JP5829924B2 - 多孔性複合材料とその製造方法、及び硫化水素ガス除去材 - Google Patents

多孔性複合材料とその製造方法、及び硫化水素ガス除去材 Download PDF

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Description

本発明は、多孔性材料に銀系触媒が担持された多孔性複合材料、及びこの多孔性複合材料から構成される硫化水素ガス除去材に関するものである。
バイオガスや天然ガス(例えば、メタン、エタン等)等は、石油代替エネルギーとして近年広く利用されている。しかし、これらのガスには微量の不純物が含まれており、この不純物が様々な不具合を引き起こすことから問題となっている。不純物には、例えば硫黄化合物(硫化水素)がある。硫黄化合物は、発電機等の利用機器の腐食の原因や、触媒の劣化原因となるため、硫黄化合物を選択的に、且つ効率良く分離除去できる技術の確立が望まれている。
硫黄化合物の除去には、多くの硫黄化合物を吸着できるよう、表面積の大きな多孔性材料からなる脱硫剤が使用される。多孔性材料には、ゼオライト等の金属酸化物や、近年注目される金属イオンと有機配位子から形成される多孔性金属錯体(Porous Coordination Polymers、或いは、Metal Organic Frameworksとも称される)等がある。
多孔性材料に金属酸化物を用いた例として、例えば、Ag、Cu、Co、Ni及びZn等の金属をゼオライトに担持させた硫黄化合物除去用吸着剤や(特許文献1)、Na−Y型ゼオライトに銀を担持させた脱硫剤(特許文献2)、或いは、ゼオライト及び活性炭以外の担体材料と銀含有活性組成物とから構成される細孔構造を有する脱硫触媒等が知られている(特許文献3)。
また、多孔性金属錯体(PCP)を硫化水素吸着材の多孔性材料に使用する例として、例えば、MIL−47(V)、MIL−53(Al,Cr,Fe)、MIL−100(Cr)、MIL−101(Cr)等の多孔性金属錯体から構成される脱硫剤や(非特許文献1)、MOF−199(HKUST−1)の細孔にケギン型のポリ酸を導入して得られる脱硫剤が挙げられる(非特許文献2)。多孔性金属錯体(PCP)は、比表面積が広いため、硫化水素等の不純物吸着除去に好適である。
特開2004−168648号公報 特開2004−228016号公報 特表2010−535613号公報
L.Hamonら(他6名)、JACS,2009,131,p8775−8777 J.Songら(他6名)、JACS,2011,133,p16839−16846
ところが、特許文献1、2に記載されるように、多孔性材料としてゼオライトを採用しても、ゼオライトの比表面積を向上させることには限界があるため、硫化水素の吸着容量を増量させることは困難である。また特許文献3の脱硫触媒は、硫黄含有化合物として、テトラヒドロチオフェン(THT)の吸着能しか検討されておらず、硫化水素の吸着性能については不明である。さらに非特許文献1に開示される脱硫剤は、単に多孔性金属錯体(PCP)を硫化水素吸着材として使用するに過ぎず、常圧下での硫化水素の除去率は満足のいくものではない。また、非特許文献1の多孔性金属錯体のうち、MIL−47(V)、MIL−53(Al,Cr,Fe)は、構成金属に水分子が配位しないため、真空加熱処理を行っても、構成金属が配位不飽和状態にならない。また、MIL−100(Cr)、MIL−101(Cr)は細孔径が29〜34Å程度と大きく、小分子の硫化水素の吸着性能が劣る。さらに、MIL−100(Cr)、MIL−101(Cr)は、三核金属クラスターをベースとする多孔性金属錯体であるため、真空加熱を行ったとしても、配位不飽和金属を形成し難く、硫化水素を充分に除去することが難しい。加えて非特許文献2に開示される脱硫剤は、液相中における硫化水素除去性能は検討されているものの、気相中での除去性能が検討されていないため、気相中での硫化水素除去性能は明らかではない。
このような状況の下、本発明では気相中での硫化水素除去性能に優れる多孔性複合材料を提供することを課題として掲げた。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料は、優れた硫化水素除去能を有していることを見出した。特に、この多孔性材料に銀系触媒を担持させて得られる多孔性複合材料は、より優れた硫化水素除去能を有し、かつ長時間使用しても、この優れた硫化水素除去能が維持されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る多孔性複合材料は、多孔性材料に、銀系触媒が担持された多孔性複合材料であって、前記多孔性材料の一部または全部の金属が、配位不飽和状態である点に要旨を有する。前記多孔性材料は、金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体であることが好ましく、前記有機配位子は1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体であることが望ましい。また、前記金属は銅であることが好ましい。加えて、銀系触媒の平均粒子径は10nm以下であることが望ましい。さらに本発明には、前記多孔性複合材料からなる硫化水素ガス除去材も包含される。加えて、水分子と配位結合している多孔性材料を真空加熱して、配位不飽和状態の金属を形成し、次いで銀系触媒を担持させることを特徴とする多孔性複合材料の製造方法も含まれる。前記多孔性複合材料の製造方法には、多孔性複合材料が還元される態様も包含される。
