ところで、特許文献2の錠装置では、障子が閉じた状態でのロック部材の良好な操作性を確保するため、縦枠に切欠を形成し、この切欠を介して解除レバーを室内側に導出するようにしている。しかしながら、こうした錠装置を適用する建具にあっては、室内側に位置する部分に切欠が開口することになり、外観品質を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。また、切欠を介して外部から水や空気が進入する恐れもあり、これを防止するための対策も講じる必要がある。
こうした問題を解決するには、解除レバーを枠と框との隙間から室内側に導出することが考えられる。しかしながら、特許文献2の錠装置においてフック部材に対するロック部材の係合を解除するには、室内側に導出した解除レバーを框の長手方向に沿って移動させる構成である。このため、解除レバーの操作に伴って框と解除レバーとが互いに摺接することになり、框の表面に摺接痕が現れる恐れがある。特に、框の表面に塗装が施されていた場合には、塗膜が剥がれ落ちる等、外観品質を著しく損なう事態を招来することも考えられる。
しかも、通常の建具では、室内に雨や風が進入しないように、枠と框との間にシール構造が設けられているのが一般的である。例えば、開口枠の室内側に位置する部位にヒレ部を設けるとともに、ヒレ部の先端にガスケット等のシール部材を配設し、障子が閉じた際にシール部材を框の見付け面に圧接させることで、外部からの水や空気の進入を防止するようにしている。こうした建具に対して枠と框との隙間から解除レバーを室内側に導出させた場合には、解除レバーがシール部材と框との隙間を押し広げる状態で框の長手方向に往復移動することになり、シール部材のシール機能に多大な影響を及ぼす恐れがある。
本発明は、上記実情に鑑みて、外観品質を損なうことなく、所望の水密性及び気密性を確保した上で良好な操作性を確保することのできる錠装置を備えた建具を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、開口枠の枠に噛合ピンを備えるとともに、障子の框において噛合ピンに対向する部位にフック部材を備え、前記フック部材が前記噛合ピンに非噛合となる非噛合姿勢となった場合に前記開口枠に対する前記障子の面外方向への開放を許容し、かつ前記障子を閉めた状態で前記フック部材が前記噛合ピンに噛合した噛合姿勢となった場合に前記開口枠に対する前記障子の開放を阻止する錠装置を備えた建具において、前記錠装置は、前記フック部材を前記非噛合姿勢となる向きに常時付勢するフック付勢手段と、前記フック部材が前記噛合姿勢に配置された状態で前記フック部材に係合した係合位置に配置された場合に前記フック付勢手段の付勢力に抗して前記フック部材を前記噛合姿勢に維持し、前記フック部材との係合が解除された非係合位置に配置された場合には前記フック部材の前記非噛合姿勢への移動を許容するロック部材とを備え、前記フック部材の回転軸心に沿った方向に前記ロック部材と前記フック部材とを相対的に移動可能に配設し、前記フック部材に対して前記ロック部材が前記フック部材の回転軸心に沿った方向に位置を変更することにより前記係合位置と前記非係合位置とに切り換わるように構成し、さらに前記ロック部材及び前記フック部材を前記フック部材の回転軸心に沿った方向に相対的に移動させる解除レバーを設けたものであり、前記障子が閉じた状態において前記解除レバーを前記開口枠に設けたインナガスケットと前記障子との間から前記障子の見付け面に導出させ、かつ前記フック部材を設けた框に対して直交する方向に沿って前記解除レバーをスライドさせた場合に前記ロック部材及び前記フック部材を相対的に移動させることを特徴とする。
この発明によれば、解除レバーをフック部材の回転軸心に沿った方向に移動させれば、ロック部材とフック部材とが非係合位置に切り換わり、フック部材が非噛合姿勢となって噛合ピンとの噛合を解除することができる。
また、本発明は、上述した建具において、ベース部材に対して前記ロック部材を前記フック部材の回転軸心に沿った方向に移動可能に配設し、前記係合位置に配置された前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるように前記解除レバーを設けたことを特徴とする。
この発明によれば、解除レバーを介してロック部材をベース部材に対して回転軸心に沿った方向に移動させれば、ロック部材が非係合位置となる。
また、本発明は、上述した建具において、前記解除レバーは、前記ベース部材に支持される基端部と、前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部と、これら基端部及びスライド部の間に位置して前記ロック部材に当接される作用部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記作用部が前記ベース部材から離隔することにより前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させることを特徴とする。
この発明によれば、解除レバーの作用部が当接することにより、ロック部材が係合位置から非係合位置に移動する。
また、本発明は、上述した建具において、前記解除レバーは、前記ロック部材に連結した基端部と、前記基端部から前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記基端部を介して前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させることを特徴とする。
この発明によれば、解除レバーの動きが直接ロック部材に伝達されるため、ロック部材を確実に移動させることができる。
