以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図2乃至図29は本発明による光拡散フィルム、透過型スクリーン並びに背面投射型表示装置の実施の形態を説明するための図である。
このうち、図2および図3には、本発明による光拡散フィルムを含んだ透過型スクリーンが適用され得る背面投射型表示装置の一実施の形態が示されている。また、図4乃至図25には、本発明による光拡散フィルムおよび透過型スクリーンの第1の実施の形態およびその変形例が示されている。
<第1の実施の形態>
まず、図2乃至図24を参照して、本発明による光拡散フィルム、透過型スクリーン並びに背面投射型表示装置の第1の実施の形態について説明する。
図2および図3に示すように、背面投射型映像表示装置10は、例えばLCDやDMD等のマイクロデバイス(MD)からなる光源12と、光源12から投射された映像光を背面から透過させて映像を結像させる透過型スクリーン20と、を備えている。本実施の形態において、図2に示すように、光源12からの映像光は、いったんミラー14により反射されて透過型スクリーン20に投射され、透過型スクリーン20を透過するようになっている。ただし、このような例に限定されず、ミラー14を介さず、光源12から透過型スクリーン20に映像光が直接投射されるようにしてもよい。
図4および図5に示すように本実施の形態における透過型スクリーン20は、第1乃至第3の光学シート21,25,29を備えている。最入光側(最光源側)に設けられた第1光学シート21は、光源12から拡大投射される映像光を透過型スクリーン20(各光学シート21,25,29)のシート面に直交する方向に偏向させるための光偏向層22を有している。第1光学シート21の出光側に配置される第2光学シート25は、入射する映像光を一方向(例えば、使用される状態における水平方向)に拡散させて視野角を広げるための視野角拡大層(有指向性光拡散層)26を有している。そして、第2光学シート25の出光側に第3光学シート29が設けられている。
なお、図示する例において、光偏向層22は、入射光を屈折させて偏向させるフレネンルレンズ部として形成されているが、これに限られない。同様の機能を有する公知の光偏向層、例えば入射光を全反射させて偏向させる全反射型フレネルレンズ部として形成された光偏向層を用いることができる。また、図示する例において、視野角拡大層26は、入射光を主に屈折させて拡散させるレンチキュラーレンズ部として形成されているが、これに限られない。同様の機能を有する公知の視野角拡大層、例えば入射光を主に全反射させて拡散させる全反射型レンチキュラーレンズ部として形成された視野角拡大層を用いることができる。また、光偏向層22および視野角拡大層26は必須ではなく、省くことも可能である。
図5および図6に示すように、第3光学シート29は、出光側に配置された光拡散フィルム40と、入光側に配置された支持層31と、を有している。図6に示されているように、光拡散フィルム40と支持層31との間に接合層34が設けられ、この接合層34を介して、光拡散フィルム40と支持層31とが互いに接合されている。
このうち、支持層31は、透過型スクリーン20全体の剛性を高めるための支持基板として機能する層である。一例として、支持層31は、例えば、厚みが2mmのアクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂や硝子から構成することができる。一方、接合層34は、例えば、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のアクリル樹脂によって形成され得る。ただし、接合層34に用いられる樹脂材料の種類や接合方法に基づいた類別は、各シートを有効に接合することができる限りにおいて特に限定されるものではなく、公知の樹脂を適宜採用することができる。
次に、光拡散フィルム40について詳述する。
図5および図6に示すように、本実施の形態における光拡散フィルム40は、最入光側に配置された第1光拡散層50と、最出光側に配置された第2光拡散層60と、第1光拡散層50の出光側に隣接するとともに第2光拡散層60の入光側に隣接するようにして設けられた中間層41と、を有している。本実施の形態において、第1光拡散層50の入光側面は、光拡散フィルム40の入光側面をなすようになっている。一方、第2光拡散層60の出光側面は、本実施の形態において、光拡散フィルム40の出光側面をなすとともに、第3光学シート29の出光側面および透過型スクリーン20の出光側面をなすようになっている。また、本実施の形態において、中間層41は、透光性を有する単一の樹脂からなる単一基材42によって形成されている。このような中間層41の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
このうち、まず、第1光拡散層50について説明する。
第1光拡散層50は、第1基材51と、第1基材51内に分散された複数の第1光拡散剤53と、を有している。第1光拡散剤は略球形状を有している。第1光拡散層50の第1光拡散剤53に入射した光は、第1基材51と、第1基材51に含有され略球形状の外輪郭を有する第1光拡散剤53と、の界面で屈折して進行方向を変える。これにより、第1光拡散層50を透過する光は、二次元的に指向性無く拡散させられるようになる。
ところで、個々の第1光拡散剤53の光拡散機能が効果的に発揮されるようにするには、図1を用いて説明したように、一つの第1光拡散剤53に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束が次に入光すべき第1光拡散剤53を入り込ませることが有効である。逆に言えば、一つの第1光拡散剤53に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束が次に入光すべき第1光拡散剤53の外輪郭の大部分を入り込ませることができないのであれば、当該光束LFが次に入光すべき第1光拡散剤53の光拡散機能を効果的に発揮させることができない場合があるだけでなく、当該光束が次に入光すべき第1光拡散剤53自体が画質の劣化を引き起こす原因にもなり得る。このことを考慮すると、画質をいたずらに劣化させてしまわないようにするため、一つの第1光拡散剤53に入射した光束LFが、その後、他の第1光拡散剤53に入射することなく、第1光拡散層50から出射するようにすることが有用である。
そこで、図7に示すように、本実施の形態においては、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重ならないようになっている。言い換えると、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向(図7における矢印の方向)からの視野において、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53の輪郭に入り込まないようになっている。ただし、より理想的なのは、図6に示すように、一つの第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重ならないようになっていることである。すなわち、図6に示された第1光拡散層50においては、第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な面に沿って、互いに隣り合うように第1基材51内に配置されている、あるいは、複数の第1光拡散剤53が光拡散フィルム40のフィルム面と平行な面上に並べられている。以下に、本実施の形態における第1光拡散層50の設計方法について説明する。
具体的には、本実施の形態において、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重ならないようにすべく、式(12)を満たすようになっている。
0.91>(3×Ta1×C1×Sa1)/(2×D1×Sc1) ・・・式(12)
なお、式(12)中において、第1光拡散剤53の平均粒径をD1とし、第1光拡散剤53を含んだ第1基材51中における第1光拡散剤53の重量比(第1基材51と第1光拡散剤53とのみによって第1光拡散層50が形成される本実施の形態においては、第1光拡散層50に対する第1光拡散剤53の重量比に相当)をC1とし、第1光拡散剤53の比重をSc1とし、第1光拡散剤53を含んだ第1基材51の比重(第1基材51と第1光拡散剤53とのみによって第1光拡散層50が形成される本実施の形態においては、第1光拡散層50の比重に相当)をSa1とし、第1基材51の厚みをTa1としている。
なお、今日において、光拡散剤の粒径の平均値(平均粒径)を特定する方法として、種々の公知な方法がある。このうち、高性能かつ容易であることから、レーザ回折散乱法が、光拡散剤の平均粒径を特定する方法として主流となっている。また、三次元電子顕微鏡を用いた場合、基材中に分散された光拡散剤を基材中から取り出すことなく、基材中に含有された状態で光拡散剤の平均粒径を精度良く特定することもできる。
この式(12)の右辺は、第1光拡散層50のシート面に直交する方向からの視野において個々の第1光拡散剤53が占める面積Acを、第1基材51中に分散されたすべての第1光拡散剤53の個数分足し合わせた総面積Atの、第1基材51の表面積に対する割合である。つまり、各第1光拡散剤53が、第1光拡散層50のシート面に直交する方向において、他の第1光拡散剤とまったく重なり合わない場合に、第1光拡散剤53が、第1光拡散層50のシート面に直交する方向からの視野において、第1基材51(第1光拡散層50)中において占める面積の割合(以下において、単に「充填割合」とも呼ぶ)、を表す。したがって、式(12)を満たす場合、第1光拡散層50のシート面に直交する方向からの第1光拡散層50の視野において、第1光拡散剤53が第1基材51中を占める割合は91%未満となる。
また、言い換えれば、この式(12)の右辺は、第1基材51の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に第1基材51を透過する光が第1光拡散剤53に衝突する平均の回数である。したがって、式(12)を満たす場合とは、第1基材51の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に第1基材51を透過する光が第1光拡散剤53を貫通する回数が平均して0.91回未満となる場合である。
以下に、式(12)中の右辺の導出方法について以下に説明する。
入光側面および出光側面の面積がAa1(単位は、例えばmm2)で、厚さがTa1(単位は、例えばmm)の第1基材51(第1光拡散層50)をモデルとする。この第1基材51中に含まれる第1光拡散剤53の総重量Wc1(単位は、例えばg)は、式(13)で表される。
Wc1=Aa1×Ta1×Sa1×C1 ・・・式(13)
そして、第1光拡散剤53の総重量Wc1を、第1光拡散剤53の一つあたりの平均重量で割ることにより、このモデルとなった第1基材51中に含まれる第1光拡散剤53の個数N(個)は、以下の式(14)で表される。
N=Wc1/(4/3×π×(D1/2)3×Sc1)
=Aa1×Ta1×Sa1×C1/(4/3×π×(D1/2)3×Sc1) ・・・式(14)
ここで、第1光拡散層50のシート面に直交する方向(図7における矢印の方向)からの視野において、一つの第1光拡散剤53が占める面積Ac1(単位は、例えばmm2)は、式(15)で表される。
Ac1=π×(D1/2)2 ・・・式(15)
また、第1基材51中に分散された第1光拡散剤53のすべての面積Ac1を足し合わせた総面積At1(単位は、例えばmm2)は、式(16)で表される。
At1=N×π×(D1/2)2 =(3×Aa1×T1×S1a×C1)/(2×D1×Sc1)
・・・式(16)
そして、この総面積At1を、モデルとなった第1基材51の表面積Aa1で割った値Bは、各第1光拡散剤53が、第1光拡散層50のシート面に直交する方向において、他の第1光拡散剤とまったく重なり合わない場合に、第1光拡散剤53が、第1光拡散層50のシート面に直交する方向からの視野において、第1基材51(第1光拡散層50)中をどの程度の割合(充填割合)で占めているか、を表す。また、この値Bは、基材51の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に第1基材51を透過する光が第1光拡散剤53に衝突する平均の回数となる。
B=At1/Aa1=(3×Ta1×Sa1×C1)/(2×D1×Sc1) ・・・式(17)
以上のようにして、式(12)の右辺が導出され得る。
