JP5828861B2 - 特異的遺伝子発現方法 - Google Patents

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Description

本発明は、医療分野において有用な、非天然のオリゴマータンパク質を発現する細胞、当該細胞を製造する方法及び非天然のオリゴマータンパク質の形成方法に関する。
生体は主として免疫応答により異物から守られており、免疫システムはさまざまな細胞とそれが作り出す可溶性の因子によって成り立っている。なかでも中心的な役割を果たしているのが白血球、特にリンパ球である。このリンパ球はBリンパ球(以下、B細胞と記載することがある)とTリンパ球(以下、T細胞と記載することがある)という2種類の主要なタイプに分けられ、いずれも抗原を特異的に認識し、これに作用して生体を防御する。
T細胞は、末梢ではCD(Cluster of Differentiation)4マーカーを発現するCD4陽性T細胞とCD8マーカーを発現するCD8陽性T細胞が大部分を占める。CD4陽性T細胞の大部分は、ヘルパーT細胞(以下、Tと記載する)と呼ばれ、抗体産生の補助や種々の免疫応答の誘導に関与し、抗原刺激により産生するサイトカインの種類が異なるTh1型あるいはTh2型に分化する。CD8陽性T細胞の大部分は、抗原刺激により細胞傷害活性を示す細胞傷害性T細胞[Tc:細胞傷害性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte)、別名:キラーT細胞、以下、CTLと記載することがある]に分化する。
外科手術、化学療法、放射線療法に次ぐ第4のがんの治療法として、免疫療法が近年関心を集めている。免疫療法は本来ヒトが有する免疫力を利用するため、患者への肉体的負担が他の治療法と比べて軽いと言われている。免疫療法には体外で誘導したCTLや末梢血リンパ球などから種々の方法で拡大培養して得られるリンフォカイン活性化細胞、NKT細胞、γδT細胞などを移入する療法、体内での抗原特異的CTLの誘導を期待する樹状細胞移入療法やペプチドワクチン療法、Th1細胞療法、更にこれら細胞に種々の効果を期待できる遺伝子を体外で導入して体内に移入する免疫遺伝子治療法などが知られている。
細胞傷害性T細胞(CTL)には、主要組織適合性抗原遺伝子複合体(major histocompatibility gene complex;以下、MHCと略す)にコードされる主要組織適合性抗原分子(MHC分子、ヒトの場合 human leukocyte antigenと呼ばれ、以下、HLAと略す)と抗原ペプチドとの結合物である複合体を、α鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる特異的なT細胞レセプター(T cell receptor;以下、TCRと略す)によって認識し、その複合体を細胞表面に提示している細胞を傷害することのできるものがある。
目的の抗原を認識するTCR遺伝子を、CTLをはじめとする細胞傷害活性を有するT細胞に導入することにより、目的の抗原に特異的な細胞傷害活性をT細胞に付与することが期待できる。これに基づき、MART1(非特許文献1)、gp100(非特許文献2)及びmHAG HA−2抗原(非特許文献3)など、様々な抗原を標的としたTCR遺伝子による遺伝子治療が試みられている。しかしながら、例えば、目的の抗原を認識するα鎖及びβ鎖からなるTCR遺伝子をT細胞に導入すると、T細胞が本来発現する内在性のTCRα鎖とTCRβ鎖が、導入した目的の抗原を認識するTCRのβ鎖とα鎖との間でミスペアリングを生じる。すなわち、αとβを発現している細胞に、α’とβ’を導入するすると、αβ、αβ’、α’β、α’β’の各へテロダイマーが生じる。これにより、適正なヘテロダイマーを形成して目的の抗原を認識するTCRが減少し、また予期しない抗原を認識するヘテロダイマーが生じる可能性が問題となっていた。
この問題の解決方法として、内在性のTCRとヘテロダイマーを形成しない一本鎖TCRをT細胞に導入する方法(非特許文献4)、目的の抗原を認識する抗体とのキメラレセプター(T−body)をT細胞に導入する方法(非特許文献5)が試みられている。しかし、これらの方法で得られるT細胞は、内在性のTCRと導入TCRの両方を有するので、2種類の抗原を認識することが考えられる。更に、リコンビナントTCRは天然には存在しないTCRであるため、T細胞へのシグナル伝達、安全性など、確認する必要がある。また、別の方法として、TCRのα鎖及びβ鎖を発現しないT細胞、例えばγ鎖及びδ鎖を発現するT細胞(γδT細胞)に、目的の抗原を認識するTCRのβ鎖とα鎖を導入する方法がある(非特許文献6)。しかし、この方法で得られるT細胞も、前記リコンビナントTCRを使用する方法と同様の懸念が存在する。
前記にTCRにより例示したとおり、オリゴマータンパク質(oligomeric protein)を発現する細胞に、構成ポリペプチドとして前記タンパク質に組み込まれうる外来性のポリペプチドを導入すると、内在性ポリペプチドと外来性ポリペプチドが入り混じった、所望の機能を発現できないオリゴマータンパク質を生じたり、内在性ポリペプチドと外来性ポリペプチドの競合により所望の機能を発現するオリゴマータンパク質が減少することが問題となっていた。
ジャーナル オブ イムノロジー(J.Immunol.)、第163巻、第507−513頁(1999) ジャーナル オブ イムノロジー、第170巻、第2186−2194頁(2003) ブラッド(Blood)、第103巻、第3530−3540頁(2003) ジーン セラピー(Gene Therapy)、第7巻、第1369−1377頁(2000) ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)、第114巻、第1774−1781頁(2004) キャンサー リサーチ(Cancer Res.)、第66巻、第3331−3337頁(2006)
本発明の目的は、オリゴマータンパク質を発現する細胞に、前記オリゴマータンパク質を構成しうる外来性ポリペプチドをコードする遺伝子を導入した際に生じる、内在性と外来性のポリペプチドの混成による望まないオリゴマー形成が抑制された細胞及び前記のオリゴマー形成の抑制方法を提供することにある。
本発明の第1の発明は、非天然のオリゴマータンパク質を発現する細胞であって、天然のオリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの少なくとも一つに対応する非天然のオリゴマータンパク質を構成する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子が導入されており、かつ前記内在性ポリペプチドの発現が抑制されていることを特徴とする細胞に関する。
本発明の第1の発明において、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されていても良く、オリゴマータンパク質が抗原認識レセプター、特に、当該抗原認識レセプターがT細胞受容体(TCR)であっても良い。また、内在性ポリペプチドの発現がRNA干渉によって抑制されても良く、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されており、前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの発現が当該ポリペプチドの定常領域に対応するmRNAの配列を標的とするRNA干渉によって抑制されても良い。さらに、外来性ポリペプチドが内在性ポリペプチドと同じアミノ酸配列の定常領域を有しており、かつ外来性ポリペプチドのmRNAの塩基配列を内在性ポリペプチドのmRNAの塩基配列と相異させることにより、内在性ポリペプチドの発現が抑制されても良い。
本発明の第2の発明は、以下の工程を実施することを特徴とする非天然のオリゴマータンパク質を発現する細胞の製造方法に関する。
(a)天然のオリゴマータンパク質を発現し得る細胞に、前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの少なくとも一つに対応する非天然のオリゴマータンパク質を構成する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子を導入する工程;及び
(b)前記内在性ポリペプチドの発現を抑制する工程。
本発明の第2の発明において、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されていても良く、オリゴマータンパク質が抗原認識レセプター、特に、当該抗原認識レセプターがTCRであっても良い。また、RNA干渉によって内在性ポリペプチドの発現を抑制されても良く、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されており、前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの発現を当該ポリペプチドの定常領域に対応するmRNAの配列を標的とするRNA干渉によって抑制されても良い。さらに、外来性ポリペプチドが内在性ポリペプチドと同じアミノ酸配列の定常領域を有しており、かつ外来性ポリペプチドのmRNAの塩基配列を内在性ポリペプチドのmRNAの塩基配列と相異させることにより、内在性ポリペプチドの発現が抑制されても良い。
本発明の第3の発明は、以下の工程を実施することを特徴とする、非天然のオリゴマータンパク質の形成方法に関する。
(a)天然のオリゴマータンパク質を発現し得る細胞に、前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの少なくとも一つに対応する非天然のオリゴマータンパク質を構成する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子を導入する工程;及び
(b)前記内在性ポリペプチドの発現を抑制する工程。