また、本発明は、上述した建具において、前記解除レバーは、前記ベース部材に支持される基端部と、前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部と、これら基端部及びスライド部の間に位置して前記ロック部材に連結した作用部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記作用部が前記ベース部材から離隔することにより前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させることを特徴とする。
この発明によれば、解除レバーの動きが直接ロック部材に伝達されるため、ロック部材を確実に移動させることができる。
また、本発明は、上述した建具において、前記ロック部材及び前記フック部材は、前記フック部材が前記非噛合姿勢に配置された場合、互いに端面を介して当接することにより前記フック部材の回転軸心に沿った互いの近接移動が阻止され、かつ前記フック部材が前記噛合姿勢に配置された場合に前記フック部材の回転軸心に沿った互いの近接移動が可能となり、個々の外周に設けた当接面を介して相互に当接することにより前記係合位置となるようにそれぞれの外形形状を設定し、さらに前記ロック部材及び前記フック部材を互いに近接する方向に付勢する係合付勢手段を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、フック部材が非噛合姿勢から噛合姿勢に回転すれば、係合付勢手段の付勢力によってロック部材が非係合位置から係合位置に移動する。
また、本発明は、上述した建具において、ベース部材に対して前記ロック部材を前記フック部材の回転軸心に沿った方向に移動可能に配設し、前記係合位置に配置された前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるように前記解除レバーを設け、前記解除レバーは、前記ベース部材に支持される基端部と、前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部と、これら基端部及びスライド部の間に位置して前記ロック部材に当接される作用部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記作用部が前記ベース部材から離隔することにより前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるものであり、前記係合付勢手段は、前記ベース部材と前記ロック部材との間に介在し、前記ロック部材を前記フック部材に向けて付勢するものであることを特徴とする。
この発明によれば、フック部材が非噛合姿勢から噛合姿勢に回転すれば、係合付勢手段の付勢力によってロック部材が非係合位置から係合位置に移動する。
また、本発明は、上述した建具において、前記解除レバーには、前記フック部材が前記非噛合姿勢に配置され、互いに端面を介して前記フック部材及び前記ロック部材が当接した状態において前記解除レバーを前記ロック部材から離隔する方向に付勢するレバー付勢手段を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、ロック部材が非係合位置に配置されている状態においてもレバー付勢手段の付勢力により解除レバーを常態位置に復帰させることができる。
また、本発明は、上述した建具において、ベース部材に対して前記ロック部材を前記フック部材の回転軸心に沿った方向に移動可能に配設し、前記係合位置に配置された前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるように前記解除レバーを設け、前記解除レバーは、前記ロック部材に連結した基端部と、前記基端部から前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記基端部を介して前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるものであり、前記係合付勢手段は、前記ベース部材と前記ロック部材との間に介在し、前記ロック部材を前記フック部材に向けて付勢するものである。
この発明によれば、フック部材が非噛合姿勢から噛合姿勢に回転すれば、係合付勢手段の付勢力によってロック部材が非係合位置から係合位置に移動する。
また、本発明は、上述した建具において、ベース部材に対して前記ロック部材を前記フック部材の回転軸心に沿った方向に移動可能に配設し、前記係合位置に配置された前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるように前記解除レバーを設け、前記解除レバーは、前記ベース部材に支持される基端部と、前記フック部材の回転軸心に沿って延在するスライド部と、これら基端部及びスライド部の間に位置して前記ロック部材に連結した作用部とを有し、前記スライド部を長手方向に沿って移動させた場合に前記作用部が前記ベース部材から離隔することにより前記ロック部材を前記非係合位置へ移動させるものであり、さらに前記作用部を前記係合付勢手段として機能させることを特徴とする。
この発明によれば、フック部材が非噛合姿勢から噛合姿勢に回転すれば、係合付勢手段の付勢力によってロック部材が非係合位置から係合位置に移動する。しかも、係合付勢手段を別個の部品として設ける必要がない。
この発明によれば、解除レバーを框の長手に直交する方向に沿って移動させれば、ロック部材とフック部材とが非係合位置に切り換わり、フック部材が非噛合姿勢となって噛合ピンとの噛合を解除することができる。