なお、式(12)において、この値Bは0.91未満に設定されている。上述したように、第1光拡散層50の理想的な構成は、図6に示すように、一つの第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重ならないようになっていることである。そして、この理想的な第1光拡散層50において、式(17)のBの値が最も高くなるのは、つまり、第1光拡散層50のシート面に直交する方向からの視野において、第1光拡散剤53が最も高い割合で第1光拡散層50(第1基材51)中を占めるようになるのは、図8に示すように、略均一な粒径を有する第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面に沿った一平面上において、隣り合う三つの第1光拡散剤53が互いに接し合っている場合である。そして、式(12)の左辺は、第1光拡散剤53が最密に充填された場合における充填割合を表している。したがって、式(12)が満たされる場合には、一つの第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重ならないようにすることが可能となり、上述した図6に示す理想的な光拡散層50を得ることが可能となる。
なお、図8は、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向から光拡散層を示している。
ここで、略均一な粒径を有する第1光拡散剤53が、光拡散フィルム40のフィルム面に沿った一平面上において、最密充填されている場合における、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向からの視野において、第1光拡散剤53が第1基材53(第1光拡散層50)中を占める面積の割合(充填割合)の導出について説明しておく。図8に示すように、第1光拡散剤53が最密に充填される場合、隣り合う三つの第1光拡散剤53は互いに接するようにして配置される。したがって、第1基材51中における第1光拡散剤53の充填割合は、前記隣り合う三つの第1光拡散剤53の中心53aを結ぶ正三角形領域80に基づき導出すればよい。
正三角形領域80中には、各々が前記隣り合う三つの第1光拡散剤53の一部をなすとともに、中心角が60度である三つの扇形が含まれる。すなわち、正三角形領域80中に、半個分の第1光拡散剤53が入り込んでいることになる。言い換えると、個々の光拡散剤53は、二つの正三角形領域80が占める面積中に、一つ存在することになる。
ここで、正三角形領域80の二つ分の面積Aaは、以下の式(18)によって表される。
また、シート面に直交する方向からの視野における、個々の第1光拡散剤53の面積をAcは、以下の式(19)によって表される。
Ac=π×(D1/2)
2 ・・・(式19)
したがって、図8に示すように、最密充填された場合における充填割合Bは、以下の式(20)によって表される。
B=Ac/(2×Aa)=0.91 ・・・式(20)
以上のようにして、式(12)の右辺で表される充填割合Bの上限側の条件が設定される。その一方で、充填割合Bがあまり小さすぎると、第1光拡散層50の光拡散機能が低下してしまう。この観点から、充填割合Bは、最密充填時の充填割合の半分以上(0.45以上)であることが好ましい。また、上述したように、式(12)の右辺で表される充填割合は、第1基材51の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に第1基材51を透過する光が第1光拡散剤53へ衝突する平均の回数である。この観点から、充填割合Bが0.50以上であること、すなわち、光拡散フィルム40のフィルム面の直交する方向から、第1光拡散層50の任意の位置に入射する入射光の半分以上が第1光拡散剤53に入射し得るよう、充填割合Bが0.50以上に設定されていることが、より好ましい。
ところで、上述した式(12)を満たすような場合であっても、第1基材51の厚み(第1基材51と第1光拡散剤53とのみによって第1光拡散層50が形成される本実施の形態においては、第1光拡散層50の厚み相当)Ta1が厚ければ、図7に示すように、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重なり得る。そこで、本実施の形態においては、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重なることがないよう、第1光拡散層50の第1基材51の厚みTa1も調整されている。
具体的には、図8に二点鎖線で示すように、一つの平面上に最密充填された三つの第1光拡散剤53のすべてに接するように、さらなる一つの第1光拡散剤53が配置される場合を基準として、第1光拡散層50(第1基材51)の厚みTa1の上限側の条件を検討した。このような場合に、第1光拡散層50(第1基材51)の厚さ方向において、第1光拡散剤53が最も最密に配置されるようになるからである。したがって、このような場合における第1基材51の最小厚み未満に、第1基材51の最小厚みTa1を設定することによって、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重なることを防止することができる。
このような場合、図9に示すように、四つの第1光拡散剤53の中心53aは、正四角錐の頂点をなす位置に配置されるようになる。したがって、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な一つの平面上に最密充填された三つの第1光拡散剤53の中心53aから、当該三つの第1光拡散剤53のすべてに接するように配置された他の一つの第1光拡散剤53(図8において二点鎖線で示された第1光拡散剤)までの、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った離間長さhは、以下の式(21)で表される。
また、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な一つの平面上に最密充填された三つの第1光拡散剤53の中心53aは、第1基材51の入光側面および出光側面のうちのいずれか一方の面まで、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿って、少なくとも、粒径D1の半分(D1/2)だけ離間する。同様に、当該三つの第1光拡散剤53のすべてに接するように配置された他の一つの第1光拡散剤53の中心53aから、第1基材51の入光側面および出光側面のうちのいずれか他方の面までは、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿って、少なくとも、粒径D1の半分(D1/2)だけ離間する。
したがって、第1基材51の厚みTa1が、以下の式(22)を満たすような場合には、一つの第1光拡散剤53の中心53aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第1光拡散剤53とは別の第1光拡散剤53と重なることを防止することができる。
Ta1<h+D1/2+D1/2=1.8×D1 ・・・式(22)
以上のようにして、第1基材51の厚みTa1の上限側の条件が設定される。その一方で、第1基材51の厚みTa1は、第1光拡散剤53の平均粒径D1以上となっていなければならない。
ところで、このような第1光拡散剤53としては、有機ビーズ、無機ビーズあるいは硝子ビーズ等の公知の光拡散剤を用いることができる。また、第1基材51の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
ここで、第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1より小さい場合には、図10に示すように、第1光拡散剤53に入射する光束LFは、一旦集光させられることなく、広い範囲に拡散させられるようになる。一方、第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1より大きい場合には、図11に示すように、第1光拡散剤53に入射する光束LFは、一旦集光させられ、その後に広い範囲に拡散させられるようになる。上述したように、一つの単位拡散要素(この場合、第1光拡散剤53)に入射した光束LFがその後に通過する範囲S内に、当該光束が次に入射すべき他の単位拡散要素(後述の説明から明らかになるように、第2光拡散剤63)が入り込むように配置されていることが好ましい。つまり、第1光拡散層50によって集光点を形成しないように透過光を拡散することができれば好ましい場合がある。したがって、第1光拡散剤53に用いられる材料は、第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1より小さくなるよう、第1光拡散剤53および第1基材51に用いられる材料を決定されるようにしてもよい。
なお、今日において、光拡散剤の屈折率の値を特定するための方法として、種々の公知な方法がある。精度良く光拡散剤の屈折率の値を特定する代表的な方法として、ベッケ線法が挙げられる。また、基材中に分散された光拡散剤については、基材中から光拡散剤を取り出し、当該取り出した光拡散剤に対してベッケ線法を適用し、屈折率の値を特定することができる。
一方、基材の屈折率は、高性能かつ容易であることから、通常、アッベ屈折計によって特定される。アッベ屈折計としては、例えば、(株)アタゴのDR−M2を用いることができる。
次に、第2光拡散層60について説明する。
図6に示すように、第2光拡散層60は、第2基材61と、第2基材61内に分散された複数の第2光拡散剤63と、を有している。第2光拡散剤63は、略球形状を有している。第2光拡散層60の第2光拡散剤63に入射した光は、第2基材61と、第2基材61に含有され略球形状の外輪郭を有する第2光拡散剤63と、の界面で屈折して進行方向を変える。これにより、第2光拡散層60を透過する光は、二次元的に指向性無く拡散させられるようになる。
このような第2光拡散層60は、上述した第1光拡散層50と同様に構成され得る。すなわち、本実施の形態においては、第1光拡散層50と同様に、一つの第2光拡散剤63の中心63aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重ならないようになっている(図7参照)。言い換えると、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向からの視野において、一つの第2光拡散剤63の中心63aが、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63の輪郭に入り込まないようになっている。ただし、より理想的なのは、図6に示すように、一つの第2光拡散剤63が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重ならないようになっていることである。すなわち、図6に示された第2光拡散層60においては、第2光拡散剤63が、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な面に沿って、互いに隣り合うように第2基材61内に配置されている、あるいは、複数の第2光拡散剤63が光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面上に並べられている。
具体的には、本実施の形態において、一つの第2光拡散剤63の中心63aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重ならないようにすべく、式(23)を満たすようになっている。
0.91>(3×Ta2×C2×Sa2)/(2×D2×Sc2) ・・・式(23)
なお、式(23)中において、第2光拡散剤63の平均粒径をD2とし、第2光拡散剤63を含んだ第2基材61中における第2光拡散剤63の重量比(第2基材61と第2光拡散剤63とのみによって第2光拡散層60が形成される本実施の形態においては、第2光拡散層60に対する第2光拡散剤63の重量比に相当)をC2とし、第2光拡散剤63の比重をSc2とし、第2光拡散剤63を含んだ第2基材61の比重(第2基材61と第2光拡散剤63とのみによって第2光拡散層60が形成される本実施の形態においては、第2光拡散層60の比重に相当)をSa2とし、第2基材61の厚みをTa2としている。