本発明の第3の発明において、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されていても良く、オリゴマータンパク質が抗原認識レセプター、特に、当該抗原認識レセプターがTCRであっても良い。また、RNA干渉によって内在性ポリペプチドの発現を抑制されても良く、オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されており、前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの発現を当該ポリペプチドの定常領域に対応するmRNAの配列を標的とするRNA干渉によって抑制されても良い。さらに、外来性ポリペプチドが内在性ポリペプチドと同じアミノ酸配列の定常領域を有しており、かつ外来性ポリペプチドのmRNAの塩基配列を内在性ポリペプチドのmRNAの塩基配列と相異させることにより、内在性ポリペプチドの発現が抑制されても良い。
本発明により、少なくとも一つの内在性ポリペプチドが外来性ポリペプチドに置換された、所望の機能を保持するオリゴマータンパク質を高い比率で発現する細胞が提供される。当該細胞は、細胞医療による疾患の治療に極めて有用である。
TCR遺伝子の発現を示す図である。 TCR陽性細胞率を示す図である。 TCR陽性細胞のPEの蛍光強度を示す図である。 TCRα遺伝子の発現を示す図である。 TCRβ遺伝子の発現を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 Rm/Fh insert構築のフローチャートを示す図である。 T3ベクター構築のフローチャートを示す図である。 T7ベクター構築のフローチャートを示す図である。 T15ベクター構築のフローチャートを示す図である。 pSINsi−hH/hU構築のフローチャートを示す図である。 HB/UA insert構築のフローチャートを示す図である。 TN1ベクター構築のフローチャートを示す図である。 TN5ベクター構築のフローチャートを示す図である。 pMS−a−hUTCRA−Pb1構築のフローチャートを示す図である。 TN9ベクター及びTN11ベクター構築のフローチャートを示す図である。 TCR遺伝子の発現を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 TCR遺伝子の発現を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 細胞内IFNγ陽性細胞率を示す図である。 TCR遺伝子の発現(感染5日後)を示す図である。 TCR遺伝子の発現(感染11日後)を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 細胞内IFNγ陽性細胞率を示す図である。 MAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す図である。 TCR遺伝子の発現を示す図である。
本明細書において「オリゴマータンパク質」とは、複数の構成ポリペプチド(サブユニット)で構成されたタンパク質を意味する。前記オリゴマータンパク質は同一のポリペプチドが複数組み合わさったホモオリゴマー、複数種のポリペプチドで構成されるヘテロオリゴマーのどちらでも良い。また、構成要素であるポリペプチドの数にも特に限定はなく、二量体(ダイマー)、三量体(トライマー)、四量体(テトラマー)、更に多数のポリペプチドで構成されるオリゴマーのいずれについても本発明を適用することができる。オリゴマータンパク質は、ポリペプチド間のジスルフィド結合(SS結合)などの共有結合、静電結合などにより形成される。
本明細書に記載の「内在性のポリペプチド」は、細胞内で本来の遺伝子から天然の状態で発現しているポリペプチドを意味する。これに対して「外来性のポリペプチド」は、人為的に外部から導入されたポリペプチドを意味し、物理的に細胞に導入されたポリペプチド、導入する細胞には本来存在しない外来遺伝子から発現されるポリペプチドが例示される。また、「非天然のオリゴマータンパク質」は、当該タンパク質を構成する内在性ポリペプチドの少なくとも1つが外来性ポリペプチドに置換されたオリゴマータンパク質であり、外来性ポリペプチドのみから構成されるオリゴマータンパク質、内在性ポリペプチドと外来性ポリペプチドを両方含むオリゴマータンパク質のいずれもが含まれる。本発明を特に限定するものではないが、通常、外来性のポリペプチドは、オリゴマータンパク質を形成し得る範囲で内在性のポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有している。
本明細書において「ポリペプチドの発現の抑制」とは、当該ポリペプチドをコードする遺伝子からの転写及び/又は翻訳を妨げることにより、最終的なポリペプチドの生成を抑制すること、すなわち、生成物としてのポリペプチド量が減少することを意味する。したがって、ポリペプチドをコードする遺伝子からの転写反応が抑制されない場合でも、転写産物(mRNA)が速やかに分解され、タンパク質の生成が抑制されていれば「発現の抑制」に含まれる。本発明では、好ましくは発現を抑制することが望まれる内在性ポリペプチドの発現が選択的に抑制される。
前記の「ポリペプチドの発現の抑制」のための手段には特に限定はない。好ましくは、ポリペプチドの発現を選択的に抑制可能な手段が使用される。例えば、ポリペプチドの立体構造、アミノ酸配列又はポリペプチドをコードする塩基配列特異的に、ポリペプチドの発現を抑制する手段が本発明には好ましい。前記の手段としては、特に限定はされないが、mRNAからのポリペプチドの翻訳を抑制する手段であるRNA干渉、リボザイム、アンチセンスRNAが例示される。
本明細書において「抗原認識レセプター」とは、抗原を特異的に認識するタンパク質を意味する。抗原認識レセプターとして、ヒト由来のT細胞レセプター(TCR)、ヒト以外の生物由来のTCRが例示される。TCRは、α鎖とβ鎖からなるヘテロダイマー、γ鎖とδ鎖からなるヘテロダイマーが知られているが、本発明においていずれも好適に使用できる。
本明細書において「T細胞」とは、Tリンパ球とも呼ばれ、免疫応答に関与するリンパ球のうち胸腺に由来する細胞を意味する。T細胞には、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、CTL、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、α鎖とβ鎖のTCRを発現するαβT細胞、γ鎖とδ鎖のTCRを発現するγδT細胞が含まれる。「T細胞を含有する細胞集団」としては、血液(末梢血、臍帯血など)、骨髄液の他、これらより採取、単離、精製、誘導された末梢血単核細胞(PBMC)、血球系細胞、造血幹細胞、臍帯血単核球などを含む細胞集団が例示される。また、T細胞を含有する血球系細胞由来の種々の細胞集団を本発明に使用できる。これらの細胞はIL−2などのサイトカインにより生体内(イン・ビボ)や生体外(エクス・ビボ)で活性化されていても良い。これらの細胞は生体から採取されたもの、あるいは生体外での培養を経て得られたもの、例えば本発明の方法により得られたT細胞集団をそのままもしくは凍結保存したもののいずれも使用することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
(1)本発明の細胞
本発明の細胞は、天然のオリゴマータンパク質を構成している少なくとも一つの内在性ポリペプチドに対応する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子が導入されており、かつ前記の内在性ポリペプチドの発現が抑制されていることにより、非天然のオリゴマータンパク質を発現することができる細胞である。前記の構成により、単純に外来性のポリペプチドを細胞内で発現させた場合に比較して、外来性ポリペプチドを構成ポリペプチドとして含む、所望の機能を有する非天然のオリゴマータンパク質が効率良く形成されるという利点を有している。
発現させようとする非天然オリゴマータンパク質がホモオリゴマーである場合、内在性ポリペプチドの発現を適切な発現抑制手段で抑制し、そのうえで外来性ポリペプチドを発現させれば所望の非天然オリゴマータンパク質が形成される割合が向上する。ヘテロオリゴマーの場合には、構成ポリペプチドの1種のみが外来性のポリペプチドと置換されることでオリゴマータンパク質の機能が変化する場合、構成ポリペプチドのすべてが外来性ポリペプチドに置換される必要のある場合、の2つの場合がある。いずれの場合も、所望の非天然オリゴマータンパク質に取り込まれることが望ましくない、すなわち導入される外来性ポリペプチドに対応する内在性のポリペプチドの発現が抑制されるよう処理される。例えば、ヘテロダイマーであるオリゴマータンパク質を2種類の外来性ポリペプチドで形成させた場合に所望の機能が発揮される場合は、それぞれのポリペプチドに対応する2種類の内在性ポリペプチドの発現を抑制する。また、1種類の外来性ポリペプチドと他の種類の内在性ポリペプチドからなるヘテロダイマーを形成させることが望まれる場合、当該外来性ポリペプチドと競合する内在性ポリペプチドの発現を選択的に抑制する。
また、本発明の細胞は、外来性ポリペプチドの発現と比較して内在性ポリペプチドの発現が選択的に抑制された細胞であれば良いが、発現抑制手段を使用しない場合と比較した内在性ポリペプチドの発現量が20%以上、40%以上、60%以上、80%以上もしくは100%、すなわち完全に抑制されても良い。
本発明が適用されるオリゴマータンパク質には特に限定はなく、構造タンパク質、酵素、転写因子、レセプター、抗体が例示される。また、本発明において、オリゴマータンパク質は細胞表面タンパク質(膜タンパク質)であってもよく、実施例に例示された抗原認識レセプター、例えばT細胞レセプター(TCR)への適用が特に好適である。
本発明の細胞は、天然のオリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの発現が抑制されているため、外来性ポリペプチドと内在性ポリペプチドとの競合が抑制され、発現が期待される外来性ポリペプチドを含む適切なオリゴマータンパク質が形成される。
本発明において使用される細胞は、オリゴマータンパク質を発現する細胞であれば特に限定はなく、動物細胞、植物細胞、微生物のいずれでも良い。特に限定はされないが、ヒト又はヒト以外の動物由来のT細胞は、ヘテロダイマーを形成するTCRを発現するので、前期TCRの改変を目的として本発明に使用できる。本発明の細胞は、外来性ポリペプチドを導入する時に、内在性ポリペプチドをコードする遺伝子を欠失させることや、内在性ポリペプチドが発現しないように分化誘導することを必要とせず、内在性ポリペプチドを発現している細胞を利用できるため有用である。
