JP5827794B2 - 走査干渉分光を用いた複雑な表面構造のプロファイリング - Google Patents

走査干渉分光を用いた複雑な表面構造のプロファイリング Download PDF

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Description

本発明は、複雑な表面構造を有する対象物の表面トポグラフィおよび/または他の特性を、走査干渉分光法を用いて測定することに関する。複雑な表面構造としては、たとえば薄膜、材料が異なる別個の構造、または干渉顕微鏡の光学分解能では十分に分解できない別個の構造が挙げられる。このような測定は、フラット・パネル・ディスプレイ・コンポーネント、半導体ウェハ計測学、および、その現場での薄膜および異材料分析の特徴付けに関連する。
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、以下の米国仮出願に対して優先権を主張する。米国特許出願第10/452,615号明細書(2003年3月6日出願)、発明の名称「高さ走査干渉分光法を用いた複雑な表面構造のプロファイリング」、米国特許出願第10/452,465号明細書(2003年3月6日出願)、発明の名称「高さ走査干渉分光法からの信号を用いた複雑な表面構造のプロファイリング」、および米国特許出願第10/539,437号明細書(2004年1月26日出願)、発明の名称「干渉パターン・マッチング・テンプレートを用いた表面プロファイリング」。これらはすべて、参照により本明細書において組み込まれる。
干渉分光技術は、対象物の表面プロファイルを測定するために広く用いられている。測定を行なうために、干渉計では、対象とする表面から反射される測定波面と、基準表面から反射される基準波面とを組み合わせて、インターフェログラムを生成する。インターフェログラムにおけるフリンジは、対象とする表面と基準表面との間の空間的な変化を示す。
走査型干渉計は、干渉計の基準脚と測定脚との間の光路長差(OPD)を、干渉波面のコヒーレンス長に匹敵するか、または、それよりも長い範囲に亘って走査して、インターフェログラムを測定するために用いられる各カメラ画素に対して走査干渉分光信号を生成する。白色光源を用いるなどすれば、制限されたコヒーレンス長を生成することができる。これは、走査型白色光干渉分光法(SWLI)と言われる。典型的な走査型白色光干渉分光法(SWLI)の信号は、少数のフリンジがゼロ光路差(OPD)位置付近に局所化したものである。信号の特徴は典型的には、正弦波の搬送波変調(「フリンジ」)に釣鐘形のフリンジ・コントラスト包絡線が伴ったものである。SWLI計測学の基礎となる従来の考え方は、局所化したフリンジを用いて、表面プロファイルを測定することである。
SWLI処理技術には、2つの原理的な傾向がある。第1のアプローチは、包絡線のピークまたは中心の位置を見つけることである。その際、この位置は2本ビーム干渉計のゼロ光路差(OPD)に対応すると仮定している。2本ビーム干渉計の一方のビームは、対象物表面から反射する。第2のアプローチは、信号を周波数ドメインに変換して、波長に対する位相変化レートを計算することである。その際、基本的に線形である勾配は、対象物位置に正比例していると仮定している。たとえば、米国特許第1,398,113号明細書(ピータ・デ・グルート(Peter de Groot))を参照されたい。この後者のアプローチは、周波数ドメイン解析(FDA)と言われる。
残念ながら、このような仮定は、薄膜が設けられた試験対象物に適用した場合には機能しなくなることが考えられる。その理由は、反射が、最上面だけでなくその下の膜/基板界面でも起こるからである。最近、米国特許第6,545,763号明細書(S.W.キムおよびG.H.キム)に、このような構造に対処するための方法が開示された。この方法では、薄膜構造に対するSWLI信号の周波数ドメイン位相プロファイルを、種々の膜厚および表面高さに対して推定された周波数ドメイン位相プロファイルに、適合させる。正確な膜厚および表面高さが、最適化を同時に行なうことによって決定された。
発明者は、走査干渉分光信号の中に大量の情報が存在することを見出した。この情報は、従来の処理においてはほとんど無視されているものである。複雑な表面構造の場合、たとえば薄膜の場合だと、従来の処理技術では、性能が低下する恐れがある。従来の技術は、フリンジ・コントラスト包絡線におけるピーク箇所を特定すること、または周波数ドメイン位相プロファイルに対する勾配を計算することに基づいている。しかし、本明細書で開示する新規な処理技術によれば、表面高さ情報および/またはその複雑な表面構造についての情報を、抽出することができる。
たとえば、表面高さ情報が、フリンジ・コントラスト包絡線におけるピークに直接関係していると仮定しない場合、本発明のいくつかの実施形態においては、表面高さが変化することによって、基準走査位置に対する走査干渉分光信号が変化し、そうでない場合には、走査干渉分光信号の形状は保たれる。特に、複雑な表面構造を特徴付ける際には、走査干渉分光信号の形状が有用である。その理由は、信号の形状は、表面高さには無関係だからである。同様に、周波数ドメインでは、表面高さが変化することにより周波数ドメイン位相プロファイルに線形項が導入されることを、いくつかの実施形態において仮定している。これは、たとえ周波数ドメイン・プロファイルそれ自体が線形ではない場合にも、仮定される。しかし表面高さが変化しても、周波数ドメイン振幅プロファイルは変わらない。したがって、複雑な表面構造を特徴付ける際には、周波数ドメイン振幅プロファイルが特に有用である。
複雑な表面構造が特徴付けられれば、表面高さを効率的に決定することができる。たとえば、走査干渉分光信号と、複雑な表面構造に対応する形状を有するモデル信号との間の相互相関によって、表面高さに対応する走査座標においてピークを生成することができる。同様に、周波数ドメインにおいては、複雑な表面構造に起因する位相の影響を、周波数ドメイン位相プロファイルから差し引くことができる。また表面高さを、従来のFDA解析を用いて抽出することができる。
複雑な表面構造の例としては、以下のものが挙げられる。単純な薄膜(この場合、たとえば、対象とする可変パラメータは、膜厚、膜の屈折率、基板の屈折率、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい);多層の薄膜;回折するか、その他の場合には複雑な干渉効果を生成する鋭いエッジおよび表面特徴;未処理の表面荒さ;未処理の表面特徴、たとえばその他の点では滑らかな表面上のサブ波長幅溝;異なる材料(たとえば、表面に薄膜および固体金属の組み合わせが含まれていてもよい。この場合、ライブラリは、両方の表面構造タイプを含み、薄膜または固体金属を、対応する周波数ドメイン・スペクトルに対するマッチングによって自動的に特定してもよい);光学活性たとえば蛍光性を生じる表面構造;表面の分光学特性、たとえば色彩および波長依存性の反射率;表面の偏光依存性の特性;干渉信号の乱れを招く表面または変形可能な表面特徴の歪み、振動、または運動。
いくつかの実施形態においては、走査干渉分光信号を生成するために使用される光の制限されたコヒーレンス長は、白色光源、より一般的には広帯域の光源に基づいている。他の実施形態においては、光源は単色であってもよく、制限されたコヒーレンス長は、高い開口数(NA)を用いて試験対象物に光を送り、および/または試験対象物から光を受け取ることによって生成することができる。NAが高いことによって、光線は、ある角度範囲に亘って試験表面に接触し、OPDを走査したときに記録信号内に種々の空間周波数成分が生成される。さらなる実施形態においては、制限されたコヒーレンスを両方の効果の組み合わせから生成することができる。
制限されたコヒーレンス長の原因も、走査干渉分光信号内に情報が存在することに対する物理的な基礎である。すなわち、走査干渉分光信号は、複雑な表面構造についての情報を含む。その理由は、この信号は、光線が、多くの異なる波長および/または多くの異なる角度で試験表面に接触することによって生成されるからである。
本明細書で説明する処理技術では、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報(走査干渉分光信号それ自体を含む)を、試験対象物の複数のモデルに対応する情報と比較する。複数のモデルは、試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化される。たとえば、試験対象物を、薄膜としてモデリングすることができ、一連の特性を、薄膜の厚みに対する一連の値とすることができる。比較されている情報は、たとえば、周波数ドメイン位相プロファイルについての情報を含んでもよく、さらには、走査干渉分光データの形状についての情報および/または周波数ドメイン振幅プロファイルについての情報を含んでもよい。さらに、比較を、第1の表面箇所における表面高さではなく、複雑な表面構造に絞るために、複数のモデルはすべて、試験対象物の第1の表面箇所における固定された表面高さに対応することができる。比較それ自体は、実際の走査干渉分光信号からの情報と各モデルからの情報との間の類似性を示すメリット関数の計算に基づくことができる。たとえば、メリット関数は、走査干渉分光データから導出可能な情報と一連の特性によってパラメータ化された関数との間の適合性を示し得る。
さらに、いくつかの実施形態においては、一連の特性は、第1の箇所とは異なる第2の箇所における試験対象物の特性に対応する。このような試験対象物としては、たとえば、第1の表面箇所に対する界面信号に影響する回折性の表面構造が挙げられる。そのため、複雑な表面構造を、走査干渉分光信号に対応する第1の表面箇所における表面高さ以外の何々である、と言う場合が多いが、複雑な表面構造は、走査干渉分光信号に対応する第1の表面箇所から離間して配置された表面高さ特徴に対応していてもよい。
本明細書で説明する方法および技術は、半導体チップのイン・プロセス計測測定に対して用いることができる。たとえば、ウェハ上の誘電体層を化学的機械的研磨(CMP)する間に、走査干渉分光測定を、非接触の表面トポグラフィ測定用半導体ウェハに対して用いることができる。CMPは、誘電体層に対して滑らかな表面を形成するために使用される。滑らかな表面は、精密な光リソグラフィにとって好適である。干渉分光トポグラフィ法の結果に基づいて、CMPに対するプロセス条件(たとえば、パッド圧力、研磨用スラリ組成など)を調整して、表面不均一性を許容限界内に保つことができる。
次に、本発明の種々の態様および特徴を要約する。
一般的に、一態様においては、本発明の特徴は、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較することを含む方法であって、複数のモデルは、試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化される方法である。
本発明の実施形態は、以下の特徴のうちのどれを含んでいてもよい。
本方法はさらに、比較に基づいて試験対象物に対する正確な特性を決定することを含んでいてもよい。
本方法はさらに、比較に基づいて第1の表面箇所に対する相対的な表面高さを決定することを含んでいてもよい。相対的な表面高さを決定することは、どのモデルが、試験対象物に対する特性のうちの正確な特性に対応するかを比較に基づいて決定すること、正確な特性に対応するモデルを用いて相対的な表面高さを計算することを含んでもよい。
たとえば、正確な特性に対応するモデルを用いることは、走査干渉分光信号からのデータを補正して、正確な特性から生じる影響を減らすことを含んでもよい。データを補正することは、正確な特性から生じる位相の影響を、試験対象物に対する走査干渉分光信号の変換分の位相成分から取り出すことを含み、正確な特性に対応するモデルを用いることはさらに、正確な特性から生じる位相の影響を取り除いた後に、変換分の位相成分から相対的な表面高さを計算することを含んでもよい。
他の例では、正確な特性に対応するモデルを用いて相対的な表面高さを計算することは、試験対象物に対する情報と正確な特性に対応するモデルに対する情報とを比較するために使用される相関関数におけるピークの位置を決定することを含んでもよい。
本方法はさらに、さらなる表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と複数のモデルに対応する情報とを比較することを含んでいてもよい。また本方法はさらに、比較に基づいて試験対象物に対する表面高さプロファイルを決定することを含んでいてもよい。
比較することは、走査干渉分光信号から導出可能な情報と各モデルに対応する情報との間の類似性を示す1つまたは複数のメリット関数を計算することを含んでもよい。
比較することは、走査干渉分光信号から導出可能な情報を、モデルに対応する情報に対する表現にフィッティングすることを含んでもよい。
複数のモデルに対応する情報は、試験対象物の各モデルに対応する走査干渉分光信号の変換分(たとえばフーリエ変換分)の少なくとも1つの振幅成分についての情報を含んでもよい。同様に、走査干渉分光信号から導出可能な情報は、試験対象物に対する走査干渉分光信号の変換分の少なくとも1つの振幅成分についての情報を含んでもよい。
比較することは、試験対象物に対する少なくとも1つの振幅成分の相対的強さと、各モデルに対する少なくとも1つの振幅成分の相対的強さとを比較することを含んでもよい。
複数のモデルに対応する情報は、変換分に対する座標の関数であってもよい。たとえば、複数のモデルに対応する情報は、各モデルに対する変換分の振幅プロファイルを含んでもよい。さらに、比較することは、試験対象物に対する走査干渉分光信号の変換分の振幅プロファイルと、モデルに対する各振幅プロファイルとを比較することを含んでもよい。
比較することはさらに、試験対象物に対する走査干渉分光信号の変換分の位相プロファイルにおける情報と、各モデルに対する変換分の位相プロファイルにおける情報とを比較することを含んでもよい。たとえば、位相プロファイルにおける情報は、変換座標に関する位相プロファイルの非線形性および/または位相ずれ値についての情報を含んでもよい。
走査干渉分光信号から導出可能でおよび比較されている情報は、数であってもよい。あるいは、走査干渉分光信号から導出可能でおよび比較されている情報は、関数であってもよい。たとえば関数は、走査位置の関数であってもよいし、空間周波数の関数であってもよい。
試験対象物に対する情報を、試験対象物に対する走査干渉分光信号を空間周波数ドメインに変換(たとえばフーリエ変換)することから得てもよい。試験対象物に対する情報は、変換分の振幅プロファイルおよび/または変換分の位相プロファイルについての情報を含んでもよい。
