以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図8は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1および図2は、表示装置を示す斜視図および縦断面図である。図3は、表示装置に組み込まれた光学パネルを示す部分斜視図である。図4〜図8は、光学パネルに組み込まれた光学シートを示す断面図である。
図1および図2に示すように、表示装置10は、一方の側から入射する元像(元となる像)91からの光の進行方向を変えて他方の側へ透過させる光学パネル20と、光学パネル20を支持するケーシング15と、を有している。図示された表示装置10において、円錐形状の立体モデルが元像91としてケーシング15内に配置されている。したがって、図示する例においては、ケーシング15の内側が、光学パネル20の一方の側、すなわち入光側であって、ケーシングの外側が、光学パネル20の他方の側である。光学パネル20は、そのパネル面に平行な異なる二方向da,dbに元像91からの光を反射することにより、光学パネル20の他方の側、すなわち出光側に実像である元像と同一の虚像92を結像する。
ケーシング15は、箱状に形成されており、上面15aに光学パネル20を支持している。元像91となる物体(円錐)は、ケーシング15内において、光学パネル20のパネル面への法線方向ndに沿って光学パネル20に対面する位置に配置されている。光学パネル20によって結像される虚像92は、光学パネル20のパネル面への法線方向ndから傾斜した方向に向けて再生され、且つ、光学パネル20のパネル面への法線方向ndに沿って光学パネル20に対面しない位置に再生されるようになっている。
なお、本明細書において、「パネル」、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「光学シート」には、「光学フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。
また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「対称」、「台形」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
以下、光学パネル20の構成および作用効果についてさらに詳述していく。図3に示すように光学パネル20は、第1光学シート30と、第1光学シート30の他方の側、すなわち出光側に配置された第2光学シート40と、第1光学シート30の一方の側、すなわち入光側に配置されたレンズシート(レンズ光学素子)50と、を有している。図示された例において、第1光学シート30のシート面、第2光学シート40のシート面およびレンズシート50のシート面が互いと平行になるように、第1光学シート30、第2光学シート40およびレンズシート50が配置されている。結果として、光学パネルのパネル面、第1光学シート30のシート面、第2光学シート40のシート面およびレンズシート50のシート面は、互いに平行となっている。また、光学パネルのパネル面への法線方向nd、第1光学シート30のシート面への法線方向nd、第2光学シート40のシート面への法線方向nd、および、レンズシート50のシート面への法線方向ndは、互いに平行となっている。
最初に、最も一方の側、すなわち、最も入光側に配置されて元像91と直面するレンズシート50について、説明する。まず、レンズシートとは、屈折または反射によって光を発散または集束させるレンズ光学機能を有した光学素子である。ただし、ここで用いるレンズシートは、厳密な意味で発散または集束させるレンズ光学機能、例えば入射する平行光束を厳密な意味で一点に集束させるレンズ光学機能を、有している必要はない。レンズシート50を光学パネル20に組み込んだ際に、後述する表示装置10の作用、すなわち、表示装置10による像92の再生を十分に行うことができる限りにおいて、当該レンズシート50はレンズ光学機能を有した光学素子であると取り扱う。
とりわけここで説明するレンズシート50は、図2に示すように、光を集束させる凸レンズと同様の光学機能を有した光学素子として構成されている。図2に示すように、レンズシート50を光学パネル20に設けることによって、当該レンズシート50の光軸od上の任意の位置paからの発散光を、当該レンズシート50の光軸od上における当該位置paよりも光学パネル20から離間した位置pbからの発散光と同様に整形することができる。すなわち、図2に示すように、レンズシート50を光学パネル20に設けることによって、実際には光学パネル20の近傍に位置する元像91からの光L21が、光学パネル20からより遠く離れた位置に配置されており且つ元像を拡大した形状の仮想元像91aから射出される光と同様の光路で、レンズシート50の他側(出光側)に位置する第1光学シート30および第2光学シート40に入射するようになる。
ここで説明する構成では、レンズシート50の光軸odが、光学パネル20の法線方向ndと平行となっている。したがって、光軸od上の点から発散する光の進行方向を、収差による悪影響を極めて効果的に抑制しながら、変化させることができる。そして、図2に示すように、元像91は、レンズシート50の光軸od上に配置されている。さらには、円錐形状からなる元像91は、レンズシート50の光軸odを中心軸として回転対称となるように配置されている。したがって、レンズシート50に起因した収差の影響を効果的に防止することによって、再生される像92の歪み、変形、変色等を効果的に防止することが可能となる。
なお、レンズシートの光軸とは、当該レンズシートによって平行光束を集束または発散させる場合に、集束光束および発散光束の中心となる軸線である。図示された例では、レンズシート50の光軸odは、レンズシート50のシート面への法線方向ndに沿って延びている。そして、光軸odは、レンズシート50の中心を通過して延びている。
図2および図3に示された例において、レンズシート50は、フレネルレンズとして構成されている。このフレネルレンズとして構成されたレンズシート50は、凸レンズと同様の光学機能を発揮することを意図されている。レンズシート50は、同心円状に延びる単位レンズ51、さらに詳しく説明すると、光軸odを中心とした半径の異なる円上を延びる単位レンズ51を有している。単位レンズ51のレンズ面51aの傾斜角度は、光軸odからの距離に応じて異なっている。より具体的には、単位レンズ51が光軸odから離間するに連れて、当該単位レンズ51のレンズ面51aは、レンズシート50のシート面に対して立ち上がってくる。
このようなレンズシート50は、硬化することによって単位レンズ51を構成するようになる単位レンズ構成組成物、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有したエポキシアクリレートプレポリマー等を用いて、作製され得る。具体的には、単位レンズ51の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基材シートを送り込み、該基材シートの送り込みに合わせて、単位レンズ構成組成物を型ロールと基材シートとの間に供給する。その後、基材シート上に供給された未硬化状態で液状の単位レンズ構成組成物が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該単位レンズ構成組成物を押圧する。このようにして基材シートと型ロールとの間に未硬化で液状の単位レンズ構成組成物を充填した後、電離放射線を照射して該単位レンズ構成組成物を硬化(固化)させることによって単位レンズ51を形成することができる。