本発明では、ポリペプチドの発現を抑制する手段の1つの態様としてRNA干渉(RNA interference、RNAi)が利用される。1998年に報告されたRNA干渉は、二本鎖RNAによって配列特異的なmRNAの分解が生じることによる遺伝子発現の抑制現象として注目されている。前記RNA干渉は、長鎖2本鎖RNAが、Dicerと呼ばれるRNaseIIIタイプの活性によりsiRNAと呼ばれる21〜25ヌクレオチドの短鎖RNAに分解され、続いて、該siRNAが、RISC(RNA−induced silencing complex)と呼ばれるリボ核酸タンパク質複合体に組み込まれ、標的RNAにATP依存的に結合し、標的RNAを分解するというメカニズムにより起こると考えられている。
本発明におけるRNA干渉では、内在性ポリペプチドの発現を選択的に抑制することを目的として、内在性ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されるmRNAの塩基配列に相同なもしくは相補的なRNA分子、又は前記mRNAの塩基配列に相同もしくは相補的な配列の鎖を含む二本鎖RNA分子が利用される。ここで、「内在性ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されるmRNAの塩基配列に相同もしくは相補的である」及び「内在性ポリペプチドをコードするmRNAの塩基配列に相同もしくは相補的である」とは、前記のmRNAの塩基配列に完全に相同もしくは相補的であることを指すのみではなく、所望の機能が発揮される範囲で実質的に相同もしくは相補的であることを包含する。また、本発明に使用されるRNA分子はsiRNA(short interfering RNA)と呼ばれる。前記siRNAは、内在性ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されるmRNAの1つの領域に対し相同もしくは相補的な1種類のsiRNAであっても良く、複数の領域に対し相同なもしくは相補的な複数の二本鎖RNA分子を含むsiRNAであっても良い。
本発明に使用されるsiRNAの鎖長としては、哺乳動物細胞におけるインターフェロン応答抑制の観点から、例えば13〜29塩基の鎖長を有するもの、好ましくは15〜25塩基対の鎖長を有するもの、更に好ましくは、20〜25塩基対の鎖長を有するものが例示される。また、前記鎖長の塩基配列の全てが内在性ポリペプチドのmRNAの塩基配列に由来するものであっても良く、その一部が前記の塩基配列に由来するものであっても良い。更に、本発明に使用されるsiRNAは、哺乳動物細胞におけるRNA干渉の有効性の観点から、例えば、3’末端側に2〜4塩基突出した一本鎖領域を有する二本鎖RNAの形状のもの、更に好ましくは3’末端側に2塩基突出した一本鎖領域を有する二本鎖RNAの形状のものであっても良い。前記の突出した一本鎖領域として、2〜4塩基の連続するデオキシチミジン残基(TT、TTT、TTTT)が例示される。
本発明に使用されるsiRNAは、主にリボヌクレオチドによって構成されるが、その一部にデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドの誘導体及び/又はリボヌクレオチドの誘導体を含んでいても良い。本発明のRNAは、特に限定されないが、公知の化学合成法により合成することができる。また、適切な鋳型核酸を使用して酵素的に(例えばRNAポリメラーゼを用いて)調製しても良い。本発明に使用されるsiRNAは、分子内で二本鎖を形成し得る一本鎖RNAに由来するものであっても良く、siRNA部分をステムとし、任意の配列をループとしたステム−ループ構造(ショートヘアピン構造:sh構造)の一本鎖RNA(shRNA)が例示される。前記の任意の配列としては1〜30ヌクレオチドの配列が例示されるが、好ましくは1〜25ヌクレオチド、更に好ましくは5〜22ヌクレオチドの配列が使用される。
本発明に使用されるsiRNAは、siRNA又はsiRNAを含むRNA分子を、直接細胞に導入しても良く、細胞内で前記siRNA又はsiRNAを含むRNA分子が転写される核酸構築物を細胞に導入しても良い。直接細胞に導入する場合、TransIT−TKO(Mirus社製)、Human T Cell Nucleofector Kit(Amaxa社)が好適に使用できる。一方、前記RNA分子が転写される核酸構築物を使用する場合、特に本発明を限定するものではないが、哺乳動物細胞内で機能を発揮しうるプロモーターの下流に、前記siRNA又はsiRNAを含むRNAをコードする核酸が前記siRNAが転写されうる状態で、すなわち機能的に接続されているものが使用できる。好適な態様として、内在性ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制しうる二本鎖RNAを構成するRNA鎖をコードする核酸がそれぞれプロモーターの下流に配置されている構築物が例示される。
前記核酸構築物に使用されるプロモーターとしては、哺乳動物細胞内で機能しうるものであれば特に限定はなく、例えば、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、テトラサイクリンで調節可能なプロモーターなどが挙げられる。また、組織特異的プロモーターを用いることは、所望の細胞、部位、臓器などにおいて特異的に内在性ポリペプチドの機能の抑制が可能となる点で有利である。特に限定は無いが、例えば、前記RNAポリメラーゼIIプロモーターとしては、CMVプロモーターなどが挙げられる。また、前記RNAポリメラーゼIII系プロモーターとしては、tRNAプロモーター、U6snRNAプロモーター、ヒストンH1プロモーターなどが挙げられる。前記テトラサイクリンで調節可能なプロモーターとしては、テトラサイクリン調節型U6プロモーター、TRプロモーターなどが挙げられる。また、上記プロモーターをCre−loxPシステムと組み合わせることにより、より厳密にRNAの転写を制御することもできる。
本発明で使用される核酸構築物の構築には特に限定はない。例えば、目的遺伝子の機能を抑制しうる二本鎖RNAのセンス、アンチセンス鎖が下記のようなシステムで転写されるように構築することができる:(A)異なる2つのプロモーターの下流にセンスRNAをコードする核酸とアンチセンスRNAをコードする核酸とをそれぞれ接続し、この2つの転写ユニットを順方向に配置した、別個にセンスRNAとアンチセンスRNAとを転写するタンデムタイプ、(B)1つのプロモーターの下流にセンスRNAをコードする核酸とアンチセンスRNAをコードする核酸とをそれぞれ順方向に配置した、センスRNAとアンチセンスRNAとが直接又はループで連結されたステム−ループタイプ(又はショートヘアピンタイプ)のRNAを転写するタイプ、あるいは、(C)センス鎖及びアンチセンス鎖を(それぞれ両ストランド)でコードする核酸の両端側のそれぞれにプロモーターを配置して、別個のプロモーターで両RNA鎖を転写する対向タイプ。本発明では、使用条件、例えば、哺乳動物細胞の種類、センス配列とアンチセンス配列の種類などに応じ、タンデムタイプ、ステム−ループタイプ、対向タイプを使い分けることができる。
本発明で使用する核酸構築物は、より安定的に細胞内で効果を発揮しうるように、適切なベクター、例えばプラスミドベクターやウイルスベクターに組み込まれていても良い。更に、細胞の染色体DNA上に本発明の核酸構築物を組み込んでも良い。前記プラスミドベクターとしては、特に限定されないが、例えばRNA干渉用の核酸を発現させるpiGENE tRNAプラスミド(商品名、iGENE社製)、siLentGene(Promega社製)、pSEC Hygro Vector(Ambion社製)、pBAsiベクター(タカラバイオ社製)などが例示される。ウイルスベクターとしてはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。市販されているアデノウイルスベクターの例としてKnockout Adenoviral RNAi System(Clontech社製)が、市販されているレトロウイルスベクターの例としてpSINsiベクター(タカラバイオ社製)、pSIREN−RetroQ Vector(Clontech社製)が、それぞれ例示される。
作製されたベクターは、当該ベクターに適した適切な方法、例えば、プラスミドベクターの場合はエレクトロポレーション法やリポフェクション法などによって、また、ウイルスベクターの場合には当該ウイルスの細胞への感染能を利用して、目的の細胞に導入することができる。
本発明において、非天然のオリゴマータンパク質に含まれる外来性ポリペプチドは、前記外来性ポリペプチドに対応する内在性ポリペプチドと共存した場合、両者はオリゴマータンパク質の形成について競合するとともに、外来性ポリペプチド、内在性ポリペプチドのそれぞれが含まれる複数種のオリゴマータンパク質が形成される。本発明の細胞で発現される外来性ポリペプチドは、内在性ポリペプチドと比較して、使用される発現抑制手段により発現が抑制されにくいポリペプチド、好適には抑制されないポリペプチドであれば特に限定はされない。例えば、発現抑制手段としてsiRNAを使用する場合、導入する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子は、それから転写されるRNAが前記siRNAと高い相同性もしくは相補性を有しない塩基配列、すなわち、前記siRNAの作用を受けない配列であることが好ましい。siRNAが作用するRNA上の領域が、内在性ポリペプチドと外来性ポリペプチドで同一である場合、外来性ポリペプチドについて、コードされるアミノ酸配列を変えずに塩基配列を変換することができる。遺伝子上でアミノ酸を指定するコドン(3つの塩基の組み合わせ)はアミノ酸の種類ごとに1〜6種類ずつが存在することが知られている。適切なコドンの選択により、コードされるアミノ酸配列には変化を与えずに、塩基を変換(サイレント変異と呼ばれる)することができる。すなわち、塩基配列は相異するがアミノ酸配列は同一である。サイレント変異は、コドンの3番目の塩基を変換する場合が多い。外来性ポリペプチドをコードする遺伝子にこのサイレント変異を導入すると、内在性ポリペプチドの発現を抑制するsiRNAが、前記外来性ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されるRNAに作用せず、発現の抑制が低減される。これにより、外来性ポリペプチドの発現と比較して内在性ポリペプチドの発現を選択的に抑制することができる。以下、本明細書において、前記のようにサイレント変異を導入した遺伝子を「コドン変換型」遺伝子と呼ぶことがある。上記の塩基配列の変換に際しては、特に本発明を限定するものではないが、使用される宿主において使用頻度の高いコドンや翻訳効率を上昇させる配列を選択して塩基配列を変換することにより、外来性ポリペプチドの発現効率の向上が期待される。