試験対象物に対する情報は、試験対象物の第1の箇所における走査干渉分光信号の形状に関していてもよい。たとえば、試験対象物に対する情報は、走査干渉分光信号の形状におけるフリンジ・コントラストの振幅に関していてもよい。また試験対象物に対する情報は、走査干渉分光信号の形状におけるゼロ交差間の相対間隔に関していてもよい。また試験対象物に対する情報を、走査位置の関数として表現し、関数を走査干渉分光信号の形状から得てもよい。
比較することは、試験対象物に対する情報と各モデルに対する情報との間の相関関数(たとえば複素相関関数)を計算することを含んでもよい。比較することは、各相関関数における1つまたは複数のピーク値を決定することをさらに含んでもよい。そして本方法はさらに、最大のピーク値に対応するモデルのパラメータ化に基づいて試験対象物に対する正確な特性を決定することを含んでいてもよい。代替的に、または加えて、本方法はさらに、相関関数における少なくとも1つのピーク値に対する座標に基づいて試験対象物の第1の表面箇所における相対的な表面高さを決定することを含んでいてもよい。
複数のモデルは、試験対象物の第1の箇所における固定された表面高さに対応していてもよい。
一連の特性は、試験対象物の少なくとも1つの物理パラメータに対する一連の値を含んでもよい。たとえば、試験対象物は、厚みを有する薄膜層を含み、物理パラメータは、第1の箇所における薄膜の厚みであってもよい。
一連の特性は、第1の表面箇所とは異なる第2の表面箇所における試験対象物の一連の特性を含んでもよい。たとえば、光を回折して第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号に影響する第2の表面箇所における構造を含んでもよい。ある例では、第2の表面箇所における一連の特性は、第2の箇所におけるステップ高さに対する振幅と第2の箇所に対する位置との置換を含んでもよい。他の例では、第2の表面箇所における一連の特性は、格子に対する変調深さと格子のオフセット位置との置換を含み、格子は第2の箇所に亘って延びていてもよい。
一連の特性は、試験対象物に対する一連の表面材料であってもよい。
一連の特性は、試験対象物に対する一連の表面層構成であってもよい。
走査干渉分光信号が、走査干渉分光システムによって生成されてもよく、また比較することは、走査干渉分光システムから生じる走査干渉分光信号に対する系統的な影響を明確にすることを含んでいてもよい。たとえば、系統的な影響は、走査干渉分光システムのコンポーネントからの反射時の位相変化の分散についての情報を含んでもよい。さらに本方法は、さらなる表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と複数のモデルに対応する情報とを比較することを含んでいてもよい。この場合、系統的な影響を、表面箇所の複数に対して解析してもよい。本方法はさらに、特性が既知の他の試験対象物を用いて、走査干渉分光システムの系統的な影響を校正することを含んでいてもよい。
走査干渉分光信号の生成を、試験対象物から現れる試験光を結像して検出器上で基準光と干渉させることと、試験光の干渉部分と基準光の干渉部分との間における共通の光源から検出器までの光路長差を変えることとによって行ない、試験光および基準光を共通の光源(たとえば、空間的に拡張された光源)から引き出して、走査干渉分光信号は、光路長差を変えたときに検出器によって測定される干渉強度に対応していてもよい。
試験光および基準光は、スペクトルの帯域幅が、試験光および基準光に対する中心周波数の5%より大きくてもよい。
共通の光源がスペクトルのコヒーレンス長を有し、光路長差をスペクトルのコヒーレンス長よりも長い範囲に亘って変えて、走査干渉分光信号を生成してもよい。
試験光を試験対象物上に送って検出器上に結像するために使用されるオプティクスによって、試験光に対する開口数が、0.8よりも大きな値に規定されてもよい。
本方法はさらに、走査干渉分光信号を生成することを含んでいてもよい。
他の態様においては、本発明の特徴は、コンピュータ内のプロセッサに、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較させるプログラムを有するコンピュータ読取可能な媒体を含む装置であって、複数のモデルは、試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化される装置である。
本装置は、本方法と関連して前述した特徴のどれを含んでもよい。
他の態様においては、本発明の特徴は、走査干渉分光信号を生成するように構成された走査干渉分光システムと、走査干渉分光システムに結合されて走査干渉分光信号を受け取る電子プロセッサであって、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と、試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較するようにプログラムされた電子プロセッサと、を含む装置であって、複数のモデルは、試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化される装置である。
本装置は、本方法と関連して前述した特徴のどれを含んでもよい。
一般的に、他の態様においては、本発明の特徴は、試験対象物を化学的機械的研磨することと、試験対象物の表面トポグラフィに対する走査干渉分光データを収集することと、走査干渉分光データから得られる情報に基づいて試験対象物の化学的機械的研磨に対するプロセス条件を調整することと、を含む方法である。たとえば、プロセス条件は、パッド圧力および/または研磨用スラリ組成であってもよい。好ましい実施形態においては、走査干渉分光データから得られる情報に基づいてプロセス条件を調整することは、試験対象物の少なくとも第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と、試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較することを含み、複数のモデルは、試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化されていてもよい。走査干渉分光信号の解析はさらに、最初に述べた方法とともに前述した特徴のどれを含んでもよい。
別に定義のない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語の意味は、本発明が属する分野の当業者が普通に理解するものと同じである。本明細書において参照により述べられ取り入れられた刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献と相容れない場合には、本明細書は、定義も含めて、照査される。
本発明の他の特徴、目的、および優位性は、以下の詳細な説明から明らかになる。
異なる図面における同様の参照数字は、共通の要素を指している。
干渉分光法のフロー・チャートである。 図1の干渉分光法の変形を示すフロー・チャートである。 リニック型走査型干渉計の概略図である。 ミラウ型走査型干渉計の概略図である。 対物レンズを通した試験サンプルの照明を示すダイアグラムである。 2つの極限における走査干渉分光データに対する理論的なフーリエ振幅スペクトルを示す図である。 薄膜あり/なしの2つの表面タイプを示す図である。 薄膜厚が0のSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示すである。 薄膜厚が50nmのSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示す図である。 薄膜厚が100nmのSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示す図である。 薄膜厚が300nmのSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示す図である。 薄膜厚が600nmのSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示す図である。 薄膜厚が1200nmのSi基板上のSiO膜のシミュレーションに対するメリット関数検索手順を示す図である。 最上面が常にゼロで、膜厚が0から1500nmまで画素当たり10nmの増分で一様に変化するSi上のSiO薄膜のシミュレーションに対して決定された表面および基板プロファイルを示す図である。 図14のシミュレーションと、ランダム・ノイズが付加された以外は同一のシミュレーションに対して決定された表面および基板プロファイルを示す図である(平均値128強度ビットからの2ビット二乗平均平方根)。 従来のFDA解析を用いて決定された表面高さプロファイル(図16a)と、実際のピーク/バレイ変調深さが120nmであるmm当たり2400ラインの格子に対する本明細書で説明されるライブラリ検索方法(図16b)とを示す図である。 ステップ高さ付近の種々の表面箇所に対応する画素に対する干渉信号を走査する際の十分に分解できないステップ高さによって引き起こされる歪みを示す図である。 図17の十分に分解できないステップ高さの左(図18a)および右(図18b)に対する表面箇所に対応する画素に対する周波数ドメイン位相スペクトルにおける非線形の歪みを示す図である。 十分に分解できないステップ高さに対して、従来のFDA解析を用いて(図19a)および本明細書で説明するライブラリ検索方法を用いて(図19b)決定された表面高さプロファイル示す図である。 薄膜のないベースとなるSi基板の実際の走査干渉分光信号を示す図である。 ベアSi基板に対する干渉テンプレート・パターンを示す図である。 1ミクロンのSiOがSi上に形成された薄膜構造に対する干渉テンプレート・パターンを示す図である。 図21におけるテンプレート関数に対する走査位置の関数としてのメリット関数を示す図である。 図22におけるテンプレート関数に対する走査位置の関数としてのメリット関数を示す図である。
図1に示すのは、走査干渉分光データの解析が空間周波数ドメイン内で行なわれる本発明の一実施形態を概略的に説明するフロー・チャートである。
図1を参照して、試験対象物の表面からのデータを測定するために、干渉計を用いて、基準経路と測定経路との間の光路差(OPD)を機械的または電気光学的に走査する。測定経路は、対象物表面に向けられている。OPDは、走査の開始時には、対象物表面の局所的な高さの関数である。複数のカメラ画素が、対象物表面の異なる表面箇所に対応しており、各カメラ画素に対するOPD走査中の干渉強度信号を、コンピュータが記録する。次に、異なる表面箇所のそれぞれに対して、干渉強度信号をOPD走査位置の関数として記憶した後に、コンピュータが変換(たとえばフーリエ変換)を行なって、信号の周波数ドメイン・スペクトルを生成する。スペクトルは、振幅情報および位相情報の両方を、走査範囲における信号の空間周波数の関数として含む。たとえば、このようなスペクトルを生成するための好適な周波数ドメイン解析(FDA)が、以下の文献に開示されている。共通所有の米国特許第5,398,113号明細書(ピータ・デ・グルート)、発明の名称「インターフェログラムの空間周波数解析による表面トポグラフィ測定のための方法および装置」。なお、この文献の内容は本明細書において参照により組み込まれる。
別個のステップにおいて、コンピュータは、種々の表面パラメータに対する周波数ドメイン・スペクトルに対する理論的な予測ライブラリと、干渉計に対するモデルとを生成する。これらのスペクトルは、たとえば、可能な薄膜厚み、表面材料、および表面テクスチャの範囲を網羅してもよい。好ましい実施形態においては、コンピュータは、一定の表面高さ、たとえば高さ=ゼロに対するライブラリ・スペクトルを生成する。したがって、このような実施形態においては、ライブラリに含まれる情報には、表面トポグラフィに関するものはまったくない。含まれる情報は単に、表面構造のタイプと、周波数ドメイン・スペクトルの特有の特徴を生成する際の表面構造、光学システム、照明、及び検出システムの相互作用と、に関するもののみである。代替例として、予測ライブラリを、サンプル加工品を用いて経験的に生成してもよい。他の代替例として、ライブラリは、他の機器、たとえばエリプソメータから与えられる対象物表面の事前の補足的な測定値からの情報、および対象物表面の既知の特性に関するユーザからの何らかの他の入力を用いて、未知の表面パラメータの数を減らしてもよい。補足的な測定によって補強されるライブラリ形成に対するこれらの手法である理論的モデリング、経験データ、または理論の何れかを補間によって拡張して、中間値を、ライブラリ形成の一部としてまたはライブラリ検索中にリアル・タイムで、生成してもよい。
次のステップでは、実験データと予測ライブラリとの比較を、表面構造パラメータを提供するライブラリ検索を用いて行なう。厚みが未知の膜の例の場合、単一表面のタイプ、たとえばSi上のSiOに対するライブラリは、最上面高さが常にゼロに等しいような可能性のある多くの膜厚に及んでいる。他の例は表面荒さである。この場合、調整可能なパラメータは、荒さ深さおよび/または空間周波数であってもよい。ライブラリ検索によって、表面高さとは無関係なFDAスペクトル特性に対するマッチングが得られる。このような特性はたとえば、振幅スペクトルの平均値(表面の全体的な反射率に関係する)、または空間周波数の関数としての振幅の変化(単色の高NAシステムにおいて反射光の散乱角に関係する)である。
また解析は、システムの特徴付けを含んでもよい。システムの特徴付けとしては、たとえば、表面構造および表面トポグラフィが既知の1つまたは複数の基準加工品を測定して、システム波面誤差、分散、および効率(理論的なモデルには含まれ得ない)などのパラメータを決定することが挙げられる。
さらに解析は、全体的な校正を含んでもよい。全体的な校正としては、たとえば、1つまたは複数の基準加工品を測定して、測定された表面パラメータ、たとえばライブラリ検索によって決定された膜厚と、たとえば偏光解析によって独立に決定されたこれらのパラメータに対する値との間の相関関係を決定することが挙げられる。