本発明の多孔性複合材料は、配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料に、銀系触媒が担持されているため、この複合材料は、極めて優れた硫化水素除去能を有し、かつ長時間使用した場合であっても、この優れた硫化水素除去能が維持される。また銀が担持されない多孔性材料であっても、配位不飽和状態の金属が存在するものは、優れた硫化水素除去能を有している。
図1は、実施例1で観察されたTEM像(倍率:30万倍)を示す写真である。 図2は、実施例、参考例及び比較例で行われた硫化水素流通系吸着試験結果を示すグラフである。 図3は、比較例2で観察されたTEM像(倍率:5万倍)を示す写真である。
<<多孔性複合材料>>
本発明の多孔性複合材料は、配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料に、銀系触媒(銀や銀化合物)が担持されている。ガス中の硫化水素は銀系触媒と反応することにより、多孔性材料に吸着されやすい化合物(例えば、硫黄や二酸化硫黄等)に変換される。さらに、この反応で生成される化合物は、多孔性材料の細孔内部に捕捉されるため、ガス中の硫黄化合物濃度を低く抑えることができる。
<多孔性材料>
本発明では、銀系触媒を担持させる基材として、配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料を使用する。配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料は、硫化水素の吸着性能に優れることが本発明者らの研究により明らかとなった。また、多孔性材料中に配位不飽和状態の金属が存在すると、金属原子の空の軌道を利用して、銀系触媒が配位結合するため、銀系触媒を多孔性材料に容易に担持させることもできる。加えて、多孔性材料は比表面積が広いため、硫化水素の分解反応により生じる硫黄化合物を多量に吸着できる。
多孔性材料としては、多孔性金属錯体を使用することが好ましく、この多孔性金属錯体は、金属及び有機配位子から構成されることが望ましい。多孔性金属錯体としては、Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成されるHKUST−1(MOF−199)、Niと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸から形成されるNi−MOF−74の使用が好ましく、中でも硫化水素除去性能が高いことから、HKUST−1を使用することがより好ましい。
また、多孔性金属錯体としては、前述したNi−MOF−74等の単核金属クラスターの多孔性金属錯体、または、HKUST−1(MOF−199)等の二核金属クラスターの多孔性金属錯体の使用が好適である。このように、単核または二核金属クラスターの多孔性金属錯体の使用が、本発明に好適である理由は定かではないものの、理由の一つとして、三核、または、それ以上の多核金属クラスターから構成される多孔性金属錯体は、真空加熱を行っても構成金属を配位不飽和状態することが困難であることが挙げられる。
多孔性金属錯体の金属としては、周期表第2族〜第15族に分類される金属の使用が好ましい。中でも、Mg、Ca、Sr、Baの第2族元素;Sc、Yの第3族元素;Ti、Zr、Hfの第4族元素;V、Nb、Taの第5族元素;Cr、Mo、Wの第6族元素;Mn、Reの第7族元素;Fe、Ru、Osの第8族元素;Co、Rh、Irの第9族元素;Ni、Pd、Ptの第10族元素;Cu、Ag、Auの第11族元素;Zn、Cd、Hgの第12族元素;Al、Ga、In、Tlの第13族元素;Si、Ge、Sn、Pbの第14族元素;As、Sb、Biの第15族元素が好ましく、さらに好ましくは第10族〜第12族の元素であり、中でもNi、Cuの使用が望ましく、本発明にはCuが最適である。これらの元素の金属はイオンの状態で用いることも可能であり、金属イオンの好適な例として、Ni2+、Ni+、Cu2+、Cu+が挙げられる。