更に、siRNAによって内在性ポリペプチドの発現を抑制する別の態様として、前記siRNAが作用するRNAの領域に対応する外来性ポリペプチドのアミノ酸配列について、外来性ポリペプチドの機能を損なわない範囲において、他のアミノ酸の置換、例えば類似するアミノ酸への置換によってアミノ酸配列を変化させても良い。類似するアミノ酸とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はポリペプチドの表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら、Science、第247巻、第1306−1310頁(1990)を参照)。保存的アミノ酸置換を外来性ポリペプチドに導入することにより、内在性ポリペプチドの発現を抑制するsiRNAが、前記外来性ポリペプチドをコードする遺伝子から転写されるRNAに作用せず、発現の抑制が低減される。これにより、外来性ポリペプチドの発現と比較して内在性ポリペプチドの発現を選択的に抑制することができる。
T細胞レセプター(T細胞受容体:TCR)は、α鎖とβ鎖からなるヘテロダイマー(ヘテロ二量体)、γ鎖とδ鎖からなるヘテロダイマーの2種類が存在する。TCRの各鎖とも可変(V)領域、結合(J)領域、定常(C)領域からなる。TCRのV領域の多様性は、DNAの再編成によるV領域をコードする遺伝子セグメントの組み合わせと再編成結合部位のずれ、及び結合部位へのN配列の挿入によって生じる。α鎖とβ鎖のV領域には、アミノ酸配列の変異が特に高い超可変領域(CDR)が認められる。
本発明の一態様として、非天然のTCRを発現する細胞であって、前記非天然のTCRを構成する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子が導入されており、かつ前記外来性ポリペプチドに対応する内在性ポリペプチドの発現が抑制されたT細胞が挙げられる。例えば、所望の抗原を認識するTCRを外来性TCRとしてT細胞に導入する場合、内在性TCRの発現が抑制される本発明のT細胞では、外来性ポリペプチドと内在性ポリペプチドとのミスペアリングが減少し、目的とする外来性ポリペプチドを含有するTCRヘテロダイマーの分子数が増加する。更に、内在性TCRの発現が抑制されるので、細胞表面に存在するTCRのうち、非天然TCRの占める割合が増加し、非天然のTCRのみを発現する単価なT細胞が増加する。したがって、抗原に対する特異性が向上し、細胞治療などの分野において有用である。また、内在性TCRを発現する細胞に外来性TCRを導入する際、内在性TCRと外来性TCRの遺伝子発現が競合し、外来性TCRの発現が低下する可能性がある。さらに、ミスペアリングしたTCRによる移植片対宿主病(GVHD)などの副作用が発生する可能性がある。本発明の細胞は、前記の外来性TCRの発現低下やGVDHをはじめとする副作用を回避しうる。
内在性TCRのV領域のアミノ酸配列は個々のT細胞によって異なるのに対し、C領域のアミノ酸配列は個々のT細胞に共通の配列で同じ塩基配列の遺伝子にコードされているため、siRNAの標的とするのに好適である。更に、内在性ポリペプチドをコードする遺伝子にsiRNAが作用する領域において、外来性ポリペプチドをコードする遺伝子を変換(置換)して、すなわち、前記コドン変換型遺伝子とし、非作用領域とすることにより、内在性ポリペプチドの発現を抑制し、外来性ポリペプチドの発現を効率よく行うことができる。
例えば、内在性TCRの発現を抑制する場合、特に限定はされないがTCRをコードする遺伝子のC領域のうち、内在性α鎖の塩基配列AGTAAGGATTCTGATGTGTAT(配列番号19)を、外来性α鎖は塩基配列AGCAAGGACAGCGACGTGTAC(配列番号20)にコドン変換すれば良い。上記2つの塩基配列がコードするアミノ酸配列は、SKDSDVY(配列番号21)で共通であるが、配列番号3及び配列番号4に記載されるRNAをアニールさせて作製される二本鎖siRNAにより、内在性TCRのα鎖が選択的に抑制される。外来性TCRα鎖の一例として、配列番号1に記載される塩基配列にコードされるポリペプチドが挙げられる。配列番号1において、塩基番号68〜883の塩基配列がTCRα鎖をコードする。このうち、塩基番号68〜401がV領域を、塩基番号406〜461がJ領域を、塩基番号462〜883がC領域をそれぞれコードする。配列番号1の塩基番号569〜589が、前記配列番号20に相当し、内在性TCRα鎖と配列が異なっている。
また、内在性β鎖の塩基配列GCCACCATCCTCTATGAGATC(配列番号22)を、外来性β鎖は塩基配列GCCACCATCCTGTACGAGATC(配列番号23)にコドン変換すれば良い。上記2つの塩基配列がコードするアミノ酸配列は、ATILYEI(配列番号24)で共通であるが、配列番号5及び配列番号6に記載されるRNAをアニールさせて作製される二本鎖siRNAにより、内在性TCRのβ鎖が選択的に抑制される。外来性TCRβ鎖の一例として、配列番号2に記載される塩基配列にコードされるポリペプチドが挙げられる。配列番号2において、塩基番号68〜1006の塩基配列がTCRβ鎖をコードする。このうち、塩基番号68〜414がV領域を、塩基番号427〜470がJ領域を、塩基番号471〜1006がC領域をそれぞれコードする。配列番号2の塩基番号902〜922が、前記配列番号23に相当し、内在性TCRβ鎖と配列が異なっている。
本発明の外来性TCRが導入されたT細胞が投与される疾患としては、当該T細胞に感受性を示す疾患であればよく特に限定はないが、例えば、がん(白血病、固形腫瘍など)、肝炎や、インフルエンザ、HIVなどのウイルス、細菌、真菌が原因となる感染性疾患、例えば結核、MRSA、VRE、深在性真菌症が例示される。また、本発明の細胞は、骨髄移植や放射線照射後の感染症予防、再発白血病の寛解を目的としたドナーリンパ球輸注などにも利用できる。
本発明において、外来性ポリペプチドをコードする遺伝子の導入手段には特に限定はなく、公知の遺伝子導入方法により適切なものを選択して使用することができる。前記の遺伝子導入方法としては、ウイルスベクターを使用する方法、該ベクターを使用しない方法のいずれもが本発明に使用できる。それらの方法の詳細についてはすでに多くの文献が公表されている。
前記ウイルスベクターには特に限定はなく、通常、遺伝子導入方法に使用される公知のウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクター、シュードタイプベクターを包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はセンダイウイルスベクターなどが使用される。特に好適には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター又はレンチウイルスベクターが使用される。上記ウイルスベクターとしては、感染した細胞中で自己複製できないように複製能を欠損させたものが好適である。また、遺伝子導入の際にレトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)などの遺伝子導入効率を向上させる物質を用いることもできる。
ウイルスベクターを使用しない遺伝子導入方法としては、本発明を限定するものではないが、例えば、リポソーム、リガンド−ポリリジンなどの担体を使用する方法やリン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法などを使用することができる。この場合にはプラスミドDNA、直鎖状DNAやRNAに組み込まれた外来遺伝子が導入される。
レトロウイルスベクターならびにレンチウイルスベクターは、当該ベクターが導入される細胞の染色体DNA中に該ベクターに挿入されている外来遺伝子を安定に組み込むことができ、遺伝子治療などの目的に使用されている。
外来性ポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、適当なプロモーターの制御下に発現されるようにベクターやプラスミドなどに挿入して使用することができる。また、効率の良い遺伝子の転写を達成するために、プロモーターや転写開始部位と協同する他の調節配列、例えば、エンハンサー配列やターミネーター配列がベクター内に存在していても良い。また、相同組換えにより導入対象のT細胞の染色体へ挿入することを目的として、例えば、該染色体における遺伝子の所望の標的挿入部位の両側にある塩基配列に各々相同性を有する塩基配列からなるフランキング配列の間に前記の遺伝子を配置させても良い。
前記の「ポリペプチドの発現の抑制」のための手段に使用される核酸、例えばsiRNA又はsiRNAを含むRNAが転写される核酸構築物と、前記の外来性ポリペプチドをコードする遺伝子は、別々に細胞に導入することができ、また、同一のベクターにより細胞に導入することができる。
(2)本発明の細胞の製造方法及び非天然のオリゴマータンパク質の形成方法
本発明の細胞の製造方法及び内在性と外来性のポリペプチドの混成によるオリゴマー形成の抑制方法は、以下の工程を実施することを特徴とする。
(a)オリゴマータンパク質を発現する細胞に、前記オリゴマータンパク質を構成する少なくとも一つの内在性ポリペプチドに対応する外来性ポリペプチドをコードする遺伝子を導入する工程;及び
(b)前期内在性ポリペプチドの発現を抑制する工程。
本発明の細胞の製造方法は、前記(1)に記載する本発明の細胞の製造方法である。当該方法で得られる細胞は、外来性のポリペプチドを含む非天然のオリゴマータンパク質の形成に関して、内在性ポリペプチドによる干渉が低減されているため、単純に外来性のポリペプチドを細胞内で発現させた場合に比較して、所望の機能を有する非天然のオリゴマータンパク質が効率良く形成される。