実験データと予測ライブラリとの比較に基づいて、コンピュータは、最良のマッチングに対応する表面モデルを特定する。コンピュータは、次に、表面パラメータ結果を数値的またはグラフィックにユーザまたはホスト・システムに表示または送信して、さらに解析またはデータ記憶ができるようにしてもよい。表面パラメータ結果を用いて、コンピュータは次に、ライブラリ検索によって特定される特性に加えて、表面高さ情報を決定してもよい。ある実施形態においては、コンピュータは、補正された位相スペクトルを生成する。これは、たとえば、実験的な位相スペクトルから、対応する理論的な位相スペクトルを直接差し引くことによって行なう。コンピュータは次に、1つまたは複数の表面点に対する局所的な表面高さを決定する。これは、空間周波数の関数としての補正された位相を解析することによって、たとえば線形フィットによって生成される係数を解析することによって行なう。その後、コンピュータは、高さデータと対応する像平面座標とから構築された完全な3次元画像を、ライブラリ検索により決定された表面特性のグラフィカル表示または数値表示とともに、生成する。
場合によっては、ライブラリ検索およびデータ収集を、反復的に行なって、結果をさらに改善することができる。具体的には、ライブラリ検索を、画素ごとにまたは領域ベースで精緻なものにすることができる。これは、局所的な表面タイプに関連して精緻にされたライブラリを形成することによって、なされる。たとえば、予備的なライブラリ検索の間に、表面にほぼ1ミクロンの薄膜があることが判明した場合には、コンピュータは、1ミクロンに近い実例値のきめの細かいライブラリを生成して、検索をさらに精緻なものにする。
さらなる実施形態においては、ユーザの関心は、予測ライブラリによってモデリングされる表面特性だけで、表面高さではないこともあり得る。この場合には、表面高さを決定するステップは行なわない。逆に、ユーザの関心は、表面高さだけで、予測ライブラリ内でモデリングされる表面特性ではないこともあり得る。この場合には、コンピュータは、実験データと予測ライブラリとの間の比較を用いて、表面特性の影響に対する実験データを補正する。その結果、表面高さが、より正確に決定される。しかし表面特性をはっきりと決定する必要も、特性を表示する必要もない。
本解析は、以下のような種々の表面解析課題に適用してもよい。その表面解析課題は、たとえば、単純な薄膜(この場合は、たとえば、対象とする可変パラメータは、膜厚、膜の屈折率、基板の屈折率、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい);多層薄膜;回折するかその他の場合には複雑な干渉効果を生成する鋭いエッジおよび表面特徴;未処理の表面荒さ;未処理の表面特徴、たとえばその他の点では滑らかな表面上のサブ波長幅の溝;異なる材料(たとえば、表面に薄膜および固体金属の組み合わせが含まれていてもよい。この場合、ライブラリは、両方の表面構造タイプを含み、薄膜または固体金属を、対応する周波数ドメイン・スペクトルに対するマッチングによって自動的に特定してもよい);光学活性たとえば蛍光性;表面の分光学特性、たとえば色彩および波長依存性の反射率;表面の偏光依存性の特性;干渉信号の乱れを招く表面または変形可能な表面特徴の歪み、振動、または運動;およびデータ取得手順に関連するデータ歪みを含む。データ取得手順はたとえば、干渉強度データを完全には包含していないデータ取得ウィンドウがある。
干渉計は、以下の特徴のどれを含んでいてもよい。高い開口数(NA)の対物レンズを有するスペクトル的に狭帯域の光源;スペクトル的に広帯域の光源;高いNA対物レンズおよびスペクトル的に広帯域の光源の組み合わせ;干渉分光顕微鏡の対物レンズであって、たとえば油/水浸漬および固体浸漬の形式を、たとえばマイケルソン(Michelson)、ミラウ(Mirau)、またはリニック型(Linnik)幾何学的配置で含む対物レンズ;複数の波長における一連の測定値;未偏光光;偏光光であって、たとえば直線、円、または構造化された偏光光。たとえば、構造化された偏光光は、たとえば、偏光マスクを必要とし、照明瞳または結像瞳の別個のセグメントに対して異なる偏光を生成することで、表面特性に起因する偏光依存性の光学的効果を明らかにしてもよい。また干渉計は、前述した全体的なシステム校正を含んでいてもよい。
理論および実験データを比較する際、ライブラリ検索は、以下のどれに基づいてもよい。周波数スペクトルにおける振幅および/または位相データ間の積または差、たとえば、平均の振幅および平均位相、平均の振幅それ自体、および平均位相それ自体の積または差;振幅スペクトルの勾配、幅および/または高さ;干渉コントラスト;DCまたはゼロ空間周波数での周波数スペクトルにおけるデータ;振幅スペクトルの非線形性または形状;位相のゼロ周波数遮断;位相スペクトルの非線形性または形状;およびこれらの基準の任意の組み合わせ。なお本明細書で用いるように、振幅および波高は交換可能に用いる。
図2に示すのは、走査干渉分光データの解析に対する他の実施形態を一般的に説明するフロー・チャートである。解析は、実験データと予測ライブラリとの間の比較が、走査座標ドメインにおける情報に基づく以外は、図1において説明したものと同様である。実験的な信号の特徴は、走査座標についての包絡線機能による振幅内の変調された擬似周期的な搬送振動であってもよい。理論および実験データを比較する際、ライブラリ検索は、以下のどれに基づいてもよい。平均の信号強さ;信号包絡線の形状、たとえば何らかの理想または基準の形状たとえばガウシアンからのずれ;包絡線機能についての搬送波信号の位相;ゼロ交差および/または信号最大および最小の相対間隔;最大および最小に対する値およびそれらの順序付け;最適な相対的走査位置に対する調整をした後のライブラリ信号と測定信号との間の相関関係のピーク値;およびこれらの基準の任意の組み合わせ。
以下、解析の詳細な数学的説明を行なうとともに、実施例を示す。第1に、典型的な走査型干渉計について説明する。第2に、走査干渉分光データに対する数学的モデルを決定することについて説明する。第3に、表面の光学特性と、このような情報を用いて種々の表面特性に対する走査干渉分光データの正確なモデルを生成する方法とについて説明する。第4に、どのように実験的な干渉分光データと予測ライブラリとを比較して、試験対象物に関する情報を得るかについて説明する。最初に、薄膜応用例について説明し、その後に、他の複雑な表面構造、具体的には、光学的に十分に分解できないステップ高さおよび格子パターンへの応用例について説明する。また、最初は空間周波数ドメインにおける解析に話を絞り、その後に、走査座標ドメインにおける解析について説明する。
図3に示すのは、リニック型の走査型干渉計である。光源(図示せず)からの照明光102は、ビーム・スプリッタ104によって部分的に透過されて、基準光106を形成し、またビーム・スプリッタ104によって部分的に反射されて、測定光108を形成する。測定光は、測定用対物レンズ110によって、試験サンプル112(たとえば、1つまたは複数の異なる材料からなる薄い単一膜または多層膜を含むサンプル)上にフォーカスされる。同様に、基準光は、基準対物レンズ114によって基準ミラー116上にフォーカスされる。好ましくは、測定用および基準対物レンズは、共通の光学特性を有する(たとえば、開口数がマッチングされている)。試験サンプル112から反射された(または散乱されたかもしくは回折された)測定光は、測定用対物レンズ110を通って逆方向に伝搬し、ビーム・スプリッタ104によって透過されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像される。同様に、基準ミラー116から反射された基準光は、基準対物レンズ114を通って逆方向に伝搬し、ビーム・スプリッタ104によって反射されて、結像レンズ118によって検出器120上に結像され、そこで測定光と干渉する。
説明を簡単にするために、図3に示す測定および基準光は、試験サンプルおよび基準ミラー上の特定の点にそれぞれフォーカスされ、その後、検出器上の対応する点上で干渉する。このような光は、干渉計の測定脚および基準脚に対する瞳平面に垂直に伝搬する照明光部分に対応する。照明光の他の部分は最終的に、試験サンプルおよび基準ミラー上の他の点を照明する。そして、これらの点は、検出器上の対応する点に結像される。図3では、このことが、破線122によって例示されている。破線122は、試験サンプル上の異なる点から現れて検出器上の対応する点に結像される主光線に対応する。主光線は、測定脚の瞳平面124の中心で交わる。瞳平面124は、測定用対物レンズ110の後側焦点面である。試験サンプルから現れる光のうち、主光線とは異なる角度で現れるものは、瞳平面124の異なる箇所で交わる。
好ましい実施形態においては、検出器12Qは、複数要素(すなわち多画素)カメラであって、試験サンプルおよび基準ミラー上の異なる点に対応する測定光と基準光との間の干渉を独立に測定する(すなわち、干渉パターンに対する空間分解能を与える)。
試験サンプル112に結合された走査ステージ126は、測定用対物レンズ110に対する試験サンプルの位置を走査する。これは、図3において走査座標によって示されている。たとえば、走査ステージは、圧電トランスデューサ(PZT)に基づくことができる。検出器120は、試験サンプルの相対的な位置が走査されているときに、光学的干渉の強度を検出器の1つまたは複数の画素において測定し、そして、その情報を解析のためにコンピュータ128に送る。
走査が行なわれる領域は、測定光が試験サンプル上にフォーカスされている領域であるため、走査によって、光源から検出器までの測定光の光路長が変化する。この変化は、測定光が試験サンプルに入射するとともに、試験サンプルから現れる角度よって異なった依存をする。その結果、測定光の干渉部分と基準光の干渉部分との間における光源から検出器までの光路差(OPD)が、走査座標ζによって増減する仕方は、測定光が試験サンプルに入射するとともに、試験サンプルから現れる角度に依存して、異なる。本発明の他の実施形態においては、基準対物レンズ114に対する基準ミラー116の位置を走査することによって(測定用対物レンズ110に対して試験サンプル112を走査する代わりに)、同じ結果を実現することができる。
このように走査座標ζとともにOPDが変化する仕方に違いがあるために、検出器の各画素内で測定される干渉信号において、コヒーレンス長が制限されることになる。たとえば、干渉信号(走査座標の関数である)は通常、空間的コヒーレンス長がλ/2(NA)のオーダの包絡線によって変調される。ここで、λは照明光の公称上の波長であり、NAは測定用および基準対物レンズの開口数である。以下でさらに説明するように、干渉信号の変調によって、試験サンプルの反射率についての角度依存性の情報が得られる。制限された空間的コヒーレンスを増加させるために、走査型干渉計内の対物レンズが規定する開口数は大きいことが好ましい。たとえば、約0.7よりも大きい(またはより好ましくは、約0.8よりも大きく、もしくは約0.9よりも大きい)。また干渉信号は、照明源のスペクトルの帯域幅に付随する制限された時間的コヒーレンス長によって変調することもできる。干渉計の構成に依存して、これらの制限されたコヒーレンス長の効果のどれか一方が優勢になる場合もあるし、それらが両方とも全体的なコヒーレンス長に実質的に影響する場合もある。
走査型干渉計の他の例は、図4に示すミラウ型干渉計である。
図4を参照して、光源モジュール205によって、照明光206がビーム・スプリッタ208に供給される。ビーム・スプリッタ208は、照明光206を、ミラウ干渉分光対物レンズ・アセンブリ210へ送る。アセンブリ210は、対物レンズ211、基準平面212(その小さい中心部分上に反射性のコーティングが施されていて、基準ミラー215を規定している)、およびビーム・スプリッタ213を含んでいる。動作中、対物レンズ211によって照明光が、試験サンプル220の方へ、基準平面212を通してフォーカスされる。ビーム・スプリッタ213によって、フォーカス光の第1の部分が基準ミラー215へ反射されて、基準光222が規定され、またフォーカス光の第2の部分が試験サンプル220に透過されて、測定光224が形成される。次に、ビーム・スプリッタ213は、試験サンプル220から反射された(または散乱された)測定光を、基準ミラー215から反射された基準光と、再結合する。そして対物レンズ211および結像レンズ230が、組み合わされた光を結像して、検出器(たとえば、マルチ画素カメラ)240上で干渉させる。図3のシステムの場合と同様に、検出器からの測定信号は、コンピュータ(図示せず)に送られる。
図4の実施形態における走査では、圧電トランスデューサ(PZT)260が、ミラウ干渉分光法の対物レンズ・アセンブリ210に結合されている。圧電トランスデューサ(PZT)260は、アセンブリ210全体を、試験サンプル220に対して、対物レンズ211の光軸に沿って走査して、カメラの各画素において走査干渉分光データI(ζ、h)が得られるように構成されている。あるいは、PZTを、アセンブリ210ではなく試験サンプルに結合して、それらの間の相対運動が得られるようにしてもよい。これは、PZTアクチュエータ270によって示されている。さらに他の実施形態においては、基準ミラー215およびビーム・スプリッタ213の一方または両方を、対物レンズ211に対して対物レンズ211の光軸に沿って移動させることによって、走査を行なってもよい。
光源モジュール205は、空間的に拡張された光源201、望遠鏡(レンズ202および203によって形成される)、レンズ202の前側焦点面(レンズ203の後側焦点面と一致する)内に配置された絞り204を含む。この配置によって、空間的に拡張された光源が、ミラウ干渉分光法の対物レンズ・アセンブリ210の瞳平面245上に結像される。これは、ケーラー(Koehler)結像の例である。絞りのサイズによって、試験サンプル220上の照明野のサイズが制御される。他の実施形態においては、光源モジュールは、空間的に拡張された光源が試験サンプル上に直接結像される配置を含んでもよい。これは、臨界結像として知られている。どちらのタイプの光源モジュールも、図1のリニック型走査干渉分光システムと一緒に用いてもよい。
本発明のさらなる実施形態においては、走査干渉分光システムを、試験サンプルについて角度依存性の散乱または回折情報を決定するために、すなわち光波散乱計測に対して、用いてもよい。たとえば、走査干渉分光システムを用いて、試験サンプルへの照明を、非常に狭い範囲の入射角(たとえば、実質的に垂直入射かそうでなければコリメートされている)のみに亘る試験入射によって行なってもよい。入射は次に、試験サンプルによって散乱または回折される。サンプルから現れる光は、カメラに結像されて、基準光と干渉する。これは前述した通りである。走査干渉分光信号内の各成分の空間周波数は、試験サンプルから現れる試験光の角度に依存して変化する。したがって、垂直な走査(すなわち、対物レンズの光軸に沿っての走査)の後にフーリエ解析を行なうことによって、対物レンズの後側焦点面に直接アクセスすることも、この面を結像することもせずに、回折光および/または散乱光の測定を、出現角度の関数として行なうことができる。実質的に垂直入射の照明を得るためには、たとえば、光源モジュールの構成を、瞳平面上に点光源が結像されるように、そうでなければ照明光が測定用対物レンズの開口数に充填される程度が減少するように、行なうことができる。光波散乱計測技術は、サンプル表面内の別個の構造、たとえば格子ライン、エッジ、または一般的な表面荒さ(これらは、光をより高い角度まで回折および/または散乱し得る)の解析に対して、有用であり得る。