また、本発明は、上述した建具において、前記障子には、前記フック部材を配設した框に対して交差し、かつ前記開口枠から離隔する方向に沿って操作グリップを配設し、さらに前記操作グリップには、前記操作グリップの長手方向に沿ってスライド可能に配設し、前記解除レバーが連係された錠操作部を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、操作部リップの錠操作部を介して解除レバーを操作すれば、ロック部材とフック部材とが非係合位置に切り換わり、フック部材が非噛合姿勢となって噛合ピンとの噛合を解除することができる。
本発明によれば、フック部材の回転軸心に沿った方向にロック部材とフック部材とを相対的に移動可能に配設し、フック部材に対してロック部材がフック部材の回転軸心に沿った方向に位置を変更することにより係合位置と非係合位置とに切り換わるように構成し、かつフック部材の回転軸心に沿った方向に延在する解除レバーを設けているため、解除レバーを枠と框との隙間から導出させた場合、解除レバーを框の長手に直交する方向に沿って移動させることで、ロック部材とフック部材とが非係合位置に切り換わり、フック部材が非噛合姿勢となって噛合ピンとの噛合を解除することができる。このため、解除レバーの操作に伴って框と解除レバーとが互いに摺接して摺接痕が発生した場合にも、解除レバーによって覆われるため框の表面に現れることがなく、外観品質を損なう恐れがなくなる。また、枠と框との間にシール部材が設けられている場合にも、シール部材の長手方向に対する解除レバーの位置は変化しないため、シール部材のシール機能に多大な影響を及ぼす恐れもなく、所望の水密性及び気密性を確保することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る錠装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である錠装置を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠10及び障子20を備え、開口枠10に対して障子20を面外方向に移動させることにより、障子20を室外側に向けて開けるように構成した縦すべり出し窓と称されるものである。開口枠10は、上枠11、下枠12、左右一対の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成したものである。障子20は、上框21、下框22、左右一対の縦框23,24を四周框組みすることによって構成し、その内部にガラス板等の面材25を保持したものである。この建具では、図1において左側に位置する縦框23の長手方向を中心として右側に位置する縦框(以下、区別する場合に「右縦框24」という)が回転可能となるように開口枠10に対して障子20が支持してあり、この右縦框24を室外側(図1において奥方)に突出させれば、障子20が開いて開口枠10が開放されることになる。
図1において右側に位置する縦枠(以下、区別する場合に「右縦枠14」という)には、図1〜図3−2に示すように、室内側に位置する部分にヒレ部14aが設けてある。ヒレ部14aは、開口枠10に対して障子20が閉じた場合に右縦框24の室内側に臨む見付け面に近接してこれを覆うように突出して設けた薄板状部分である。このヒレ部14aには、その先端部にインナガスケット15が設けてある。このインナガスケット15は、障子20が閉じた場合に右縦框24の室内側に臨む見付け面に圧接することにより、右縦枠14と右縦框24との間に所望の水密性及び気密性を確保するものである。また、図2−1及び図2−2に示すように、右縦枠14の見付け面において室外側に位置する部位には、障子20が閉じた場合に右縦框24の室外側縁部に圧接するアウタガスケット16が設けてある。
この建具には、右縦枠14において高さ方向のほぼ中央となる位置に噛合ピン30が配設してあるとともに、右縦框24において噛合ピン30に対応する位置にロックユニット40が配設してある。
噛合ピン30は、先端に太径の頭部31を有した円柱状部材である。この噛合ピン30は、基端部に設けたピンブラケット32を介して右縦枠14の見込み面に取り付けてあり、見込み面からほぼ水平に沿って突出している。
ロックユニット40は、障子20を閉めた状態で噛合ピン30に対して噛合した場合に開口枠10に対する障子20の開放を阻止し、かつ噛合ピン30に対して非噛合となった場合に開口枠10に対する障子20の開放を許容するものである。本実施の形態1では、図4−1〜図7−3に示すように、基準となるベース部材41に、フック部材42、ロック部材43、解除レバー44を設けることによってロックユニット40が構成してある。
ベース部材41は、平板状を成す主板部41aと、主板部41aの上下両端部から互いに同一方向に屈曲して設けた一対の取付脚部41b,41cとを一体に成形したものである。主板部41aは、上述したフック部材42、ロック部材43、解除レバー44を支持するための部分である。一対の取付脚部41b,41cは、ベース部材41を障子20に取り付けるための部分である。取付脚部41b,41cのそれぞれの先端部は、互いに離反する方向に向けて屈曲しており、右縦框24に対して取り付ける場合の取付面を構成している。これら取付脚部41b,41cの取付面は、互いに同一平面上に位置し、かつ主板部41aに対して平行となるように設けてある。ベース部材41の主板部41aには、進入溝41dが設けてある。進入溝41dは、取付脚部41b,41cを介してベース部材41を右縦框24の見込み面に取り付けた場合に室内側となる側縁に開口する切欠であり、噛合ピン30を挿入することのできる寸法に形成してある。