この式(23)の右辺は、上述した式(12)と同様に、第2光拡散層60のシート面に直交する方向からの視野において個々の第2光拡散剤63が占める面積Acを、第2基材61中に分散されたすべての第2光拡散剤63の個数分足し合わせた総面積Atの、第2基材61の表面積に対する割合である。つまり、各第2光拡散剤63が、第2光拡散層60のシート面に直交する方向において、他の第2光拡散剤とまったく重なり合わない場合に、第2光拡散剤63が、第2光拡散層60のシート面に直交する方向からの視野において、第2基材61(第2光拡散層60)中において占める面積の割合(充填割合)、を表す。したがって、式(23)が満たされる場合、第2光拡散層60のシート面に直交する方向からの第2光拡散層60の視野において、第2光拡散剤63が第2基材61中を占める割合は91%未満となる。そして、第1光拡散層50について説明したように、式(23)が満たされる場合には、一つの第2光拡散剤63が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重ならないようにすることが可能となり、上述した図6に示す理想的な光拡散層60を得ることが可能となる。
また、言い換えれば、この式(23)の右辺は、第2基材61の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に第2基材61を透過する光が第2光拡散剤63に衝突する平均の回数である。したがって、第1光拡散層50の場合と同様に、式(23)中の右辺は、0.45以上で有ることが好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。
さらに、上述した第1光拡散層50と同様に、上述した式(23)を満たすような場合であっても、第2基材61の厚み(第2基材61と第2光拡散剤63とのみによって第2光拡散層60が形成される本実施の形態においては、第2光拡散層60の厚み相当)Ta2が厚ければ、図7に示すように、一つの第2光拡散剤63の中心63aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重なり得る。そこで、本実施の形態においては、一つの第2光拡散剤63の中心63aが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重なることがないよう、上述した第1光拡散層50と同様に、第2光拡散層60の第2基材61の厚みTa2は、以下の式(24)を満たすようになっている。式(24)が満たされる場合には、平均粒径D2を有する一つの第2光拡散剤63の中心が、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、当該一つの第2光拡散剤63とは別の第2光拡散剤63と重ならないようにすることができる
Ta2<=1.8×D2 ・・・式(24)
なお、式(24)によって、第2基材61の厚みTa2の上限側の条件が設定されるが、その一方で、第2基材61の厚みTa2は、第2光拡散剤の平均粒径D2以上となっていなければならない。
ところで、このような第2光拡散剤63としては、第1光拡散剤53と同様に、有機ビーズ、無機ビーズあるいは硝子ビーズ等の公知の光拡散剤を用いることができる。また、第2基材61の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
ここで、第2光拡散剤63の屈折率nc2が第2基材61の屈折率na2より小さい場合には、図10を参照して第1光拡散層50について説明したのと同様に、第2光拡散剤63に入射する光束LFは、一旦集光させられることなく、広い範囲に拡散させられるようになる。一方、第2光拡散剤63の屈折率nc2が第2基材61の屈折率na2より大きい場合には、図11を参照して第1光拡散層50について説明したのと同様に、第2光拡散剤63に入射する光束LFは、一旦集光させられ、その後に広い範囲に拡散させられるようになる。上述したように、一つの単位拡散要素(この場合、第2光拡散剤63)に入射した光束LFがその後に通過する範囲S内に、当該光束LFが次に入射すべき他の単位拡散要素が入り込むように配置されていることが好ましい。つまり、第2光拡散層60によって集光点を形成しないように透過光を拡散することができれば好ましい場合がある。したがって、第2光拡散剤63に用いられる材料は、第2光拡散剤63の屈折率nc2が第2基材61の屈折率na2より小さくなるよう、第2光拡散剤63および第2基材61に用いられる材料を決定されるようにしてもよい。
次に、このようにそれぞれ構成され得る第1光拡散層50および第2光拡散層60との関係について説明する。
第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値と、第2光拡散層60の第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値と、が相違していることが好ましい。そして、第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値が、第2光拡散層60の第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割ることによって得られる値よりも大きいことがさらに好ましい。これらの知見は、本件発明者による以下の実験結果に基づくものである。
本件発明者は、まず、第1の実験として、基材の屈折率nと光拡散剤の屈折率ncとの関係に基づく拡散度合いについて検討した。屈折率nを有した基材中に含まれた屈折率ncを有する光拡散剤へ、均一な輝度分布を有する光束が入射した場合の、光束のその後の光路についてシミュレーションした。シミュレーションは、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncを種々変更して、行った。なお、シミュレーションにおいて採用した基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料の屈折率の値の範囲内とした。具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、共に、1.45以上1.60以下とした。
シミュレーション結果に基づき、各光拡散剤から出射される出射光の輝度を種々の測定角度から調査するとともに、半値角を検討した。ここで測定角度とは、測定方向と、光拡散剤への光束の入射方向と、がなす角度のことである。また、半値角とは、ピーク輝度の半分の輝度を有するようになる測定角度のことである。
図12に、各光拡散剤および基材の屈折率比と半値角との関係を、グラフとして示す。図12に示すグラフにおいて、各光拡散剤および基材の屈折率比を横軸に取り、測定された半値角を縦軸に取っている。また、図中の○印は、基材の屈折率nが光拡散剤の屈折率ncよりも大きい場合、すなわち、光拡散剤に入射した光束が集光させられることなく広い範囲に拡散させられる場合の結果である。一方、図中の×印は、基材の屈折率nが光拡散剤の屈折率ncよりも小さい場合、すなわち、光拡散剤に入射した光束がいったん集光した後に広い範囲に拡散させられる場合の結果である。
なお、「光拡散剤および基材の屈折率比」とは、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncのうちの大きい方の屈折率の値を基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncのうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値としている。したがって、○印については、光拡散剤および基材の屈折率比」とは、基材の屈折率nを光拡散剤の屈折率ncで割った値となる。一方、×印については、「光拡散剤および基材の屈折率比」とは、光拡散剤の屈折率nを基材の屈折率ncで割った値となる。
既知のように、スネルの法則から、界面への入射角度θ1と界面からの出射角度θ2との間には、以下の式(25)の関係が成り立つ。ここで、式(25)中のn1は、界面の入光側領域をなす材料が有する屈折率の値であり、式(25)中のn2は、界面の出光側領域をなす材料が有する屈折率の値である。
n1×sinθ1=n2×sinθ2 ・・・式(25)
式(25)を変形した式(26)から理解されるように、入射角度が同一である場合、出射角度は、界面の入光側領域をなす材料が有する屈折率n1の、界面の出光側領域をなす材料が有する屈折率n2に対する比が大きくなるにつれて、大きくなっていく。
θ2=sin-1((n1/n2)×sinθ1) ・・・式(26)
したがって、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合のいずれの場合においても、光拡散剤および基材の屈折率比が大きくなるにつれて(基材の屈折率nに対する光拡散剤ncの屈折率の比が1から離れるにつれて)、光拡散剤からの出射光がより広い範囲に拡散させられるようになった。また、図12に示す実験結果とも合致するように、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合(図12における集光有)、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合(図12における集光無)のいずれの場合においても、光拡散剤および基材の屈折率比が大きくなるにつれて、半値角がより大きくなる。すなわち、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも大きい場合、および、光拡散剤の屈折率ncが基材の屈折率nよりも小さい場合のいずれの場合においても、入射光束LFが拡散される度合いは、光拡散剤および基材の屈折率比が大きいほど、大きくなっていく。
また、ここで注目すべきは、図12に示すように、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncが市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料の屈折率の値の範囲内にある場合、より具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncが共に1.45以上1.60以下の範囲内となっている場合、言い換えると、光拡散剤および基材の屈折率比が1以上1.10(=1.60/1.45)以下の範囲内となっている場合、光拡散剤の屈折率ncおよび基材の屈折率nのいずれが大きいかに関わらず、基材中に含まれた光拡散剤の拡散度合いは、光拡散剤および基材の屈折率比が大きいほど、大きくなる。すなわち、いったん集光させて拡散させる場合(図1の実線)か、集光させることなく拡散させる場合(図1の二点鎖線)か、を区別することなく、基材中に含まれた光拡散剤の拡散度合いの大小を、光拡散剤および基材の屈折率比によって評価することができる。
次に、本件発明者は、第2の実験として、基材の屈折率nと当該基材中に含まれる光拡散剤の屈折率ncとの屈折率比がそれぞれ異なる複数の光拡散フィルムを作製した。そして、各光拡散フィルムについて、実際に光を投射して種々の測定角度から輝度を測定した。ここで測定角度とは、測定方向と光拡散フィルムのフィルム面への垂線とがなす角度のことである。なお、光拡散フィルムの厚さは、各光拡散フィルム間で略同一にした。また、光拡散フィルムにおける光拡散剤の平均粒径は、各光拡散フィルム間で略同一にした。さらに、光拡散フィルムにおける光拡散剤の量は、各光拡散フィルム間で略同一にした。
ここで、実験用の光拡散フィルムに用いられた材料は、市販されている透過型スクリーン用の材料として今日において現実的に用いられ得る材料を採用している。具体的には、基材の屈折率nおよび光拡散剤の屈折率ncは、共に、1.45以上1.60以下であった。
実験結果を測定角度に対する輝度分布として図13に示す。図13において、点線は、光拡散フィルムにおける光拡散剤および基材の屈折率比y=1.10である場合の輝度分布を示している。このような光拡散剤および基材の屈折率比yは、実際に透過型スクリーンにおいて用いられ得る光拡散フィルムにおいて最も大きい典型的な値である。また、図13において、一点鎖線は、光拡散フィルムにおける光拡散剤および基材の屈折率比y=1.01である場合の輝度分布を示している。このような光拡散剤および基材の屈折率比yは、実際に透過型スクリーンにおいて用いられ得る光拡散フィルムにおいて小さい範囲に属する典型的な値である。
図13に一点鎖線で示すように、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2は、光拡散剤および基材の屈折率比yが大きい場合の輝度分布CL1よりも変化がなだらかである点において好ましい。しかしながら、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2は、測定角度が大きくなると、つまり斜めから光拡散フィルムを見ると、輝度が低くなるという不都合がある。
