JP5827234B2 - トレッド用混合物 - Google Patents

Description

本発明は、トレッド用混合物に関する。

「シリカ」の用語は、二酸化ケイ素系の補強剤を意味することを意図する。

「架橋可能な不飽和鎖のポリマー基材」の用語は、硫黄系システムで架橋（加硫）した際にエラストマーにより通常想定される全ての化学的−物理的及び機械的特性を取り得るあらゆる天然または合成の非架橋ポリマーを意味することを意図する。

既知の通り、タイヤ産業において行われる研究の一部は、湿潤路面での走行安定性、転がり抵抗及び耐摩耗性が改善されたトレッドを実現することを目的とする。

上記の三特性は全て単独で改善することが可能であるが、一つの特性の改善で他の一特性または全特性が悪化することなく、これらを同時に改善することはより困難である。

これに関連して、シリカは転がり抵抗及び湿潤路面での走行安定性の観点での優位性のため、トレッド用混合物の補強充填剤としてカーボンブラックの一部または全部の代替物として長く使用されている。

シリカは、シラノール基で結合してシリカ粒子間に水素結合が形成するのを防止すると同時に、シリカをポリマー基材に化学的に接着させるシラン結合剤と組み合わせて使用される。

トリアルコキシメルカプトアルキルシランは、主に転がり抵抗及び揮発性物質の放出の低減という観点において有利性を提供することから、特に興味深い部類のシラン結合剤である。

最も優れた有利性は、式Ｉの化合物：
ＳＨ（ＣＨ_２）_３ＳｉＲ^１Ｒ^２ _２ （Ｉ）
（式中のＲ^１は−ＯＣＨ_２ＣＨ_３であり、Ｒ^２は−Ｏ（ＣＨ_２ＣＨ_２Ｏ）_５（ＣＨ_２）_１２ＣＨ_３である）から得られる。

公知技術に対し、湿潤路面での走行安定性、転がり抵抗及び耐摩耗性の同時改善を示すトレッドを作製し得る混合物の必要性を感じる。

驚くべきことに、出願人はこの目的を達成し得るトレッド用混合物を考案した。

本発明によれば、架橋可能な不飽和鎖のポリマー基材と、加硫剤と、シリカと、シラン結合剤とを含むトレッド用混合物を提供するもので、前記ポリマー基材が５０〜１００×１０^３の平均分子量かつ１．５以下の分子量分布を有する第一画分２０〜４０％と、８００〜１５００×１０^３の平均分子量かつ３．０以下の分子量分布を有する第二画分８０〜６０％とからなる第一ＳＢＲゴムを含み、前記シラン結合剤が式Ｉ：
ＳＨ（ＣＨ_２）_ｌＳｉＲ^１Ｒ^２ _２ （Ｉ）
（式中のｌは１〜６の整数、Ｒ^１は−Ｏ（ＣＨ_２）_ｇＣＨ_３であり、Ｒ^２は−Ｏ（ＣＨ_２ＣＨ_２Ｏ）_ｍ（ＣＨ_２）_ｎＣＨ_３であり、ｇは０〜５の整数、ｍは２〜８の整数、ｎは３〜２０の整数である）のメルカプトシランであることを特徴とする。

シリカは１７０〜２３０ｍ^３／ｇの表面積を有するのが好ましい。

ｌは３であるのが好ましい。

ｇは１であり、ｍは５であり、またｎは１２であるのが好ましい。

トレッド用混合物は、４０〜１３０ｐｈｒのシリカ及び４〜１８ｐｈｒのシラン結合剤を含むのが好ましい。

第一ＳＢＲゴムは、２５〜４５％のスチレン含量及び２０〜７０％のビニル含量を有するのが好ましい。

トレッド用混合物は、２０〜６０ｐｈｒの第一ＳＢＲゴムを含むのが好ましい。

トレッド用混合物は、２０〜８０ｐｈｒの第二ＳＢＲゴムを含むのが好ましい。第二ＳＢＲゴムは、８００〜１５００×１０^３の平均分子量を有するＳ−ＳＢＲを２０〜６０ｐｈｒ、また５００〜９００×１０^３の平均分子量を有するＥ−ＳＢＲを２０〜６０ｐｈｒ含むのがさらにより好ましい。

以下は、本発明をより明確に理解するための非限定的な実施例である。

Ｓ−ＳＢＲとは、溶液から得たスチレン−ブタジエンゴムを指し；Ｅ−ＳＢＲとは、エマルションから得たスチレン−ブタジエンゴムを指す。

二種類のコントロール混合物（Ａ，Ｂ）及び本発明の教示による三種類の混合物（Ｃ，Ｄ，Ｅ）を作製し、それぞれについて試験を行って湿潤路面での走行安定性、転がり抵抗及び耐摩耗性に関する特性を求めた。

実施例に記述した混合物を、以下の通りに作製した：

−混合物の調製−
（第一混合段階）
最初に、２３０−２７０リットルの定常接線回転子ミキサーに架橋可能なポリマー基材と、シリカと、シラン結合剤と、オイルとを６６〜７２％の充填係数まで投入した。