フック部材42は、ベース部材41の主板部41aにおいて進入溝41dの閉塞端に近接する位置に、主板部41aに直交するフック軸421を介して配設した平板状部材である。フック軸421に対してフック部材42は、フック軸421の軸心回りに回転可能、かつフック軸421の軸心方向へは移動が規制された状態で支持されている。このフック部材42には、第1回転規制部42a、第2回転規制部42b、フック部42c、フック側当接面42dが設けてある。
第1回転規制部42a及び第2回転規制部42bは、それぞれフック軸421の下方に設けた規制軸422に当接することにより、ベース部材41に対するフック部材42の回転範囲を規制するものである。第1回転規制部42aは、図6中においてフック部材42を時計回りに回転させた場合に規制軸422に当接し、フック部材42を噛合姿勢とするものである。第2回転規制部42bは、図6中においてフック部材42を反時計回りに回転させた場合に規制軸422に当接し、フック部材42を非噛合姿勢とするものである。
フック部42cは、フック部材42の外周面から形成した噛合溝42eを介して第1回転規制部42aと対向する部分である。噛合溝42eは、噛合ピン30を収容することのできる幅を有した切欠である。この噛合溝42eは、フック部材42が噛合姿勢となった場合に開口を下方に向けた状態でベース部材41の進入溝41dと交差し、フック部材42が非噛合姿勢となった場合に開口をベース部材41の進入溝41dに開放させるように形成してある。
フック部42cは、フック部材42が噛合姿勢となった場合にベース部材41の進入溝41dに対して噛合溝42eよりも開口側に位置し、かつ進入溝41dの開口を閉塞するように構成してある。フック部材42が非噛合姿勢となった場合、フック部42cは、ベース部材41の進入溝41dとは交差しない位置に退避する。フック部42cに対向する第1回転規制部42aは、フック部材42が噛合姿勢となった場合にベース部材41の進入溝41dに対して噛合溝42eよりも閉塞端側に位置する。フック部材42が非噛合姿勢となった場合、第1回転規制部42aは、ベース部材41の進入溝41dに対して傾斜するように位置し、進入溝41dに噛合ピン30が進入した場合にこれに当接することが可能である。
フック側当接面42dは、フック部材42が噛合姿勢となった場合に、進入溝41dよりも上方に位置する部位においてほぼ水平に延在するように構成したフック部材42の外周面部分である。このフック側当接面42dは、図6中に明示したように、フック部材42が回転して噛合姿勢から非噛合姿勢に移行する際に上方に突出するような軌跡を辿るように構成してある。フック部材42とベース部材41に設けた規制軸422との間には、フック部材42を常に非噛合姿勢となる方向に付勢するフック付勢バネ(フック付勢手段)423が介在させてある。尚、図5中の符号424は、ベース部材41の主板部41aとフック部材42との間に介在させたスペーサである。
ロック部材43は、ベース部材41の主板部41aにおいて進入溝41dの上方となる部位に、主板部41aに直交するロック軸431を介して配設した平板状部材であり、ロック軸431の軸心方向に沿って移動することが可能である。図7−1〜図7−3に示すように、ロック部材43は、フック部材42とほぼ同じ板厚を有したものであり、ロック軸431の軸心方向に沿って移動することにより、外周面をフック部材42の外周面に対向させた状態と、フック部材42の外周面からずれた状態とに切り換わることが可能である。このロック部材43には、回転規制面43a及びロック側当接面43bが設けてある。回転規制面43aは、ロック部材43の上端に形成した平坦面である。この回転規制面43aは、ベース部材41の上端に設けた取付脚部41bの下面に当接することにより、ロック部材43がロック軸431の軸心方向に沿って移動する間、ベース部材41に対してロック部材43を常に同じ姿勢を維持するように機能する。ロック側当接面43bは、フック部材42が噛合姿勢となった状態においてロック部材43の外周面をフック部材42の外周面に対向させた場合にフック部材42のフック側当接面42dに当接し、フック付勢バネ423の付勢力に抗してフック部材42を噛合姿勢に維持させるものである(係合位置)。ロック部材43とベース部材41に設けたロック軸431の頭部431aとの間には、ロック部材43を常にベース部材41の主板部41aに近接する方向に付勢するロック付勢バネ(係合付勢手段)432が介在させてある。
解除レバー44は、図4−1〜図7−3に示すように、ベース部材41の主板部41aにおいてフック軸421よりも上方となる部位に、主板部41aに直交するレバー軸441を介して配設した薄板状部材であり、基端部44aに設けた挿通孔44bを介してレバー軸441の軸心方向に沿って移動することが可能である。この解除レバー44は、レバー軸441が挿通する部分を基端部44aとして作用部44cが略水平に延在してロック部材43と主板部41aとの間を通過し、略直角に屈曲してスライド部44dがレバー軸441の突出方向と同じ向きに延在する。さらに、解除レバー44は、スライド部44dの先端部が略直角に屈曲してベース部材41の主板部41aから離隔する方向に延在し、後述する操作グリップ50に内蔵したレバー連係体53との連係部44eを構成している。ロック部材43と主板部41aとの間を通過する解除レバー44の作用部44cは、フック部材42が非噛合姿勢となった場合にも、フック部材42と接触しない幅に形成してある。解除レバー44の作用部44cには、ロック軸431が挿通する挿通孔44fが形成してある。ロック軸431が解除レバー44の挿通孔44fを通過することにより、レバー軸441の軸心方向に沿った解除レバー44の移動が可能となる。解除レバー44の基端部44aとベース部材41に設けたレバー軸441の頭部441aとの間には、解除レバー44の基端部44aを常にベース部材41の主板部41aに近接する方向に付勢するレバー付勢バネ(レバー付勢手段)442が介在させてある。
