すなわち、GPS衛星20を捕捉)したものと判断する。ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星20が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星20を検索することができる。
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードにおいて、捕捉したGPS衛星20の衛星情報を取得するために、当該GPS衛星20のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星20の衛星情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド部60は、航法メッセージの各サブフレームのTLMワード(プリアンブルデータ)を検出し、各サブフレームに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する(例えばSRAM63に記憶する)処理を行う。ここで、GPS時刻情報は、週番号データ(WN)及びZカウントデータであるが、以前に週番号データが取得されている場合にはZカウントデータのみであってもよい。
そして、ベースバンド部60は、衛星情報に基づいて、内部時刻情報を修正するために必要な時刻修正情報を生成する。
時刻情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報に基づいて測時計算を行い、時刻修正情報を生成する。時刻情報取得モードにおける時刻修正情報は、例えば、GPS時刻情報そのものであってもよいし、GPS時刻情報と内部時刻情報との時間差の情報であってもよい。
一方、位置情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報や軌道情報に基づいて測位計算を行い、位置情報(より具体的には、受信時に電子時計100が位置する場所の緯度及び経度)を取得する。さらに、ベースバンド部60は、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報を参照し、位置情報により特定される電子時計100の座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられた時差データを取得する。このようにして、ベースバンド部60は、時刻修正情報として衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データを生成する。位置情報取得モードにおける時刻修正情報は、上記の通り、GPS時刻情報と時差データそのものであってもよいが、例えば、GPS時刻情報の代わりに内部時刻情報とGPS時刻情報の時間差のデータであってもよい。
なお、ベースバンド部60は、1つのGPS衛星20の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよいし、複数のGPS衛星20の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよい。
また、ベースバンド部60の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65が出力する基準クロック信号に同期する。RTC64は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC64は、TCXO65から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。また、ベースバンド部60に設けられたRTC64は、GPS衛星20の衛星情報を受信中にのみ動作し、GPS時刻情報を保持する。
制御表示部36は、制御部70、駆動回路74及び水晶振動子73を含んで構成されている。
制御部70は、記憶部71、RTC(Real Time Clock)72を備え、各種制御を行う。制御部70は、例えばCPUで構成することが可能である。
制御部70は、制御信号をGPS受信部26に送り、GPS受信部26の受信動作を制御する。また制御部70は、電圧検出回路37の検出結果に基づいて、レギュレータ34及びレギュレータ35の動作を制御する。また制御部70は、駆動回路74を介してすべての指針の駆動を制御する。
記憶部71には内部時刻情報が記憶されている。RTC72は、常時動作し、時刻表示のための内部時刻を計時し内部時刻情報を生成する。内部時刻情報は、電子時計100の内部で計時される時刻の情報であり、水晶振動子73によって生成される基準クロック信号によって更新される。したがって、GPS受信部26への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針の運針を継続することができるようになっている。
制御部70は、時刻情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。より具体的には、内部時刻情報は、取得したGPS時刻情報にUTCオフセットを加算することで求められるUTC(協定世界時)に修正される。また、制御部70は、位置情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。
以上説明したように、電子時計100では、アンテナ体40が、全体としてC型形状のループアンテナとなり、ループアンテナの始点及び終点となる一対の給電電極40a及び40bがC型形状の切欠部分を挟んで位置することとなる。このため、アンテナ体40の両端、すなわちループアンテナの始点から終点までの周囲長を、誘電体40dにより波長短縮された約1波長とすることにより、半波長ダイポールアンテナ2本を、給電電極40a及び40bを挟んで平行においた場合と同等の受信性能を維持することができる。
特に、本実施形態に係る電子時計100では、その放射指向性が、環状の中心から見て給電電極40a及び40bのある方向が最大放射方向となることから、給電電極40a及び40bを6時から10時の範囲又は12時から4時の範囲に配置することにより、装着者が腕時計をした腕を下げているか或いは手を身体の前に位置させた姿勢のときに、アンテナ利得の大きい方向が天頂方向と一致することとなり、受信性能が十分に発揮される。
詳述すると、衛星信号は屋内では受信できないことから、腕時計を腕に装着して屋外にいる間に受信を行うこととなり、その際、着用者は、腕を下げているか或いは手を身体の前に位置させた姿勢でいることが多い。そのため、図6及び図7に示すように、電子時計100の6時〜10時位置が天頂方向を向く確率が高くなる。本実施形態に係る電子時計100は、アンテナ給電位置は6時〜10時位置、若しくはそれと同じ性能が得られる12時〜4時の位置となっていることから、衛星受信の際、アンテナ利得が大きい方向が、天頂方向に向いている確率が高くなる。