一方、図13に点線で示すように、光拡散剤および基材の屈折率比yが大きい場合の輝度分布CL1においては、光拡散剤および基材の屈折率比yが小さい場合の輝度分布CL2に比べ、大きな測定角度における輝度が高く維持される点において好ましい。しかしながら、ピーク輝度、つまり光拡散フィルムのフィルム面への垂線に沿った方向から測定した輝度が突出し過ぎている。また、ピーク輝度を有するようになる測定角度の周辺において、わずかな測定角度の変化で輝度が大幅に変化してしまうという不都合があり、いわゆるホットスポット現象を生じ得る。
また、図13の実線は、含有される光拡散剤の重量比をそのままにしながら、輝度分布CL1を呈する光拡散フィルムの厚さを半分にして得られたシートと、含有される光拡散剤の重量比をそのままにしながら、輝度分布CL2を呈する光拡散フィルムの厚さを半分にして得られたシートと、を積層した光拡散フィルムの輝度分布CL3を示している。したがって、この光拡散フィルムの厚みは、輝度分布CL1を呈する光拡散フィルムおよび輝度分布CL2を呈する光拡散フィルムの厚みと略同一となっている。また、この光拡散フィルムに含まれた光拡散剤の平均粒径は、輝度分布CL1を呈する光拡散フィルムおよび輝度分布CL2を呈する光拡散フィルムに含まれた光拡散剤の平均粒径と略同一となっている。さらに、この光拡散フィルムに含まれた光拡散剤の総量は、輝度分布CL1を呈する光拡散フィルムおよび輝度分布CL2を呈する光拡散フィルムに含まれた光拡散剤の量と略同一となっている。
図13に実線で示すように、グラフ上において、輝度分布CL3は、輝度分布CL1と輝度分布CL2との間に位置している。具体的には、輝度分布CL3はなだらかに変化している。また、輝度分布CL3においては、大きな測定角度での輝度が比較的に高く維持されている。したがって、光拡散フィルム内に、光拡散剤および基材の屈折率比が大きい層と、光拡散剤および基材の屈折率比小さい層と、を設けることにより、理想的な輝度分布を実現することができる。
すなわち、本実施の形態に当てはめると、第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層50における第1光拡散剤53および第1基材51の屈折率比)y1と、第2光拡散層60の第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層60における第2光拡散剤63および第2基材61の屈折率比)y2と、が相違していることが好ましい。
また、第1の実験結果を考慮すると、光拡散剤および基材の屈折率比が大きい場合には、光拡散剤および基材の屈折率比が小さい場合に比べ、当該光拡散剤に入射した光束LFを広い範囲に拡散させることができる。本実施の形態に当てはめると、第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層50における第1光拡散剤53および第1基材51の屈折率比)y1が大きければ、第1光拡散剤53に入射した光束LFのその後の通過範囲を広い範囲に広げることができる。したがって、一つの第1光拡散剤53に入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63を入り込ませやすくすることができる。この結果、第1光拡散剤53によって拡散させられる光を、第2光拡散剤63によって効率的にさらに拡散させることができる。
以上のことから、第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層50における第1光拡散剤53および第1基材51の屈折率比)y1と、第2光拡散層60の第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層60における第2光拡散剤63および第2基材61の屈折率比)y2と、が相違していることが好ましい。そして、第1光拡散層50の第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの大きい方の屈折率の値を第1基材51の屈折率na1および第1光拡散剤53の屈折率nc1のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第1光拡散層50における第1光拡散剤53および第1基材51の屈折率比)y1が、第2光拡散層60の第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの大きい方の屈折率の値を第2基材61の屈折率na2および第2光拡散剤63の屈折率nc2のうちの小さい方の屈折率の値で割って得られた値(第2光拡散層60における第2光拡散剤63および第2基材61の屈折率比)y2よりも大きいことがさらに好ましい。
さらに、第1光拡散層50の個々の第1光拡散剤53に入射した光束LFがその後に通過する範囲S内に、第2光拡散層60の個々の第2光拡散剤63が入り込むようにするためには、例えば図10および図11から理解できるように、第2光拡散層60中の第2光拡散剤63の平均粒径は小さいことが好ましい。第1光拡散層50の第1光拡散剤53の平均粒径が、第2光拡散層60の第2光拡散剤63の平均粒径よりも大きいことが、とりわけ第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1よりも大きい場合に、好ましい。
このような第1光拡散層50と、中間層41と、第2光拡散層60と、を含む光拡散フィルム40は、種々の公知の製造方法を用いて製造され得る。例えば、好ましい製造方法として、バーコートを用いた方法があげれらる。この方法においては、まず、光拡散剤を分散させられたUV硬化性樹脂やEB硬化性樹脂等の樹脂をバーコート法によりシート上に塗布し、その後、樹脂の種類に応じた適切な処理を施すことによって樹脂を硬化させる。このような方法を用いることにより、一つ以上の光拡散層を積層した光拡散フィルムを作製することもできる。
ところで、例えば、バーコートを用いた方法によって光拡散フィルム40を製造した場合、第1光拡散層50の第1基材51と中間層41の基材42との間に界面が形成され得り、また、中間層41の基材42と第2光拡散層60の第2基材61との間に界面が形成され得る。このように、各層50,41,60の間に界面が形成される場合には、当該界面を通過する光は、当該界面において屈折する。
ここで、中間層41の基材42の屈折率ndは、第1基材51の屈折率na1よりも小さくなっていることが好ましい。この場合、図14に示すように、第1基材51と中間層41の基材42との界面を通過する光束LF11aは、当該界面で屈折し、屈折しなかった場合の光束LF11bよりも広い範囲に拡散させられる。したがって、一つの第1光拡散剤53に入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63を入り込ませやすくすることができ、第2光拡散層60の光拡散機能を効果的に発揮させると言う観点において都合がよい。
また、第2基材61の屈折率na2は、中間層41の基材42の屈折率ndよりも小さくなっていることが好ましい。この場合、図13に示すように、中間層41の基材42と第2基材61との界面を通過する光束LF11aは、当該界面で屈折し、屈折しなかった場合の光束LF11cよりも広い範囲に拡散させられる。したがって、一つの第1光拡散剤53に入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63を入り込ませやすくすることができ、第2光拡散層60の光拡散機能を効果的に発揮させると言う観点において都合がよい。
その一方で、互いに隣接する第1光拡散層50の第1基材51と、中間層41の基材42と、を同一材料から形成する等して、第1光拡散層50の第1基材51と中間層41の基材42との間に界面が形成されないようにしてもよい。このような光拡散フィルム40は、例えば、共押し出しにより、製造され得る。図15に示す例においては、第1光拡散剤53が片寄って配置されている部分から第1光拡散層50が形成され、その他の部分から中間層41が形成されている。そして、第1光拡散層50の第1基材51と中間層41の基材42とが同一材料から一体に形成され、第1光拡散層50(第1基材51)と中間層41(基材42)との間に界面(境界)が存在しない。なお、共押し出し成形法を用いて、互いに隣接する第2光拡散層60の第2基材61と、中間層41の基材42と、を同一材料から形成するようにしてもよい。
このような共押し出し成形によれば、第1光拡散層50の第1基材51および中間層41の基材42、あるいは、中間層41の基材42および第2光拡散層60の第2基材61が、同一材料から一体に形成された光拡散フィルム40を容易かつ安価に形成することができる。また、共押し出し成形法を用いた場合、三つ以上の層、例えば、第1光拡散層50と、中間層41と、第2光拡散層60と、を備え、各層の基材が同一材料から一体的に形成された光拡散フィルム40をも、容易かつ安価に製造することができる。
次に、第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1よりも大きい場合における、第1光拡散層50と中間層41と第2光拡散層60とを備える光拡散フィルム40の設計方法について詳述する。
第1光拡散剤53の屈折率nc1が第1基材51の屈折率na1よりも大きい場合、第1光拡散層50の第1光拡散剤53に入射した光束LFは一旦集光し、その後に拡散する。図1を用いて説明したように、第2光拡散層60の個々の第2光拡散剤63の光拡散機能をより効果的に発揮させるためには、一つの第1光拡散剤53へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63が入り込むように配置されていることが好ましい。この場合、第2光拡散剤63の全表面が、第1光拡散剤53によって拡散させられる光束LFをさらに拡散させることに寄与し得るようになるからである。
そして、第1光拡散層50と第2光拡散層60との間に中間層41が配置されている本実施の形態においては、一つの第1光拡散剤53へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤53から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63が入り込み得るようにすることが好ましい。一つの第1光拡散剤53へ入射した光束LFが、当該第1光拡散剤53から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2光拡散剤63が入り込み得るようにするには、第1基材51中の最出光側に配置された第1光拡散剤53、および、第2基材61中の最入光側に配置された第2光拡散剤63を基準にして、光拡散フィルム40を設計することが好ましい。第1光拡散剤53に入射した光束LFは、当該第1光拡散剤53を出射して集光した後、次第に広い範囲に拡散していく。したがって、最も近接して配置された第1光拡散剤53および第2光拡散剤63を基準にして、当該第1光拡散剤53へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該第2光拡散剤63が入り込むよう、光拡散フィルム40を設計することが好ましい。
すなわち、第1基材51中に含まれた複数の第1光拡散剤53の平均粒径をD1とし、第2基材61中に含まれた複数の第2光拡散剤63の平均粒径をD2として、第1基材51中の最出光側に位置し粒径D1を有する第1光拡散剤53へ光学シート29のシート面(光拡散フィルム40のフィルム面)に直交する方向から入光した光束LFが、第1光拡散剤53から出射して集光した後に通過する領域S内に、第2基材61中の最入光側に位置し粒径D2を有する第2光拡散剤63が入り込み得るよう、光拡散フィルム40が構成されていることが好ましい。
このような第1光拡散層50および第2光拡散層60を備えた光拡散フィルム40の設計方法について、図16を用いてより具体的に説明する。図16においては、上述したように、第1光拡散剤53の平均粒径をD1とし、第1基材51に含まれ粒径がD1である第1光拡散剤53の焦点距離をF1とし、第2光拡散剤63の平均粒径をD2としている。また、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さをL2とする。なお、この長さL2は、第1光拡散層50の出光側に隣接するとともに第2光拡散層60の入光側に隣接するようにして第1光拡散層50と第2光拡散層60との間に中間層41が設けられた本実施の形態において、中間層の厚みTdに相当する。