上記のように構成したロックユニット40は、図2−1〜図3−2に示すように、開口枠10に対して障子20を閉めた場合に、右縦枠14の見込み面から突出する噛合ピン30がベース部材41の主板部41aに設けた進入溝41dに進入することができ、かつ図6に示すように、進入溝41dに進入した噛合ピン30が、噛合姿勢となったフック部材42の噛合溝42eとの交差部分に位置することができるように、ベース部材41の取付脚部41b,41cを介して右縦框24の見込み面に取り付ける。ベース部材41から突出した解除レバー44は、図2−1〜図3−2に示すように、開口枠10に対して障子20を閉めた場合にも、右縦枠14と右縦框24との隙間からヒレ部14aを超えて連係部44eを室内側に導出することができるように、右縦框24において室内側に臨む見付け面に沿って配設する。
ロックユニット40を取り付けた障子20の右縦框24には、その見付け面において解除レバー44の連係部44eを覆う位置に操作グリップ50が取り付けてある。操作グリップ50は、グリップ本体51及び錠操作部52を備えて構成したもので、グリップ本体51の基端部を介して右縦框24の見付け面に固定してある。グリップ本体51は、右縦框24の長手方向に対して直交し、かつ右縦枠14から離隔する方向に沿って延在したものである。このグリップ本体51には、基端部に収容室51aを有している。収容室51aは、右縦框24に対向する部分が開口するとともに、連係孔51bを介してグリップ本体51の外表面に開口する空間であり、その内部にレバー連係体53を内蔵している。レバー連係体53は、右縦框24の見付け面に対向する部位に連係溝53aを有したコマ状部材であり、グリップ本体51の長手方向に沿って移動可能に配設してある。レバー連係体53の連係溝53aは、解除レバー44の板厚よりも大きな幅を有した溝状の開口であり、その内部に解除レバー44の連係部44eを収容している。図からも明らかなように、このレバー連係体53は、グリップ本体51に内蔵したグリップ付勢バネ54の付勢力により、収容室51aの内部において常時基端部側に付勢されている。錠操作部52は、操作グリップ50の基端部において室内側に位置する外表面に、操作グリップ50の長手方向に沿って移動可能に配設したものである。この錠操作部52には、操作出力片52aが設けてある。操作出力片52aは、操作グリップ50に形成した連係孔51bを介して操作グリップ50の内部に進入し、その先端部がレバー連係体53を介してグリップ付勢バネ54によって付勢された状態にある。
この操作グリップ50では、グリップ付勢バネ54によってレバー連係体53が常時操作グリップ50の基端部側に付勢されている。従って、錠操作部52に操作力を付与していない場合、図2−1に示すように、レバー連係体53を介して連係されたロックユニット40の解除レバー44は、作用部44cがレバー付勢バネ442の付勢力によりベース部材41の主板部41aに当接された状態となる。
この状態からグリップ本体51に対して錠操作部52を先端部側、つまり右縦框24から離隔する方向に向けて移動させると、図2−2に示すように、レバー連係体53を介して解除レバー44のスライド部44dが長手方向に沿って移動操作されることになり、作用部44cが主板部41aから離隔する方向に移動する。錠操作部52の操作力を除去すると、図2−1に示すように、グリップ付勢バネ54の付勢力によって錠操作部52及びレバー連係体53がグリップ本体51の基端部側に移動して通常状態に復帰し、さらにレバー付勢バネ442の付勢力により、解除レバー44の作用部44cが再び主板部41aに当接した常態位置に復帰する。
以下、開口枠10に対して障子20を開閉する場合の錠装置の動作について説明し、併せて本願の特徴部分について詳述する。尚、図2−3に示すように、開口枠10に対して障子20が開いている状態を建具の初期の状態とする。このとき、錠装置のロックユニット40においては、図7−3に示すように、ロック部材43がロック軸431の軸心方向に沿って、つまりフック軸421の回転軸心に沿って、ベース部材41の主板部41aから離隔する方向に移動し、その外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)にある。このため、図4−2及び図6中の二点鎖線で示すように、フック付勢バネ423の付勢力により、フック部材42が非噛合姿勢となって噛合溝42eの開口がベース部材41の進入溝41dに開放された状態にある。非係合位置にあるロック部材43は、図7−3に示すように、ロック付勢バネ432の付勢力によってフック部材42に近接する方向に付勢されており、端面を介してフック部材42に圧接された状態にある。また、解除レバー44は、レバー付勢バネ442の付勢力によってロック部材43から離隔し、ベース部材41の主板部41aに当接された常態位置にあり、操作グリップ50のレバー連係体53及び錠操作部52がグリップ本体51の基端側に位置した状態にある。