また有機配位子としては、カルボン酸及びその誘導体、二座以上で配位可能なアミン系化合物及びその誘導体の使用が望ましい。カルボン酸及びその誘導体としては、例えば、p−テルフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸〔別名称:5,5’−(1,4−フェニレン)ビスイソフタル酸〕、1,2,4,5−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン等のテトラカルボン酸及びその誘導体;ビフェニル−3,4’,5−トリカルボン酸、1,3,5−トリス(4’−カルボキシ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等のトリカルボン酸及びその誘導体;2,5−ジアミノテレフタル酸、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マロン酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。また二座以上で配位可能なアミン系化合物及びその誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類及びその誘導体;4,4’−ビピリジン、1,4−ビス(4−ピリジル)ベンゼン、2,2’−ジメチル−4,4'−ビピリジン、1,4−ビス(4−ピリジル)ブタジイン、1,2−ビス(4−ピリジル)エタン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン等のピリジン環を有する化合物及びその誘導体;ピラジン、2,5−ジメチルピラジン等のピラジン環を有する化合物及びその誘導体;その他上記以外の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の環状アミン類及びその誘導体等が好ましく使用できる。有機配位子としては、中でもトリカルボン酸及びその誘導体の使用が好ましく、特に1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体が好ましい。
多孔性材料に存在する細孔径は、例えば、1〜25Åであることが望ましく、より好ましくは3〜20Åであり、さらに好ましくは5〜15Åである。細孔径が小さいほど、小分子である硫化水素を捕捉できるため望ましい。また、多孔性金属錯体は通常、細孔表面径が狭く、細孔内部径が広いというボトルネック構造を有する。そのため、多孔性材料として多孔性金属錯体を使用する場合は、多孔性金属錯体の細孔表面径、及び細孔内部径が、共に前記範囲内に包含されることが好ましい。
<触媒>
配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料であっても、従来に比べ、優れた硫化水素除去能は発揮される。しかし、燃料ガス中の硫化水素を酸化し、無害化する目的で、前記多孔性材料に、酸化触媒として銀系触媒を担持させると、硫化水素の除去効率が飛躍的に向上することが分かった。そのため、本発明の多孔性複合材料は、多孔性材料に銀系触媒が担持されている点に特徴を有する。
銀系触媒としては、銀または銀化合物が好適に用いられ、前記銀化合物としては、例えば酸化銀、及び硫化銀が挙げられる。
前記銀系触媒の多孔性材料に対する担持量は、多孔性複合材料100質量%中、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下であり、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.07質量%以上である。銀系触媒の担持量が前記範囲内であれば、触媒と硫化水素の反応率を向上させることができる。
<<構成金属の配位不飽和化>>
多孔性材料は銀系触媒担持工程前に、真空加熱されることが望ましい。多孔性材料が多孔性金属錯体である場合、金属は、有機配位子のみならず、通常水分子とも配位結合している。ところがこの加熱により、金属と水分子との配位結合は切断され、一部または全部の金属が配位不飽和状態になる。多孔性材料を構成する金属の一部または全部を配位不飽和状態にすることにより、多孔性材料の硫化水素吸着能を向上させることができる。さらに本発明では、この配位不飽和状態の結合を利用して酸化触媒(銀系触媒)を担持させることにより、硫化水素除去能を飛躍的に向上できる。
真空加熱処理に関し、加熱温度は60〜180℃が好ましく、より好ましくは80〜160℃、更に好ましくは100〜140℃である。また加熱時間は、10時間以上が好適であり、より好適には12時間以上であり、24時間以下が好ましく、より好ましくは18時間以下である。真空加熱処理後、多孔性材料は室温まで放冷されることが望ましい。
<<多孔性複合材料の製造方法>>
本発明の多孔性複合材料は、配位不飽和状態の金属が存在する多孔性材料に銀系触媒を担持させることにより製造される。銀系触媒の担持方法としては、(1)銀系触媒を含む溶液に多孔性材料を含浸させる溶液含浸法、(2)高剪断力下で多孔性材料と銀系触媒を混合するメカノケミカル法、或いは、(3)化学蒸着法等が適宜用いられる。中でも、多孔性複合材料の製造が容易であることから、本発明では(1)溶液含浸法を採用することが望ましい。
溶液含浸法により多孔性複合材料を製造する場合、銀系触媒を含む溶液の調製方法としては、溶媒に銀系触媒を溶解させて銀イオンを生成させる方法や、溶媒に銀系触媒を分散させる方法等が適宜使用される。溶媒としては、水や、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒の使用が望ましい。また、これらの溶媒は単独で用いても、混合して用いてもよい。銀イオンを含むイオン溶液は、前記溶媒に、硝酸銀、ハロゲン化銀等の塩を混合することにより適宜調製される。