第1光拡散層50(第1基材51)内の最出光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤53への入射光束LFが、集光後の通過領域S内に、第2基材61(第2光拡散層60)内の最入光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤63を接するようにして含み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(27)が成り立つ。
D1:F1=D2:(L2+D1/2+ D2/2−F1) ・・・式(27)
したがって、第1光拡散層50(第1基材51)内の最入光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤53への入射光束LFの通過領域Sが、第2基材61(第2光拡散層60)内の最出光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤63を含み得るようにするには、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2が以下の式(28)を満たすようにすればよい。
L2≧((D1+D2)×F1/D1)−(D1+D2)/28 ・・・式(28)
ただし、以上の検討は、図16に示すように、第1光拡散剤53の中心53aと第2光拡散剤63の中心63aとが、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において、重なるように配置されている場合について、行われている。一方、図6に示すように、第2光拡散剤63が、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な面に沿って、隙間を空けずに隣り合うように第2基材61内に配置されている第2光拡散層60(図6参照)を考慮すると、図17に示すように、第2光拡散剤63の中心63aは、光拡散フィルム40のフィルム面と平行な面において、当該第2光拡散剤63の粒径の半分だけ第1光拡散剤53の中心53aからずれ得る。
このように、その中心63aが光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向において第1光拡散剤53の中心53aと重ならないような第2光拡散剤63が、第1光拡散剤53から出光した光束LFの通過領域S内に接するようにして入り込み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(29)が成り立つ。
D1:F1=2×D2:(L2+D1/2+ D2/2−F1) ・・・式(29)
したがって、光拡散フィルム40のフィルム面に沿った面上において、(光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向からの視野において)、第1光拡散層50(第1基材51)内の最出光側に配置され粒径D1を有する第1光拡散剤53の中心53aと、第2基材61(第2光拡散層60)内の最入光側に配置され粒径D2を有する第2光拡散剤63の中心63aとが第2光拡散剤63の平均粒径D2の半分だけずれているような場合に、当該第1光拡散剤53への入射光束LFの通過領域Sが当該第2光拡散剤63を含み得るようにするには、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2が以下の式(30)を満たすようにすればよい。
L2≧((D1+2×D2)×F1/D1)−(D1+D2)/2 ・・・式(30)
ここで、第1光拡散剤53の焦点距離(集光距離)F1について検討する。
図18および図19に示すように、略球形状を有する光拡散剤59に入射した光は、厳密には、一点に集光させられるわけではない。このような現象は収差と呼ばれており、光拡散剤59への入射位置が中心から表面側へずれるにしたがって、焦点距離Fはしだいに短くなっていく。このとき、光拡散剤59の屈折率ncと光拡散剤59を含有する基材の屈折率nとの比が異なれば、収差の程度も同様に異なる。本件発明者は、光拡散剤59の屈折率ncと基材の屈折率nとの比を種々の値に変更し、各比における焦点距離の変化について調査した。
図18は、光拡散剤59の屈折率ncと光拡散剤59を含有する基材の屈折率nとの比がある値になっている場合における、光拡散剤59の各位置に入射する光の光路を示す図である。また、図19は、図18に示す場合における、光拡散剤59への入射位置と、各入射位置に入射した光の焦点距離との関係を示すグラフである。図19における横軸は、光拡散剤59の半径(D/2)に対する、入射方向に直交する方向に沿った入射位置のずれ量r(図15参照)の比である。すなわち、光拡散剤59の中心に入射した光の入射位置比は0であり、光拡散剤59に接するよう光拡散剤59の表面に入射した光の入射位置比は1となる。また、図19における縦軸は、光拡散剤59の中心近傍に入射した光の焦点距離に対する、各入射位置に入射した光の焦点距離の比である。すなわち、光拡散剤59の中心近傍に入射した光の焦点距離比は略1となる。
図19に示すように、入射位置比が0より大きく0.9以下である入射光については、焦点距離の変動はほとんどなく、焦点距離は略一定である。一方、入射位置比が0.9を超えると、焦点距離が大きく変動するようになる。そこで表1に、光拡散剤59への入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsおよび入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを、それぞれ光拡散剤59の粒径Dに対する比として示す。なお、表1には、光拡散剤59の屈折率ncと光拡散剤59を含有する基材の屈折率nとの比(屈折率比)を10通りに変化させ、各屈折率比に対する結果を示している。
ところで、光拡散剤59への入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsは、スネルの法則を用いて算出することができる。具体的には、各屈折率比の界面に入射角が90°で入射する光として、図18における角度θを以下の式(31)により算出する。
θ=sin-1(n/nc) ・・・式(31)
次に、式(32)により、入射位置比が1である入射光の焦点距離Fsを算出することができる。
Fs=(tanθ)×D/2=(tan(sin-1(n/nc)))×D/2
・・・式(32)
一方、光拡散剤59への入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frは、当該入射光の光路をシミュレーションし、当該シミュレーションされた光路から焦点距離を実測することにより求めた。そして、基材の屈折率nに対する光拡散剤59の屈折率ncの屈折率比(x=nc/n)を横軸にとり、焦点距離Frの粒径Dに対する比を縦軸にとったグラフ(図20)上に、結果をプロットした。図20に示されているように、屈折率比(x=nc/n)に対応した焦点距離Frの粒径Dに対する比の変動は、以下の式(33)でよく近似される(相関係数0.9983)。
Fr/D=
(exp(7x4)−6exp(7x3)+exp(8x2)−7exp(7x)+2exp(7))/2
・・・式(33)
したがって、式(34)により、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Frを算出することができる。
Fr=D×
(exp(7x4)−6exp(7x3)+exp(8x2)−7exp(7x)+2exp(7))/2
・・・式(34)
ここで、式(28)および式(30)中における、粒径がD1の第1光拡散剤53の焦点距離F1として、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Fr(式(34))を用いることができる。
上述したように、第1光拡散剤53に入射した光束LFに含まれる略90%の光束が、焦点距離Frにおいて、実質的に集光する。すなわち、第1光拡散剤53に入射する光束LFの輝度分布が均一であれば、この光束LF中に含まれる前記略90%の光束も均一輝度を有するようになる。したがって、焦点距離Frが適用された式(28)および式(30)が満たされる場合には、一つの第1光拡散剤53から出射される光束LFが、一つの第2光拡散剤63に均一に入射し得るようになり、当該第2光拡散剤63の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
一方、焦点距離Fsが適用された式(28)および式(30)が満たされる場合、第1光拡散剤53の両端に接するように入射する光(入射位置比1の光)のその後の通過光路内に、一つの第2光拡散剤63が入り込み得る。しかしながら、図18、図19および表1から理解できるように、焦点距離Fsは焦点距離Frよりも大幅に短くなる。したがって、焦点距離Fsが適用された式(28)および式(30)が満たされ、一つの第2光拡散剤63が、第1光拡散剤53の両端に接するように入射した光(入射位置比1の光)の光路間に入り込んだとしても、第1光拡散剤53に入射した光束LFの略90%をなすとともに均一な輝度を有し得る前記略90%の光束LFの通過領域内に入り込まない可能性が十分にある。この場合、前記略90%の光束LFは、一つの第2光拡散剤63の表面の一部のみに片寄って入射し、この第2光拡散剤63の光拡散機能を効果的に発揮させることができないだけでなく、シンチレーションを引き起こし得る。したがって、上述した式(28)および式(30)に対し、Fr(式(34))を適用することが好ましい。
ここで、式(34)で表されるFrを第1基材51中に混入された粒径がD1で第1光拡散剤53の焦点距離F1として、式(28)および式(30)を書き直すと、以下の式(35)および式(36)が得られる。なお、式(35)および式(36)中のxaは、第1基材51の屈折率na1に対する第1光拡散剤53の屈折率nc1の比(この場合は、xa=nc1/na1)である。
L2≧((exp(7xa4)−6exp(7xa3)+exp(8xa2)−7exp(7xa)+2exp(7))×(D1+D2)/2)−(D1+D2)/2
・・・式(35)
L2≧((exp(7xa4)−6exp(7xa3)+exp(8xa2)−7exp(7xa)+2exp(7))×(D1+2×D2)/2)−(D1+D2)/2
・・・式(36)
以上のようにして、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第2基材51(第2光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2の下限値を設定することができる。一方、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2は、長ければ長い程良いというものではない。例えば、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2が長過ぎると、解像度が悪化してしまうという不具合が生じる。この観点から、光拡散フィルム40のフィルム面に直交する方向に沿った第1基材51(第1光拡散層50)の出光側面から第2基材61(第2光拡散層60)の入光側面までの長さL2は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることがさらにより好ましい。
以上のような本実施の形態によれば、光拡散フィルム40の第1光拡散層50において、第1光拡散剤53は、その中心53aが光拡散フィルム53のフィルム面に直交する方向において他の第1光拡散剤と重ならないよう、第1基材51中に配置されている。すなわち、一つの第1光拡散剤53に入射した光束LFが、その後、他の第1光拡散剤53に入射することが抑制されている。また、第1光拡散層50の出光側に配置された第2光拡散層60も、第1光拡散層50と同様に構成されている。この結果、画質をいたずらに劣化させてしまうことを効果的に抑制することができる。その一方で、第1光拡散層50の一つの第1光拡散剤53に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束LFが次に入射すべき第2光拡散層60の第2光拡散剤63が入り込むことが可能となっている。これにより、第2光拡散層60の第2基材61中に分散されている各第2光拡散剤63の光拡散機能を効果的に発揮させることができるようになっている。すなわち、例えば第1光拡散層50に第1光拡散剤53を大量に含有させたり、第2光拡散層60に第2光拡散剤63を大量に含有させたりすることなく、光拡散フィルム40全体としての光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