前記工程(a)と工程(b)の順序は、特に限定はなく、どちらが先であっても良く、同時に実施されても良い。本発明の方法で実施される工程に、内在性ポリペプチドの発現が抑制された細胞を分離もしくは単離する工程を加えて、前記細胞を含有する細胞集団を誘導、培養もしくは単離することができ、更にこれらの細胞を含有する細胞集団を製造する方法も本発明の方法に含まれる。この分離もしくは単離工程は、適切な非天然のオリゴマータンパク質を構成する外来性ポリペプチドの発現を指標に実施することができる。
更に、本発明の方法の工程に、公知のタンパク質や化学成分を加えても良く、例えばT細胞の場合、サイトカイン類、ケモカイン、その他の成分を加えても良い。本明細書において、サイトカインとは、T細胞に作用し活性化できるものであれば特に限定はないが、例えばIL−2、IFN−γ、TGF−β、IL−15、IL−7、IFN−α、IL−12、CD40L、IL−27などが例示され、細胞性免疫を増強させる観点から特に好適には、IL−2、IFN−γ、IL−12が例示される。また、ケモカインとは、T細胞に作用し遊走活性を示すものであれば特に限定はないが、例えばRANTES、CCL21、MIP1α、MIP1β、CCL19、CXCL12、IP−10、MIGが例示される。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
また、本明細書に記載の操作のうち、基本的な操作については2001年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法によった。
実施例1 野生型及びコドン変換型ヒトT細胞受容体α及びβ遺伝子の作製
コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRα遺伝子を、野生型の遺伝子の一部を変換して作製した。この遺伝子を含む核酸断片を、pPCR−Script(Stratagene社)のKpnI−XhoIサイトにクローニングした。コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRα遺伝子を含む核酸断片の配列を配列表の配列番号1に示す。
コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRβ遺伝子を、野生型の遺伝子の一部を変換して作製した。この遺伝子を含む核酸断片を、pPCR−ScriptのKpnI−XhoIサイトにクローニングした。コドン変換型のヒト抗MAGE−A4 TCRβ遺伝子を含む核酸断片の配列を配列表の配列番号2に示す。
実施例2 siRNAによるヒト末梢血単核球における遺伝子抑制効果の確認
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)へ、Human T Cell Nucleofector Kit(Amaxa社)を用いて、配列番号3及び4をアニールさせて作製した野生型TCRαに対する二本鎖siRNA(siTCR−A)50pmol及び、配列番号5及び6をアニールさせて作製した野生型TCRβに対する二本鎖siRNA(siTCR−B)50pmolを混合し、製品説明書の手順に従って導入した。ネガティブコントロールとして配列番号7及び8をアニールさせて作製したsiRNA(siNC)を100pmol導入した。導入2日後に細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Micro Kit(キアゲン社製)にて全RNAの抽出及びDNAseI処理を行った。抽出した全RNAをランダムプライマー(6mer)を用いて、M−MLV−RTaseにて逆転写反応を行い、SYBR Premix Ex Taq及び配列番号9、10の野生型TCRα増幅用プライマー、配列番号13、14の野生型TCRβ増幅用プライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、野生型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。全RNA量の補正は配列番号17、18のβ−アクチン遺伝子増幅用プライマーを用いて行った。
対照実験群の野生型TCRα、野生型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって遺伝子抑制効果を評価した。図1に結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、野生型TCRβ遺伝子発現量についてネガティブコントロールを100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したsiRNAを示す。図1に示されるように、野生型TCRα及びβに対する二本鎖siRNAの導入により、野生型TCRα及びβ遺伝子発現抑制効果を示した。
実施例3 siRNAによるヒト末梢血単核球におけるタンパク発現抑制効果の確認
実施例2にて二本鎖siRNAを導入したヒト末梢血単核球を、二本鎖siRNA導入3日後に、PE−anti human TCR 抗体(BD Pharmingen社製)にて染色し、フローサイトメーターにてTCR陽性細胞率、及びTCR陽性細胞のPEの蛍光強度を測定した。図2にTCR陽性細胞率を示し、図3にTCR陽性細胞のPEの蛍光強度を示す。横軸は、導入したsiRNAを示す。縦軸は図2ではTCR陽性細胞率を示し、図3ではTCR陽性細胞のPEの蛍光強度を示す。図2及び3に示されるように、野生型TCRα及びβに対する二本鎖siRNAの導入により、ヒト末梢血単核球の内在性の野生型TCRα/β複合タンパクの発現率及び発現量の低下がみられた。
実施例4 コドン変換型TCR発現レトロウイルスベクターの作製
まず、マウスゲノムを鋳型に配列番号25記載のpPGK5プライマー及び配列番号26記載のpPGK3プライマーでPCRを行い、PGKプロモーターを含むDNA断片を取得した。この断片をpT7 Blueベクター(MERCK社製)にTAクローニングした。
次に、このプラスミドからNotIとBamHIでPGKプロモーター部位を切り出し、pBlueScript−SK+ベクター(Stratagene社製)のNotIとBamHIサイトにクローニングしpBS−PPGKを作製した。
pMSCVneo(Clontech社製)を鋳型に配列番号27記載の3MSCV5プライマー及び配列番号28記載の3MSCV3プライマーでPCRを行いCMV3‘LTR部位を増幅し、XhoIとEcoRIで切断し、pMTベクター[ジーン セラピー 第7巻、第797−804頁(2000)に記載されているpMベクター]のXho−EcoRIサイトにクローニングし、pMSMCを作製した。
実施例1のコドン変換型TCRβ遺伝子をクローニングしたプラスミドから、PstIでコドン変換型TCRβ遺伝子を切り出し、pBS−PPGKのPstIサイトにクローニングしpBS−Pb2を作製した。
次に、pBS−Pb2からSacIIとXhoIでPGKプロモーター+変換型TCRβ遺伝子を切り出し、pMSMCのSacII−XhoIサイトにクローニングし、pMS−Pb2を作製した。
実施例1のコドン変換型TCRα遺伝子をクローニングしたプラスミドから、NotIでコドン変換型TCRα遺伝子を切り出し、pMSMCのNotIサイトにクローニングしpMS−Ma2を作製した。
次に、pMS−Ma2からNotIでコドン変換型TCRα遺伝子を切り出し、pMS−Pb2のNotIサイトにクローニングし、pMS−aPb1を得た。
プラスミドベクターpMS−aPb1により大腸菌JM109を形質転換し、プラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、トランスフェクション用DNAとして供した。
調製したpMS−aPb1ベクターを293T細胞に、Retorovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)を用いて製品プロトコールに従いトランスフェクションし、各種アンフォトロピックウイルス上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過し、PG13細胞(ATCC CRL−10686)細胞にポリブレンを使用する方法により感染させ、限界稀釈法により細胞のクローン化を行った。得られたクローン細胞の培養上清を回収し、0.45μmフィルターによりろ過し、MS−aPb1コドン変換型TCR発現レトロウイルス溶液とした。
実施例5 ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR発現レトロウイルスの感染及びsiRNAの導入
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例4で作製したコドン変換型TCR発現レトロウイルスを、レトロネクチンを用いた標準的な方法で2回感染を行い、変換型TCR発現導入末梢血単核球を作製した。感染3日後に、Human T Cell Nucleofector Kit(Amaxa社)を用いて、実施例2及び3にて遺伝子抑制効果が確認された野生型TCRαに対するsiTCR−A 50pmol及び野生型TCRβに対するsiTCR−B 50pmolを混合し、製品説明書の手順に従って導入した。ネガティブコントロールとしてsiNCを100pmol導入した。各実験群は、例数2にて行った。siRNA導入2日後に細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Micro Kit(キアゲン社製)にて全RNAの抽出及びDNaseI処理を行った。抽出した全RNAをランダムプライマー(6mer)を用いて、M−MLV−RTase(タカラバイオ社製)にて逆転写反応を行い、SYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ社製)及び配列番号9、10の野生型TCRα増幅用プライマー、配列番号11、12のコドン変換型TCRα増幅用プライマー、配列番号13、14の野生型TCRβ増幅用プライマー、配列番号15、16のコドン変換型TCRβ増幅用プライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。全RNA量の補正は配列番号17、18のβ−アクチン遺伝子増幅用プライマーを用いて行った。