図8〜図10は、アンテナ体40の放射パターンの説明図である。なお、図8は、アンテナ体40を中心とした座標系を示す説明図であり、円形のアンテナ体40(半径a)の中心点を原点とし、時計表面を含む水平面をXY平面とし、時計表面の法線方向をZ軸とし、給電電極40a及び40bをX軸上に設置した状態を示している。図9に示す放射パターンは、図8に示したθを90°に設定したY−X平面における放射パターンであり、原点付近のX軸上に給電電極40a及び40bが位置されている。図10に示す放射パターンは、図8に示したφを90°に設定したZ−X平面における放射パターンであり、原点上に給電電極40a及び40bが位置されている。なお、図10において、実線は裏蓋がある場合の放射パターンであり、波線は裏蓋がない場合の放射パターンである。
図9に示すように、X軸上に給電電極40a及び40bを位置させた場合、X軸方向が最大放射方向となりアンテナ利得が最大となっており、Y軸方向はヌル値となりアンテナ利得は低くなっている。したがって、本発明のように、給電電極40a及び40bを6時〜10時又は12時〜4時の範囲に位置させることにより、腕時計を腕に装着して屋外にいる間に受信を行う場合に、人間工学上、着用者が多くとる姿勢で、アンテナ体40の放射指向性を最大とすることができる。
図10では、金属裏蓋の有無でアンテナ放射パターンの比較を行っている。Y−Z平面で、金属裏蓋があると反射で文字板方向(Z軸)の放射が大きくなり、時計表面を頂点に向けた場合には、望ましいアンテナ特性を得られることが判る。なお、ケースが金属製である場合にはアンテナに近過ぎる場合には、そのアンテナ特性が劣化するが、本実施形態において外装ケース80は非導電性部材であることからそのような影響はなく、裏蓋85は、地板38や駆動機構30などにより隔てられており、アンテナ体40と適度な距離があるため、アンテナ特性を劣化させることなく反射板として有効に機能させることができる。
また、電子時計100では、誘電体40dによる波長短縮を利用することでアンテナの小型化を図ることができる。すなわち、誘電体による波長短縮が√εrとなることから、本実施形態では、誘電体40dとしては、εr=5〜10程度を用い、これにより、GPS受信用のアンテナであっても、腕時計に1波長ループアンテナを収めることができ、アンテナの小型化を図ることができる。またグランド板を必要としないため、大きなサイズのグランド板をとない小型機器でも使いやすいという利点がある。なお、本実施形態では、アンテナ体40は、リング状の誘電体40dの表面上にメッキや銀ペースト印刷などでアンテナパターン40cを形成している。アンテナパターン40cが表面に形成されている場合には、その加工しやすく周波数調整も容易となる。
さらに、アンテナ体40は、給電電極40a及び40bを通じて平衡給電されていることから、給電電極40a及び40bが平衡型のアンテナパターンを構成することができ、受信性能を向上させることができる。また、前記側面部の二つの開口のうち、前記時刻表示部の表示方向と反対側の開口を塞ぐ金属製の裏蓋を備えるため、金属製の裏蓋による反射により、時計表面における法線方向の放射が大きくなり、極めて高い受信性能が得られる。
以上より、本発明によれば、GPSにおける衛星信号の受信に際し、屋外における装着者の姿勢などの人間工学に基づいて実用上最適なアンテナ指向性を得ることができ、アンテナの小型化を図りつつ、受信性能を十分に高く維持することができる。
[第2実施形態]
図11は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計200(電子時計200)の一部断面図である。電子時計200は、アンテナ体40に代えてアンテナ体41を備える点で電子時計100と相違する。アンテナ体41は、環状の誘電体41dを有し、アンテナパターン41cが誘電体41dに接するように構成されている点でアンテナ体40と異なる。
具体的には、図11に示すように、本実施形態では、ダイヤルリング83と、ベゼル81の内周面とによりドーナツ状に画成された収納空間82内において、円周方向に延在されるドーナツ状(O型)の誘電体41dを備え、この誘電体41d内に、金属のアンテナパターン41cが埋め込まれて、アンテナ体41が構成されている。なお、誘電体41dの断面形状は略正方形となっている。
誘電体41dは、誘電体セラミックなどの誘電体であるが、誘電体を混ぜたプラスチックを用いたインサート成形で形成するようにしてもよい。なお、本実施形態では、ドーナツ状をなす誘電体41d円周上の一点に、給電電極41a及び41bが位置しており、誘電体41d内部のアンテナパターン41cは、環状の一部を切り欠いたいわゆるC形状をなしている。そして、これら、誘電体41d及びアンテナパターン41cは、表面側から見てダイヤルリング83に覆われている。
また、この第2実施形態では、外装ケース80を金属で形成し、外装ケース80及び金属製の裏蓋85をグランド板として機能させる。すなわち、アンテナ体41の一方の給電電極41a又は41bを、導通バネ38cを介して金属製の外装ケース80に接続させている。他方の給電電極41a又は41bに対しては、アンテナ接続ピン44を通じて給電を行う。このとき、アンテナ体41は、1波長ループアンテナであることから、給電に対して自己平衡作用があり、上記バラン10を介さず、直接給電することも可能である。
以上の説明から明らかなように、電子時計200によれば、電子時計100と同様の効果が得られる。さらなる効果としては、誘電体41dの波長短縮効果と相俟ってアンテナ周囲長を短縮することができ、これによりアンテナ全体をより小型化できる。また、誘電体41dと接触させることで、金属のアンテナパターン41cを動かないように固定することができ、装置の安定性を向上させることができる。また、アンテナ体41の断面を略正方形とすることにより無駄なスペースがなくなり、時計内の空間を有効に活用でき、小形化に寄与することができる。
本実施形態では、ループアンテナの方側の給電電極41a又は41bを通じて、導通バネ38cを介して外装ケース80をグランド板として機能させることから、アンテナ接続ピン44を1個とさせることができ、構造が簡単になりコストダウンを図ることができ、また給電電極を配置する位置の自由度を高めることができる。さらに、アンテナ体41の給電に対する自己平衡作用によって、上記バラン10を省略することによっても、小型化を促すことができる。