なお、上述した第1の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上述した第1の実施の形態において、第1光拡散層50の第1基材51中に一種類の光拡散剤53が分散され、第2光拡散層60の第2基材61中に一種類の光拡散剤63が分散されている例を示したが、これに限られない。第1基材51中に、上述した第1光拡散剤53とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第1光拡散剤53の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第1光拡散剤53の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。同様に、第2基材61中に、上述した第2光拡散剤63とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した第2光拡散剤63の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した第2光拡散剤63の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。ただし、さらなる光拡散剤も、上述した構成、例えば上述した設計方法にしたがっていることが好ましい。また、上述した実施の形態においては、第1光拡散層50および第2光拡散層60のみが光拡散剤53,63を含有している例を示したが、これに限られない。例えば、第1光拡散層50と第2光拡散層60との間に配置された中間層41が光拡散剤を含有するようにしてもよい。さらに、一つの第1光拡散剤53および一つの第2光拡散剤63が一種類の材料からなっている必要はない。例えば、複数種類の材料から構成され、部分的に異なる屈折率を有する光拡散剤(例えば、特開平2−120702)を用いるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態において、光拡散フィルム40が、二つの光拡散層50,60と、当該二つの光拡散層50,60間に設けられた中間層41と、を有する例を示したが、これに限られない。光拡散フィルムが、三つ以上の光拡散層を有するようにしてもよい。
図21および図22には、このような変形の一例を示している。なお、図21に示す光拡散フィルム40aおよび図22に示す光拡散フィルム40bにおいて、図1乃至図20を用いて説明した第1の実施の形態と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
図21に示す例において、光拡散フィルム40aは、第1乃至第3の光拡散層50,60,70を有している。また、第1光拡散層50と第2光拡散層60との間に第1の中間層41が設けられ、第2光拡散層60と第3光拡散層70との間に第2の中間層41aが設けられている。すなわち、上述した実施の形態における光拡散フィルム40の出光側に第2中間層41aと第3光拡散層70とをさらに設けた点において異なる。このうち、第3光拡散層70の構成は、上述した実施の形態の第1および第2光拡散層50,60の構成と同様にすることができる。また、第2の中間層41aの構成は、上述した実施の形態の中間層41と同様にすることができる。さらに、第2の中間層41aを介した第2光拡散層60と第3光拡散層70との関係は、上述した実施の形態の中間層41を介した第1光拡散層50と第2光拡散層60との関係と同様に構成することができる。
図22に示す例において、光拡散フィルム40bは、複数の第1光拡散層50と、複数の第2光拡散層60と、を備えている。そして、各第1光拡散層50の出光側には、当該各第1光拡散層50に隣接して中間層41が設けられている。また、各第2光拡散層60の出光側には、当該各第2光拡散層60に隣接して第2中間層41aが設けられている。言い換えると、光拡散フィルム40bは、第1光拡散層50と、第1光拡散層50の出光側に隣接して配置された中間層41と、中間層41の出光側に隣接して配置された第2光拡散層60と、第2光拡散層60の出光側に隣接して配置された第2中間層41aと、を有する複数の単位積層体55を備えている。
このような複数の単位積層体55を含む光拡散フィルム40bは、公知の製造方法、例えば共押し出し成形法等を利用して製造することができる。具体例としては、共押し出し成形法で単位積層体55を形成するとともに、フィードブロックを用い、得られた単位積層体55を重ね合わせることにより、効率的に光拡散フィルム40bを作成することができる。
ここで、光拡散層フィルム40bは、単位積層体55のみから構成される必要はなく、その他の層を含んでいてもよい。また、単位積層体55の構成は、図示する例に限定されるものではない。また、複数の中間層41をすべて同一に構成してもよいし、例えば厚みが異なる等、それぞれを異なるように構成してもよい。同様に、複数の第2中間層41aをすべて同一に構成してもよいし、例えば厚みが異なる等、それぞれを異なるように構成してもよい。さらに、中間層41と第2中間層41aとを同様に構成してもよい。さらに、中間層41および第2中間層41aのいずれか、あるいは、両方を省くことも可能である。
さらに、上述した実施の形態において、中間層41および第2中間層41aは単一な基材42,42aからなる単一の層として形成された例を示したが、これに限られず、中間層41および第2中間層41aは複数の基材からなる積層体として形成されてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光拡散フィルム40が、光学シートの出光側面をなすようにして、三つの光学シートのうちの最出光側に配置された光学シートのみに含まれる例を示したがこれに限られない。光拡散フィルム40は、最出光側に配置される光学シート以外の光学シートに含まれるようにしてもよい。また、光拡散フィルム40は、いずれかの光学シートの出光側面をなす必要はない。さらに、光拡散フィルムが複数の光学シートにそれぞれ含まれるようにしてもよい。さらに、複数の光拡散フィルム40が、一つの光学シートに含まれるようにしてもよい。さらに、透過型スクリーンに含まれる光学シートの数は特に限定されない。
このような変形の一例を図23および図24に示す。なお、図23および図24に示す透過型スクリーン20a,20bにおいて、図1乃至図22を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例と同一に構成され得る部分には同一符号を付している。
図23に示す例において、透過型スクリーン20aは、第1乃至第3の光学シート21a,25,29を備えている。光拡散フィルム40は、第1光学シート21aにおける光偏向層22の入光側と、第3光学シート29における支持層31の出光側と、に設けられている。また、図24に示す例において、透過型スクリーン20bは、第1および第2の光学シート21,25aを備えている。光拡散フィルム40は、第2光学シート25aにおける視野角拡大層26の出光側に設けられている。
さらに、上述した実施の形態において、光拡散フィルム40が、背面投射型表示装置10の透過型スクリーン20に適用される例を示したが、これに限られず、その他の公知な映像表示システムの表示面に適用してもよい。
<第2の実施の形態>
次に、主に図25乃至図29を参照し、光拡散フィルムおよび透過型スクリーンの第2の実施の形態について説明する。なお、図25乃至図29において、図2乃至図24を用いて説明した第1の実施の形態およびその変形例と同一部分には同一符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
図25に示すように、本実施の形態における透過型スクリーン120は、第1乃至第3の光学シート21,25,129を備えている。第1光学シート21および第2光学シート25は、上述した第1の実施の形態の対応する構成要素と同一に構成することができる。また、このような透過型スクリーン120は、図2および図3に示す背面投射型表示装置10の構成部材として用いられ得る。
次に、第3光学シート129について詳述する。
図25および図26に示すように、本実施の形態における第3光学シート129は、出光側に配置された光拡散フィルム140と、入光側に配置された支持層31と、を有している。図26に示されているように、光拡散フィルム140と支持層31との間に接合層34が設けられ、この接合層34を介して、光拡散フィルム140と支持層31とが互いに接合されている。このうち、支持層31および接合層34は、上述した第1の実施の形態の対応する構成要素と同一に構成することができる。
次に、光拡散フィルム140について詳述する。
図26に示すように、本実施の形態における光拡散フィルム140は、基材151と、基材151内に分散させられ略球形状を有する複数の光拡散剤153と、を有する光拡散層150を複数(図示する例では、5層)備えている。また、光拡散フィルム140は、各光拡散層150の間に設けられ、光拡散層150と隣接して配置された隣接層141を複数(図示する例では、4層)備えている。言い換えると、本実施の形態において、光拡散フィルム140は、隣接層141と隣接層141の入光側または出光側に隣接した光拡散層150とを有する複数の単位積層体155と、複数の単位積層体155の出光側または入光側に配置された光拡散層150と、を備えている。
なお、図26に示す例においては、一つの隣接層141と、当該隣接層141の出光側に隣接する一つの光拡散層150と、によって単位積層体155が構成されるようになっている。一方、図27に示す例においては、一つの隣接層141と、当該隣接層141の入光側に隣接する一つの光拡散層150と、によって単位積層体155が構成されるようになっている。
本実施の形態において、隣接層141は、透光性を有する単一の樹脂からなる単一基材42によって形成されている。このような隣接層141の材料として、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。また、複数の隣接層141をすべて同一に構成してもよいし、例えば厚みが異なる等、それぞれを異なるように構成してもよい。
次に、光拡散層150について説明する。なお、本実施の形態における光拡散層150は、上述した第1の実施の形態における第1光拡散層50および第2光拡散層60と略同様に構成され得る。また、複数の光拡散層150は同一に構成されている。
上述したように、光拡散層150は、基材151と、基材151内に混入された複数の光拡散剤153と、を有している。そして、光拡散層150の光拡散剤153に入射した光は、基材151と、基材151に含有され略球形状の外輪郭を有する光拡散剤153と、の界面で屈折して進行方向を変える。これにより、光拡散層150を透過する光は、二次元的に指向性無く拡散させられるようになる。
ところで、個々の光拡散剤153の光拡散機能が効果的に発揮されるようにするには、図1を用いて説明したように、一つの光拡散剤153に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束LFが次に入光すべき光拡散剤153を入り込ませることが有効である。逆に言えば、一つの光拡散剤153に入光した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該光束が次に入光すべき光拡散剤153の外輪郭の大部分を入り込ませることができないのであれば、当該光束LFが次に入光すべき光拡散剤153の光拡散機能を効果的に発揮させることができない場合があるだけでなく、当該光束LFが次に入光すべき光拡散剤153自体が画質の劣化を引き起こす原因にもなり得る。このことを考慮すると、画質をいたずらに劣化させてしまうことがないようにするため、一つの光拡散層150内において、一つの光拡散剤153に入射した光束LFが、その後、他の光拡散剤153に入射することなく、当該光拡散層150から出射するようにすることが有用である。
そこで、図7を参照して第1の実施の形態において説明した第1光拡散層50と同様に、本実施の形態においては、一つの光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重ならないようになっている(図7参照)。言い換えると、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向(図7における矢印の方向)からの視野において、一つの光拡散剤153の中心153aが、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153の輪郭に入り込まないようになっている。ただし、より理想的なのは、図26に示すように、一つの光拡散剤153が、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重ならないようになっていることである。すなわち、図26に示された光拡散層150においては、光拡散剤153が、光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面に沿って、互いに隣り合うように基材151内に配置されている、あるいは、複数の光拡散剤153が光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面上に並べられている。