この状態から操作グリップ50を把持して障子20の右縦框24を室内側に引き寄せると、やがて右縦枠14に設けた噛合ピン30がベース部材41の進入溝41dに進入し、フック部材42の第1回転規制部42aに当接することにより、フック部材42を噛合姿勢となる向きに回転させる。フック部材42が噛合姿勢まで回転すると、図4−1及び図6中の実線で示すように、フック部材42のフック部42cによって進入溝41dの開口が閉塞されるため、進入溝41dから噛合ピン30を逸脱させることができない状態となる。しかも、フック部材42が噛合姿勢となった時点で、図7−1に示すように、ロック付勢バネ432の付勢力により、ロック部材43がベース部材41の主板部41aに近接する方向に移動し、図4−1及び図6中の実線で示すように、ロック側当接面43bを介してフック部材42のフック側当接面42dに当接する(係合位置)。この結果、フック付勢バネ423の付勢力に抗してフック部材42が噛合姿勢に維持されることとなり、開口枠10に対して障子20が閉じた状態に維持される。
一方、開口枠10に対して障子20を開ける場合には、図2−2に示すように、操作グリップ50のグリップ本体51に対して錠操作部52を先端部側に移動させれば良い。すなわち、操作グリップ50の錠操作部52をグリップ本体51の先端部側に移動させると、図7−2に示すように、レバー連係体53、連係部44e、スライド部44dを介して解除レバー44の作用部44cがレバー付勢バネ442の付勢力、さらにはロック付勢バネ432の付勢力に抗してロック部材43とともに主板部41aから離隔し、ロック部材43の外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)に移動する。これにより、図4−2及び図6中の二点鎖線で示すように、フック部材42が回転して非噛合姿勢となり、操作グリップ50を介して障子20の右縦框24を室外側に押し出せば、ベース部材41の進入溝41dから噛合ピン30が逸脱できるため、開口枠10に対して障子20を開くことができるようになる。尚、障子20が開いた後に錠操作部52から操作力を除去すると、図2−3に示すように、グリップ付勢バネ54の付勢力によって錠操作部52及びレバー連係体53がグリップ本体51の基端部側に移動し、さらにレバー付勢バネ442の付勢力により、図7−3に示すように、解除レバー44の作用部44cが再び主板部41aに当接した常態位置に復帰する。
ここで、障子20を開く場合には、錠操作部52を介して解除レバー44のスライド部44dが長手方向に沿って移動されるため、障子20の右縦框24に対してスライド部44dが摺接することになる。しかしながら、この建具では、フック部材42の回転軸心に沿ってロック部材43がフック部材42に対して移動することでフック部材42が係合位置から非係合位置に切り換わるため、図3−1及び図3−2に示すように、右縦枠14と右縦框24との隙間から導出させた解除レバー44のスライド部44dをその長手方向に沿ってスライドさせればフック部材42を切換操作できる。このため、解除レバー44の操作に伴って右縦框24と解除レバー44とが互いに摺接し、仮に右縦框24の見付け面に摺接痕が発生した場合にも、この摺接痕は解除レバー44によって覆われる位置にのみ発生することになり、右縦框24の表面に現れることがない。
また、右縦枠14と右縦框24との間に設けられたインナガスケット15に対しては、その長手方向には解除レバー44の位置が変化することがないため、インナガスケット15のシール機能に多大な影響を及ぼす恐れもない。さらに、障子20が開いている状態において既に解除レバー44の作用部44cがベース部材41の主板部41aに当接した常態位置に復帰するため、障子20を閉めた場合には解除レバー44とインナガスケット15とが摺接することもない。
これらの結果、上述の建具によれば、外観品質を損なうことなく、所望の水密性及び気密性を確保した上で良好な操作性を確保することが可能となる。
(実施の形態2)
図8−1〜図9は、本発明の実施の形態2である錠装置を示したものである。ここで例示する錠装置は、実施の形態1で図1に示した建具と同じ縦すべり出し窓において障子の右縦框にロックユニットを配設し、かつこれに対応する噛合ピンを右縦枠に設けるようにしたもので、実施の形態1とは、ロックユニットの詳細構成のみが異なっている。すなわち、図8−1〜図9に示すように、実施の形態2のロックユニット140では、独立した部品としての解除レバーは存在せず、ロック部材43に解除レバー144が一体に設けてある。解除レバー144は、基端部144aがロック部材43において進入溝41dが開口する側の縁部に連結し、略直角に屈曲してスライド部144dがロック軸431の突出方向と同じ向きに延在し、さらに、スライド部144dの先端部が略直角に屈曲してベース部材41の主板部41aから離隔する方向に延在して連係部144eを構成している。解除レバー144の連係部144eが、図示していない操作グリップのレバー連係体に連係してあり、錠操作部の操作によって解除レバー144が動作するのは実施の形態1と同様である。尚、ロックユニット140において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
この錠装置のロックユニット140においては、開口枠に対して障子が開いている場合、図8−2に示すように、ロック部材43がロック軸431の軸心方向に沿って、つまりフック軸421の回転軸心に沿って、ベース部材41の主板部41aから離隔する方向に移動し、その外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)にある。このため、フック付勢バネ423の付勢力により、フック部材42が非噛合姿勢となって噛合溝42eの開口がベース部材41の進入溝41dに開放された状態にある。非係合位置にあるロック部材43は、ロック付勢バネ432の付勢力によってフック部材42に近接する方向に付勢されており、端面を介してフック部材42に圧接された状態にある。従って、ロック部材43から延在した解除レバー144は、スライド部144dが引き出された状態にあり、図示していない操作グリップの錠操作部がグリップ本体の先端側に位置した状態にある。