本明細書の解析の大半において仮定していることは、瞳平面内での光の偏光状態が、ランダムであること、すなわちほぼ等しい量のs偏光(入射平面に直交する)およびp(入射平面に直交する)偏光の両方から構成されていることである。代替的な偏光も可能であり、たとえば純粋なs偏光などである。これはたとえば、放射状の偏光子を瞳平面に(たとえば、リニック干渉計の場合には測定対象物の後側焦点面に、およびミラウ干渉計においては共通の対物レンズの後側焦点面に)、配置することで実現してもよい。他の可能な偏光としては、放射状のp偏光、円偏光、および変調された(たとえば、一方が他方に続く2つの状態)偏光が、偏光測定に対して挙げられる。言い換えれば、試験サンプルの光学特性の解析は、それらの角度または波長依存性のみについて行なえるのではなく、それらの偏光依存性についても、または選択された偏光についても、行なうこともできる。またこのような情報を用いて、薄膜構造の特徴付けの精度を向上させてもよい。
このような偏光解析測定を実現するために、走査干渉分光システムは、瞳平面内に固定または可変の偏光子を含んでいてもよい。図4を再び参照して、たとえば、ミラウ型干渉分光システムは、瞳平面内に偏光オプティクス280を含み、試験サンプルに入射するとともに、そこから現れる光に対して、所望の偏光を選択するようになっている。さらに偏光オプティクスは、選択される偏光を変えるように再構成可能であってもよい。偏光オプティクスは、所定の偏光を選択するための偏光子、波長板、アポディゼーション・アパーチャ、および/または変調素子を含む1つまたは複数の素子を含んでもよい。さらに偏光オプティクスは、エリプソメータのデータと同様のデータを生成するために、固定されていてもよいし、構造化されていてもよいし、または再構成可能であってもよい。たとえば、s偏光のための放射状に偏光された瞳を用いた第1の測定の後に、p偏光のための半径方向に偏光された瞳を用いてもよい。他の例では、アポダイズド瞳平面を直線偏光光、たとえばスリットまたはウェッジとともに用いてもよい。スリットまたはウェッジは、所望する任意の直線偏光状態を対象物に送るために瞳平面内で回転させることができるか、または再構成可能なスクリーンたとえば液晶ディスプレイである。
さらに、偏光オプティクスによって、瞳平面全体に亘って可変の偏光が実現されてもよい(たとえば、複数の偏光子または空間変調器を含むことによって行なう)。こうして、空間周波数に従って偏光状態に「タグを付ける」ことができる。これはたとえば、高い入射角に対して、浅い角度とは異なる偏光を与えることによって行なう。
さらにほかの実施形態においては、選択可能な偏光を、偏光の関数として位相シフトと組み合わせてもよい。たとえば、偏光オプティクスは、瞳平面内に配置された直線偏光子を含み、その後に、2つの波長板(たとえば8分の1波長板)が、瞳平面の対向する四分区間に配置されてもよい。直線偏光の結果、対物レンズの入射面に対して偏光角度が全範囲に亘る。たとえば、支配的なs偏光光の位相シフトが固定されるように波長板がアライメントされる場合には、放射状のs偏光光およびp偏光光の両方が同時に存在するが、位相が互いにたとえばπだけシフトしているため、干渉計は、これらの2つの偏光状態間の差を基本信号として効果的に検出する。
さらなる実施形態においては、偏光オプティクスを、装置内の他の場所に配置してもよい。たとえば、直線偏光は、システム内のどこにでも実現することができる。
次に、走査干渉分光信号に対する物理モデルについて説明する。
対象物表面は高さ特徴hを有し、この高さ特徴hに対するプロファイルを、横方向の座標x、yによって示される領域に亘って行ことを所望するとする。ステージによって、滑らかな連続走査ζが、干渉対物レンズ、または図示したように対象物それ自体について、実現される。走査の間、コンピュータによって、各像点またはカメラ画素に対する強度データIζ,hが、連続的なカメラ・フレームにおいて記録される。なお、走査位置および表面高さに対する強度Iζ,hの主な依存関係を、添え字によって示す。この添え字は、全体を通して用いる表記法である。
オプティクスの適切な物理モデルは、非常に精巧なものにすることができる。これは、光源の部分的コヒーレンス、干渉計内での偏光混合、高NA対物レンズの結像特性、ならびに高い入射角において、および不連続の表面特徴が存在する下での電界ベクトルの相互作用を考慮することによってなされる。便宜上、ランダム偏光および拡散、低コヒーレンス拡張光源を仮定することによって、モデルを簡単にする。干渉信号のモデリングによって対物レンズの瞳平面を通過した後に対象物表面から入射角Ψで反射するすべての光線束(図5に示す)の影響を調べることが簡単になる。
光学システムを通る単一の光線束に対する干渉の影響は、以下のものに比例している。
Figure 0005827794
ここでZβ,kは、有効な対象物強度反射率であり、たとえばビーム・スプリッタの効果を含む。Rβ,kは、有効な基準反射率であり、ビーム・スプリッタおよび基準ミラーの両方を含む。周囲媒体の屈折率はnであり、入射角Ψに対する方向余弦は、以下の通りである。
Figure 0005827794
また光源照明に対する波数は、以下の通りである。
Figure 0005827794
位相に対する記号の取り決めによって、表面高さの増加を、位相の正の変化に対応させる。位相項は、干渉計内の対象物経路に対する影響ωβ,k、たとえば対象物表面からの薄膜効果と、基準経路に対する影響νβ,k、たとえば基準ミラーおよび対物レンズ内の他のオプティクスとを有する。
瞳平面上で積分される全干渉信号は、以下のものに比例している。
Figure 0005827794
ここで、Uβは瞳平面の光分散であり、Vは光学的なスペクトル分散である。方程式(4)における重み付け係数βは、投影角度に起因するcos(Ψ)項と、瞳平面内の幅dΨの環の直径に対するsin(Ψ)項とから得られる。
Figure 0005827794
ここで、図5に図示したように、対物レンズはアッベの正弦条件に従うと仮定する。このような比較的簡単な重み付けは、ランダムに偏光された、空間的にインコヒーレントな照明(すべての光線束が互いに無関係である)の場合に可能である。最後に、すべての入射角に亘る積分範囲は、0≦p≦1を意味し、すべての波数に亘るスペクトル積分は、0≦k≦∞である。
周波数ドメイン解析(FDA)では、最初に干渉強度信号Iζ,hのフーリエ変換を計算する。文字上の(非数値の)解析に対して、規格化されていないフーリエ積分を用いる。
Figure 0005827794
ここで、Kは空間周波数であり、たとえば、単位は周期/ミクロンである。周波数ドメイン値qK,hの単位は、波数の逆であり、たとえばμmである。これから、パワー・スペクトルと、
Figure 0005827794
位相スペクトルとが得られる。
Figure 0005827794
φ”K,hに対するダブル・プライムの意味は、フリンジのオーダに2倍の不確かさがあるということである。すなわち画素ごとのものと、走査の出発点に対する全体的なものとの両方である。そのため、従来のFDAでは、パワー・スペクトルQK,hによって重み付けされた位相スペクトルφ”K,hに対する線形フィットによって表面トポグラフィを決定することに、直接進む。フィットによって、各画素に対して、勾配と、
Figure 0005827794
切片とが得られる。
Figure 0005827794
なお、切片または「位相ずれ」A”は、高さhとは無関係であるが、位相データのフリンジのオーダの不確かさから引き継いだダブル・プライムを備える。勾配σには、この不確かさはない。切片A”および傾斜σから、特定の平均または公称上の空間周波数K0に対して、「コヒーレンス・プロファイル」と、
Figure 0005827794
「位相プロファイル」とを規定することができる。
Figure 0005827794
単純で理想的な場合、すなわち誘電体表面が完全に均一、均質で、薄膜および異なる材料の影響がなく、ならびに光学システムが分散に対して完全に平衡状態である場合には、位相およびコヒーレンス・プロファイルは、表面高さに直線的に比例する。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
2つの高さ計算のうち、位相に基づく高さ値h”θの方が正確である。しかし、この値は、単色の干渉分光法のフリンジのオーダの特性に不確かさがある。高分解能を得るために、コヒーレンスに基づく明瞭であるが正確さに劣る値hΘを用いることで、この不確かさを取り除き、最終的な値hθを得る。
従来のFDAでは、それほど理想的でない状況の場合でも、干渉位相φ”K,hは依然として空間周波数のほぼ線形関数であると仮定している。しかし、本実施形態では、表面構造の主要なパラメータたとえば膜厚の決定を、実験データと理論的な予測とを比較することによって行なう。理論的な予測は、非常に非線形の位相スペクトルとパワー・スペクトルの付随する変調とを含み得る。
こうするために、フーリエ変換の定義である方程式(6)を干渉信号の方程式(4)と組み合わせて、予測されるFDAスペクトルに対する以下の式にする。
Figure 0005827794
計算の効率を向上させるために、方程式(15)における3重積分の部分的な文字上の評価を行なうことができる。
方程式(15)の文字上の解析は、積分のオーダを変えることによって開始して、最初に、個々の干渉信号gβ,k,ζ,hの値を、すべての走査位置ζに亘って、βおよびkを固定した状態で求める。
Figure 0005827794
余弦項gβ,k,ζ,hを、以下の式を用いて通常の方法で展開した後、
Figure 0005827794
ζについての内部の積分を以下のように求める。
Figure 0005827794
ここで、以下の式を用いた。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
δ関数は、引数の逆の物理単位、この場合には逆の波数を有する。
これらのδ関数によって、空間周波数Kと積2βknとの間の等価性が確認される。
次の積分に対する変数の理論的な変形は、したがって次のようになる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、κ^は、空間周波数Kと同じ意味であるが、積分の自由変数として使用される。方程式(18)は、以下のように書くことができる。
Figure 0005827794
ここで、
Figure 0005827794
なお、変数を変えることによって、方程式(23)におけるR、Z、ν、ω項に対するβ依存性は、κ^およびkに対する依存性となる。
次のステップとして、最初に以下のことを述べる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、Hは、以下にように定義される無単位のヘビサイドのステップ関数である。
Figure 0005827794
fは、Kおよびkの任意の関数である。方程式(25)〜(27)を用いて、方程式(23)は以下のようになる。
Figure 0005827794
ここで以下の式を用いると、
Figure 0005827794
Figure 0005827794
Figure 0005827794
最終的に以下のような結果となる。
Figure 0005827794
方程式(33)は、積分の数が少ないので、当初の式(15)の三重積分と比べて著しく能率的な計算となる。
解析的に解く上で、興味深い極限的なケースがいくつか存在する。たとえば、位相の影響(νK,k−ωK,k)=0であるとともに、反射率R、Zが入射角および波長とは無関係である場合には、方程式(33)は以下のように簡単になる。
Figure 0005827794
したがって、方程式(24)において定義される重み付け係数ΓK,kを伴う積分のみを取り扱えばよい。この理想的なケースでは、方程式(34)に対してさらに2つの極限的なケースを評価することが簡単になる。すなわち、高NA対物レンズを有する準単色の照明、および低NAを有する広帯域の照明である。
狭いスペクトル帯域幅kΔを有する準単色光源の場合には、以下のように規格化されたスペクトルとなる。
Figure 0005827794
ここで、kは、公称上の光源波数である。方程式(34)における積分は、以下のような形となる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
K,kは、小さい帯域幅kΔ上で本質的に一定であると仮定すると、以下の式が得られる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、積分の値を求める際に、以下の関係を用いた。
Figure 0005827794
これは、狭帯域幅kΔ≪k0に対しては有効である。特に、スペクトルの正の非ゼロ部分は、以下のようになる。
Figure 0005827794
結果として、光源のスペクトル帯域幅が狭く、反射率R、Zが一定で、位相の影響ωがないこの特別な場合には、以下のようになる。
Figure 0005827794
この特別な場合には、位相は、表面高さに直線的に比例し、従来のFDAと一致する。また空間周波数は、方向余弦に直接対応する。
Figure 0005827794
したがって、FDAスペクトルの空間周波数座標と入射角との間には、1対1の関係がある。さらに、フーリエ振幅√QにおけるK重み付けは、方程式(41)から計算されることに注意されたい。このことは、図6(a)の例示スペクトルにおいて明らかである。同図では、垂直入射から、対物レンズNAによって課される方向余弦限界までの範囲に亘って、瞳平面を完全に均一に充填する場合に対する理論的な予測を示す。
Figure 0005827794
第2の例として、垂直入射付近の方向余弦の狭い範囲βΔに限定された均一な照明を伴う広帯域の照明の場合を考える。したがって、規格化された瞳平面分散は以下のようになる。
Figure 0005827794
変数を変えた後、
Figure 0005827794
方程式(34)における定積分は、この場合には以下の形となる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
これは以下の値となる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、以下の関係を用いた。
Figure 0005827794