具体的には、本実施の形態において、一つの光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重ならないようにすべく、式(37)を満たすようになっている。
0.91>(3×Ta×C×Sa)/(2×D×Sc) ・・・式(37)
なお、式(37)中において、光拡散剤153の平均粒径をDとし、光拡散剤153を含んだ基材151中における光拡散剤153の重量比(基材151と光拡散剤153とのみによって光拡散層150が形成される本実施の形態においては、光拡散層150に対する光拡散剤153の重量比に相当)をCとし、光拡散剤153の比重をScとし、光拡散剤153を含んだ基材151の比重(基材151と光拡散剤153とのみによって光拡散層150が形成される本実施の形態においては、光拡散層150の比重に相当)をSaとし、基材151の厚みをTaとしている。
この式(37)の右辺は、第1の実施の形態において説明した式(12)および式(23)と同様に、光拡散層150のシート面に直交する方向からの視野において個々の光拡散剤153が占める面積Acを、基材151中に分散されたすべての光拡散剤153の個数分足し合わせた総面積Atの、基材151の表面積に対する割合である。つまり、各光拡散剤153が、光拡散層150のシート面に直交する方向において、他の光拡散剤とまったく重なり合わない場合に、光拡散剤150が、光拡散層150のシート面に直交する方向からの視野において、基材151(光拡散層150)中において占める面積の割合(充填割合)、を表す。したがって、式(37)が満たされる場合、光拡散層150のシート面に直交する方向からの光拡散層150の視野において、光拡散剤153が基材151中を占める割合は91%未満となる。そして、第1の実施の形態において説明したように、式(37)が満たされる場合には、一つの光拡散剤153が、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重ならないようにすることが可能となり、上述した図26に示す理想的な光拡散層150を得ることが可能となる。
また、言い換えれば、この式(37)の右辺は、基材151の入光側面の任意の位置に入射するとともにシート面(フィルム面)に直交する方向に基材151を透過する光が光拡散剤153に衝突する平均の回数である。したがって、第1の実施の形態における第1光拡散層50および第2光拡散層60と同様に、式(37)中の右辺は、0.45以上で有ることが好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。
さらに、上述した第1の実施の形態の第1光拡散層50および第2光拡散層60と同様に、上述した式(37)を満たすような場合であっても、基材151の厚み(基材151と光拡散剤153とのみによって光拡散層150が形成される本実施の形態においては、光拡散層150の厚み相当)Taが厚ければ、図7に示すように、一つの光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重なり得る。そこで、本実施の形態においては、一つの光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重なることがないよう、上述した第1の実施の形態の第1光拡散層50および第2光拡散層60と同様に、光拡散層150の基材151の厚みTaは、以下の式(38)を満たすようになっている。式(38)が満たされる場合には、平均粒径D2を有する一つの光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、当該一つの光拡散剤153とは別の光拡散剤153と重ならないようにすることができる
Ta<=1.8×D ・・・式(38)
なお、式(38)によって、基材151の厚みTaの上限側の条件が設定されるが、その一方で、基材151の厚みTaは、光拡散剤153の平均粒径D以上となっていなければならない。
ところで、このような光拡散剤153としては、上述した第1の実施の形態の第1光拡散剤53および第2光拡散剤63と同様に、有機ビーズ、無機ビーズあるいは硝子ビーズ等の公知の光拡散剤を用いることができる。また、基材151の材料として、上述した第1の実施の形態の第1基材51および第2基材61と同様に、例えば、アクリル、アクリル/スチレン共重合、スチレン、ポリカーボネイト、アクリロニトリル/スチレン共重合等の樹脂を用いることができる。
ここで、光拡散剤153の屈折率ncが基材151の屈折率naより小さい場合には、図10を参照して第1の実施の形態で説明したように、光拡散剤153に入射する光束LFは、一旦集光させられることなく、広い範囲に拡散させられるようになる。一方、光拡散剤153の屈折率ncが基材151の屈折率naより大きい場合には、図11を参照して第1の実施の形態で説明したように、光拡散剤153に入射する光束LFは、一旦集光させられ、その後に広い範囲に拡散させられるようになる。上述したように、一つの単位拡散要素(この場合、光拡散剤153)に入射した光束LFがその後に通過する範囲S内に、当該光束LFが次に入射すべき他の単位拡散要素が入り込むように配置されていることが好ましい。つまり、光拡散層150によって集光点を形成しないように透過光を拡散することができれば好ましい場合がある。したがって、光拡散剤153に用いられる材料は、光拡散剤153の屈折率ncが基材151の屈折率naより小さくなるよう、光拡散剤153および基材151に用いられる材料を決定されるようにしてもよい。
このような複数の光拡散層150と、複数の隣接層141と、を含む光拡散フィルム140は、種々の公知の製造方法を用いて製造され得る。例えば、まず、光拡散剤を分散させられたUV硬化性樹脂やEB硬化性樹脂等の樹脂を、隣接層141をなすようになるシート上にバーコート法により塗布し、その後、樹脂の種類に応じた適切な処理を施すことによって樹脂を硬化させる。これにより、硬化された樹脂によって形成された光拡散層150を含む、単位積層体155が製造される。次に、フィードブロックを用い、得られた単位積層体155を重ね合わせることにより、効率的に光拡散フィルムを作成することができる。図示する例とは異なって単位積層体155のみから光拡散フィルム140が形成されている場合、フィードブロックを用いて光拡散フィルム140を作製することがとりわけ有用となる。
ところで、このような方法によって光拡散フィルム140を製造した場合、単位積層体155内において、光拡散層150の基材151と隣接層141の基材142との間に界面が形成され得る。その一方で、互いに隣接する光拡散層150の基材151と隣接層141の基材142とを同一材料から形成する等して、光拡散層150の基材151と隣接層141の基材142との間に界面が形成されないようにしてもよい。このような光拡散フィルム140は、例えば、共押し出しにより、製造され得る。図27に示す例において、光拡散剤153が片寄って配置されている部分から光拡散層150が形成され、その他の部分から隣接層141が形成されている。そして、光拡散層150の基材151と隣接層141の基材142とが同一材料から一体に形成され、光拡散層150(基材151)と隣接層141(基材142)との間に界面(境界)が存在しない。
なお、図27に示す例においては、一つの隣接層141の基材142と、当該隣接層141の入光側に隣接する一つの光拡散層150の基材151と、が一体に形成されるようになっている。しかしながら、このような態様に限定されるものではなく、一つの隣接層141の基材142と、当該隣接層141の出光側に隣接する一つの光拡散層150の基材151と、が一体に形成されるようにしてもよい。
このような共押し出し成形によれば、容易かつ安価に、光拡散層150の基材151および隣接層141の基材142を同一材料から一体に形成することができる。また、共押し出し成形法を用いた場合、光拡散層150および隣接層141含む三つ以上の層を備え、各層の基材が同一材料から一体的に形成された光拡散フィルム140をも、容易かつ安価に製造することができる。
次に、光拡散剤153の屈折率ncが基材151の屈折率naよりも大きい場合における、複数の光拡散層150と複数の隣接層141とを備える光拡散フィルム140の設計方法について詳述する。
光拡散剤153の屈折率ncが基材151の屈折率naよりも大きい場合、光拡散層150の光拡散剤153に入射した光束LFは一旦集光し、その後に拡散する。図1を用いて説明したように、各光拡散層150の個々の光拡散剤150の光拡散機能をより効果的に発揮させるためには、一つ光拡散層150の光拡散剤153へ入射した光束LFがその後に通過する領域S内に、当該一つの光拡散層150に隣り合う出光側に配置された次の光拡散層150の光拡散剤153が入り込むように配置されていることが好ましい。この場合、光束LFの通過領域S内に入り込んだ出光側の光拡散層150光拡散剤153の全表面が、入光側の光拡散層150の光拡散剤153によって拡散させられる光束LFをさらに拡散させることに寄与し得るようになるからである。
そして、隣り合う二つの光拡散層150の間に隣接層141が配置されている本実施の形態においては、一つ光拡散層150の光拡散剤153へ入射した光束LFが、前記光拡散剤153から出射して集光した後に通過する領域S内に、前記一つの光拡散層150に隣り合う出光側に配置された次の光拡散層150の光拡散剤153が入り込み得るようにすることが好ましい。一つ光拡散層150の光拡散剤153へ入射した光束LFが、前記光拡散剤153から出射して集光した後に通過する領域S内に、前記一つの光拡散層150に隣り合う出光側に配置された次の光拡散層150の光拡散剤153が入り込み得るようにするには、前記一つの光拡散層150の基材151中の最出光側に配置された光拡散剤153、および前記一つの光拡散層150に隣り合う出光側に配置された次の光拡散層150の基材151中の最入光側に配置された光拡散剤153を基準にして、光拡散フィルム140を設計することが好ましい。一つの光拡散剤153に入射した光束LFは、当該光拡散剤153を出射して集光した後、次第に広い範囲に拡散していく。したがって、異なる二つの光拡散層に含まれた二つの光拡散剤であって、最も近接して配置された二つの光拡散剤150を基準として、光拡散フィルム140を設計することが好ましい。
すなわち、基材151中に含まれた複数の光拡散剤153の平均粒径をDとして、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿って隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150の最出光側に配置され粒径がDである光拡散剤153へ、第3光学シート129のシート面(光拡散フィルム140のフィルム面)に直交する方向から、入射した光束LFが当該光拡散剤から出射して集光した後に通過する領域S内に、隣り合う二つの光拡散層のうちの出光側の光拡散層150の最入光側に配置され粒径がDである光拡散剤153が入り込み得るよう、光拡散フィルム140が構成されていることが好ましい。
このような光拡散層150を備えた光拡散フィルム140の設計方法について、図28を用いてより具体的に説明する。図28においては、上述したように、光拡散剤153の平均粒径をDとし、基材151中に含まれ粒径がDである光拡散剤153の焦点距離をFとしている。また、隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150の基材151の出光側面から出光側の光拡散層150の基材151の入光側面までの光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿った長さをL1とする。なお、この長さL1は、入光側の光拡散層150の出光側に隣接するとともに出光側の光拡散層150の入光側に隣接するようにして隣り合う二つの光拡散層間に隣接層141が設けられた本実施の形態において、隣接層141の厚みTdに相当する。
光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150(基材151)内の最出光側に配置され粒径Dを有する光拡散剤153への入射光束LFが、集光後の通過領域S内に、出光側の光拡散層150の最入光側に配置され粒径Dを有する光拡散剤153を接するようにして含み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(39)が成り立つ。