次に、第1光学シート30および第2光学シート40について説明する。第1光学シート30は、シート状の第1基部31と、第1基部31上に配列された第1光透過部35と、を有しており、第2光学シート40は、シート状の第2基部41と、第2基部41上に配列された第2光透過部45と、を有している。以下において光学シート30,40についてさらに詳述するが、以下の説明において、「第1」および「第2」との用語を用いることなく30番台と40番台の符号を列記して説明する場合、例えば「光学シート30,40」、「基部31,41」、「光透過部35,45」との用語を用いて説明する場合には、第1光学シート30および第2光学シート40の双方に当てはまる説明である。とりわけ図示された本実施の形態では、第1光学シート30および第2光学シート40が互いに同一に構成されている。そして、図4〜図8は、同一に構成された第1光学シート30および第2光学シート40の両方を示す図となっている。
基部31,41は、光透過部35,45を支持する層であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。一例として、基部31,41の厚さを20μm〜200μmとすることができ、このような基部31,41として、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、適度な透明性と、紫外線照射処理や加熱処理等に対する耐久性と、を有している点で、基部31,41としての適用に好適である。
図3に示すように、光透過部35,45は、基部31,41の他方の側の面(出光側面)上に、当該面と平行な配列方向da,dbに沿って、配列されている。光透過部35,45は、その配列方向da,dbと交差する方向であって基部31,41の他方の側の面と平行な方向に、線状に延びている。とりわけ図示する例においては、光透過部35,45は、配列方向da,dbと直交する方向に直線状に延びている。光透過部35,45は、基部31,41上に隙間無く配列されていてもよいし、図4に示すように、隙間をあけて基部31,41上に配列されていてもよい。
第1光学シート30の各第1光透過部35は、一方の側から入射する元像91からの光を反射する第1反射面36を有しており、第2光学シート40の各第2光透過部45は、一方の側から入射する元像91からの光を反射する第2反射面46を有している。第1光学シート30に含まれる多数の第1光透過部35の間において、第1反射面36は互いに平行となっている。また、第2光学シート40に含まれる多数の第2光透過部45の間において、第2反射面46は互いに平行となっている。
図3によく示されているように、第1光学シート30および第2光学シートは、第1光透過部35の配列方向daと第2光透過部45の配列方向dbとが交差するようにして、互いに重ねて配置されている。とりわけ、本実施の形態では、第1光透過部35の配列方向daと第2光透過部45の配列方向dbとが直交するようにして、第1光学シート30および第2光学シートが互いに対して位置決めされている。
ここで説明する形態において、第1光学シート30は、隣り合う二つの第1光透過部35の間に配置された第1低屈折率部38を有し、第2光学シート40は、隣り合う二つの第2光透過部45の間に配置された第2低屈折率部48を有している。図3および図4に示すように、低屈折率部38,48は、基部31,41上に、光透過部38,48と隣接して、配列方向da,dbに光透過部38,48と交互に配列されている。また、低屈折率部38,48は、その配列方向da,dbと交差する方向であって基部31,41の他方の側の面と平行な方向に、線状に延びている。すなわち、低屈折率部38,48は、光透過部35,45と同様にストライプ配列にて、基部40上に配列されている。
第1低屈折率部38は、第1光透過部35よりも低屈折率の樹脂を用いて形成され、第1低屈折率部38と第1光透過部35との界面での反射、とりわけ屈折率差に起因した全反射を引き起こすことを意図されている。同様に、第2低屈折率部48は、第2光透過部45よりも低屈折率の樹脂を用いて形成され、第2低屈折率部48と第2光透過部45との界面での反射、とりわけ屈折率差に起因した全反射を引き起こすことを意図されている。
図4に示すように、本実施の形態では、第1光学シート30の第1低屈折率部38および第2光学シート40の第2低屈折率部48は、ともに、光透過部35,45よりも低屈折率の樹脂からなる主部39a,49aと、主部39a,49a中に分散され光吸収粒子39b,49bと、を含んでいる。光吸収粒子39b,49bは、可視光を吸収する機能を有した粒状物であり、これにより、光学シート30,40において、光透過部35,45と低屈折率部38,48との界面で反射せずに低屈折率部38,48内に入射した光を光吸収粒子39b,49bで吸収することができる。ここで説明した光学シート30,40では、このような光吸収粒子39b,49bの可視光吸収機能によって、表示される像のコントラストを向上させることができる。
次に、主として図4〜図7を参照しながら、光透過部35,45および低屈折率部38,48の断面形状について、説明する。図4は、光学シート30,40の光透過部35,45の配列方向da,dbおよび光学シート30,40の法線方向ndに沿った断面(光学シートの主切断面とも呼ぶ)において、光学シート30,40を示す図である。なお、ここで説明する光透過部35,45および低屈折率部38,48の断面形状は、その長手方向に沿って、言い換えるとその配列方向da,dbに直交する方向に沿って、一定となっている。
図4〜図7に示すように、第1光学シートの主切断面において、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の幅W1は、他方の側(出光側)の端部において一方の側(入光側)の端部よりも狭くなっており、第2光学シートの主切断面において、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の幅W2は、他方の側の端部において一方の側の端部よりも狭くなっている。すなわち、出光側端部における第1光透過部35の幅W1bは、入光側端部における第1光透過部35の幅W1aよりも狭くなっており、出光側端部における第2光透過部45の幅W2bは、入光側端部における第2光透過部45の幅W2aよりも狭くなっている。このような構成によれば、後述するように、光透過部35,45内で反射することなく当該光透過部35,45を透過する光に起因した最もはっきりと視認され得るゴーストが観察されない方向から、意図した像92を観察することが可能となる。