スペクトルの正の非ゼロ部分は、この広帯域の光源照明用であり、したがって、垂直入射付近は、以下のようになる。
Figure 0005827794
これは、フーリエ振幅(√Q)が光源スペクトル分散VK/2n0に比例するという熟知結果に密接に対応する。このことはたとえば、図6(b)において、公称上または平均の波長kの中心に置かれたガウシアン・スペクトルに対して示されている。なお方程式(52)は、以下の線形的な位相の展開が、
Figure 0005827794
従来のFDAと一致するという仮定にも適合する。
フーリエ振幅√QK,h=|qK,h|および位相φ”K,h=arg(qK,h)は、干渉強度Iζ,hのフーリエ変換から得られるため、逆変換によって、実際の干渉信号のドメインに戻る。
Figure 0005827794
ここで、もう一度、κ^を空間周波数に対して用いて、これが方程式(54)における積分の自由変数であることを強調した。したがって、強度信号を計算する1つの方法は、方程式(33)によってフーリエ成分qK,hを生成し、方程式(54)を用いてIζ,hに変換することである。
本モデルでは、光源光がランダム偏光であることを仮定している。しかし、これは、偏光効果を無視すべきであることを意味するものではない。むしろ上記の計算では、照明の入射面によって規定される2つの直交する偏光状態sおよびpから等しく重み付けされた結果であるインコヒーレントな重ね合わせを仮定している。偏光に対しては、上付き文字の表記法を用いる。
Figure 0005827794
したがって、このβ、kにおける未偏光光に対する平均の位相角度は、以下のようになる。
Figure 0005827794
なお、2つの偏光の影響に対して振幅が同一である場合を除いて、ほとんどの場合、以下のようになる。
Figure 0005827794
また、q β,kおよびq β,kが、複素平面において完全に平行である場合を除いて、以下のようになる。
Figure 0005827794
同じ所見を、システムおよび対象物反射率であるR β,k、R β,k、およびZ β,k、Z β,kに、それぞれ適用する。これらは、位相が同一である場合を除いて、直接足し合わせることはできない。
対象物表面反射率の計算において偏光効果を適切に考慮するならば、モデリングはかなり簡単なものであって、かなり適応性があり、この先も偏光光のより興味深い場合を取り扱うことができる。
次のステップは、ソフトウェア開発を考慮して、別個の数値式に変換することである。干渉信号Iζ,hとフーリエ・スペクトルqK,hとの間の関係を、別個のフーリエ変換を用いて、以下のように再規定する。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、q〜K^,hは、qK^,hの複素共役であり、干渉信号にはN個の別個のサンプルが存在する。方程式(60)および後述の式において、導出時には重要であったが空間周波数Kに対する代わりとしてはもはや必要ではない自由変数Kを用いることは、やめている。したがって、予測される正の周波数FDA複素スペクトルは、以下のようになる。
Figure 0005827794
ここで、規格化された、高さに無関係な係数は、以下のようになる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、積分範囲に対する規格化は、以下のようになる。
Figure 0005827794
方程式(62)におけるヘビサイドのステップ関数Hによって、足し合わせに対する不必要な影響が防止されている。重み付け因子ΓK,kは、方程式(24)において定義される通りである。
実験と理論とを比較するために、方程式(61)を用いて実験的なFDAスペクトルを生成し、そして方程式(62)を用いてスペース・ドメインに逆に変換して、Iζ,hの理論的な予測を行なう。これが最も効率的に行なわれるのは、高速フーリエ変換(FFT)を用いた場合である。FFTの特性によって、K値の範囲が決定される。Iζ,hに対するN個の別個のサンプルが、増分ζstepだけ離間に配置される場合には、ゼロから始まりデータ・トレース当たりN/2周期まで増加する(N/2)+1個の正の空間周波数が存在する。これらは、以下の増分だけ離間に配置される。
Figure 0005827794
周波数ドメインにおける位相アンラッピングを容易にするために、走査に対するゼロ位置の調整を試みて、その位置が信号ピーク付近にくるようにすることで、周波数ドメインにおける位相勾配が小さくなる。FFTでは、走査における最初のデータ点がゼロにあることが常に仮定されているため、信号を適切にオフセットしなければならない。
薄膜を有するサンプル表面のモデリングに焦点を置く。
図7に示すのは、薄膜あり/なしの2つの表面タイプである。両方の場合において、有効な振幅反射率Zβ,kを、以下に従って規定する。
Figure 0005827794
ここで、Zβ,kは強度反射率であり、ωβ,kは反射時の位相変化である。添え字β、kは、照明の方向余弦への依存性を強調するものである。
Figure 0005827794
ここで、Ψは入射角であり、波数については以下のようになる。
Figure 0005827794
ここで、λは光源の波長である。添え字βは、第1の入射方向余弦βを指すものと理解される。
表面の特徴づけは、一つには、その屈折率によってなされる。周囲媒体(通常は空気)の屈折率は、nである。図7(a)の単純な表面の場合には、1つの屈折率nだけである。薄膜図7(b)の場合には、表面屈折率は2つある。すなわち、透明または部分的に透明な膜に対するnと、基板に対するnとある。最も一般的には、これらの屈折率は、実部および虚部によって特徴付けられる複素数である。たとえば、典型的な屈折率は、たとえばクロムの場合に、λ=550nmにおいて、n=3.18+4.41iである。ここで、虚部は正として定義するという取り決めを採用している。
材料の屈折率は、波長に依存する。空気に対する屈折率nの分散は、それほど大きくはないが、多くのサンプル表面、特に金属にとって重要である。公称上のk0付近の小さい波長変化においては、ほとんどの材料が、波数に対してほぼ直線的に依存する。したがって以下のように書くことができる。
Figure 0005827794
ここで、v(0) 、v(1) はそれぞれ、屈折率nに対して公称上の波数k0における、切片および勾配である。
屈折率の最も一般的な使用方法は、スネルの法則である。図7(b)を参照して、膜内部の屈折ビーム角は、以下の通りである。
Figure 0005827794
ここで、Ψは、屈折率nの媒体内の角度であり、これが屈折率nの媒体の最上面に入射する。また、Ψ1,β,kは、屈折角である。これらの角度は、屈折率が複素数である場合には、複素数値を取ることができ、部分的にエバネッセントな伝搬を示す。
2つの媒体間の境界の複素振幅反射率は、偏光、波長、入射角、屈折率に依存する。図7(b)の膜の最上面のs−およびp−偏光反射率は、以下のようにフレネルの式によって与えられる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
β、kに対する依存性は、角度Ψ、Ψ1,β,kから生じる。出口角Ψ1,β,kによって、屈折率n1,kを介したk依存関係が導入される。同様に、基板−膜界面の反射率は、以下の通りである。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
なお、フレネル方程式において、入射角および屈折角が同じ場合には、両方の偏光に対する反射率はゼロになる。
単純な表面(薄膜なし)の場合には、サンプル表面の反射率は、最上面の反射率と同一である。
Figure 0005827794
その結果、表面反射によって引き起こされる反射時の位相変化(PCOR)は、以下のようになる。
Figure 0005827794
なお、境界条件を満たすために、s−偏光は、反射時に「反転する」(=誘電体の場合のπ位相シフト)が、p−偏光は反転しない。正確に垂直入射の場合には偏光状態間の区別は意味がなくなる。すなわち、どんな場合でもフレネル方程式においてゼロ除算となるため、この極限的なケースを取り扱う式は異なるものとなる。
屈折率の複素数部分に対してプラス記号の取り決めを用いる場合には、吸収(複素数部分)が大きいほど、PCORωβ,kは大きくなる。言い換えれば、吸収係数が大きくなることは、有効な表面高さが減少することに等しい。このことは、直観的に理解できる。すなわち、正確に境界において起こる明確な反射および透過ではなく、反射する前に材料中に光ビームが浸透することとしての吸収が想像される。通常の取り決め、すなわち表面高さの増加は、基準表面と測定表面との間の位相差の正の変化に対応するという取り決めに従って、正の表面PCORを干渉計の位相から差し引く。
薄膜は、平行板反射の特別な場合である。光は、最上面を通過する際に部分的に反射されて(図7参照)、基板表面まで進む。基板表面では第2の反射が起こる。この反射は、第1の反射に対して位相が遅れている。しかし、これで終わるわけではない。基板から反射された光は、最上面を逆に通過するときにもう一度部分的に反射される。その結果、再び下を向いて基板に至るさらなる反射ビームが生じる。これは原理的には永遠に続き、それぞれのさらなる反射は前回のものよりもより少しだけ弱い。これらの複数反射がすべて存続して、最終的な表面反射率に影響すると仮定すると、無限の組は以下の値になる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
説明の備考として、β1,β,kのβ依存関係が、屈折率nの周囲媒体中の入射方向余弦βへの依存関係を指すことを、思い起こされたい。同じ方程式(77)が、対応する単一の表面反射率を有する両方の偏光状態に適用される。
これらの方程式を調べることで、従来のFDA処理が薄膜の存在下で機能しなくなる理由が示される。従来のFDAでは、表面高さを、フーリエ・パワー・スペクトルによって重み付けされたフーリエ位相スペクトルに対する線形フィットによって決定しており、広帯域の(白色)光を用いてフーリエ空間周波数の広がりを形成している。考え方は、位相展開が、表面高さに対する予想された線形的位相依存性によってもたらされるということである。表面特性に付随する他のどのような一定のオフセットまたは線形係数(たとえば「分散」)も、システムの特徴付けによって、またはフィールド位置によって変化しない位相の影響を単純に無視することによって、取り除かれる。
これは、単純な表面の場合には、完全に高精度に機能する。未偏光光の場合、また恐らく円偏光光の場合には、PCORの波長依存性は、波数に対してほぼ線形であり、所定の材料に対して一定である。しかし薄膜が存在すると、従来の解析は機能しなくなる。位相は非線形となり、位相勾配は膜厚に対して敏感になり、視野全体に亘って変化している場合もある。したがって、本解析では、表面構造の主要なパラメータたとえば膜厚の決定は、実験データと理論的な予測とを比較することによって行ない、その際、たとえば薄膜が表面の反射率を変調する仕方についての知識が用いられる。
次に、実験データと理論的な予測のライブラリとを比較することによって、反射時の表面構造パラメータたとえば膜厚および位相の変化(PCOR)がどのようにして得られるかについて説明する。厚みが未知の膜の場合、単一表面タイプ、たとえばSi上のSiOに対するライブラリは、可能な多くの膜厚に及んでいる。周波数ドメインの実施形態においては、考え方は、このライブラリを検索して、表面トポグラフィとは無関係のFDAスペクトル特性に対するマッチング、たとえば薄膜干渉効果に起因する振幅スペクトルに対する特有の構造を探すことである。次にコンピュータにおいてライブラリ・スペクトルを用いて、FDAデータを補正し、正確な表面トポグラフィ・マップを可能にする。
一実施形態においては、ライブラリには、表面構造に対する例示的なFDAスペクトルが収容されている。各スペクトルによって、空間周波数Kの関数としてフーリエ係数を表わす一連の複素係数ρが得られる。これらのスペクトルは、干渉計の光路長の走査ζの間に取得される強度データIζ,hのフーリエ変換である。空間周波数Kは、光源光スペクトルのセグメントに対する角波数k=2π/λ、周囲媒体の屈折率n、方向余弦β=cos(Ψ)に比例している。ここでΨは、対象物表面に送られる光線束に対する入射角である。
Figure 0005827794
予測ライブラリに対するρ係数は、FDAスペクトルの外観に影響を与える可能性がある表面の光学特性(表面高さを除く)を含む。
FDAスペクトルを予測するためには、光源光に対する入射角Ψおよび角波数kの範囲に亘る光線束のインコヒーレントな合計を表わす積分を行なう必要がある。前述したように、数値積分は、計算が能率的になるN個の角波数K(因子ΓK,kによって重み付けされる)に亘る単一の合計にすることができる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
重み付け因子は、以下の通りである。
Figure 0005827794
ここで、Vは、光源スペクトルであり、UK、kは、瞳平面の光分散である。対応する規格化γは、重み付け因子のすべての空間周波数に亘る合計である。
Figure 0005827794
ここで、γは、簡潔に規定されるべき規格化であり、Hは、ヘビサイドのステップ関数である。
対象物の表面構造、特に薄膜の特有な特性は、対象物−経路位相ωK,kおよび反射率ZK,kを通して、スペクトルρの一部となる。これについてはすでに詳述した通りである。同様に重要なものは、基準−経路位相νK,kおよび反射率RK,kである。これらは、走査型干渉計それ自体に依存する。このような因子は、走査型干渉計を理論的にモデリングすることによって、または、それを、特性が既知の試験サンプルを用いて校正することによって、決定することができる。これについては、後でさらに説明する。
薄膜に対する典型的な予測ライブラリは、膜厚Lによってインデックスされる一連のスペクトルρである。記憶されるスペクトルの範囲は、狭い空間周波数の対象領域(ROI:region of interest)のみであり、通常は256フレームの強度データ取得に対して15または16個の値である。このROIの外側の残りの値はゼロである。ROIの範囲は、空間周波数の定義から得られる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
100Xのミラウ対物レンズおよび狭帯域幅、500nm光源に基づく走査型干渉計に対する空間周波数の典型的な範囲は、2.7μm−1〜4.0μm−1である。計算を能率的に行なうために、数式(80)〜(83)を用いて各画素に対して複数回再計算することを伴う解析的な検索ルーチンではなく、サンプル・スペクトル間の0.5〜5nmによってインデックスされる高密度なルック・アップ・テーブルを用いることができる。
