JP5828459B2 - 遠心血液ポンプ - Google Patents
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例えば、特許文献1に記載の遠心血液ポンプでは、接触軸受が血液の障害物となり流れが滞り血栓等が生じることを減じるために、球状の1個の接触軸受で支持するように接触軸受に工夫を施したものである。
しかしながら、接触軸受では、どうしてもその部分で血液の流れが滞り血栓等が生じることがさけられないことや、長期使用による接触軸受部分での摩耗粉の発生の可能性が残るため、非接触軸受を用いた遠心血液ポンプが、例えば特許文献2〜6等のように多数提案されている。
特許文献2では、スラスト方向(軸方向)軸受及びラジアル方向(半径方向)軸受に非接触軸受である流体力学的動圧軸受を採用しており、動圧軸受はスラスト方向及びラジアル方向いずれもスパイラル溝を用いている。
特許文献3では、スラスト方向軸受に非接触軸受である流体力学的スラスト軸受を用い、ラジアル方向は、モータ固定子と羽根車の磁気領域との間の磁気的な相互作用が半径方向の羽根車剛性を創出することで行っておりいわゆる非接触軸受である磁気軸受に当たる。なお、ケーシング内部に回転固定軸を有していない。
特許文献4では、スラスト方向の非接触軸受としては動圧溝による流体力学的スラスト軸受と複数の永久磁石の吸引力の組合せ、ラジアル方向の非接触軸受としては、上記特許文献3と同様に永久磁石の磁気的吸引力により支持剛性を高めることにより実現(いわゆる磁気軸受に当たる)している。
特許文献5は、本出願人等が先に出願したものであり、スラスト方向軸受及びラジアル方向軸受に非接触軸受である流体力学的動圧軸受を採用しているが、動圧軸受はいずれも螺旋状溝形状である。
特許文献6は、本出願人が先に出願したものであり、スラスト方向軸受及びラジアル方向軸受に非接触軸受である流体力学的動圧軸受を採用しているが、動圧軸受はいずれも螺旋状溝形状である。
これまで遠心血液ポンプのラジアル方向の安定化のために動圧軸受を設ける場合、螺旋溝の形状であるヘリンボーン動圧軸受が主に用いられている。しかし、螺旋溝形状では、軸受側面に動圧溝を形成する必要があるため、切削加工の場合は、軸受側面より切削加工を行う必要がある。金型による射出成形の場合は、金型は螺旋溝と同じ方向に回転させながら製品を引き抜く必要がある。そのため、製作コストの増加と溝形状の精度悪化と製作時間の増加が問題となっている。また、動圧溝による発生力を増加するためには、固定軸と回転軸の間の軸受隙間を狭くしたり、動圧溝のエッジと溝部を鋭くしたりすることで、動圧溝での局所圧を高くする方法がある。一般的に、ハードディスク等の産業用の動圧軸受では、軸受隙間は数μm程度である。しかし、作動流体に血液を使用する遠心血液ポンプにおいては、産業用の動圧軸受のような狭い軸受隙間や鋭いエッジと溝部での高剪断応力による赤血球の血球破壊や血栓形成が大きな問題となっている。
また、本発明は、上記遠心血液ポンプにおいて、前記ラジアル動圧軸受の最少軸受隙間を10μm以上とすることにより、血液適合性を向上させたことを特徴とする。
また、本発明は、上記遠心血液ポンプにおいて、前記動圧溝の多円弧形状のエッジ部と溝部の少なくとも一方に、R加工又は面取り加工を施したことを特徴とする。
また、本発明は、上記遠心血液ポンプにおいて、前記ラジアル動圧軸受の動圧溝を形成する部分の材料に金属又は高分子材料を使用したことを特徴とする。
また、固定軸と回転軸の軸受隙間を10μm以上、好ましくは50μm以上に広げることにより、溶血や血栓形成などの血液適合性の問題を解決することができる。
さらに、軸受のエッジや溝部にR加工あるいは面取り加工を実施することで、急激な角や溝のない軸受部が形成できるため、高剪断部位による溶血や溝部での血栓形成が抑制できる。
また、本発明のラジアル動圧軸受式の遠心血液ポンプによれば、他の人工心臓で用いられている真円形状のジャーナル軸受(非接触軸受)と比べても、動圧軸受(非接触軸受)の発生力が大きいため、安定駆動を実現することが出来る。
ラジアル動圧軸受の溝部分が回転軸と平行であるので、ラジアル動圧軸受の製作が、円筒面の軸方向のみの切削あるいは、金型による射出成形時の型抜きが容易に(回転させながら抜いたり、無理抜きしたりする必要がない)できるため、製作コストと製作時間を削減しながら高精度の軸受形状を提供でき、動圧軸受の発生力も大きい。羽根車上部を中心に向けて張り出すために羽根車上面でのスラスト動圧軸受を大面積化できて動圧軸受の発生力が大きく、また、張り出し部があることで回転時の軸振れなども少なく安定した回転が得られる。