とりわけ、図4〜図7に示した例では、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の幅W1は、一方の側(入光側)から他方の側(出光側)へ向けて狭くなるようにのみ変化し、広くなるように変化することはない。同様に、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の幅W2は、一方の側(入光側)から他方の側(出光側)へ向けて狭くなるようにのみ変化し、広くなるように変化することはない。また、図4〜図7に示した例では、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の幅W1は、一方の側(入光側)から他方の側(出光側)へ向けて狭くなるように変化し続け、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の幅W2は、一方の側(入光側)から他方の側(出光側)へ向けて狭くなるように変化し続けている。
さらに、図4〜図7に示した例では、第1光透過部35の一方の側から他方の側へ伸びる面は、第1光学シートの主切断面において、直線状に形成されており、第2光透過部45の一方の側から他方の側へ伸びる面は、第2光学シートの主切断面において、直線状に形成されている。さらに、図4〜図7に示すように、第1光透過部35は、第1光学シートの主切断面において、台形形状となっており、第2光透過部45は、第2光学シートの主切断面において、台形形状となっている。光透過部35,45の断面形状をなす台形形状は、上底が光学シートの他方の側の面30b,40bをなすように配置され、下底が一方の側に配置されている。
そして、本実施の形態では、第1光学シートの主切断面において、第1光透過部35の一方の側から他方の側へ伸びる二つの面36,37のうちの一方によって、元像91からの光を反射して像92を他方の側へ結像する第1反射面36が構成されている。同様に、第2光学シートの主切断面において、第2光透過部45の一方の側から他方の側へ伸びる二つの面46,47のうちの一方によって、元像91からの光を反射して像92を他方の側へ結像する第2反射面46が構成されている。
図4〜図7に示すように、第1光透過部35がなす台形形状の第1反射面36に対応する一つの側辺は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第1光学シート30のシート面への法線方向)に対して傾斜しており、第2光透過部45がなす台形形状の第2反射面46に対応する一つの側辺は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第2光学シート40のシート面への法線方向)に対して傾斜している。すなわち、第1光透過部35の第1反射面36は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第1光学シートのシート面への法線方向)に対して傾斜しており、第2光透過部45の第2反射面46は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第2光学シート40のシート面への法線方向)に対して傾斜している。
一方、図4〜図7に示すように、第1光透過部35がなす台形形状の一つの側辺であって、当該第1光透過部35の第1反射面36に対向する対向面37に対応する側辺は、当該台形形状の上底および下底と直交し、第2光透過部45がなす台形形状の一つの側辺であって、当該第2光透過部45の第2反射面46に対向する対向面47に対応する側辺は、当該台形形状の上底および下底と直交している。すなわち、第1光透過部35の第1対向面37は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第1光学シートのシート面への法線方向)と平行に延び、第2光透過部45の第2対向面47は、光学パネル20のパネル面への法線方向(本例では、第2光学シート40のシート面への法線方向)と平行に延びている。
加えて、本実施の形態による光学パネル20においては、意図しない像が実質的に現れていない角度域As、言い換えると、光透過部35,45内で反射することなく当該光透過部35,45を透過する透過光に起因したゴースト、および、光透過部35,45内で二回反射して当該光透過部35,45を透過する透過光に起因したゴーストのいずれもが観察されない角度域Asを確保するため、次のように構成されている。まず、第1光学シートの主切断面において、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の一方の側の端部(入光側端部)における幅W1aと、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の他方の側の端部(出光側端部)における幅W1bと、第1光学シートへの法線方向ndに沿った第1光透過部35の高さH1と、が次の式(a)〜(d)を満たすようになっている。同様に、第2光学シートの主切断面において、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の一方の側の端部(入光側端部)における幅W2aと、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の他方の側の端部(出光側端部)における幅W2bと、第2光学シートへの法線方向ndに沿った第2光透過部45の高さH2と、が次の式(e)〜(h)を満たすようになっている。式(a)〜(d)、或いは、式(e)〜(h)が満たされる場合、意図しない像が実質的に現れていない状態で、言い換えると後述する光透過部35,45で反射しない透過光に起因したゴーストおよび光透過部35,45で二回反射した透過光に起因したゴーストのいずれもが観察されない方向から、意図した像92を観察することが可能となる。
θ1y1 = arctan ( ( W1a - W1b ) / H1 ) --- 式(a)
θ1y2 = arctan ( W1b / H1 ) --- 式(b)
θ1x = arctan ( W1a / H1 ) --- 式(c)
( 2 × θ1y1 ) + θ1y2 > θ1x --- 式(d)
θ2y1 = arctan ( ( W2a - W2b ) / H2 ) --- 式(e)
θ2y2 = arctan ( W2b / H2 ) --- 式(f)
θ2x = arctan ( W2a / H2 ) --- 式(g)
( 2 × θ2y1 ) + θ2y2 > θ2x --- 式(h)
ところで、図示された例においては、隣り合う二つの光透過部35,45は、配列方向da,dbに沿って隙間をあけて配置されている。このため、隣り合う二つの光透過部35,45に設けられた低屈折率部38,48は、光学シートの主切断面において、四角形形状、とりわけ、台形形状となっている。低屈折率部38,48の断面形状をなす台形形状は、上底が一方の側に配置され、下底が光学シート30,40の他方の側の面30b,40bをなすように配置されている。すなわち、光透過部35,45の断面形状をなす台形形状の上底と、低屈折率部38,48の断面形状をなす台形形状の下底と、によって、光学シート30,40の他方の側の面(出光側面)30b,40bを形成している。一方、光学シート30,40の一方の側の面(入光側面)30a,40aは、基部31,41によって形成されている。この結果、各光学シート30,40は、非常に取り扱い易い、二つの平行な主面を有したシート状の光学部材として構成されている。