この状態から操作グリップを把持して障子の右縦框を室内側に引き寄せると、やがて右縦枠に設けた噛合ピンがベース部材41の進入溝41dに進入し、フック部材42の第1回転規制部42aに当接することにより、フック部材42を噛合姿勢となる向きに回転させる。フック部材42が噛合姿勢まで回転すると、図8−1に示すように、フック部材42のフック部42cによって進入溝41dの開口が閉塞されるため、進入溝41dから噛合ピンを逸脱させることができない状態となる。しかも、フック部材42が噛合姿勢となった時点で、ロック付勢バネ432の付勢力により、ロック部材43がベース部材41の主板部41aに近接する方向に移動し、ロック側当接面43bを介してフック部材42のフック側当接面42dに当接する(係合位置)。この結果、フック付勢バネ423の付勢力に抗してフック部材42が噛合姿勢に維持されることとなり、開口枠に対して障子が閉じた状態に維持される。尚、図には明示していないが、ロック部材43がベース部材41の主板部41aに当接した時点で解除レバー144がスライドし、錠操作部がグリップ本体の基端側に移動することになる。
一方、操作グリップの錠操作部をグリップ本体の先端部側に移動させると、図8−2に示すように、連係部144e、スライド部144dを介して解除レバー144が移動され、ロック付勢バネ432の付勢力に抗してロック部材43が主板部41aから離隔し、その外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)に移動する。これにより、フック部材42が回転して非噛合姿勢となり、操作グリップを介して障子の右縦框を室外側に押し出せば、ベース部材41の進入溝41dから噛合ピンが逸脱できるため、開口枠に対して障子を開くことができるようになる。
ここで、実施の形態2においても、障子を開く場合には、錠操作部を介して解除レバー144のスライド部144dが長手方向に沿って移動さるため、障子の右縦框に対してスライド部144dが摺接することになる。しかしながら、フック部材42の回転軸心に沿ってロック部材43がフック部材42に対して移動することでフック部材42が係合位置から非係合位置に切り換わるため、右縦枠と右縦框との隙間から導出させた解除レバー144のスライド部144dをその長手方向に沿ってスライドさせればフック部材42を切換操作できる。このため、解除レバー144の操作に伴って右縦框と解除レバー144とが互いに摺接し、仮に右縦框の見付け面に摺接痕が発生した場合にも、この摺接痕は解除レバー144によって覆われる位置にのみ発生することになり、右縦框の表面に現れることがない。
また、右縦枠と右縦框との間にインナガスケットが設けられていた場合にも、その長手方向には解除レバー144の位置が変化することがないため、インナガスケットのシール機能に多大な影響を及ぼす恐れもない。
これらの結果、実施の形態2においても、外観品質を損なうことなく、所望の水密性及び気密性を確保した上で良好な操作性を確保することが可能となる。
(実施の形態3)
図10−1〜図11は、本発明の実施の形態3である錠装置を示したものである。ここで例示する錠装置は、実施の形態1で図1に示した建具と同じ縦すべり出し窓において障子の右縦框にロックユニットを配設し、かつこれに対応する噛合ピンを右縦枠に設けるようにしたもので、実施の形態1とは、ロックユニットの詳細構成のみが異なっている。すなわち、図10−1〜図11に示すように、実施の形態3のロックユニット240では、独立した部品としてのロック部材243は存在せず、解除レバー244にロック部材243が一体に設けてある。
解除レバー244は、弾性に富んだ薄板状部材であり、ベース部材41の主板部41aにおいてフック軸421よりも上方となる部位に、主板部41aに直交するレバー固定ピン2441により基端部244aを介して固定してある。この解除レバー244は、基端部244aから作用部(係合付勢手段)244cが略水平に延在し、さらに略直角に屈曲してスライド部244dがフック軸421の突出方向と同じ向きに延在する。さらに、解除レバー244は、スライド部244dの先端部が略直角に屈曲し、ベース部材41の主板部41aから離隔する方向に延在して連係部244eを構成している。解除レバー244の作用部244cは、フック部材42が非噛合姿勢となった場合にも、フック部材42と接触しない幅に形成してある。解除レバー244の連係部244eが、図示していない操作グリップのレバー連係体に連係してあり、錠操作部の操作によって解除レバー244が動作するのは実施の形態1と同様である。尚、図11中の符号245は、解除レバー244の基端部244aとベース部材41の主板部41aとの間に介在させたスペーサである。
ロック部材243は、フック部材42とほぼ同じ板厚を有した平板状を成し、作用部244cから下方に突出する外形を有したもので、作用部244cに連結して一体化してある。このロック部材243は、レバー固定ピン2441を支点として解除レバー244の作用部244cを弾性的に変形させることにより、その外周面をフック部材42の外周面に対向させた状態と、フック部材42の外周面からずれた状態とに切り換わることが可能である。ロック部材243の外周面がフック部材42の外周面からずれた状態においては、弾性的に変形した作用部244cの弾性復元力により、ベース部材41の主板部41aに近接する方向に付勢される。
このロック部材243には、その下方に突出した端部にロック側当接面243bが設けてある。ロック側当接面243bは、フック部材42が噛合姿勢となった状態においてロック部材243の外周面をフック部材42の外周面に対向させた場合にフック部材42のフック側当接面42dに当接し、フック付勢バネ423の付勢力に抗してフック部材42を噛合姿勢に維持させるものである(係合位置)。