ミキサーを４０〜６０ｒｐｍの速度で稼動し、生成した混合物を１４０〜１６０℃の温度に達したところで取り出した。

（第二混合段階）
前段階の混合物を、４０〜６０ｒｐｍの速度で稼動するミキサー中で再度混合し、１３０〜１５０℃の温度に達したところで取り出した。

（第三混合段階）
加硫系を前段階の混合物に６３〜６７％の充填係数まで加えた。

ミキサーを２０〜４０ｒｐｍの速度で稼動し、生成した混合物を１００〜１１０℃の温度に達したところで取り出した。

表１は、五種類の混合物の組成をｐｈｒで示す。

Ｓ−ＳＢＲ^＊及びＥ−ＳＢＲ^＊は、それぞれ８００〜１５００×１０^３及び５００〜９００×１０^３の平均分子量を有する。より具体的には、Ｓ−ＳＢＲ^＊は１０〜４５％のスチレン含量及び２０〜７０％のビニル含量を有し；Ｅ−ＳＢＲ^＊は２０〜４５％のスチレン含量を有する。

Ｓ−ＳＢＲ^＊＊は、２４〜４５％のスチレン含量及び２０〜７０％のビニル含量を有するゴムであり、５０〜１００×１０^３の平均分子量及び１．５以下の分子量分布を有する２０〜４０％の第一画分と、８００〜１５００×１０^３の平均分子量及び３．０以下の分子量分布を有する８０〜６０％の第二画分とからなる。

シリカ１は、ＶＮ３の商品名でＥＶＯＮＩＫ社から販売され、１７０ｍ^２／ｇの表面積を有する。

シリカ２は、ＭＰ２００の商品名でＲＨＯＤＩＡ社から販売され、２１０ｍ^２／ｇの表面積及び５５ｎｍ径の凝集体を有する。

シラン１は、ＳＩ７５の商品名でＤＥＧＵＳＳＡ社から販売されるシラン結合剤である。

シラン２は、次式：
ＳＨ（ＣＨ_２）_３ＳｉＲ^１Ｒ^２ _２
（式中のＲ^１は−Ｏ(ＣＨ_２)ＣＨ_３であり、Ｒ^２は−Ｏ（ＣＨ_２ＣＨ_２Ｏ）_５（ＣＨ_２）_１２ＣＨ_３である）のメルカプトシランである。

上述の通り、混合物Ａ〜Ｅを試験して湿潤路面での走行安定性、転がり抵抗及び耐摩耗性を求めた。

より具体的には、３０℃でのＥ’値及び様々な温度でのＴａｎＤ値をＡＳＴＭ規格Ｄ５９９２に従って測定し、耐摩耗性をＤＩＮ規格５３ ５１６に従って測定した。

いずれの当業者にも既知であるように、ＴａｎＤ値は湿潤路面での走行安定性及び転がり抵抗を指す。

本発明に係る混合物の利点をより明確に示すため、湿潤路面での走行安定性、転がり抵抗及び耐摩耗性の値を、混合物Ａの結果に基づいて指数化した。

表２は試験結果を示す。

表２に示すように、本発明に係る混合物は、式Ｉのメルカプトシランと結合した高表面積のシリカを欠くコントロール混合物Ａ及びＢと比較して、全三特性における一層の全体的改善を確保する。

混合物Ｄ及びＥは、式Ｉのメルカプトシランと結合した高表面積のシリカとともに低分子量画分及び高分子量画分を含む特定のＳ−ＳＢＲゴムを用いており、全三特性におけるより一層の同時改善を提供するので、本発明の好適な実施形態を表している。

Claims (9)

1. 架橋可能な不飽和鎖のポリマー基材と、加硫剤と、シリカと、シラン結合剤とを含むトレッド用混合物であって、前記ポリマー基材が５０〜１００×１０^３の平均分子量かつ１．５以下の分子量分布を有する第一画分２０〜４０％と、８００〜１５００×１０^３の平均分子量かつ３．０以下の分子量分布を有する第二画分８０〜６０％とからなる第一ＳＢＲゴムを含み、前記シリカが１７０〜２３０ｍ^３／ｇの表面積を有し、前記シラン結合剤が式Ｉ：
   ＳＨ（ＣＨ_２）_ｌＳｉＲ^１Ｒ^２ _２ （Ｉ）
   （式中、
   ｌは１〜６の整数であり、
   Ｒ^１は−Ｏ（ＣＨ_２）_ｇＣＨ_３であり、
   Ｒ_２は−Ｏ（ＣＨ_２ＣＨ_２Ｏ）_ｍ（ＣＨ_２）_ｎＣＨ_３であり、
   ｇは０〜５の整数であり、
   ｍは２〜８の整数であり、
   ｎは３〜２０の整数である）のメルカプトシランであることを特徴とするトレッド用混合物。
2. ｌは３、ｇは１、ｍは５、またｎは１２である請求項１に記載のトレッド用混合物。
3. ４０〜１３０ｐｈｒの前記シリカ及び４〜１８ｐｈｒの前記シラン結合剤を含む請求項１または２に記載のトレッド用混合物。
4. 前記第一ＳＢＲゴムが、２５〜４５％のスチレン含量及び２０〜７０％のビニル含量を有する請求項１〜３のいずれか一項に記載のトレッド用混合物。
5. ２０〜６０ｐｈｒの前記第一ＳＢＲゴムを含む請求項４に記載のトレッド用混合物。
6. ２０〜８０ｐｈｒの第二ＳＢＲゴムを含む請求項５に記載のトレッド用混合物。
7. 前記第二ＳＢＲゴムが、８００〜１５００×１０^３の平均分子量を有するＳ−ＳＢＲを２０〜６０ｐｈｒ、また５００〜９００×１０^３の平均分子量を有するＥ−ＳＢＲを２０〜６０ｐｈｒ含む請求項６に記載のトレッド用混合物。
8. 請求項１〜７のいずれか一項に記載の混合物から作製したトレッド。
9. 請求項８に記載のトレッドを含むタイヤ。