ただし、このような例に限られず、隣り合う二つの光透過部35,45が、配列方向da,dbに沿って隣接して配置されていてもよい。この例によれば、隣り合う二つの光透過部35,45に設けられた低屈折率部38,48は、光学シートの主切断面において、三角形形状、とりわけ、直角三角形形状となる。このような例においても、光学シート30,40が、二つの平行な主面を有したシート状の光学部材として構成され得る。
また、本件発明らが鋭意実験を行ったところ、第1光学シートの主切断面において、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の一方の側の端部(出光側端部)における幅W1aと、第1配列方向daに沿った第1光透過部35の他方の側の端部(出光側端部)における幅W1bと、第1光学シートへの法線方向ndに沿った第1光透過部35の高さH1とが、四捨五入によって少数第1位までの数値で評価した際に、次の関係を満たすことが好ましいことが知見された。
2.0 ≦ H1/W1a ≦ 5.0
1.5 ≦ W1a/W1b ≦ 3.5
同様に、第2光学シートの主切断面において、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の一方の側の端部(出光側端部)における幅W2aと、第2配列方向dbに沿った第2光透過部45の他方の側の端部(出光側端部)における幅W2bと、第2光学シートへの法線方向ndに沿った第2光透過部45の高さH2とが、四捨五入によって少数第1位までの数値で評価した際に、次の関係を満たすことが好ましいことが知見された。
2.0 ≦ H2/W2a ≦ 5.0
1.5 ≦ W2a/W2b ≦ 3.5
以上の関係が満たされるように光透過部35,45が設計される場合には、後述する実質的にゴーストが観察されない観察角度域Asを十分な大きさに確保することができるとともに、像92を再生する光の透過率を十分な値とすることができ、さらに、光透過部35,45を含む光学シート30,40を賦型により安価に作製することができる。
以上のような構成からなる光学シート30,40は、一例として、つぎのようにして製造され得る。
まず、光透過部35,45は、硬化することによって光透過部35,45を構成するようになる光透過部構成組成物、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有したエポキシアクリレートプレポリマー等を用いて、作製され得る。具体的には、低屈折率部38,48の構成(配置、形状等)に対応した凸部を有した型ロール、言い換えると、光透過部35,45の構成(配置、形状等)に対応した凹部を有した型ロールを準備する。当該型ロールとニップロールとの間に基部31,41をなすようになる基材シートを送り込み、該基材シートの送り込みに合わせて、光透過部構成組成物を型ロールと基材シートとの間に供給する。その後、基材シート上に供給された未硬化状態で液状の光透過部構成組成物が型ロールの凹部に充填されるように、型ロールおよびニップロールで該光透過部構成組成物を押圧する。このとき、型ロールの凹部の深さより厚くなるように、すなわち、型ロールと基材シートとが接触しないように、光透過部構成組成物を基材シート上に供給しておくことによって、光透過部35,45と一体的に形成されるシート状部が基材シートとともに、基部31,41を形成するようになる。このようにして基材シートと型ロールとの間に未硬化で液状の光透過部構成組成物を充填した後、電離放射線を照射して該光透過部構成組成物を硬化(固化)させることによって光透過部35,45を形成することができる。
次に、低屈折率部38,48は、硬化することによって主部39a,49aをなすようになる電離放射線により硬化する特徴を有したウレタンアクリレートプレポリマー等と、例えばカーボンブラック等を含む光吸収粒子39b,49bと、を含んだ未硬化で液状の低屈折率部構成組成物を用いて、作製され得る。まず、先に形成された光透過部35,45上に低屈折率部構成組成物を供給する。その後、隣り合う光透過部35,45の間に形成された溝、すなわち、型ロールの凸部に対応していた部分の内部に、ドクターブレードを用いながら、低屈折率部構成組成物を充填しつつ、該溝外に溢出した余剰分の低屈折率部構成組成物を掻き落としていく。その後、光透過部35,45の間の低屈折率部構成組成物に電離放射線を照射して硬化させることにより、低屈折率部38,48が形成される。これにより、基部31,41と、基部上にストライプ状に配列された光透過部35,45および低屈折率部38,48と、を有する光学シート30,40が作製される。
次に、以上のように構成された表示装置10、並びに、光学シート30,40およびレンズシート50を含む光学パネル20の作用効果について説明する。
図1および図2に示すように、ケーシング15に支持された光学パネル20の一方の側(入光側)に、表示対象である元となる像、すなわち元像91が配置される。図1および図2に示された例においては、円錐が元像91として、ケーシング15内に配置されている。既に説明したように、ケーシング15内において、元像91は、光学パネル20の法線方向ndに沿って当該光学パネル20に対面する位置に配置されている。また、元像91は、光学パネル20のレンズシート50の光軸od上に配置され、さらには、この光軸odを中心として対称となるように配置されている。
図3に示すように、元像91からの光は、光学パネル20へ一方の側から入射し、進行方向を変化させて光学パネル20を透過し、他方の側へ像92を形成するようになる。以下においては、このように光学パネル20の他方の側に形成される像92を、後述する意図しない像(ゴースト)と区別するため正規像92とも呼ぶ。また、光学パネル20の他方の側に正規像92を形成するようになる元像91からの光を、後述する意図しない像(ゴースト)を形成する光と区別するため、元像91からの正規光とも呼ぶ。
元像91からの光は、光学パネル20の最も一方の側に配置されたレンズシート50へ入射する。レンズシート50は、上述したように凸レンズと同様の作用効果をすることができる。したがって、図2に示すように、レンズシート50を光学パネル20に設けることによって、当該レンズシート50の光軸od上の任意の位置paからの発散光を、当該レンズシート50の光軸od上における当該位置paよりも光学パネル20から離間した位置pbからの発散光と同様に整形することができる。すなわち、図2に示すように、レンズシート50を光学パネル20に設けることによって、実際には光学パネル20の近傍に位置する元像91からの光L21が、光学パネル20からより遠く離れた位置に配置されており且つ元像91を拡大した形状の仮想元像91aから射出される光と同様の光路で、レンズシート50の他側(出光側)に位置する第1光学シート30および第2光学シート40に入射するようになる。つまり、実際には元像91が光学パネル20の近傍に配置されているにもかかわらず、レンズシート50を設けることにより、レンズシート50を透過した光は、像91よりも光学パネル20から遠く離れた位置に配置されるとともに元像91を拡大した形状となっている仮想元像91aからの光として、第1光学シート30および第2光学シート40に入射する。