溶液含浸法の場合、多孔性複合材料は、真空加熱処理後の多孔性材料を、銀系触媒含有溶液に加え、多孔性材料に銀系触媒を含む溶液を充分に含浸させた後、固液分離した後、固体を乾燥させて製造される。銀系触媒含有溶液への含浸時間は、1〜48時間が好適であり、より好適には3〜24時間、さらに好適には10〜20時間である。含浸時には、溶液を攪拌することも可能である。また含浸後の固液分離操作としては、濾過、遠心分離、沈殿、溶媒留去等の公知の手段を適宜採用するとよい。
<銀系触媒のナノ化>
多孔性材料に銀系触媒含有溶液を含浸させた後、次いで還元剤を含む溶液と多孔性複合材料を混合することにより、銀系触媒を微粒子化することができる。本発明者らは、銀系触媒を微粒子化すると、得られた多孔性複合材料が、硫化水素除去材として長時間(例えば、10時間程度)連続的に使用された後であっても、硫化水素除去率100%という驚異的な硫化水素除去性能を発揮するという知見を得た。そのため本発明においては、銀系触媒の平均粒子径は10nm以下であることが好ましく、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは6nm以下である。なお、平均粒子径の測定方法については、実施例の欄に詳述する。
銀系触媒を微粒子化する方法としては、例えば溶液含浸法で多孔性複合材料を製造する場合、多孔性材料に銀系触媒含有溶液を含浸させた後、一旦溶媒を留去し、そこへ還元剤と溶媒の混合溶液を添加し、一定時間多孔性複合材料を含浸させて還元処理を行うとよい。その後、固液分離操作を行い、得られる多孔性複合材料を加熱乾燥することが望ましい。還元剤含有溶液に多孔性複合材料を含浸させる時間は、5〜240分が好適であり、より好適には10〜120分、さらに好適には15〜60分である。
還元剤としては、公知の還元剤を適宜使用することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化トリエチルホウ素リチウム([LiBH(C253])等の水素化ホウ素化合物;水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)等の水素化アルミニウム化合物が好適に使用される。
還元剤の添加量は、銀イオン1molに対し、5〜15molであることが好ましく、より好適には6〜12molであり、さらに好適には6.5〜10molである。還元剤の添加量が銀イオン1molに対し、5mol未満では、銀系触媒を微粒子化することが困難な場合がある。
<<硫化水素ガス除去材>>
本発明により得られる多孔性材料・多孔性複合材料は、硫化水素除去能に優れるため、本発明の多孔性材料・多孔性複合材料を燃料ガスの精製装置等に硫化水素ガス除去材として充填することにより、燃料ガス中の硫化水素量を簡便に低減することができる。硫黄化合物含量の少ない精製ガスは、発電機等の利用機器に損傷を与えることがなく、加えて、下流工程での触媒劣化を防止することができる。すなわち本発明の多孔性材料・多孔性複合材料によれば、発電機等のメンテナンスコストを大幅に削減することができるため、バイオガスや天然ガス等の石油代替エネルギーの利用拡大が期待される。また、本発明の多孔性材料・多孔性複合材料をフィルターに担持させた製品は、天然ガス精製等に用いられる硫化水素除去フィルターとしても使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、実施例及び比較例中における分析または評価は、以下のようにして行った。
<粉末X線回折測定>
得られた複合材料について、粉末X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス社製「NEW D8 ADVANCE」)を用いて、対称反射法で測定した。測定条件を以下に示す。
1)X線源:CuKα(λ=1.5418Å)40kV 200mA
2)ゴニオメーター:縦型ゴニオメーター
3)検出器:シンチレーションカウンター
4)回折角(2θ)範囲:3〜90°
5)スキャンステップ:0.05°
6)積算時間:0.5秒/ステップ
7)スリット:発散スリット=0.5°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=0.5°
<透過型電子顕微鏡(TEM)観察>
透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HT7700」、または日本電子社製「JEM−2200FS」)を用いて、得られた多孔性材料、及び多孔性複合材料を観察した。
<硫化水素流通系吸着試験>
多孔性複合材料100mgをカラムに充填し、試験ガスを流し、経時的にカラム出口での硫化水素ガス濃度を、硫化水素ガス用検知管を用いて測定し、硫化水素(H2S)除去率を下記式(i);