ライブラリ検索は、以下のステップを伴う。(1)予測されるFDAスペクトルを、特定の表面タイプに対応するライブラリから選択する。(2)このスペクトルが実験データにどの程度密接にマッチングするかを、メリット関数を用いて計算する。そして、(3)いくつかのまたはすべてのライブラリ・データ・セットを通して繰り返して、どの理論的なスペクトルから最良のマッチングが得られるかを決定する。探しているのは、表面特性に一意に関係する周波数ドメインにおける「識別特性」である。表面特性は、たとえば薄膜、異材料、ステップ構造、荒さ、およびそれらと干渉計の光学システムとの相互作用である。したがって、このように比較することによって、空間周波数に対する位相変化の線形速度が明確に取り除かれる。これは、表面トポグラフィによって直接的に変化するFDAスペクトルの1つの特性であり、したがって、ライブラリ検索とは関連性がない。
比較スペクトルにおいて、計算に対する位相の影響と振幅の影響とを分離することは、有益である。したがって理論に対して、以下のようになる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、connectは、φK,hの空間周波数依存性における2−πステップを取り除く関数である。実験データに対しては、以下のようになる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
φ”ex に対するダブル・プライムは、走査における出発点に対する画素間および全体の両方からのフリンジのオーダにおける不確かさを示す。実験データは必然的に、局所的な表面高さに関係する勾配項を含む。これが、p符号の代わりにq符号を用いる理由である。
トライアルな表面パラメータの特定の組に対して、位相差を計算することができる。
Figure 0005827794
トライアルなパラメータは正確であると仮定して、位相差ζ”K,hは、補正されたFDA位相である。理論が実験に良好にマッチングすることにより、原理的には切片がゼロ(すなわちゼロ位相ずれ)の空間周波数Kの単純な線形関数である位相ζ”K,hが得られる。したがって、先を見越すと、成功裏に補正された位相ζ”K,hは、最終的には従来のFDA解析へと下流に供給されるものである。従来のFDA解析では、周波数空間における位相の勾配は、表面高さに正比例していると仮定している。
前段落の所見に基づくと、補正された位相ζ”K,hには、表面高さに無関係な実験に対して理論をマッチングすることの評価を可能にする、対象とする2つの特徴が存在する。第1は、位相ずれA”またはK=0の切片値のζ”K=0,hであり、これは線形フィットによって得られる。第2は、線形フィット後の波数に関する残りの非線形性である。対応するメリット関数は、たとえば以下の通りである。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、σは、補正された位相ζ”K,hに対する(振幅が重み付けされた)線形フィットの勾配である。方程式(91)におけるround()関数によって、位相ずれA”が範囲±πに制限される。
ライブラリ検索は、位相情報を単独で用いて、すなわちメリット関数値χφおよび/またはχφnonの一方または両方を最小限にすることによって、進行することができるが、重要かつ有用な識別特性がフーリエ振幅においても存在する。振幅は、本来的に表面高さに無関係であるという点で、特に興味深い。したがって、たとえば、位相メリットとほぼ同様に、以下の振幅メリット関数を定義することができる。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、Ωは経験的なスケーリング因子である。
Figure 0005827794
メリットχは、対象物表面の全反射率に最も密接に関係しており、空間周波数依存性とは無関係である。一方で、χPnonは、理論および実験的な振幅プロットが、形状においてどの程度良好にマッチングするかを表現する。
振幅メリット関数χおよび/またはχPnonは、位相メリットχφおよび/またはχφnonとは別のものであり、またはその代わりでさえある。したがって、一般的なライブラリ検索メリット関数は、以下のようになる。
Figure 0005827794
ここで、wは重み付け因子である。原理的には、種々のパラメータに対する標準偏差を知ることで、方程式(96)における重みを決定することができる。より経験的なアプローチは、実際のデータおよびシミュレートされたデータに対して種々の重みを試して、それらがどの程度良好に機能するかを調べることである。以下の例では、すべてのメリットの影響に対して、等しい重みwφ=wφnon=w=wPnon=1を選択する。
図8〜13の例では、メリット関数検索手順を、Si上SiOの6つの膜厚:0、50、100、300、600、および1200nmに対して、それぞれ示している。すべての例に対する単一のライブラリは、0〜1500nmの範囲を2nm間隔で含む。データは、シミュレーションであり、ノイズはない。本明細書で説明したすべての例の場合と同様に、走査ステップは40nm、光源波長は498nm、および光源ガウシアンFWHMは30nm(擬単色)である。
これらのシミュレートされた検索の最も興味深い態様は、4つのメリット関数の挙動である。一般的に認められることは、これら4つの関数を含むことによって最終的なメリット値における曖昧さが減り、個々のメリット値に対して膜厚の関数としての強い周期性が存在することである。他の一般的な所見は、非線形性に基づくメリットは、位相および振幅の両方において、300nm以上において最も効果的であるが、位相ずれおよび平均の振幅は、300nm未満の膜厚において支配的である、ということである。このことが示しているのは、χφ、χメリット関数は特に、真の薄膜に対して有用であり、システム特徴付けが重要となり、直接結合して位相ずれおよび振幅の結果になる、ということである。
いったん薄膜厚みを決定(または材料もしくはアルゴリズムに対する他の使用法を特定)したら、FDA処理は通常の方法で進む。しかし、本来の実験的な位相データの代わりに、補正されたFDA位相ζ”K,hを用いる。原理的には、モデリングが成功していれば、ζ”K,hには非線形性がなく、位相ずれはゼロのはずである。したがって、次のステップは、位相スペクトルζ”K,hに対する線形フィットである。振幅の2乗の代わりに振幅スペクトルPを用いる方が、高NAのFDAにとって効果的であるように思われる。フィットによって各画素に対して得られるのは、勾配と、
Figure 0005827794
切片(位相ずれ)とである。
Figure 0005827794
なお、位相ずれA”は、位相データのフリンジのオーダの不確かさから引き継いだダブル・プライムを有する。傾斜σには、この不確かさはない。切片A”および傾斜σから、特定の平均または公称上の空間周波数K0に対して、以下のように「コヒーレンス・プロファイル」と、
Figure 0005827794
「位相プロファイル」とを定義する。
Figure 0005827794
次に、位相θ”における画素間のフリンジのオーダの不確かさを取り除く。
Figure 0005827794
ここで、α’は、画素間2πステップがない本来の位相ずれA”に対する近似である。
最後に、高さプロファイルは、以下から得られる。
Figure 0005827794
なお、位相オフセットγを差し引く必要はない。その理由は、補正された位相ζK,hを生成する際に、差し引くことはすでに行なわれているからである。
表面トポグラフィ測定の第1の例(図14)は、純粋なシミュレーションである。表面トポグラフィは、どこの場所でもゼロである。しかし、その下に存在する膜層は、0から1500nmへ10nm増分で増えている。図8〜13の場合と同じ予測ライブラリを用いて、この試験では、完璧なノイズ・フリーのデータではあるが、予測ライブラリの範囲全体に亘って膜厚がはっきりと決定されることが実証されている。
次の例(図15)もシミュレーションではあるが、ノイズが付加されている。ランダムな付加ノイズは、ガウシアンであり、標準偏差は2ビット、平均は128強度ビットである。これは、実際のデータの典型であると思われる。SiOとSiとの間で反射率に著しい差(4%〜45%)があるが、結果は、明らかに満足のいくものである。
次に、システムの特徴付けについて説明する。
システム特徴付け手順を行なう間に収集されたデータを用いて、位相オフセットγsysおよび線形分散τsysを定義する。システム特徴付けデータを含めるために、フーリエ変換された実験データを、ライブラリ検索の前におよび画素間ベースの他の任意のFDA処理の前に、以下を用いて補正する。
Figure 0005827794
ここで、K0は公称上の空間周波数であり、FDAデータ・セットに対する公称上のスペクトルの周波数を表わす。これは、たとえば、ROIの中心点を位置決めすることによって特定される。なお、理論的なライブラリは変わってはいない。スケーリング係数M(ギリシャ語大文字の「M」)は、対象物の表面反射率をライブラリ検索におけるパラメータとして使用することを可能にする新しいシステム特徴付けである。
フィールド位置の関数としての位相オフセットγsysおよびシステム位相ずれAsysは、フィールド位置の関数として記憶することができ、および以下の式に従って真のシステム分散を計算することができる。
Figure 0005827794
振幅係数Mも、フィールド依存性である。
システム特徴付けデータの形成は、対象物サンプルに対して前述したものと同様の仕方で進める。特徴が既知の加工品に移り、それを測定して、システム特徴付けを決定する。この決定は、完全なシステムに対して予想されるものと、結果がどのように異なるかを見ることによって行なう。具体的には、正確なライブラリ・エントリが事前に決定されている既知のサンプルを用いて、方程式(98)におけるような位相ずれA”と、方程式(102)におけるような最終的な高さh’とを、生成する。次に、完全に平坦な加工品を仮定して、システム位相オフセットと、
Figure 0005827794
システム位相ずれとを、計算する。
Figure 0005827794
ここで、connectxy()は、画素間位相アンラッピングである。振幅マップは、以下の通りである。
Figure 0005827794
種々の実施形態においては、複数のシステム特徴付けを平均化することができる。これはおそらく、ある範囲のサンプル形式に亘る最終的な応用例(たとえばSi上のSiO)と同様の表面構造を有する加工品を用いることによって、行なわれる。
前述の説明およびシミュレーションの大半において、薄膜表面構造に説明を絞ってきたが、解析は、他のタイプの複雑な表面構造に対しても適用可能である。以下において、走査干渉分光データを、走査型干渉計顕微鏡の光学分解能よりも小さい表面構造を明らかにするために、どのように解析できるかを示す。光学分解能は最終的に、光源の波長および集光オプティクスのNAによって限定される。
図16aに示すのは、実際の走査干渉分光データから決定された高さプロファイルである。この場合、2400ライン/mm(lpmm)の格子で、ピーク−谷(PV)の変調深さは120nmであり、使用した光源は公称上の波長が500nmである。図16aの上部プロファイルは、従来のFDA解析を用いて決定された高さプロファイルを示している。従来の解析が示すPV変調深さは、約10nmにすぎず、実際の変調深さが非常に過小評価されている。この不正確が起こる理由は、格子の特徴が、500nm機器の光学分解能の限界において存在するからである。これは、機器内のカメラの画素解像度が高くて格子を正確に分解するには十分過ぎるほどであっても、当てはまる。
この効果について考慮する1つの方法は、第1の表面箇所に概ね対応する第1のカメラ画素に対する走査干渉分光信号は、隣接する表面箇所からの影響も含む場合があり、これが起きるのは、それらのさらなる表面箇所の表面特徴が光波長に対して十分に先鋭で光を第1の画素に回折するときである、ということである。これらの隣接する表面箇所からの表面高さ特徴によって、第1の表面箇所に対応する走査干渉分光信号の従来の解析が損なわれる。
しかし同時に、これは、第1の表面箇所に対応する走査干渉分光信号は、近くの複雑な表面特徴についての情報を含んでいる、ということを意味する。図17に、このことを示す。同図では、このステップ高さ特徴の周りの種々の箇所に対応する画素からの走査干渉分光信号が示されている。(a)における信号では、ステップ高さは画素の右側にあり、より高くなっている。(b)における信号では、ステップは画素を直接通り過ぎている。(c)における信号では、ステップは画素の左側にあり、より低くなっている。信号内で直ちに明白な識別特性の1つは、(b)におけるフリンジ・コントラストが、(a)および(c)と比べて低くなっていることである。たとえば、ステップ高さが波長の4分の1に等しく、画素の箇所がステップ高さの位置に正確に対応していた場合には、(b)におけるフリンジ・コントラストは、全く消滅する。その理由は、ステップの2つの側面からの干渉が、互いに正確に打ち消しあうからである。(a)および(c)に示した信号内にも多くの情報が存在している。たとえば、図18は、図17の信号(a)および(c)に対する周波数ドメイン位相スペクトルにおける非線形の歪みをそれぞれ示している。この歪みは、近くのステップ高さに起因するものである。これらのスペクトルは、図18において、それぞれ(a)および(b)として示されている。ステップ高さがない場合には、周波数ドメイン位相スペクトルは線形である。すなわち、ステップ高さに隣接する表面の箇所に対応する画素に対する周波数ドメイン位相スペクトルにおける非線形特徴は、ステップ高さについての情報を含む。
このように十分に分解できない表面特徴がある場合の試験表面の表面プロファイルをより正確に測定するためには、薄膜に対する前述したライブラリ検索技術を用いることができる。たとえば、十分に分解できない格子を有する試験表面の場合、一連のモデルFDAスペクトルを、PV変調深さおよびオフセット位置の異なる値に対して生成する。薄膜の例の場合と同様に、モデル・スペクトルに対する表面高さは、固定されたままである。そして、モデル・スペクトルが、薄膜厚みによってパラメータ化されるのではなく、変調深さおよびオフセット位置によってパラメータ化されることを除いて、前述した薄膜の例の場合と同様に解析が続けられる。そして、実際の試験表面に対するFDAスペクトルの識別特性と種々のモデル・スペクトルの識別特性との間の比較を用いて、マッチングを決定することができる。マッチングに基づいて、格子の存在によって生じる各画素に対する実際のFDAスペクトルにおける歪みが取り除かれるので、各画素に対する表面高さを従来の処理を用いて決定することができる。図16bおよび19bに、薄膜に対して前述したものと同じメリット関数を用いた、このような解析の結果を示す。