尚、ロックユニット240において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
この錠装置のロックユニット240においては、開口枠に対して障子が開いている場合、図10−2に示すように、ロック部材243がベース部材41の主板部41aから離隔する方向に移動し、つまりフック軸421の回転軸心に沿った方向に移動し、その外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)にある。このため、フック付勢バネ423の付勢力により、フック部材42が非噛合姿勢となって噛合溝42eの開口がベース部材41の進入溝41dに開放された状態にある。非係合位置にあるロック部材243は、解除レバー244における作用部244cの弾性復元力によってフック部材42に近接する方向に付勢されており、端面を介してフック部材42に圧接された状態にある。従って、ロック部材243から延在した解除レバー244は、スライド部244dが引き出された状態にあり、図示していない操作グリップの錠操作部がグリップ本体の先端側に位置した状態にある。
この状態から操作グリップを把持して障子の右縦框を室内側に引き寄せると、やがて右縦枠に設けた噛合ピンがベース部材41の進入溝41dに進入し、フック部材42の第1回転規制部42aに当接することにより、フック部材42を噛合姿勢となる向きに回転させる。フック部材42が噛合姿勢まで回転すると、図10−1に示すように、フック部材42のフック部42cによって進入溝41dの開口が閉塞されるため、進入溝41dから噛合ピンを逸脱させることができない状態となる。しかも、フック部材42が噛合姿勢となった時点で、解除レバー244における作用部244cの弾性復元力により、ロック部材243がベース部材41の主板部41aに近接する方向に移動し、ロック側当接面243bを介してフック部材42のフック側当接面42dに当接する(係合位置)。この結果、フック付勢バネ423の付勢力に抗してフック部材42が噛合姿勢に維持されることとなり、開口枠に対して障子が閉じた状態に維持される。尚、図には明示していないが、ロック部材243がベース部材41の主板部41aに当接した時点で解除レバー244がスライドし、錠操作部がグリップ本体の基端側に移動することになる。
一方、操作グリップの錠操作部をグリップ本体の先端部側に移動させると、図10−2に示すように、連係部244e、スライド部244dを介して解除レバー244の作用部244cが移動され、作用部244cが弾性的に変形されてロック部材243が主板部41aから離隔し、その外周面がフック部材42の外周面からずれた位置(非係合位置)に移動する。これにより、フック部材42が回転して非噛合姿勢となり、操作グリップを介して障子の右縦框を室外側に押し出せば、ベース部材41の進入溝41dから噛合ピンが逸脱できるため、開口枠に対して障子を開くことができるようになる。
ここで、実施の形態3においても、障子を開く場合には、錠操作部を介して解除レバー244のスライド部244dが長手方向に移動されるため、障子の右縦框に対してスライド部244dが摺接することになる。しかしながら、フック部材42の回転軸心に沿った向きにロック部材243がフック部材42に対して移動することでフック部材42が係合位置から非係合位置に切り換わるため、右縦枠と右縦框との隙間から導出させた解除レバー244のスライド部244dをその長手方向に沿ってスライドさせればフック部材42を切換操作できる。このため、解除レバー244の操作に伴って右縦框と解除レバー244とが互いに摺接し、仮に右縦框の見付け面に摺接痕が発生した場合にも、この摺接痕は解除レバー244によって覆われる位置にのみ発生することになり、右縦框の表面に現れることがない。
また、右縦枠と右縦框との間にインナガスケットが設けられていた場合にも、その長手方向には解除レバー244の位置が変化することがないため、インナガスケットのシール機能に多大な影響を及ぼす恐れもない。
これらの結果、実施の形態3においても、外観品質を損なうことなく、所望の水密性及び気密性を確保した上で良好な操作性を確保することが可能となる。しかも、解除レバー244の作用部244cがロック部材243を係合位置に向けて付勢する係合付勢手段の機能を兼用しているため、別途係合付勢手段を設ける必要が無くなり、部品点数を削減により、錠装置の製造作業を容易化したり製造コストの低減を図ることが可能になる。
尚、上述した実施の形態1〜実施の形態3では、いずれも建具として縦すべり出し窓を例示しているが、本発明はこれに限定されず、開口枠の面外方向に移動させることによって障子を開けるように構成した建具であれば、横すべり出し窓や開き窓、あるいは倒し窓にも適用することが可能である。また、縦すべり出し窓に適用する場合、左右の開き方向が実施の形態1と逆であっても構わない。
また、上述した実施の形態1〜実施の形態3では、ベース部材を基準としてフック部材に対してロック部材のみがフック部材の回転軸心に沿った方向に移動できるように構成してあるが、ベース部材を基準としてフック部材のみがフック部材の回転軸心に沿った方向に移動できるように構成しても構わない。
さらに、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、ロック部材をフック部材の回転軸心に対して平行となる方向に移動可能に構成しているが、フック部材の回転軸心に沿った方向であれば、必ずしも平行に移動させる必要はない。