硫化水素(H2S)除去率(%)={(カラム入口での硫化水素濃度−カラム出口での硫化水素濃度)/(カラム入口での硫化水素濃度)}×100 …(i)
に基づき算出した。
なお、試料としては、120℃で24時間真空乾燥し、吸着物質を除去したものを使用した。評価条件の詳細を以下に示す。
1)測定温度:25℃
2)湿度:0%RH
3)測定雰囲気:窒素下
4)圧力:常圧
5)試験ガス組成:硫化水素10ppm含有窒素ガス
6)流量:1L/min
<銀系触媒の平均粒子径の測定方法>
銀系触媒の粒子径は、透過型電子顕微鏡(日立製作所製「HT7700」、または日本電子社製「JEM−2200FS」)を用い、任意の200個の銀系触媒について、倍率10万倍で観察することにより測定した。そして、これらの平均値を、銀系触媒の平均粒子径とした。
実施例1
<配位不飽和部位を有する多孔性金属錯体[Cu3(BTC)2(H2O)3nへのAgの担持>
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu3(BTC)2(H2O)3n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体300mgを、メタノール4.8mlに分散させ、ここへAgNO39.4mg(0.05mmol)を含むメタノール溶液1.3mlを加え、室温で1.5時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール3.0mlを加えた。その後、2.1mlのNaBH415.9mg(0.42mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された多孔性複合材料を得た(256mg、収率84%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンが観測されなかったが、TEM観察により、2〜5nmのAg粒子が高分散状態で担持されている様子が観察された。TEM像を図1に示す。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
実施例2
<配位不飽和部位を有する多孔性金属錯体[Cu3(BTC)2(H2O)3nへのAgの担持>
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu3(BTC)2(H2O)3n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO323.6mg(0.14mmol)を含むメタノール溶液6.4mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、5.2mlのNaBH439.8mg(1.05mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが1質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.51g、収率100%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
実施例3
<配位不飽和部位を有する多孔性金属錯体[Cu3(BTC)2(H2O)3nへのAgの担持>
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu3(BTC)2(H2O)3n)を120℃で15時間真空乾燥させて不飽和配位金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO311.7mg(0.07mmol)を含むメタノール溶液3.2mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、2.6mlのNaBH419.9mg(0.53mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが0.5質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.48g、収率98%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
実施例4
<配位不飽和部位を有する多孔性金属錯体[Cu3(BTC)2(H2O)3nへのAgの担持>
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu3(BTC)2(H2O)3n)を120℃で15時間真空乾燥させて配位不飽和金属を生成させ、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、AgNO32.4mg(0.01mmol)を含むメタノール溶液0.6mlを加え、室温で17時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、0.52mlのNaBH44.0mg(0.11mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが0.1質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.50g、収率100%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