対照実験群の野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって遺伝子抑制効果を評価した。図4にTCRα、図5にTCRβの結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、又は変換型TCRβ遺伝子発現量についてネガティブコントロールを100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したsiRNAを示す。図4及び5に示されるように、野生型TCRαかつβに対する二本鎖siRNAの導入により、PBMCにおいて野生型TCRα及びβ遺伝子発現を抑制するが、変換型TCRα及びβ遺伝子発現の抑制は起こっていない。
実施例6 コドン変換型TCR導入ヒト末梢血単核球へのsiRNAの導入によるコドン変換型TCRタンパク発現への効果
実施例5において、コドン変換型TCR導入したヒト末梢血単核球へsiRNAを導入して3日後に、HLA−A2402 MAGE−A4 テトラマー−PE(MBL社製)及びHuman CD8 TRI−COLOR CONJUGATE (CALTAG Lavoratories)により染色し、フローサイトメーターによりCD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合を測定した。各実験群は、例数2にて行った。図6にMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。横軸は、導入したsiRNAを示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。図6に示されるように、野生型TCRα及びβに対する二本鎖siRNAの導入により、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率の増強が見られた。
実施例7 コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクターの作製
pSINsi−hU6ベクター(タカラバイオ社製)のBamHI−ClaIサイトに配列番号29及び30をアニールさせて作製した2本鎖DNAをクローニングして、pSINsi−hU6−TCRAを作製した。また、pBAsi−mU6ベクター(タカラバイオ社製)のBamHI−HindIIIサイトに配列番号31及び32をアニールさせて作製した2本鎖DNAをクローニングして、pBAsi−mU6−TCRBを作製した。
図7に示すように、作製したpBAsi−mU6−TCRBをEcoRVにて切り出して得られた、mU6−TCRB insertをpSINsi−hU6−TCRAのPmeIサイトにクローニングし、pSINsi−Rm/Fhを得た。作製したpSINsi−Rm/FhをNheI及びClaIにて消化し、末端の平滑化を行うことにより、Rm/Fh insertを得た。
図8に示すように、実施例4にて作製したpMS−aPb1ベクターをMluIにて消化し、末端の平滑化を行い、前記Rm/Fh insertをクローニングしてT3ベクターを作製した。
また、図9に示すように、実施例4にて作製したpMS−aPb1ベクターのをClaIにて消化し、末端の平滑化を行い、Rm/Fh insertをクローニングしてT7ベクターを作製した。
次に、図10に示すように、配列番号33に示す人工合成遺伝子をMluI及びSacIIにて消化して得たTCR−loop−MluI/SacIIを、実施例4にて作製したpMS−aPb1のMluI−SacIIサイトにクローニングすることにより、T15ベクターを得た。
さらに、図11に示すように、pSINsi−hH1ベクター(タカラバイオ社製)をClaI消化後に平滑末端化を行い、NotIにて消化して得られた断片をpSINsi−hU6(タカラバイオ社製)のPmeI−NotIサイトにクローニングし、pSINsi−hH/hUを作製した。
図12に示すように、pSINsi−hH/hUをBamHIにて消化して得られた断片を前記pSINsi−Rm/FhをBamHIにて消化したサイトにクローニングを行いpSINsi−RHB/FUAを作製し、これをNheI及びClaIにて消化し、平滑末端化を行って、HB/UA insertを得た。
図13に示すように実施例4にて作製したpMS−aPb1ベクターをMluIにて消化し、末端の平滑化を行い、HB/UA insertをクローニングして、TN1ベクターを作製した。
図14に示すようにT15ベクターをNotIにて消化後、末端平滑化を行って、α1−blunt insertを作製した。また、T15ベクターをNotIにて消化し、ベクターのセルフライゲーションを行って得られたpMS−loop−Pb1ベクターをMluI消化後、平滑末端化を行ったサイトにα1−blunt insertをクローニングすることによりTN5ベクターを作製した。
図15に示すように実施例4にて作成したpMS−aPb1ベクターをNotIにて消化して、α1 Not insertを作製した。また、pMS−aPb1ベクターをNotIにて消化後、末端平滑化を行った後、ClaIにて消化してPGK+β1 insertを作製した。さらに、pSINsi−hU6−TCRAベクターをClaIにて消化後、平滑末端を行った後、NotIにて消化して、hU6−TCRA insertを得た。pMS−aPb1のNotI−ClaIサイトにPGK+β1 insert及びhU6−TCRA insertをクローニングすることによりpMS−hURA−Pb1を作製後、NotIにて消化し、α1 Not insertをクローニングすることにより、pMS−a−hUTCRA−Pb1を作製した。
図16に示すように、pSINsi−RHB/FUAをEcoRI及びHindIIIにて消化後末端平滑化を行って、hH1−TCRB−blunt insertを得た。pMS−a−hUTCRA−Pb1をClaI消化後、末端平滑化を行ってhH1−TCRB−blunt insertをクローニングすることにより、TN9ベクター及びTN11ベクターを作製した。
プラスミドベクターpMS−aPb1、T3、T7、T15、TN1、TN5、TN9ベクターにより大腸菌JM109を形質転換し、プラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、トランスフェクション用DNAとして供した。
調製したpMS−aPb1、T3、T7、T15、TN1、TN5、TN9ベクターを293T細胞に、Retorovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)を用いて製品プロトコールに従いトランスフェクションし、各種アンフォトロピックウイルス上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過し、PG13細胞(ATCC CRL−10686)細胞にポリブレンを使用する方法により感染させ、細胞の培養上清を回収し、0.45μmフィルターによりろ過し、MS−aPb1、T3、T7、T15、TN1、TN5、TN9レトロウイルス溶液とした。
実施例8 ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクターの感染1
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例7で作製したT3、T7、T15コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルス及びコントロールとしてコドン変換型TCR発現pMS−aPb1ベクターを、レトロネクチンを用いた標準的な方法で2回感染を行い、コドン変換型TCR及びsiRNA共発現導入末梢血単核球を作製した。2回目ウイルス感染3日後に細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)にて全RNAの抽出及びDNaseI処理を行った。抽出した全RNAをPrimeScript RT reagent Kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)にて逆転写反応を行い、SYBR Premix Ex Taq II(タカラバイオ社製)及び配列番号9、10の野生型TCRα増幅用プライマー、配列番号11、12のコドン変換型TCRα増幅用プライマー、配列番号13、14の野生型TCRβ増幅用プライマー、配列番号15、16のコドン変換型TCRβ増幅用プライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。全RNA量の補正は配列番号34、35のGAPDH遺伝子増幅用プライマーを用いて行った。
対照実験群の野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって野生型TCR遺伝子抑制効果及び変換型TCR遺伝子発現量を評価した。図17に結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、又は変換型TCRβ遺伝子発現量について遺伝子導入なしのネガティブコントロールを100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示す。図17に示されるように、野生型TCRαかつβに対するsiRNAの導入により、PBMCにおいて野生型TCRα及びβ遺伝子発現を抑制する。T3、T7、T15ではpMS−aPb1に比べて、変換型TCRα及びβ遺伝子発現は低い。
実施例9 コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入によるコドン変換型TCRタンパク発現への効果1