D:F=D:(L1+D/2+ D/2−F) ・・・式(39)
したがって、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に隣接する二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150(基材151)の最出光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153への入射光束LFの通過領域Sが、出光側の光拡散層150(基材150)の最入光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153を含み得るようにするには、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿った当該隣り合う二つの光拡散層150の離間長さL1が以下の式(40)を満たすようにすればよい。
L1≧(2×F)−D ・・・式(40)
ただし、以上の検討は、図28に示すように、入光側の光拡散層150の光拡散剤153の中心153aと、出光側の光拡散層150の光拡散剤153の中心153aと、が光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向において、重なるように配置されている場合について、行われている。一方、図26に示すように、光拡散剤153が、光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面に沿って、隙間を空けずに隣り合うように基材151内に配置されている光拡散層150(図26参照)を考慮すると、図29に示すように、二つの隣り合う光拡散層150にそれぞれ混入された二つの光拡散剤153の中心153aは、光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面において、光拡散剤153の粒径の半分(D/2)だけ互いからずれ得る。
このように、隣り合う二つの光拡散層150にそれぞれ含有された光拡散剤153の中心153aが、光拡散フィルム140のフィルム面と平行な面において、すなわち、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向からの視野において、重なり合わないような場合にも、入光側の光拡散層150(基材151)の最出光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153への入射光束LFの通過領域Sが、出光側の光拡散層150(基材150)の最入光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153を接するようにして含み得るとすると、三角形の相似関係から以下の式(41)が成り立つ。
D:F=2×D:(L1+D/2+ D/2−F) ・・・式(41)
したがって、光拡散フィルム140のフィルム面に沿った面上において(光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向からの視野において)、隣り合う二つの光拡散層150にそれぞれ含有された光拡散剤153が互いから平均粒径の半分だけずれているような場合に、入光側の光拡散層150(基材151)の最出光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153への入射光束LFの通過領域Sが、出光側の光拡散層150(基材150)の最入光側に位置し粒径Dを有する光拡散剤153を含み得るようにするには、第3光学シート129のシート面に直交する方向に沿った当該隣り合う二つの光拡散層150の離間長さL1が以下の式(42)を満たすようにすればよい。
L≧(3×F)−D ・・・式(42)
ここで、式(40)および式(42)中における、粒径がDの光拡散剤153の焦点距離Fとして、入射位置比が0.9である入射光の焦点距離Fr(式(34))を用いることができる。
上述したように、光拡散剤153に入射した光束LFに含まれる略90%の光束が、焦点距離Frにおいて、実質的に集光する。すなわち、光拡散剤153に入射する光束LFの輝度分布が均一であれば、この光束LF中に含まれる前記略90%の光束も均一輝度を有するようになる。したがって、焦点距離Frが適用された式(40)および式(42)が満たされる場合には、入光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153から出射される光束LFが、出光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153に均一に入射し得るようになり、当該出光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153の光拡散機能を効果的に発揮させることができる。
一方、焦点距離Fsが適用された式(40)および式(42)が満たされる場合、入光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153の両端に接するように入射する光(入射位置比1の光)のその後の通過光路内に、出光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153が入り込み得る。しかしながら、図18、図19および表1から理解できるように、焦点距離Fsは焦点距離Frよりも大幅に短くなる。したがって、焦点距離Fsが適用された式(40)および式(42)が満たされ、出光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153が、入光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153の両端に接するように入射した光(入射位置比1の光)の光路間に入り込んだとしても、入光側の光拡散層150に含まれた光拡散剤153に入射した光束LFの略90%をなすとともに均一な輝度を有し得る前記略90%の光束LFの通過領域内に入り込まない可能性が十分にある。この場合、前記略90%の光束LFは、出光側の光拡散層150に含まれた一つの光拡散剤153の表面の一部のみに片寄って入射し、この光拡散剤153の光拡散機能を効果的に発揮させることができないだけでなく、シンチレーションを引き起こし得る。したがって、上述した式(40)および式(42)に対し、Fr(式(34))を適用することが好ましい。
ここで、式(34)で表されるFrを基材151中に混入された粒径がD1で光拡散剤153の焦点距離Fとして、式(40)および式(42)を書き直すと、以下の式(43)および式(44)が得られる。なお、式(43)および式(44)中のxは、基材の屈折率naに対する光拡散剤の屈折率の比(この場合は、x=nc/na)である。
L1≧((exp(7x4)−6exp(7x3)+exp(8x2)−7exp(7x)+2exp(7))
×D)−D
・・・式(43)
L1≧(((exp(7x4)−6exp(7x3)+exp(8x2)−7exp(7x)+2exp(7))
×D×3)/2)−D
・・・式(44)
以上のようにして、隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150の基材151の出光側面から出光側の光拡散層150の基材151の入光側面までの光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿った長さL1の下限値を設定することができる。一方、隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150の基材151の出光側面から出光側の光拡散層150の基材151の入光側面までの光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿った長さL1、長ければ長い程良いというものではない。例えば、この長さL1が長過ぎると、解像度が悪化してしまうという不具合が生じる。この観点から、隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150の基材151の出光側面から出光側の光拡散層150の基材151の入光側面までの光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に沿った長さL1は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることがさらにより好ましい。
以上のような本実施の形態によれば、光拡散フィルム140中の一つの光拡散層150において、光拡散剤153は、その中心153aが光拡散フィルム150のフィルム面に直交する方向において同一の光拡散層150内の他の光拡散剤153と重ならないよう、基材151中に配置されている。すなわち、一つの光拡散剤153に入射した光束LFが、その後、同一基材151内の他の光拡散剤153に入射することが抑制されている。その一方で、光拡散フィルム140のフィルム面に直交する方向に離間して隣り合う二つの光拡散層のうちの入光側の光拡散層150(基材151)内の最出光側に配置され粒径Dを有する光拡散剤153への入射光束LFが集光後に通過する領域S内に、出光側の光拡散層150内に含まれた光拡散剤153であって、光束LFが次に入射すべき光拡散剤153が入り込むことが可能となっている。これにより、出光側の光拡散層150の基材151中に分散されている各光拡散剤153の光拡散機能を効果的に発揮させることができるようになっている。すなわち、各光拡散層150に光拡散剤153を大量に含有させることなく、光拡散フィルム140全体としての光拡散機能を増強することができる。これにより、過度のゲインの低下や過度のコントラストの低下等、不必要な映像の劣化を回避しながら、シンチレーション等の映像のギラツキを抑制することができる。
なお、上述した第2の実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上述した第2の実施の形態において、光拡散層150の基材151中に一種類の光拡散剤153が分散されている例を示したが、これに限られない。基材151中に、上述した光拡散剤153とは異なる種類のさらなる光拡散剤、例えば、上述した光拡散剤153の平均粒径とは異なる平均粒径を有した光拡散剤や、上述した光拡散剤153の屈折率とは異なる屈折率を有した光拡散剤が、さらに分散されていてもよい。ただし、さらなる光拡散剤も、上述した構成、例えば上述した設計方法にしたがっていることが好ましい。また、上述した実施の形態においては、光拡散層150のみが光拡散剤153を含有している例を示したが、これに限られない。例えば、光拡散層150間に配置された隣接層141が光拡散剤を含有するようにしてもよい。さらに、一つの光拡散剤153が一種類の材料からなっている必要はない。例えば、複数種類の材料から構成され、部分的に異なる屈折率を有する光拡散剤(例えば、特開平2−120702)を用いるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態において、光拡散フィルム140が、五つの光拡散層150と、四つの隣接層141と、を有する例を示したが、これに限られない。光拡散フィルム140に含まれる光拡散層150および隣接層141の数を適宜変更することができる。
さらに、上述した実施の形態において、隣接層141は単一な基材142からなる単一の層として形成された例を示したが、これに限られず、隣接層141は複数の基材からなる積層体として形成されてもよい。
さらに上述した実施の形態において、光拡散フィルム140が、光学シートの出光側面をなすようにして、三つの光学シートのうちの最出光側に配置された光学シートのみに含まれる例を示したがこれに限られない。光拡散フィルム140は、最出光側に配置される光学シート以外の光学シートに含まれるようにしてもよい。また、光拡散フィルム140は、いずれかの光学シートの出光側面をなす必要はない。さらに、光拡散フィルムが複数の光学シートにそれぞれ含まれるようにしてもよい。さらに、複数の光拡散フィルム140が、一つの光学シートに含まれるようにしてもよい。さらに、透過型スクリーンに含まれる光学シートの数は特に限定されない。
さらに、上述した実施の形態において、光拡散フィルム140が、背面投射型表示装置10の透過型スクリーン120に適用される例を示したが、これに限られず、その他の公知な映像表示システムの表示面に適用してもよい。