参考例1
Cuと1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(BTC)から形成された多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径9.5Å、細孔内部径13.3Å;BASF社製「Basolite(登録商標) C300」、[Cu3(BTC)2(H2O)3n)を用いて、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
比較例1
<配位不飽和部位を有しない多孔性金属錯体[Zn(MeIm)2nへのAgの担持>
本比較例においては、真空加熱処理を行っても、構成金属が配位不飽和状態にならない多孔性材料として、Znと2−メチルイミダゾール(MeIm)から形成される多孔性金属錯体(細孔径;細孔表面径3.4Å、細孔内部径11.6Å;BASF社製「Basolite(登録商標) Z1200」、[Zn(MeIm)2n)を試料に用いた。この多孔性金属錯体を構成する金属には、水分子が配位していない。そのため、錯体を真空条件下で加熱しても、配位不飽和状態の金属は形成されない。この多孔性金属錯体を120℃で15時間真空乾燥させ、その後、室温まで放冷した。この多孔性金属錯体1.5gを、メタノール24mlに分散させ、ここへAgNO347.3mg(0.28mmol)を含むメタノール溶液12.8mlを加え、室温で24時間攪拌を行った。その後、溶媒を留去し、メタノール10mlを加えた。その後、10.5mlのNaBH480.0mg(2.11mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された多孔性複合材料を得た(1.48g、収率96%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agのパターンがほとんど観測されなかったことから、Ag粒子は微粒子化していると言える。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。
比較例2
<NaY型ゼオライトへのAgの担持>
NaY型ゼオライト(平均細孔径;7.4Å)を予め120℃で15時間真空乾燥させた後、室温まで放冷した。このゼオライト300mgを、メタノール4.8mlに分散させ、ここへ1.3mlのAgNO39.4mg(0.05mmol)を含むメタノール溶液を加え、室温で22時間攪拌を行った。次いで、溶媒を留去し、メタノール3.0mlを加えた。その後、2.1mlのNaBH416.0mg(0.42mmol)を含むメタノール溶液を滴下し、30分間攪拌を行った。得られた溶液を濾過し、固体をメタノールで洗浄した後、120℃で真空乾燥を行い、Agが2質量%担持された複合材料を得た(206mg、収率67%)。得られた複合材料について、粉末X線回折測定及びTEM観察を行った。粉末X線回折測定からは、Agパターンがわずかに観測され、Agの生成が確認できた。またTEM観察により、12〜24nmのAg粒子が担持されている様子が観察された。TEM像を図3に示す。この複合材料を用い、硫化水素流通系吸着試験を行った。結果を図2に示す。

Claims (8)

  1. 多孔性材料に、銀または銀化合物である銀系触媒が担持された多孔性複合材料であって、
    前記多孔性材料の一部または全部の金属が、配位不飽和状態であることを特徴とする多孔性複合材料。
  2. 前記多孔性材料が、金属及び有機配位子から構成される多孔性金属錯体である請求項1に記載の多孔性複合材料。
  3. 前記有機配位子が1,3,5−ベンゼントリカルボン酸及びその誘導体である請求項2に記載の多孔性複合材料。
  4. 前記金属が銅である請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性複合材料。
  5. 銀系触媒の平均粒子径が10nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性複合材料。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性複合材料からなることを特徴とする硫化水素ガス除去材。
  7. 水分子と配位結合している多孔性材料を真空加熱して、配位不飽和状態の金属を形成し、次いで銀または銀化合物である銀系触媒を担持させることを特徴とする多孔性複合材料の製造方法。
  8. 多孔性複合材料を還元する工程を含む請求項7に記載の多孔性複合材料の製造方法。
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