実施例8において、T3、T7、T15コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルス2回目感染3日後に細胞を回収し、実施例6の同様の方法によりCD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合を測定した。図18にMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。図18に示されるように、T15コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率がコントロールのコドン変換型TCR発現pMS−aPb1と比較して向上した。実施例8に示されるように、siRNA発現ユニットの挿入により、コドン変換型TCR遺伝子の発現量はpMS−aPb1に比べて低いものの、siRNAによる野生型TCR遺伝子の発現抑制効果により、コドン変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパク発現率の増強が見られた。
実施例10 ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクターの感染2
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例8と同様にコドン変換型TCR及びsiRNA共発現導入末梢血単核球を作製した。ウイルス感染7日後に全RNAの抽出及びDNaseI処理を行った。実施例8と同様の方法でリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。
対照実験群の野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって野生型TCR遺伝子抑制効果及び変換型TCR遺伝子発現量を評価した。図19に結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、又は変換型TCRβ遺伝子発現量について遺伝子導入なしのネガティブコントロールを100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示す。図19に示されるように、野生型TCRαかつβに対するsiRNAの発現により、PBMCにおいて野生型TCRα及びβ遺伝子発現を抑制する。また、ウイルス感染3日後の実施例8の結果よりも、7日後で野生型TCR遺伝子の発現抑制効果が高くなっている。しかし、野生型siRNA発現ユニットの挿入によりpMS−aPb1に比べて、変換型TCRα及びβ遺伝子発現は低い。
実施例11 コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクター導入によるコドン変換型TCRタンパク発現への効果2
実施例10において、T3、T7、T15コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルス2回目感染7日後に細胞を回収し、実施例6と同様の方法によりCD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合を測定した。図20にMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。図20に示されるように、T3、T7コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率が、コントロールのコドン変換型TCR発現pMS−aPb1と比較して向上した。実施例10に示されるように、siRNA発現ユニットの挿入により、コドン変換型TCR遺伝子の発現量は低下するものの、siRNAによる野生型TCR遺伝子の発現抑制効果により、コドン変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパク発現率の増強が見られた。
実施例12 コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入によるコドン変換型TCR複合体の抗原特異的サイトカイン産生能1
T2細胞株(ATCC CRL−1992)にHLA−A2402 cDNAを遺伝子導入して作製されたT2A24細胞へ、MAGE−A4143−151ペプチドをパルスしたT2A24(+)細胞又は、ペプチドをパルスしていないT2A24(−)細胞と、実施例10における、T3、T7、T15、MS−aPb1導入細胞3日後の細胞を混合した細胞、及び、導入3日後の細胞にPMAとイオノマイシンにて抗原非特異的に刺激した細胞へ、Breferdin Aを添加したのち一晩37℃にてインキュベートした後、IntraPrep(Beckman Coulter)を用いて、CD8−FITC抗体(BD Biosciences)及びIO Test IFNγ−PE(Beckman Coulter)にてCD8染色及び細胞内IFNγ染色を行い、フローサイトメーターによりCD8陽性であって、かつIFNγ陽性である細胞の割合を測定した。図21に細胞内IFNγ陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はIFNγ陽性細胞率を示す。図21に示されるように、T3、T7、T15コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、MAGE−A4抗原特異的IFNγ産生能がコントロールであるMS−aPb1導入細胞と同程度であることが確認された。
実施例13 ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクターの感染3
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例7で作製したTN1、TN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルス及びコントロールとしてコドン変換型TCR発現pMS−aPb1ベクターを、レトロネクチンを用いた標準的な方法で2回感染を行い、コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現導入末梢血単核球を作製した。2回目ウイルス感染5日後及び11日後に細胞を回収し、実施例8と同様の方法でリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。
対照実験群の野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって野生型TCR遺伝子抑制効果及び変換型TCR遺伝子発現量を評価した。図22に感染5日後の結果を、図23に感染11日後の結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、又は変換型TCRβ遺伝子発現量についてMS−aPb1導入細胞を100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示す。図22及び図23に示されるように、野生型TCRαかつβに対するsiRNAの発現により、PBMCにおいて野生型TCRα及びβ遺伝子発現を抑制する。
実施例14 コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクター導入によるコドン変換型TCRタンパク発現への効果3
実施例13において、TN1、TN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルス2回目感染4日後に細胞を回収し、実施例6と同様の方法によりCD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合を測定した。図24にウイルス感染4日後のMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。図24に示されるように、TN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率が、コントロールのコドン変換型TCR発現MS−aPb1に比べて向上した。実施例13に示されるように、siRNA発現ユニットの挿入により、変換型TCRβの遺伝子発現はコントロールのMS−aPb1導入細胞と比べて低いものの、siRNAによる野生型TCR遺伝子の発現抑制効果により、変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパク発現率の増強が見られた。
実施例15 コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクター導入によるコドン変換型TCR複合体の抗原特異的サイトカイン産生能2
実施例12と同様の方法により、実施例13におけるTN1、TN5、TN9、MS−aPb1導入細胞4日後の細胞を使用して、CD8陽性であって、かつIFNγ陽性である細胞の割合を測定した。図25に細胞内IFNγ陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はIFNγ陽性細胞率を示す。図25に示されるように、TN1、TN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクター導入により、MAGE−A4抗原特異的IFNγ産生能がMS−aPb1導入細胞と比べて同程度以上であることが確認された。
実施例16 ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクターの感染4
ヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、実施例7で作製したTN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルス及びコントロールとしてコドン変換型TCR発現pMS−aPb1ベクターを、レトロネクチンを用いた標準的な方法で2回感染を行い、コドン変換型TCR及びsiRNA 共発現導入末梢血単核球を作製した。
2回目感染4日後に細胞を回収した。TN5、TN9、MS−aPb1導入細胞の細胞あたりのベクターの平均コピー数は、それぞれ3.64、2.21、9.15copy/cellであった。また、実施例6と同様の方法によりCD8陽性であって、かつテトラマー陽性である細胞の割合を測定した。図26にウイルス感染4日後のMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示し、縦軸はMAGE−A4テトラマー陽性細胞率を示す。図26に示されるように、TN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、細胞あたりのベクターのコピー数がMS−aPb1より少ないにもかかわらず、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率が、コントロールのコドン変換型TCR発現MS−aPb1と同等であった。