ここで説明する構成では、レンズシート50の光軸odが、光学パネル20の法線方向ndと平行となっている。したがって、光軸od上の点から発散する光の進行方向を、収差の影響を極めて効果的に防止しながら、変化させることができる。そして、図2に示すように、元像91は、レンズシート50の光軸od上に配置されている。さらには、円錐形状からなる元像91は、レンズシート50の光軸odを中心軸として回転対称となるように配置されている。したがって、レンズシート50に起因した収差の影響を効果的に抑えることによって、再生される像92の変形や変色を効果的に防止することが可能となる。
レンズシート50を透過した光は、光学パネル20の一方の側に配置された第1光学シート30へ入射する。第1光学シート30は、第1配列方向daに配列された多数の第1光透過部35を有し、各第1光透過部35は互いに平行な第1反射面36を有している。第1光学シート30の第1反射面36は、第1反射面36と平行な面で鏡面反射された像を形成するように、元像91からの正規光を反射する。第1反射面36は、第1配列方向daに直交する方向に延びていることから、図4に示すように、第1光学シート30は、第1光学シートの主切断面において第1反射面36に直交するようになる面を中心として面対称となる位置に像を再生するように、レンズシート50からの光を反射する。
上述したように、各第1反射面36は、第1光学シート30の法線方向、言い換えると光学パネル20の法線方向に対して傾斜している。したがって、第1光学シート30は、第1光学シート30の法線方向、言い換えると光学パネル20の法線方向に対して傾斜方向に向けて像を再生する。
また、第1光学シート30の他方の側(出光側)には、第2光学シート40が配置されている。第2光学シート40は、第2配列方向dbに配列された多数の第2光透過部46を有し、各第2光透過部46は互いに平行な第2反射面46を有している。第2光学シート40の第2反射面46は、第2反射面46と平行な面で鏡面反射された像を形成するように、第1反射面36で反射された後の元像91からの正規光を反射する。第2反射面46は、第2配列方向dbに直交する方向に延びていることから、図4に示すように、第2光学シート40は、第2光学シートの主切断面において第2反射面46に直交するようになる面を中心として面対称となる位置に像を再生するように、第1反射面36で反射された後の元像91からの正規光を反射する。
上述したように、各第2反射面46は、第2光学シート40の法線方向、言い換えると光学パネル20の法線方向に対して傾斜している。したがって、第2光学シート40は、第2光学シート40の法線方向、言い換えると光学パネル40の法線方向に対して傾斜方向に向けて像を再生する。
以上のようにして、レンズシート50を介することによって、元像91からの光が、当該元像91よりも第1光学シート30から離間した位置に配置されるとともに当該元像91を拡大した形状を有する仮想元像91aからの光と同様の光路で、すなわち、仮想元像91aからの光を再現するようにして、第1光学シート30へ入射する。そして、仮想元像91aからの光を、第1光学シート30の第1反射面36および第2光学シート40の第2反射面46で反射することによって、第1反射面36および第2反射面46の向きと、光学パネル20に対する仮想元像91aの相対位置とに応じた位置および向きで、仮想元像91aと同様の寸法および形状を有した像92が再生されるようになる。また、実際の元像91からの光L21は、元像91の各位置から種々の方向に進み出て、光学パネル20に入射している。したがって、観察者は、表示装置10によって光学パネル20の他方の側に結象された象92を裸眼で三次元的に把握することができる。
上述したように、各反射面36,46は、光学シート30,40の法線方向、言い換えると光学パネル20の法線方向に対して傾斜している。したがって、光学シート30,40は、光学シート30,40の法線方向、言い換えると光学パネル20の法線方向に対して傾斜した方向に向けて像を再生する。したがって、上述したように、光学パネル20の法線方向に沿って光学パネル20に対面する位置に元像91を配置しておいたとしても、元像91が反射面36,46の間から直接観察され得ない方向から再生された像を観察することができる。
すなわち、特開2011−81309号公報に開示された表示装置とは異なり、光学パネル30の近傍となる光学パネル30に直面する位置に元像91を配置することができ、これにより、表示装置10のケーシング15を小型化することができる。表示装置10が小型化されれば、表示装置10の配置に自由度が増し、裸眼で立体的に像91を再生することができる有用な表示装置10を、種々の用途に幅広く適用することが可能となる。
加えて、レンズシート50を設けることによって、表示装置10に実際に配置される元像91を、再生される像92よりも小型化することが可能となる。加えて、レンズシート50を設けることによって、像92の再生位置から光学パネル20までの距離よりも、光学パネル20から元像91までの距離を短くすることができる。すなわち、光学パネル20の近傍に元像91を配置しながら、光学パネル20から遠くに浮かび上がる立体像92を再生することができる。これらのことから、表示装置10のケーシング15を飛躍的に小型化しながら、表示装置10から遠くに飛び出すインパクトのある像92を再生することができる。
なお、本件発明者らが確認を行ったところ、特開2011−81309号公報に開示された表示装置のように、光学パネルの法線方向に沿って光学パネルに元像が配置されておらず、このため元像からの光が光学パネルの法線方向に対して大きく傾斜した方向から光学パネルに入射する表示装置に、レンズシートを適用したところ、上述した本実施の形態と同様の作用効果を得ることができなかった。それどころか、元像に対応する予定した像を再生することすらできなかった。
一方、本実施の形態では、レンズシート50の光軸odが、光学パネル20の法線方向ndと平行となっている。したがって、光軸od上の点から発散する光の進行方向を、収差の影響を極めて効果的に防止しながら、変化させることができる。このため従来の表示装置とは異なり、意図した像92の再生が可能となったものと推定される。この推定を裏付ける事実として、図2に示すように、元像91がレンズシート50の光軸od上に配置され、さらには、元像91が、レンズシート50の光軸odを中心軸として回転対称となる形状を有している場合、レンズシート50に起因した収差の影響が極めて効果的に抑えられ、再生される像92の歪み、くずれ、変形、変色を効果的に防止することが可能となった。