図16bに示すのは、図16aを参照して前述した2400ライン/mmの格子に対してライブラリ検索解析を用いて決定した高さプロファイルである。図16aおよび16bでは、同じデータを用いた。しかし、ライブラリ検索解析によって、格子に対するPV変調深さは100nmであると決定された。これは図16aの従来のFDA処理によって決定された10nmの結果よりも、実際の120nmの変調深さに、はるかに近い。図19aおよび19bに示すのは、別個のステップ高さを有し、公称上の500nm光源を仮定した場合のシミュレーションに対する同様の解析である。図19aに示すのは、従来のFDA処理を用いて決定した高さプロファイル(実線)と、シミュレーションに対する実際の高さプロファイル(破線)とを、比較したものである。図19bに示すのは、ライブラリ検索方法を用いて決定した高さプロファイル(実線)と、シミュレーションに対する実際の高さプロファイル(破線)とを、比較したものである。ライブラリ検索におけるモデル・スペクトルに対するパラメータは、箇所およびステップ高さの振幅であった。例示したように、ライブラリ検索解析によって、横方向の解像度が約0.5ミクロンから約0.3ミクロンに向上している。
前述した詳細な解析において、実際のデータにおける情報と、種々のモデルに対応する情報との間の比較を、周波数ドメインにおいて行なった。他の実施形態においては、比較を、走査座標ドメインにおいて行なうことができる。たとえば、フリンジ・コントラスト包絡線の絶対位置の変化は一般に、当該の信号に対応する第1の表面箇所における表面高さの変化を示すが、信号の形状(その絶対位置とは無関係)は、複雑な表面構造、たとえば第1の表面箇所におけるその下の層および/または隣接する箇所における表面構造の情報を含む。
1つの簡単なケースでは、フリンジ・コントラスト包絡線それ自体の振幅を考慮することである。たとえば、薄膜厚みが、光源が生成する波長範囲と比べて非常に小さい場合、薄膜が生成する干渉効果は波長とは無関係になる。この場合、薄膜厚みによって直接、フリンジ・コントラスト包絡線の振幅が変調される。したがって、一般的に、フリンジ・コントラストの振幅を、種々の薄膜厚みに対応するモデルに対するフリンジ・コントラストの振幅と比較して、特定の薄膜厚みに対するマッチングを特定することができる(干渉計それ自体からの系統的な影響を考慮する)。
他の簡単なケースでは、フリンジ・コントラスト包絡線の下のフリンジのゼロ交差の相対間隔を見ることである。単純な表面構造を対称的な周波数分散を用いて照明した場合には、種々のゼロ交差間の相対間隔は、公称上は同じになるはずである。したがって、相対間隔の変化によって、複雑な表面構造が示される(干渉計それ自体からの系統的な影響を考慮した場合)。また相対間隔の変化を、種々の複雑な表面構造に対するモデルと比較して、特定の表面構造に対するマッチングを特定することができる。
他のケースでは、走査ドメイン信号と試験表面の種々のモデルに対応する走査ドメイン信号との間の相関関係を見ることである。マッチングは一般的に、ピーク値が最も高い相関関係に対応する。最も高いピーク値は、走査ドメイン信号の形状が実際の信号の形状に最も似ているモデルを示す。なお、このような解析は一般的に、表面高さには無関係である。その理由は、実際のサンプルの表面高さと各モデルの表面高さとの間の差は、相関関数におけるピーク箇所をシフトするだけであり、一般に、ピーク値それ自体に影響を与えるものではないからである。他方で、いったん正確なモデルが特定されると、正確なモデルの相関関数におけるピーク箇所によって、さらなる解析(たとえば従来のFDA)を必要とすることなく、試験サンプルに対する表面高さが得られる。
空間周波数ドメインにおける解析と同様に、走査座標ドメインにおける解析は、多くの異なるタイプの複雑な表面に対して用いることができる。このような表面としては、薄膜だけでなく、他の複雑な表面構造たとえば前述した十分に分解できない表面高さ特徴が挙げられる。
次に、試験サンプルに対する信号と試験サンプルの種々のモデルに対する対応する信号との間の相関関係を伴う走査座標ライブラリ検索解析について詳細に説明する。
このアプローチでは、干渉パターンについての仮定として、以下のように述べる以外はどんな仮定も除外している。すなわち、同じ複雑な表面特性を有する表面箇所に対応するデータ・セット内では、すべての画素に、同じ基本的な局所化された干渉パターンが含まれ、このパターンは、各画素に対して単に位置がシフトしている(あるいは再スケーリングされた)だけである、ということである。信号は、実際にどのように見えるか、すなわちそれがガウシアン包絡線であろうと、周波数ドメインにおいて線形的な位相挙動であろうと、その他何であっても、問題ではない。考え方は、試験対象物に対する複雑な表面構造の種々のモデルに対するこの局所的な干渉パターンを表わすサンプル信号またはテンプレートを生成し、そして各画素に対して、局所的な干渉パターンが実際の局所的な干渉パターンの形状に最良にマッチングするモデルを見出し、そしてそのモデルに対して、干渉パターン・テンプレートと表面高さを与える観察信号との間の最良のマッチングが得られるデータ・セット内の走査位置を見出すことである。パターン・マッチングに対して、複数の技術が利用可能である。1つのアプローチは、各テンプレートをデータと数学的に相関させることである。各モデルに対して、複素数(すなわち実部プラス虚部)のテンプレート関数を用いることで、2つのプロファイルが再生される。一方は、信号の包絡線に密接に関連し、他方は、その下にある搬送波信号の位相に関連する。
一実施形態においては、たとえば、各画素に対する解析は、以下のものを含む。(1)調整可能なパラメータ、たとえば膜厚の特定の値に対して計算されたか、または記録されたテンプレートのライブラリから試験テンプレートを選択する、(2)選択された試験テンプレートおよび相関技術を用いて局所的な表面高さを見出す(その例については、後述する)、(3)相関技術に基づいて選択された試験テンプレートに対するピーク・メリット関数値を記録する、(4)ライブラリにおけるテンプレートのすべてまたはサブセットに対してステップ1〜3を繰り返す、(5)どの試験テンプレートが最良のマッチング(=最も高いピーク・メリット関数値)を与えるかを決定する、(6)最良にマッチングされるテンプレートに対する調整可能なパラメータ(たとえば薄膜厚み)に対する値を記録する、(7)データ・トレース内のピーク・マッチング位置を与えた高さ値を呼び出す。
次に、複素相関に基づく好適な相関技術について説明する。試験表面の各モデルに対して、テンプレート干渉パターンを生成する。
Figure 0005827794
ここで、屈折率jは、テンプレート・パターンに対する特定のモデルを示す。関数m temp(ζ)およびφ temp(ζ)によって、複雑な表面構造が特徴付けられる。しかしこれらの関数は、信号に対応する箇所における表面高さには無関係である。表面高さはゼロに設定される。好ましい実施形態においては、関数m temp(ζ)およびφ temp(ζ)によって、干渉計からの系統的な影響も明らかになる。そして、テンプレート・パターンに対する複素数表現を用いる。
Figure 0005827794
さらにウィンドウ関数を用いて、複素テンプレート関数の特定の部分を選択する。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
たとえば、適切なウィンドウは、以下のようであってもよい。
Figure 0005827794
ここで、ウィンドウ幅Δζは、手入力で設定することができる。
干渉パターン・テンプレートI^ patがあるため、それを用いて実際のデータ・セットとの比較を行なうことができる。これを用意する際、実際の実験データ・セットから始まる複素信号I^exを生成することが便利である。
Figure 0005827794
この信号のフーリエ変換は、以下の通りである。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、
Figure 0005827794
そして、スペクトルの正の周波数部分から部分的なスペクトルを構築する。
Figure 0005827794
そして逆変換は、以下の通りである。
Figure 0005827794
Figure 0005827794
ここで、この複素関数I^exの実部は、当初の実験データIexである。さらに、位相および包絡線は、簡単な操作によって分離することができる。たとえば、複素関数I^exの振幅を用いて、信号強さACex(x)および包絡線mexの積を利用することができる。
Figure 0005827794
技術の基礎となる理論にしたがって、mexの少なくとも有意義な部分が、正確なモデルに対するm tempと同じ一般的な形状を有し、唯一の違いは、線形のオフセットhexおよびスケーリング因子ACex(x)であると予想される。また実験および干渉パターン・テンプレート位相オフセットφex、φ pat間の差が、正確なモデルに対する高さhexに直線的に比例していると予想される。
当面の課題は、干渉パターン・テンプレートI^ patによって表わされる特定の信号パターンを実験データI^ex内に配置して、異なるモデルjのそれぞれに対してどのくらい良好なマッチングが存在するのかを決定することである。以下においては、屈折率jを省略し、マッチング解析が各モデルに対して進行することについて述べる。
第1のステップは、包絡線mex、mpatおよびφex、φpatの形状が最良にマッチングされる走査位置ζbestを見出すことである。実行可能なアプローチは、干渉パターン・テンプレートと、ウィンドウwによって規定される走査のセグメント内の信号との、規格化された相関関係に基づくメリット関数である。
Figure 0005827794
ここで、
Figure 0005827794
は、複素相関関数であり、および
Figure 0005827794
Figure 0005827794
は、メリット関数Πを信号強さとは無関係にする規格化である。テンプレートの複素共役I^ patを用いることによって、同位相の線形の位相項Kζが打ち消され、φex、φplatがマッチングするときにΠが最大になる。相関関係の絶対値によって、残りのわずかな複素位相も取り除かれる。
Π(ζ)が、誤った高い値を生じることも、低い信号レベルにおいて特異性に遭遇することもないように、慎重に分母に最小値を加える。たとえば以下のようである。
Figure 0005827794
ここで、max()関数は、全走査長さζにおける信号強さ|I^ex|の最大値を戻す。MinDenomは、メリット関数検索において有効であると考えられる最小の相対信号強さである。MinDenomの値は、5%または他の何らかの小さい値においてハード・コードすることもできるし、調整可能なパラメータのままにしておくこともできる。
相関積分I^も、相関定理を用いて周波数ドメインにおいて実行することができる。
Figure 0005827794
ここで、Iは以下の関係を用いた。
Figure 0005827794
ここで、
Figure 0005827794
Πを通して検索してピーク値を見出すことによって、最良のマッチング位置ζbestが得られる。Πの値は、マッチングの品質の測定値であり、ゼロから1の範囲である。なお1は、完全なマッチングに対応する。メリット関数のピーク値を、種々のモデルのそれぞれに対して計算して、どのモデルが最良のマッチングであるかを決定する。そしてそのモデルに対する最良のマッチング位置ζbestによって、表面高さが与えられる。
図20〜24に本技術の例を例示する。図20に示すのは、薄膜のないベースSi基板の実際の走査干渉分光信号である。図21および22に示すのは、ベアSi基板と、1ミクロンのSiOがSi上に形成された薄膜構造とのそれぞれに対する干渉テンプレート・パターンである。図23および24に示すのは、図21および22のそれぞれのテンプレート関数に対する走査位置の関数としてのメリット関数である。メリット関数は、ベア基板に対する干渉テンプレート・パターンのマッチング(ピーク値0.92)の方が、薄膜テンプレート・パターンに対するマッチング(ピーク値0.76)よりも、はるかに良好であることを示している。したがって、メリット関数は、試験サンプルはベア基板であることを示している。さらに、正確なテンプレート・パターンに対するメリット関数におけるピークの位置によって、試験サンプルに対する相対的な表面高さ位置が与えられる。
前述した方法およびシステムは、半導体応用例において特に有用であり得る。本発明のさらなる実施形態は、前述した測定技術のいずれかを適用して後述の半導体応用例のいずれかに対応すること、測定技術および半導体応用例の両方を行なうシステムとを含む。
現在、表面トポグラフィの定量測定を行なうことは、半導体業界においてかなり関心が持たれている。典型的なチップ特徴のサイズが小さいために、これらの測定を行なうために使用される機器は通常、チップ表面に平行および垂直の両方において高い空間分解能を有していなければならない。エンジニアおよび科学者は、表面トポグラフィ測定システムを用いて、プロセス制御を行ない、また製造の過程で生じる欠陥、特にエッチング、研磨、クリーニング、およびパターニングなどのプロセスの結果として生じる欠陥を検出する。
プロセス制御および欠陥検出が特に有用であるためには、表面トポグラフィ測定システムは、横方向の解像度が、典型的な表面特徴の横方向のサイズに匹敵し、垂直方向の解像度が、許容される最小の表面ステップ高さに匹敵しなければならない。通常、このことは、横方向の解像度がミクロン未満であり、垂直方向の解像度が1ナノメータ未満であることが要求される。またこのようなシステムが、その測定を、チップ表面に接触せずに、その他の場合には潜在的に損傷を与える力を表面に及ぼすことなく、行なって、表面改質または欠陥導入を回避することが好ましい。さらに、チップ作製において使用される多くのプロセスの効果が局所的な因子たとえばパターン密度およびエッジ近似に強く依存することが良く知られているため、表面トポグラフィ測定システムが、高い測定スループットと、対象とする1つまたは多くの表面特徴を含み得る領域において大面積に亘って高密度にサンプリングする能力とを有することも重要である。