実施例17ヒト末梢血単核球へのコドン変換型TCR及びsiRNA 共発現レトロウイルスベクターの感染4
実施例16にてヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、コドン変換型TCR及びsiRNA共発現導入末梢血単核球を作製した。ウイルス感染5日後にMAGE−A4テトラマーにて染色を行い、Anti−PE MicroBeads(Miltenyi Biotec)にて、MAGE−A4テトラマー陽性細胞のみを分取した。分取した細胞より、全RNAの抽出及びDNaseI処理を行った。実施例8と同様の方法でリアルタイムPCRを行い、野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現量の相対値を算出した。
対照実験群の野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、変換型TCRβ遺伝子発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって野生型TCR遺伝子抑制効果及び変換型TCR遺伝子発現量を評価した。図27に結果を示す。図中、縦軸は野生型TCRα、変換型TCRα、野生型TCRβ、又は変換型TCRβ遺伝子発現量についてMS−aPb1導入細胞を100としたときの相対値で示す。横軸は、導入したレトロウイルスを示す。図27に示されるように、野生型TCRαかつβに対するsiRNAの発現により、PBMCにおいて野生型TCRα及びβ遺伝子発現を抑制する。また、TN5およびTN9ではpMS−aPb1に比べて、変換型TCRα及びβ遺伝子発現は低いにもかかわらず、野生型のTCRαかつβに対するsiRNAの発現による内在性TCR遺伝子の抑制により、図26に示すようにTN5、TN9コドン変換型TCR及びsiRNA共発現レトロウイルスベクター導入により、ヒト末梢血単核球に遺伝子導入した変換型抗MAGE−A4TCRα/β複合タンパクの発現率が、コントロールのコドン変換型TCR発現MS−aPb1と同等まで上昇した。
本発明により、医療分野において有用なオリゴマータンパク質を発現する細胞、特にT細胞及び当該T細胞を製造する方法が提供される。
SEQ ID NO:1: Codon modified anti-MAGE A4 TCR alpha chain.
SEQ ID NO:2: Codon modified anti-MAGE A4 TCR beta chain.
SEQ ID NO:3: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-A. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:4: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-A. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:5: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-B. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:6: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-B. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:7: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-C. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:8: Synthetic chimera oligonucleotide for siRNA-C. Nucleotides 1 to 19 are ribonucleotides-other nucleotides are deoxyribonucleotides
SEQ ID NO:9: Synthetic oligonucleotide primer for wild-type TCR alpha chain.
SEQ ID NO:10: Synthetic oligonucleotide primer for wild-type TCR alpha chain.
SEQ ID NO:11: Synthetic oligonucleotide primer for codon-modified TCR alpha chain.
SEQ ID NO:12: Synthetic oligonucleotide primer for codon-modified TCR alpha chain.
SEQ ID NO:13: Synthetic oligonucleotide primer for wild-type TCR beta chain.
SEQ ID NO:14: Synthetic oligonucleotide primer for wild-type TCR beta chain.
SEQ ID NO:15: Synthetic oligonucleotide primer for codon-modified TCR beta chain.
SEQ ID NO:16: Synthetic oligonucleotide primer for codon-modified TCR beta chain.
SEQ ID NO:17: Synthetic oligonucleotide primer for beta-actin.
SEQ ID NO:18: Synthetic oligonucleotide primer for beta-actin.
SEQ ID NO:19: Portion of TCR alpha chain.
SEQ ID NO:20: Portion of codon-modified TCR alpha chain.
SEQ ID NO:21: Portion of TCR alpha chain.
SEQ ID NO:22: Portion of TCR beta chain.
SEQ ID NO:23: Portion of codon-modified TCR beta chain.
SEQ ID NO:24: Portion of TCR beta chain.
SEQ ID NO:25: Synthetic oligonucleotide primer pPGK5.
SEQ ID NO:26: Synthetic oligonucleotide primer pPGK3.
SEQ ID NO:27: Synthetic oligonucleotide primer 3MSCV5.
SEQ ID NO:28: Synthetic oligonucleotide primer 3MSCV3.
SEQ ID NO:29: Synthetic oligonucleotide for pSINsi-hU6-TCRA.
SEQ ID NO:30: Synthetic oligonucleotide for pSINsi-hU6-TCRA.
SEQ ID NO:31: Synthetic oligonucleotide for pBAsi-mU6-TCRB.
SEQ ID NO:32: Synthetic oligonucleotide for pBAsi-mU6-TCRB.
SEQ ID NO:33: Synthetic oligonucleotide for TCR-loop-MluI/SacII.
SEQ ID NO:34: Oligonucleotide primer for amplification of GAPDH gene.
SEQ ID NO:35: Oligonucleotide primer for amplification of GAPDH gene.

Claims (6)

  1. 非天然のオリゴマータンパク質を発現するためのベクターであって、天然のオリゴマータンパク質を構成する2つの内在性ポリペプチド対応する非天然のオリゴマータンパク質を構成する2つの外来性ポリペプチドをコードする遺伝子及び前記内在性ポリペプチドの発現を抑制する2つのsiRNAが組み込まれ、ここに、前記外来性ポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列は前記siRNAの作用を受けない配列に変換されており、それにより、前記外来性ポリペプチドの発現が前記siRNAによって抑制されないことを特徴とするベクターであって、ここに、
    前記オリゴマータンパク質が可変領域と定常領域で構成されており、前記siRNAは前記オリゴマータンパク質を構成する内在性ポリペプチドの発現を当該ポリペプチドの定常領域に対応するmRNAの配列を標的とし、
    前記外来性ポリペプチドが前記内在性ポリペプチドと同じアミノ酸配列の定常領域を有しており、かつ前記外来性ポリペプチドのmRNAの塩基配列を前記内在性ポリペプチドのmRNAの塩基配列と相異させることにより、前記siRNAが前記内在性ポリペプチドの発現を抑制する、ベクター
  2. オリゴマータンパク質が抗原認識レセプターである請求項1記載のベクター。
  3. 抗原認識レセプターがT細胞受容体(TCR)である請求項記載のベクター。
  4. 2つのsiRNAが配列表の配列番号3及び4で示される塩基配列からなる二本鎖siRNAと配列表の配列番号5及び6で示される塩基配列からなる二本鎖siRNAである、請求項3記載のベクター。
  5. 外来性ポリペプチドをコードする遺伝子及び内在性ポリペプチドの発現を抑制するsiRNAが同一のベクターに組み込まれている、請求項1記載のベクター。
  6. 外来性ポリペプチドをコードする遺伝子及び内在性ポリペプチドの発現を抑制するsiRNAが別々のベクターに組み込まれている、請求項1記載のベクター。
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