ところで、本件発明者らが実験を重ねたところ、上述したように反射面36,46の間から元像91が直接に観察されないようにしたとしても、正規像92とは異なる像、とりわけ正規像92と類似した形状を有するゴーストが視認されてしまった。本件発明者らの研究によれば、このような意図しない像の形成は、ケーシング15内を進む規則的な迷光等が元像91で反射し、その後に光学パネル20を透過して観察方向に進み出ていることに起因しているものと考えられ、その一方で、上述した式(a)〜(d)、或いは、式(e)〜(h)が満たされる光学パネル20によれば、意図しない像が観察されることを効果的に抑制することができた。
本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、最も明瞭に視認され得るゴーストは、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光に起因した像であり、次に視認され得るゴーストは、光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光に起因した像であり、その一方で、その他の光に起因した像(例えば、光透過部35,45で三回以上反射されて光透過部35,45を透過する光に起因した像)は実質的に明瞭には視認され得ないことを知見した。そして、上述した構成の光学パネル20によれば、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光に起因した像および光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光に起因した像の両方が観察され得ない角度域Asを生じさせることができ、この結果として、意図しない像が観察されることを効果的に抑制することができる。以下、このような光学作用について、一枚の光学シート30,40から出射する光の進行方向を参照しながら、詳しく説明する。
まず、主に図5を参照しながら、正規像92が観察され得る角度域Aaについて説明する。前提として、図1および図2に示すように、光学パネル20のパネル面への法線方向ndに沿って光学パネル20に対向する位置に元像91を配置し、且つ、反射面36,46が光学パネル20のパネル面への法線方向ndに対して傾斜していることを想定すると、光学シートの主切断面において、光学パネル20の正面方向ndから、光学パネル20の正面方向ndに対して一側に傾斜した方向から、正規像92が観察され得る。
次に、正規像92が観察され得る観察方向の各光学シート30,40の法線方向ndに対する最大角度θ1a,θ2aは、図5の光L5の光路を取り光学シート30,40から出射する方向が、光学シート30,40の法線方向ndに対してなす角度である。図5に示すように、この光L5は、光学シートの主切断面において、光透過部35,45の反射面36,46と対向する対向面37,47の一方の側(入光側)の端部に接する光路で光透過部35,45に入射し、反射面36,46で反射された後に、光透過部35,45の対向面37,47の他方の側(出光側)の端部に接する光路で光学シート30,40から屈折して出射する。
なお、光学シート30,40の法線方向ndに対して図5の光L5よりも大きく傾斜した方向に進む光は、光透過部35,45の反射面36,46で反射された後に、対向面37,47でも反射されることになる。すなわち、正規像92を形成する正規光とはなり得ない。
次に、主に図6を参照しながら、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光L6に起因したゴースト(意図しない像)が観察され得る角度域Abについて説明し、その後、主に図7を参照しながら、光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光L7に起因したゴースト(意図しない像)が観察され得る角度域Acについて説明する。なおここでは、前提として、正規像92を観察しながらゴーストが観察されるか否かを検討するため、図8に示すように、光学パネル20のパネル面への法線方向ndに対して、正規像92が観察され得る角度域Aaと同じ側に傾斜した角度域について検討する。
反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光L6、すなわち、光透過部35,45を素抜けする光に起因したゴーストは、光学シート30,40の法線方向ndから観察され得る。また、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光L6に起因したゴーストが観察され得る観察方向(角度域Ab)の各光学シート30,40の法線方向に対する最大角度θ1b,θ2bは、図6の光L6の光路を取り光学シート30,40から出射する方向が、光学シート30,40の法線方向ndに対してなす角度である。図6に示すように、この光L6は、光学シートの主切断面において、光透過部35,45の反射面36,46の一方の側(入光側)の端部に接する光路で光透過部35,45に入射し、反射面36,46および対向面37,47で反射されることなく、光透過部35,45の対向面37,47の他方の側(出光側)の端部に接する光路で光学シート30,40から出射する。
この光L6が第1光学シート30の第1光透過部35内を進む際の進行方向が第1光学シート30の法線方向ndに対してなす角度θ1b’は、次の式(x1a)で表される。そして、この光L6が、第1光学シート30から出射する際には、式(x1b)で表されるスネルの法則が満たされる。したがって、この光L6の第1光学シート30からの出射方向が第1光学シート30の法線方向ndに対してなす角度θ1bは、式(x1c)で表される。第1光学シートと同様に、光L6が第2光学シート40の第2光透過部45内を進む際の進行方向が第2光学シート40の法線方向ndに対してなす角度θ2b’は、次の式(x2a)で表される。そして、この光L6が、第2光学シート30から出射する際には、式(x2b)で表されるスネルの法則が満たされ、この光L6の第2光学シート40からの出射方向が第2光学シート40の法線方向ndに対してなす角度θ2bは、式(x2c)で表される。
<第1光学シート>
θ1b’ = arctan( W1a / H1 ) ---式(x1a)
n1a × sinθ1b’ = sinθ1b ---式(x1b)
θ1b = arcsin ( n1a × sin ( arctan( W1a / H1 )) ) ---式(x1c)
<第2光学シート>
θ2b’ = arctan( W2a / H2 ) ---式(x2a)
n2a × sinθ2b’ = sinθ2b ---式(x2b)
θ2b = arcsin ( n2a × sin ( arctan( W2a / H2 )) ) ---式(x2c)
これらの式において、第1光学シートの主切断面において、第1光透過部35の一方の側(入光側)の端部における第1配列方向daに沿った幅をW1aとし、第1光透過部35の他方の側(出光側)の端部における第1配列方向daに沿った幅をW1bとし、第1光学シート30への法線方向ndに沿った第1光透過部35の高さをH1とし、第1光透過部35をなす材料の屈折率をn1aとしている。また、第2光学シートの主切断面において、第2光透過部45の一方の側(入光側)の端部における第2配列方向dbに沿った幅をW2aとし、第2光透過部45の他方の側(出光側)の端部における第2配列方向dbに沿った幅をW2bとし、第2光学シート40への法線方向ndに沿った第2光透過部45の高さをH2とし、第2光透過部45をなす材料の屈折率をn2aとしている。