いわゆる「デュアル・ダマシン銅」プロセスを用いて、チップの種々の部品間の電気的な相互接続を作製することは、チップ・メーカの間で一般的になりつつある。これは、好適な表面トポグラフィ・システムを用いて効果的に特徴付けを行なうことができるプロセスの例である。デュアル・ダマシン・プロセスには、5つの部分があると考えることができる。(1)誘電体材料(たとえばポリマー、またはガラス)の層を、ウェハ(複数の別個のチップを収容する)の表面上に堆積させる中間層誘電体(ILD)堆積。(2)誘電体層を研磨して、精密な光リソグラフィにとって好適な滑らかな表面を形成する化学的機械的研磨(CMP)。(3)ウェハ表面に平行に進行する狭いトレンチと、トレンチの底部から下方の(事前に規定された)電気伝導層まで進行する小さいビアとを含む複雑なネットワークが形成されるリソグラフィ・パターニングおよび反応性イオン・エッチング・ステップの組み合わせ。(4)銅が過剰充填されるトレンチおよびビアをもたらす金属堆積ステップの組み合わせ。(5)過剰の銅を取り除いて、誘電体材料によって囲まれた、銅が充填されたトレンチ(およびあるいはビア)のネットワークを残す最終的な化学的機械的研磨(CMP)ステップ。
通常は、トレンチ領域における銅の厚み(すなわちトレンチ深さ)、および周囲の誘電体の厚みは、0.2〜0.5ミクロンの範囲である。結果として生じるトレンチの幅は、100〜100、000ナノメータの範囲にあってもよい。また各チップ内の銅領域は、ある領域では、規則的なパターンたとえば平行なラインのアレイを形成してもよく、他の領域では、明らかなパターンがなくてもよい。同様に、ある領域では、表面が銅領域によって高密度に覆われていてもよく、他の領域では、銅領域はまばらであってもよい。以下のことを理解することは重要である。すなわち、研磨レート、したがって研磨後の残存する銅(および誘電体)の厚みは、研磨条件(たとえばパッド圧力および研磨用スラリ組成)だけでなく、銅および周囲の誘電体領域の局所的な詳細な配置(すなわち、方位、近接性、形状)に強くかつ複雑な仕方で依存する。
この「位置依存性の研磨レート」は、可変の表面トポグラフィを、多くの横方向の長さ規模で生じることが知られている。たとえば、集合体上のウェハのエッジ近くに位置するチップは、中心近くに位置するチップよりも急速に研磨され、その結果、形成される銅領域は、エッジ付近では所望よりも薄く、中心では所望よりも厚くなることを意味する場合がある。これは、「ウェハ規模」のプロセス不均一性の例であり、すなわち、ウェハ直径に匹敵する長さ規模で起こる。また、高密度の銅トレンチが存在する領域の研磨レートは、銅ライン密度が低い近くの領域よりも高いことが知られている。これは、高い銅密度領域における「CMP誘導腐食」として知られている現象の原因となる。これは、「チップ規模」のプロセス不均一性の例であり、すなわち、単一チップの長さ寸法に匹敵する(はるかに小さい場合もある)長さ規模で起こる。銅充填された単一のトレンチ領域(周囲の誘電体材料よりも高いレートで研磨される傾向がある)内では、他のタイプのチップ規模不均一性(「デッシング」として知られている)が起こる。トレンチが幅デッシングにおいて数ミクロンよりも大きくなると危険で、影響されたラインの電気抵抗が後に過度に大きくなることがある。これはチップ故障の原因となる。
CMP誘導のウェハおよびチップ規模のプロセス不均一性は、本来的に予測が難しい。またこれらは、CMP処理システム内の状態の進展とともに経時変化する。どんな不均一性も確実に許容限界内に留まるように、プロセス条件を効果的にモニタして適切に調整するためには、プロセス・エンジニアが、チップ上での非接触の表面トポグラフィ測定を多数かつ幅広い箇所で頻繁に行なうことが重要である。これは、前述した干渉分光技術の実施形態を用いれば、可能である。
前述したコンピュータ解析方法はどれも、ハードウェアもしくはソフトウェアまたは両方の組み合わせにおいて、実施することができる。本方法は、本明細書で説明した方法および図に従って、標準的なプログラミング技術を用いて、コンピュータ・プログラムで実現することができる。プログラム・コードを入力データに適用して、本明細書で説明した関数を実行し、出力情報を生成する。出力情報を、1つまたは複数の出力装置たとえばディスプレイ・モニタに加える。各プログラムを、高レベルの手続き型またはオブジェクト指向のプログラミング言語で実現して、コンピュータ・システムと通信してもよい。しかしプログラムは、必要に応じて、アセンブリまたは機械語で実現することができる。どの場合でも、言語は、コンパイルされた言語またはインタープリットされた言語とすることができる。さらに、プログラムを、その目的用に事前にプログラムされた専用の集積回路上で実行させることができる。
このようなコンピュータ・プログラムはそれぞれ、好ましくは一般的または特別な目的のプログラマブル・コンピュータによって読取可能な記憶媒体または装置(たとえば、ROMまたは磁気的ディスク)上に記憶して、記憶媒体または装置がコンピュータによって読み取られたときに、本明細書で説明した手順を行なうようにコンピュータを構成および操作する。またコンピュータ・プログラムは、プログラム実行中に、キャッシュまたは主メモリ内に存在することもできる。また本解析方法は、コンピュータ読取可能な記憶媒体として実現することができ、コンピュータ・プログラムによって構成することができる。記憶媒体をそのように構成することによって、コンピュータを特定および所定の仕方で動作させて、本明細書で説明した機能が実行される。
本発明の多くの実施形態について説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の変更を行なってもよいことが、理解される。

Claims (35)

  1. 試験対象物についての情報を決定するための方法であって、
    試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と、試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較することであって、前記走査干渉分光信号は、試験対象物から導出される測定光を基準光と合成することにより得られたものである、前記比較することを含み、
    前記複数のモデルは、第1の表面箇所とは異なる第2の表面箇所における試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化され、
    法は更に前記比較に基づいて試験対象物についての情報を決定することを含む、方法。
  2. 前記試験対象物は、光を回折して第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号に影響する第2の表面箇所における構造を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第2の表面箇所における一連の特性は、該第2の箇所におけるステップ高さに対する振幅と前記第2の箇所に対する位置との置換を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第2の表面箇所における一連の特性は、格子に対する変調深さと格子のオフセット位置との置換を含み、前記格子は前記第2の箇所に亘って延びる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記比較に基づいて試験対象物に対する正確な特性を決定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  6. 前記比較に基づいて第1の表面箇所に対する相対的な表面高さを決定することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  7. 前記相対的な表面高さを決定することは、どのモデルが、試験対象物に対する特性のうちの正確な特性に対応するかを前記比較に基づいて決定すること、前記正確な特性に対応するモデルを用いて相対的な表面高さを計算することを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記正確な特性に対応するモデルを用いることは、前記走査干渉分光信号からのデータを補正して、前記正確な特性から生じる影響を低減することを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記データを補正することは、前記正確な特性から生じる位相の影響を、試験対象物に対する走査干渉分光信号の前記変換分の位相成分から取り出すことを含み、前記正確な特性に対応するモデルを用いることはさらに、前記正確な特性から生じる位相の影響を取り除いた後に、前記変換分の位相成分から相対的な表面高さを計算することを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記正確な特性に対応するモデルを用いて相対的な表面高さを計算することは、試験対象物に対する情報と前記正確な特性に対応するモデルに対する情報とを比較するために用いられる相関関数におけるピークの位置を決定することを含む、請求項8に記載の方法。
  11. さらなる表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と前記複数のモデルに対応する情報とを比較することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  12. 前記比較に基づいて試験対象物に対する表面高さプロファイルを決定することをさらに含む請求項11に記載の方法。
  13. 前記比較することは、走査干渉分光信号から導出可能な情報と各モデルに対応する情報との間の類似性を示す1つまたは複数のメリット関数を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記比較することは、走査干渉分光信号から導出可能な情報を、モデルに対応する情報に対する表現にフィッティングすることを含む、請求項1に記載の方法。
  15. 前記走査干渉分光信号から導出可能であるとともに、比較されている情報は、数である、請求項1に記載の方法。
  16. 前記走査干渉分光信号から導出可能であるとともに、比較されている情報は、関数である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記関数は、空間周波数の関数である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記関数は、走査位置の関数である、請求項16に記載の方法。
  19. 前記試験対象物に対する情報は、試験対象物に対する走査干渉分光信号の空間周波数ドメインへの変換から得られる請求項1に記載の方法。
  20. 前記変換はフーリエ変換である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記試験対象物に対する情報は、前記変換分の振幅プロファイルについての情報を含む、請求項19に記載の方法。
  22. 前記試験対象物に対する情報は、前記変換分の位相プロファイルについての情報を含む、請求項19に記載の方法。
  23. 前記試験対象物に対する情報は、試験対象物の第1の箇所における走査干渉分光信号の形状に関する、請求項1に記載の方法。
  24. 前記試験対象物に対する情報は、走査干渉分光信号の形状におけるフリンジ・コントラストの振幅に関する、請求項23に記載の方法。
  25. 前記試験対象物に対する情報は、走査干渉分光信号の形状におけるゼロ交差間の相対間隔に関する、請求項23に記載の方法。
  26. 前記試験対象物に対する情報は、走査位置の関数として表現され、前記関数は走査干渉分光信号の形状から得られる、請求項23に記載の方法。
  27. 前記比較することは、試験対象物に対する情報と各モデルに対する情報との間の相関関数を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
  28. 前記相関関数は複素関数である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記比較することは、各相関関数における1つまたは複数のピーク値を決定することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
  30. 最大のピーク値に対応するモデルのパラメータ化に基づいて試験対象物に対する正確な特性を決定することをさらに含む請求項29に記載の方法。
  31. 前記相関関数における少なくとも1つのピーク値に対する座標に基づいて試験対象物の第1の表面箇所における相対的な表面高さを決定することをさらに含む請求項29に記載の方法。
  32. 走査干渉分光信号が走査干渉分光システムによって生成され、前記比較することは、前記走査干渉分光システムから生じる走査干渉分光信号に対する系統的な影響を明確にすることを含む、請求項1に記載の方法。
  33. 特性が既知の他の試験対象物を用いて、前記走査干渉分光システムの系統的な影響を校正することをさらに含む請求項32に記載の方法。
  34. 試験対象物についての情報を決定するための装置であって、
    コンピュータ内のプロセッサに、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と、試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較させるプログラムを有するコンピュータ読取可能な媒体であって、前記走査干渉分光信号は、試験対象物から導出される測定光を基準光と合成することにより得られたものである、前記コンピュータ読取可能な媒体を備え、
    前記複数のモデルは、第1の表面箇所とは異なる第2の表面箇所における試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化され、
    記プログラムは、前記プロセッサに前記比較に基づいて試験対象物についての情報を決定させる、装置。
  35. 試験対象物についての情報を決定するための装置であって、
    走査干渉分光信号を生成するように構成された走査干渉分光システムであって、前記走査干渉分光信号は、試験対象物から導出される測定光を基準光と合成することにより得られたものである、前記走査干渉分光システムと、
    前記走査干渉分光システムに接続され、走査干渉分光信号を受信する電子プロセッサであって、試験対象物の第1の表面箇所に対する走査干渉分光信号から導出可能な情報と、試験対象物の複数のモデルに対応する情報とを比較するようにプログラムされた電子プロセッサとを備え、
    前記複数のモデルは、第1の表面箇所とは異なる第2の表面箇所における試験対象物に対する一連の特性によってパラメータ化され、
    記電子プロセッサは、前記比較に基づいて試験対象物についての情報を決定するようにプログラムされている、装置。
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