また、多円弧形状ラジアル動圧軸受部での固定軸と回転軸の最少隙間を10μm以上、好ましくは50μm以上にすることで、血液適合性が向上する。多円弧形状のエッジ部あるいは溝部の少なくとも一方にR加工又は面取り加工を施せば、さらに血液適合性を向上できる。
本発明の特徴的構成は、ラジアル方向の動圧軸受の構造に有り、羽根車の固定軸となるケーシングの内筒の外周面に設けた動圧溝が、回転面内形状が多円弧形状であって、軸方向形状は溝部分が回転軸と平行であることを特徴とする。言い換えれば、円筒の外周面形状は、軸方向に平行な溝を備えたスプライン軸状に形成されており、そのスプライン軸の横断面が多円弧形状となっているともいえる。このため、ラジアル動圧軸受の製作が、円筒面の軸方向のみの切削で加工できあるいは、金型による射出成形時の型抜きが容易にできるため、製作コストと製作時間を削減しながら高精度の軸受形状を提供でき、動圧軸受の発生力も大きい。なお、図1では、ケーシングの内筒側に動圧溝を形成した場合が示されているが、羽根車側の内周面に動圧溝を形成しても同様である。多円弧形状ラジアル動圧軸受については、後述の図2〜7の説明でも詳述する。
本発明の他の特徴的構成は、羽根車上部が、図1に示すようにケーシングの内筒端面の上部空間内に張り出している点であり、このため、羽根車上面に形成するスラスト動圧軸受の動圧溝を大面積に形成できて発生力が大きく、また、張り出し部があることで回転時の軸振れなども少なく安定した回転が得られる。また、張り出した分だけベーンが長くとれることも有利となる。なお、羽根車上下面に形成するスラスト動圧軸受は従来の動圧溝を使用しても問題はなく、例えば上記特許文献6と同じらせん形状等を用いればよい。また、図1では、スラスト動圧軸受の動圧溝は、羽根車の上下面側に形成したが、対向するケーシング側内面に形成しても良い。
図2は、固定側に動圧溝を設けた例であり、左図は、軸が固定で穴が(図で反時計回りに)回転する場合であり、右図は穴が固定で軸が(図で時計回りに)回転する場合を示しており、本発明の図1で示したものは左図のものに該当する。
図3は、回転側に動圧溝を設けた例であり、左図は、穴が固定で軸が(図で時計回りに)回転する場合であり、右図は軸が固定で穴が(図で反時計回りに)回転する場合を示している。
また、図4及び図5のR加工に代えて、面取り加工を施してもよい。
Claims (4)
- 中心に流入口と径方向外側に流出口を有するケーシングと、ケーシング内部に回転自在に収容された羽根車と、ケーシングの中心であって前記流入口と反対の側にはケーシング内方に凹んだ内筒を有し、該内筒は固定軸として、回転する羽根車を支え、ケーシングの内筒で囲まれた空間内でモータにより回転駆動される永久磁石と、羽根車内に内蔵された永久磁石とで、ケーシングの内筒の隔壁越しに磁気カップリングを形成した回転駆動装置と、羽根車上部に設けられ羽根車の回転により流入口からの液体を流出口に向けて送り出すベーンと、羽根車上下面とそれに対向するケーシング内面とで構成されたスラスト動圧軸受と、内筒とそれに対向する羽根車の内周面とで構成されたラジアル動圧軸受とを備えた遠心血液ポンプであって、
前記羽根車上部はケーシングの内筒端面の上部空間内に張り出すと共に、
前記ラジアル動圧軸受は、円筒外周面とこれに対向する羽根車の内周面の何れか一方に形成された動圧溝からなり、該動圧溝は、回転面内形状が多円弧形状であって、軸方向形状は回転軸と平行な方向に変化しないスプライン軸状であることを特徴とする遠心血液ポンプ。 - 前記ラジアル動圧軸受の最少軸受隙間を10μm以上とすることにより、血液適合性を向上させたことを特徴とする請求項1に記載の遠心血液ポンプ。
- 前記動圧溝の多円弧形状のエッジ部と溝部の少なくとも一方に、R部又は面取り部を有することを特徴とする請求項2に記載の遠心血液ポンプ。
- 前記ラジアル動圧軸受の動圧溝を形成する部分の材料に金属又は高分子材料を使用したことを特徴とする請求項3に記載の遠心血液ポンプ。
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