なお、光学シート30,40の法線方向ndに対して図6の光L6よりも大きく傾斜した方向に進む光は、光透過部35,45の対向面37,47で少なくとも反射されることになる。このため、最も明瞭に確認されるゴーストを形成する第1反射面36で反射されることなく第1光透過部35を透過する光L6が、第1光学シート30から出射する角度域Abは、第1光学シート30の法線方向ndに対して、0°以上、且つ、式(x1c)で表される角度θ1b以下の角度をなす領域となる。また、最も明瞭に確認されるゴーストを形成する第2反射面46で反射されることなく第2光透過部45を透過する光L6が、第2光学シート40から出射する角度域Abは、第2光学シート40の法線方向ndに対して、0°以上、且つ、式(x2c)で表される角度θ2b以下の角度をなす領域となる。
一方、図7に示すように、光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光L7に起因したゴーストが観察され得る観察方向(角度域Ac)の各光学シート30,40の法線方向に対する最小角度θ1c,θ2cは、図7の光L7の光路を取り光学シート30,40から出射する方向が、光学シート30,40の法線方向ndに対してなす角度である。図7に示すように、この光L7は、光学シートの主切断面において、光透過部35,45の対向面37,47の一方の側(入光側)の端部で反射しながら光透過部35,45に入射し、その後に光透過部35,45の反射面36,46の他方の側(出光側)の端部で反射しながら光学シート30,40から出射する。
なお、この光L7は、第1反射面36で反射することによって、図7において点線で示す方向d7に進む。この方向d7が第1光学シート30の法線方向に対してなす角度は、θ1c’は、図7中における角度θ1α、角度θ1β、角度θ1γを用いて、次の式(y1a)で表される。そして、図7において点線で示す方向d7に進む光L7が、第1光学シート30から出射する際には、式(y1b)で表されるスネルの法則が満たされる。したがって、この光L7の第1光学シート30からの出射方向が第1光学シート30の法線方向ndに対してなす角度θ1cは、式(y1c)で表される。第1光学シート30と同様に、光L7は、第2反射面46で反射することによって、図7において点線で示す方向d7に進む。この方向d7が第2光学シート40の法線方向に対してなす角度は、θ2c’は、図7中における角度θ2α、角度θ2β、角度θ2γを用いて、次の式(y2a)で表される。そして、図7において点線で示す方向d7に進む光L7が、第2光学シート40から出射する際には、式(y2b)で表されるスネルの法則が満たされる。したがって、この光L7の第2光学シート40からの出射方向が第2光学シート40の法線方向ndに対してなす角度θ2cは、式(y2c)で表される。
<第1光学シート>
θ1c’ =θ1β + θ1γ = θ1α + 2 × θ1γ ---式(y1a)
n1a × sinθ1c’ = sinθ1c ---式(y1b)
θ1c = arcsin ( n1a × sin ( θ1α + 2 × θ1γ )) ---式(y1c)
<第2光学シート>
θ2c’ =θ1β + θ1γ = θ1α + 2 × θ1γ ---式(y2a)
n2a × sinθ2c’ = sinθ2c ---式(y2b)
θ2c = arcsin ( n2a × sin ( θ1α + 2 × θ1γ ) ) ---式(y2c)
また、式(y1a)、式(y1b)、式(y1c)、式(y2a)、式(y2b)および式(y2c)で用いた角度θ1α、角度θ1γ、角度θ2αおよび角度θ2γは、次の式(z1)〜式(z4)によって表される。また、式(y1a)、式(y1b)、式(y1c)、式(y2a)、式(y2b)、式(y2c)で用いたその他の符号、並びに、式(z1)〜式(z4)で用いた符号は、既に説明した式(x1a)、式(x1b)、式(x1c)、式(x2a)、式(x2b)および式(x2c)で用いた符号と同様となっている。
θ1α = arctan( (W1a - W1b ) / H1 ) ---式(z1)
θ1γ = arctan( W1b / H1 ) ---式(z2)
θ2α = arctan( (W2a - W2b ) / H2 ) ---式(z3)
θ2γ = arctan( W2b / H2 ) ---式(z4)
なお、光学シート30,40の法線方向ndに対して図7の光L7よりも小さく傾斜した方向に進む光は、光透過部35,45の対向面37,47で反射されたとしても、その後に、反射面36,46で反射されることはない。このため、比較的に明瞭に確認されるゴーストを形成する第1光透過部35で二回反射されて第1光透過部35を透過する光L7が、第1光学シート30から出射する角度域Acは、第1光学シート30の法線方向ndに対して、式(y1c)で表される角度θ1c以上の角度をなす領域となる。また、比較的に明瞭に確認されるゴーストを形成する第2光透過部45で二回反射されて第2光透過部45を透過する光L7が、第2光学シート40から出射する角度域Acは、第2光学シート40の法線方向ndに対して、式(y2c)で表される角度θ2c以上の角度をなす領域となる。
ここで、以上の検討結果を基にして、各光学シート30,40の法線方向ndに対して一側に傾斜した方向から当該光学シート30,40を観察した際に、正規像92が観察され得る角度域Aa、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光L6に起因した最も明瞭に確認されるゴーストが観察され得る角度域Ab、および、光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光L7に起因した比較的に明瞭に確認されるゴーストが観察され得る角度域Acを、図8にまとめて示した。
ここで、既に説明した次の式(a)〜(d)が、第1光学シート30において満たされる場合について検討する。
θ1y1 = arctan ( ( W1a - W1b ) / H1 ) --- 式(a)
θ1y2 = arctan ( W1b / H1 ) --- 式(b)
θ1x = arctan ( W1a / H1 ) --- 式(c)
( 2 × θ1x1 ) + θ1x2 > θ1y --- 式(d)
式(a)および式(d)における角度θ1y1は、式(z1)で示される角度θ1αと同一であり、式(b)および式(d)における角度θ1y2は、式(z2)で示される角度θ1γと同一である。また、式(c)および式(d)における角度θ1xは、式(x1a)で示される角度θ1b’と同一である。そして、式(d)が満たされる場合には、式(x1c)および式(y1c)の比較から明らかなように、式(a)〜式(d)が満たされる場合には、図8に示すように、式(x1c)で示される角度θ1bが、式(y1c)で示される角度θ1cよりも小さくなる。
この場合、第1反射面36で反射されることなく第1光透過部35を透過する光L6に起因した最も明瞭に確認されるゴースト、および、第1光透過部35で二回反射されて第1光透過部35を透過する光L7に起因した比較的に明瞭に確認されるゴーストの両方が視認され得ない角度域Asが生じることなる。また、図5に示された光L5の第1光透過部35内での進行方向の第1光学シート30の法線方向ndに対する傾斜角度は、明らかに、図7に示された光L7の第1光透過部35内での進行方向の第1光学シート30の法線方向ndに対する傾斜角度よりも、大きくなっている。このため、角度域Asにおいて、意図した正規像92を観察することが可能となる。つまり、式(a)〜(d)が満たされる場合には、第1光学シート30の他方の側(出光側)において、第1反射面36で反射されることなく第1光透過部35を透過する光L6に起因した最も明瞭に確認されるゴースト、および、第1光透過部35で二回反射されて第1光透過部35を透過する光L7に起因した比較的に明瞭に確認されるゴーストの両方が視認され得ない角度域Asにおいて、意図した正規像92を観察することが可能となる。
また、第1光学シート30と同様に、既に説明した次の式(e)〜(h)が第2光学シート40において満たされる場合には、図8に示すように、式(x2c)で示される角度θ2bが、式(y2c)で示される角度θ2cよりも小さくなる。
θ2y1 = arctan ( ( W2a - W2b ) / H2 ) --- 式(e)
θ2y2 = arctan ( W2b / H2 ) --- 式(f)
θ2x = arctan ( W2a / H2 ) --- 式(g)
( 2 × θ2y1 ) + θ2y2 > θ2x --- 式(h)
そして、第1光学シート30と同様に、式(a)〜(d)が満たされる場合には、第2光学シート40の他方の側(出光側)において、第2反射面46で反射されることなく第2光透過部45を透過する光L6に起因した最も明瞭に確認されるゴースト、および、第2光透過部45で二回反射されて第2光透過部45を透過する光L7に起因した比較的に明瞭に確認されるゴーストの両方が視認され得ない角度域Asにおいて、意図した正規像92を観察することが可能となる。
以上のことから、光学パネル20の他方の側において、反射面36,46で反射されることなく光透過部35,45を透過する光L6に起因した最も明瞭に確認されるゴースト、および、光透過部35,45で二回反射されて光透過部35,45を透過する光L7に起因した比較的に明瞭に確認されるゴーストの両方が視認され得ない角度域Asにおいて、意図した正規像92を観察することが可能となる。すなわち、これまで視認性を悪化してきたゴーストの発生を抑えながら、正規像92を明瞭に観察することが可能となる。
ところで、本実施の形態で説明した、光学シート30,40においては、光透過部35,45の間に低屈折率部38,48が設けられている。そして、この低屈折率部38,48は、可視光を吸収する機能を有した光吸収粒子39b,39bを含んでいる。このため、ケーシング15の外部からケーシング15の内部へ進む外部からの光が、この光吸収粒子39b,39bによって吸収され、外部からの光によって、ケーシング15内の元像が特定の方向から照明されてしまうことを防止することができる。これにより、ゴーストを形成するようになる元像91からの光の発生自体を効果的に抑制することができる。
また、図4に示すように、光透過部35,45が隙間をあけて設けられている場合には、基部31,41から低屈折率部38,48へ入射する光L4aも発生する。このような光は特定の方向から観察されるゴーストを形成し得る。本実施の形態のように、低屈折率部38,48が光吸収機能を有している場合には、このような光L4aも吸収して、ゴーストの発生を抑制することができる。
以上のような本実施の形態によれば、光学パネル20の第1反射面36は、光学パネル20の法線方向ndに対して傾斜し、第2反射面46は、光学パネル20の法線方向ndに対して傾斜している。したがって、光学パネル20の法線方向ndに沿って当該光学パネル20に対面する位置に元像91を配置した場合でも、元像91が観察され得ない方向から再生された像92を観察することができる。このため、光学パネル20の近傍に元像91を配置することができ、これにより、表示装置10を小型化することが可能となる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、レンズシート30が、フレネルレンズとして構成されている例を示したが、これに限られず、例えば、通常の凸レンズとして構成されていてもよい。
また、上述した実施の形態においては、光学シート30,40とは別途に、レンズシート50が設けられた例を示したが、これに限られない。一例として図9に示すように、第1光学シート30が、屈折または反射によって光を発散または集束させるレンズ光学機能を有した光学素子として構成されていてもよい。図9に示された例においては、第1光学シート30の一方の側の面30aが、レンズ光学機能を有したレンズ32として形成されている。図9の光学シートの一方の側の面30a、すなわち入光側面は、凸レンズと同等のレンズ光学機能を発揮し得るフレネルレンズから構成されている。したがって、図9に示された第1光学シート30は、入光側面をなすように配列された多数の単位レンズ51を有する。第1光学シート30の一方の側の面30aをなすレンズ32の光軸odは、上述した実施の形態と同様に、光学パネル20のパネル面への法線方向ndと平行となっている。
さらに、上述した実施の形態において、元像91が、実物のモデルからなる例を示したがこれに限られず、元像自体が映像として形成された像であってもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学パネル20が一つのみ表示装置10に設けられている例を示したが、これに限られず、二以上の光学パネル20が設けられていてもよい。このような変形例においては、第1の光学パネルが、元像からの光によって第1の像を形成し、第2の光学パネルが、第1の像をなす光によって第2の像を形成するようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学パネル20に含まれた第1光学シート30および第2光学シート40が同一に構成されている例を示したが、これに限られず、第1光学シート30および第2光学シート40が、寸法や形状等の構成において互いに異なっていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30,40の低屈折率部38,48に、可視光を吸収する機能を有した光吸収粒子39a,49aが混入されている例を示したが、これに限られない。光吸収粒子39a,49aに代えて或いは光吸収粒子39a,49aに加えて、可視光を反射する機能を有した粒子が低屈折率部38,48に加えられてもよいし、低屈折率部38,48に粒子が混在されていなくてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30,40が低屈折率部38,48を有する例を示したが、これに限られず、低屈折率部38,48が設けられていなくてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。